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中学校における暴力行為予防のための実践プラン:―SVPP(School Violence Prevention Program)による取り組み―

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(1)

中 学 校 に お け る 暴 力 行 為 予 防 の た め の 実 践 プ ラ ン −SVPP(School Violence Prevention Program) による取り組 み ー

西村  純一 【 キー ワ ー ド 】 中 学生, 暴力, ア ンガ ー マネ ジ メ ン ト, 職員 研 修,危 機 意 識 【要 旨 】 中 学校 に お け る 暴 力 問 題 は,非 常 に深 刻 で あ る。 さ ら に 社 会 に 目をや る と 児 童虐 待 事 件 や 家 族 間 の殺 人 事 件 な ど,身 近 に 暴力 行 為 が 蔓延 し てい る。 中 学 生 とい う時 期 は暴 力 行 為 が非 常 に 起 きや す い 時 期で あ る。 だ か ら こ そ,暴力 行 為 を 予 防 す る た め の 学 習 を 行 うべ き であ る と 考 え る。 本 プ ラン は,①将 来 に 亘 り 「暴 力 行 為 」を 引 き 起 こ さな い よ う にす る。② 暴力 を振 る う主 体 だ け で な く,教 師 を は じ め 周 囲 の 相 互 作 用 に 着 目 し,主 体 の 行 動 変容 を 促 す。③プ ラン の 実施 に よ り 学 校,教 師,生 徒 が 元 気 に なる。以上 の 3点 を 目 的 に 学 校 が 暴力 行 為 の予 防 に 全 校 を 挙 げ て 取 り 組 むプ ラン を 開 発 し た。 教 師 の 研 修 に お い て は,意 識 調 査 を も と に 必 要 と さ れ る 研 修 内 容 を 考 慮 し た こ と で ,

積 極 的 な 取 り 組 み を 促 す こ と がで きた 。 内 容 はSVPP (School Violence Prevention

Program) と名 付 け,教 師 向 け と 生 徒 向 け のプ ロ グラ ムに 分 か れ る。 教師 は職 員 研 修 を 中 心 とし て 暴 力 行 為 発 生 の メ カ ニ ズ ム を 学び,さ ら に 個 々 が ス キ ル ア ップ し,生 徒 へ の 対 応 が変 化 し た 。 一 方,生 徒 もプ ロ グラ ム に よ り 暴 力 に 対 す る 考 え 方 を 多 面 的 に 捉 え , 一 部 の 生 徒 に 攻 撃 性 の抑 制 が み ら れ た。 ア ン ガ ー マ ネ ジ メン ト のプ ロ グ ラ ムで は,暴 力 行 為 の原 因 と され る怒 り と スト レ ス を 自 分 で コン ト ロ ー ル す る トレ ー ニ ン グを 行 っ た 。 こ れ に は,将 来 を 見 据 え た 長 期 的 なプ ロ グ ラ ム効 果 も期 待 さ れ る。 検 証 と し て,因 子 分 析お よ び プ ロ グ ラ ム実 施 前 後 の 攻 撃 性 の 変 化 を み る た め に 対 応 のあ るt 検 定 を 行 っ た。 そ の結 果 パ 警 戒 心」「身 体 的 攻 撃 」 の 2 因 子 に 有 意 差 が み ら れた 。 なお,対 象 学 年 の 暴力 行 為 件 数 は 昨 年 度 と 比 べ る と大 幅 に減 少 し た 。 検 証 か らい くっ かの 課 題 も み られ 今 後,プ ロ グ ラ ム の 改 良を 行 い,よ り 総 合 的 な 効 果 が期 待 さ れ る。 - 257 −

(2)

1 章   問 題 の 所 在 と プ ラ ン の 目的 1-1  暴力 行 為 の 現 状 近 年,児 童 生 徒 の 「暴 力 行 為」 が 深 刻 な問 題 とし て 注 目 さ れ てい る。 文 部 科 学 省 の 定 義 に よ れ ば,暴力 行 為 と は 「自 校 の 児 童 生 徒 執 故 意 に 有 形 力 ( 目に 見 える 物 理 的 な 力 ) を加 え る 行 為 」 で あ る 。2009 年 度 の文 部 科 学 省 の問 題 行 動 調 査 に よ れ ば,暴 力 行 為 が 小 中 高 全 体 で 過 去 最多 と な り,6 万 件 を 超 え た こ とが 報 告 され た。 学校 種 別 で は小 学 校 が7U5 件,中 学校 は 4 万3715 件,高 校 は 1 万83 件 で 冲 学 校 が 突 出し てい る。(Fig.l) 校 内 暴 力 の 発 生 学 校 数 を み る と 冲 学 校 で は43.0% と,約 2 校 に 1 校で 発 生 し て い る 状 況 と な っ て い る。 発 生 件 数 の み で 各発 達 段 階 に お け る 暴力 の 出 現 特 性 を論 じ る こ と は で き な い が,中 学 生 の 時 期 は 暴 力 が 顕 在 化 し や す い 時 期 と捉 え るこ と が で きる。 2009 年 の10 月 に は 兵 庫 県 伊 丹 市,11 月 に は沖 縄 県 うる ま 市 にお い て冲 学生 の集 団 暴 行 事 件 で 被 害 者 の 中 学 生 が命 を 落 と す とい う悲 惨 な 事件 が 発 生 し た。 そ の 後 も 中 学 生 の暴 力 事 件 は 引 き 続 き 発 生 し て お り 冲 学 校 に お い て 暴 力 行 為 は身 近 で 深 刻 な 問 題 とな っ て い る 。 文 部 科 学 省 は「 暴 力 行 為 の増 加 は 規範 意識 の 欠 如 な ど が背 景 に あ り,憂 慮 す べ き状 況 で あ る」 とし て,地 域 と 連 携 し て 早 期 の 対 応 に 努 め る よ う 全 国 の 教 育 委 員 会 に 通 知 を 出 し た 。 有 村 (2010) は,暴 力 行 為 の 増加 を 背 景 に 周 囲 と の 人 間関 係 づ く り の 未熟 さ か ら感 情 の ま ま に 行 動 し てし ま う傾向 があ る と 指摘 し てい る。ま た,学 校 関 係 者 の な か に は,家 庭 が 経 済 的 困 難 を 抱 え た な か で の 基 礎 学力 の 課 題 や 食 事 な ど の 問 題 も 要 因 の一 つ で あ る と 捉 え ら れ る 者 も 少 な く ない 。 (2010 年 神戸 新聞) 258

-小中学 校

暴力行為

6万件

と高 校で の

2・C 呷  綴滔

大 士 壬r 士 岫釡

18 19  20 21 Fig.1 小 ・ 中 ・ 高 校 の 暴力 行為 発 生 件数 の推 移 ( 産 経 新 聞 2010 年 9 月14 日朝 刊) 1-2  現 在 の 荒 れ と 学 校 現 場 の 課 題 暴 力 行 為 は か つ て「 校 内 暴力 」と呼 ば れ てい た。 1980年 代 は じ め か ら 中 頃に か け て 「荒 れ る 学 校 」の 問題 と し て 注 目 さ れ て い た 眠 い じ めや 不 登 校 の問 題 に 注 目が 移 り,80 年 代 後 半 か らは そ れ ほ ど焦 点 が あ て ら れ なく なっ てい た。と ころ が,90 年 代 後 半 か ら 大

(3)

