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一般行政・社会教育行政はなぜ学校教育・子どもに関わらなければならないか : 生涯学習社会と子どもの社会的発達を目指して

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Academic year: 2021

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(1)Title. 一般行政・社会教育行政はなぜ学校教育・子どもに関わらなければなら ないか : 生涯学習社会と子どもの社会的発達を目指して. Author(s). 玉井, 康之. Citation. 北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要, 3: 95-99. Issue Date. 2010-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2823. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 第3号. 平成15年3月. ReportoftheResearchandEducationCenterforLiftlongLearn1ng−HokkaidoUniversltyOfEducationNo・3 March 2003. 一般行政・社会教育行政はなぜ学校教育・子どもに関わらなければならないか 一生涯学習社会と子どもの社会的発達を目指して−. 玉井 康之 北海道教育大学釧路校. NecessityoftheGeneralandSocialEducationAdministrationSupport toSchooIEducationandChildrenfortheirSocialDevelopment YasuyukiTAMAI HokkaidoUniversityofEducation,Kushiro. はじめに一青少年の現状と地域・行政の役割 本稿の課題は、社会教育行政や一般行政が、学校教育や子どもの発達に関わることの意義と必 然性をとらえることである。これまでの日本の教育体系は、学校教育行政と学校の中で自己完結 的に展開しているが、それだけで子どもの社会的発達が滴養できるものではない。現代の子ども 達に多様な発達環境を提供するためにも、行政とりわけ社会教育行政や一般教育行政の役割はま すます大きくなる。 現在学校では、現象的に見てもいじめ・不登校・校内暴力・逸脱行為・学級崩壊などの様々な 問題が生じている。これらの問題は、学校の中で生じているものではあるが、問題の原因・背景 は単に学校だけに起因するものではなく、家庭や地域社会の変化の中で子どもの発達がゆがんで きたために生じたものである。すなわち総じて子ども達の生きる力全般が低下する中で、現象と して子どものゆがみが学校で発現しているととらえなければならない。したがって、その解決に 際しても、単に学校・教師の問題として解決できる問題ではなく、保護者・地域住民を含む地域 社会全体の問題として対応することが不可欠である。 現代の児童生徒の気質の特性は、総理府世論調査でも指摘されているように、1)我慢ができ ない、2)自分の責任によって解決するというよりも他の責任にしがち、3)人間関係がうまく 結べない(けんかもしないが皮相的な人間関係、本音を出しあわない)、4)無気力で自主性が なく指示待ちである、5)日常生活における挨拶もできず常識も欠如している、等の特性が指摘 されている。これらの特性が形成される背景は、1)人間関係の個別化と調整能力の欠如、2) 言語的コミュニケーション能力の欠如、3)自然・社会・生活体験不足による生活能力の欠如、 がある。. これらの力量は、学校教育の教科の中で身につくというものではなく、地域での遊びや体験や 様々な人間関係の中で形成されるものである。このようなことが地域でできにくくなっているの であれば、意識的にそのような体験を行う機会を地域および行政が設定していかなければならな い。そのためにも、学校がいっそう地域に開かれるとともに、学校・家庭・地域が連携していく. ことが不可欠である。学校と地域の連携の必要性とは、単に大人たちが自分たちの都合で、子ど. −95−.

