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幼稚園「表現」領域における造形教材の実践的研究

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Academic year: 2021

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(1)Title. 幼稚園「表現」領域における造形教材の実践的研究. Author(s). 佐々木, 宰. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 48(1): 311-319. Issue Date. 1997-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2192. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第48巻 第1号 lo fHokka Sec i do Un i i i l i t t t Journa on( ver s on工C)Vo yofEduca .48,No .I. 平成 9年8月 Augus t ,1997. 幼稚園 「表現」 領域における造形教材の実践的研究. 佐々木. 宰. はじめに. 幼児期の表現行為は, 表現を媒介する表現形式が未分化であり, また意識的な表現と無意識的な表現が混 在しているため に, 一般的な成人の表現とは異なっ たものとしてみなされている。 特に造形表現においては 造形芸術という文化的な背景があるために, 成人の造形表現と幼児の造形表現とを同一の文脈で比較し 幼 , 児の造形を未成熟なものとみなしてしまう傾向がある。 しかし, 幼児の表現は諸感覚が未分化であるが故の総合性が重視されるべきであり, 造形表現においても 視覚ばかりではなく運動感覚や身体と密着 した体験的な活動として展開されることが望まれる。 本稿は, 幼稚園 「表現」 領域の教材として, 子どもの自由な表現の結果を子どもどう しで共有し なおか , つ成人にとっても造形表現の理解の契機となる教材例を提示する。. 1. 幼稚園教育要領と 「表現」 領域 平成元年 ( ) に示された幼稚園教育要領では, 教育目標と内容を幼児の発達の側面から 「健康」 「人 1989 ,. 「 「 「 「 「 間 関係」 , 環境」 , 言 葉」 , 表 現」 の 5 領 域 に編 成 して いる。 表 現」 領 域 は 感 性 と 表 現 に 関する 領 域」 と さ れ, そ のね らい と して 「いろ い ろ な もの の 美 しさ な ど に対 する 豊 かな感 性 をも つ」 「感 じた こ と や考 え , たこ と を様々 な方 法 で 表現 しよう とす る」 「生 活 の 中 でイメ ー ジを豊 か に し 様々 な表現 をたの しむ の3 , 」 ,. 項目が示されている。 これらのねらいは, 身近な環境における出来事や体験を表現することを通して 感性 , や創造性を養うことを目的として設定されている。 「表現」 領域の内容としては 音・形・手触り・動きなどに気付いたり楽しむ内容 美しいもの・心を動 , , かす出来事に触れてイメージを豊かにする内容, 感動したことを伝え合う楽しさを味わう内容 感じたこと , や考えたことを音や動きで表現したりかいたりつくったりする内容, 素材に親しみ工夫して遊ぶ内容 音楽 , に親しみ歌ったりリ ズム楽器を使って楽しむ内容, かいたりつくったりすることを楽しみ遊んだり飾ったり する内容, イメージを動きや言葉で表現して演じて遊ぶ内容の8項目が示されている。 これらの内容には, 音楽的表現, 身体的表現, 劇的表現, 言語的表現 造形的表現など 多様な表現の媒 , , 体による活動が含まれている。 それぞれの表現媒体は独自の表現形式を有するが これらは幼児の表現が未 , 分化であることを考慮して総合的に扱われ, 一つの領域を形成している。 幼稚園教育要領は,カリキュラムの形態からすると広領域カリキュラムの一つとして考えることができる 。 注 1 ) 年 昭和23 ( 1 948 ) の保育要領では12項目にわたる内容 が提示されていたが, 昭和3・年 ( ・ ) の幼稚園 956 注 ) 2 教育要領では6項目に整理統合され , さらに平成元年の改訂によっ て5領域となっている。 これらの保 311.

