教授行動が子どもの学習に及ぼす影響 : 教師の親和的・個別的かかわりの視点から
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(2) 同一の1人の授業者が,実験学級では,授業. た個別的なかかわりを表している因子「親和的. 中「①できるだけひとりひとりに笑顔で明るく. 個別的かかわり」と,客観的アドバイスによる. 接し,賞賛や励ましの言葉がけをする」「②机間. 個別的なかかわりを表している因子「客観的個. 巡視をし,生徒ひとりひとりの作品をよく見て. 別的かかわり」に分けて考えられる。2要因分. 回る」,「③課題プリントを次回の授業前に提出. 散分析を行ったところ,第1因子「親和的個別. させ,点検して返す」という教授行動を行った。. 的かかわり」においては,学級の主効果,性の. それが実験の目的にかなった行動であるかどう. 主効果,及び,学級×性の交互作用が有意であ. かを,他者(同室する美術教師)が観察をし確. り,下位検定の結果,実験学級Bの男子は他の. 認した。. 学級の男子よりも有意に平均値が高く,この因. 授業後の測定. 子の教授行動を多く受けとめていたが,女子で. (1)生徒の美術に関する認知の測定:授業前. は学級間の差がないことが示された。第2因子. の測定で用いた生徒の美術に関する認知9項目. では,性の主効果のみが有意であり,女子が男. を用い,それぞれ5段階評定で回答を求めた。. 子よりも平均値が高く,教師の教授行動をより. (2)教授行動に対する認知の測定=授業者の. 多く受けとめていた。. 教授行動に対する生徒の認知を,12項目を用い,. 予測された方向での教授行動の認知がなされ. それぞれ5段階で回答を求めた。. なかった原因として,授業以外の授業者のかか. (3)美的判断力の測定:「美術鑑賞テスト」を,. わり方が,大きく影響を及ぼしているのではな. 授業前の測定と同じ要領で実施した。. いかと考えられる。「③課題プリントを次回の授. 美術作品評価. 業前に提出させ,点検して返す」という教授行. 完成した全員の作品を,美術担当教師(3人). 動を生徒がどのようにうけとるかの違いが大き. がそれぞれ個別にA・B・Cの3段階で評価し. かった可能性が考えられる。本研究の実験授業. た。. は6月から7月にかけて行ったものであるが,. 結果と考察. この時期が,研究結果に何らかの影響をもたら. 親和的・個別的かかわりの多い教授行動で生. した可能性もある。また,課題プリントの未提. 徒仁接すれば,美術の授業が好きになる生徒が. 出者への対応も授業者側の問題として考えられ. 増え,また,その学級の生徒の美術作品の評価. る。. は高くなり,美的判断力も高くなると予測され. 本研究結果では,教師の親和的個別的かかわ. たが,予測されたような影響は,いずれの従属. りの重要性について検討したが,本研究でとり. 変数においても示されなかった。. あげた以外の教授行動や生徒の要因についても. 本研究において予測された結果が示されなか. 重要な検討課題である。今後,肯定的認知の授. った最も大きな要因は,美術に対する認知や学. 業経営のあり方を考える上からも,十分に検討. 習成績を変化させる媒介となるべき教授行動の. を進めたい。. 認知が,予測された方向になかったことにあっ. 主任指導教官(浅川潔司). たと考えられる。教授行動に対する認知では,. 指導教宮(横川和章). 親和的で,受容的・共感的な態度的要件を備え.
(3) 平成11年度. 学位論文. 教授行動が子どもの学習に及ぼす影響 一教師の親和的・個別的かかわりの視点から一. 兵庫教育大学大学院修士課程. 幼児教育専攻. M98261K. 山本 真由美.
(4) 問題. 1. 方法. 7. 結果. れ. 考察. 23. 引用文献. 27. あとがき. 29. 資料. 30.
(5) 本研究は,生徒に対する教師の親和的手がかりの高低や個別的かかわりの多 少が,生徒の学習意欲や学習成績にいかに影響するかを,教師の教授行動に, 実験的操作を導入することによって検討することを目的とした。. 教師の指導行動は,教師が意図する・しないに関わらず,児童・生徒にさま ざまな影響を与える。1日の生活時間の多くを教室の中で過ごしている児童・ 生徒に,教師がどのような指導観あるいは指導態度に基づいて対応するかによ って,教師の指導行動はかなり異なり,その違いは,直接的にあるいは児童・ 生徒の認知を介して間接的に,児童・生徒の学級活動に大きく影響すると予想 される。もちろん,教師の指導態度や指導行動が児童・生徒の学習に及ぼす影. 響に関しては,すでに多くの指摘があり,最近は実証的な研究も進められてい る。そこで,教師の指導行動の親和的かかわりと個別的かかわりに視点を置き, まず,教師の親和的かかわりに関レて論を進める。. ゴードン(1985)は,受容できる教師と受容できない教師という「受容」と いう概念を用いて,教師の指導態度について説明している。児童・生徒の行動 が教師として受容できる行動である場合,彼らは,児童・生徒の言動を受け入 れ肯定的感情を抱き,受容できない行動である場合は,受け入れられない否定 的感情を持ってしまうと述べている。これは,教師の「受容」という窓の大き さによって,児童・生徒への肯定的認知に差が生じるということである。さら にゴードン(1985)は,教師に受容されると,児童・生徒はあるがままの自分を. 受け入れ,自分の価値に目覚め,かくれた可能性を開花させると明言し,児童 ・生徒は,教師に受容されているその過程で大きな影響を与えられるようにな るものだと示唆している。ただし,受容とは,相手のメッセージを受けとめる だけではなく,受容していることを能動的な形で自分から相手に伝える,すな わち「能動的な受容表現」が必要であるとし,そして,こうした教師の態度は,. カウンセラーやセラピストに必要な「治療的コミュニケーション」という技術 であるとも述べている。この受容の概念にポジティヴフォーカスの考え方を関. 連づけた福井(1997)は,児童の自分に対する担任教師の温かくやさしい声か けやがんばりに対する承認,賞賛や励ましが,級友への肯定的認知に効果を及. ぼすことを実証した。このことより,潜在的な能力の存在を教師が認めた上で 一1一.
(6) の激:励・賞賛という言語的行動が,いかに児童・生徒の肯定的変容の大きな手. がかりになるかということがわかる。たとえば上木原(1994)は,言語的報酬 として教師による賞賛をとりあげ,賞賛という言語的働きかけは,そのような 働きかけが行われなかった場合より,内発的動機づけを高めること,また,達 成結果を本人の潜在的な能力に帰属した賞賛は,肯定的感情および当該課題に 対する有能感を高めることを示唆している。同じく桜井(1991)も,児童・生 徒の潜在的能力を認めた上で,努力を求める激励や受容的発言が彼らの動機づ けに有効であることを指摘している。. 浜名・北山(1988)は,教師の指導行動として,教師の方から児童・生徒の内. 面に近づき,児童・生徒を受け入れ,児童・生徒の側に立って,ともに問題に 対処していこうとするような教師態度が重要であることを指摘している。さら に,こうした教師の態度は,ロジャース(1984)がカウンセラーまたはセラピス. トに必要な態度的要件としてあげた,無条件の肯定的な配慮,一致性,共感的 理解の3つの要件を備えた態度であると述べている。そして,学級担任教師が,. 学級の児童・生徒に対して,受容的・共感的な態度を意識して接することで意 図的に増加させれば,教師や級友との関係,学習への意欲などが肯定的な方向 に変化することを実証している。しかし,この研究では,どのような教師行動 から,児童・生徒が教師を受容的・共感的と認知するのかは明確にされていな い。. その問題に対して,浜名・登・吉田(1989)は,動作や身振り,豊:かな表情,. 身体的接触といった児童に対する教師の非言語的行動が,児童が教師の受容的 ・共感的態度を認知する際の手がかりになっていたことを明らかにしている。. また,藤本(1989)や平田(1990)も,小学生あるいは中学生を対象に視覚的 非言語的行動と受容的・共感的指導態度の認知について検討し,ほほ笑み・う なずき・身振り・手振りなどが,教師の受容的・共感的態度を認知する際の大 きな手がかりになっていると指摘している。さらに河合(1992)は,言語的行動. も含めた教師の指導行動に対する認知を問題とし,児童が教師の受容的・共感 的態度をどのような言語的・非言語的行動を手がかりとして認知しているのか について検討している。これらの研究から,教師の指導行動における非言語的 行動の重要性が明らかになっている。したがって,浜名ら(1989)の指摘する ように,言語的行動に比べてセルフ・モニタリングがなされず,意識的なコン トロールが働きにくい非言語的行動に,もっと教師は注意を払う必要があるこ 一2一.
