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労働と言語とを通しての知識の形成(その一)

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(1)Title. 労働と言語とを通しての知識の形成(その一). Author(s). 山本, 嘉太郎. Citation. 北海道學藝大學紀要. 第一部, 10(1): 11-23. Issue Date. 1959-07. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3707. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第 lo 巻 第 1 号. 北海道学芸大学紀要 (第一部). 昭和34年7月. 労働 と言 語 と を通 しての 知識 の形 成 (その 一) 山. 本. 嘉. 太. 郎. 北海道学芸大学旭川分校哲学研究室. ・ Kataro YAハ ro : Format IAMO ion of Knowl edge through Labour and Language. (一) 労働を通 しての知識の形成 知識は対象についての知覚的認識と思惟的認識と の不可分の有機的統一および両者の無限の発展 的な反復を通 して形成せられ発展せしめられるものである, しかしこの知識の形成と発展の過程 で 労働と言語とが不可鉄の重要な役割を果た して来たことはすでにエンゲルスが彼の未完成に終った 論文 「猿の人間化に於いての労働の 役割」 に於いて着想した通りである ここでは我々は エンゲ , , ルス以後の諸科学の研究の成果に基き, 人間がどのような仕方でこの労働の実践と言語への表現と を通して知識を形成し発展させて来たかについて考察する, l. 人間がホモサピエ ンスの方向に向って進化し始めたのは新生代の第四期以来のことである この , 新生代の第四期は現在からは数十万年以上の過去に始まって今日に至る地質時代のことであり こ , れはまた洪積世と沖積世とに分けられる, 新生代の第三期が終 り, この第四期が始まってから地球 の表面には非常に寒冷な気候 の氷雪期と比較的に温暖な気候の間氷期がかわるがわる訪れて来た , すなわち今までに確認せられたと ころでは十万年以上にもおよぶ大氷雪期は四度経過し 地域に依 , っては五度も経過 した. 現在の沖積世は第四氷雪期と第五氷雪期との間の第四間氷期に属する こ , の激変する地球上の生活圏の中で, なかんずく氷雪がこの生活圏の大部分を被うた寒冷な大氷雪期 の中 で, 生 存 し続 け る こ と は も ろ も ろ の 生 物 に と っ て極 め て 困 難 な こ と で あ っ た も ろ も ろ の 生 物 ,. はこのような冷厳な自然の中 で自己の種扇を存続するためにあらゆるエネルギーを動員 しそう して 生存 闘争をおこなった. この冷厳な自然の中での生存厨 1争にまげていくつかの生物の種族は 絶 滅 していった, 現在生存 しているもろもろの生物はこの冷厳な自然の中での生存闘争に耐えて生き残 った種族に属するものである. 人間もまたこの新生代第四期が進行する中で激変する自然と悪戦苦 闘しつつ生き続けて来た, た だし人間はこの新生代の第四期を他の生物のように自然の中に自然と して単に受動的に生き残って来たのではない, この新生代の第四期が始まった時にすでに霊長類の 一亜 ,目としてその進化の先頭に立って前進しつつあった. 彼等はその身体のすべての能力を挙げて 激変する生活環境に適応し, 且つ理想的 生存の実現に向って不断の努力を続けて来た その結果人 , 間は一段一段と飛躍的な進化を重ね, やがて現在見られるようなすばらしいホモサピエ ンスに発展 して 来た の で あ る,. 生物の中には十 数億年以上もの過去の始生代に発生したままで, 少しも進化することなく 単に , 世代交番を反復 し続け来たものもいる, たとえば現在も生存する下等な単細胞生物に属するものが これである, また或る段階まで進化した後に退化したり滅亡したりしたものもある, たとえば中生 代の巨大な植 物や動物がそれである, しかし人間だけは現在もなお無限の進化の可能性をもって不 一 11 -.

(3) . 山. 本. 嘉. 太. 郎. 断に発展 し続けてい る, このような生物の進化がどのよ うな原因に因りどのような仕方で進行する かについては現在の生物進化論はまだ十分にはこれを解明していない. しかしこの新生代の第四期 にはいってからの人間の飛躍的 な進化の最大 の原因は非常に冷厳なしかも激動する自然の中で, 個 体的にも叉種族的にも どこまでも生存し続けるために続行して来た必死の悪戦苦闘の生活であると 考えられる. つまりそれは人間が 一方に於いてはこの激変する自然に自体を順応させそう して他方 に於いてはこの冷厳な自然に働きかけて変革するところの努力の生活を倦まず携まずにいとなんで 来 た こ と で あ る と 考 え ら れ る の で あ る, 2. さて今日の人類学に従えば地球上で霊長類の或る種族から進化して最初の人間が出現 したのは新 生代の第四期にはいってからのことであり, それはまた洪積世の初期のことでもある, この最古の 人間は当 時の他の霊長類に較べて, 身体の構造についても生活の仕方についてもそうして認識の能 力についても, あまり大きな差異はないものであった, このことは第一間氷期の地層から発見され たジャワ人やペキン人の残骨から見ても明らかに知られる, しかし彼等はすでに樹上での猿類的 生 活をやめてもっぱら大地の上に下り立っての生活をいとなむようにな っていた, 彼等はこの地上で の生活をい となむ途上で次第に前肢と後肢とを別 個の活動に使用するようになった, すなわち彼等 は前肢を使用 して食物の採集や住居の製作等の仕事を開始し, またしばしば外敵との戦闘をもおこ なった, そうして彼等は このような前肢を使用 しての仕事の開始に因って必然的に後肢だけ を使用 して直立歩行するようになった, つまりここで人間は手を使用 しての労 動と足を使用しての直立歩 行 と を 開 始 した の で あ る, そ う して エ ン ゲ ル ス も 力 説 した よ う に, こ の 手 を 使用 して の労→動こそ は. 人間をホモ ピサエ ソスヘ進化させた原動力であり, その基本的条件でもあったのである. 洪積世の数十万年にもおよぶ悠久な年月を通 し, 数知れない世代を重ねて, 人間は上の手を使用 しての労働と足を使用 しての直立歩行との生活を続行して来た, その結果彼等の手は次第に細長く しなやかな且つさま ざまな仕事をすることができる精巧な技術機官へ発達していった, 足もまた漸 次に太くたくま しい且つ身体の自由で迅速な活 動を可能ならしめる 歩 行 機 官と して発達 していっ た, このように労働に因る手の発達と直立歩行に因る足の発 達とはこれ等の機官と有機的に連続 し ている身体の諸部分へも作用 してそれ等の発達を促した, すなわち人間は地平面に対 して常に垂直 に直立 して生活する身体の構造を獲得していったのである, 人間は自身をこのような構造の身体に 変化させることに因ってその頭脳をますます成長させそうしてその認識の能力を発展さ せる可能性 をも体得 したのである, 人間は数十万年もの長期にわたって労働の続行に因ってやがて漸進的に自身 の労「動力を増大し, 生産手段を発 達させて来た, その結果次第 に豊富に食物が獲得せられ, 住居がこしらえられ, それ から衣服までが作 られるようになった. これ等の生活に不可決の財貨の生産と消費の活動に因って 人間は常に自己の身体の構造ばかりではなく, 体質や意識をも変化させ発達させることができた, すなわち人間は本来主食として来た植物性の食物だけではなく動物性の食物をも生産 してこれ等を 適度に混食するようになった, その結果彼等の身体の構造は次第に調和的で長大なも のへ成長し, 体質もより強健でエネルギッ シュなものへ発達 していった, また人間は最初の過程では寒暑や雨露 や風雪をしのぎ且つしばしば外敵を防 ぐために自然にできた洞穴を探し求め, また山の斜面や丘陵 の上に横穴や縦穴を堀ってこれ等を住家に した, しかし彼等はその後には木造や石造の住宅を作り 住むようになった, さらに彼等は植物や動物の皮を加工して作った衣服をも作って着るようになっ た, このような衣食住のためのより有効なそうしてより豊富な財貨の生産は必然的に人間の生活の 様式を変化させ, 身体の性質をも進化させていった, こうして洪積世の末期にはさまざまな人種が - 12 -.