(3) 玉井 康之. も。学校を利用するものではない。まずもって子どもの発達および認識の向上という教育的な観. 点が重要である。一山m一一山h=・方社会との関係が希薄化している現代の子ども達の現状からすれば、地域。 行政が子どもの社会的発達を考え、それを援助すれば、必ずそれは長期的。持続的なまちづくり の土壌を形成する。ここでは学校が地域に開かれる意味と、地域及び行政が子どもの教育に関わ ることの意味をとらえておきたい。. Ⅰ.学力低下の背景としての子どもの現実認識及び関心8意欲の低下 現在新学習指導要嶺下で、学力低下問題が大きく取り上げられているが、この間題は新学習指. 導要領になって学力低下になったものではなく、旧学習指導要領の中で生じてきたものである。 ある旧帝国大学で学生の学力が入学後どのように変化したかの実験を行った大学がある。自分. の受けた入試センター試験を1年後に再度受験するとどのようになったかをとらえるものである が、結果は入学1年後に200点ほど下がっている。これを「学力」の剥落現象とよんでいる。これ は自分の実感に結びつかないもの、因果関係や理由が分からないものは、やがて忘れ去られると いうことを示した結果であり、丸暗記等で身につけた知識は必ずしもそのまま生きた学力にはつ ながらないことを示したものである。 これは、子ども達の生活がバーチャル化し、学校で習わなくとも自然に身につけていた生活習 慣や労働体験。自然体験の機会が喪失したため、現実の認識と教科書の枠の中での知識が結び付 かなくなったことによるものである。 またこれまでの学習は、しばしば子ども達が受け身的になっており、自ら調べたり、働き掛け. て改善したり、新しいものを作ったりする経験が乏しかったため、自分自身の取り組み等による 学ぶおもしろさや参加感。達成感が欠如していたことによる。参加感。達成感の媒介としての体 験学習や調べ学習は、新しいものに取り組んでいく教育の原動力となるものである。そしてその 素材は、子ども達の現実認識の範囲からすれば、地域社会の現実の中に子ども達の身近な学習素 材が存在するのである。 さらに、これまでの受験学力では、自分で学んだことは自分のものという図式となるが、本来 的には学んだことが、社会や人のために活かされていくのが科学の目的である。したがって子ど も達が、学んだことを地域に還元したり、奉仕したり、地域づくりの活動を行うことによって、. 知識と現実認識、知識と行動、個人と社会が結びついていくのである。 このようにとらえるならば、現実の地域生活を伴わないことが、長期的な学習関心・意欲の低 下を生み、それが学力低下問題の背景となっているととらえることができる。新学習指導要領で は、地域を活かした体験的な学習や総合的な学習を取り入れており、これらを活用することで、 学校と地域を結びつけ、子ども達の認識を教科書的な狭い認識からより現実に活きて働く認識に. 広げることができる。 近年の学力概念のとらえ方としては、生活の中で生きて働く力の総体とする考え方に変わって きている。すなわち家庭・地域を含む社会生活の場面で伝承されている知恵や力やわざを含めて 学力と捉える考え方で、測定が不可能な部分も多い。すなわち、地域を豊かに活用することがで. きるならば、長期的には学力向上の条件となるのである。. 軋 なぜ学校が地域と関わることが重要なのか. −96−.