(7) とが示唆される。ネイル(1994)も,非言語的行動は,教室の中で大変重要で. あり,教師も子どもたちも語られたメッセージよりも非言語的行動を信じると 指摘している。. 浜名・北山(1988)の研究を進めて,浜名・松本(1993)は,教師の指導行動が. 児童の学級適応に及ぼす影響を明確に実証しようとした。指導行動として,「児. 童が失敗しても,やさしく励ます」と「児童にいつもあたたかく,やさしく話. しかける」の2つを特定し,学級担任教師が学級の児童に対して,受容的・共 感的な態度に裏打ちされたこれらの指導行動を意図的に増加させれば,当該児 童による教師や級友との関係,学習への意欲などが肯定的な方向に変化するこ とを実証した。. また,教師の親和的手がかりの高低が子どもの学習に及ぼす影響を,実験授 業を通して直接的に明らかにしょうとしたものに,河野(1988)の研究がある。. その実験授業とは,2種類の教師の役割を訓練された男子大学生が,小学校2 年生の教室で,1試行1分の符号問題を10試行与えて,その後,学習課題及び 教師に対する好意度の調査をするというものである。そして,その研究におい て.親和的手がかりの高い(高親和的)教師に接した子どもの方が,親和的手 がかりの低い(低親和的)教師に接した子どもより,学習課題や教師に対する 好意度が高くなり,高い学習成績を収めることを実証している。. これらの研究から,教師の指導態度や指導行動が,児童・生徒の学習や学級 適応にいかに大きな影響を与えているかが窺える。浜名・松本(1993)は,この ような影響過程を:Fig.1のように示している。上述したように,教師の指導態. 度もしくは指導行動と,児童・生徒の学級活動・学級適応との関連や過程を解 明する研究が進められてきたが,そこで明らかにされてきた教師の指導態度も しくは指導行動には,共通する要素があると思われる。浜名・北山(1988)や浜 名・松本(1993)の受容的・共感的態度に裏打ちされた指導行動や,福井(1997). のポジティブフォーカス,あるいは河野(1988)の親和的手がかりの高い教師. 行動は,ともに,教師の方から児童・生徒の内面に近づき,児童・生徒を受け 入れ,児童・生徒の側に立って,親和的かかわりをしていこうという指導行動 であるといえる。. 一3一.
(8) ステガ2. ステガ1. 教師の指導態度. 教師の指導行動. 児童・生徒の学習活動 学級への適応. 砺3. /ステ・ブ4. 教師の指導態度・指導行動 に対する児童・生徒の認知. Fig.1 教師の指導態度・指導行動が児童・生徒の学習活動 学級適応に影響する過程 【浜名・松本 1993】. 次に,教師の個別的かかわりに関して論述する。. 学習意欲を高めるための動機づけとして辰野(1983)は,内からの動機づけ (内的あるいは丙発的動機づけ)と外からの動機づけ(外的あるいは外発的動. 機づけ)の2つをあげ,子どもが内からの動機づけによって学習内容や学習活 動そのものに喜びや興味を感じ,自発的・自主的に学習に取り組むことが望ま. しいと述べている。さらに,動機づけの個別化として,1人ひとりを生かす指 導,各人の能力・適性に応じた指導の必要性をあげている。個人差に応じた指 導は,教授目標,教授内容,教授方法を個別化することによって可能になるが,. 義務教育の段階では,教授の目標や内容の水準に差を設けるよりも教授方法の 個別化に重点がおかれることとなる。教師が,一斉授業のなかでいかにして個 を生かすか,個別的かかわりができるかは,教師の教授行動にかかってくる。. また,ブロフィ・グッド (1985)は,教師は1底ひとりの児童・生徒に対し て個別的に行動するべきであることを強調している。全ての児童・生徒が教室. で平等な処遇を受けるということはできない。全ての生徒に対して画一的に計 画されるどんな方略も,多くの生徒には失敗に終わってしまうであろうという ことである。他の児童・生徒よりも速く学習する児童・生徒もいれば,比較的無. 口であるが聞くことによって学習し,聞いた内容を表に出さないが積極的に評 価する児童生徒もいる。全ての生徒に対して同じ目標を与えるのと同じように,. 生徒に平等な成績を強制することは,非常に不公平で好ましくない比較の原因 一4..
(9) となり,結果的に,多くの生徒の自信とやる気をむしばむことになると述べて いる。さらに,浜名(1988)は,教師は「十把一からげ」的な対応をするので. はなく,1人ひとりの児童・生徒の現在の状態や長所・短所,特徴,要求,興 味などを十分把握し,それにきめ細かく対応していかなければならないと提言 している。. これらの指摘は,すべて個別的なかかわりの重要性を論じているといえよう。. 教師の指導行動という点から考えると,大きく2つのことを意味していると思. われる。1つは,個々の児童・生徒1人ひとりに対して,教師行動が親和的あ るいは受容的・共感的であると受け取られるような個別的な対応が必要である. ことである。そして,もう1つは,個々人の個性や適性等に応じた個別的な指 導が必要であるということである。. さて,上述したこれらの研究は,ほとんどが小学校の教師,児童を対象とし ている。たしかに平田(1990)は,中学生を対象としているが,どのような教 師行動から受容野・共感的認知がなされるかを検討するにとどまり,実際に,. 受容的・共感的な態度に裏打ちされた指導行動が生徒の学習に及ぼす影響を明 らかにしていない。岸田(1983)は,小学生から中学生,さら’に高校生へとの,. 子どもの心身の発達成長の変化は,教師への欲求や期待の発達的変化であり,. 子どもの教師への認知・態度は固定的なものでなくて,学年段階とともに発達 的に変化すると述べている。小学校に入学したばかりの子どもは依存性が強く 教師は絶対的な存在であるが,中学年,高学年になるにつれ変化し,また中学 校では,学級担任制から教科担任制に変わって,学習時間毎に個性の違うさま ざまな教師に接触するので,中学生は,小学生斯とは非常に異なった教師認知 ・態度を形成することは予測できる。しかし,親和的かかわり,あるいは受容 的・共感的な指導行動は,小学生だけに限るわけではなく,どの学年段階にお いても,例えば中学生・高校生においても,重要な教師のかかわり方であると. 考えられる。そこで,本研究では,中学生を対象に教師の指導行動が及ぼす影 響について検討する。. さらに,先行研究では,授業の中での指導行動が児童・生徒の学習に及ぼす 影響についての研究がほとんどない。浜名・登・吉田(1989),藤本(1989),. 平田(1990),河合(1992)は,授業中の教師行動を扱っているが,上述したよ. うに,どのような指導行動から受容的・共感的認知がなされるかを検討するに とどまり,実際にそのような指導行動が生徒の学習に及ぼす影響を明らかにし 一)一.
