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幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について : 新体操の現場から

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(1)

1.問題 (1)幼少期とオノマトペ  オノマトペとはフランス語[onomatopée] に語源を持ち、擬音語・擬声語・擬態語注1) 包括的に示す言葉である。近年、オノマトペは 感覚や感性を伝える言葉として本やマンガ、広 告、アニメやドラマなどを通して広く日常生活 に溢れている。私たち自身も、人とのコミュニ ケーションにおいて、無意識のうちにオノマト ペを活用している。中でも、子ども、特に乳幼 児に話しかける際には、オノマトペを多用する ことが先行研究で示されている。  近藤・渡辺1)は、保育者が幼児の行為を促 す際に動作に関するオノマトペを使用し、行為 を遂行させようとする姿が確認されたと報告し ている。上原・山本2)による保育者のオノマ トペ使用に関する意識調査では、保育者は0歳 児にオノマトペを使用する場合が一番多く、保 育者の意識としても0歳児から1歳児にかけてオ ノマトペの使用は特に有効であると捉えている と述べている。葛西3)による、こども向けの 歌のテキスト『こどものうた200』にみられる オノマトペの分析から、そこに収録されている 全202曲のうち、オノマトペが抽出された楽曲 は122曲であり、実に半数以上の楽曲にオノマ トペが含まれていることが明らかになっている。  また、日本語教育と国語科教育の双方の語彙 教育におけるオノマトペの学習のありかたを探 った坂口4)の研究によれば、国語科教科書に 見られるオノマトペは、小学校1年:82、2年: 125、3年:158、4年:144、5年:202、6年: 138、中学校1年:255、2年:170、3年:158で ある。用いられるオノマトペの形態は学年によ って異なるが、小学校1年生から中学校3年生ま での国語科教科書には数多くのオノマトペが使 用されていることがわかる。  高野・有働5)は特別支援学校の知的障害児 に対する教育的支援において、教師が使用した オノマトペと児童の反応を観察した。教室とい う場で教師が行い、かつ教育的効果をもたらす ことを前提としてなされている行為を「教育的 行為」と位置付けたうえで特に指示(個人向 け)、応援、説明(解説)の3つの教育的行為 について、オノマトペを活用する意義が高いと 考えられると報告している。  これらのことから保育・教育の現場において はオノマトペを用いて子どもとコミュニケーシ ョンを図っていることが分かり、オノマトペを コミュニケーションの重要な手段として位置付 けることができる。つまり、幼児期、学童期と もにオノマトペが保育・教育に密接に関わって いることがうかがえる。実際に、小川・下釜・ 高原・瀧・矢野6)は、オノマトペを効果的に 使うことは、幼児に豊かな生活体験を提供し、 幼児の動きやイメージを引き出すのに有効であ る、と述べている。 幼年児童教育研究 第31号 2019

幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について

─ 新体操の現場から ─

秋國  郁

(2)

(2)先行研究からの課題  オノマトペに関するこれまでの研究は、幼児 期は幼児期、学童期は学童期とそれぞれが別々 に研究されている例がほとんどで、両者を関連 付けたり、比較検討したりといった研究が少な いようである。しかし、子どもの発達や学びは 連続しており、幼稚園、保育園、幼保連携型 認定こども園と小学校との円滑な接続を図る ことが求められている7)8)9)。そこで幼児教 育施設(幼稚園、保育園、幼保連携型認定こど も園)から小学校─幼児期から学童期─へ移行 する年齢が日本では7歳であること、またジャ ン・ピアジェ10)やルドルフ・シュタイナー11) が7歳を境にした発達段階説を提唱しているこ とを踏まえて、本研究では7歳を境にして、そ れ以前(幼児期)とそれ以降(学童期)の両方 を分析する。  平成29年告示幼稚園教育要領7)、平成29年 告示保育所保育指針8)、平成29年告示幼保連 携型認定こども園教育・保育要領9)において 改訂が施され、新たに「幼児期の終わりまでに 育ってほしい姿」が付け加えられた。その中の 「(10)豊かな感性と表現」では、一人一人の 幼児が様々な表現の楽しさを発見することを大 切にし、教師、保育士、保育教諭が子どもにと ってイメージやアイディアが生まれやすい環境 を整えることの重要性が謳われている12)13)14) 「表現」という領域では、「生活の中でイメー ジを豊かにし、様々な表現を楽しむ」ことがね らいとして掲げられている7)8)9)。この場合、 「表現」とは言葉による表現だけでなく、自分 の体の動きや素材などを用いて表現することも 含まれる。  平成20年告示の小学校学習指導要領体育編15) には小学校第1学年及び第2学年に「表現リズム 遊び」の領域が加えられている。そして、平 成29年告示の小学校学習指導要領体育編16)に も第1学年及び第2学年に「表現リズム遊び」と いう項目が設けられている。この流れを念頭に、 本研究では表現・リズムが主たる内容となるス ポーツのなかから、筆者が以前関わった“新体 操注2)”をフィールドに調査する。 2.目的  近藤・渡辺17)は、保育活動の中で幼児はあ る程度正確に保育者の使用するオノマトペを理 解していると推察できるとし、比較的年齢の低 い幼児に対してもオノマトペの使用は有効であ ると述べている。その一方でオノマトペ間に は難易度が存在することも指摘している。ま た、針生18)によれば、幼児は音韻一般に対す る“感覚”を、少なくとも4歳になれば備え始 めている。このことから、4歳から7歳以前の子 どもに新体操の指導を行う際には、様々な身体 や手具注3)の動きをオノマトペを用いてイメー ジから動きにつなげていく方法の方が事細かな 説明よりも浸透しやすいと推測される。そして、 針生18)は、オノマトペに対する“感覚”が4歳 より6歳の方がさらに高く、音韻一般に対する “感覚”は4歳以降も強化されていくと述べて いる。そうだとすれば、子どもの年齢が上がる につれ、オノマトペを用いた説明が理解を増進 するだろう。ただ、日常生活で使用するオノマ トペと新体操指導で用いるオノマトペは、常に 同じではないことに配慮する必要がある。  針生18)は、子どもがすでに知っている擬音 語についてだけでなく、初めて耳にする擬音語 についても反応を示す率はチャンスレベル注4) より有意に高いと述べている。また、近藤・渡 辺17)によれば、幼児は幼児の段階ですでに動 作・状態と感情・感覚のどちらのオノマトペに 関しても、細かな違いを区別出来る程度の知識 幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について

