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伊丹市内における市民参加によるタンポポ類の分布調査

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Academic year: 2021

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伊丹市内における市民参加によるタンポポ類の分布調査

田中良尚

・水野由芽

※ 1

伊丹市昆虫館・※1林野庁九州森林管理局

Distribution of Taraxacum species (Asterales: Asteraceae)

in Itami City

by citizen-participatory field research

Yoshinao TANAKA*, Yume MIZUNO*

1

*Itami City Museum of Insects

*1Forestry Agency, KYUSYU Regional Forest Office

(2015 年 2 月 28 日受理) はじめに    伊丹市のまちづくりの指針である伊丹市総合計画(第 5 次)では、施策目標の中の一項目として「自然環境と の共生」が挙げられている(伊丹市 , 2011)。その地域 の自然を知ること、生物の観察などの自然学習は、「自 然環境との共生」について直接的に市民の意識に訴えか ける要因となり得ると考えられる。  筆者らは市民が身近な自然を知る契機となるような自 然学習の題材として、都市部でも目にすることができる 象徴的な生物(主に植物)を選出することにした。結果、 そのような生物の一つとして、タンポポ類が適している と考えた。その理由は、開花期が春季という季節感があ ること、花色が黄色でよく目立つこと、知名度が比較的 高いと思われたためである。  平地で見られるタンポポ類は春季に開花し、日当たり のよい野原、道ばたなどに群生する(林 , 1983)。現在 伊丹市域には、在来種のカンサイタンポポ(Taraxacum japonicum, 図 1)及びシロバナタンポポ(T. albidum)、 外来種のセイヨウタンポポ(T. officinale)及びアカミタ ンポポ(T. laevigatum)の計4種(内村 , 1992)、それ に加えてカンサイタンポポと外来タンポポの雑種が分布 している(伊東ら , 2011)と考えられる。  近年、伊丹市域 10,000㎡ごとの、タンポポ類の分布 状況の詳細な調査報告がなされている ( 鈴木 , 2011) が、 本調査を行った 2008 年の時点では、伊丹市全域におい てタンポポ類の分布を詳細に調べた報告は見当たらな かった。伊丹市域におけるタンポポ類の分布状況の解明、 及びタンポポ類を題材とした自然学習のためには、「市 民参加型の調査」という形で行うのが、市民の興味を惹 き、また市内広域で実施できる方法だと考え調査に至っ た。尚、市民参加型のタンポポ類の調査は 1970 年代よ り行われており、調査手法としては複数の前例が存在し ていることを付記しておく。  本調査は財団法人伊丹市公園緑化協会(2013 年 3 月 31 日付で解散、緑化事業のほか伊丹市昆虫館の管理・運 営を行っていた団体)名義で行った。 問い合わせ先 〒 664-0015 伊丹市昆陽池 3-1 伊丹市昆虫館        e-mail: [email protected]

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調査方法  2008 年の春季(4 月上旬から 5 月下旬まで)、伊丹市 内でタンポポ類を見つけた「日時」、「場所」、「花色」、「総 苞外片の反り方」の 4 点について、市民より電話、FAX、 電子メール等で情報提供を受けた。情報提供の依頼には、 本調査が市民にとってより親しみやすいように、「いた みのタンポポをみんなで調べよう!」という表題を設け、 また種の同定を行いやすいよう、識別点を記したチラシ を配布した(図 2)。  周知方法としては、伊丹市の広報紙への記事掲載、財 団法人伊丹市公園緑化協会の広報冊子及びホームページ への記事掲載、市立施設へのチラシ配布、市内公共花壇 の維持管理団体や園芸講座の参加者への直接呼びかけ、 という方法を採用した。  情報提供者からの連絡内容には、タンポポ類を確認し た場所が複数含まれていることがあるため、それらの場 所について個々の情報を「報告」とし、その累計を「報 告件数」として数えた。 結果 1. 報告件数  報告件数は計 136 件だった。報告内容には、分布地点 の重複や不明なものも含まれている。分布地点数の集計 には、これら重複や不明要素のある報告は削除した。 2. 分布箇所  集まった報告の「花色」及び「総苞外片の反り方」か ら、種を判断した。セイヨウタンポポとアカミタンポポ については、頭花だけでは同定できないため、2 種をま とめて外来タンポポとした。すべてのタンポポが分布 している地点は重複を除くと合計 104 ヶ所だった(図 3)。これには野外のほか、民家の敷地内のものも含めて いる。天神川および天王寺川堤防で、報告が連続してい る場所については1ヶ所とした。このうち、カンサイタ ンポポと外来タンポポが混生する地点は 12 ヶ所あった。 混生する地点を含めてのカンサイタンポポの分布地点数 は 34 ヶ所で、場所は河川敷(11 ヶ所)が最も多く、次 いで公園(10 ヶ所)だった(図 4)。外来タンポポの分 布地点数は 75 ヶ所で、生育している場所は学校などの 図 1 大阪国際空港付近の緑地で開花する    カンサイタンポポ 図 2 タンポポ類の識別表

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図 3 伊丹市内におけるタンポポ類の分布 図 4 カンサイタンポポが分布していた場所 図 5 外来タンポポが分布していた場所 民家・マンション 3 ヶ所(9%) 施設敷地 7 ヶ所(21%) 河川敷 11 ヶ所(32%) 公園 10 ヶ所(29%) その他 3 ヶ所(9%) 民家・マンション 9 ヶ所(12%) 施設敷地 25 ヶ所(33%) 河川敷 4 ヶ所(5%) 農地 7 ヶ所(9%) 公園 12 ヶ所(16%) 花壇 1 ヶ所 (1%) 道路沿い 12 ヶ所(16%) その他 5 ヶ所(7%) N=34 N=75