(3) . 佐々木. 宰. 育要領・教育要領の変遷に伴う項目・領域の変化を見ると,漸次統合化の方向性を示していることがわかる。 した が っ て, 現行 の 教育 要領 に お ける 5領域は, それぞれのねらいや内容の柔軟性を考慮し, 領域間のダイ ナミズムを維持しながら具体化していく必要がある。 「表 現 領域 につ いて は 平 成元 年 改 訂以 前 の 「絵画 製作」 と 「音 楽リ ズ ム」 を単純 に統 合 したも の とみ 」 ,. なすのではなく, 多様な表現の媒体や方法の体験の機会を含みうるものとして考えなければならない。 こう 注) した表現の総合的な扱い方は, 小学校生活科にも見られる 3。 また, 造形表現に関して は, 小学校図画工 作科の低学年から中学年にかけて設定されている「造形遊び」が, 造形表現の形式に拘泥しない遊び性をもっ た表現として総合的に扱われている。 このように考えると, 幼稚園 「表現」 領域における活動 は, 表現の媒体がもつそれぞれの表現形式や表現 の過程をトレースするのではなく,表現行為や表現体験そのものに意義がある と考えられる。音楽,身体,劇, 言語,造形などの表現媒体は固有の形式をもち,それぞれに芸術表現としての文化的な領野を形成している。 ・学校や中学校, 高等学校における教科教育においては, こう した文化的な領野やその体系をもとに内容が 構成される教科カリキュラムの形態を有しているが,幼稚園においては表現の手段としての音楽や造形,劇, 身体などの区別はなされつつも, これらを統合し表現としての総合性を明確にしている。 したがって, 表現 方法や表現の技術的な内容は第一義的な目標とはなりえず, 表現行為を通して創造性や感 生を育成すること が主 要 な目 標 とな っ ている。 造 形表 現 の 具体 的内容 と して は, いわ ゆる 「お 絵 かき」 と しての 絵画 表 現 が一 般 的 であ り親 しま れて いる。. また, 粘土遊びや折り紙な どの立体表現や工作的表現もよく知られている。 これらは活動の結果が作品とし て残り, 表現の始まりから終わりまでの一連のプロセス が誰の目にも明らかな造形表現である といえる。 こ れに対して, 砂場や海岸で砂の山を作ったりトンネルを掘っ たりする活動や, ままごと遊びの中で泥でお団 子を作ったり, 植物を食べ物に見立てて切ったりちぎったりする行為は, 作品と して残るような活動ではな いが, 遊びの形態を通して極めて自然で本質的な造形表現の要素をもっている。 前述の小学校図画工作科に おける「造形遊 び」も基本的にこう した遊 びの中の造形行為に着目して教科内容に取り込まれたものである。 遊び性や体験性を重視した表現活動では, 表現の形式よりも表現の行為 が中心となってくる。 言い換えれ ば, 作品を作り上げることや完成させることよりも, その過程における体験が問題なのである。 子 どもの遊 びの中には様々な要素が内在しているが, 表現活動との関わりの中で注目すべきは, 身体を通じて活動を行 うという身体性である。 幼児の表現は主観的であり, 造形表現を例にとっても, 自分の経験や思考を絵画な いし彫刻な どの造形的媒体を通じて客観的に操作し伝達する ことができるようになるの は成人の表現であ る。. したがって, 幼稚園 「表現」 領域における 内容は, 幼児の身体性を基盤にして展開される必要がある。 最 も原初的な表現の内的必然性を, 身体的な活動を通して導く ことである。. 2 幼児の造形表現と造形作品 幼児 の 造 形 表現や, 成 長 に伴う そ の変 化 につ い て は, V‐ ロ ーウ ェ ンフ ェ ル ドや R. ケ ロ ッ グらを は じめ. として様々な研究者によってなされている。 これらの研究が共通して示唆するところは, 幼児の造形表現が 一定の段階を追って発達していく という点である。 したがって, 発達段階に適さない指導は教育として意味 をも た な い こ と になる。. しかしながら, 現実には発達段階を無視した指導が「教える事項」 としてなされている場合も少なくない。 こうした傾向は,子どもの造形表現は成人の表現に至らない未熟なものであるという考え方に根ざしている。 312.