(3)

幼年児童教育研究 第31号 は獲得しているといえる。そうだとすれば、子 どもはある程度、瞬時にオノマトペの意味を理 解できるのではないだろうか。  一方、7歳以降になると演技を指導する方法 としてオノマトペに重きを置くことで、かえっ て抽象的で伝わりにくく、子どもにとってイメ ージすることが難しい場合があるのではないか と思われる。その原因は、ただ演技内容を覚え て演技するだけでなく、一人ひとりの高度な表 現テクニック、群舞においては仲間との協調性 や同時性が求められるなどの条件が追加される ところにあると考えられる。だからといって、 7歳以降の子どもの指導にはオノマトペを一切 使わないというわけではないだろう。  そこで本研究では、新体操教室の現場におけ る指導を踏まえて、幼児期と学童期の両方の子 どもを対象に、指導者が子どもにどのようなオ ノマトペをどの程度使用しているのかを7歳を 境に調査する。そして、指導者はオノマトペを どのように工夫して使用しているのかも同時に 取り上げ、身体表現活動におけるオノマトペを 用いた指導法について考察していくことを目的 とする。 3.方法 (1)観察対象  観察の対象は、京都市内にあるAスポーツス クール注5)の新体操教室でレッスンを行う指導 者3名と彼らが担当する子ども71名(平成27年 と平成28年の合計数)である。内訳は、幼児50 分コースの子ども11名と小学生90分コースの子 ども60名であり、前者11名が7歳以前、後者60 名が7歳以降に該当する。  幼児50分コース(7歳以前の子ども)の演技 はすべて手具としてリボン注6)を用いた作品で ある。小学生90分コース(7歳以降の子ども) の演技はすべて徒手注7)の作品であるが、1作 品のみ手具の1つであるロープ注8)を用いる場 面(41秒)が含まれる。合計で6つの作品はそ れぞれ異なる演技構成だが、7歳以前3作品、7 歳以降3作品は難易度としては同じ程度になる ように指導者が話し合いながら作りあげた。演 技時間は音の鳴り始めから完全に消えるまでと する。 (2)分析手続き  平成27年度と28年度のAスポーツスクール新 体操発表会における演技指導の際に、指導者3 名が担当の子どもたちにどのような言葉を用い て指導し、作品を完成させたのかをオノマトペ に焦点をあて、分析する。発表会当日のビデオ を見ながら、子どもの動きに合わせてこれまで の練習でどのような言葉を用いて指導したのか を、指導者本人に実際に声に出し、再現しても らう。子どもの動きが分かるように発表会当日 の画面映像と指導者の再現音声を録画した。

はないことに配慮する必要がある。

針生



は、子どもがすでに知っている擬

音語についてだけでなく、初めて耳にする

擬音語についても反応を示す率はチャンス

レベル

注 )

より有意に高いと述べている。ま

た、近藤・渡辺



によれば、幼児は幼児の

段階ですでに動作・状態と感情・感覚のどち

らのオノマトペに関しても、細かな違いを

区別出来る程度の知識は獲得しているとい

える。そうだとすれば、子どもはある程度、

瞬時にオノマトペの意味を理解できるので

はないだろうか。   

一方、

 歳以降になると演技を指導する方

法としてオノマトペに重きを置くことで、

かえって抽象的で伝わりにくく、子どもに

とってイメージすることが難しい場合があ

るのではないかと思われる。その原因は、た

だ演技内容を覚えて演技するだけでなく、

一人ひとりの高度な表現テクニック、群舞

においては仲間との協調性や同時性が求め

られるなどの条件が追加されるところにあ

ると考えられる。だからといって、 歳以降

の子どもの指導にはオノマトペを一切使わ

ないというわけではないだろう。

そこで本研究では、新体操教室の現場に

おける指導を踏まえて、幼児期と学童期の

両方の子どもを対象に、指導者が子どもに

どのようなオノマトペをどの程度使用して

いるのかを  歳を境に調査する。そして、

指導者はオノマトペをどのように工夫して

使用しているのかも同時に取り上げ、身体

表現活動におけるオノマトペを用いた指導

法について考察していくことを目的とする。





.方法

 観察対象

観察の対象は、京都市内にある $ スポー

ツスクール

注 

の新体操教室でレッスンを

行う指導者  名と彼らが担当する子ども 

名(平成  年と平成  年の合計数)であ

る。内訳は、幼児  分コースの子ども 

名と小学生  分コースの子ども  名であ

り、前者  名が  歳以前、後者  名が 

歳以降に該当する。

幼児  分コース  歳以前の子ども の演

技はすべて手具としてリボン

注 

を用いた

作品である。小学生  分コース  歳以降

の子ども の演技はすべて徒手

注 

の作品で

あるが、 作品のみ手具の  つであるロー

注 

を用いる場面  秒 が含まれる。合計

で  つの作品はそれぞれ異なる演技構成だ

が、 歳以前  作品、 歳以降  作品は難易

度としては同じ程度になるように指導者が

話し合いながら作りあげた。演技時間は音

の鳴り始めから完全に消えるまでとする。



  分析手続き

平成  年度と  年度の $ スポーツスク

【表 】 歳以前の子どもの構成 【表 】 歳以降の子どもの構成 指導者 クラス・年齢 演技種目 人数 演技時間 幼児50分コース 4歳~6歳 幼児50分コース 4歳~6歳 幼児50分コース 4歳~6歳 4名 4名 3名 3分16秒 3分18秒 3分18秒 指導者A 指導者B 指導者C リボン リボン リボン 指導者 クラス・年齢 演技種目 人数 演技時間 小学生90分コース 徒手 11歳~12歳 ロープ 小学生90分コース 9歳~10歳 小学生90分コース 9歳~10歳 3分30秒 3分21秒 3分44秒 指導者A 徒手 徒手 12名 25名 23名 指導者B 指導者C

(4)

幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について (3)対象語  オノマトペの抽出にあたっては、その言葉が オノマトペであるか否かについて確認するた めに『日本語オノマトペ辞典』19)を参照した。 単なる声かけ(「せいの」、「さんはい」、な ど)は対象から除外した。また連続的に同じオ ノマトペを用いた場合は、延べ数としてその言 葉1つ1つを1カウントとした。 (4)対象語の分類  対象語となったオノマトペは、近藤・渡辺1) の5つの分類(視覚、聴覚、触覚、動作、気 分・心情)を参考にして、新体操の指導場面に 見られる視覚、聴覚、動作の3つに絞った。  「視覚」は、指導者が発したオノマトペから まず子ども自らが視覚とイメージを結びつけ、 そのイメージに基づいて動作につなげる指導の 場合とする。つまり、視覚、イメージから動 作へと2段階を踏む場合である(手を「キラキ ラ」と光るように動かす、手を「ピッ」と伸ば す、など)。  「聴覚」は、指導者が音を具体的に伝えてそ の音をもとに動きへとつなげる指導の場合や、 リズムを理解しやすいようにオノマトペをカウ ントに当てはめ、リズムをオノマトペで伝える 指導の場合である(リボンについているスティ ックを床に「トントン」と打ち付ける、「トン トントン」とステップを踏む、など)。  「動作」は、指導者が動作そのものの説明に 当たるオノマトペを用いる指導の場合である (「クルッ」と回る、足を「パーア」と開く、 など)。  近藤・渡辺・越中20)によると、オノマトペ は主観的感覚に合わせて、個性的・創作的に表 出できる特徴を持つことがその魅力的な部分で あると同時に、分類や判断の曖昧さに繋がる部 分でもある。それゆえ、本研究では、1つのオ ノマトペに異なる要素が複数含まれた場合は、 それらの中の主たる要素にしたがって分類する。 (5)倫理的配慮  調査に協力いただいた指導者には、プライバ シーは保護されること及び録音中に表出された 子どもの名前は伏せることを伝え、本研究に関 する同意を得たうえで調査した。 4.結果と考察 (1)オノマトペの表出回数 ①指導者A・B・Cがそれぞれ7歳以前の子ども に発したオノマトペの回数  7歳以前で見られた各部類の総数は、視覚が 48回(34.0%)、聴覚が46回(32.6%)、動作 47回(33.3%)とほとんど変わらない。各指導 者が7歳以前の子どもに向けて発したオノマト ペの総数は、指導者Aが63回、指導者Bが54回、 指導者Cが24回である。そして最も多用したオ ノマトペの部類に関しては、指導者Aと指導 者Cは、視覚がそれぞれ25回(39.7%)、12回 (50.0%)を占めており、指導者Bは、動作が 22回(40.7%)と最も多い回数を示している。 ②指導者A・B・Cがそれぞれ7歳以降の子ども に発したオノマトペの回数  7歳以降で見られた各部類の総数は、視覚が 18回(19.1%)、聴覚が37回(39.4%)、動作 が39回(41.5%)である。各指導者が7歳以降 の子どもに向けて発したオノマトペの総数は、 指導者Aは35回、指導者Bは46回、指導者Cは 13回である。そして、最も多用したオノマトペ の部類に関しては、指導者Aは聴覚と動作がそ れぞれ15回(42.9%)、指導者Bは動作が22回 (47.8%)、指導者Cは視覚が8回(61.5%)で

(5)

幼年児童教育研究 第31号 ある。 ③指導者A・B・Cの7歳以前と7歳以降を合わ せた全体のオノマトペ表出回数  指導者A・B・Cの7歳以前と以降を合わせた オノマトペ表出回数は、視覚が66回(27.9%)、 聴覚が83回(35.2%)、動作が86回(36.9%) である。聴覚と動作に比べて、視覚の表出が少 ない。指導者それぞれのオノマトペ表出回数は、 指導者Aが98回、指導者Bが100回、指導者Cが 37回である。指導者Aと指導者Bに比べて、指 導者Cはオノマトペ表出回数が少なく、指導者 間で使用頻度には差が見られる。 ④表出回数についての考察  指導者3名ともが、7歳以降の子どもよりも7 歳以前の子どもに向けて発したオノマトペの方 が、回数として多い結果となっている。そして、 3部類ほぼすべてにおいて、回数は7歳以前の 子どもに向けて発した方が7歳以降に向けて発 するよりも多い。しかし、7歳以前のオノマト ペ、7歳以降のオノマトペ、7歳以前と以降を合 わせた全体のオノマトペのどれをとっても、指 導者間でオノマトペの使用回数や最も多用した オノマトペの部類に関しては、個人差が見られ る。指導者によってどのような部類の言葉がけ に重きを置いているかは一様ではなかった。  指導者は7歳以前の子どもに新体操を指導す る場合、方法を文章で説明して伝えるよりも、 オノマトペを用いて指導する方がより子どもに は浸透しやすいと予想してオノマトペを使用し ているものと考えられる。このことは、新体操 に限らず、他の様々なスポーツや幼稚園、保育 園、幼保連携型認定こども園、小学校での諸活 動についても言えることではないだろうか。  次に各部類別の表出回数についての考察を 進めたい。指導者AとBは、7歳以降の子ども に対してよりも7歳以前の子どもに対しての方 が、視覚に関するオノマトペのパーセンテージ が大きい。指導者Aは、視覚の部類に関して7