(10) ていない。また,福井(1997),浜名・北山(1988),浜名・松本(1993)は,小. 学校の担任教師の指導行動を扱っており,特定の授業を扱ったものではない。. 中学生の学習に及ぼす指導行動を考えるならば,教科担任制であることを踏ま えて,個々の授業の中での指導行動を検討することが必要と思われる。先に述 べた研究の中で,特定の授業場面を扱ったものに河野(1988)がある。しかし. この研究は,通常の授業ではなく,課題場面である。小学生に面識のない模擬 教師が実験教示者となり実験授業を行っているが,初対面でしかもわずかの時 間だけのかかわりで結果に妥当性が認められるものなのか,しかも,実験教示 者は,演劇を勉強している大学生で教師役の訓練を受けたとは言うものの,そ の役割が確かに行われているかどうかの確認の評価を行う必要がある。 そこで,これらの疑問点を課題とした上で,本研究では,特定の授業(美術). における教師の指導行動に焦点を当て,子どもの学習に及ぼす影響を検討して いくこととする。また,教師の指導行動というのは,本来学校生活一般をさし,. 幅広い意味を包含しているものと考えられるが,本研究では,授業における教 授行動として限定してとらえていくこととする。. 以上のことから,本研究では,中学生の美術の授業を対象に,親和的・個別 的かかわりを意図した教授行動が生徒の学習に及ぼす影響を,実験授業を通し て直接的に検討することを目的とする。具体的に言うと,本研究で導入した教. 授行動は,「①できるだけ1人ひとりに笑顔で明るく接し,賞賛や励ましの言 葉がけをする」,「②机間巡視をし,生徒ひとりひとりの作品をよく見て回る」,. 「③課題プリントを次回の授業前に提出させ,点検して返す」という3点であ る。①と②は,親和的かかわりをできるだけ個別的対応の中で行うこと,そし て②と③は,個別的な指導をできるだけ行うことを意図した教授行動である。 したがって,教師の親和的・個別的かかわりの態度に裏打ちされたこれらの教. 授行動を意図的に増加させれば,その教授行動に接した生徒は,美術の授業を 好きになり,意欲的に取り組み,また,その生徒の美術作品は,よりすぐれた 美術作品になると予測される。. なお,本研究では,中学校の美術の授業を扱った。美術は,国語や数学など のように知的能力を反映する教科ではなく,児童・生徒の学習意欲が,課題遂. 行とより直接的に結びつきを持っていると思われる。したがって,本研究で扱 う教授行動の影響がより強く表れてくると考えたからである。. 一6一.
(11) 方 法 研究対象 対象となったのは,兵庫県龍野市の公立中学校の1年生4クラス149人(男 子81人,女子68人)の生徒である。実験授業は,中学校の美術の授業とし,実 験授業を行う授業者(筆者)と面識のない1年生を対象とした。その学年は,. 2名の美術科担当教師が2クラスずつ担当しているので,実験学級・統制学級 のどちらのクラスにも,それぞれの担当教師の学級が入るようにクラスを分け,. 実験学級2クラス,統制学級2クラスとした。事前または事後の測定において 欠席した生徒及び質問紙の回答が不備な生徒15人を分析データから除外し,男 子71人,女子63人を分析の対象とした。. 最終的な分析対象となった各学級の人数は、実験学級Aは35人(男子19人、 女子16人),実験学級Bは31人(男子15人、女子16人),統制学級Aは32人(男 子17人、女子15人),統制学級Bは36人(男子20人、女子16人)であった。. 実験期間. 授業が行われたのは,1999年6月∼7月の問で,授業時数は各クラス8時間で ある。そのうちの最後の1時間は,授業後の測定の時間とした。授業は,特別 に変更をせず普段どおりの時間割で行った。. 授業前の測定. 実験授業を行う前に,4学級の全生徒を対象に次の2つの測定を行った。測 定は,各クラスの美術科担当教師が教示者となり,学級ごとに集団的に行った。 なお,生徒の回答は記名とした。. 《1)生徒の美術に関する認知の測定:生徒が美術に関して持っている興味や 意欲の程度を,「あなたは,美術が好きですか」「美術の授業は,楽しいです. か」など9項目に,「小学校の時,図画工作は好きでしたか」(この項目は以. 下の分析には用いていない)を加えた10項目で,それぞれ5段階(とてもそう である,わりとそうである,どちらともいえない,あまりそうではない,ぜん ぜんそうではない)で評定を求めた。. (2》美的判断力の測定:美的判断力の測定には,『美術鑑賞テストー無彩 色デザイン判断テストー』(日本文化科学社)を使用した。この「美術鑑賞テ. スト」は,三苫・斎藤・茂木(1965a)によって,デザインの基礎となる美的 判断力を評価するために,アメリカの「グレイブス・デザイン・判断テスト」 .7一.
(12) を範として作られたものである。また,この「美術鑑賞テスト」は,石崎 (1996)によってすでに信頼性と妥当性に関しては考察済みである。なお,こ. れは,デザインの基礎となる美的判断力の一側面として,無彩色,抽象的図形 における構成原理としての秩序感,すなわち,統一,変化,均斉,均衡,律動, 比例,調和,対立,強調などの秩序感を測定しようと試みたものとされている。. テストは44の問題からなり,各問題はA・B・Cの3つの作品によって構成さ れている。その中から,研究対象者の美感に訴えて,最も感じの良いと思うも のを選択させるものである。テストの実施方法は,『美術鑑賞テスト手引き』. (三苫・斎藤・茂木,1965b)にある程度準拠し,44枚の問題用紙を随時めく り,最も感じの良いと思うものの記号に○をつけていく方法で行った。. 操作する教授行動 実験学級・統制学級とも同一の1人の授業者が授業を行った。実験学級と統 制学級の違いは次の点である。実験学級では,授業中「①できるだけひとりひ とりに笑顔で明るく接し,賞賛や励ましの言葉がけをする」「②机間巡視をし,. 生徒ひとりひとりの作品をよく見て回る」という教授行動を,意識して多く行 った。さらに実験学級では,「③課題プリントを次回の授業前に提出させ,点. 検して返す」という教授行動を行った。実験授業の中で1度だけ課題プリント を課題として出し,授業者が点検し,提出したその日に終会で個別に返した。 統制学級では,課題プリントは次の授業に持って来るという形をとった。. 教授行動のチエツク 授業者の教授行動が実験の目的にかなった行動であるかどうかを,他者(同 室する美術教師)が観察をし確認した。授業者の教授行動の確認は,「机問巡. 視が多い」「ひとりひとりに対することばがけが多い」など7項目を,それぞ れ7段階(すごくあてはまる,わりとあてはまる,少しあてはまる,どちらと もいえない,少しあてはまらない,わりとあてはまらない,ぜんぜんあてはま. らない)で評定した。なお,この評定は,1時間の授業ごとに行った。したが って,各学級それぞれ7回の評定がなされた. 授業の内容 1年生の美術の年間指導計画をかんがみて,授業は,生徒に興味を持たせ, 発想・構想・仕上げ・完成までの充実した活動をさせ,しかも研究目的にかな う教授行動がとりやすい美術の授業として,「表現技法(モダンテクニック). のいろいろを体験させ,その技法を使ってイメージをふくらませながら季節を .8..
(13) 表現すること」を課題とした。その作品は,B5∼A4の画用紙を自己選択さ せ,四季のうち好きな季節(春夏秋冬のいずれかひとつ)を選び,表現技法の. 特徴を生かして季節感を効果的に表現させた。そして,その作品をB4の台紙 に貼り付け,季節の文字をレタリングし完成作品とした。全7時間の授業の流 れは,Fig.2に示すとおりである。なお,「下絵を描く」の課題プリントの提 出は,構想を練る段階で行った。. 導入. 展 開(発想・構想・制作). 2時間. まとめ. 1時間. 4時間. il 表i i l ユ. 現ヨ 1. i 技i、. i体主簿 ヨ. iす 9. :. :る. !. :. 口 :. 下. 表. 想. 絵. 現. を. を. を. 練. 描. す. i鑑成 l l :. る. く. る. i賞さi l i. ヨ. i験 i l i. i: 作i i. 構. : ロロl. i をi. iすせ 1. 1. !. i. :. lる. i. …. l. i. Fig.2 美術の実験授業の学習過程. 授業後の測定 7時間の実験授業を実施した後,実験学級と統制学級の全ての生徒に対し,ゴ 授業後の測定を行った。測定は,実験授業における教授行動の質問が含まれて いるので,授業者が対象であることを明確にするため,筆者が教示者となり最 後の1時間を使って行った。測定内容は以下の通りである。 (1》生徒の美術に関する認知の測定:授業前の測定で用いた生徒の美術に関 する認知9項目を用い,それぞれ5段階評定で回答を求めた。 《2》教授行動に対する認知の測定:授業者の教授行動に対する生徒の認知を 「先生は,わたしの気持ちをわかろうとしてくれる」「先生は,作品を1人1 一9一.
(14) 人よく見てくれる」などの,12項目を用い,それぞれ5段階(とてもそうであ る,わりとそうである,どちらともいえない,あまりそうではない,ぜんぜん そうではない)で回答を求めた。. (3》美的判断力の測定:「美術鑑賞テスト」を,授業前の測定と同じ要領で 実施した。. 美術作品評価. 完成した全員の作品を,美術担当教師(3人)がそれぞれ個別にA・8・Cの 3段階で評価した。. 。10。.
