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企業におけるITの価値創造に関する一考察 : 価値創造メカニズムの視点を中心として

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(1)企業におけるITの価値創造に関する一考察 一価値創造メカニズムの視点を中心として-. 前. 田. 彦. 公. として,価値創造メカニズムの視点から価値創. はじめに. 造説および価値喪失説を比較論考し,汀による. 21世紀は知的財産の時代ともいわれ,わが国. 価値喪失理論モデルの試案を提示する.. において知的財産が国家戦略として最重視され ている.とりわけIT (情報通信技術)による産. 第1章. 汀と企業経営. 業・社会構造の変革(いわゆる「rI、革命」)に対. 1.汀とは. し,戦略的かつ重点的に取り組むことが国際的. ITとは,一般に「情報を蓄積したり,伝送し たり,処理したり,する技術」を総称したもの. な競争の視点からも肝要とされ,. eJapan重点計. 画として,官民の総力を結集して高度情報通信. で,. 社会の実現に向けての国家施策としての取り組. であるが,従来の「情報化」の概念と比較した 場合, 「情報処理技術と通信技術が一体化したも. みが行われていることは周知の事実である.. 企業のビジネスにおいて,汀の戦略的な活用. 「情報化」 「情報活用化」という概念と同義. の」である点に特徴がある.昨今における急速. による競争優位性の確立および持続的な維持は,. な汀の進化は,汀の利用層が家庭の個人にま. グローバルな競争市場における生き残りをかけ. で広く浸透するエビキタス社会をもたらしつつ. た最重要な経営戦略であり,汀がもたらす情報. あり,情報主体が企業・官公庁から家庭・個人. 的経営資源を如何に経営に活かせるかが市場で. へ移行し,個人からの情報発信の新たな情報の 流れが中心となるという意味から, IT革命とも. の勝敗を大きく左右する決定要因と考えられる. しかし,一方において, lTの技術や利用面での急 速な進化は,n、の「コモディティ化(汎用品化)」. いわれる1).. をもたらし,. 2.. ITの戦略的価値が失なわれつつあ. るという指摘もなされている. rrバブル崩壊 徳,景気の低迷が続き,いまなお本格的な景気. 1Tの発展段階プロセスの概観 (1)ノーランの発展段階説 ノーランの発展段階説は時系列的に3つに区分. 回復の兆しが見られない厳しい経営環境のなか. される.. で,これまでの". ①4段階発展説-. IT投資聖域"の考え方を見直. し,今後のIT化に対しては,最少の投資で最大. -. 1974年- 1979年. R.L.ノーランは,. の効果をもたらすための「ITガバナンスの新た. 1974年に「ステージ理 論」といわれる経営情報システムの発展段階説. な枠組み」を構築する必要性が高まっている.. を発表し,この中で,企業におけるITの利用. 本稿において, n、の投資効果を評価する前提. が,図1に示すようなS字型の成長曲線を描いて.

(2) 34. i】【【ⅧlllⅧロ. 3 4 6 \∫. 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). 情報関連支出 初期. 普及期. 成熟期. コントロール期. 出典:『ハーバード.ビジネス・レビュー』. (1974年). 図1ノーランの「EDP成長の4段階における管理」. 進化していくことを示した2). ステージごとの企業におけるrr利用の状況 は以下のとおりである.. (初期). :rrの技術専門家 (sE,プログラマ)による事務コストの削減. i.ステージⅠ. を目的としてコンピュータを導入する時代. (普及期). ②6段階発展説-. 1979年- 1982年 情報技術の著しい発展は, 4段階発展説の修正 を余儀なくした.ノーランは新たな情報技術に -. よって,新しい「S字形の成長曲線」が始まる ことを洞察し,. 1979年に6段階発展説を提唱し. た.情報システムは,. i.ユーザーの意識の程. 痩,. 報関連支出が増加するとともに,管理が不. iii.情 ii.情報システム部門の統制の程度, 報処理技術の程度, iv.情報システムの目的,な ど4つの成長過程変数により,情報システムが段. 能となり,みるべき投資効果が生み出せな. 階的に発展していくというものであった.. かった時代.. ③修正6段階発展説-. ii.ステージⅢ. :情報システムが急. 速かつバラバラに導入されたことから,情. (コントロール期). :全社的な 立場から,コスト中心のコントロールが情. iii.ステージⅢ. -. 1982年- 1990年. 修正6段階発展説において,ステージⅠからス. 報化投資に導入される時代.採算が重視さ. テージⅢまでの段階は, 「事務合理化時代」と規 定しており,メインフレームを主体として,企. れる余り,定量的効果が期待できて,投資. 業の基幹業務の情報システムを構築した時代で. リスクの低いシステム中心に導入が経営ト. あるのに対して,ステージⅣからステージⅤま. ップから承認される一方において,将来の 競争優位の確立のための先行投資案件は認 められないというコントロール過剰の時代. (成熟期). での段階は, 「情報戦略時代」として明確に区別 している.. (2)シノットの発展論 W.R.シノットは,. :コントロール期の 過剰なコントロールによる諸々の弊害を除. 1987年に,コンピュータ 時代から情報時代への展開を説き,情報技術を. 去するため,総合的な管理手法を導入して,. 単に生産性向上のためのツールではなく,生産. 情報資源の管理を行うことにより,データ. やマーケテイング,設計や研究開発,意思決定. ベースなどの新技術の導入による効果を期. 支援などにインパクトを与える情報の武器とみ. 待した投資決定が行われる時代.. なす発展論を提唱している3).. iv.ステージⅣ.

(3) (347). 企業における汀の価値創造に関する一考察(前田). 観. 点. 情報化時代. コンピュータ時代. 役割の担い手. D P/MI 経理部長 集権的. C. S管理者. 社分卜惜デ経戦競技攻-影. 上 司 組織のトレンド 管理者レベル 管理対象 中心的資源 必要技能 計 画 技術の焦点 任 務 技術への投資. ミドル D. Pシステム. コンピュータ. 技術的 技術的 生産性 ロール. コント. 保守的. 技術統合. D. I. 0. 長 権的 ップ. 報資源 一夕および通信 営管理 略的 争優位 術的イノベーション 撃的 R. Pアーキテクチャ. 統制. マネジメントスタイル. 35. Mアーキテクチャ. 響力. (宮川公男編著「経営情報システム」 19頁より引用) 図2. コンピュータ時代から情事即寺代へ. 表1わが国における経営情報システムの発展過程. 塗. 自動データ処理. *. 統合データ処理. 早. 省力化、経費節減. バッチ処理 オンライン処理 オンラインリアル. タイム集中処理 ≡≡≡≡経営情報システム. 壁 嚢 首≡. 意思決定支援. タイムシェアリング. 分散. システム. 室. 甲=. -ネットワーク分散 ネットワーク. 萱. 千. BPR. 電子商取引 ⅠT革命. グループウエア インターネット. 差別化. バブル経済の崩壊 業務統合.簡素化. 年代. 1950年代 1960年代 1970年代 1980年代(前半) 1980年代(後半) 1990年代(前半) 1990年代(後半) 2000年代(前半) 2000年代(後半) 2010年代. 経費削減 企業間,tA. 「ー. イントラネット. 高度情報化社会の 実現. 国際化戦略 財テク戦略 SⅠS戦略 BPR戦略. ダウンサイジング. リストラ戦略. SCM. グローバル化. CRM KM. eJapan計画. 知財戦略経営. 1T導入目的の変遷の経緯. 情報化の特長 コンピュータの創成期. 情報産業勃興期 情報化の萌芽期 情報化の成長期 情報化の飛躍期 情報の戦略的活用期 インターネットの普及期 ⅠTのコモディティ化. ⅠT革命の導入期 ⅠT革命の成長期. シノットは,コンピュータ時代から情報時代 への転換を図2のように示している.. 省エネ戦略 経済のソフト化 戦略. OAブーム. 通信自由化. エクストラネット. 表2. 規模拡大戦略 多角化戦略. 生産性向上 省力化、経費削減. I;i喜喜.≦‥■‥萱.戦略的情報システム 集中.分散. 規模拡大戦略 多角化戦略. MⅠSブーム. 非定常的意思決定支援 オイルショック 経費節減 基幹業務の合理化 ホワイトカラーの. スタンドアロン. OA. 定常的意思決定 支援. 部門ごとの 個別システム. コンピュータ時代 省力化 省力化. 情報化時代. 定常的意思決定支援. 非定常的意思決定支援 ホワイトカラー生産性向上 差別化、顧客満足度向上 業務改革,経費節減 企業間結合、個人.企業間結合 情報の共有化、高度化 知識ベースによる協働. (3)わが国の経営情報システムの発展 経営情報システムは,その中心をなすコンピ ュータや通信の技術進歩および環境変化に対応.