きな事件が学校

で起

き,

び注

目され

るようにな

った

。暴

力行為

との関連の

深い少

年非

行の動向に目をやると,

現在

は戦後4番

目の波に

あた

り,

その特徴

して沖村

(2010

は普段は問題が

いと思われて

いた少年が

いきな

り重大な非行や罪

を犯す

「いきな

型非行」

をあ

げて

いる

。いわゆ

る不良

と呼ばれ

いた少年たちが暴

力行為などの問題

を起

して

いた時代に対

して,

現在は

「普

通」

と思われ

る少

年が

突然

「キ

レる」

など,

予測で

きな

い問題行動

を引

き起

こす

ことが

多い。

したが

って,

力行為

も荒れた学校の

みで起

こるのではな

く,

どん

な学校で

も,

どんな生徒でも起

こりえるもの

と考えな

けれ

ばな

らな

い。

また,

力行為は発生件数と

いう量的な

こと以上に被害者

を重体

や死に至

らすまで暴行すると

いう質的な変化が問題であ

り,

その

ことが教

師の精神的負担

を増

大させて

いる。

八並

・国分

(2008

によ

ると暴

力行為は学校

の荒れ

と関

係性が

く,

に対教

師暴力

多発すると,

指導基準が徹底できな

いことか

ら,

組織的な生徒指導の展開が困難な状

況が生

まれ

る。

さらに規範意識が低下

し,

学校組織が

機能

せず

に崩壊すると

いう最

悪の

事態

となるケース

も多い。 2010

年度

に実施

したA市

での教

師の意

識調査

(A市

内11

校256

人を対象

に調査

)においては

「現在,

生徒か

らの暴

力行為

に対

して脅威を感

なが

ら仕事

いる」と

いう教

師が26

にものぼ

り( Fig.

2)

,

「過

去に生徒か

らの

力行為に対

して脅威を感

じて仕事を

していた

ことが

あった」という教師について

は,67

という高

い数字が

示された(Fig.

3)

。暴

力の脅威を感

じて仕事

しな

けれ

ばな

らな

い状

態は精

神的に極め

て厳

しい状態

にあ

り,

些細

きっか

けで教

師の自

己崩壊

(バ

ンアウ

ト)に陥る

こともある。

「学校基本

調査報告書」

において平成20

年度の教

の精

神疾

患による休職

者数は全国で5,400

人に達

して

おり,

国際労働

機関

(ILO)が

つて指摘

した

ように

「教

師は戦

場なみのス

トレスにさ

らされ

いる」と言える

新井(1999)

は子どもだ

もの急激

な変化と教育

を取

り巻

く環境の変化

を背景回教

が厳

しいス

トレス状況に

あり,

師と

してのアイデンティテ

ィを見

いだせぬままに今

師と

して生きる

ことの難

しさが

広が

って

いると指摘

して

いる。さ

らに,

師のバー

アウ

トは個

人の問題というよ

りも,

その人が働

いて

いる組織

の環境の間題で

ある面が

いと

う。

学校

が荒れ

いる状

態でも,

師が

共通の

目的意識を持

ち,

組織

的に取

り組

んで

いれば個人は壊れに

くいが,

組織がバラバ

ラにな

った時には,

ひたむ

きで真面

目な

師ほど崩壊

して

しまうケースがみ

られ

る。まさ

しくそこに,

学校現場の課題が

ある。

- 259

(4)

質 問 1 =鵈 在 、 生 徒 か ら( 乃暴 力 行 為 に 対 し て 脅 賎 を 感 じ て 仕 事 を し'r い る 嶮 J グ ・渋 J ご 歹1 ./ が 、夕戸φ ilメ 冫C゛  限y芦 質 問 2 =過 去 に 生 徒 か ら¢7)暴 力 行 為 に 対 し て 脅 威 を 感 じ て 仕 事 を し た こ と が あ、 、た ` む 。,。゛・4 令jl 阪つ汽゛ ‘4   ! 一 ノ 。 八 厂  卜 ‰ 叭 ノ  け 一一

ノ广

一 一一 一一一一 ■■■■■㎜㎜ ㎜㎜㎜■㎜㎜ ■■   I ■■■■㎜■㎜㎜■㎜㎜ ㎜■㎜㎜■■■ Fig.2  現 在,暴力 行 為 に脅 威 を 感 じ て い る 教師 (人 )  Fig.3  過 去 に 暴力 行 為 に 脅威 を 感 じ た こ と が あ る 教師 (人 ) 1-3 本 プ ラ ン の 目的 本 プ ラ ン の 目 的 は次 の 3点 で あ る 。 第一 は,生 徒 が 将 来 に 亘 り 「暴 力 行 為 」を 引 き 起 こ さ ない よ うにす る こ と であ る。第二 は,暴力 を 振 る う主 体 だ け で な く,教 師 を け じ め周 囲 の相 互 作用 に 着 目 し,変 化 を 促 進 す る こ と で あ る。第 三 は,協 働 意 識 の も とにプ ロ グラ ム を 実 施 す る こ とで,教 師 にプ ラ ス の 作 用 が 働 き,ひ い て は 生 徒 を 含 め学 校 全 体 を 元 気 に す る こ と で あ る。 「怒 り」 の感 情 は パ ワ ー と し てプ ラ ス に 働 く こ と もあ る が,多 く は ス ト レ ス と な り , 他 人 を 傷つ け る 暴力 行 為 へ と 至 る こ とも 少 な く な い 。暴 力 行 為 は,被 害者 に とっ て も加 害 者 に とっ て も,そ の 後 の 人 生 を 変 え て し ま うほ ど の 重 大 な 影 響 を 及 ぼ す も の で あ り, 家族 や 周 囲 の人 間 も ま た 傷 を負 うこ とに な りか ね ない 。時 に,被 害者 が加 害 者 に 対 し て 深い 憎 し み や 復 讐 心 を 抱 く こ と も あ り,永 遠 に 暴 力 が 繰 り返 さ れ る こ と も 集 団 レ ベ ル で は 頻 繁 に 起 き てい る。さ ら に,暴 力 の 被 害 者 に なっ た子 ど も が,後 に加 害者 に なる とい うこ とも み ら れ る。し か し,怒 りの 感 情へ の適 切 な対 処 法や,暴力 行 為 防 止 に 関 す る 学 校 全 体 の 取 り 組 み は,極 めて 少 ない の が 現 状 で あ る 。 中 学 生 の 精 神 的 に 不安 定 な 時 期 に 自 分 の 怒 りの 感 情 を コ ン ト ロ ール す る ト レ ー ニ ン グや 暴力 行 為 の 予 防 的 な 学 習 を 行 う こ との 重 要 性 は 言 うま で も な い。 なぜ な ら,暴力 行 為 の 攻 撃 性 を そ の ま ま適 切 な援 助 を 行 わず に 成 人 に 達 し た 場 合,DV (ド メ ス テ ィ ッ ク ・ バ イ オレ ン ス ) や 児 童 虐 待 に つ な が る 危 険 性 も 少 な く な い か ら で あ る 。 し たが っ て,生 徒 が 将来 に 亘 り 「暴 力 行 為 」 を 引 き 起 こ さ ない よ うに す るた め の働 き かけ を行 うこ と を 本プ ラ ン の 第 一 の 目 的 と す る。 第 二 の 目 的 は,教 師 が暴 力 行 為 の メ カ ニ ズ ム を 理 解 し,危 機 意 識 を 高 めた 上 で,教 師 と 生 徒 双 方 が 自 己 理 解 お よび 他 者 理 解 を 深 め,対 人 的 な ス キル を 向 上 さ せ る こ とで あ る。 - 260 −

(5)