(4) . 幼稚園 「表現」 領域における造形教材の実践的研究. 未熟であるか否かを計る基準 には, 対象物を再現する能力が用いられることが多い。 そして子どもの造形表 現の発達を事物の視覚的な再現能力 の発達として捉える誤りが多い。 例えば絵画的表現では, 対象物をいか にそれらしく描くかということを発達の度合いとしてみてしまうような誤りである。 このような誤りは, 対 象物を成人の視覚的特性に則って再現した絵が上手な絵であり, そうでないものは下手な絵であるという考 え方を定着させてしまう。 幼児の造形表現の発達研究は, これに対して成長に伴う幼児の対象認識の方法と表現との関わりを明らか にし, 発達の視点から幼児の表現特性を位置づけてきた。 造形表現の発達段階の区分はそれぞれの研究者に よって違いがあるが, 一般的にはなぐり描きの段階から図式による象徴的表現の段階を経て, 視覚による統 制を伴った表現の段階へと変化 していくことが認められている。 年齢が低いほど視覚よりも運動感覚や触覚 などの身体性の感覚に基づく表現となる。 反対に年齢が高まるにしたがって表現は視覚によって得られた情 報をもとになされるよう になる。 したがっ てこのような発達経路からは, 視覚に基づく造形表現はその前段階で運動感覚や触覚を通した身 体的な感覚による対象認識やその表現を前提としていることが示唆される。 鬼丸は, 子どもの絵画表現にし ) を 身体性を基本とした造形感覚 によ て説明している 鬼丸は 「これは ばしば現れる 「観面混合注4 っ 」 , 。 , 視覚主導型の表現のように, 離れて全体を一望するのでなく, 近くで見るよう に部分に執着し 諸部分をと , らえ て 組み立 て て いる の であ る。 こ れは触 覚 的な見 かた だ と言 える の であ っ て その 理 由 は 盲 人が さ わ っ , , ) と述 べ てお り な ぐり描 きの よう な た諸 部 分 を 頭 の 中 で 組 み 立 て て 理解 す る の と 同 じだか ら である。 注5 」 ,. 運動的感覚 に基づく段階から, 視覚的傾向が加わった段階においてもなお, 身体性の感覚が表現に強固に残 存 して いる こ と を説 い て いる。. 幼児期における造形表現の身体的感覚の重要性は上記のことからも理解できる。 また 表現という行為そ , のものが身体に深く関わっていることから,その教育においては表現に内在する特性を充分に理解した上で , 教育者, 保育者の態度を決定していくことが望ま れる。 特に, 幼児の表現に見られるような無意図的で無意 識的な表出は, 視覚的統制が成される前段階の運動感覚や身体的感覚によるところが強く 伝達意図をもっ , た表現と不分離であることを考慮して教育内容を設定しなければならない。 表 現 と 表 出, さ ら に そ の 教 育 にお ける 身 体 と の 関 わ り につ い て 藤 岡 は 「表 現 は 一 般 的 には情 動 表 出 によ ,. る内的なものの流露と, 意識内容の音, 言語, 造形手段などによる形象化にわけられる。 前者は 『表出』 と 呼ばれ, 反射的, 無意図的である のに対し, 後者は 『表現』 と呼ばれ何らかの象徴を用いており 意識的 , , 形式的である。 今日の表現をめ ぐる問題の一つはこの表出と表現とが切り離された上で肥大化してきたこと ) と指摘 している さ ら に 「表 である。 そ の こ と が生 きる 力 と して の 表 現力 を衰 退さ せ て いる の である。 注6 」 。 ,. 出と表現が切断されることによって,本来の動く体の経験は,自ら感じることによって反応し行動する『主体』 としての体の経験と, 外的な規範に従って動かし反応する 『客体』 としてのからだの経験に分裂した 後者 。 が形式化 し, 技術 化 さ れる に 従 っ て か ら だは置 き ざり にさ れ ゆ がみ 閉 ざさ れて い っ た のである 表 現 , , , 。. 力を育てる学校教育は片々の技術をめ ぐる議論としてではなく こうした生きる力と結びついた表現の問題 , ) として表現の客観的な要素を教育内容として偏重す として議論されねばならないの である。 注7 ることに 」 よる身体性からの離脱を問題視している。 造形表現においては, 表現過程の結果は作品として表されるため に どう しても視覚的な側面が強調され , がちである。 しかし, いたずらに再現的要素に拘泥したり視覚的統制を表現の教育内容と混同することは , 表現過程における身体的感覚という造形表現の特徴を看過することになる。 したがって, 造形教育においては, 幼児がその発達にしたがって段階的に造形表現を行うことができるよ うな環境の保障と同時に, 体験性, 身体性を伴う教材の準備が要される。 313.