(4) 一般行政・社会教育行政はなぜ学校教育・子どもに関わらなければならないか. 1.生涯学習の基礎としての学校の役割 これまで、学校と地域の連携を強調する場合に、双方向の関係というよりは、学校への地域の. 協力を一方的に期待するというものが多かった。確かに、学校の目的は、発達に応じて当該児童 生徒を教育することであり、地域学習や地域づくり活動そのものが学校の目的ではない。しか. し、なぜあえて学校による地域づくりを問題にしなければならないのかというと、学校・教師が 地域と関わることによって、生涯学習の基礎となる児童生徒の幅広い発達をも培うことができる からである。これは単に保護者の知りたいという要求に応えるためでもなく、地域づくりのため に子どもを動員するためのものでもない。. 学校が地域学習や地域づくりに出ていくことによる児童生徒への教育的効果は、第一に、それ. によって保護者や地域住民が学校に関わりやすくなり、学校支援ボランティアなど学校への協力 を得られやすいことである。第二に、児童生徒が教師の献身的姿を見ることによって、児童生徒 にとっての潜在的な模倣学習となることである。第三に、教師自身の社会的視野も広がり、教科 書に記載されていないことでも、体験談を児童生徒に語るなど、教育活動に活かしやすくなり、. それだけ教育内容の幅が広がることである。第四に、児童生徒にとって、学校外の活動を意識す ることによって、学校教育の内容や目的を社会の現実と結び付けてとらえられるようになること. である。第五に、教師らと共に、児童生徒が奉仕活動等の地域づくりに関わることによって、地 域環境改善に自ら働きかける主体性と姿勢を身に付けることができることである。. これらの活動を通じて、教科書完結的な狭い学力概念にとらわれていた段階から、現実の社会. や生活を学力概念に取り込んだ、生涯学習の基礎を作る。学校教育の目的は、本来単に教師の指 示の受け身的な人間をつくることではなく、自らのおかれた環境と課題を考え、現実の困難を切 り開いていく人間をつくることであり、これらの地域経験がその基礎を築いていく。 また一方で、児童生徒の地域体験は、社会の現実が、保護された学校の現実と異なる点を感じ. させることにもつながる。それは、第一に、学校は同年代の同級生・友人関係が主であるが、職 場・社会では多様な年齢層や異なる階層が存在すること、第二に、学校は教えてくれる先生が常 時存在するが、職場・社会には先生が存在せず、自ら答えを出さなければならないこと、第三に、. 学校は知識の習得を直接目的とするが、職場・社会では知識の総合的応用的な活用が求められる こと、第四に、学校では、自分だけ勉強していてもすまされるが、職場・社会では常に分業と協 業が求められることである。. Ⅲ.なぜ一般行政はまちづくりにおいて、学校支援の観点を持たなければならないか 一般行政にとっても、まちづくりにおいて、子ども・教育の発達とそのための学校支援の観点 を重視しなければならない。. まず基本的には、子ども達は5年から10年後には、社会人となり、地域の担い手となるため、 5年後・10年後の地域づくりの担い手を考えた時には、現在の子ども達から育てていくことが極 めて効果的であるということである。 一般的にまちのイメージの善し悪しは、子ども時代に形成されていく。その地域を誇りに思. い、その地域の担い手となっていくかどうかは、子ども時代の体験や人間関係に規定されている。 子どもや親にとって住みやすいまちの感じ方は、次の通りである。 第一に、子どもにとって住みやすいまちとは、単なる物質的な環境ではなく、思い出が残るま. −97−.

(5) 玉井 康之. ちである。大人がどこにふるさとを感じるかというと、遊びや体験などを多く経験し、思い出が 残るまちである。第二に、学校生活では、いじめ。校内暴力などがなく、友達との人間関係があ るまちである。地域での非行が多いまちも、住みやすいまちとは感じられない。 また、子を持つ親にとって住みやすいまちとは、第一に、自分の子どもが喜んだまち。子ども. が好きなまちである。子どもが好きなまちだと感じるまちは、親は無条件で好きなまちだと感じ る傾向が高い。第二に、子どもが語るまちである。子どもが地域体験学習や見たり聞いたり体験 して面白いと感じたことは、親にも伝えるものである。子どもが調べたり体験できる条件作りを 行政としても応援していかなければならない。. 平成14年度から総合的な学習の時間が導入され どの学校も地域の調べ学習を導入している。 調べ学習の訪問先で圧倒的に多いのは、やはり市役所。役場をはじめとした公共機関である。そ の場合に、どうしても学校側の指導体制と子ども達の機関訪問の段取りの悪さが問題となり、行 政機関としては子ども達の訪問を歓迎しない傾向があるのは確かである。 しかし、そのような子ども達の調べ学習の成否の経験は、やがて行政に協力できる公共性のあ. る市民を育成するか、あるいは動かない行政機関に不信感を抱く市民を育成するかの大きな分か れ道の条件となる。公共機関から色々教えてもらったという実感と思い出が残るまちに対して は、市民自身がまちに誇りを持って、まちづくりの担い手として育とうとするのである。子ども 達の地域学習活動への支援は、やがてまちづくりの大きな条件となっていくことを前提としてお. かなければならない。. Ⅳ.学校と社会教育および一般行政が連携したまちづくり 生涯学習政策の展開の中では、やがてまちづくりや公共精神の育成が、学校教育においても大 きな課題となる。まちづくりは、とりたてて特別なことを行うというのではなく、学校がこれま でやってきたことを、若干応用するだけでもまちづくりの活動になる。活動。行事において、子 ども達への意識づけが重要となる。. 学校が関わるまちづくりの活動では、学校。教師。子どもによるまちづくりの活動と、社会教 育が中心になっている活動と連携したまちづくりの活動の二つがある。. 1.学校・教師d子どもによる地域づくり. (1)学校施設。学校行事を地域に開放 学校・教師。子どもによる地域づくりの一つは、通常学校内だけで行うような教育・文化。ス. ポーツ行事等を地域に開き、地域と一緒に行事を行うことである。運動会や文化祭には、地域住 民も企画。出品等で参加することで、学校を身近に感じ、学校を支えようという意識が高まって いく。それによって、父母。地域の学習活動及びサークルも活発化する。子ども達にとっても、 地域住民が参加することで、行事に張り合いが出る。. (2)農漁業体験学習や地域産業の勤労体験学習の実施 学校。教師・子どもによる地域づくりの二つ目は、地域の産業を知るために、地域の職業体験 等を学校。地域。行政が一体となって進めることである。例えば、農業体験に加えて、収穫祭を 地域の住民とともに祝ったり、地域の中小企業の職場体験を通じて、中小企業が生活に果たす役 割をとらえたりするなどである。子ども達の職場体験を通じて、地域住民が生産への意欲を高め る場合も多い。. −98−.