暴 力 行 為 を 起 こ す 主 体 だ け を 問題 視 し,学 習 を 通 じ て 行 動 変 容 を 図 る だ け で な く,そ の 主 体 と 関 わる 周 り の人 間 も 考 え 方や 接 し 方 を 見 直 す こ と で行 動 変 容 が 促 さ れ る と 考 え , 相 互 作 用 に 注 目し た 点 に 本プ ラ ン の 特 徴 が あ る 。 公 立 中 学 校 で は,一 つ の 学 校 がい つ ま で も 落 ち 着 い た 状 態 で い る こ と は 殆 ど なく,数 年 の サ イ クル で荒 れ が 起 き る。ま た,い つ も 荒 れ て 落 ち着 か な い 学校 で も,落 ち 着 い て い る 学 校 で も,程 度 の 差 こ そ は あ れ 教 師 に 対 す る 指 導 不 服 従 や 暴 言 な ど,暴 力 行 為 へ 至 る 前 兆 が み ら れ るこ と は多 い 。暴 力 行 為 とい っ て も,い き な り 対 教 師 暴 力 に 及 ぶ ケ ー ス は 少 なく 段 階的 な流 れ が あ る。 八 並 ・國 分(2008) は,学 校 が 荒 れ る 前 兆 と し て 生 徒 間 暴 力 が多 発 し,そ の 後,教 師 へ の指 導 不 服 従や 暴 言 が 発 生 す る と 指 摘 し てい る。ど ん な 生 徒 で も突 然 に 荒 れ は じ め る 可 能 性 を 内包 し た 現 在 の 学 校 状 況 か ら,本プ ラ ン は 荒 れ て い る 学 校 の み を 対 象 と す る も の で は な く,ど の よ うな 状 態 に あ る 学 校 に 対 し て も,ま た 全 て の 生 徒 を 対 象 と し て 実 施 す る も の とし て 構 想 さ れ た。 さ ら に,暴 力 行 為 や 学 校 の 荒 れ と教 師 の 崩 壊 は無 関 係 で は ない 。し た がっ て,暴 力 行 為 予 防 の た め のプ ロ グ ラ ム を 実 施 す る こ と で,少 し で も 教 師 の な か に ポ ジ テ ィ ブ な 意 識 が 高 ま る こ と で,生 徒 へ の 関 わ り にプ ラ ス の 作 用 が 働 き,学 校 全 体 が 元 気 を 取 り 戻 す こ と が,本プ ラ ン の 第 三 の 目 的 と 考 え る。 第 2 章   暴 力 行 為 の 心 理 学 的 理 解 2-1  攻 撃 性 と暴 力 につ い て 暴 力 行 為 と 関連 す る 概念 とし て 「攻 撃 性 」 が 挙 げ ら れ る。 攻 撃 性 は 青 少年 期 の 暴力 行 為 へ の 影 響 度 が 強 い 個 人 的 な 要 因 のひ とつ であ る。 大 測(2000 )は 「攻 撃 」を 「 他 の 個 体に 対 し て 危 害 を 加 えよ う と意 図 さ れ た行 動 」と定 義 し ,「攻 撃 性 」と は,そ うし た 行 動 や 反 応 が 生 み 出 され る 内 的 な 心理 過 程 を 指 す も の とし てい る。一 般 的 に 攻 撃性 と は 怒 りや 敵 意 な ど を 含 む 心 理的 杵│生の こ とを 指 す が,廣 井(2002) は,「危 害行 為 を 生 じ させ る 心 的 過 程 ま た は,心 的 エ ネ ル ギ ー 」 と捉 え てい る。「攻 撃 」 行 動 は危 害行 動 とし て 示 さ れ る も の であ る が,心 的エ ネル ギ ー ま た は そ の 内 的 過 程 とし て の「攻 撃 性 」は,必 ず し も危 害 行 為 に つ な が る も の で は な く,む し ろ 人 間 の 存 在,成 長 に と っ て 必 要 不 可欠 な エ ネ ル ギ ー であ る とい うので あ る。 一 方,文 部 科 学省 の定 義 に よ れ ば,暴力 行 為 とは「 自校 の児 童 生 徒 が,故 意に 有 形 力( 目 に 見 え る物 理 的 な力 ) を 加 え る行 為 」 で あ る と さ れ る。 本研 究 にお い て は,「 暴力 」 を 261

(6)

藤岡

(2008

)に倣

い,

「自分の欲求

や感情

を冲

手の欲求

や感情は

無視

して,

より強

力な

ワー

を背景

に一方的に押

し付

ける行動」と定義する。具体

的内容につ

いては,

余語

(1999)

を参考

「個

人,

または集団に対す

る身体

的加害

。個

人また

は集団の所有

物に

対する加害

も含む」

もの

とする。心

理的加害を暴

力に含め

る場

合もあるが,

身体

的暴力

(だた

く,

る,

ものを破壊するなど)に限定

して使用す

ることとす

る。

くの

先行研究にお

いて

「暴

力」

は動物の本能で

あるのか,

学習で身

につ

くものなの

かが

論議され

いる。

リテ

ラシー

(読み書

き能

力)の欠如が暴

力を生むと

いう説

もあ

るが,

(2000

は,

野生

動物の

多くは

なわ

りを維持

し,

配偶

を獲得す

るな

ど,

様々

な目的のために攻撃

エネルギーを用

いるが,

仲間に致命傷を与えて種

の存続を危

しな

いよう,

その

力を注意深

くコン

トロー

して

いると指摘

して

いる。そう考

えると,

人間ほ

ど暴

力を簡単に使

う生き物は存在

しな

いと

いえる。理性

的動物

いわ

る人間

あれ

ばこそ,

学習によって暴

力行為をコン

トロー

ルする

ことがで

きるはずで

り,

れが中学校

おける喫緊の課題で

もある

2-2 

力行為発生の心

理過程

力行為の

発生

にはフラス

トレーシ

ョン

(欲求不満)の発生が根

底に存在

すると考

えられ

る。

らに

「怒

り(anger)

「敵意(hostility)

「攻撃性(aggressiveness)

それぞ

れの

感情が大

く関

して

いる

。そもそも

フラス

トレー

ョンは人間が

きて

く上

で避

けることの

できな

いものであるが,

そのために引き起

こされる行

動は周囲の対応

によ

って変わ

って

くる。学校

において

くの生徒は

フラス

トレー

ョンが

発生

した時

に他人の何

らかの行動

や言動に触

発され

て怒

りの

感情が沸

いて

くると考

られ

。そ

の怒

りを覚

えた状態で,

自分にと

って納得の

いか

ない態度や言葉

を受けると,

攻撃性や

敵意が芽生える

。さ

らに過去の

対応や人間関係

で嫌いなものが関わ

ることによ

り敵意

や攻撃性は大き

くな

り,

りの感情

は増加する。

この状態で生徒の

中に攻撃

に対

しての

自制心

や理性が

働か

けれ

ば,

力行為という攻撃行動

に移

ろことにな

る。

「キ

レル」

という暴

力行為もあるが,

その場合においても,

フラス

トレー

ションの発生に関連

して

り,

敵意,

撃性が絡んだ状態で発生

して

いる

ことが

多い。

中には生徒自身が

フラス

レー

ョンを自分の内面で抑え込み,

力を回避する場合もあるが,

殆どの生徒

はその

解決方法

を知

らない。

- 262

(7)