(5) . 佐々木. 宰. 造形教材. 3. ここでは, 幼児の体験性や身体 生を伴う具体的な教材例を紹介する。 前述のように, 幼児の造形行為 は, なによりも感情や思考, 経験の自由な発露を保障されなければならない。 表現体験を重視した活動では, 作 品化されにくい側面を伴う。 しかし, 幼児の造形表現には優れた象徴性が見られると同時に, 偶発的である がゆえに色彩や形態, テクスチュアなどの造形要素が純化した美的要素が見られる。 特に幼児の保育や教育に直接携わる親や保育者は, 幼児の造形表現を 「子どもの絵」 としてのみ解釈する のではなく, それらに内包される美的な側面や優れた面を理解し, 共有していく態度が必要である と考えら れる。. そのためには, 幼児の表現行為の自由さを保障した上で, 指導者や保護者などの成人にとっても造形の根 元的な要素を体験的に理解できる造形教材 が望まれる。 ここで紹介する教材例は, いわゆるオートマティッ クな技法を援用したもので, 技術的な難しさは低く設定されている。 また, 再現的な要素を排除し, 偶然に できる色彩や形態を重視している。 したがっ て, これらの教材は, 幼児はもちろん成人にとっても再現能力の高低にかかわらず適用が可能で あり, 行為そのものや, その痕跡としての色彩や形態を楽しむものである。 幼児にとっては, 表現行為が中 心となるであろうし, 成人にとっては偶発的にできた抽象的な色彩や形態の理解が楽しみとなろう。 ●フィ ンガー・ペインティング ( 1 ) 教材 につ いて フィ ン ガー . ペイ ンティ ン グは, ペー ス ト上の 絵の具 を紙 の 上 にの せ, ての ひらや 指 で 絵の具 を押 し広 げ. ながら手や指先の痕跡で描いていく方法である。 通常, 絵の具はでんぷん糊に絵の具 (顔料) を混ぜたもの を用いるが, 作品の長期保存, 絵の具の発色という点に問題がある。 ここではでんぷん糊の代わりに木工用 接着剤 (酢酸ビニルエマルジョン) を用い, 水彩絵の具 (ポスターカラー) を混ぜて絵の具とした (図1)。 木工用接着剤は水溶性で, 未乾燥の時は白色であるが, 乾燥すると透明になる。 これをメディウムとして用 いることで, 絵の具の発色を格段に向上させることができる と同時に, 作品の長期保存が可能になる。また, 木工用接着剤に混ぜた絵の具は, 接着剤の白色によって白の絵の具を混ぜたときと同じような比較的淡い色 になるが, 乾燥して接着剤が透明になる と絵の具の顔料が強い発色を伴って現れてくる。 複数の色相を用い ると, 描いているときにはわからなかった色相の混 ざり具合が, 乾燥によって徐々に現れ, 複雑な色の効果 となる。 さらに, 乾燥と描画を繰り返していく と, 色相や形態が重なり合い, より複雑な効果が得られる。 紙 はケ ン ト紙な どの 表面 が平 滑 な紙 を選 択 した。 ま た, 紙 の 四 辺 にマス キ ン グテ ー プを貼 る。 こ れは, 紙. を机などの作業台に固定するためであると同時に, 画面の四辺に余白を取り, 完成時に作品としてのプレゼ ンテ ー シ ョ ンを高 める 効 果 をもつ (図2)。. 2 ( ) 手順. . 図1. 314. 絵の具の作り方. . . 図2. マス キ ン グの 仕 方.

(6) . 幼稚園 「表現」 領域における造形教材の実践的研究. ①紙 をマス キ ン グテー プ で 机 に固 定する。 さ ら に, 貼 っ た マス キ ン グテ ー プの 若干 内側 に, 再度 マス キ ン グ. テープを重ねるように貼る。 ②絵の具を作る。 容器に木工用接着剤を入れて水彩絵の具を混ぜる。 水を加えて適当な柔らかさにする。 ③紙の上に絵の具をのせ, 掌や指先を使って絵の具を広げたり描いたりする。 手や指で直接絵の具に触れて 描 いて いく 感 触 を楽 しま せ たい。. ④描画が終わってから, 絵の具が乾く前に画面の四辺に貼ったマスキングテープのうち, 重ねて貼った方の テ ー プをは がす。 机 に紙 を 固定 して いる 方 のマス キ ン グテー プは絵の 具 が乾燥 して から は がす。. ⑤完成。 ( 3 ) 結果と考察 木工用接着剤をメディ ウムとして用いることで, 絵の具は鮮やかな発色になる。 また, 絵の具の盛り上げ も容易にできるので,指先の痕跡は絵の具の凹凸として現れ, でんぷん糊を用いるよりも堅牢な画面になる。 アクリル絵の具でも同様の効果を得る ことができるが, 木工用接着剤の方がはるかに安価であり, 大量の絵 の 具を作る こ と がで きる。. ‘ ′ ー - ー ノ \-ミ. L. ・ー , ニモ ド き ,や. . 二」 耳. かき . . ,い ′. ; も. J. . 小 碁. ◆ ,. 儀一 .. ー. ぎもご そ 図4. . . -ご ー- 「 , \-- ン メ. を ,. ・. . 『. ”. メー. . . 図5. ‐1 」J .. - ’ ノ. , --. . . . ′ , ‐. ‐. もぎ. . 1. 一r 一.. . . : ゞ ‘.. . 一編・. 図3. . . . さ. . . ′. へ. 、 . .. . . . 図6 315.