(4) 36. 横浜国際社会科学研究. (348). (樺井通晴「ソフトウエア管理会計」 図3. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). 115頁より引用). 情報システム投資の採算計算のフレームワーク. した企業の組織構造の進化に伴い,必然的に発展. れる.. の過程を遂げていくものとされる.わが国におけ. ①基盤整備効果:パソコン,ネットワーク,デ. る経営情報システムの発展過程を表1に示す. 3.. 1T導入目的の変遷の経緯. ータベースなど高度情報化の基盤整備のため の投資による効果であり,それ自体が短期的 な測定が可能な利益を直接的に生み出すもの. ノーランの修正6段階発展説およびシノットの 発展論に見られるように, 1980年代の半ばを境. ではない.ネットワーク・ビジネスに必要で あって直接的な利益をもたらすような基盤整. に,汀はコンピュータを中心とした事務合理化 時代と情報活用を中心とした情報化時代とに断. 備でない限り,これらの効果は経済計算から. 絶される.. rrの導入目的の変遷の経緯は表2の. ように要約される.. 除外されるべきとしている. ②戦略的効果: IT投資によって競争優位を確立 したり,業務改善によって企業に戦略的な影 響を及ぼす効果である5).しかし,戦略的効果. 1T投資効果の評価に関する考察 企業がIT導入に期待する目的は,コンピュ. は,財務的な計数を尺度として表現すること. ータ時代にあっては,基幹業務の大量データの. の投資効果を評価するための経済計算から除 外するのが妥当とされる.. 4.. 一貫処理や部門の個別業務の省力化が中心をな していたが, 1980年代後半以降における情報化. が困難であることから,個別プロジェクトへ. ③経済的効果:会計上の利益として計算できる. 時代にあっては,顧客の視点に立ったrrによ. 効果が経済的効果の中の直接的効果である.. る付加価値の創造が目的とされた. 経営情報システムヘの投資評価方法に閲し,. 経済的効果は,さらに収益向上になるものと. 樺井(2001)は,図3に示すような「情報システ. として算定できる効果であるのに対し,後者. ム投資の採算計算のフレームワーク」を提示し. は汀投資をしないとすれば,支払わなければ. ている4).. ならない対価であり,機会原価として計算で. それぞれの効果の概要は以下のとおり要約さ. 便益の獲得とに分かれ,前者は会計上の利益. きる間接的効果を意味する6)..

(5) 企業における汀の価値創造に関する一考察(前田). 経済的効果. IT投資効果 (正味現在価値). 37. 費 用 (初期投資コスト+運用・保守コスト). (直接的効果+間接的効果). 図4. (349). 1T投資効果の算式. 情報システムの進化. 図5. 情報システムの進化と情幸馴ヒの効果の関係. したがって,汀投資の経済計算は,経済的 効果と費用項目としての初期投資コストおよび. 得して受け入れることで,当該企業に対す. 運用・保守コストを対比させて行うことになる.. 企業の競争優位性が増大し,利益が向上す. IT投資効果の算式は図4に示すとおりである.. る.このシステムによる効果は,売上の増. Syno仕(1987)は,情報システムの進化を3つ の世代に分類し,それぞれの世代における効果 を明示している7).. 〔第1世代〕 :企業内の内部処理を主とする運営. るロイヤルティが高まり,結果として当該. 大による利益への貢献という指標で測定さ れる.. 情報システムの進化と共に,その投資効果は, 第1世代が直接的効果を主たる狙いとしたものか. 支援システム.企業の内部における処理業. ら,第2世代,第3世代へと移行するに伴い,間. 務の自動化を目的にしたものであり,作業. 接的効果から,さらに戦略的効果をターゲット. 工数や材料費の削減などがあげられる. 〔第2世代〕 :経営上の情報ニーズを支援するこ. としたものへと変化する.その意味で情報シス テムの効果は最早,単なる費用削減や売上増大. とを目的とした経営支援システム.経営管. といった直接的に測定できるものだけではなく. 理者に対する情報支援が中心となる.在庫. なっている.情報システムにおける進化のトレ. 圧縮,品質維持向上,納期遅延防止などの 間接的効果や管理効果が期待される. 〔第3世代〕 :顧客の価値増大を目的とした顧客 支援システムである.顧客自身が価値を納. ンドと情報化の効果の関係は,図5に示すとおり である.. しかながら,第3世代の段階にまで進化したrr 投資の効果を樫井が提示する経済的効果のみか.

(6) 38. 横浜国際社会科学研究. (350). 第10巻第3. ら算出された正味現在価値(NPV)に限定する. ・. 4号(2005年12月). 汀の投資効果に関して,. ITによって企業価. ことは,本来,汀に内在する価値を適切に表出. 値が創造されるという積極的な企業価値創造説. したものと見なせない.それゆえ,経済的効果. が提唱される一方において,加速化するITのコ. 以外の基盤整備効果や戦略的効果を可能な限り. モディティ化のために,遂に汀は企業価値を喪 失する要因として働くという企業価値喪失説が. 貨幣的尺度で評価する手法の開発が望まれる. 第2章 1.. 顕在化しつつある. 汀と企業価値. 以上の背景を踏まえて,汀の企業価値創造に. 1Tと企業価値創造との関連性に関する諸説. 関する肯定説(企業価値創造説という)および 否定説(企業価値喪失説という)について概観. の概観 景 (1)背 汀の発展段階の進展に伴い,投資目的が従来 「情報化による企業価値 の「業務効率化」から,. し,それらのメカニズムを論考する. (2)企業価値創造説 企業価値創造説とは,汀こそ企業価値を高め. の最大化」におかれるようになると,直接的に. る戦略的な武器であり,積極的に汀投資を行う. n、の投資効果を貨幣尺度で評価することは容易 ではなくなる.高度情報化社会の進展,さらに. ことで,競合他社との競争優位をもたらす差別 化が図れるとする考え方に依拠するものである.. はユキビタス社会実現の幕開け,並びにIT革. 大方のrrベンダーは,このような基本的なコ. 命の到来という企業を取り巻く急速な環境変化. ンセプトに基づき,ユーザーに対してソリュー. に対応していくために,企業は一層のIT投資 の増加を余儀なくされている一方において,そ. ション・ビジネスを展開してきたといえる.企 「汀を成功さ 業価値創造説に立つ多くの説は,. の投資効果を明確に把握することができないと. せる条件」を提示し,それらの条件が汀投資. いうジレンマに陥っている.. と最適に組み合わさるときに,企業に高い付加. 1987年に,ロバート・ソロー8)は,. 「コンピュ. ータ時代の到来はいたるところで感じることが できるが,生産性統計には表れていない」とい うマクロ経済の視点から指摘した知見は,汀投 資効果に対する新たな問題提起の嘱矢となった が,これは「生産性パラドックス」9)といわれる. 価値をもたらすと主張する点で軌を一にするも のである.. 「ITを成功させる条件」とは,換言. すれば, 「汀投資を成功させるためのガバナン スの導入」を意味し,企業価値創造説はこれを 前提条件としたものであるといえる. 以下,主たる企業価値創造説を取り上げて概. 論争の口火を切る結果となった.昨今における. 観する.. 半導体,コンピュータ,通信などのハイテク技. ①情幸附ヒ評価アセスメント・モデル11). 術の加速度的な技術進歩は,汀?「コモディテ. 2003年3月に社会経済生産性本部によって公表. ィ化」10)をもたらし,汀の発展過程に異変をも. された「情報化・生産性評価基準セルフ・アセ. たらしているといわれる.コモディティ化され. スメント・ガイドライン」である.当該ガイド 「汀を利用して価値を ラインは,企業自身が,. たn、(ハードウエア・ソフトウエア・ネットワ ークなど)を単に導入するだけでは,競争優位 を獲得し得る差別化要因とならない.企業にと ITが有. っての高付加価値を生み出すためには, する潜在的な価値を顕在化させるための企業固 有の要件(経営トップのリーダーシップ,組織. 創造する経営をどの程度まで実践しているか」 を自己診断するためのツールを提供するもので あって,. 『情報化評価アセスメント・モデル』と. 称すべきものである. 当モデルでは,企業の目的を「情報価値経営. 構造,企業文化,適材,ガバナンスなどのイン. の実践にある」と位置づけており,そのことか. タンジブル・アセット)が不可欠である.. ら,情報化を,事務処理の効率化や経費削減と.