生 徒 の 畢 参考 橋本典久(2008) Fig. 4 生 徒 の 暴力 行 為 発 生 ま で の 心 理 過 程 人 間 の 暴 力 行 為 で は,事 件 が 重 大 な 結 果 に な る ま で 対 処 で き ない 場 合 が多 く,そ の 原 因 とし て,藤 岡 は 「関 係 の 閉 鎖 性 」 を 挙 げ てい る。 身 近 な対 人 関 係 はそ のな か で 人 間 が 生 活 し,体 験 し,学 び 合い,伝 え て い く 場 で あ り,そ の影 響 は 喩 え よ うも な く 大 き い。 し た がっ て,学 校 に お い て 教 師 は 生 徒 と の 関係 の 重 要 性 を あ ら た め て認 識 す る 必 要 が あ る 。 第 3 章   暴 力 行 為 予 防 の た め の 実 践 プ ラ ン の 全 体 3-1 予 防 の 3 段 階 予 防 と は,単 に 気 を つ け て お く こ と で は な く,第 一 次 予 防 とし て 「原 因 を 取 り 除 く こ と 」, 第 二 次予 防 とし て 「早 期 に 発 見 し て 早 期 に 対 処 す る 方 策 を 講 じ る こ と」, 第 三 次 予 防 とし て 「被 害 を で き る だけ 小 さ く抑 え る こ と」 を さす 。 コ ミ ュ ニ テ ィ 心 理 学 の 危 機 対 応 の 3段 階 ,「プ リペ ン シ ョ ン →イ ン タ ー ペ ン シ ョ ン → ポ スト ペ ン シ ョ ン 」 とい う 考 え 方 に 依 拠し て,暴力 行 為 の予 防 へ の 取 り 組 み を 整 理 す る と 次 の よ うに な る(Fig. 5)。 ①プ リ ペ ン シ ョ ン(prevention : 予 防活 動) 暴 力 に つ い て の加 害 者,被 害 者 の 心 情 を 考 え さ せ る こ と で 精 神 的 な 抑 止 効 果 を 生 む。 暴力 に 移 る 前 の怒 り (ス ト レ ス ) の 状 態 を 頭 で 理 解 し,暴 力 行 為 へ の移 行 を 自分 自身 で 抑 制 す る た めの ト レ ー ニ ン グや 学 習 を 行 う。 263

(8)

ご W

☆☆ダ

264

Fig.5 

力行為予防の

ための概念図

・職

員対象

①教

師の

カウ

ンセ

リング

スキ

②危機意

識の向上とセル

フプロテク

ョン

(護

身技能)

③ク

ライシスア

ンテナの

共有

(危機意識

・生徒対象

①暴

力防止教

・非行

予防エクササ

イズ

道徳の学

③ア

ンガー

マネジメ

ンター

ンシ

ョン(intervention :

危機介入

力に関する情報

を感知

して,

回避す

る。危機を察知する教

師の感度

を上

げる。

(ク

ライシスア

ンテナ向上)また,

発生

時には被害

を最小限に

くい止め,

迅速に解決する

・ク

ライシスア

ンテナの

向上

・発生時の基本

対応

(安全の配慮,

数対応,

信頼関係の

ある教師の対応

・関係機関

との連携

によ

る適切な行動

ポス

トペンシ

ョン(postvention :

事後対応)

力事件が起

きて

一応

おさま

った段階で,

問題を完全に解決す

るための,

中・

長期

的な

対策

を含め,

二次被害

や再発

防止に向

けた対策を行う

・暴

力行為被害者へ

の事後対応と

カウセ

リング

による心のケア

・加害者へ

の指導

および

カウ

ンセ

リング

・周

囲の生徒へ

のケア

(9)

3-2 

プラ

ンの構図

先行研究では,

力行為を起

こす主体

に注

して

ノー

シャルスキ

ルや対

人関係能

の低

さ,

言語能

力の乏

しさ

を原因と

してア

プロー

チす

る取

り組みが

くみ

られ

る。本

ンにおいては,

力行為の主体

とな

りうる生徒個人の前

に教

師に焦

点をあてだ研修

を実施する

ことか

らは

じめ

る。教師の関わ

り方を捉えな

おす

ことが生徒個

人の暴

力行

を予防する

ことにつなが

ると考

えるか

らで

ある。 Fig.

6では,

生徒の暴

力行為発生

での各

プロセスに

おいて,

師が対応する

ことが

できる行動

や解決法

を示

した

力行為の発生までに教師の対応

ひと

って,

生徒の

怒りの

レベルが減少す

ることや,

力行為まで至

らずに問題解決が進打

こともある。

また,

力行為が発生

した場合

にお

いて

も,

適切に対応

をす

ることで,

二次的被害

を最

小限

くい止める

こともで

きる

しか

し,

実際

には生徒が興奮

した状態

にあるとき,

その指導に入

った教

師の言動によ

って生

徒が暴走

し暴

力を振るう場面

も見

受けられ

。興奮

した生徒の暴

力の導

火線

に教

師白

らが

火をつけて

しま

い大爆発を起

こさせる状態である。そ

こで,

プランに

おいては,

教師が暴

力行為の発生する心理過程

を理解

した上で,

それ

ぞれが個

人的対応能

力を向

させ危機管理意識の

レベルを上

げる

ことを第

一の目標

した。

その

うえで,

生徒

を対

した

プログラム

を実施

し,

心理面,

社会面か

らの暴

力に対する予防的な働

きか

けを

う。

MAX l イ ラ イ ラ 度 MIN 一一一

Fig.6 

力行為発

生までの心理過程

と教師の

- 265

関係機関と逗携対応

(10)

第 4 章   S V P P (学 校 に お け る 暴 力 予 防 プ ロ グ ラ ム ) の 実 施 と 効 果

4-1 SVTPP (SchooI Violence Prevention Program)の概 要

プ ロ グ ラ ムを 構想 す る に あ た っ て,ま ず 学 校 現場 の 教 師 の 意 見 を 聞 き,組 み 込 む こ と を 重 要 視 し た。 事 前 の意 識 調 査 か ら,職 員 研 修に 「暴 力 行 為 発 生 時 に 役 立つ 実 技 研 修 が あ れ ばい い と 思 う」 とい う意 見 が64 % あ っ た(fig.7)。 そ の 結 果 を も とに,プ ロ テ ク シ ョ ン ス キ ル (護 身 技 能 ) の 実技 を 伴っ た 職 員 研 修 を 外 部 機 関 に協 力 依 頼し て 実施 し た 。 ま た ,「教 育 相 談 や カ ウ ン セ リ ン グで 暴 力 行 為 は 減 ら す こ と が で き る 」 とい う 意 見 が 66 % あ っ た こ とを 受 け て(fig-8),ス クー ル カ ウ ン セ ラ ー (SC ) と検 討 し た 結 果,「カ ウ セ リ ン グ基 礎 技 能 」 を習 得 す る た め の研 修 を 企 画 し て 実施 し た 。そ の 他,筆 者 が 学 校 現 場 で 生 徒 指 導 主 事 とし て 感 じ て い た,教 師 そ れ ぞ れ の 危 機 意 識 レ ベ ル の 温 度 差 を な く す た めの 研 修 と生 徒向 け のプ ロ グラ ム に も組 み 込 ん だ ア ン ガ ー マ ネ ジ メ ン トを 職 員 研 修 とし て 実施 し た。 職 員 研 修 を 行 う上 で 個人 の ス キル ア ップ だ け で な く パ 暴 力 行 為 の予 防」 とい う共 通 の 目 的 を 意識 す る こ とで,教 師 集 団 に 協 働 性 が芽 生 え る こ と もプ ラ ス アル フ ァ ー の 効 果 と 思 わ れ る。 教 師SVPP を 実施 す る こ とで,教 師 の 個 人 対 応 能 力 が 向 上 し て い き,生 徒 の 微妙 な 心 情や 行 動 の 変化 を 感じ る 危 機 対 応 意 識 が職 場 レ ベ ル で 向 上 す る 。 生 徒 向 け のSVI )P で は 道 徳 と学 活 を 活 用 し て,非 行 予 防 に お け るエ クサ サイ ズや,暴 力 行 為 に 対 し て の 学 習 も 行 っ た。 多 面 的 なア プ ロ ーチ に よっ て,暴 力 行 為抑 制 の た め の 幅 広い オプ シ ョ ン を 持 つ こ とを ねら い とし た。特に,ア ンガ ー マ ネ ジ メ ント にお い て は, セ ル フ ト レ ー ニ ン グ を す る こ と に よ り,生 徒 の 内 面 か ら の 変 化 が 起 き る こ と が 予 想 さ れ る。こ うし たプ ロ グ ラ ム の実 施 に よっ て,教 師 と 生 徒 の 関 係 に も 変 化 が生 じ,学 校 の 安 心 ・ 安 全 が 促 進 され る こ と が期 待 され るプ ロ グ ラ ム と 考 え る こ と が で き る(Fig. 9)。 質 問 3: 讎 昌研 修 に護 身 技能 な ど の騏 力 行為 発 生時 に 役立 つ 実 技研 鰹が あ れば いい と 思う 。 心/ k 。 ら゛゛777'-゛一一一 一=-=-=-=- 一一-y / ,j   /     ゛丶    ’ ノ ダ / ] ノ ス ノ ダ も  / す Fig. 7 研 修 に 護 身 技 能 が あ れ ば い い と 思 う教 師( 人) 質 問 6 :教 育 相談 や カ ウ ン セ リン グ で暴 力 行 為は 鰔 ち すこ とが で き る