(15) 結 果 授業前の美術に対する生徒の認知. 授業前の「美術に対する生徒の認知」に関する9項目について,「とてもそ. うである」を5点,「ぜんぜんそうではない」を1点として得点化し,平均値 を学級別・性別に示したものがTable 1である。項目毎に,学級×性の2要因. の分散分析を行った結果,全ての項目で学級の主効果は有意でなかったが,9. 項目中7項目においては性の主効果が有意であり,4項目においては,学級× 性の交互作用が有意であった。9項目の主成分分析を行ったところ,全ての項 目において,.40以上の第1主成分への高い負荷量を示した(説明率は51.17%)。. そこで,これらの項目の合計点を,美術に対する総合的な認知得点とした(α 係数は.87)。この美術に対する総合的認知得点の平均値は,学級別,性別で,. T翻b董e1に示してある。2要因分散分析の結果,性の主効果及び,学級×性の. 交互作用が有意であり,下位検定の結果,実験学級Aと統制学級Bにおいて性 差が認められた。以上のことから,授業前の美術に対する認知において,女子 の方が肯定的に捉えている傾向があり,その性差の様相が学級によって異なる ことを示している。そこで,以下の分析においては,学級と性を要因として分 析を進めていくことにする。. 授業前の美的判断力 石崎(1996)による「美術鑑賞テスト」項目の分析において,信頼性と妥当. 性が確認された13項目を分析に用いた。各項目に対して正解を1点とし,13項 目の合計点を美的判断力得点とした。学級別・性別に平均値を示したものが T3ble 2である。美的判断力の2要因分散分析を行ったところ,いずれの主効 果及び交互作用も有意でなく,学級差,性差は認められなかった。. 教授行動の検討. 授業者の教授行動が実験の目的にかなった行動であるかどうか,7つの教授 行動に対する同室した美術教師の評定をもとに検討した。「すごくあてはまる」. を7点,「ぜんぜあてはまらない」を1点として,各学級の7回の授業の平均 値を示したものがhble 3である。実験学級においては「①できるだけひとり ひとりに笑顔で明るく接し,賞賛や励ましの言葉がけをする」「②机問巡視を し,生徒ひとりひとりの作品をよく見て回る」という教授行動が意識的に多く. とられた。項目1,2,5,6,7は,このような教授行動に対応した項目で .11一.
(16) Table 1. 項. 授業前の美術に関する生徒の認知. 目. 1.あなたは美術が好きで. 男. すか. 実験学級. 統制学級. A.. A. B. 3.58 3.40 (1.02)(0.99). 女. 4。06 3.25 (1.00)(0.93). 2.中学校に入って、小学. 校の時より美術が好き になりましたか. 男. 3.11 3.33 (0.99)(0.90). 女. 3.88 3.13 (0.81)(0.96). 3.美術の授業は、楽しい. 南. ですか. 3.21 3.60 (0.98)(O.91). 勢. 4.31 3.50 (σ.70)(0.97). 4.美術の授業は、おもし. 男. ろいですか. 2.95 3.40 (0.85)(1.06). 女. 4.00 3.31 (0.82)(0.95). 5.美術の授業が、待ち遠. 男. しいですか. 2.37 3.13 (1.07)(1.06). 女. 3.50 2.88 (0.89)(0.72). 6.美術の授業は、時間が 早くたつと感じますか. 男. 3.84 3.87 (1.34)(1.06). 女. 3.75 3.44 (t13)(1.03). 7.美術の授業は、門門に. 男. 受けていますか. 3.58 3.47 (0.90)(0.74). 女. 4.19 3.94 (0曹75)(0.77). 8.美術の授業は、自分か ら進んでやっていると. 思いますか. 男. 3。16. 3.13. (1.12)(0.83). 女. 3。44 3.06 (1.09)(0.93). 9.家でも、美術作品のア ィデァを考えてみよう. と思ますか. 男. (0.99)(1.03). 女. 総合的な認知. 2.26 2.27. 男. 女. 2.94 2.88. B. 2.94 3.00. 分散分析結果 学級. 交互作用. 4.65孝. 1.24. (1.30)(0.86). 3.33 3.81 (1.05)(1.05). 3.29 2.65. 1.08. 4.42串. 4.17ホ事. (0.77)(0.81). 3.07 3.63 (1,10)(0,81). 3.29 3.15. 1∂21 10.90ホ率 3畳65事. (1.05)(0.81). 3.40 4.19 (1.12)(0.91). 3.00 2.95. 0卿73. 9.39串串 2.39+. 1.13. 9.42塗ホ 4.97心事. 0。57. 2.38. (1.06)(0.76). 3.27 3.75 (1.03)(1.13). 2.65 2.50 (1。06)(0.83). 2.67 3.56 (0.82)(0.81). 3.29 2.75. 3.90掌. (1.45)(1.21). 3.67 4.19 (1.29)(0.98). 3.88 3.40. 1.33 11.54率拳 0.31. (0.78)(0.82). 4.13 3.94 (0.74)(0.77). 3.18 2.80. 0.521.022.06. (0.73)(0.95). 2.87 3.56 (0.99)(0.81). 2.24 2.20. 0.55 13。39事率 0.70. (1.03)(1.06). 2.60 3.31. (1.12)(1。02). (1.30)(1.14). 28.05 29.60. 27.76 25.40. (6.06)(5.64). (6。32)(5.99). 34.06 29。38. 29.00 33.94. (5.48)(5.34). (7.02)(5.71). 1.13. ():SD, 榊:p<.01,事:p<.05,+:p<.10 注)項目番号は,事後の測定の番号に統一してある。. 一12一. 性. 2.65+. 14.10寧拳 3.91宰‡.
(17) Table 2 実験学級 A B. 男2.843.60 (1.71) (1.80) 女3.693.00 (1.92) (1.63). 授業前の美的判断力 分散分析結果. 統制学級 A B 2.47. 3.90. (1.50). 3.40. 学級. 性. 交互棚. 1.46. 0.72. 1.30. (1.77). 3.81. (1.99). (2.37). ():SD. Table 3. 教授行動 1.下間巡視が多い. 教授行動の確認. 実験学級. 統制学級. A. A. 6.43. B 6.71. 5.86. (0.79)(0.49). 2.ひとりひとりに対する ことばがけが多い 3.全体へのことばがけが. 多い 4.全体に対して注意をし たり怒ることが多い 5.ひとりひとりに丁寧に. 接している 6.ひとりひとりに笑顔で. 明るく接している 7.ひとりひとりにやさし. く接している. 5.71 6.14. 5.00. F値. 多重比較(しSD法}. 6.00孝*. 実A,実B > 統B. 9.54串串. 実A,実B > 統A,絞B. (1.07)(0.82). 3.71 4.14. (1.38)(0.69). 3.14 4.86. B. (1.11)(0.69). 4.57. 5.29. 3.55事. 実A 〈 実B,統B. q.68)(1.07) (1.40)(0.95). 1.71 2.14. 2.71 2.71. (0.95)(1.07). 6.14 6.14. 4.14 5。00. (0.90)(0.69). 5.29 5.14 6.14 5.29. 9.43桝. 実A,実B >. 短A. 実B>漁 実A> 辣B > 統A. (0.95)(O.49). 4.00 4.14. (0.90)(0.95). 5.98率零. (1.46)(1.00). 3.29 4。29. (0.76)(0.90). 1.02. (1.38)(1.60). 9.OO率*. 実A,実B > 統A, 統B. (1.15)(0.38). ():SD,榊曾p<.01,事●p<.05. ある。これらの項目では,いずれも学級の主効果が有意であった。多重比較の. 結果,項目2と項目7の教授行動は,実験学級が統制学級に比べ多くなされて. いたことを示している。項目1,5,6は,多重比較においては有意でない部 分もあるが,その方向性は全て予想されたものであった。したがって,授業中. の教授行動に関する実験的操作はほぼ成功したと言える。なお,項目3、4は 本研究で特に意図した行動ではないが,統制学級に有意に多いという結果は明 確には示されていなかった。 一13一.