(7) 企業における汀の価値創造に関する一考察(前田). 図6. (351). 39. 1T価値最大化のメカニズム. いう前時代的なものではなく, 「社内外のさまぎ まな情報を活用し,顧客に提供する価値を高め. 化に関するPlan-Do-SeeサイクルのなかのSee. ていくこと」と捉えている.. (計画) の目的を効果的に実現するためのPlan やDo (実施)そのものではなく,策定された実. i.情報化の成功要因 当モデルはITを成功させるための要因とし. (評価)に相当するものであって,情報化の本来. 行計画を遂行した結果を評価するための基準と. て以下の3点をあげている.. なるものである.評価基準により評価された結. ア.経営トップのリーダーシップ (情報とコミュニケーションの イ.企業のICT. 果は,次の計画立案にフィードバックされるが,. 活用と情報機器の使いこなし)能力 ウ.ユーザビリティ12). (Usability). --. このフィードバックのプロセスを通して,社会 システムとしての企業の成熟度が徐々に高めら. 「有効. さ」, 「効率」, 「満足度」. れることを狙いとしたものである.. ②lTガバナンス・モデル13) IBMは,. ii.情報化の評価基準 情報化の評価基準は,大項目6,中項目33から. ドとして『n、ガバナンス・モデル』を提示し. なる.大項目としては,ア.情報価値の把握と. ている.企業の経営戦略と一体化したIT戦略. 情報化の必然性,イ.情報の開発・活用・管理. の実現により,競争優位が確立されるというコ. の現状,ウ.情報化推進体制とそのしくみ,エ 組織と個人の情報と情報技術の使いこなし,オ.. ンセプトを掲げ,そのためには,. IT価値を最大化するためのメソッ. 「汀ガバナン. 情報化への取り組みの創意工夫,カ.情報価値. ス」を必須の前提条件として位置づけている. ITガバナンスとは, 「IT戦略の策定から実現. 創造と価値連鋳の円滑化についての経営成果の. までの一連の活動をコントロールし,汀のある. 評価と課題の把握,などがあげられている.. べき姿の実現に向けたITマネジメントプロセ ス, IT標準およびIT体制を構築する組織だっ. これらの評価項目に基づき,企業が自社の情 報化に対する状況を自己評価する.これは情報. た活動」を意味する14).その目的の1つは,. 「企.

(8) 40. 横浜国際社会科学研究. (352). IT投資効果. 「構築した汀戦略を企業に浸透させるこ 3つとしては,. 「n、戦略を. 日々運用させ実現する」ことであると規定する. したがって,. 4号(2005年12月). I. 「企業価値を. ITガバナンスは,. Tケイパビリティ. 1T投資効果の算式 2つに. 業にIT戦略を構築させること」であり, と」である.そして,. ・. IT導入度. 図7. は,. 第10巻第3. のみを対象とするものではなく,企業組織全体 を対象とした, IT使いこなしの能力をターゲッ トにしたものである.. IT投資効果の関係式. i.. IT資産への投資による「rr進展度」を高め. 最大にするために,企業の戦略と一体融合化し. るだけでは,汀投資効果が期待できない.投資. た汀戦略を構築(Plan)し,その汀戦略を企業. されたIT資産を使いこなす能力である「ITケ. 内部に浸透させて,戦略の共有化を図り(Do),. イパビリティ」とIT資産とが企業にとって適. 打戦略を実現(Do)し,メンテナンス(See)を. 切に組み合わさって,初めてrr投資効果の実・. 行うというプロセスの全体を包含するもの」と. 効が期待される.このIT投資効果の算式は図7. して捉えている.. のように示される17). n、マネジメン. ITガバナンスの実体として, トプロセス,. ii.自己診断評価基準 当該モデルは, ITユーザーが,自社のITケ. IT標準,および, IT組織の3項目 をあげている. ITマネジメントプロセス概念に. イパビリティ能力を自己診断できるよう5つの能. は,汀戦略立案プロセス,汀計画作成プロセ. 力(rr活用ビジョン構築能力,. ス,汀顧客関係管理プロセス,システム管理プ ロセス,システム監査プロセスの5つのプロセス. ニケーション能力,プロセスデザイン能力, 投資適正化能力,チェンジリーダー能力),およ. が含まれるとしている.また,汀組織に関して. び各能力について5つのステイタス(中項目25). は,汀戦略を策定し,展開するための組織構造. からなる「自己診断表」を提示している.. を意味するものとして,. iii.. IT戦略を単なる方針の. 策定にとどめず,具体的に実践していくために,. IT活用コミュ. ITケイパビリティ向上のためのプロセス 自社のITケイパビリティがどのような状況. CIO構造がrrガバナンス推進の牽引役として. にあるかを自己診断手法を用いて認識すること. 重視されるべきことを述べている.. が,汀の投資効果を高めるための第一歩とな. 汀による価値創造に関して,企業価値の最大 化を汀の視点から支援するために,企業戦略. る.. と融合したIT戦略を策定し,. rrガバナンスに. 5つの能力別の得点をレーダーチャートにプ. ロットすることにより,能力の過不足の状況が 視覚的に明らかとなる.診断の結果,不足して. よるコントロールの下で,より高い汀価値を. いる能力に対して,対応策(処方室)を講じる. 実現するというプロセスは,とりもなおさず,. ことで,能力アップを図る.能力向上施策を講. 「IT価値最大化のメカニズム」といえるもので. じる都度,汀ケイパビリティ診断基準をもって. あり,図6に示すとおりである. ⑨lTケイパビリティ・モデル15). 能力向上のステイタスを評価する.以降は,こ. NTrデータおよびNTrデータ経営研究所 は,ユーザーの視点から『汀ケイパビリテ ィ・モデル』を提示している.ここでいう「IT 『組織全体がもつrr活 ケイパビリティ」とは, 用能力である』と定義される15).換言すれば,汀. IT. のn、実践-診断-評価一分析-施策実施のプ ロセスを繰り返すことにより,自社のITケイ パビリティの向上を図り,結果として汀の投 資効果を高めていこうとするものといえる. ④インタンジブル・アセット貢献モデル18) ブリニョルフソン等は,. 「汀と生産性」の観.