謳 よ

J y' j( 戸' \ 侈? バヘ 希 ダヅ , じり        裝jll  柘り `£.・     j ぐ丶   晞 ` し - 丶= = ・ ㎜㎜a ¶丶 Fig. 8 カ ウ ン セ リ ン グ が 暴力 行 為 減 少 に 有 効 と 考 え る 教 師(人) - 266 −

(11)

Violence Prevention Program

(学校

予防

ム)

教師の個人的対応力の向上

・教

P①−一一カ

ンセ

ングス

ル向上

(教育相談

研修

にて

実施)

・教

P②−一

一ク

シス・

テナ感

向上

(生徒指導研修

て実

施)

・教師

・ 教 師 S V P P

P③

④ − 一 一

セル

アン

プロテク

ー マネ ジ

メ ン

ンスキル向上(

トに つ いて ( 教

生徒指導研修にて実施)

育 相 談研 修 に て実 施 ) 危 機 管 理 能 力 の レ ベ ル ア ップ ・ 生 徒 の 暴 力 行 為 に 対 する 基 本マ ニュ アル の 確 認 ( 共 通 意 識 ) ・ クラ イシ ス ・ ア ンテナ シ ートの 作 成 一活 用 ■         ■■■■■■■■■■ ㎜㎜㎜ ㎜㎜■㎜■㎜㎜㎜■㎜■㎜■■㎜■■■■■■■   ■■■■㎜■ I■㎜■■㎜■■㎜㎜■■㎜㎜■■■■ J ・ ・ ・ ・ .㎜■㎜㎜㎜■㎜■㎜■■■㎜■■■

生徒への暴力行為の抑制

・生徒

P①−一一非行予防エクササイズ

【暴力による被害者の気持

ちを考える】(

学活)

・生徒

一生徒

P③−−−ア

P②

内容項

ガー

目(2-2

思いや

(学活

り)自作資料「

みんなの気持

ち」(

道徳)

・生徒

P④−一一非行予防

ササ

【非行

につ

いて

(学活

㎜㎜    ■         ㎜ ㎜ ㎜■■■■■■■㎜■  ■■■■       ■■ ■■・■■㎜■■■■■■■・■■■■■・・・■■・・■・■■■・■■■■■■■■■■■㎜■■■■ ㎜       ㎜  ㎜㎜  ■■㎜■㎜■■■■■■■■■■■■■■■■ 学 校・ 教 師・ 生 徒 の 安 定 化( 安 全)

Fig.

9 

学校

における暴

力行為予防

プログラム

の全体

4-2 

教師

向け

プログ

ラムー

人的対応

力の向上

(1)カウ

ンセ

リングスキル

(教

師S

P①

教師が生徒

との関係性を築

くために,

まず教師が

生徒か

ら話を聞

くことがで

きる関

をつ

くる

ことが肝要で

ある。教師は指導者

という立

場に置かれ

いるために,

自然と

生徒

に対

してア

ドバ

イス

しな

ければな

らな

いと思

って

しまう。

その

ため

に,

生徒

との

懇談

などは

一方的に話

して

しまい

じっ

くり話

を聞

くことが

しい。

したが

って,

生徒

の相談

や話

を聞

くための基礎

的なカウ

ンセ

リングスキ

ルの習得が必要

となる

。具体

には生徒が話

しやす

いようにあいづちや目線,

生徒

との位置関係や距離感などを学校

スクー

ルカウ

ンセラー

と連携

し,

員研修で取

り組ん

。生徒が担

任教師

と懇談

をする

合や,

生徒指導

を行

う場面で活用で

きるものであ

った。

また,

ょっと

した日常の会話

も,

教師が

気にす

ことで,

生徒

との関係が微

妙に変わ

って

いく。

実際

に研修

(教

師SVPP

)を実施後に教

育相談

週間が

り,

任を中心

に生徒

とマ

ンツー

マンで

カウ

リング

を行

った

。その結

果,9

割の教

師が

「カウ

リングスキ

ル向

上研修が役

に立

った

」とア

ンケー

トに

おいて回答

した

- 267

(12)

(2)ク

ライシスア

ンテナ

(教師SVPP

教師の危機管理意識は個

人による違

いが

あるが,

生徒の状態を観察

した

り変化を敏

感に感

じた

りする

ことは,

教師

して持

つべ

き能

力のひ

とつで

ある

。生徒は問題

を抱

た場合に何

らかのサ

インを出す

ことが

多い。

しか

し,

そのサ

ンを感

じるための感度は

教師によ

って様

々で

あり,

この違いは学校の生徒指導が機能す

るか

どうか

という点に

いて

重要で

ある。

ひとつは教師が行う指導のバラつ

きや,

生徒が

じる教

師に対する

公平

感さにつなが

る。

さらに感度が低

く生徒

のサ

ンを見

逃す

ことで,

その後に大き

な問題

や事件

とな

り,

学校全体

が揺

ぐことも珍

しくな

い。

こで,

師それ

ぞれが持

って

いる危機意識

をア

ンケー

トによ

って出

し合

った

。出た

意見

をKJ法

によ

って項

目ごとに分

けて,

一覧表を作

した(Fig.

10)

。それ

ぞれ

感性

感覚によって異なる危機意識を知る

ことで,

今まで自分が感

じなか

った部分

を確

認す

ることが

きた

。その

ことで教師

しての危機

(クラ

イシス)察知のためのア

ンテナ

が高

くなる

と捉え,

「ク

ライシスア

ンテナ」

と命

した

。クラ

イシスア

ンテナは学校の

生徒指導を行う上で,

問題行動への早期

発見・

早期対応

という点て,

重要な機能

を果たす

ものと考

える

また,

新任や若手教

師において,

予防的生徒指導の指標

となるべ

きマニ

ュアルと

して

も活用が

できる

その他

いい所

を見つ

けて

褒めて

あげ

も予防

しては大切

Fig.