(4) . 労働と言語とを通しての知識の形成 (その一). 生成し始めていた, しかし現在の段階の人種や民族が生成するのは洪積世が終り, 沖積世が始まっ て か らの こ と で あ る,. 人間は最初には霊長類の或る種族から起源して洪積世の第一間氷期には ジャワ人級の人間の段階 に進化し, 第二間氷期にはハイデルベルク人級の人間の段階に進化した, そうして第三間氷期に至 ってネアンデルタール人級の人間の段階に進化した, 人間はこの段階に到達す るまでには悠久の期 間を費し, その進化の速度も極めて緩徐であった, 洪積世が終り現在の沖積世が始まった時にはク ロマニョン人級の人間が出現しその後の人間の進化はますます大きな加速度を加え て 進 行 して来 た, なかんずく人間が完全な意味に於いてのホモサピエンスへ向って飛躍的な発展を開始したのは 今日から数千年以前になってからのことである, それはメソポタミア人級ないしエ ジプト人級の人 間が出現した女明時代以来のことである. これ等の各段階ないし各時代に於いての人間の身体の構 造およびその能力は常に彼等の労働に因って進化し発展して来たものである, 3. 人間は手を使用しての労働に因って上のように身体の構造を進化させたが. これと同時に認 ,識の 能力を前進させそうして知識を発展させてきた. 周知の通りに人間の生来の基本的な認識機官は大 脳を中枢とする神経系とこれに連続 し共働する感覚機官とであった, 人間の認識は必らずこの認識 機官を使用 しておこなわれ, 彼等の認識の能力は常にこの認識機官の構造と能力とに依存する, と ころで上にのべたように洪積世の初期のジャワ人級の人間は他の霊長類に較 べてこれをはるかに越 えて進化した身体をまだもっておらず, それと段ちがいに巨大で 複 雑な脳をまだもっていなかっ た. 彼等はしたがって極めて低い次元の意識を しかもっていなかったのである, しかし人間はもっ ぱら手を使用 しての労働を開姶しそうして続行することに因って, また直立歩行する身体を獲得す ることに因って, 漸次にその認識機官を発達させて来た. すなわち人の認識機官は原始的なジャワ 人級人間の段階を越えて順次にハイデルベルク人級人間の段階へ, ネアンデルタール人級人間の段 階へ, クロマニョ ン人級人間の段階へと進化 し, そうして最後に現代の人間の段階へと発展して来 た の で ある,. 労働に因る人間の認識機官の発達の第一の側面はその最高中枢と しての大脳の進化である, すな わちそれは大脳の費量の増大, 構造の複雑化, そうして機能の分化の事実である. 人間の脳の中で 特に認識を司る大脳は上に述 べた人間進化の各段階を経過するたびごとに発達してその質量を増大 し, その容積を拡大して来た. それは拡大する頭蓋骨内の大部分に拡がり充ちたものになった, そ れはさらに頭蓋骨内には充ち溢れる程度の皮質部の急速で巨大な拡大のためにますます深く豊かな 回転をもつものに変化 して来た. 人間の大脳のこのような顕著な膨張はその皮質部に局在する諸種 の中枢-すなわち運動中枢, 感覚中枢, 知覚中枢, 言語中枢その他-の分化と発達の現象である. がそれはまた同時にこれ等の諸種の中枢が連合 して組織する思惟の中枢領域の生成と発展の現象で もある. もちろん情念や想像や思惟のような高い次元の意識は大脳のどの領域でまたどのような仕 方で生起するかと云う問題については今日の大脳生理学もそうして心理学もまだ十分には解明して はいない, しかしこれ等の諸科学も高い次元の意識は, なかんずく思惟のような極度に高い次元の 意識は, 大脳皮質部の中のどこかの局限された領域で生起するのではなく, むしろそれは必要に 応 じた脳の広汎な連合領域の中で生起すると考えられる, つまり単純な感覚や知覚を越えたところの 非常に高い次元の意識は大脳の或る固定した局在的領域に於いて生起するのではない, それは上の ような諸種の局在する中枢諸領域を不可鉄の要素として含む大脳の広汎な領域の共働を通して, な いしは大脳の全領域とこれに不可分的に連続している認識機官との共働を通して生起すると考えな ければならないのである. 3【 -1.