(9) (353). 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). I. T投資効果. IT投資(投資比率:1) 図8. 点から,. 41. インタンジブル・アセット(投資比率:9). 1T投資効果の算式. ITを補完するインタンジブル・アッセ. ・意思決定責任と決定権の分散および意思決 定責任者の人材育成を図ること.. トが生産性の向上に大きく貢献していることを 実証研究の成果として結論づけている.インタ ンジブル・アセット(無形資産)とは,業務プ. ・コミュニケーションの活発化と情報の共有 化を図ること.. ロセス再構築(組織資本),ユーザ教育(人的資 本),取引先との関係,顧客満足度,社員の忠誠. ・個人の業績に基づく給与体系を導入し,戟 奨制度とのリンクを図ること.. 心,企業に対する評価などを意味しており,コ. ・事業目的を絞り込み,組織の目標を共有す ること.. ンピュータのハードウエアとインタンジブル・. アセットの投資比率が1. :. 9の割合で組み合わさ. ・最高の人材を採用すること.. るときに,企業の生産性の向上にもっとも貢献. ・社員教育や研修など人的資本に投資するこ. していることを実証した19).このような価値創. と.. 造の考え方を『インタンジブル・アセット貢献. iii.. ITと生産性向上・収益性向上 ブリニョルフソン等は,生産性,事業の収益. モデル』と称する. i.. 性,消費者剰余という汀による価値の3つの異. n、投資効果の算式 「デジ. 汀(情報技術)の活用度が高い企業は, タル組織」と呼ばれる組織をとり,. 「7つ原則」. なる測度に関する実証研究において,生産性の 向上および消費者剰余には,寄与する一方にお. に則って,業務を編成していること,その結果, 「汀とデジタル組織は,互いに補完し合う関係. いて,事業の収益性には殆ど寄与していないこ とを明らかにしている21).企業の属する業界に. になっている」ことを明らかにした.このIT. おいて,コストが中心的な戦略問題である場合. 投資効果の算式は図8のように示される.. は,IT投資によって,コストリーダーシップ戦. この算式は, IT投資を成功させるには,旧来. 略をとることが可能であるが,単にIT投資へ. の組織を「デジタル組織」に変革することと, 投資全体の中でIT投資が1の割合に対してイン. の支出を増やすだけでは持続的な競争優位を獲 得することは期待できない,と結論づけている.. タンジブル・アセットが9の割合で組み合わされ たときに,最大のIT効果が発揮されることを. ⑨ lT経営度評価モデル22) 角埜(2004年)は, 「IT経営度調査」におけ. 意味している.. る500社を超えるデータを用いた実証研究に基づ. ii.デジタル組織と7つの原則 組織に関しては,従来のアナログ組織から,. 普, 「ITによるビジネス価値創造のメカニズム」. ITのような高度なテクノロジーと最も親和性が 高い「デジタル組織」に再編成することが, による生産性を高める上で,必要不可欠な条件. を解明したとされる.この考え方による企業価 値創造説をここでは『IT経営度評価モデル』と IT. 称する. IT経営とは,. 「企業経営においてITを有効に. である.デジタル組織とは,以下の7つの原則を 導入し,相互補完の関係の下で,機能している. 利活用するための統合化された組織活動」と定. 組織をいう20).. とし,. ・業務プロセスをアナログからデジタルに移. 行させること.. 義される.換言すれば,. 「汀投資をインプット. n、化の組織活動を経て,ビジネス価値. をアウトプットするまでの統合化された活動」 を意味する23).当該モデルは,ビジネス価値を.

(10) 42. (354). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). マネジメント指標. オペレーション指標. アウトプット指標. (角埜恭央「ビジネス価値を創造するI T経営の進化」 図9. 58頁より引用). 1T経営の組織メカニズム. 創造するために,. n、経営をどのように進化させ 「汀経 るべきか,という視点からアプローチし,. 連動して, rr経営効果を創造する.この6つの 評価指標の因果構造は,企業が競争環境の中で,. 営度調査」の分析評価をとおして,ビジネス価 値創造のメカニズムに関する理論構築を試みた. IT経営効果を向上させ,他社に容易に追随され ないn、経営上の差別化を実現させるためには,. ものである.. IT投資・装備を充実させるだけでなく,一連の. 角埜(2004年)は, で,. IT経営度評価モデルの中 『企業内で汀がビジネス価値を創造する組. 織メカニズム』を提示している.. rrによるビジ. ネス価値創造の促進または抑制に関わるrr経. rr化の組織活動を補完しながら改善させること が有効である」. (3)企業価値喪失説 企業価値喪失説とは,企業価値を高める戦略. 営の構成要素を明らかにし,それらの構成要素. 的な武器とみなされたIT化が,汀発展段階の. 間における因果関係を統計的な方法を用いて分. 進展とともに,企業価値創造に対する有効性を. 析している.. 失い, IT投資は不良資産化することにより,企. IT経営度評価モデルにおいて,企業内のn、 経営を構成する6つの評価指標(トソプの意識と. 業価値の喪失をもたらし,ひいては,企業の存. 行動,経営と汀の連携,汀構築力,将来への. るものである.企業価値喪失説の論拠の背景に. 備え,IT投資・装備,IT経営効果)を抽出レ,こ. は,. れらの評価指標間の因果構造を「rr経営度調 査」に基づき実証分析した結果,図9に示すよう な「rr経営の組織メカニズム」を明らかにした. 角埜は解明したIT経営の組織メカニズムに 基づき,以下のような結論を導いている24). 「IT化に関するトップの意識と行動が,企業 IT構築 のIT化の仕組み(経営とrrの連携, 力,将来への備え)に影響し,汀投資・装備と. 続さえ危うくし兼ねないという考え方に依拠す 2つの基本的な考え方がある.. 1つは,汀の急速な進展による"コモディテ ィ化"によって,汀の戦略的価値が相対的に低 下し,汀投資のコスト負担,プロジェクト失敗 のリスク,およびn、不良資産の増加などの要 因により,企業に価値喪失をもたらすという考 え方である. 2つは,既述の企業価値創造説で提唱された 「IT化による付加価値を創造するための体系化.

(11) 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). (355). 43. 大. 一 戦略的価値. ↓ 小. +I. ・一. ・. 図10. 枝術の進化. -・. ・ー. コモディティ化. 什のコモディティ化と戦略的価値の関係. された組織活動とIT投資との適切な相互補完. ことができる. カーは,. 関係の確立」が実現困難であることから,大方. "コモディティ化"したITに対し. て,以下のようなマネジメントを行うことで,. の企業は企業価値の創造に失敗するという考え 方である.. ITからもたらされる企業のリスクを最小限に抑. ①rrのコモディティ化の視点からみた企業価. えることができるという.. 値喪失25) ニコラス. rrは,競合他社との競争の観点からn、を 導入して対抗する必要があるものの,競争優. i.. G.カーは『ハーバード・ビジネ. ス・レビュー』誌の2003年5月号において,ユキ ビタス化の進展の結果, n、のコモディティ化を 促進させ, ITの戦略的価値を低下させていると Dosen't. 位をもたらすものとしてではなく,企業のイ ンフラとして発生するコストと認識する. ii.. IT支出を抑えるために,既存のITの見直. しが必要であり,パソコンのハードウエアや. た.. いう趣旨の論文「IT Ma仕er」を発表し "ITは重要か?"の論文をめぐって,いま. ソフトウエアの全面的なアップグレードの必. なお続く論争の晴矢となった.論文の狙いは,. 要性について再検討を行う.. 技術(IT)と競争力と収益の相互関係を理解す るための新しい視点を提供するものである. カーの主張の要点は, 「ITが,他社との差別. iii.技術のコピーサイクルの短縮化により,徳 発企業が先発企業の成功例を模倣することが 容易のため,コストとリスクの負担が大きい. 化の武器としての専有技術から,競争に参加す. 先発企業としてでなく,コストとリスクの少. るすべての企業が共有するインフラ技術に進化. ないフォロワーとして,より多くの利益を獲. したことで,競争優位という視点からの重要性. 得し,ライバルを抜き去る.. が相対的に低下しており,. iv.革新はリスクが小さいときに行う.. ティ化と戦略的価値の関係は図10のように示す. Ⅴ.チャンスより脆弱性に注目する. ② IT補完の視点からみた企業価値喪失26). n、には最早,戦略的 ITのコモディ 価値がない」というものである..