しては、指導者 $ と指導者 & は、視覚がそ

れぞれ  回 % 、 回 % を占

めており、

指導者 % は、

動作が  回 %

と最も多い回数を示している。



②指導者 $・%・& がそれぞれ  歳以降の子

どもに発したオノマトペの回数

 歳以降で見られた各部類の総数は、

視覚

が  回 % 、聴覚が  回 % 、

動作が  回 % である。各指導者が 

歳以降の子どもに向けて発したオノマトペ

の総数は、指導者 $ は  回、指導者 % は 

回、指導者 & は  回である。そして、最も

多用したオノマトペの部類に関しては、指

導 者 $ は 聴 覚 と 動 作 が そ れ ぞ れ  回

% 、

指導者 % は動作が  回 % 、

指導者 & は視覚が  回 % である。



③指導者 $・%・& の  歳以前と  歳以降を

合わせた全体のオノマトペ表出回数

指導者 $・%・& の  歳以前と以降を合わ

せたオノマトペ表出回数は、視覚が  回

% 、聴覚が  回 % 、動作が 

回 % である。聴覚と動作に比べて、視

覚の表出が少ない。指導者それぞれのオノ

マトペ表出回数は、指導者 $ が  回、指導

者 % が  回、指導者 & が  回である。指

導者 $ と指導者 % に比べて、指導者 & はオ

ノマトペ表出回数が少なく、指導者間で使

用頻度には差が見られる。



④表出回数についての考察

指導者  名ともが、 歳以降の子どもよ

りも  歳以前の子どもに向けて発したオノ

マトペの方が、回数として多い結果となっ

ている。

そして、

 部類ほぼすべてにおいて、

回数は  歳以前の子どもに向けて発した方

が7歳以降に向けて発するよりも多い。し

かし、 歳以前のオノマトペ、 歳以降のオ

ノマトペ、

 歳以前と以降を合わせた全体の

オノマトペのどれをとっても、指導者間で

オノマトペの使用回数や最も多用したオノ

マトペの部類に関しては、個人差が見られ

る。指導者によってどのような部類の言葉

【表 】オノマトペの表出回数

(割合は小数点第 2 位を四捨五入)

表出数 表出数 割合(%) 表出数 割合(%) 表出数 割合(%) 1 7歳以前        7歳以降        全体        7歳以前        7歳以降        全体        7歳以前        7歳以降        全体        7歳以前        7歳以降        全体        指導者A 指導者B 指導者C 総数 視覚 聴覚 動作 (割合は小数点第2位を四捨五入)

(6)

幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について 歳以前の子どもに対して39.7%であったが、7 歳以降の子どもに対しては14.3%まで落ちてい る。指導者3名の総数でも7歳以前の分析でわず かながらも最も多かった視覚の使用回数が、7 歳以降では、聴覚および動作を大きく下回って いる。視覚はイメージから動作へと2段階構成 になっているから、ほかの2つの部類すなわち 聴覚、動作に比べて理解するのに時間がかかり、 動きとして再現することが難しいであろう。よ って、視覚は7歳以降の子どもに発する方が多 くなるのではないかと予想した。しかし、分析 の結果、7歳以前の子どもに発する方が視覚の 割合が高いことがわかり、予想とは異なった。  聴覚に関しては3名の指導者すべてが7歳以 前よりも7歳以降の方が比率として増している。 聴覚は具体的な音を頼りに動きへつなげるため、 7歳以前で多発されるかと予想したが、結果で は7歳以降の方が多く表出されている。  指導者AとBは上記のように視覚に関するパ ーセンテージは7歳以降の子どもに対してより も7歳以前の子どもに対しての方が大きい。そ の一方で、動作に関しては、指導者AとBの両 者とも、7歳以前より7歳以降の方が多く、指 導者Aは27.0%から42.9%、指導者Bは40.7%か ら47.8%と増加している。指導者Bに関して7歳 以前は54回表出のうち22回であった動作が、7 歳以降では46回のうち7歳以前と同じ22回であ る。7歳以前に比べて全体の表出数が8回少ない が、動作は7歳以前以降共に22回表出されてい る。つまり指導者AとBに関しては年齢があが るにつれて動作の要素を含むオノマトペが使用 されていることが分わかる。  以上の結果の原因または理由を今後引き続い て検討したい。 (2)実際に表出されたオノマトペ  各部類のオノマトペをどのように工夫して指 導者は使用しているのかを具体的にオノマトペ を示しながら、7歳以前と7歳以降を比較してい く。 ①視覚(イメージ)  7歳以前では指導者AとCが39.7%と50.0%を 視覚で占めていた。実際に表出された視覚の オノマトペを見てみると、「クルクル」が19 回、「パタパタ」が12回と使用回数が特に多い。 これらのオノマトペは、3名の指導者すべてが 使用し、動きによっては決まり文句のように繰 り返された。7歳以前では子どもが演技をする 際にリボンを用いるため、リボンの動きを表す 「クルクル」、「パタパタ」が多くなったと考 えられる。  視覚はイメージを持ちながら動きを導くオノ マトペとしたが、中には「シャキーン」や「ピ ン」のように他とは違った要素を持ったオノマ トペも表出されている。「シャキーン」と「ピ ン」に関しては、一旦出来上がっている形をさ らに美しく、またメリハリのある動きにするた めの言葉がけとして位置付けることができる。 そのため、同じ視覚の部類に当てはまるオノマ トペではあるが、同じ部類の他のオノマトペよ り求めるところが高度になり、子どもから見れ ば少し対応することが難しい言葉がけになるの かもしれない。7歳以前では、ある程度決まっ た種類のオノマトペの中からその時に合ったオ ノマトペを使う。この指導助言の方法は、新し い演技を指導する場合にも活用できるだろう。  一方、7歳以降の指導で見られた視覚のオノ マトペの中では、「ピッ」が8回で最も多く、2 回の「グルグル」が続いた。その他は1回のみ の使用である。7歳以前では8種類であるオノマ

(7)

幼年児童教育研究 第31号 トペが7歳以降になると使用回数は減るものの 種類は10種類と増えている。7歳以降になると、 演技を覚えるためのオノマトペではなく、動き のアーティキュレーション(メリハリ)やアゴ ーギク(速さの微妙な変化)の精度を上げるた めの“イメージすることを目的とした”オノマ トペが多くなり、その結果として1回限りの使 用や指導者独自のオノマトペの表出が見受けら れるのであろう。 ②聴覚(リズム)  聴覚は、7歳以前以降共にオノマトペの種類 は4種類と視覚と動作に比べて少ない。しか し、それぞれが何度も使用されている。「ト ン」、「グー」及び「ピョン」は演技の中で連 続して「トン・トン・トン」、「グー・グー・ グー」、「ピョン・ピョン・ピョン」といった 形で使用されたため、回数が多くなった。「ト ン」に関しては、7歳以前、以後をまとめると 54回と、どのオノマトペよりも圧倒的に表出回 数は多い。7歳以前で見られた2種類の「トン」 は実際に似た音「トン」を用いることで動きを 促す。その際、リボンのスティックをもとにす るか、自身の身体を使うかの違いはあるもの の、どちらも音を頼りに導いている。一方、7 歳以降に見られた「トン」は種類が3種類と増 え、音を頼りに身体をたたき音を再現する動作 と、1つの動き(ステップ)を「トン」に当て はめ、ダンスステップを導いたもの、また手の 動き1つを「トン」にあてた表現が見受けられ る。同じ「トン」でもリボン、身体、ステップ、 手と様々な手段で使われている。しかし、7歳 以前以降共に、「トン」と言うだけではどのよ うな動きを目指すのかは全く示せない。それゆ え、「トン」を用いるためには、視覚や動作の 要素を併用して、子どもに動きをしっかり把握