10 A

B中学校の教師が出

し合

ったクライシス

ンテナ

- 268

(13)

(3) セル フプ ロ テ ク シ ョ ン ス キル ( 教 師SVPP ③) 危 機 の発 生 時 ( 生 徒 の 暴力 行 為 発 生 時 ) に 教 師 が 落 ち 着 い て 適 切 に 行 動 す るこ と は 必 至 で あ る 。し かし,実 際 にそ の 状況 で冷 静 に 行 動 を す る た め に は,定 期 的 に 防 災 時々 救 急 救命 な ど と同 じ よ うに 実 技 を 伴っ た 訓 練 が 必 要 と な る。 教 師 向 けSVPP ③ で は,外 部 機 関 (警 察 ・CAP) の 協力 に よる 「リ ス クマ ネ ジ メ ン ト ( 危 機 管 理 ) 能 力 向 上 の た め の実 技 を 伴 う研 修 」 とし て の 取 り組 み を 行っ た(Table. 1)。 Table. 1 危機 管 理 能力 向 上 の た め の 実 技 を伴 う研 修 段 階 時 間 活 動 内 容 は じ めに び 校長 よ り 挨 拶 講 義 1y 『 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 必 要 性 』 パ ワ ー ポイ ン ト に よる 説 明 実 技 研 修 講 師 : 地 域 警 察 生 活 安 全 課 2名 4(y 不 審 者 や 生 徒 が 暴 れ て い る 場 合 を 想 定 し た 実 習 ・ 実 技 指 導 ・ 基 本 的 な 行 動 ・ 注 意 事 項 《 準 備 晶 》 イ ス,消火 器,ほ うき,モ ッ プ 質 疑 応 答 1(y 感 想 び 振 り 返 り シ ート 記 入 (4) ア ン ガ ー マ ネ ジ メ ン ト (教 師SVPP ④ ) 安 藤 (2008) に よ る と 「 ア ンガ ーマ ネ ジ メ ン ト 」 は1970 年 代 に ア メ リカ で始 ま り , 当 初 は,単 純 に 「怒 り を コ ン ト ロ ー ル す る こ と」 が 目 的 で あ っ た が,今 で は ア メ リ カ の 大企 業 で500 社 以 上 が 社員 研 修 と し て 取 り入 れ, 自分 の感 情 を コ ン ト ロ ー ル す る ス ト レ ス マ ネ ジ メ ン ト のひ とつ と し て 普 及 し てい る ,よ り よい 生 活, 仕 事, 人 間関 係 を手 に 入 れ る た め の 心理 教育 プ ロ グ ラ ム で あ る。日 本 の 学 校 現 場 にお い て も,暴 力 行 為 予 防 の た め のプ ロ グ ラ ム とし て 嘉 ノ海 ら (2007 ) に よ り 研 究 ・実 践 さ れて い る。 4-3 危機管理能力のレベルアップ 教師個人の対応力が向上したあとに重要なのは,集団 としての指導と方向性の共通 理解である。殆どの学校は4月の職員会議に生徒指導の方針および指導方法の共通理 - 269 −

(14)

解 を 行 っ てい る。し か し,新年 度 に は 人 事 異 動 に より 教 師 集 団 の メン バ ーが 変 わり,生 徒 の 状 態 も 大 き く 変 わ る た め に,年 度 の 中 盤 に 再 度 指 導 方 法 の 確 認 と 基 本 マ ニ ュ ア ル の 改 善 を 行 うこ と の 意 義 は 小 さ く な い。 上 地 (2003 ) は 学 校危 機 対 応 の 意義 と して 「事 前 の 予 防 的 対 応 に備 え が 十 分 で あ れ ば,そ の 被 害を 最 小 限 に くい 止 め る こ とが で きる 」 とし,普 段 の 準 備 の重 要 性 を 指 摘 し て い る 。 そ こ で ,「ク ラ イ シ ス ア ン テ ナ 」を 実 用 的 に 活 用 す る た め に 「ク ライ シ ス ア ン テ ナ シ ー ト 」 を 作成 し た。 教 師 に より 態 度 や 関 わ りを 変 え る 生 徒 は多 く,そ れ ぞ れ 教 師 が気 に な る 生 徒 を チ ェ ッ クし て,よ り 情報 を 共 有 す る こ と で 予 防 的 生 徒 指 導 に つ な が る と 考 え られ る 。 か4  生 徒向 けプ ロ グ ラ ム ー暴 力 行 為 の抑 制 (1) 非 行 予 防 エ クサ サ イ ズ I (生 徒SVTPP ①) 生 徒 向 けSVPP ① は,暴 力 行 為 にお け る 犯 罪 の 被 害 者 や そ の 周 囲 に い る人 の 気 持 ち に なっ て み るプ ロ グ ラ ム であ る 。特 に生 徒 へ 考 え さ せ た い の は,被 害 者 に は そ の 大 を 愛 す る家 族 や 友 人 がい て,そ の 大 た ち ま で深 い 傷 を負 っ て し ま うこ とを 認 識 させ る。 後 半 は 新 聞 記 事 か ら 身 近 な 暴 力 事 件 を 通 じ て,事 件 を 防 ぐ た め の 方 法 を グル ープ で 話 し 合 わ せ る。話し 合 い 活 動 に よ り,自 分 と 違 う意 見 や 考 え 方 に 触れ,よ り 高い 意 識 レ ベ ル に な る よ うに 教 師 は 支 援 し て 進 め る。 授業 にお い て ,生 徒 は 事 件 後 に 残 る被 害 者 の空 虚感 や PTSD を 伴 っ た恐 怖 の気 持 ち に気 づ く こ とが で き た。さ ら に,被 害 者 の 周 囲 に い る 大 た ち が,深 く悲 し むこ と に共 感 し, 加 害 者 に は 憎 悪 を 抱い た。 生 徒 か ら パ 加 害 者 を 殺 し たい 」 とい う復 讐 心 の 意 見 が で る こ とに 留 意 し た うえ でプ ロ グラ ムを 進 める 必 要 かお る。 そ の 時 の 教 師 の対 応 昿 プ ロ グ ラ ム実 施 に お い て 重 要 な ポイ ン ト に な る と 思 わ れ る。 (2) 道徳 「み ん な の気 持 ち」 の 授業 ( 生 徒 SVPP②) 主 題 を 「 思い や り 」に し た 自 作資 料 を 取 り扱 い,集 団 で の 関 わり に お い て 自 分 の 弱 い 部 分 に 気 付 き,集 団 を 意識 し て行 動 で き る 広い 心 を 育 て る こ と を ね らい と す る。 資 料 で は 主人 公 の気 持 ち と行 動 を 中 心 に 考 え させ る。 本 資 料 の ま とめ で は,主 人 公 が 感 情 を コ ント ロ ール で き ず に 暴 力 行 為 に 至 っ た こ と が 事 件 の 原 因 で あ る こ とを 押 さ え,次 回 の ア ンガ ーマ ネ ジ メ ント へつ な げ る。 - 270 −

(15)