(18) 教授行動に対する生徒の認知 実験授業後に実施した質問項目「10.先生は,わたしの気持ちをわかろうと してくれる」から,質問項目「21.先生は,わたしがすることに,正直に意見 を言ってくれる」までは,「教授行動に対する生徒の認知」に関する項目であ った。「とてもそうである」を5点,「ぜんぜんそうではない」を1点として, 学級別・性別に平均値を示したものがhb真e 4である。ほとんどの質問項目に. おいて,性の主効果が有意であった。また,1部の項目では,学級の効果も認 められるが,実験学級の方が統制学級よりも平均値が高いことを示す結果では なかった。. 教授行動の認知に関する11項目を因子分析(主因子法,プロマックス回転). した結果,2因子からなると判断できた(説明率は53.97%)。第1因子は, Table 5に示すように,「13.先生は,わたしをやる気にさせてくれる」「10.. 先生は,わたしの気持ちをわかろうとしてくれる」などの項目に負荷量が高く,. 親和的で,受容的・共感的な態度的要件を備えた個別的なかかわりを表してい. ると考えられる。第2因子は「19.先生は,授業中よく見て回ってくれる」 「20.先生は,作品についてのコメントをしてくれる」などの項目に負荷量が 高く,客観的アドバイスによる個別的なかかわりを表していると言えよう。そ. こで,第1因子を「親和的個別的かかわり」の因子,第2因子を「客観的個別 的かかわり」の因子とよぶことにする。各因子に負荷量の高い項目の合計点(因. 子1は項目10∼18の合計点,因子2は項目19∼21の合計点)を算出し,各因子 得点とした(それぞれのα係数は,.89と.74)。学級別、性別に平均値を示し たものがTab置e 6である。. 2要因分散分析を行ったところ,第1因子「親和的個別的かかわり」におい ては,学級の主効果,性の主効果,及び,学級×性の交互作用が有意であった。. 下位検定の結果,実験学級Bの男子は,他の学級の男子よりも有意に平均値が 高く,この因子の教授行動を多く受けとめていたが,女子では学級間の差がな いことが示された。また,実験学級Bを除いて,女子の方が男子よりも,平均 値が高かった。第2因子では,性の主効果のみが有意であり,女子が男子より も平均値が高く,教師の教授行動をより多く受けとめていた。. 先の分析において,授業中の教授行動では,ほぼ意図された教授行動がとら. れていたことが確認されたが,以上の結果は,生徒の受けとり方は必ずしもそ れと対応していないことを示している。すなわち,実験学級Bの男子において 一14。.
(19) Table 4. 教授行動に対する生徒の認知 実験学級 A. 目. 10.先生は、わたしの気 持ちをわかろうとし てくれる. 男. B. 2.95 3.80 (1.03)(1.15). 女. 3.56 3.56 (0.63)(O.73). 11.先生は、失敗しても やさしく励ましてく れる. 男. 3.11 3.87 (1.05)(1.13). 女. 3.69 3.88 (0.79)(0.96). 12.先生は、個人的にこ とばをよくかけてく れる. 男. 3.05 3.53 (1.03)(1.30). 女. 3.31 3.13 (0.87)(1.31). 13.先生は、わたしをや る気にさせてくれる. 男. 2.79 3.93 (0.98)(0.88). 女. 3.56 3.63 (0.73)(0層89). 14.先生は、わたしが相 談ずると、気持ちよ く相談にのってくれ. 男. 女. 3.06 3.75 (0.68)(1.06). る. 15.先生は、作品を一人 一人よく見てくれる. 2.84 3.87 (1.07)(0.83). 男. 3.84 4.33 (0.90)(0.90). 女. 4.00 4.63 (0.97)(0署72). 16.先生と話していると、 楽しくなる. 男. 2.42 3.47 (0.84)(O.83). 女. 3.25 3.69 (0.58)(0.87). 17.先生と話していると、 やってみようと思う. 男. 2.74 3.80 (0.99)(0.86). 女. 3.44 3.63 (0.73)(0.62). 18.先生は、わたしがが んばっているのを、 わかろうとしてくれ. 男. 女. 3.38 3.69 (0.72)(0.79). る. 19.先生は、授業中よく 見て回ってくれる. 2.95 3.80 (0.97)(1.08). 男. 4.21 4.47 (0.92)(0.64). 女. 『4.44. 4.69. (0.73)(O.60). 20.先生は、作品につい. 男. ての:コメントをして. くれる. 4.16 4.27 (0唇76)(0.88). 女. 4.50 4.63 (0.73)(0.62). 21.先生は、わたしがす ることに、正直に意 見を言ってくれる. 男. 3.47 3.93 (0.90)(0。96). 女. 4.06 4.00 (0.85)(0 82). 分散分析結果. 統制学級 A. B. 学級. 2.76 3.25. 1.31. 一交互馬. 9.69串事 3.76事. (1.15)(0.72). 4.00 3.56 (0.85)(0.73). 3.00. 3.15. 1.38 12.98率事 1.78. (1.17)(0.81). 4.13 3.88 (0.99)(0.89). 2.76 3曹00. 0.28. 1.65. 1.38. (1.03)(0.97). 3.40 3.50 (1.24)(1.10). 2.47 3.00. 4.94零*12。23事零 3.18零. (0.94)(0.97). 3.40 3.81 (0.99)(0.83). 3.00 3.10. 4.67串事 6.91事 2.40+. (1.22)(0.91). 4.13 3.63 (0.92)(0.89) 3.5・9. 3.60. 2.56+ 10.62掌牟 1.39. (1.23)(1.05). 4.60 4.25 (0.63)(0曾86). 3.00. 3.15. 4.85宰串16.79宰事 0.80. (1.12)(0.81). 3.80 3.81 (1.08)(0.83). 3.00 3.00. 2.84率 12.24率傘 2.63+. (1.32)(0.79). 3.73 4.00 (0.80)(0.82). 3.41 3.20. 3。67串 5.14事 1.19. (1.18)(0.77). 4.13 3.56 (0.83)(0.63). 4.29 4.20. 1.10. 7.49事零 0.41. (0.99)(0.77). 4.87 4.56 (0.35)(0.51). 4.12 3.90. 0.40 16.95率率 0.75. (0.86)(1.02). 4.80 4.69 (0.41)(0.48). 3.76 3.70. 1.29 12.61寧率 1.13. (1.15)(0.80). 4.60 4.38 (0.63)(0.81). ():SD,零電’p<.01,串.p<.05,+●p<.10 15一.
(20) Table 5. 「教授行動に対する生徒の認知」の回転後の因子行列. 因 子. 教. 授. 行. 2. 1. 動. 10.先生は、わたしの気持ちをわかろうとしてくれる. iO。73 } i [ i }. 11.先生は、失敗してもやさしく励ましてくれる. 0.25. iO.70i i l O.28 } i. 12.先生は、個人的にことばをよくかけてくれる. く. ミ. i. l. 13.先生は、わたしをやる気にさせてくれる. iO.75}. iO.57 i. i i. i i. O.24. 0.14. 14.先生は、わたしが相談すると、気持ちよく相談にのってくれる. iO・52iO・42. 15.先生は、作品を一人一人よく見てくれる. iO.57 }. i. 16.先生と話していると、楽しくなる. i. 1. i. く. く. iO.641. i. i. 17.先生と話していると、やってみようと思う. i. 0.39. 0。39. i. iO.71i O.25. 18.先生は、わたしががんばっているのを、わかろうとしてくれる. ! i i { ミ iO.70 i. O.23. 1,.}.._.__,1. 19.先生は、授業中よく見て回ってくれる. 0.20. i. i. ミ. iO.80 i. }. i. 20.先生は、作品についてのコメントをしてくれる. O.23. iO.79;. 21.先生は、わたしがすることに、正直に意見を言ってくれる. O.37. Lp∴憩」. Table 6. 親和的個別的 かかわり. A 男. 女. 客観的個別的 かかわり. 男. 女. ! i. 教授行動に対する生徒の認知. 26.68. 分散分析結果. 統制学級. 実験学級. 教授行動. i !. A. B. B. 27.00 28.45. 34.40. 学級 3.95き. (5.75) (6.59). (7.28) (6.23). 31.25. 35.33. 33.56. 34.00. (3.99) (5。51). (6.06) (5.11). 11.84. 12.18. 12.67. 性 交互作用 18.47掌率 3.33ホ. 11.8Q. (2.22) (2.02). (2.48) (1.67). 13.00 13.31. 14.27. (1.67) (1.74). (1.22) (1.54). 1.14. 19.35零事 0.98. 13.63. ():SD, 纏’p<.01,孝’p<.05. 16.