(8)

幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について させる必要がある。そのように把握させること で、子どもは何に割り振られた「トン」なのか を前後の文脈から読みとり、動きの習得につな げるのだろう。しかし、子どもの年齢が低くな ると文脈を読みとるというよりも周りの仲間の 動きから「トン」の意味を読みとっている可能 性があると考えられる。

まとめると  回と、どのオノマトペよりも

圧倒的に表出回数は多い。

 歳以前で見られ

た  種類の「トン」は実際に似た音「トン」

を用いることで動きを促す。その際、リボン

のスティックをもとにするか、自身の身体

を使うかの違いはあるものの、どちらも音

を頼りに導いている。一方、 歳以降に見ら

れた「トン」は種類が  種類と増え、音を

頼りに身体をたたき音を再現する動作と、

つの動き(ステップ)を「トン」に当てはめ、

ダンスステップを導いたもの、また手の動

き  つを「トン」にあてた表現が見受けら

れる。同じ「トン」でもリボン、身体、ステ

ップ、手と様々な手段で使われている。しか

し、 歳以前以降共に、

「トン」と言うだけ

ではどのような動きを目指すのかは全く示

せない。それゆえ、

「トン」を用いるために

は、視覚や動作の要素を併用して、子どもに

動きをしっかり把握させる必要がある。そ

のように把握させることで、子どもは何に

割り振られた「トン」なのかを前後の文脈か

ら読みとり、動きの習得につなげるのだろ

う。しかし、子どもの年齢が低くなると文脈

を読みとるというよりも周りの仲間の動き

から「トン」の意味を読みとっている可能性

があると考えられる。



③動作(説明)

指導者  名の動作に関するオノマトペの

表出総数は  歳以前が %、 歳以降が

%と、割合では最も差が少ない結果が

出ている。

 歳以前では最も多く表出された

オノマトペ上位  つは「フリフリ」の  回、

「クルクル」の  回、

「バタバタ」の  回で

ある。

 歳以前で使用回数が多いオノマトペ

は反復の形で構成されている。

 歳以前の動作では、 歳以前の視覚と聴

覚に比べ、使用回数が  回限りのオノオマ

トペが  種類と多い。その結果、種類は 

種類と  歳以前の中では視覚、聴覚よりも

多くなる。 歳以前では  回限りの使用は

動作にしか見られない。つまり、動作のオノ

マトペを用いて、様々な  回限りの動きを

促しているのだろう。また、動作の中には、

子どもの演技の動きを導く言葉がけだけで

なく表情に関する「ニコー」

「ニコッ」とい

ったオノマトペも表出されている。 歳以前

の場合は、新しい動きや、普段なかなか使わ

ない動きの習得を図る場合に動作のオノマ

トペを使用していると考えられる。

一方、

 歳以降の動作に関しては

「グルン」

と「グー」がそれぞれ  回と最も多く表出

された。また、

「グルン」

「ゴロン」

「グル

ーン」と、似たような言葉がけが使用されて

いる。早く回る「グルン」に比べ、

「グルー

ン」は勢いを抑え、ゆっくりと回っている。

また、

「グルン」は立っている状態から軸足

に他方の片足をかけて素早く回っているの

【表 】聴覚に関して表出されたオノマトペ



分類 オノマトペ 回数 目指す子どもの様子 トン[リボン]  リボンにつながっているスティックを床に打ち付ける動作を目指す グー  足を閉じ、膝を曲げながらリズムを取ることを目指す ピョン  足を閉じた状態で連続的に横に跳ぶ動きを目指す(イメージは高くよりは細かく) トン[身体]  仲間と手のひらを合わせ、打ち付ける動きを目指す トン[ステップ]  ステップを刻む際に用い、1ステップ=トン(3ステップを踏む場合→トントントン)とし、ステップの習得を目指す トン[身体]  仲間と手のひらを打ち付ける動きや自身の手のひらとひざを合わせ音を出す動きを目指す トン[手]  リズムよく腕を動かすことを目指す パンッ  ポーズをしっかり止めることや大きくポーズを見せることを目指す(パンっと言う代わりに手を叩いて促すこともある) 7歳以前 7歳以降

に対して、「ゴロン」は背中を床に付けて、

横転している。この点は、 歳以前には見ら

れない。 歳以前に比べて、 歳以降の方が

オノマトペの細かなニュアンスを子どもが

理解し、動きとして表現していると考えら

れる。



⑶協応的オノマトペ

注 



ここまではオノマトペ  つ  つを見てき

たが、ここからは指導者がどのような工夫

の中でオノマトペを用いているのかについ

て見ていく。オノマトペといっても、オノマ

トペ  つ  つが単独で効果を生むものもあ

れば、いくつかのオノマトペや言葉が組み

合わされている場合もある。そこで以下は

協応的オノマトペについて例を挙げながら

述べる。



①視覚と聴覚の協応

表  の D と E)は視覚と聴覚のオノマト

ペが複合的に組み合わされている。それゆ

え、オノマトペ  つ  つはイメージまたは

リズムの意味を持って存在しているけれど

も、

 つ1つのオノマトペを単独で使用する

のではなく組み合わせること、続けて使う

ことで視覚からイメージを生み出すオノマ

トペ―例えば D ギュ、E ギュ、キラキラ、

ピッなど―にもリズムの動きを反映させて

いる。また、F パンッは音から動きを促す聴

覚のオノマトペであるが、SDQ の S は破裂

音とも呼ばれ

)