生 徒 の感 想 を みる と ,[ 何 が あっ て も 手 を 出 し た ら ダ メ だj と,ト ラブ ル の原 因 で あ る暴 力 行 為 に 価値 を 見 出す 生 徒 が多 くい た 。 も う一 方 で,資 料 終盤 のr み ん な が 謝 っ て 感 動 し た」 とい う仲 間 の 思い や り の 心 に 価値 を 見 出 す 生 徒 も み られ た 。 ね らい とし て は,両 方 の 価値 に気 付 くこ と が で き る よ うに 指 導 す る こ と が 求 め ら れ る。 (3) ア ン ガ ー マネ ジ メ ン ト (生 徒SVPP ③) ト レ ー ニン グ に入 る 前に 「 アン ガ ーマ ネ ジ メ ン ト 」 に つい て の説 明 を行 う。「怒 り」 の感 情 に つ い て マ イ ナ ス 面 だ け で な く,怒 り を 自 分 の パ ワ ー や エ ネ ル ギ ー に 変 え て 成 功す る な どプ ラ スに な る働 き もあ る こ と も 伝 え る。 し か し,怒 り が マ イ ナ ス に 働 き 暴 力 行 為 を 引 き 起こ す こ と も少 なく ない 。 そ の怒 り が 沸 き 起 こ っ た とき に 自 分 自身 で 対 応 す るた め の方 法 が ア ンガ ーマ ネ ジ メ ント で あ る。 ト レ ー ニ ン グ は, 周 囲 と 協議 し な が ら 以 下 の 5つ の ワ ー ク を 実施 す る。 ① 怒 り ( スト レ ス) を書 き だ す ( 複 数 あ る 場 合 は 番 号を 記 入 す る )。 ② 怒 り ( スト レ ス) のレ ベ ル を10 段 階 で 考 え る。 ③ 怒 りを 分 析 す る ( 自分 で 変 え ら れ る の か ・ 自 分 に とっ て 重 要 な の か ) ④ 怒 る 価値 か お る の か を冷 静 に 考 え なお す。 ⑤ 怒 りを 自 覚 し,対 処法 を 学 ぶ。 ま た 訃 レ ー ニ ン グを 進 め る な か で周 囲 と話 す こ と も,6 つ 目 の ト レ ー ニ ン グ に な っ てい る こ とを 知 ら せ る。 人 へ 悩 みや ス ト レ ス を 話 す こ と で 「少 し 気 分 が 楽 に な っ た 」 とい う感 想 を 持っ た 生 徒 もい た。 プ ロ グ ラ ム の 中 心 課題 と し て,「コ アビ リ ー フ ( 思い 込 み) の 書 き か え」 に つ い て の グル ープ 学 習 を行 う。怒 り を左 右 す る も の に,コ ア ビ リ ーフ が 関係 し てい る こ とが多 い 。 例 え ば 「朝,母 親 が 起 こし 忘 れ た 」 とい う怒 りは,“母 親 が 起こ す の が 当然 ” とい う コ ア ビ リ ー フ が 前提 にあ り怒 り が発 生 す る。こ の コ アビ リ ーフ を“ 朝 は 自 分 で 起 き る も の ” とい うよ うに,書 き か え をす る こ と で怒 り は 発 生 し な く な る。そ れ どこ ろ か,朝 寝 坊 し た 時 に母 親 が 起 こし て く れ る とづ あ り が と う」 とい う気 持 ちに な る。こ れ 鶴 「 コア ビ リ ー フ の 書 き 加 えj で あ る。ト レ ー ニ ン グ は,常 に 自分 の判 断 で 行 い,深 く 考え で 悩ま な い よ うに 注 意 をす る。 こ のプ ロ グ ラ ム は パ 怒 り 」 の感 情 を 自分 で コン ト ロ ール す る こ と が で き る こ と を知 る だ け で も 学 習 す る 意 味 が あ る と思 われ る 。 - 271

(16)

(4) 非 行 予 防 エ クサ サ イ ズn (生 徒s vPP ④ ) 「 非行 」 は辞 書 に よ る と 「青 少 年 の,社 会 の 決 ま り な ど に そ む く 行 為」 で あ る。 そ こ で 犯 罪 に つい て 考 え させ,裁 判 所 に よ る 刑 罰 の処 分 を 受 け るこ とを 説 明 す る。 少 年 犯 罪 に お い て は 犯 罪 理 由 の 殆 ど 昿 他 人 へ の責 任 転 嫁 で あ る こ とや,最 終 的 に 自 分 の 行 動 に 責 任 を 持 ち,他 人 へ 迷 惑 を か け な い こ と が非 行 予 防 で あ るこ と を伝 え る。少 年 処 遇 の流 れ を 説 明 す る と きに,家 庭 裁 判 所 に は 調 査 官 とい う存 在 か お り,社 会 とし て 少 年 の 将 来 を 前 向 きに 考 え て処 遇 を決 め る こ と の 意 味 に つ い て 考 え さ せ る。 自 分 だ も の 将 来 を 大 切 に す るこ とが 幸 せ に なる こ と を強 調 し て,プ ロ グ ラ ム の ま と め と す る。 こ の 授業 は,専 門的 な 内 容 に 触 れ る た め に 学年 生 徒 を 一 斉 に集 め て 行っ た。 はじ め に エ ク サ サイ ズ とし て,「犯 罪 さ がし 」 を ワ ー クシ ー ト に 記 入 し た 。 答 え 合 わ せ を し な が ら犯 罪や 刑 法 につ い て の 学習 を 行っ た。 生 徒 は,鑑 別 所 や 少 年 院 と い っ た施 設 の説 明 を 言 葉 は知 っ てい る が,詳し く は 知 ら ない た め に 興 味 深 く 耳を 傾 け て い た。 4-5 プ ロ グ ラ ム の 効果 検 証 ( 結 果 ・ 考 察 ) (1) 調 査 対 象 お よび 調 査 方 法 A 市 B 中 学 校 に 在 籍 す る 3 年 生240 名 (男 子135 名,女 子105 名 )を 対 象 に,無 記名 自 記 式 の「攻 撃 性 」に 関 す る 質 問 調 査 を 行 っ た。質 問 紙 は,朝 の HR を 利 用 し,学 級 担 任 の 教 示 のも とに 実 施 し た。調 査時 期 は,プ ロ グ ラ ム 開 始 前 の 9月 上 旬 とプ ロ グラ ム 実施 後 の10 月 上 旬 で あ る。 所 要 時 間 は10 分 程 度 で あ っ た。 回答 に 記 入 漏 れ の あっ た も の を 除 い た202 名 (男 子114 名,女 子88 名,有効 回答 率84.2%) を 分 析 対象 と す る。 (2) 調 査 内 容 攻 撃 性 の測 定に は,嶋 田 ら(1998) の 中 学生 用 攻 撃 性 質 問 用 紙23 項 目 を 用い た。 こ の 尺 度 は,攻 撃 性 の多 面 的 特 性 を 考 慮 し た 代 表 的 尺 度 の 一 つ であ り,安 藤 ら(1999) に

よ るBuss-Perry Aggression Questionnaire の 日本 版 を も とに 中 学 生 用 に 作 成 さ れ た

も の で あ り,信 頼 性 や 妥 当 性 が 確 認 さ れ て い る。回 答 方 法 は,各質 問 項 目「 とて も よ く あ

て は ま る 」「よく あ て はま る」「あ ま りあ て はま ら ない 」「ま っ た く あ て は ま,ら ない 」 の

4 件 法 で あ る。

(17)

(3)因子分析の結

23項

目に対

して因子分析

(主因子解

・プロマックス回転

を施

したと

ころ,

十分

な負

荷量

を示さな

い4項

目を削除

し,

最終

的に4因子が妥

当であると判断

した

。(Table.

2)

1因子は

「人か

らバ

カにされ

り,

じわ

るされた

ことが

ある」

などと

いう項

目に高

い負荷量がみ

られ

たの

“警

戒心

≒第

2因子は

「す

ぐに怒

る,

ょっと

した

ことで腹が

つ」

などと

いう項

目に負荷

量が高

くみ

られたので

“短

≒第

3因子は

「叩かれ

り,

られ

した

ら必ず

りかえす」などと

いう項

目に負荷量が高

くみ

られたので

“身

的攻

≒第

4因子

「や

りた

いと思

った

ことは,

りた

いとは

っき

り言

う」

どとい

う項

目に負荷量が高

くみ

られ

たの

“自己主張

”と命

した

Table.