(12) 44. (356). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3. ITの成熟期に入ったといわれる今日,. rr投 資はインフラ整備や戦略的効果を目的としたも のが大半となり,単にハードウエア・ソウトウ エアといったようなIT資産への投資からでは, 新たな価値を生み出すことは困難になっている. 「rr フォレスタ-・リサーチ社による研究では, 関連支出と業績には何の関連も見出されなかっ た」という.フォレスタ-・リサーチ社は,291 社を調査し,総収入に対するIT関連支出の割 合と財務成績(収益成長率,資産収益率,キャ ッシュフロー成長率)を比較した結果,最も業 績の悪いグループの会社では, IT関連支出(売. ・. 4号(2005年12月). 値を創造することは期待できない.. rrが進化す. ればするほど, rrで競争優位を生み出す差を出 すことが難しくなり, 『IT以外のもの』におけ る遠いがより重要になるが,この現象は「rrパ ラドックス」といわれる. rrを補完する組織構 造や組織活動などのインタンジブル・アセット がrrと適切に組み合わさって「資源一括動」 複合体として機能しなければ,. n、投資のみによ. っては,価値創造が期待できず,むしろ過剰コ スト,失敗のリスク, IT不良資産といったIT 化による負の効果が顕在化し,企業価値の喪失 をもたらすことを示唆するものである.. 上の2.6%)が最も少なく,最も業績のよいグル. 増岡(2002年)は,経験則および理論面の2つ. ープは,その次に少なかった(売上の3.3%).ま たIT関連支出が一番多い(売上の4.4%)グル. の観点から『IT導入失敗の法則』として6項目 を提示している30). rr導入に対して経営トソプが方針を出さ ず,無関心であること.. ープの業績は平均レベルであったという.また, ポール・ストラスマンは, 2001年に,米国企業. i.. 1,585社を分析した結果,企業がrrに費やす金 額と業績の間には何の関係も見られなかったと. ii.汀導入に対して計画を立てず,目標を定 量的に表示しないこと.. いう27).. iii.. rrが成熟化するに伴い,. IT投資による効果 を引き出すことが段々と困難になってきている. n、導入体制を確立せず,人材の質を無視 してプロジェクトチームを編成すること.. iv.社内意識の変革を行わないこと.. ことが数多くの先行研究からも窺える.最早, 単なるrr投資(ハードウエア・ソフトウエア). Ⅴ.ユーザー部門の意見を無視し,業務改革. から,利益を生み出すことは殆ど不可能といえ る.エリック・ブリニョルフソンは, 「rr化投. vi.ユーザー部門に対するrrの導入教育を 行わないこと.. 資の90%は,業務プロセスと関連するインタン. を行わないこと.. ジブル・アセットに対してなされたものであり,. IT導入失敗の法則とIT導入成功の法則は, 表裏の関係にある. IT導入を失敗させるには,. コンピュータのハードウエアに対する投資は. 現状を全く変える必要がなく,現状を維持すれ. 10%に過ぎない.」と述べている28). 根本(2005年)は, 「資源ベース戦略論」の立. ばよいことから,その実現は極めて容易である.. 場から,持続的な競争優位を達成する必要条件. の失敗の法則をすべて否定しなければならない が,それを遂行することは大変な企業努力を必. として,. i.価値のある資源であること, ii.希 少な資源であること, iii.代替資源がないこと,. しかし,. IT導入を成功させるためには,これら. 要とする.したがって,. rr投資を行うだけで,. Ⅴ.こ iv.完全な模倣が困難な資源であること, れらの4つの条件を満たす経営資源が複数あるこ. rr導入を成功させるための組織的な活動が伴わ. とをあげ, n、の価値創造の組織活動を「資源一. になる.この事実は,これまでの数多くの実証. 括動」祷合体として捉えている29).. 研究の結果からも肯定される.. コンピュータのハードウエア(狭義のIT)の みでは,持続的な競争優位をもたらすような価. なければ,確実にIT導入は失敗に終わること.

(13) 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). (357). (〓. ..,./..′/ 値. 抽. (:.:.I::::::. ゴ.. I.;. ':I-_I':.. イノベ-ション活動. 価. 45. I. ::::::::.I.). 出 〉. 価値創造プロセス. __」. 」. 価値抽出プロセス. 図11価値創造・価値抽出プロセス. イノベーション活動によって生み出された価. 2.価値創造および価値喪失のメカニズム 前項において, n、が戦略的な機能を適して企. 値は,それ自体では,企業に利益をもたらさな. 業価値の創造に積極的に貢献するという立場か. いことから,この価値の源泉を利益に転換する. らの「企業価値創造説」,および,. メカニズムが必要となる.後者の利益に転換す. ITの成熟化. るメカニズムは「価値抽出プロセス」として捉. に伴いコモディティ化することで,戦略的価値 が低下し,企業の収益に貢献することなく,. IT. えることができ,前者の「価値創造プロセス」. 投資が過剰なコスト要因となり,セキュリティ. と一体不可分な関係をなすものである.価値創. 面のリスク増大と相保って,企業価値の喪失を. 造のメカニズムを考察するときの前提条件とし. もたらし,企業を危うくするという立場からの. て,企業における価値が何を意味するかを明確. 「企業価値喪失説」を概観した.. にし,価値創造のプロセスを可視化することが 肝要である.社会的な存在としての企業は, 「社. IT価値創造を. めぐる2つの相反する立場からの論説は,. ITと. それを導入する企業との間において,どのよう. 会や顧客に対して価値を提供する」ことに目的. な価値創造のメカニズムが働くかについての認. があり,それゆえ,汀化(情報化)の目的は, 「顧客に対する価値を創造する」ことに収赦され. 識と解釈の相違から帰結されるものといえる. 以下に「ITと価値創造のメカニズム」および 「ITと価値喪失のメカニズム」について論考す. る.したがって,このような価値創造・価値抽 出プロセスの中で,. る.. rrはどのような役割を果た すのかが,明らかにされねばならない.. (1) lTと価値創造のメカニズム 今日の知的資本経営における価値創造・価値. ITとは,情報技術を総称した概念であるが, 具体的な成果物は, IT資産の構成要素であるハ. 抽出のプロセスは,知的資本を活用してイノベ. ードウエア,ソフトウエア,ネットワーク,お. ーションに着手してから,価値が具体的な利益 (もしくは効果)をもたらすまでの過程における. よび,人材などから構成される複合体としての. 活動を意味し,知的資本の価値連銭といわれる.. 報システムは,それ自体に内在する蓄積・加. 今日の知識集約型企業の大半は,知的資本の形. 工・検索・計算の各機能により,潜在的価値し. 成プロセスを効率的に廻して新しい知識を創造. か持たないデータを利用者の意思決定に役立つ. し,その知識を価値に変換するための新しいイ. より高い価値を持つ情報に変換処理するメカニ. ノベーションを生み出す持続的な活動を続けて. ズムを備えた知的資本である.. いる.このプロセスは図11のように示すことが できる.. 『情報システム』として捉えることができる.情. しかし,情報システムの価値は,情報システ ムの処理プロセスにあるのではなく,情報シス.

(14) 46. 横浜国際社会科学研究. (358). 第10巻第3. I. 4号(2005年12月). -,▼、・▼\▼_\、. Cj (こ三) (出所:PRESIDENT. 2003年5月号「加讃野忠男『情報から価値を創造する「三つのステップ」. 図12. 』より引用・一部加筆修正). 汀の3段階による価値創造プロセス. テムのプロセスを通して生成される情報が,企 業の意図した目的に最大限に活用され,所期の. 味が引き出され,アクションを取るために. 成果が得られたときに始めて,価値のある情報. があるが,これができなければ,価値の創. として認識される.情報システムは,人間が与. 造はできない.. えた論理的な処理プロセスにより情報を処理す. は,人や組織を意図するように動かす必要. これらの3つのステップを活性化させることが,. るものであることから,知識を創造したり,イ. 価値創造には不可欠な条件となるが,このため. ノベーションを生み出すものでなく,人間の価 値創造活動や価値抽出活動を効率的に支援する. には,第1ステップでは,汀(情報技術)の有効活. ための触媒的な役割を果たすに過ぎない.. 発見のために,異質な情報や知識を連結するこ. 加護野は,情報からの価値創造のプロセスと して次の3つのステップをあげている31). 第1段階は,. 「情報の収集・編集・蓄積」のス. 用を図ることであり,第2ステップでは,意味の とがポイントになる.そのためには,オープン. な組織文化の醸成に基づくより柔軟な思考プロ セスが不可欠となるだけでなく,意味を読み取. テップである.潜在的な価値を持つ情報を 収集し,それらを整理して何時でも必要に. る人間の能力を高めることが,さらにより重要. 応じて検索し伝達できるようにしておく.. 定の権限を現場に下ろす組織の分権化のほか,他. 第2段階は,. 「情報から意味を引き出す」ステ. になるという.最後の第3ステップでは,意思決 社との協力関係やロジスティックの改善・強化 を図ることをあげている.. ップである.汀の情報から,意味を発見す るためには,新しく得られた情報を既存の. rrの3段階による価 値創造プロセスは図12のように示される.. 蓄積された情報と選択的に連結することが. 加護野の価値創造プロセスにおける第2ステッ. 必要である.この連結を行うのは組織とい. プ(意味の発見)および第3ステップ(アクショ. うチャンネルを経由して,人と人,あるい. ン)は,汀が提供する情報から意味を発見し,. は人とITとによるコミュニケーションが. それをアクションにつなげるプロセスに相当し,. 不可欠であるが,意味の発見には,組描と. 企業内部における人と組織が直接係る行動であ. 人が決定的な役割を担う.. り,価値創造に決定的に重要な役割を果たすと. 第3段階は,. 「発見された意味をもとにアクシ. ョンをとる」ステップである.情報から意. 述べている..