(5) . 山 本. 嘉. 太. 郎. 人間に於いてのこのような大脳を最高中枢とする認識機官の構造と能力の発達は彼等の労働を 中 心とするところの長期にわたる生存活動に因って達成せられたものである, すなわち人間は変動し てやまない外界に包まれながらこれに対応して生存しゆくためには, 常にこのような外界の存在の 仕方を認識することが必要であった- 特に人間が労働対象としての自然の或るものに働きかけて こ れを自己の生存のための必要な財貨に変革する場合にはその対象の存在の法則を正確に確認しなけ ればならなかった, そこで彼等は常に感覚機官を活動させて対象を知覚し, 手を使用 してこれに働 らきかけて来た. しかしこのような労ィ動ないし生産は感覚機官に依る知覚や手 に依る加工だけでは 果たされなU・ . それは知覚中枢や運動中枢の領域からの命令だけに依って果されるものではない, それはこのような知覚中枢と運動中枢とそれに言語中枢をも含めた大脳の広汎な領域の活動を通し て始 めて果たされる, つまりそれは思惟的認識を司る大脳の広汎な領域の連合活動を通して遂行せ られるのである, さ ら に人間は単に自然の中で自然にだけ包み支えられて生存 しているのではな い. 彼等はその労働の過程で組織し発展させた社会の中 で生存して来た, つまり人間は自然と社会 との広大で且つ複雑極りない外界の中で不断にこの外 界を認識しこれに対応しっ 生存しなければ ならなくなって来た, 人間はこのような外界の中で極度に進化 した多細胞生物体としての自身の生 存を維持し且つ自己の種族を存続させるために, 認識の最高中枢としての大脳のすべての領域を活 動させこれに連続する諸機官を挙げて共働させて来た, このような場に於いてそう して幾世代にも わたっての無限の使用ないし認識の続行に因って人間の大脳は現在の巨大で複雑な構造とすばらし い認識の能力をもつものに生成したのである, また労働を通 しての人間の認識機官の発達の第二の側面は技術機官としての手が新しく認識機官 に参加 したことである, 前にも述べたように人間の生来具有する基本的な認識機官は大脳と感覚機 官とであった, しかし労働の無 限の続行に因る手の技術機官への進化に伴って, 手もまた次のよう な仕方で認識機官としての不可鉄の役割を果たすものとなった, すな わちまず人間は感覚機官に手 を共働させて大脳に於いての認識をおこなう, たとえば人間は身近にある無生物や生物を研究する 場合にはこれ等の対象に手を加えて分解したり解剖したりして観察する, また人間はこれ等の対象 に対して大脳が思惟したところの知識の真理性を確認する場合にこれ等の対象に手で働きかけて実 験する. また人間は これ等の対象を生存のために必要な財貨に変革する方法を認識する場合にもこ れ等の対象を手で加工して解体したり組織したり育成したりする, それから人間は手で製作した諸種の道具や機械を使用 して大脳の認識の能力を飛躍的に発展させ た. 人間は洪積世にホモサ ピエンスへの進化を開始 した時にすでに, 手を使用して自然に働きかけ これ を 変 革 して ゆ く こ と ろ の, ホ モ フ ァ ー ベ ルと して 発 足 した, 人 間 の 手 は ホ モ フ ァ ー ベ ル と して. の彼等にとって不可鉄の技術機官 であったのであり, それは彼らが自然に働きかけてこれを変革す ることを基本的な役割とする機官であった, 人間は最初はこの手で直接的に自然に働きかけたが, その後このような手の役割を補助する道具を製作し始めた, 人間は最初に石器を作り, これを少し 日石器から新石器を発達させながら, 長期にわたって使用 し続けた, づっ改良 しなが ら, すなわち1 しかし今から数千年以前に始まったところの女明時代にはいってから人間は青銅器を作り, それか ら鉄器をも作って使用した, 同時に彼等は新しく機械を発明してこれを使用し始めたのである, 特 に近世このかた人間は強大な自然のエネルギーに因って働く諸種の機械を発明し, 改善を加えて来 た, そうして現代の人間はますます強大 で且つ精巧なかかる機械を発明し発達させつつある, 古来 人間が製作して来た財貨の中で手と云う技術機官を使用 しないで製作されたものは何一つない, 食 ・衣服もその他すべでの有形的な財貨は必らずこ されて来たもの 物も住居も -の手の技術を通して製作・ である, しかも人間はこのような有形的な財貨を製作する場合には常に必らず上に述 べた人工的な 4【 -1.

(6) . 労働と言語とを通しての知識の形成 (その一). 道具や機械を使用し共働させて来た. 実に道具や機械は人間の手の不可鉄の補助機官であり, それ 等は人工的なしかも強大な技術機官でもあると云える, 人間が製作して来たこのような人工的な技術機官の中にはもっぱら認識の補助のために発明せら れたものが多数ある, たとえば近世以来発明せられ次第に改良されて来たところの顕微鏡や望遠鏡 や写 真 機 等 で ある, ま た そ れ は現 代 に な っ て 発 明 せ ら れ た と こ ろ の サイ ク ロ トロ ンや シ ンク ロ トロ ンや シ ンク ロ サイ ク ロ トロ ンや ペ ー パ ー トロ ン や コ ス モ トロ ンや 原 子 炉 や 原 子 核 融合 反 応装 置 な ど で ある, そう して ま た そ れ は ウイ ル ソ ンの 霧 箱や グ レー ス ラ ー の 泡 箱等 で あ る, さ ら に ま た そ れ は. 最近になって製作されたところの電子顕微鏡や電波望遠鏡や電気計算器等である. このような道具 や機械が使用せられるたびごとに人間の視圏は飛躍的に拡大 し, 認識の能力は目ざま しい発展をと げて来た, 大 脳 は常に感覚機官を使用 しての対象の知覚を通してその対象についての知識を形成 し, そうして発展させる, 大脳の認識の能力はしたがって常に感覚機官の能力に制約せられるもの である. ところが人間が生来具有する感覚機官の能力には越えがたい限界がつきまとっていた, し かしながら人間は上に述べたような諸種の道具や機械を製作 し, これ等を生来の有限な能力をもつ ところの感覚機官の活動を補助するために使用 しはじめた, その結果人間は生来具有して来た感覚 機官 だけを使用していたのではどう しても認識することができなかったところ の対象の機造や機能 を知覚することが可能となった. そう して彼等はこのような人工的な技術機官であり感覚機官でも あるところの新しい道具や機械が発明せられるたびごとに大脳が形成する知識を新しく発展させて 来た. わけても現代の科学者たちは, ますます精巧でそうして性能の秀れたところの観 察や観測や 実験や調査に役立つ諸種の道具や機械を要求 している, そうしてまたこのような諸種の道具や機械 が必要に応じて設備されたところの巨大な研究所や観測所や調査所が次ぎ次ぎと構 築せられつつあ る, 現代の科学者 ,たちはこのような巨大な且つ複雑な構造のの研究施設の中での不断の探究を通し て新しい知識を発見しそうしてこれを発展させているのである, (二) 音声言語を通 しての知識の形成. 上に述べたような仕方で人間は技術機官を使用 して行なうところの労働を通して知識を形成しそ うして発展させて来た. がさらに彼等は言語機官を使用して形作るところの言語をも通してこれを 可能にして来たのである. この言語の中 でもっとも重要な種類は音声言語、 (話される言語) と文字 言語. (書かれる言語) とである, 前 者 は大脳と音声言語の機官 (発声機官と聴覚機官との複合機 官) との共働を通して形成されるものであり, 後者は大脳と音声言語の機官および文字言題の機官 (視覚機官 と技術機官との複合機官) との共働を通して形作られるものである, 言語の歴史に於い てはまず最初に音声言語が製作 せられ, そ れ からはるかに後世になって女字言語が製作せられた ・製作したかと云う問題については従来こ のである, ところで人間が最初にどのような仕方で言語を れを研究した多くの人たちに依ってさまざまな解答が試みられた, しかしエンゲルスも前に示 した 彼の未完成に終った論女 「猿の人間化においての労働の役割」 の中ですでに着想したように人間は 労働を開始した結果やがて相互の意識を伝達し協力し合いながら社会生活を営む必要 に 迫 ら れた が, その必要に応じて彼等は言語を創作したのである, すなわち洪積世初期の人間は, たとえば ジ ャワ人級やペキン人級の人間は, 労働を開始する以前から高等猿群的な集団生活を営んでいた, た だしそれは経済的社会構成体以前の単なる自然的群棲の集団に過ぎないものであった, そうして現 存する高等猿類の集団生活に於いても未発達な発声機官と聴覚機官とを使用 し鳴き声や叫び声の段 階の音声を通して相互に意識を伝達し合う事実が観察せられる. 労働が開始せられる以前の人間の 一1 5一.