、一気に表出するイメージ

も同時に得ることができるので、視覚と聴

覚が協応するオノマトペになると考えられ

る。

オノマトペの組み合わせを工夫すること

で、年齢の低い子どもにもイメージとリズ

ムの両方を組み合わせた難易度の高い動き

を無理なく習得させることが可能であると

考えられる。



【表 】動作に関して表出されたオノマトペ



分類 オノマトペ 回数 目指す子どもの様子 フリフリ  腰を左右に動かす動作を目指す クルクル  自分自身が足踏みしながらその場でまわる動きを目指す バタバタ  うつ伏せに寝転がり、足を交互に、そして上下に、動かす状態を目指す パーア  足を閉じている状態から一気にジャンプしながら開く動作を目指す ニコッ  笑顔で踊ることを目指す ニコー  笑顔で踊ることを目指す グルーン  軸足でない足を軸足に掛け、手を広げながらまわる動きを目指す グルン  軸足でない足を軸足に掛け勢いよくまわる動きを目指す ドン  走り出す合図 パンッ  リボンを持っている状態からリボンを離すことを目指す ギュ  二人組で手を合わせ握る状態を目指す パー  立っている状態から足を開き、そのまま開脚する動きを目指す ピョン  上に跳ぶ動きを目指す グルン  軸足でない足を軸足に掛け勢いよくまわる動きを目指す グー  足を広げて立っている状態から、ジャンプをして足を閉じる動作を目指す パー  足を閉じている状態から一気にジャンプしながら開く動作を目指す フリフリ  腰を左右に動かす動作を目指す パタ  うつ伏せに寝転がり、足を交互に、そして上下に、動かす状態を目指す グルーン  腕を縦に回しながら大きく反る動きを目指す ゴロン  床の上で背中を付け、足を開いて横転する動作を目指す 7歳以前 7歳以降 ③動作(説明)  指導者3名の動作に関するオノマトペの表 出総数は7歳以前が33.3%、7歳以降が41.5%と、 割合では最も差が少ない結果が出ている。7歳 以前では最も多く表出されたオノマトペ上位3 つは「フリフリ」の9回、「クルクル」の8回、 「バタバタ」の7回である。7歳以前で使用回数 が多いオノマトペは反復の形で構成されている。  7歳以前の動作では、7歳以前の視覚と聴覚に 比べ、使用回数が1回限りのオノオマトペが4

(9)

幼年児童教育研究 第31号 種類と多い。その結果、種類は13種類と7歳以 前の中では視覚、聴覚よりも多くなる。7歳以 前では1回限りの使用は動作にしか見られない。 つまり、動作のオノマトペを用いて、様々な1 回限りの動きを促しているのだろう。また、動 作の中には、子どもの演技の動きを導く言葉が けだけでなく表情に関する「ニコー」、「ニコ ッ」といったオノマトペも表出されている。7 歳以前の場合は、新しい動きや、普段なかなか 使わない動きの習得を図る場合に動作のオノマ トペを使用していると考えられる。  一方、7歳以降の動作に関しては「グルン」 と「グー」がそれぞれ11回と最も多く表出され た。また、「グルン」、「ゴロン」、「グルー ン」と、似たような言葉がけが使用されている。 早く回る「グルン」に比べ、「グルーン」は勢 いを抑え、ゆっくりと回っている。また、「グ ルン」は立っている状態から軸足に他方の片足 をかけて素早く回っているのに対して、「ゴロ ン」は背中を床に付けて、横転している。この 点は、7歳以前には見られない。7歳以前に比べ て、7歳以降の方がオノマトペの細かなニュア ンスを子どもが理解し、動きとして表現してい ると考えられる。 (3)協応的オノマトペ注9)  ここまではオノマトペ1つ1つを見てきたが、 ここからは指導者がどのような工夫の中でオノ マトペを用いているのかについて見ていく。オ ノマトペといっても、オノマトペ1つ1つが単独 で効果を生むものもあれば、いくつかのオノ マトペや言葉が組み合わされている場合もある。 そこで以下は協応的オノマトペについて例を挙 げながら述べる。 ①視覚と聴覚の協応  表7のa)とb)は視覚と聴覚のオノマトペが 複合的に組み合わされている。それゆえ、オノ マトペ1つ1つはイメージまたはリズムの意味を 持って存在しているけれども、1つ1つのオノマ トペを単独で使用するのではなく組み合わせる こと、続けて使うことで視覚からイメージを生 み出すオノマトペ─例えばa)ギュ、b)ギュ、 キラキラ、ピッなど─にもリズムの動きを反映 させている。また、c)パンッは音から動きを 促す聴覚のオノマトペであるが、panのpは破 裂音とも呼ばれ21)、一気に表出するイメージ も同時に得ることができるので、視覚と聴覚が 協応するオノマトペになると考えられる。  オノマトペの組み合わせを工夫することで、 年齢の低い子どもにもイメージとリズムの両方 を組み合わせた難易度の高い動きを無理なく習 得させることが可能であると考えられる。 ②聴覚と動作の協応  表7のd)は聴覚と動作のオノマトペが複合 的に組み合わされている。聴覚であるグーと共 に動作であるパーアを用いることで、パーアに もリズムの要素が加わったと考えられる。一方、 e)バタバタとf)フリフリは、練習の段階で指 導者がカウントに当てはめ、オノマトペを伝え て指導していた。その場面を発表会当日の映像 で確認したところ、子どもたちは本番でもカウ ントに合わせ、足の入れ替えや腰の振り方にズ レを生ずることなく周りの子どもと同じタイミ ングで演技をしていた。どちらの場合も左右の 足や腰を動かすタイミングや仲間との同時性を、 7歳以前の子どもたちが習得している。単独で は動作の説明に当たるオノマトペが、カウント に当てはめ、続けて活用することでリズム(聴 覚に属する)の習得に自然とつながったようで ある。カウントに合わせた動きをすることや仲

(10)

幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について 間と動きを合わせることを特に指摘しなくても、 指導者が伝え方をこのように工夫することで自 然と子どもはリズム感覚を習得し、演技の完成 度を上げることができると考えられる。 ③視覚と動作の協応  今回の調査ではこれに該当する事例が見つか らなかった。 ④視覚と聴覚と動作の3つの協応  表7のg)パタパタパタは本来、動作に関す るオノマトペであり、e)バタバタとf)フリフ リに似ている。しかし、g)は動作と聴覚だけ でなく、視覚も加わっていることがつま先に焦 点を当てることで捉えることができる。e)バ タバタとg)パタパタパタは動きとしては全く 同じであるが、発表会当日の映像を通して見比 べると、e)バタバタとg)パタパタパタには 大きな違いがある。どちらも、つま先に関して は指導者から何も伝えていないが、g)パタパ タパタの方が明らかにつま先を伸ばすことが できている。丹野22)によれば、これはオノマ トペの音象徴に関するものであると考えられる。 e)バタバタは濁音が使われているのに対し て、g)パタパタパタは半濁音である。音の印 象から濁音は「荒い」、「強い」、「粗悪」な どを感じさせ、半濁音は音の印象から「鋭い」、 「弾力的」、「軽い」などを感じさせる。これ らの印象に影響されて、e)バタバタとg)パ タパタパタでは異なった動きが生じたものと推 測できる。  オノマトペを分類して考察する中で、オノマ トペそのものを分析しても見つからなかった協 応的オノマトペについて、気付くことができた。 表7に挙げた7つの協応的オノマトペ以外にもた くさんの例が存在すると予想される。オノマト ペを単独で使用する場合、同じオノマトペを連 続して使用する場合、異なるオノマトペを組み 合わせて使用する場合、オノマトペをカウント と一緒に用いる場合、それぞれによってオノマ トペの性質が変わってくることについて、さら に多くの事例に基づいて検討する必要がある。

②聴覚と動作の協応

表  の G は聴覚と動作のオノマトペが複

合的に組み合わされている。聴覚であるグ

ーと共に動作であるパーアを用いることで、

パーアにもリズムの要素が加わったと考え

られる。

一方、

H バタバタと I フリフリは、

練習の段階で指導者がカウントに当てはめ、

オノマトペを伝えて指導していた。その場

面を発表会当日の映像で確認したところ、

子どもたちは本番でもカウントに合わせ、

足の入れ替えや腰の振り方にズレを生ずる

ことなく周りの子どもと同じタイミングで

演技をしていた。どちらの場合も左右の足

や腰を動かすタイミングや仲間との同時性

を、7歳以前の子どもたちが習得している。

単独では動作の説明に当たるオノマトペが、

カウントに当てはめ、続けて活用すること

でリズム(聴覚に属する)の習得に自然とつ

ながったようである。カウントに合わせた

動きをすることや仲間と動きを合わせるこ

とを特に指摘しなくても、指導者が伝え方

をこのように工夫することで自然と子ども

はリズム感覚を習得し、演技の完成度を上

げることができると考えられる。



③視覚と動作の協応

今回の調査ではこれに該当する事例が見

つからなかった。



④視覚と聴覚と動作の  つの協応

表  の J パタパタパタは本来、動作に関

するオノマトペであり、H バタバタと I フ

リフリに似ている。しかし、J は動作と聴覚

だけでなく、視覚も加わっていることがつ

ま先に焦点を当てることで捉えることがで

きる。H バタバタと J パタパタパタは動き

としては全く同じであるが、発表会当日の

映像を通して見比べると、

H)

バタバタと J)

パタパタパタには大きな違いがある。どち

らも、つま先に関しては指導者から何も伝

えていないが、J)パタパタパタの方が明ら

かにつま先を伸ばすことができている。丹



によれば、これはオノマトペの音象徴

に関するものであると考えられる。H)バタ

バタは濁音が使われているのに対して、J)

パタパタパタは半濁音である。音の印象か

ら濁音は「荒い」

「強い」

「粗悪」などを感

じさせ、半濁音は音の印象から「鋭い」

「弾

力的」

「軽い」などを感じさせる。これらの

印象に影響されて、H)バタバタと J)パタ

                          > @内は当てはめたカウント





a)トン[1 2]トン[3 4]トン[5 6]ギュ[7 8] b)トン[1]ギュ[2]パッ[3 4]キラキラ[5 6]ピッ[7 8] c)1 2 3 4 パンッ[5 6]パンッ[7 8] d)グー[1 2]グー[3 4]グー[5 6]パーア[7 8] e)バタバタ[1 2]バタバタ[3 4]バタバタ[5 6]バタバタ[7 8] f)フリフリ[1 2]フリフリ[3 4]フリフリ[5 6]フリフリ[7 8] g)1 2 3 4 パタ[5]パタ[6]パタ[7] 8 視覚 聴覚 動作 【表 】オノマトペの協応



(11)