(6) 一般行政・社会教育行政はなぜ学校教育・子どもに関わらなければならないか. (3)学校生徒によるボランティア活動. 学校・教師・子どもによる地域づくりの三つ目は、ボランティア活動である。高齢者や障害者. や幼児への奉仕活動や、自然環境・地域環境保全活動などである。ボランティアには技術を要す るものも多いが、できるところから始めて、徐々に興味と技術を高めていくことが重要である0 以上のような学校・子どもが様々な学校行事や地域づくりに関わる場合には、生徒達に地域課 題を自分で見つけだし、解決方法とその実行を含めて取り組ませることが重要である。児童生徒 による地域づくりの参加と実現可能な提言の分析を行うことで、いっそう達成感も高まる。地域 づくりの意識も地域との関わりの中から、醸成されていくのであり、これらを通じて、地域への 理解や愛郷心も高まっていく。. 2.社会教育施設・行事・団体と連携しながら地域づくり 地域づくりは、生涯学習政策の一環でもあるので、社会教育行政が様々な行事等に取り組んで いる場合が多い。学校は、この社会教育施設・行政・団体等がすでに取り組んでいるものを学校 教育課程の中に取り入れることも重要である。. 例えば、1)公民館の企画やまちづくり活動などへの児童生徒の参加、2)「私のまちづくり意 見発表会」等への参加、3)「青少年リーダー育成講座」「自然体験学習講座」「ボランティア育成 講座」等の社会教育の講座への学校としての参加、4)地域のスポーツ大会やお祭りへの参加、 5)青少年活動センター等と連携した地域生活指導、6)地区の子育て運動・子育て交流活動へ の学校としての参加、などである。. また社会教育の講座などを開設して、教師が講師となり、同時に生徒にも参加してもらえるよ うに勧めることも可能である。郷土の歴史講座、家庭講座、スポーツ指導など、教師の特技を生 かしつつ、子ども達にも、教師が地域で活躍している姿を見せていくのである。. 以上のような社会教育行政との連携を進めるためには、学校経営計画と社会教育計画および一 般行政計画を計画策定前にすりあわせ、双方に活用できるものを調整していくことが不可欠であ る。年間の計画の中に、各部署が持つプログラムを相互に予定しておくことが、スムーズに教育 課程や事業を進めていく条件になる。. これからの教育は、学校と地域が相互に責任のなすりあいをしていても問題は解決しない。教 師も家庭も地域住民も、子どもの発達のためには、それぞれ独自の役割を遂行するだけでなく、 学校・家庭・地域を通した総合的な教育観を持つことが不可欠である。そして教育行政および一 般行政関係者は、それらをいかに援助できるかが、子どもの発達及び地域の発展を進める礎石と なる。教育行政は、とりわけ、学校と地域、学校と一般行政を結ぶセンター的な役割が期待され ている。. 参考図書. 玉井康之著『地域に学ぶ「総合的な学習」−学社融合時代の学校・行政の役割』、東洋館出版社、2000 年. 一99一.

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