(7) . 山 本. 嘉. 太 郎. 少人数の集団生活に於いてもすでにこのような高等猿類の意識の伝達の仕方と類 似した仕方で相互 に意識を伝達し合っていたはずである, 音声言語はすでに古くここに庭胎していた. さて上にも述べたように洪積世以来この地球の表面はしばしば長期にわたって非常な寒冷におそ われ, 生物の生存は極めて困難になった, この冷厳な生活圏の中で生存し続けるために人間は労働 を開始しそうして不断にこれを励行した, そうしてその結果生産諸力は次第に増大し始め, 且つこ れに伴って生産関係を土台とす るさまざまな社会関係が取り結ばれなければならなくなった, この ような生存のために有効な社会関係を取り結びそうして力強い社会生活を営む ために人間は彼等 の 発声機官と聴覚機官とを次第に自覚的に活動させ, そこで発声せられる 共通の音声を通して相互の 意識を伝達し且つ理解し合い始めた, この時から彼等は自覚的に音声言語の機官を使用し始めそう して音声言語の形式および意味を発達させ始めたのである, 今日の人類学は ジャワ人級やペキ ン人級 の人間の音声言語の機官がまだ十分には発達しておらず そうしてその中枢領域も狭小であった事実を確認している. この事実から推定すると洪積世の初期 の人間が話 していた音声言語はまだ極めて幼稚なものであった, それはまだ音節も 分 化 してお ら ず, 語法も確定していないものであった, それは人間 が嬰児期に本能的に話し始める段階の混沌と したものであったはずである. しかし今日の人類学は洪積世の中期のハイデルベルク人級の人間を 経てその末期のネアンデルタール人級の人間が出現 した時には, 彼等は少人数の家 族的社会の範 囲 を越えたところの部族的社会を構成して 集団生活を営んでいた事実を確 認している, そうしてまた 今日の人類学は彼等の音声言語の機官およびその中枢領域も著るしく発達 していた事実を確認 して いる. この事実から推定すると人間は数十万年にわたる社会生活 の過程で絶えず音声言語の機官を 使用 し, 談話活動をおこなって来た, その結果洪積世の末期には部族的社会の範囲の中に通用する ところの音声言語のいくつ かの体系が成立 していた. この段階の音声言語はいく つかの分化した音 節をもち, いくらか定まった語法をももっていたであろうと考えられる. 洪積世に於いては人間は音声言語の機官およびその体系を上 のように緩慢な速度で発達させて来 た. しかし沖積世にはいって からは彼等はこの機官および体系を次第に早い速度で発達 さ せ 始 め た, すなわちこの沖積世の初期に出現 したクロマニョン人級 の人間は今日の人間とほぼ同一の身体 を獲得しており, 完全なホモファーベルおよびホモサ ピーエソスの段階へ飛躍的に進 化 しつつあっ た, 彼等は漸く生産諸力を急速に増大させ始め, これに対応する原始共同体制の社会を 前 進させ た, この過程に於いて彼等はその意識も急速に発展 し, したがって彼等はそ の意識を伝達する音声 言語を急速に増加させそ うして発展させなければならなくなったのである, そ こで彼等は音声の単 位を多くの音節もしくは単音 (母音と子音) に分化して単語の急速な増加を可能にし, 且つ語法を 制定して 談話の豊富な展開を可能にした, さらに彼等は音調をも整備して意識の十分な伝達を可能 にもしたのである, 特に今から数千年以前に始まったところの文明時代にはい って以来は原始共同 体制の社会は一層の生産諸力の増大に伴って順次に奴隷制の社会への移行を開始した, そこでそれ までの部族的社会はますます多人数の民族的社会な いし国家的社会へと発展し始めた, その結果そ れまでの部族の音声言語は民族ないし国民の範囲に適用する音声言語の体系へと発展して来た, な かんずくこの女明時代の初期にメソポタ ミャやエジプトや中国の地域に定住した諸民族に依って女 字言語が制作せ られて以来は, 音声言語はこの文字言語と相互に作用し且つ促進し合いながら確実 に発展するようになった, 女明時代にはいって生産諸力のますます急速な増大に対応して社会は上 の古代の奴隷制から中世の封建制へ移 行しそうして近世の資 本主義制へ移行した, さらにそれは現 代にはいってか ら社会主義制へ移行しつつある, この過程に於いて人間は意識を飛躍的 に 発 展 さ せ, これを形成 しそうして伝達するために彼等 は音声言語をますます発展させて来たのである, 、 - 16 -.