(21) は,予想された方向にあったが,女子や実験学級Aでは,教授行動の受けとり かたが統制学級と異なっていなかったと言える。. 美術に対する生徒の認知の変化. 生徒の美術に関する認知9項目について,ポストテストからプリテストの得 点を引き,「美術に対する認知の変化」得点とした。学級別,性別に平均値を まとめたものがTab夏e 7である。どの項目においても,学級の主効果,及び,. 学級×性の交互作用は認められなかった。また,1,2,5,8,9の項目ヒ おいては,性の主効果が有意であり,女子の方が男子よりも得点が高かった。. なお,美術に対する総合的な認知に関しても同様の変化得点を算出し,分散 分析を行ったが,性の主効果のみが有意であり,女子の方が男子よりも肯定的 な方向への変化を示していた(Tab翼e 7)。. 美的判断力の変化 「美術鑑賞テスト」の13項目のポストテストからプリテストの得点を引き, 学級別,性別に平均値を示したものがTable 8である。分散分析の結果,いず. れの主効果,交互作用も有意でなく,美的判断力の変化は認められなかった。 美術作品評価 完成された作品に対する美術教師による評価を得点化し(A:3点,B:2点,. C:1点),3人の評価の相関係数を示したものがTable 9である。3人の評価 者の間は高い正の相関があったので,3人の評価の合計点を美術作品の評価点 とした。その評価点の平均を,学級別・性別に示したものがT油1eloである。. 2要因の分散分析を行った結果,学級の主効果及び学級×性の交互作用は有意 でなかった。性の主効果のみが有意であり,女子の方が男子より平均点が高か った。. 17一.
(22) Table 7. 美術に対する認知の変化. 実験学級 項. 目. 1.あなたは、美術が好き. ですか. .A. (1.22)(1.07). (0.62)(1.18). 2.中学校に入って、小学. 男一〇.470.40. 校の時より美術が好き になりましたか. (1.39)(1。24). 女0,000.50 (0.82)(1.15). ですか. 男一〇.260。20 (1.41)(1.32). 女一〇.310.25 (0.87)(0.68). 曙麟蒙は’おもP. 男0.050.20 (1.18)(1.21). 女0.000,25 (0.82)(0.77). 5.美術の授業が、待ち遠. しいですか. 6.美術の授業は、時間が 早くたつと思いますか. 7.美術の授業は、真剣に. 受けていますか. 男.一〇.16−0.13 (1.07)(1.13). うと思いますか. 一〇.24 −0.10. (3.25)(3.38). 0.66. 0.78. 5.12宰. 0.41. 0.20. 0.60. 1.67. 0.81. 1.51. 0.22. 0.33 0.31 (0.72)(0.87) 一〇.29 −0.30 (1.21)(0.86). 一〇.18. 0.35. 一〇.35. 0.00. (1.27)(1.12). 0.07 0.06 (0.88)(0.68) 一〇.06 一・O.20. 0.80. 6.72串. 0.21. (1.60)(0.83). 0.60 0曾06 (0.63)(0.93). 0.29−0.15. 女1.003.06. 1。84. (1.35)(1.12). (1.26)(0.81). (6.87)(7.51). 0.23. 0.47 0.00. (1.06)(1.03). 男一2.470.73. 1.04. (1.19)(0.82). 男一〇.32−0.07. 女0.630.38. 2.31. (1.54)(1.14). (1.22)(0.45). (1.20)(0.96). 総合的な認知. 一〇.41 −0.35. (1.14)(1.01). 女0.310.56. 1.24. 0.53 0.31. 0.07 −0.25. (1.12)(1.13). 6.52ホ 0.75. (1.19)(0.95). 女0.310.31. 男一〇.160.00. 1.79. (1.62)(1.07). (1.67)(1.42). (1.20)(0.96). 9.家でも、美術作品のア アイデアを考えてみよ. 一〇.47 −0。25. (1.39)(1.46). (0.79)(0.99). 0.15. 0.27 0讐06. (0.75)(0.60). 男一〇。210.13. 5.03事. (0.70)(0.68). 0.33−0.19. 男一〇.420.00. 1.23. (1.16)(0.91). (1.05)(0.98). (0.82)(0.86). 思いますか. 一〇.29 −0.25. 女0.190.31. 女0.000.25 8.美術の授業は、自分か ら進んでやっていると. 分散分析結果. A B 学級 性 交互作用. B. 男一〇.530.00 女一〇.130.25. 3.美術の授業は、楽しい. 統制学級. 0.66. 6.55率 0.82. 1.25. 9.45ホ串0.50. 0.47 0。19 (1.06)(1.11). 一2.00 −1.25 (9.62)(5.46). 3.13 0.56 (5.04)(2.85). ():SD,率事:p<.01,寧:p<.05. 一18一.
(23) Table 8. 0.11 (2.26). 女. A. B. 0.82. 一〇.13. (2.13). (1.64). 0.00 (2.19). 分散分析結果. 統制学級. 実験学級 A B 男. 美的判断力の変化. 一〇.15. (2.13). 性. 交互作用. 0.08. 0.00. 1.36. (2.21). 0.63. 一〇.33. 0.31 (2.06). 学級. (1.86). ():SD. 評価者3名の相関係数. 丁able 9. 評価者A 評価者B 評価者C. Pearson. の相関係数. 評価者A 1.00 評価者B. 0.57榊. 0.50事掌. 1.00. 0.57*掌. 評価者C. 1.00 串掌・. Tab l e 10. 学級別・性別の美術作品の評価得点の平均値. 実験学級 A B 男 女. 5.26. o<.01. 統制学級 A B. 5.33. 5.18. 4.95. (1。28). (1.76). (1.55). (1.15). 7.00 (1コ0). 6.31. 6.53. 6.50. (1.62). (t30). (1.90). 分散分析結果 学級 0.49. 性. 交互作用. 30.41率事 0.40. ():SD,榊’p<.01 19一.
(24) 教授行動の認知と美術に対する認知の関係 教授行動の認知と「授業前の美術に対する認知」,「授業後の美術に対する認 知」,「授業後の美術に対する認知の変化」の相互の関連性を確認するために, ピアソンの相関係数を算出した(Table 11)。なお,教授行動に対しては,2つ. の因子得点を用いて,美術認知に対しては総合認知得点を用いた。「親和的個 別的かかわり」の因子は,「授業後の美術に対する認知」と正の相関関係を持 っている。このことは,教授行動を親和的個別的かかわりだと受けとめている ほど,美術に対して肯定的認知を持っていることを示している。しかし,この 結果には,「授業前の美術に対する認知」が関連しているため,「授業前の美. 術に対する認知」を統制変数として,「教授行動の認知」と「授業後の美術に 対する認知」の偏相関係数を求めた(TaUe 12)。ほとんどのクラスで有意で. あり,教授行動を親和的個別的かかわりと認知するほど,授業後の美術に対す る認知も肯定的であると言える。. Table 11. 「教授行動の認知」と「美術に対する認知」の相関係数. 全 体. 教授行動 r親納受的 牒前の. 男. 統・制 学 級. 実 験 学 級. A. B 女. 男. A. 女 男 女. 男. 0.37零’0.24+0.13. O.31. 0.22. 0.38. 0.16 0.20 0.32. 0.27. 0.25. 0.50+. 0.59喰事0.51皐串0.67率事0.50事. 0.49+. 0.68ホ率. 0.43事寧0.29ホ0.26. 0.20. 0.64纏0.62ホ. 0.30事零0.46串索0.56事. 0.28. 0.23. 一〇.14. 0.34. 0.35. B. 女. 男. 女. 0.48+. 0.69ホ*0.18. 0.38. 0.17. かかわり扇子. 目下蜘. 喀踊朋的. 一〇.15. 0.07. かかわり咽子. r上棚朋的 授難の. 0.50率. 0.74**0.59串串0.36. 0.51零. 0.47+. 0.55事. O.27. 0.48+一〇.01. 0.46+. 0.28. 0.60事. 0.19. 0.19. かかわり二子. 美初諏. 喀雛朋的. 0.26. 0.15. かかわり咽子. 「飾的朋的. 美欄劒 変化. かかわり咽子. 喀舳鯛的. 0.32事串0.15−0.02. 0.14. かか切咽子 *事g. .20一. 吹メD01, 寧.p<.05, +’p<.10.