(7) . . 佐々木. 宰. 肴たきぎ 常 連. , き き ‐ . 望む. , 、. .. . 諦 キ . . . . . う孝 そ す …養 ぎ . . ぬ/. そ ご ー 、一 二 . . . \ 鰹 もき 凌 ぎ ー ・ ・ ノ r ′ . - } ′ - こ 一. ・. ′ ′. . キジ. . 図7. { ▲ 、. 図8. できあがった作品の鑑賞を, 色彩や形態の側面から造形的な価値観で行うことは幼児にとっては難しい。 体験の面白さ, 解放感を味わった結果できあがったものとして考えさせたい。成人であれば, 色彩の豊かさ, 形態の面白さを造形的な見地から判断することが可能である。 抽象的表現やアクションペインティ ングなど 現代芸術における表現を体験的に理解する と同時に, 表現行為に含まれる造形的要素から芸術表現を考える 契機となりうる。 ●シャボン玉を写す ( 1 ) 教材 につ いて シ ャ ボン玉遊 びは, 誰 にでも 経 験の ある 親 しみや す い遊 びである。 こ こで は, シ ャ ボン液 にカ ラーイ ンク な どの染 料 を加 え て 色 つ き の シ ャ ボ ン液 をつ く り (図9), そ れ を紙 に写 し取る こ と で, 思 い が けな い色 や. 形を楽しむ教材例を紹介する。 ), シ ャ ボンの 円 形 がそ の ま ま 紙 に写 色 つ きの シ ャ ボ ン液 で膨 らま せ た シ ャ ボン玉 に 紙 を 当 て る と (図10. し取られる。 シャボン玉が割れたときには, 割れた瞬間の形が鮮やかに紙に写し取られる。 顔料を紙に押し 当てて写す行為は, 最も原初的な版画であると考えてよい。 どのような形ができるかは全くの偶然によっているので, 意識的な表現とは異なる。 2 ( ) 手順 ①シャ ボン液にカラーインクを混ぜる。 同時に砂糖な どを加えると粘りがでて, 良く伸びるシャボン液にな る。. ②小皿の上でシャボン玉を膨らませる。 ③シャ ボン玉に紙を押し当てて写し取る。. ④完成 ( 3 ) 結果と考察 316.

(8) . . 幼稚園 「表現」 領域における造形教材の実践的研究. ↓ 押しつける. 図9. 図10. シ ャ ボ ン 液の 作 り 方. … 切り込み , ・. シ ャ ボ ン玉 の 写 し方. 折り込む. 1 ストローの工夫 図1. E. 一 ー ームー 一 一 キ ー竺 唖. ^. - ÷・ 選総論; -. . ~. 、. 」. ≧ ≦ ÷. 犠. へ\ 三. ・. F . r. キ. ー. . 一 一 - - 三 三 「 一. 図12. 、. . 4 図1. , . トゾー-- J. 、ニニ 主流 」 ノ 灘. 一 軍 罰# , 誓書. ・. 謙 逮 滋養 ;遮 i ・ 3 図1. ‐. - 、 - : . ・ ., .. 潮 騒- - 図1 5. これは, 日常的な子 どもの遊 びを取りあげて, それを造形表現の手段とした教材である。 シャボン玉遊び は誰にでも可能であり, それを紙に写し取るという意外性がこの教材を支えている。できあがった作品例は, 極めて精巧な写実的な絵画のようにも見え, 再現的方法を用いてもこのような結果が得られることはないだ ろう。 それだけに幼児にとっては新しい発見であり, また, 表現行為の結果としての作品の美しさは幼児で も理解することができよう。 317.