(8) . 労→動と言語とを通しての知識の形成 (その一) 2. 上のようにして人間は相互に意識を伝達して社会 生活を営むために音声言語を発達させて来た, この音声言語を構成する諸要素は音声と意味とである, ここに音声とは音声言語の機関の活動を通 して発声せられる言語音のことであり意味とはこれに反応する大脳の活動を通して形成せられる意 識のことである. ところで彼等は上のような音声言語の発達の過程に於いてこの音声言 語を構成す る音声を意識を形成するための必 須の条件刺戟へと移行させそうしてこれを--感覚ないし知覚可 能の反射刺戟が第一次的信号刺戟の体系であるのに続いて--第二次的信号刺戟の体系へと転化さ せて来たのである. すなわち神経系は最初に多細胞生物体が自身を包みそうして不断に変化すると ころの外界に反応して全身の活動を調節しながら生存 し続けるために発生したものである, 且つそ れはこの多細胞生物体の進化に伴 って次第に進化して来たものである, そうしてそれは人体の大脳 を最高中枢とする神経系に至って最高の次 元の構造と能力とをもつものに発展したのである, つま りこの神経系は多細胞生物体が自身を包む外界からの反射刺戟に反応して反射的な生存活動を営む ための中枢的機官として発生しそうして進化して来たものなのである. 神経系のこのよう発生当初 からの属性は人間の大脳を最高中枢とする神経系に至っても一貫して本質的な属性である, したが って人間の大脳の諸種の活動は, すべてその外界からの反射刺戟に反応して生起するところの, 反 射活動の諸形態なのである.大脳の諸領域の活動は,意識を生起させるものもこれを生起させないも のも, す べて受容器の活動を通して受容されそうして求心性ノイロ ソの活動を通して伝達されると ころの反射刺戟に反応して生起するものである, 特に大脳の諸領域がおこなうもろもろの意識活動 は感覚機官の活 動を通して受容されそうして伝達されるところの身体の内外からの反射刺戟として 1 8 63年)の中で大脳 の信号刺戟に反応して生起するものである.すでにセチョーノフは 「大脳反射」( 両半球のすべての活動を反射活動として説明し,そうして決定しよ うと試みた.パブロフもこのセチ ョーノフ ・の試論を継承して 「このような体系を採用すれば思惟と云うものはその応答が制止せられ て外に現われて来ない反射であると見るべきであり, 情緒と云うものも興奮の広く拡延することに 「条件反射」 「第一講, 大脳両半球の活動を 因って強めめられた反射であると見るべきである.」 ( 927年) と考えた, パブロフ および彼の後継者たちは 研究する原理的方法の発生とその基礎付け」1 この着想から出発して条件反射学的生理学を確立しそうしてこれをますます発展させつつある, この条件反射学的生理学もますます明らかにしているように人間の神経系は幾十億個もの細胞か ら成り且つ無類の複雑な構造をもつところの反射の中枢機官 である. そうして大脳はこの神経系を 支配する最高の中枢機官なのである, 人間のこの大脳を最高中枢とする神経系は身体の内外からの もろもろの可感的な無条件刺戟および条件刺戟に敏感に且つ有効に反応しながら, 他の 生物体の神 経系に於いては全く見られないところの, 至高至大の意識活動をおこなうものである. ところで音 声言語の機官およびその体系が未発達であった時代に於いては人間は身体の内外からの反射刺戟と しての信号刺戟を主として感覚機官の活動を通して受容しそうして大脳へ伝達しながら大脳の諸領 域に於いての意識活動をおこなっていた, しかしやがて彼等はこのような仕方で形成せられる意識 を社会生活の必要に応じて, 音声言語の機官の活動を通して発声せられるところの, 特定の音声を 共通の信号刺戟と して伝達し合い始めた. この音声言語の発生の過程については前に詳 しく述べた 通りである. 人間はこの音声言語の発生以来教え切れない多くの世代にわたって不断にこのような 仕方で大脳と感覚機官とそう して音声言語の機官とを共働させ, それを通して意識を形成しそうし て信号し合って来た. その結果これ等の諸機官は常に不可分的に連関しそうして必らず有機的に共 働するところの統一的な複合的磯官へと進化した, すなわち身体の内外からの信号刺戟に反 応する ところの大脳と感覚機官との活動は必らず反射的に音声言語の機官の活動を惹起し, そうして音声 【 17 -.

(9) . 山. 本. 嘉. 太. 郎. 言語の音声に反応するところの大脳と音声言語の機官の活動は必らず反射的に感覚機官の活動を惹 起するよう になった. ただし高度に進化した人体に於いては通常前の過程では音声言語の機官の奥 朝する, がいずれにしても大脳 部だけが共働し, そうして後の過程では感覚機官の内奥部だけが共{ と感覚機官とそうして音声言語の機官とは, 常に必らず複雑な有機的な反射活動をおこなうところ の, 統一的な複合的機官へ進化したのである, その結果感覚機官の活動を通して大脳へ伝達せられ るところのもろもろの無条件刺戟および条件刺戟に次いで, 音声言語の機官の活動を通 して発生せ られ且つ大脳へ伝達せられるところの音声は新しい条件刺戟へと移行した, つまり感覚ないし知覚 を生起するところの第一次的信号刺戟の体系に対して音声言語を構成する音声は第二次信号刺戟の 体系として確立せられるようになったのである, 彼等はこの時代以来の各時代にわたって絶えずこ の音声のこのような信号刺戟への転化とそうしてそれへの強化とをおこない続けて来た, その過程 で彼等は意識と音声とをますます相互に不可分に連関しそうして相互に不可鉄的に依存し合うもの へ移行させた. その結果彼等は常にこの音声を発声し且つ聴取するための音声言語の機官の共働を 通して大脳の諸領域に於いてのもろもろの意識を形成するようにな った, つまり彼等はもろもろの こなったのである. しかもこのこと 意識を常に音声言語も しくはその内言語を通 して形成するようマ に因って彼等大脳と音声言語の機官とを相互に連関させながら進化させ, そうして意識と音声言語 とを相互に作用させながら発展させて来たのである, 3. 人間は言語の歴史に於いてはまず上のような過程を通して音声言語を発達させた, そう してやが て彼等はこの音声言語を第二次的な信号体系へ移行させながら, もろもろの意識を形成するように なった, 彼等はもろもろの意欲や情念や想念を次 第にこの音声言語を通して形成するようになって 来た. 特に彼等は意識の最高の形態である知識をこの音声言語を通して始めて形成することができ るようになった. それ では彼等はどのような仕方でこの音声言語を通して知識を形成することがで き る よ う に なっ た か,. まず第一に人間は音声言語を通して始めて知識を諸命題の体系として形成することができるよう にな フた, 知識の対象となるもろもろの事物の中 には常に外面的な現象的側面と内面的な本質的側 面とがある, 前にも述 べたように人間は最初からの認識機官として大脳と感覚機官とを具有してい た, が彼等は労働の開始と共に手を技術機官として発達させ, これを新しく認識機官に加えた. 彼 等はこの大脳と 感覚機官 と技術機官とを統一的な認識機官として活動させながら対象としての事物 の認識へ進んだ, しかし彼等がこのような認識機官の活動を通して形成することができたのは対象 としての事物の上のような外面的な現象的側面だけを反映するも のであった, それは対象としての 事物の直接的 な知覚的表象に過 ぎなかった, それは感覚機官の有限性に制約されたところの知覚的 知識であ り, 対象の可感的な部分的な側面だけを反映するものであった. 且つそれはしばしば対象 のこのような側面を歪曲して反映した ところの錯覚的表象でさえあった. しかもそれは混沌として 組織も秩序も定まらず, 極めて忘却され易いものであった, 人間はそれまでの大脳と感覚機官と技 術機官とから構成せられていた認識機官にさらに新しく音声言語の機官を加えることに因って, こ のような低い次元の知覚的知識を, 対象と しての事物の本質的側面を反映するところの, 一層高い 次元の思惟的知識へ発展させることができるようになった, ここで事物の本質的側面と云うのは事 物が偶然的にではなく常に必然的に具有する不可鉄の性質のことである, それは事物の空間 時 間 性, 量と質, 運動等のことである. なかんずく弁証法に したがっての運動はあらゆる事物のもっと も根本的で且 .っ普遍 的な属性である. 人間は対象としての事物のこのような本質的側面を反映する 知識をたやすく形成することができるようになったのではない. 彼等は実に悠久の時間を費し, 不 【 18 -.