(25) Table 12 「授業前の美術に対する生徒の認知」を統制変数とした偏相関係数. 全体. A. r親和的弱別的かかわり」因子. と擾業後の美術諺知 「客霞的個二二かかわり」因子. と授業後の美衙認知. B. 実 験 学 級. A. 統制学級. B. 0.51榊0.57幸傘0.69事零0.45+0。47+ 0.68ホ率0.43+ 0.67事事0.25 (68). (60). (16). (13). (12). (13). (14). (12). (17). (13). 0.41事事0.22零*0.14 −O.04 0.63率 0.43 0.59* 0.30 0.19 (68). (60). (16). (13). (12). (13). (14). (12). 0.46事. 0.19. (17). (13). ():人数, 樽’p<.01,ホ’p<.05,+・p<.10. 教授行動の認知と美術作品の評価の関係 先と同様に,「教授行動の認知」と「美術作品の評価」との相関係数を示し たものがhb豆e 13,「授業前の美術に対する認知」を統制変数とした偏相関係 数を示したものがTable 14である。「教授行動の認知」と「美術作品の評価」 との間の関連性は示されなかった。. Table 13. 「教授行動の認知」と「美術作品の評価」の相関係数. 全体. A. 「翌和的図溺的かかわり1因子. と美術作品の評賃 r客観的蝦別的かかわり」因子. と美術作品の評価. 0.11 −0.02. B 0.22. (68). (60). (16). 0.11. 0.06. 0.23. (68). (60). (16). 実 験 学 級. A. 統制 学級. B. 一〇.18 −0.24 0。05 0.43+ 0.22 −0.04 −0.07 (13). (12). (13). (14). (12). (17). (13). 0.22 0.19 0.15 0.04 0.26 −0.09 −0.14 (13). (12). (13). (14). (12). (17). (13). ():人数,+・p<.10. .21一.
(26) Table 14 「授業前の美術に対する生徒の認知」を統制変数とした偏相関係数. 実 験 学 級. 全 体. 男. 女. 男. 統 制 学 級. B. A 女. 男 女. A 男. B 女 男. 女. 陰盟和的個別的かかわり」墨子. 0.03 −0.09. 0.19 −0.71 −0.23 −0.07. 0.29 0.28 0.10 −0。10. と類蜘. (68) (60). (16). (13). (14). 幽客建的個別的かかわり」因子. 0.08 0.01. 0.13 0.02 0.22 0.00. 0。16. (68). (16). (14). と難蜘. (60). (13). (13). (12). (12). (13). (12). (17). (13). 0.30−0.06−0.15 (12). (17). (13). ()二人数. 一22一.
(27) 考 察 本研究は,教師の親和的・個別的かかわりの態度に裏打ちされた特定の教授 行動を意学的に増加させれば,学習意欲や学習成績などが,いかに影響を受け るかを検討することであった。この目的のために,美術の実験授業を行い,授 業後の認知や美術作品の評価を実験学級と統制学級とで比較した。教師が,親 和的・個別的かかわりの多い教授行動で生徒に接すれば,美術の授業が好きに なる生徒が増え,また,その学級の生徒の美術作品の評価は高くなり,美的判 断力も高くなると予測された。しかしながら,予測されたような影響は,いず れの従属変数においても示されなかった。. 本研究での独立変数は,当該学級生徒に対する授業者による親和的・個別的 かかわりの多い教授行動であり,従属変数は,その学級生徒の学習意欲,学習 成績などであった。具体的には,実験学級において,「①できるだけひとりひ とりに笑顔で明るく接し,賞賛や励ましの言葉がけをする」,「②机間巡視を し,生徒ひとりひとりの作品をよく見て回る」,「③課題プリントを次回の授. 業前に提出させ,点検して返す」という3つの教授行動を意図的に多くするこ とであった。このうち,「①できるだけひとりひとりに笑顔で明るく接し,賞 賛や励ましの言葉がけをする」と「②机間巡視をし,生徒ひとりひとりの作品 をよく見て回る」は,授業中に示される教授行動である。実験学級において,. これらの教授行動が多くとられていたかどうかは,同室する美術教師が観察を. することによって確認をしたが,その結果からは,ほぼ意図された教授行動が とられていたことが示された。しかしながら,教授行動に対する認知において は,それと対応するような結果は示されなかった。教授行動に対する認知の程 度を,学級別,性別に吟味したところ,第1因子の「親和的個別的かかわり」. においては,実験学級Bの男子は他の学級の男子よりも平均値が高く,この因 子の教授行動を多く受けとめていたが,女子では学級間の差がないことが示さ. れた。第2因子の「客観的個別的かかわり」では,女子が男子よりもこの教授 行動をより多く受けとめていたのみで,学級間の違いは見られなかった。すな わち,生徒に対するやさしい声かけや賞賛,笑顔での接触,個別的かかわりな どの,実験学級における教授行動は,他者による観察では確認できたものの,. 生徒の認知を通して測定したものにおいては確認できず,また,同じ実験学級 でも異なる結果を示すものであった。これは,教師の教授行動が同じであって 一23一.
(28) も,生徒がその教授行動をどう受け取ったかという認知の仕方が異なっていた ことを意味する。. 以上のことから,本研究において予測された結果が示されなかった最も大き な要因は,美術に対する認知や学習成績を変化させる媒介となるべき教授行動 の認知が,予測された方向になかったことにあったと考えられる。教授行動の 認知と美術に対する認知との相関関係を分析した結果からは,「親和的個別的 かかわり」の因子が,「授業後の美術に対する認知」と正の相関関係を示して いる。また,「授業前の美術に対する認知」を統制変数とした,「親和的個別. 的かかわりの認知」と「授業後の美術に対する認知」の偏相関係数も,多くの 学級で比較的高く有意であり,教授行動を親和的個別的かかわりであると認知. するほど,授業後の美術に対する認知も肯定的であると言える。これらの結果 から考えると,教授行動を肯定的に認知することで生徒の美術に対する認知も 変わっていくという予測そのものは,否定されるものではない。ただし,学習 成績である美術作品の評価とは,そのような関連性は見出されなかった。この ことには,期間の問題や課題の問題が関係していると思われる。. 予測された方向での教授行動の認知がなされなかった原因として,授業以外 の授業者のかかわり方が,大きく影響を及ぼしているのではないかと考えられ る。本研究では,個別的かかわりをより高めるために,「③課題プリントを次 回の授業前に提出させ,点検して返す」という教授行動を導入した。この教授 行動を生徒がどのようにうけとるかの違いが大きかった可能性が考えられる。 美術が好きで作品を少しでもいいものを作ろうと思う生徒にとっては,提出し てアドバイスを受けることを好むが,そうでないものにとっては提出するとい うことに抵抗が加わる。提出を否定的に受け取った生徒にとっては,授業で, 教師の親和的かかわりによる教授行動があったにもかかわらず,教授行動を, 親和的なかかわりとして受け取ることにはならなかったと考えられる。. また,本研究の実験授業は6月から7月にかけて行ったものであるが,この 時期が,研究結果に何らかの影響をもたらした可能性もある。6月には中間考 査が実施され,7月には地区球技大会があり,毎日部活動が白熱する時期であ った。授業中に関しては、そのことが直接には関係したとは思われない。だが,. 課題プリントを忘れ,放課後残って提出することになった生徒は,教師に対す る認知あるいは美術に対する認知が肯定的になるとは考えにくい。実際,実験 学級Aでは,課題プリントの未提出者が多かったが,これも本結果と無関係で 。24一.