(15) 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). 図13. (359). 47. 1Tの価値喪失のメカニズム. (2)汀と価値喪失のメカニズム. 争状態を維持するために必要なリスク負担を伴. (lT投資の戦略的価 IT効果(価値創造) 値) × (lTを補完する組織活動や汀活用能力の. うコスト要因に転化していく.したがって, 投資が増えれば増えるほど,投資から回収され. 度合). る割合が少なくなる.その結果,投資されたIT. -. というIT効果の等式で表現できると仮定し. 資産の相当の割合が不良資産化し,. ITのコスト. た場合,右辺の2つの説明変数の値が変動する. 増大と併せて,企業価値の喪失をもたらす」.図. と,左辺の被説明変数の値は,影響を受けるこ. 13にITの価値喪失のメカニズムを示す.. とは自明である.企業価値喪失説は,以下に要. IT. 企業価値創造説は,. 約される2つの視点から主張されているものであ. ITの戦略的価値が将来に おいても持続することを前提とした考え方に依. る.. 拠する.その考え方は,ニコラス. 1つの視点は,. ITのコモディティ化によって. る『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発. IT自体の戦略的価値が低下していくこと.. 表された「IT. 2つの視点は, n、を補完する組織活動やIT 活用能力を実現することが困難であること.. 論に示されている.日く. これらの条件を上記のrr効果の等式に当て はめると,次のようなことがいえる.. G.カーによ. Dosen't. Ma仕er」論文に対する反. 「ITが直接的に戦略に差別化をもたらすもの でなかったとしても,. ITは間接的に効果を及ぼ す存在ゆえに,そもそも戦略的なものである.. 「ITは企業における基幹業務などのオペレー. すなわち,それはかつてなかった可能性や選択. ションを実行するうえで必要な企業インフラで あるが,汀が持つ戦略的価値は,汀化の進化. 肢を創造する点である.これらの可能性を他社. とともに,徐々に低下していく. rr投資は,投 資を上回るキャッシュフローを生み出すプロジ. おいて依然自らを差別化し,経済的な果実を手. ェクトとしてでなく,現状における競合との競. うが,その潜在的可能性を掘り起こすうえで求. よりも早く見つけ,行動できる企業は,市場に にするだろう. ITがユキビタス化していくだろ.

(16) (360). 48. 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). 市場成長率 市場シェア. 図14. 製品ポートフォリオとITライフサイクルとの関連. められる洞察力は,どこにでも転がっている類 いのものではない.大いなる戦略的優位のチャ ンスはまさしくそこにある.」と総括し,汀が 戦略的であるための3つの教訓を条件として提示 する. 〔教訓1〕 :汀から価値を引き出すには,ビジネ ス手法のイノベーションが必要である. 〔教訓2〕 :漸進的な革新から経済的なインパク トが生じる.. 〔教訓3〕 :IT投資が戦略にインパクトを与える のは,累積効果によるものである.短期的 に見れば,ビジネス手法を革新する. 3.. 1T価値喪失の理論モデルの構築. に考察する. (1) lTライフサイクルとコモディティ化のプロセス ピーター・ウェイル&マリアン・ブロードベ. ントによれば,汀ポートフォリオは,①インフ ラ関連汀, ②業務関連汀, ③情報関連汀, ④ 戦略関連ITから構成されるという32).これらの 汀の中で,戦略関連ITは,新たな収益源の確 保ならびに戦略的なポジショニングの獲得とい うハイリスク・ハイリターンをもたらす投資対 象である.米国の平均的な企業におけるITポ ートフォリオの投資配分は,インフラ関連汀 が58%,業務関連n、が12%,情報関連汀が 16%,戦略関連ITが14%といわれている33).企 業のタイプによって, ITポートフォリオの投資. rrは,ノーランやシノットが画くような発展 段階に沿って歴史的に進化してきたが,半導体. 配分は異なるものの,もっとも俊敏性を重視す. や通信技術の進歩は,ユキビタス社会の実現を. いる.しかし,経費または売上高に占めるIT 投資額の方は,平均的な企業で売上高の4.1%,. もたらす-方において,いわゆるITのコモデ ィティ化が顕著になっている. ITへの過大な投 資にも拘らず,その効果が実感できていない経 営トップが多いといわれる.なぜITの進化が コモディティ化をもたらすか,について理論的. る(戦略重視)企業の場合でも,. 17%となって. 経費の7.7%であるが,俊敏性を重視する企業で は,業界平均を10%から25%上回っている. 汀の価値喪失の要因は,記述のとおり, ・汀の進化に伴い,汀がコモディティ化して.

(17) 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). ・. (361). 49. いく.. 性を獲得する上での戦略的武器として機能する.. lT投資効果を最大にするための補完要素(組 織,人,企業文化)が欠如している.. ターゲット市場の成長性が高く,戦略的なポジ ショニングの確立とシェアの拡大をもたらす. 高い市場成長率と高い相対シェアを特徴とする. の2つに大別される. まず,第1の要因である「ITのコモディティ. 花形製品となる.ステージⅢは,市場のさらな. 化」について論考する. ITは,ライフサイクルの過程に沿って,. る成長が期待でき,また競合他社の追随をかわ Ⅰ.. 先行システム-Ⅱ.戦略関連システム-Ⅲ.莱 務関連システム-Ⅳ.インフラ関連システム一. すために,システムのバージョンアップのため の追加投資が必要となる. ③ステージⅢ :業務関連システムへの移行. 次期の先行システムといったスパイラルなサイ. ITの技術コピー・サイクルは,ますます短縮. クルを描きながら段階的にITの姿が変容して. されていることから,先行システムを追随する. いく.戦略関連システムが,コモディティ化す るプロセスをBCGが開発した製品ポートフォ. 後発の競合は,先行開発企業が要したよりも,. リオの考え方と接合させて考察する.製品ポー. ステムを機能面でも凌駕するシステムが次々と 歳合他社によって開発されると,それまで排他. トフォリオとITライフサイクルとの関連を図 14に示す. ①ステージⅠ :先行システムの登・場 ITシステムの構築には,データベースやネッ トワークに代表されるような全社共通的な情報 のインフラの基盤の活用が必要不可欠となる.. はるかに短期間で,かつ,低コストで,先行シ. 的に独占していた戦略関連システムとしての戦 略的価値が失われ,自社にとっての基幹的な業 務関連システムに移行していく.ステージⅢで は,. 「市場成長率が低く,相対シェアが高い」と. 新たな戦略課題を志向した「先行システム」が. いう特質があることから,業務効率化による大 きなコスト節減効果が期待され,ローリスク・. 既存のインフラシステムをベースとして試作さ. ハイリターンの金のなる木となる.. れる.しかながら,市場は未成熟のため,開発. ④ステージⅣ:インフラシステムヘの回帰. コストが先行して,収益は開発が完了するまで. 戦略関連システムの競合システムが業界に浸. の期間は全く期待できない. 競合他社に先駆けたシステムであり,新たな. 透してくるにしたがい,戦略関連システムが独. プラットホーム上での構築のため,技術的実現. 内の業務関連システムに移行していく.競合他. の可能性は低く,試行錯誤による開発方法を余 儀なくされることから,開発コストが高くつき,. 社におけるシステム導入が加速化されると,や. 新たなターゲット市場が成熟して「花形製品」. 形成されるようになり,外部システムとのイン. になれるか否かの不確実性が極めて高いという. ターフェース機能を果たすインフラシステムと. ハイリスク・ノーリターンの問題児として位置. して発展していく.システムの運用・維持に伴. づけられる.. うコスト増やセキュリティ面でのリスク増など. ②ステージⅡ :戦略関連システムヘの展開 先行システムが技術的実現性を確立してター. のため,システムの陳腐化とともに,独自性の あるシステムとしての存在価値が失われること. ゲット市場に投入されると,圧倒的に競争優位. から,新たな戦略的価値を生み出す次期の先行. 性を獲得する戦略関連システムに成長する.当. システムが模索される.ステージⅠ-Ⅳのライ. 該システムに独自性があり,ビジネス・モデル. フ・サイクルの過程で変容されたインフラシス. 特許として権利が保護されると,競合他社の追. テムは,次なる新しい先行システムを生み出す. 随を排除することができることから,競争優位. ための基盤として機能する.負け犬の状態のシ. 占的に有していた戦略的価値が失われて,企業. がて業界標準としての共通なプラットホームが.