(10) . 労働と言語とを通しての知識の形成 (その一). 断の努力を続 けながら, 対象としての事物の諸側面についての知覚的認識と思惟的認識との論理的 統÷ならびに両者の無限の発展的反復を通してこれを達成して来たのである . 人間は事物のこのような単なる知覚的知識の次元を越えたところの思惟的知識を形 成する過程に 於いてまず大脳と感覚機官と技術機官との共働を通 しておこなう分析並びに綜合の認識活動を音声 言語の機官の共働を加えて条件付け始めた. すなわち彼等はこのような認識機官の共働を通しての 事物の, このような可感的な現象的側面の判断の過程でおのおのの判断にそれ ぞれ特定の音声言語 を話しはじめた. たとえば彼等が十分に実った麦を見て 「この麦は実った麦である 」 と話しまた . おいしい林檎を食べて 「この林檎はおいしい林檎である 」 と話すように, この具体的な一連の音 . 声言語は語法上から見れば主語 (この麦は, この林檎は) と述語 (実った麦である おいしい林檎 , である) の二つの部分か ら構成せられ, またこの述語は客語(実った麦 おいしい林檎) と連語(で , ある) とから構成せ られている, 判断と結合して十分にこれを云い表わす音声言語は常に このよう な主語と述語とから構成せられるものであった, 判断はこのような形式をもつ音声言語との結合を 通して命題へ移行せしめられた, すなわちこの判断は主辞と賓辞と連辞とから構成せられる命題へ と転化せしめられたのである. そうしてここで判断は始めてはっきりとした秩序と組織とを具備し たところの具体的な存在として現実化されたのである, たしかに人間は主語と述語とを完備した音 声言語を体得する以前から或る事物についての或る判断をおこなぅことはできた, このことはたと えば嬰児の認識の仕方を考察してもたやすく知 られる, しかしこのような命題以前の判断は極めて 不明断で不確実なもの である, 人間は上のような音声言語を通して判断をおこない これを命題と , して形 成する段階に至って始めて明断で確実な判断をおこなうことができるようになっ た の で あ る, 彼等はこの段階にはいってから次第に高い次元の判断をおこなうことができるようになったの である. このような事実は高い次元の判断が命題をはなれては存在することができないことを示し て いる,. ところで人間は判断的知識をこの .ような命題として形成し始めて以後はこれを長い時間にわたっ て 記憶しておくことができるようになった, このことは命題を構成する音声言語の独特の性質とそ の有効な使用とを通して可能となったのである, 前 にも述べたようにこの音声言語は人体に於いて の条件反射の-形態である, それは各民族にそれ ぞれ個有の音声を条件刺戟と して形成せられる条 件反射である, したがって人間は社会生活の過程に於いてひとたび或る一連の音声を条件刺戟とし て命題を形成して以後は, 彼等がこの一連の音声を保存し続 ける限り, いつまでもこの命題を保存 し続けることができる, そうして彼等はこの条件刺戟としての一連の音声と同一の音声を再生させ るたびごとにいくたびでも反射的に最初の命題を再生することができるわけである もちろんこの , 音声を条件刺戟として形成せられる命題は, 後に詳くし述べる文字をそれとして形成せられる命題 ほど長い時間にわたってしかも完全に記憶せられる ことはできない. なぜなら音声は発声せられた 後から直ちに消え去ってゆく瞬間的存在である. これに対 して女字は固体的物体の表面に書写され て恒久的形像として固定されるものだからである, しかし古来人間はこのような音声を条件刺戟と して形成せられる命題を社会生活の過程に於いて無限にこれを反復して形成すると云う方法を適用 しな が ら長い時間にわたってこれを記憶してきた, この方法こそは実は条件反射一般を強化しそう してこれを記憶するためのもっとも有効な方法であったのである ただし彼等は最初からこの方法 . を自覚的に適用 して来たのではない, 彼等は最初から生存のために直接的に関係のある事物を認識 の対象として来た. そうして彼等はその後に次第に認識の対象を生存に間接的に関係のある事物へ 拡大して来た, 彼等は社会生活をいとなむために不断にそうして不可避的にこれ等の事物を認識し なければならなかった, この過程に於いて彼等はこれ等の事物の諸側面を無限に反復して判断し且 - 19 -.