(29) はないだろう。さらに,時間割の関係で,同じ実験学級であっても,課題プリ. ントの提出までの期間が異なることになった。実験学級Aは,実験学級Bと比 べてその期間が短く,より負担感を強めたかもしれない。生徒の側に立って考 えるならば、たとえ課題プリントを忘れ,放課後残って提出することになった としても,中間考査や地区球技大会の時期でもなく,放課後部活動に急いで出 なくてもよかったとしたら,課題プリントを提出することにあまり抵抗は無く,. 教授行動に対する認知,あるいは美術に対する認知も変わっていたかもしれな い。. また,課題プリントの未提出者への対応も授業者側の問題として考えられる。 この問題を考える時,ゴードン(1985)の言うところの「受容」の概念がオー バーラップしてくる。すなわち,児童・生徒の行動が,教師として受容できる. 行動である場合,児童・生徒の言動を受け入れ肯定的感情を抱くし1受容でき ない行動である場合,否定的感情を持ってしまい,教師の「受容」という窓 の大きさによって,児童・生徒への肯定的認知に差が生じると指摘しているこ とと重ねて考えることができると思われる(Fig.4)。本研究では,課題プリ ントを期日に提出できた者には,個別にアドバイスをして手渡しで返却したが, 期日に提出できなかった者には,学級の終会で再度提出を促した。その際に,. 授業者が課題プリントの提出に固守するあまり,受容的・共感的な態度的要件 を備えた親和的個別的なかかわりとして,生徒に認知されるような教授行動が とられなかった可能性がある。すなわち,最も基本となる,「①できるだけひ とりひとりに笑顔で明るく接し,賞賛や励ましの言葉がけをする」という教授 行動がとれていなかったかもしれないのである。また,その時の教授行動がど うであったか,言語的行動あるいは,非言語的行動はどうであったかなどの確 認もできていない。そして,もしそうならば,この場面での行動が課題の未提 出者ばかりでなく,同席する他の生徒にも影響を及ぼした可能性をも持ってい る。この時にも,受容的・共感的な態度的要件を備えた親和的個別的かかわり の教授行動をとっていたとしたら,生徒の認知は異なっていたのではないだろ うか。これらのことが,教授行動に対して肯定的な認知がなされなかった原因 と考えられる。したがって,授業者による特定の教授行動という独立変数の操. 作は,それに対する生徒の認知という観点からは,従属変数に与えられた効果 の意味も不明確であると考えざるを得ない。. では,今回の実験で,教授行動を生徒が肯定的に認知するためには,どうす 一25一.
(30) ることが望ましかったのか。上述したように,「③課題プリントを次回の授業. 前に提出させ,点検して返す」という教授行動が大きく起因していると思われ るので,課題の出し方を考える必要があった。端的に言えば,課題プリントを 放課後提出するのではなく,授業内にできる課題の出し方を工夫するというこ とであり,個別指導のあり様を考えることである。これらのことは,教師の授 業方法という実践的な観点からみれば,授業における課題プリントの与え方な. ど授業方法に関しての考慮すべき1つの問題の提起,しいては授業構築そのも のに対するセルフ・モニタリングの警鐘である。. 本研究での教授行動の変化は,浜名・松本(1993)や,河野(1988)の場合と. は異なり,客観的な行動変化として捉えようと試みたが,教授行動に対する生 徒の認知の面での不明確さが残ったので,今後,研究方法を改善して検討を深 める必要がある。また,本研究結果では,教師の親和的個別的かかわりの重要 性について検討したが,本研究でとりあげた以外の教授行動や生徒の要因につ いても重要な検討課題である。今後,肯定的認知の授業経営のあり方を考える 上からも,十分に検討を進めたい。. 品鴨醐. ?Qw・w∴v献品犠残醸∼・w一鞭∼・w織躍∼・w. ?q湾郡胃顎即糖榔冨μ. …………嚢…1…………i霧…………………… ……………………萎……器燃油燃蕨蹴殿嶺靴=葺妻1=・躍漏冒・’胃冨. 躍冨翼. ラ=湘{翼罵冨冨箕薦 翼鳳臨耀嵩漏翼胃闘胃. 怐c 纒羅鞭 躍 饗”胃 翼 冨 郭 冨 胃 調 冨劉亀寓. ゼ 受容できる行動 淵 鰍殿:1:1=勲=灘lll灘≧. 馬. 冨”亀属 躍 胃 罵 罵 躍”躍 胃 罵 冨 胃 翼 冨 胃 罵 篤 翼 罵 翼 瓢 翼 岡. 鞭靴蔓雲甥鶯搬雛綴_號. K 翼 x 犀 属 x 冨 罵 冨. 琵. 蜩Q灘購騨. ____。.__..。怒. @受容できない. @. 受容できない. 行動. @ 行動. イ∫. 生徒への否定的認知が多い. 生徒への肯定的認知が多い Fig.4 生徒を「受容」できる教師の窓. .26一. 【ゴードン(1985)より作成】.
(31) 引用文献 ブロフィ J.E.・グッドT.L.浜名外喜男・蘭 千寿・天根哲治(訳) 1985 教師と 生徒の人間関係一新しい教育指導の原点一北大路書房 (Brophy,」. E.&Good, T。 L. 1974 Tεαc乃εアー、∫加4召漉 R81α’∫oπ5雇ρ5/Cαμ5ε5 α刀‘1 Coπ5明灘ε刀。ε∫. New York:HoIt,. Rinehart and Winston.). ゴードンT.奥沢良雄・市川千秋・近藤千恵(訳) 1985 教師学 小学館(Thomas Gordon 1985 工Eτ」T2αc乃εr .碓cf∼v召π8∬ 7rαどπ’〃畠). 浜名外喜男1988 一人ひとりを生かす教育指導 浜名外喜男 (編) 教師が変われば子 どもも変わる 一望ましいピグマリオン教育のポイソトー 北大路書房 Pp.1−9.. 浜名外喜男・北山華道 1988 教師行動の実験的変容が児童の学級適応に及ぼす影響 兵庫教育大学研究紀要,8,63−73.. 浜名外喜男・登民夫・吉田寿夫 1989 学級における教師行動と教師の指導態度に対する 児童の認知 兵庫教育大学研究紀要, 9,79−92.. 浜名外喜男・松本昌弘 1993 学級における教師行動の変化が児童の学級適応に与える影 響 実験社会心理学研究,33,2,101−110.. 平田定三 1990 授業中の教師による視覚的非言語行動と教師の指導態度に対する生徒の 認知に関する実験的研究 兵庫教育大学大学院修士論文(未公刊). 福井景子 1997他者への肯定的認知に及ぼすポジティヴフォーカスの効果に関する研究 兵庫教育大学大学院修士論文(未公刊). 藤本明彦 1989 児童に対する授業中の教師の視覚印刷言語行動に関する研究 兵庫教 育大学大学院修士論文(未公刊). 石崎和宏 1996 「美術鑑賞テスト」の信頼性と妥当性に関する一考察 秋田大学教育学 部研究紀要,49,1−8.. 河合秀行 1992 授業中の教師の言語的・非言語的行動をとおして児童が認知する教師の 指導態度に関する研究 兵庫教育大学大学院修士論文(未公刊) 岸田元美 1983子どもの教師認知・態度 学習指導研修 9, 84−87. 北尾倫彦 1983 授業のなかで,いかにして個別指導を行うか 学習指導研修 7,5{1−53.. 河野義章 1988教師の親和的手がかりが子どもの学習に及ぼす効果 教育心理学研究 3, 161−165.. 三苫正雄・斎藤清・茂木茂八 1965a 美術鑑賞テスト カード 一無彩色デザイン判 断テストー 日本文化科学社. 三苫正雄・斎藤清・茂木茂八1965b美術鑑賞テスト手引一無彩色デザイン判断テス .27一.
(32) トー 日本文化科学社 ロジャースC.R.伊藤 博(訳)1984人間中心の教師 岩崎学術出版社(Rogers, C. R. 1957 The necessary and sufflcient conditions of therapeutic personahty change. ノ∂己4r7ταZ{∼ノ「’Coπ∫㍑1f∫πg P5yc乃。’09ア,21). 桜井茂男 1991 子どもの動機付けに及ぼす教師の激励の効果 心理学研究 62,31−38.. ネイルS. 河野義章・和田実(訳)1994 教室における非言語的コミュニケーション 学芸図書株式会社(Sean Neill 1991 C1α∬roo〃2 A「oπvεr肋1 Co〃1〃観所。α’如η, Ch裂pman訊nd Hall Ltd.,正ondon). 辰野千寿 1983個を生かす指導法 学習指導研修 8,30−33.. 上木原多輝子 1994 教師の賞賛が児童の内発的動機づけに及ぼす影響 兵庫教育大学大 学院修士論文(未公刊). 一28一.
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