(18) (362). 50. 横浜国際社会科学研究. 図15. ・. 4号(2005年12月). 1T価値喪失の構造的要因. ステムに収赦する. (2) lT価値喪失の外生要因と内生要因 ①. 第10巻第3. (IT投資金額×汀価値) IT投資効果生要因】 × (組織構造×人材×企業文化). 【外. 【内生. 外生要因. 汀の投資効果は,外生的な要因および内生的 な要因の関数として,以下のように表わすこと. のように表わされる.. ができる.. 汀導入度とは,汀投資によって,企業に導 入されたrr (経営情報システム)の内容・レベ. IT投資効果-IT導入度×ITケイパビリティ. IT価値は, ITが本 ルを表わしたものであり, 来的に有する属性(機能・性能・品質)によっ て,企業に価値を生み出す大きさをいう.した がって,汀に投資をしても,汀自体に価値が. の関数において,. IT導入度-. (IT投資金額). ITケイパビリティ-. ×. (rr価値). (組織構造×人材×企業. 文化) と捉えて,これらを(1)式に代人すると,. 低ければ,それだけ汀導入度が低くなること を意味する. 一方のITケイパビリティとは,企業の組織 全体としてのITを使いこなす能力のことを意 味し,組織構造,人材,企業文化の3つの要素か ら構成されるものと捉える. 前者の汀導入度は,汀投資金額に汀価値を.

(19) (363). 企業におけるITの価値創造に関する一考察(前田). 乗じたものであるが,前項で論述したとおり,. おわりに. n、価値は,コモディティ化によって,価値が低 下するという必然性がある.このことから, 導入度-. (汀投資金額). ×. 51. IT. (汀価値)を,汁. コンピュータ時代から情報時代という技術の 不連続による新しいイノベーションの出現によ. 投資効果の価値を喪失する外生要因を構成する. り, ITの導入目的はかつての事務効率化から,. ものと解釈される.. 戦略的効果や企業のインフラ整備などを企図し. ②. たものへとシフトした結果,企業におけるIT. 内生要因. ITケイパビリティ-組織構造×人材×企業文 化であり, IT投資効果の価値を喪失する内生要. 投資の効果が定量的な尺度で捉え難くなってい. 因を構成する.組織構造とは,. IT導入・推進に. をもたらし,. 係る経営者層,ユーザー部門,. IT部門の体制と. コミュニケーションの仕組みなどであり,人材 とは,経営者のリーダーシップ,部門管理者の. マネジメント能力, IT推進部門担当者の開発能 力,ユーザー部門のrrリテラシー能力などを いう.さらに企業文化は,企業のストック型リ ソース(lT,技術力,ビジネスプロセス,知識, 組織,人,関係性)を経営プロセスに投入して, 企業価値創出の源泉としてのコア・コンビタン ス(ex.事業展開力,開発力,人材育成力,独 創力,変化対応力など)からなる企業力の創造 に大きな影響を与える.. る.. ITの急速な進化は,. ITのコモディティ化. IT投資による戦略的優位性の確立 IT とその持続的な維持がますます困難となり,. の戦略的価値が低下しているという見解が顕在 化しつつある. 「ITと企業の収益性への寄与」に関するブリ ニョルフソン等による実証研究では,. ITが企業. の収益性向上には寄与していなtl,という結果が 報告されている.さらに2003年5月号の『ハーバ ード・ビジネス・レビュー』誌に掲載されたニコ ラスG.カーによる「ITDosen'tMatter」の論文 は,汀の戦略的価値の肯定論者や汀ベンダー に大きなインパクトを与えることとなった. 本稿では,企業におけるITの価値創造に関. ITケイパビリティの向 上に対して,企業文化とのかかわりを避けては. して,メカニズムの視点から価値創造説および. 通れない極めて重要な内部要因といえる.図15. 価値喪失説を比較論考した上で,. にIT価値喪失の構造的要因を示す. 企業環境の変化を読み取り機敏に事業戦略を. ITの進化は,情報活用の利便性を高める一方に. ITによる価値 喪失の理論モデルの試案を提示したものである.. 再構築して,これと一体化したIT戦略を策定. おいて,コモディティ化とともに,不正アクセ. するプロセスを持続的に実行していく過程のな. スによる営業秘密情報の漏洩・改ざんというセ. かで,価値を創造し,利益に転換するためのビ. キュリティ面でのリスクも増大している.筆者. ジネス手法を開拓し続けていくことが要請され. は,大手n、ベンダーの情報システム部門にお. る.しかしながら,. ける長年の実務経験から,従来のIT先進企業に. ITが競合他社との差別化に. つながるような優位性をもたらすコア・コンビ タンスとして構築できる企業は,わが国におい. おけるITが必ずしも企業の収益性向上に十分. ては革新的な企業文化と優れた経営トップのリ. 抱いていたこともあり,. ーダーシップを併せ持ったごく一部の限られた 革新的知識創造企業であろう.その意味で日本. ると,価値喪失説におけるメカニズムの考え方. 的経営の体質から脱皮し切れない大方の企業は,. に寄与していないのではないか,という実感を n、のコスト増大および 情報セキュリティ面の脅威の拡大などを勘案す を支持する.. rrの価値喪失のメカニズムに支配されて,企業. 今後の課題として,わが国の汀先進企業に. インフラとしての必要性とコスト増・リスク増. おける「ITと収益性との価値関連性」を対象と. とのジレンマに陥ることが懸念される.. した実証的な研究をとおして,上述の2つの論説.

(20) 横浜国際社会科学研究. (364). 52. 第10巻第3. の是非を明らかにするとともに,企業における. ・. 4号(2005年12月). -ネットの普及により,米国企業のIT投資が着 実に進んでいるにも関わらず,少なくとも統計 上では,明確な生産性の上昇やIT投資の優位性 が確認できないというものである. 10)コモディティとは,品質,機能,形状,その 他すべての属性が,標準化の進展,技術の発展, 市場の発達,ライフサイクルの成熟化その他の 理由によって,安定的に均一化・共通化して,. IT投資が成功するために,如何なる組織的な取 り組みが必要とされるのか,などについてのさ らなる研究をとおして新たな知見を得たいと考 えている.. 交換・代替が容易な普遍的価値として確立した 商品のことをいう.コモディティ化とは,量と 価格だけで取引が可能な程度に品質が均一化・ 共通化される動きをいう.今日の代表的なITコ. 注 1)エビキタスの語源はラテン語で,いたるとこ ろに存在する(遍在)という意味.インターネ ットなどの情報ネットワークに,いつでも,ど こからでもアクセスできる環境を指し,エビキ タスが普及すると,場所にとらわれか\働き方 「エビキタ や娯楽が実現出来るようになる. 「エビキタス・ネッ ス・コンピューティング」, トワーク社会」のようにも使われる. 2). cyrus "Managing HaⅣard. F.. Gibson the. Four. Business. Richard and Stages of EDP. Review,. L.. Jam.-Feb.. Nolan,. Growth", 1974,. pp.. 76-88.. 米ハーバード大学の教授で,米国のコンサルテ. 3). William. WinniI一g. R. SyⅢott, The Customers. lnformation and. Market. John Wiley 良 Sons, 1987. 彰訳「戦略情報システム」日刊工業新聞社,. Tecbnology,. Weapon: with. (成田光. 1988年) 114-119 4)桜井通暗「ソフトウエア管理会計」 頁,白桃書房, 2001年. 117-118頁. 5)前掲注4) 6)前掲注4) 118-119頁. 7)前掲注3) 80-82頁. 8)ロバート・ソロー(RobertM.Solow, 1924年8 月23日一)は,ニューヨーク生まれの経済学者. マサチューセッツ工科大学経済学部の教授とし て,ポール・サミュエルソンと共に,戦後の経 済学の主流を築く.古典派経済学の成長モデル の研究とソローモデルでよく知られている. 1987年に成長理論でノーベル経済学賞を受賞. 9)生産性パラドックスとは, 1987年にノーベル 賞学者のロバート・ソローがコンピュータの導 入が必ずしも産業の生産性を向上させていない ことを指摘して以来, 10年以上にわたって,栄 国のエコノミストの間で論争となり,現在も続 いている.その骨子は, 1990年代におけるコン ピュータ技術の進歩やネットワーク化,インタ. 13)甲賀憲二・林口英治・外村俊之「ITガバナン ス」 NTT出版, 2002年. 14)前掲注13) 42頁. NTTデータ/N′ITデータ経営 15)国領二郎監修・ 研究所著「ITケイパビリティ」日経BP企画 2004年. ー5 ー 2 ?哨 1 6 ー- 前掲 注注 ・ 17 前掲 1 5 1 8 \. ヽ. 戻.. した.. ll)社会生産性本部編・鴇田正春監修「情報価値 経営」生産性出版, 2003年. ISO13407において, 「ユーザビリテイ」を 12) 「有効さ」, 「効率」, 「満足度」という3つの構成 要素からなるものと定義されている.. 1... ィング会社「米ノーラン・ノートン社」の創立 者の一人であったR. L.ノーラン博士が論文 「E DP成長の4段階における管理」を1974年に 『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発表. モディティには,パソコン,インターネットが ある.. 18 ー. エリック・ブリニョルフソン著/CSK訳「イ ンタンジブル・アセット」ダイヤモンド社, 2004年. 「コンピュー エリック・ブリニョルフソンは, タ投資(1)に対し,インタンジプル・アセッ ト投資(9)の割合で相互補完の関係を有し, かつインタンジブル・アセットの投資に対する 明確な戦略を策定していることが,企業の業績 向上に貢献する」ことを骨子とした実証研究に より, 10年来のIT生産性論争に対して,結論づ .. けている.. 19)前掲注18) 20)前掲注18) Lorin 21). 27頁. 38-40頁. M.. Ⅲitt. and. "productivity, Business Surplus: Technology. Three. Different. Value", MIS. Erik. Brynjolfsson,. Profltability,and Consumer Measures. of Information. Quarterly, June 1996.. 22)角埜恭央「ビジネス価値を創造するIT経営の 進化」日科技連, 2004年. 23)前掲注22) lo員. 24)前掲注22) 65頁. 25)ニコラスG.カーは, 2003年5月号の『ハーバ 「rrDosen't ード・ビジネス・レビュー』誌に, Matter」を発表し, ITの戦略的価値をめぐる論 争を巻き起こした. ITベンダーを始めとして, 学者や実務家から,数多くの反論が寄せられた..