(11) . 山 本. 嘉. 太. 郎. つその結果を音声を条件刺戟とする命題として形成して来た. このような無限に反復しての音声を 条件刺戟とする命題の形成の過程に於いて彼等は実は無自覚的に条件反射の強化の法 則を適用 し, またその記憶の法則を適用 していたのである. 彼等はこれ等の法則を自覚して以後は一層これ等を 有効に適用 したことは云うまでもない, このような仕方で彼等が判断的知識としての命題の長い時 間にわたる記憶を可能にしたと云う ことはすなわち彼等がこのような多数の諸命題の集積を可能に したことを意味した, さらにこのことは彼等が判断的知識の諸命題の体系への論理的な展開を可能 にしたことを意味 したのである, 後に詳しく述 べるように人間は対象としての事物について の知覚 的知識と思惟的知識とを常に統一 して推進しながら次第に高い次元の知識体系を形成 して来た, 彼 等は特に思惟的 知識の形成の過程に於いてはまず対象と しての事物の諸側面の判断を行い且つその 本質的側面を反映す る概念を形成した, それから彼等は上の判断を展開して推論を行い, さらに判 断や推論を展開 して理論を構成 した, 彼等は常に このように判断から推論を展開 してそうして推論 から理論を展開するという過程を反復 しながら思惟的知識を発展させて来たのである, この思惟化 知識を確実に発展させる仕事は彼等 が判断を上のような性質をもつ命題として形成 し, 推論や理論 をこのような命題の体系と して形成することに因 って始めて可能になったのである, 4. 次 ぎに第二に人間 は音声言語を通して始めて共通的な知識を社会集団で共働して形成しそうして 発展させることができる ようになった, 生来人間は各個人ごとに唯一無二の大脳を最高中枢とする 、識機官が活動する場 の中で知識を形成する. 知識 認識機官を具有 している, 各個人はこの個有の詔 はこれ以外の場にはどこにも存在 しないものである. ところで音声言語 が未発達であった 時代に於 いては人間は各個人ごとにそれそれ個有の未発達な認識機官を活動させ, 相互に孤立 して幼稚な知 識を形成 していた, このような時代に於いては彼等は各自の知識を相互に伝達し合 ってこれを共通 的な知識として共有すると云 うこともなく, また多人数で共働 して普遍的な知識を形成すると云う こでは各個人が作り上げた知識は彼等 の一生の終鷺と同時に消 滅するほかはな こともなかった, こ. かっ た. ここでは人間はこのような各個人の生死 存亡を越えて彼等が形成した知識をいつまでも記 憶し且つこれを発展させるということはできなかったのである, しかし彼等は次第に音声言語を発 達させて これを使用 しながら, およそ次ぎのような過程を経て知識の社会集団に於いての共有とそ うして共作とを可能にして来たのである, すなわち人間 は第一 の過程に於いて音声言語を通 して知識を社会集団の中へ伝達するようになっ た, 各個人の大脳を最高中枢とす る認識機官は, それ等が同様の進化の段階に位 しそうして同様の 構造と質量を具有する限り, 同一の認識活動を通しては同一の知識を形成することができるもので あった, またそれ等は相異なる認識活動を通 しては相異なる知識を形成することができるものであ った, したがって伝達者が或 る対象として の事物についての知識を伝達し且つ受容者がこれを受容する と云うことは前者の認識機官 がこの知識を形成する時に おこなった活 動と同一の活動が後者の認識 機官に依って反 復しておこなわれると云う一連の現象にほかならない, そこで彼等はこのような知 識の伝達な らびに受容を達成するめに前者は話す者の立場に立って このような知識を構成す る命題 を話 しそう して後者は聞く者の立場に立ってこれを聞くと云う方法を用い始めた. ここで話され且 つ聞かれる命題の音声を共通的な信号刺戟として伝達者と受容者との認識機官は条件反射的に同一 こなない, 命題の意味する知識 は前者から後者へ伝達せられ且つ受容せられていった, の活動をお. 人間はまず音声言語のこのような使用の仕方を通して知識 の伝達を可能に して来たのである, それ から人間は第二の過程に於いて音声言語を通 して知識を社会集団の共有物として保有 しそうして継 - 20 -.

(12) . 労働と言語とを通しての知識の形成 (その一). 承するよ うになった, 今述べたような仕方で知識がその最初の形成者の頭脳を越えて多数の受容者 の頭脳の中へ伝達せられるということはその知識が形成者個人の私有物の段階から社会集団の共有 物の段階へと発展することであった. この過程に於いては, これ以前の過程ではばらばらに弧立し ていたところの, 各個人の認識機官は次第に相互に有機的に連関して活動するところの社会集団の 広大な複合的認識機官として組織された. そうして各個人の単数の認識機官の低い次元の活動の場 は多数の複合的認識機官の一層高い次 元の活 動の場へと 拡大して来た, このように広大な複合的認 識機官の体得に因って人間は形成者個人の生死と共に生滅した知識を同時代の社会集団の共有物と して新しく生れ変らせることができた, それだけではなく彼等はこの共有物としての知識を次ぎ次 ぎに去来する各時代の社会集団に伝達して, これを氷生不死のものへ転生させることができたので ある, このような仕方で彼等はひとたび形成した知識はこれを幾世代にもわたって継承 しそうして 保存することがでるようになったのである, それから人間は第三の過程に於いて音声言語を通して 知識を社会集団で共働して形成しそうして発展させるようになった. 上に述べたような仕方で人間 が知識を社会集団の中へ伝達 しそうしてこれを共有物として継承して来たと云うことは彼等がこれ を相互に共働して発展させるための不可鉄的な準備過程であった, なぜなら知識は常に継 承せられ て来た既成の知識と新 しく形成された知識との統一を通して発展するものだからである, すなわち 彼等はこの過程に於いては既成の知識を継承すると共に, さらに進んで彼等の認識機官の新しい活 動を通してこれに対 立する新 しい知識を形成した, それから彼等は前者を後者の中 へ止揚し統一 し た, 既成の知識の形成者と新しい知識の形成者とはこの過程に於いて共働し, 知識を発展させるの である, このような仕方で共働しての知識の形成と発展の仕事は同一の 時 代に生れた人達の 間で 絶えずなされて来た, またこの仕事は相異なる時代に生きた人たちの 間 にもしばしばなされて来 た,. 古来人間は上の三つの過程を累進的に無限に反復しながら多人数の社会集団で共働 して知識を形 成しそうして発展させて来た, もちろん知識は偉大な独創的能力をもつ天才たちの活動に依って飛 躍的な発展を とげたこともしばしばあった, しかしどのように偉大な天才たちの独創的な知識であ ってもそれ以前の多くの人たちが形成 しそうして伝達 して来た知識をその前提としていた. そうし てそれ等の知識も人間の悠久な知識の歴史に於いてはそれ等の天才たちの頭脳も彼等が構成する社 会集団の複合的頭脳の一細胞に過ぎず, それ等の 知 識もその社会集団の共作物の一部分に 過ぎな い, 知識は上に述べたような仕方で社会集団の共働を通して形成せられそうして発展せしめられて 来た, そうしてこのことは人間が音声言語を通して知識を命題として形成 し且つこれを社会集団の 共有物へ転生せしめたことに因って始めて 可能となったのである, 5. 次ぎに第三に人間は音声言語を通 して始めて思惟的知識を発展することができるようにな った, 前にも少しく述べたように人間は次ぎのような諸過程を経てこの思惟的知識を形成して来たのであ る. 彼等はまず第一の過程に於いては対象としての事物の諸側面の分析と綜合とを通 して判断をお こなった, それから彼等は第二の過程にはいってこの対象としての事物の特に本質的側面の抽象と 概括とを通して概念を形成した. それから彼等は第三の過程にはいって上の諸過程に於いておこな ったところの諸判断の帰納と演緯とを通して推論を推進した. それから彼等は第四の過程に至って 上の諸過程に於いておこなった諸判断と諸推論とを論理的に展開して理論を形成 した, 彼等 はこの ような一連の諸過程を経て思惟的知識を形成しそうしてこの基本的な諸過程の無限の累進的反復を 経てこれを一段一段と高い段階のものへ発展させて来たのである. ところで上の第一の過程に於いて人間が対象としての事物の諸側面を音声言語を通して判断しそ - 21 -.