幼年児童教育研究 第31号 5.まとめ  本研究では、新体操教室の現場における指導 を踏まえて、幼児期と学童期の両方の子どもた ちを対象に、指導者は子どもにどのようなオノ マトペをどの程度使用しているのか、またオノ マトペをどのように工夫して使用しているのか を明らかにすることを目的とした。その結果、 7歳以降よりも7歳以前の方がオノマトペを多用 して指導していることがわかった。視覚に関し ては、7歳以前ではある程度決まったオノマト ペを使用している一方、7歳以降では“イメー ジすることを目的とした”オノマトペが多く なり、1回限りの使用や指導者独自のオノマト ペが見受けられた。聴覚は、7歳以前以降共に、 種類は少ないものの、それぞれが何度も使用さ れた。しかし、同じオノマトペであっても子ど もに求める動きは異なる場合がある。動作につ いては、7歳以前では動作の要素を含むオノマ トペを用いて1回限りの動きを促していた。7歳 以降になると、オノマトペの細かなニュアンス を子どもが理解し、動きとして表現しているこ とが示された。また、協応的オノマトペに関し て、複数のオノマトペが組み合わされたり、連 続的に用いられたりすることでオノマトペの性 質が変わってくることもあることがわかった。  新体操の指導現場では指導者がどのような動 きを子どもに求め、そのためにどのようなオノ マトペを含む言葉がけを行うかによって、子ど もの演技が変わっていく可能性があることが示 唆できたのではないだろうか。  残された課題は以下の3点である。1つ目は、 本研究では7歳以前の子どもと7歳以降の子ども を比較したが、7歳以前は11名、7歳以降は60名 と両者で人数が大きく異なる。そして、両者の それぞれの作品同士でも演技の内容も異なる。 これらの差異をなくして、条件をできるだけ揃 えたうえで検討するのが望ましいだろう。2つ 目は協応的オノマトペについて本研究を土台に さらに事例を充実させて考察を加えていくこと である。また、オノマトペを含む言葉がけには、 それに合わせたボディランゲージを併用してい る場合が多い。本研究では練習そのものの観察 ではなく、後日、発表会当日のビデオを見なが ら、どのような言葉がけを行ったかを再現をし てもらった。その結果、指導者の動きまで観察 できず、どのようなボディランゲージをオノマ トペと共に用いて演技指導を行っていたかはわ からないままである。しかし、子どもにとって 理解しやすい、またより自然で無理のない導き 方という点から考えると、当然ながら多くのボ ディランゲージを併用していただろうと推測で きる。この点を明らかにすることを3つ目の課 題として今後も引き続き検討していきたい。 【注】 注1)擬音語・擬声語は事物の音や人・動物な どの声をまねて言葉とした語のこと。擬 態語は、音響には直接関係のない事象の 状態などを間接的に模倣し、象徴的に言 語音に写したもの。 注2)「新体操」(rhythmic gymnastics)とは、 リボンやボールなどの手具を用いながら、 音楽に合わせた演技の芸術性を競う体操 競技。 注3)「手具」とは、体操、特に新体操の競技 で用いる道具。ロープ、フープ、クラブ、 リボン、ボールなどがある。 注4)「チャンスレベル」とは、ある事象が偶然 生じる確率のこと。例えば、二択問題で は、マルとバツともにチャンスレベルは 50%となる。 注5)協力いただいた京都市のAスポーツスク

(12)

ールは、水泳、体操、新体操、卓球、空 手、キッズダンス、フィットネスのレッ スンが開かれ、子どもだけでなく大人も 活用できる総合施設である。新体操教室 には、幼児50分コース(3歳から6歳)、 小学生50分コース(6歳から12歳)、小学 生90分コース(7歳から12歳)、中高生90 分コース(13歳から18歳)が設けられて いる。そして、新体操の基本的な動きや 手具操作などのレッスンを行っている。 注6)「リボン」とは、スティックと呼ばれる棒 の先に細長い布が付いた手具。スティッ クの部分を手で握り、布の部分をヘビ状、 らせん状などに動かして演技する。この 名称は演技種目名としても用いる。 注7)「徒手」とは、新体操競技に含まれる一種 目。これには手具を用いない。 注8)「ロープ」とは、ロープの両端に結び目 をつけたもので、ロープを跳ぶ、投げる、 回すなどして用いる。この名称を演技種 目名としても用いる。 注9)「協応的オノマトペ」とは、視覚と聴覚な ど複数の機能や器官が同時に働くオノマ トペを意味する。 【引用・参考文献】 1)近藤綾・渡辺大介(2008)保育者が用いる オノマトペの世界.広島大学心理学研究.8. 255-261 2)上原郁美・山本真由美(2015)保育場面に おける保育者のオノマトペ使用に関する意 識.徳島大学人間科学研究.23.1-17 3)葛西健治(2012)こどものうたにおけるオ ノマトペに関する一考察.こども教育宝仙 大学紀要.3.33-43 4)坂口昌子(1995)教科書にみえるオノマト ペ.奈良教育大学国文:研究と教育.18. 26-49 5)高野美由紀・有働眞理子(2010)養護学校 の教師発話に含まれるオノマトペの教育的 効果.特殊教育学研究.48(2).75-84 6)小川鮎子・下釜綾子・高原和子・瀧信子・ 矢野咲子(2013)幼児の身体表現活動を引 き出す言葉かけ─オノマトペを用いた動き とイメージ─.佐賀女子短大研究紀要.47. 103-116 7)文部科学省(2017)幼稚園教育要領 8)厚生労働省(2017)保育所保育指針 9)内閣府・文部科学省・厚生労働省(2017) 幼保連携型認定こども園教育・保育要領 10)ジャン・ピアジェ(1968)思考の心理学 ─発達心理学の6研究─.滝沢武久(訳). みすず書房.9-82 11)ルドルフ・シュタイナー(1985)現代の教 育はどうあるべきか.佐々木正昭(訳). 人智学出版社.62-84 12)文部科学省(2018)幼稚園教育要領解説. フレーベル館.72-73 13)厚生労働省(2018)保育所保育指針解説. フレーベル館.82-83 14)内閣府・文部科学省・厚生労働省(2018) 幼保連携型認定こども園教育・保育要領解 説.フレーベル館.66-67 15)学習指導要領データベース作成委員会(国 立教育政策研究所内)(2001)学習指導要 領データベース.情報取得2018/10/30 16)文部科学省(2017)小学校学習指導要領 17)近藤綾・渡辺大介(2010)幼児のオノマト ペ知識に関する研究.幼年教育研究年報. 32.29-36 18)針生悦子(2010)幼児における擬音語の理 解─濁音文字知識の影響に注目して─.教 幼少期の身体表現におけるオノマトペを用いた指導法について

(13)

育心理学研究.58.275-284 19)小野正弘(2007)日本語オノマトペ辞典. 小学館 20)近藤綾・渡辺大介・越中康治(2008)自然 体験活動の中で見られる幼児のオノマトペ の機能に関する一考察─観察事例による検 討─広島大学大学院教育学研究科紀要.57. 305-312 21)浜野祥子(2017)「スクスク」と「クスク ス」はどうして意味が違うの?.窪薗晴夫 (編).オノマトペの謎─ピカチュウから モフモフまで.岩波書店.10-14 22)丹野眞智俊(2005)オノマトペ《擬音語・ 擬態語》を考える.あいり出版.96-102 謝 辞  研究にご協力いただいた新体操教室に心より 感謝いたします。データ収集で、同教室の指導 者の皆様にご協力いただきました。記して、謝 意を表します。 幼年児童教育研究 第31号

参照

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