(9) . 佐々木. 宰. . F . ・ \ 々疑′ 記 r 沸 〆. 、 \ - -- キネ . *濯ぎ ,. . ー. 図16. . . 望藷 ,ミ. ニ. ー. 図1 7. 技術的な難度は低く, シャ ボン玉を膨らませることができる幼児であれば, 写し取る段階で丁寧におこな うように指導するだけで作品ができる。 成人についても同様のことがいえる。 幼児の年齢によっ ては, スト ローで息の加減をしながらシャ ボン玉を膨らませることが難しい場合がある。 主に息を強く吹きすぎる傾向 があり, こう した場合には, ストローに切り込みを入れて, 空気の逃げ口を作り, 徐々に息が送り込まれる ような細工を施すとよい結果が得られる (図11 )。 ここ で は, シ ャ ボ ン玉 を 絵 とき 皿 な どの小 皿 の 上 で膨 らま せ た の で, 作 品の 大 きさ に はお の ず と 限界 があ. る。 しかし, 平滑な板の上にあらかじめシャ ボン液を薄く引いたり, ラッ プを張っておくなどの工夫をする ことで, 大きな作品をつくることも可能である。. 4 まとめ 幼稚園「表現」 領域における表現活動の総合性, 造形表現における身体的・体験的要素からのアプローチ, さらに体験的要素を重視した造形教材例を述べた。 これらの教材例は, 小学校図画工作科における造形遊び としても適用可能なものである。 ここで紹介した教材例は, いずれもオートマティックな技法による偶発的な色彩と形態の効果を伴うもの で, 表現行為の楽しさや素材体験としての意義は幼児にとって有益なものであり, 色彩や形態の造形要素を 芸術的観点から鑑賞するという点においては成人にとっ ても有益である と考えられる。 このように, 表現体験やその結果を幼児も親や保育者などの成人も共有でき, 相互に理解できる環境の形 成は, 造形表現以外でも必要なことであり, 広領域的なカリキュラム形態となっている幼稚園の教育課程に おいては有効な教材として機能すると考えられる。. }王 0 1) 1‐ 見学, 2. リズム, 3. 休息リ 4‐ 自由遊 び, 5‐ 音楽, 6. お話, 7. 絵画, 8. 制作, 9‐ 自然観察, 1 . ごっ こ遊び・ 2 年中行事が示されている 劇遊び・人形芝居, 11 1 健康保育 。 . , . 2) 1. 健康, 2. 社会, 3‐ 自然, 4‐ 言語, 5. 絵画制作, 6. 音楽リ ズムが示されている。 3) 小学校学習指導要領 (平成元年) の生活科の学年目標の一っとして 「身近な社会や自然を観察したり, 動植物を育てたり, 遊びや 生活に使うものを作っ たりなどして活動の楽しさを味わい, それを言葉, 絵, 動作, 劇化などにより表現できるようにする。」 と示 さ れて いる。. 318.

(10) . 幼稚園 「表現」 領域における造形教材の実践的研究 4) 正面・側面などの複数の視点から捉えた要素を一つの絵として表すこと。 「折り重ね」 や 「展開図法」 な どとして呼ばれる。 5) 鬼丸吉弘, 『創造的人間形成のために』 ‐ p.47. , 勤草書房, 1996 『児童心理』 1 6) 藤岡完治, 「表現する心を育む学校教育」 . , , 1月号, 第49巻第16号, 1995 , p.16 17 7) 同上, p. .. 参考文献 ・文部省, 『幼稚園教育指導書増補版』 989 , フレーベル館, 1 ‐ ・宮脇理・真鍋一男監修, 『造形教育事典』, 建常社, ・V. ローウェンフェル ド, 竹内清他訳, 『美術による人間形成』 . , 禁明書房, 1963 『 ・R. ケロッ グ, 深田尚彦訳, 児童画の発達過程-なぐり描きからピクチュアヘ』 1 . , 禁明書房, 197 ・林建造, 『造形教育の探求』 日本文教出版 1 9 8 8 . , , ・佐伯畔・藤田典英・佐藤学編, 『シリーズ学びと文化5 表現者として育つ』 5 . , 東京大学出版会, 199 .N. スミス, 『子 どもの絵の美学』 6 . , 勤草書房, 199 ・鬼丸吉弘, 『創造的人間形成のために』 6 , 勤草書房, 199 . 『 ・内田伸子,「子どもの自己表現力を育てる 心理学的な意義 表現を通してのイメージの創造」 1月号, 第49巻第16号, , 児童心理 ,1 1995 , pp‐1 ~ 8.. 付記 本稿の教材作品例は, 児童絵画教室主催・高橋由紀雄の提供によるものである。. 3ュ9.

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