(13) . 山. 本. 嘉. 太. 郎. の判断的知識を命題として形成することができるようになった ことについてはすでに述べた, ただ しこの判断は形式的にも内容的にもいつまでも同様のものと して止まらず, 社会共有の知識体系の 発展と共に次第に多く の種類に分れ且つ高い次 元の内容をもつものへ発展した, このような複雑で 高い次元の判断は音声言語だけを使用 してはおこないがたくなった, なかんずく科学的知識を構成 する命題は文字言語の発達とその併用をまって始めて形成せられるようになった. また上の第二の 過程に於いての概念の形成も音声言語の使用をまって可能になった. 概念は対象としての事物の 一 般的で本質的側面を反映した知識である. 人間はこの概念を形成するためには対象としての事物の このような側面の抽象および概括をおこなわなければならなかった, このためには彼等は対象とし ての事物のできるだけ多くの諸側面を反映する諸命題をあらかじめ形成しそうして記憶してお き, この諸命題の中から特にその事物の一般的で本質的側面--すなわち一般的な徴表, 構造, 性質等 --を反映する諸命題を抽出 し且つ統一しなければならなかった. 彼等は対象としての事物の諸側 面を反映する諸命題のそのような抽象と概括と云う認識活動は音声言語を使用 しないでこれをお こ なうことはできなかった, ちなみに我々はここで第一の過程で判断がおこなわれそうして第二の過 程で概念が形成されると云ったが, しかしこれは知識の歴史に於いて判断が明白に概念に先行して 発生したと云うのではない. 実は判断と概念とは最初は同時に発生したのである, このことは音声 言語の最古の形態が主語と述語に分化 しない一連の言語から始まった事実からもたやす く 推 察 せ られる. ただその後に概念が個別概念の段階を越えて種概念, 頚概念, そうしてカテ ゴリーへと発 展する過程に於いては常に判断ないし推論を経由したことは事実である, しかし人間の広大な知識 の歴史に於いては概念と判断ない し推論とは交互に前後し連関 し合って発展 してきたのである, そ うしてまた上の第三の過程に於いての推論の推進も音声言語の使用をまって始めて可能となった, 推論は一個あるいは二個以上の判断を前提と してそこから一個の新しい判断を結論として導出する 活動である, この推論の中で直接推論は一個の判断を前提と して, この判断の変形と対当関係を通 して結論を導出する活動である. 人間は判断を音声言語を通 して構成せられる命題の形態へと確立 した後に始めて確実にこのような直接推論 をおこなうことができた, またこの推論の中の間 接推論 は二個以上の判断を前提として, これ等の前提の演輝や帰納や類推を通して結論を導出する 活 動 である. 直接推論の場合と同様に彼等は判断を音声言語を通して構成せられる命題へと確立 した後 に始めてこの間接推論をおこなうことができるようになったのである, さらにまた上の第四の過程 に於いての理論の形成も音声言語の使用●をまって始めて可能となった, 理論は対象としての事物の すべての側面を完全に反映したところの知識体系である, 人間は上の諸過程に於いておこなわれた 判断ないし推論をさらに論理にしたがって展開しそうして前進させながらこのような知識体系とし ての理論を構成した, 彼等は判断ないし推論を, 音声言語を通して構成せられるところの, 命題の 形態に於いて論理的に展開することに因って始めて確実にこのような理論を形成することができた の で ある,. 人間は思惟的知識を形成する場合には, 上のような仕方で対象としての事物の知覚的知識を越え て出発し, 思惟的認識のこのような各過程を経て理論の形成に達し, ひとまず形 成 過程を完了 し た, しか し彼等は思惟的認識のこのような一連の諸過程の 一回限りの通過をもってその形成過程を 全く終結することはできなかった, なぜならこのような思惟的認識を経て形成された思惟的知識は 間接的な仮説的知識なのであり, したがってそれはふたたび対象と しての事物の直接的知覚認識の 過程を通 して証明されな ければ真理とはならないからである. 且つ対象としての事物は無限に実在 し, しかもそれ等は無限に運動してゆくものであり, したがって人間がこのような事物の運動の仕 方を完全に反映する知識を形成するためには無限にそれを発展させてゆかなければならないからで - 22 【.

(14) . 労→動と言語とを通しての知識の形成 (その一). もある.彼等 がこのような対象としての事物のより完全な真理を確立しようと考えるならば,彼等は 知識を無限に発展させてゆかなければならないのである. このためには彼等は上のような思惟的認 識を完結した後に, 直ちにまた新しい段階の知覚的認識とそれから思惟的認識へ進まなければなら なかった, 彼等は このような認識過程を無限に累進的に反復しながら思惟的知識を発展させて来た のである. しかしどうしても完全には克服することがでなかった音声言語の瞬間性のゆえに人間は この音声言語の使用だけでは思惟的知識を無限に発展させることはできなかった, 彼等は後の女字 言語の発達とその使用をまって始めてこれを可能にしたのである, 人間の書き残した最古の女章の 中には‐--たとえばギリシャ, メソポタミヤ, 中国等の最古の文章の中には一一彼等が女字言語を もつ以前に形成した思惟的知識が記録してある.この事実から見ても,人間が女字言語をもつ以前に すでに或る程度の思惟的知識を形成することができた ことが知られる. しかしそれは科学以前のも のであった, 彼等が確実に科 学的な愚r惟的知識を形成し始めたのは女字言語の確立以後の ことであ る,. 3- 一2.

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では恥ずかしいよね ︒﹂と伝えました ︒そうする と彼も ﹁恥ずかしいです ︒﹂と言うのです

のニーズを伝え、そんなにたぶんこうしてほしいねんみたいな話しを具体的にしてるわけではない し、まぁそのあとは

2018 年、ジョイセフはこれまで以上に SDGs への意識を強く持って活動していく。定款に 定められた 7 つの公益事業すべてが SDGs