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施設敷地(25 ヶ所)が最も多く、次いで公園(12 ヶ所) と道路沿い(12 ヶ所)だった(図 5)。シロバナタンポ ポの分布地点は、河川敷や道路沿いなどに7ヶ所あった。 考察  カンサイタンポポの分布地点は昆陽池公園、天神川や 天王寺川の河川堤防など、大きく開発されていない、ま たは造成後長い年月が経過した場所に多い傾向が見られ た。一方、外来タンポポの分布地点数はカンサイタン ポポの2倍以上あり、駐車場や道路沿いなどの市街地や 住宅域に多い傾向が見られた。近年造成された笹原公園 や、鴻池地区の西池・黒池の周囲の緑道からもその分布 が報告された。しかし、西池・黒池周辺は現在のように 造成される以前はカンサイタンポポが優占していたよう だ。1990 年前後と推測されるが、「荒牧、天神川や天王 寺川の堤防、西池・黒池周辺にはカンサイタンポポが一 面に咲き乱れていた」という記録がある(内村 , 1992)。 よって従来から言われているように、外来タンポポは開 発など人為的に大きく撹乱された環境に進出しやすいよ うである。しかしそれだけではなく、外来タンポポは天 神川や天王寺川堤防でカンサイタンポポと混生し、また 田畑にも分布するように、様々な場所に進出しているこ とが示唆された。シロバナタンポポについては、民家の ものを除いて野外での分布地点が6ヶ所しかなく、市内 では稀少であることがわかった。これは 2009 − 2010 年の調査結果においても、シロバナタンポポが確認され たメッシュポイントは 14 ヶ所のみである(鈴木 , 2011) ため、その裏付けがなされたと判断してよいだろう。  今回の調査方法では、カンサイタンポポと外来タンポ ポの雑種を判別することができなかった。形態的に外来 タンポポと判断できる個体に占める雑種タンポポの割合 は非常に高く、日本全体の平均で約 85%にも達すると の報告がある。また近畿において、総苞外片がカンサイ タンポポのような形態をしたものの約 80%が雑種だっ たという調査結果もある(伊東・名波 , 2006)。そこで、 以下のような簡易な検証を行った。  花粉を顕微鏡で観察すると、大きさと形が均一なもの はカンサイタンポポ、均一でないものは雑種タンポポを 含む外来タンポポと判別することができる(図 6, 7)。 今回の調査でカンサイタンポポと判断した天王寺川堤防 (荒牧地区)、奥畑地区、猪名川西岸(東有岡地区)、昆 陽寺(寺本地区)の4ヶ所で採取された個体の花粉を観 察した結果、すべて花粉の大きさと形が均一であり、雑 種タンポポではないことが確認できた。よって、伊丹市 内にも純粋なカンサイタンポポが分布していることが判 明した。しかし、この方法でも外来タンポポのような形 態をした個体の中に含まれる雑種タンポポを判別するこ とはできない。本調査でカンサイタンポポおよび外来タ ンポポと判断したものの中には、実は多数の雑種タンポ ポが含まれている可能性がある。  本調査では市民からの報告を資料としているため、タ ンポポの形態の見間違いや、人目につきにくい場所の報 告が少ないといった問題が考えられる。しかし調査の目 的の一つに「市民参加」を挙げているため、基本的な調 査方法については前述のとおりとした。  今回、伊丹市内でのタンポポ類の種別分布について、 簡易に見ることができた。また、市民にとって身近な自 図 6 カンサイタンポポの花粉(伊丹市内で採取) 図 7 外来タンポポの花粉(伊丹市内で採取)

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然を改めて観察する契機となったと考えられ、そういっ た面で本調査は有効だったと考えている。    謝辞  調査協力をいただいた伊丹市民の方々、調査の支援を していただいた財団法人伊丹市公園緑化協会の元職員に 感謝申し上げる。 引用文献 伊丹市総合政策部政策室 編(2011) 伊丹市総合計画(第  5 次). 伊丹市 , 兵庫 . 林弥栄 編(1983) 日本の野草 . 山と渓谷社 , 東京 . 内村勝則(1992)伊丹の自然第 1 巻 : 123-124. 伊丹市  立博物館 , 兵庫 . 伊東明・名波哲 (2006) 近畿における雑種タンポポの分  布状況 . タンポポ調査・近畿 2005 調査報告書:52- 59, タ ン ポ ポ 調 査・ 近 畿 2005 実 行 委 員 会 , 大 阪 . 伊東明・名波哲・福西洋一・森本美樹(2011)西日本に  おける雑種タンポポの分布状況 . タンポポ調査・西日  本 2010 調査報告書:40-43. タンポポ調査・西日本  2010 実行委員会 , 大阪 . 鈴木武(2011)各府県別の調査報告 - 兵庫県 . タンポポ  調査・西日本 2010 調査報告書:40-43. タンポポ調査・  西日本 2010 実行委員会 , 大阪 .

図 3 伊丹市内におけるタンポポ類の分布 図 4 カンサイタンポポが分布していた場所 図 5 外来タンポポが分布していた場所民家・マンション3 ヶ所(9%)7 ヶ所(21%)施設敷地11 ヶ所(32%)河川敷10 ヶ所(29%)公園3 ヶ所(9%)その他 民家・マンション9 ヶ所(12%)25 ヶ所(33%)施設敷地4 ヶ所(5%)河川敷7 ヶ所(9%)農地12 ヶ所(16%)公園1 ヶ所花壇(1%)12 ヶ所(16%)道路沿い5 ヶ所(7%)その他N=34 N=75

参照

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