(21) (365). 企業における汀の価値創造に関する一考察(前田) 反論の最大の主張は, 「ITはますます進化して いき,新たなビジネス手法との一体化により, 今後においても,戦略的価値を発揮し続ける」. サイコム・インターナショナル監訳「ソフトウエ ア企業の競争戦略」 (ダイヤモンド社, 2004年) Peter. というものであった.ニコラスG.カーは,こ. 」. Jr. "The. Addison-Wesley. Mythical. Publishing. John. the. "Does Press,. IT. Matter?. M.. Christensen,. Charles Systems",. Press. ⅢaⅣard. 2004.. "The. School. Innovation's. Dilemma",. Press, 2000.. 玉田俊平太監修・伊豆原弓訳「イノベーションの ジレンマ」 (糊泳社, 2001年) Michael ≠e. A. Cusumano, Free. Press,. "¶1e Business 2004.. ●▼. of Software. ,. DMR's center and "The lnformation Companies,. (日刊工業新聞 for. Strategic. Paradox",. The. Inc. 1998.. lnfrastructure':Harvard Press,. Business. 1998.. (ダイヤ. モンド社, 2003年). 清川幸美訳「ITにお金を使うのはもうおやめなさ い」 (ランダムハウス講談社, 2005年) Harvard Business. 也. System. Inc., 1998.. 福嶋俊造訳「ITポートフォリオ戦略論」. (ダイ ",. Carr, School. New. SchooI. 2003.. G.. lnformation. 平春雄監訳・佐藤秀之他訳「利益を生む情報化投 資戦略」 (富士通経営研修所, 1999年) Peter Weill and Marianne Broadbent, "Leveraging. (ピ. CSK訳・縮「インタンジブル・アセット」 ヤモンド社, 2004年). Clayton. Thorp. McGraw-Hill. Man-. MIT. 良 Sons,. (鞠泳社, 2002年). 成田光彰訳「戦略情報システム」 社, 1988年). Company,. 滝沢徹・牧野祐子・富沢昇訳「人月の神話」 アソン・エデュケーション, 2002年) Erik Brynjolfsson, "IntangibleAssets",. "Strategic. R・ Synnott,. John Wiley. (TI∋Sブリタニカ,. "creative Sarah Kaplan, and Mckinsey and Co., Inc. 2001.. 柏木売二訳「創造的破壊」. Inc. 1995.. Business. Foster. Destruction",. 参考文献 P. Brooks,. Mckinsey. Co., Inc. 1986.. Richard. W・. Society",. (ダイヤモ. "INNOVATION",. Foster,. 大前研一訳「イノベーション」 1987年). 27)前掲注25) 162-163頁. 28)前掲注18) 57頁. 29)根来龍之監修「デジタル時代の経営戦略」 158頁,メディアセレクト, 2005年. 30)増岡直二郎「IT導入は企業を危うくする」 190-208頁,洋泉社, 2002年. 31)加護野忠男「PRESIDENT」 2003年12月15日 号 32)ピーター・ウェイル,マリアン・ブロードベ ント「ITポートフォリオ戦略論」ダイヤモンド 社, 2003年, 32-36頁. 33)前掲注32) 75頁.. Nicholas. N・. Leadership,. Month",. in the next. 2002.. 上田惇生訳「ネクスト・ソサエティ」 ンド社, 2002年) and. ている.. Joumals,. ど. Drucker,. Richard. ニコラスG.カー著,清川幸美訳「ITにお金を 使うのは,もうおやめなさい」ランダムハウス 講談社, 2005年. 26)企業価値創造説では, ITを成功させるために は, IT投資だけでなく, ITケイパビリティ能力 やITガバナンスを始めとしたいろいろなインタ ンジブル・アセット(無形資産)を最適な形に 組み合わせることが必要不可欠な条件としてい る.したがって,このようなITを補完する条件 が実現できなければ, IT投資は失敗することに なる.企業価値喪失説の立場からは, IT補完の 条件を満たすことが極めて困難であるとみなし. "Managing. F・ Dmcker,. Peter. れらの反論に応える意図で, 「DoesITMa仕er? を刊行し,反対論者からの反論に応えている.. Frederick. 53. ,. Wiseman, Richard. ". Strategic. Information. D. Irwin, Inc.. 土屋守章・辻新六訳「戦略的情報システム」 (ダ イヤモンド社, 1991年) 総務省編「平成17年版情報通信白書」 (ぎょうせ い, 2005年) 総務省編「企業経営におけるIT活用調査」 (2003 年) 小野修一「情報化投資効果を生み出す80のポイン ト」 (工業調査会, 2003年) 大和田崇・大槻繁「大丈夫か あなたの会社のIT 投資」 (NTr出版, 2002年) 角埜恭央「ビジネス価値を創造するIT経営の進化」 (日科技連, 2004年) 紺野登「知識資産の経営」 (日本経済新聞社, 1998年) 国領二郎監修・ NTrデータ・ N′ITデータ経営研究 所著「ITケイパビリティ」 (日経BP企画, 2004年) 甲賀憲二・林口英治・外村俊之「ITガバナンス」 (NTr出版, 2002年) 佐々木宏「図解経営情報システム」 (同文館, 2001年) 社会経済生産性本部編・鴇田正春監修「情報価値 経営」 (生産性出版, 2003年) 島田達巳・高原康彦「経営情報システム」 (日科.

(22) 54. (366). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3. 技連, 2001年) (東洋経済新報社, 2000 新谷文夫「図解IT経営」 年) 戦略情報システム研究会「ビッグ【6】の戦略情報 (ダイヤモンド社, 1992 システム構築方法論」 年) 田坂広志・石黒憲彦「日本型IT革命 新たな戦略」 (pⅢp研究所, 2000年) (メ 根来龍之介監修「デジタル時代の経営戦略」 ディアセレクト,. 2005年) 野中郁次郎「知識創造企業」 1996年). (東洋経済新報社,. ・. 4号(2005年12月). (白桃書房, 橋本義一「情報システムの管理」 1993年) 松嶋桂樹「戦略的IT投資マネジメント」 (白桃書 房, 2001年) (洋泉 増岡直二郎「IT導入は企業を危うくする」 社, 2002年) (中央経済社, 宮川公男編著「経営情報システム」 1999年) [まえだ ただひこ 横浜国立大学大学院国際社 会科学研究科博士課程後期].

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