2 

攻撃性尺度の因子分

析結

果 

主因子法 

プロマックス

回転

【曹

戒心】α

と2.

人か

らパ

された

じわる

され

ことが

ある      .77

5友達

、パ

カに

されて

いる

しれ

ない         

、65

13本気で

いやだ

と思

う人がた

くさんい

る         、

愚口を囂

う人が多

いと息

う      .55

21

だん仲

くて

、本

当に困った

ときに助けて

くれ

ない友達

もいると思

う .51

17友邇

の中には

いや

な人が多

い       

【蝮佩

】α=

ぐに怒る│

うだ      ー.0a

12ちよつ

した

ことで馥が立

つ       

1右

く口げんかをす

る       』0

4す

ぐにけんか

して

しまう      .26

23

っとなっても

ぐにおさまる 

★         -.211

20

友達

とけんかをす

ことが

ある       

【轟体

的蔵撃】

a=

6叩か

れた叭蹴

られた

りした

ら必ず

りかえす       

.04

2叩か

れた

ら、

叩きか

えす       .10

10か

22

どん

らかわ

ことが

れた

7ても、人を

叩いた

した

たたいた

ら必ずや

り巓つ

りか

えす       

してはい

けな

いと思

う★ -.2a

.0a

【自己主張】α=.81

7や

りたい

と愚った

ことは

りたいはっき

り言

11いや

3友漣

の考え

など昏│

に賛成

廴いやだ

でき

ないとき

とははっき

は、

り言

はっき

り言

削除環目

14

自分を守る

ためな

ら暴力をふる

うの

しかたな

15

じや

をす

る人が

いた

ら文句

を言

18人

に乱暴

とを

した

とが

ある

19友達

と考えが合わない

きは、

自分の考

えを通そ

とする

因子相関

111

- 273

-.0512一.13 . I -.07.04 .06 -.09 -.15,2 81 剛52 朋 45 ’ 一一 01 05 05 的 .06 -.01 -.08

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(18)

(4) プ ロ グラ ム実 施 前 後 の 攻 撃 性 の変 化 202 名 の生 徒 を 対 象に 対 応 のあ る t 検 定 を 実施 し た。 そ の 結 果,「警 戒 心JO(201) = 1.97, 夕<。05)に つい てプ ロ グラ ム実 施 前 よ り も実 施 後 の方 が有 意 に 高い 得 点 を 示 し てい た。 ま た「 身 体 的 攻 撃J ( £(20l)=2.30, 夕<。05)に つ い て はプ ロ グ ラ ム実 施 前 よ り も 実施 後 の 方 が 有 意 に 低 い 得 点 を 示 し てい た。「 自 己 主 張」「 短 気」 に 関 し て は 有 意 差 が み ら れ な か っ た(Table. 3)。 男 女 別 で み る と,男 子 に の み「 警 戒 心J ( t(ll3)=3.21, 夕<。01),「身 体的 攻 撃J ( £(113)=2.39, 夕<。05)にお い て 有 意 差 がみ ら れ た。「身 体的 攻 撃」 はプ ロ グ ラ ム 実 施 後 に 有 意 に 低 く な り,「警 戒 心」 は 高ま っ た。 Table. 3 プ ロ グ ラ ム 前 後 の 攻 撃 性 に お け る 変 化 …………1 ………1 ………… 汗 卜卜 卜 土 ………… … … 卜言 …………E゛ `ス ト い い゛) 辷E …… …… … ゛ `  .j ゛ ゛’勹气こ ぃ’’・し 、勺 ` ‥ ‥‥‥ ‥ ‥‥ 二 匚 匸 、

警戒心

(3,61)13、45 (3.32)13.82 -1.97 ゛

身体的攻撃

(3.50)9.11 (2.43)8.62 2.30  ゛

自己主張

<2.09)8.22 (2 バ12)8.12 0.92

短気

(3.28)11.66 (3.24)11.59 0.41 * 上 の 数字 は 平 均 値。 下 の (    ) は 標 準 偏 差 。 (・゛ p <。05) (5)考 察 プ ロ グ ラ ム 実施 にお い て,焦 点化 し てい た 「身 体 的 攻 撃 」 が減 少 し た こ とは 一 定 の成 果 と 考 え ら れ る。た だ,男 子 に対 し て の み 効 果 が み ら れ,女 子 に 対 し て は 効果 が み られ な かっ た こ と は,女 子 の 身 体 的 な 攻 撃 性 が男 子 に 比 べ て も とも と 低 かっ た こ と が 要 因 の ひ とつ と 考 え ら れ る。 ま た,プ ロ グ ラ ム の 内 容 が男 子 に 特 徴的 な身 体的 攻 撃 を 中 心に 組 ま れ てい た こ と も 要 因 であ る と 思 わ れ る。 プ ロ グ ラ ム を 実施 し て 「警 戒 心 」 の数 値 が高 く なっ た。 こ の こ と は,生 徒 が周 囲 の悪 口や 暴 言,暴 力 に対 し て敏 感 に なっ た 結果 と 思 われ る。 こ れま で 他 人 の暴 言 や 暴 力 に 対 し て ど ち ら か と 言 え ば 無 関 心 で あ っ た 生 徒 が,プ ロ グ ラ ムを 通 じ て 被 害 者 の 感 情 や 周 囲 の 思 い や りに つ い て 考 え る よ うに なっ た こ と で,周 り の 暴 言,暴 力 に 対 し て 敏 感 に 反 応 す る よ うに なっ た た め と 思 われ る。 女 子 に つ い て は ,「警 戒 心 」「短 気 」 の 平 均 得 点 - 274 −

(19)

が男 子 に 比 べ て高 く,外 的 な刺 激 に敏 感 で あ る こ と が わ かっ た。た だ し,そ うし た感 情 が 身 体的 攻 撃 へ と移 行 す る こ とは 少 ない と 思 わ れ る。 し か し,身 体 的 攻 撃 は 低い も の の 内 面 的 攻 撃 に 移 行 し や す い こ とに 注意 す る必 要 が あ る と 思 われ る。 男 子 は 攻 撃 性 の 発 生 か ら 身 体 的 攻 撃 に 移 行 し や す く,本プ ロ グ ラ ムに お け る 暴 力 行 為 発 生 ま で の 心 理 過 程 の 捉 え方 と 重 な る と こ ろ が多 く,そ の 結 果 プ ロ グ ラ ム 学 習 を 通 じ て 抑 制 行 動 が働 く よ うに な っ た と考 え ら れ る。 女 子 に 特 徴 的 な内 面 的 攻 撃 (無 視 す る,悪 い 噂 を 流 す,孤 立 させ る)を含 ん だ攻 撃 性 の抑 止 を め ざ すプ ロ グラ ムを 開 発 す る こ と が今 後 の 課 題 で あ る 。 対 象 学 年 の暴 力 行 為 件 数 は一 眸 年 度 と 比 べ る と 大 幅 に 減 少 し た。2 年 生 の 不 安 定 な 時 期 か ら3年 生 へ の移 行 とい うプ ロ グ ラ ム以 外 の 要 因 も 考 え ら れ る が,実 態 的 な 数値 と し て,一 定 の効 果 があ っ た と考 え ら れ る(Table 4)。 Table. 4 A 市 B 中 学 校 に お け る暴 力 行 為 発 生 件数 の 変 化 2 勾E・(E 膠13 勾E ) 人 麦 攵 こ全 ご4本 人 喪攵 ご 全 ご4本 彳牛 委 攵 2009 年 度 (4J Ξi一一・IOJ 司 ) 7 7 二人L I O;4 Lメこ 7 8 4牛 2 0 1 0 年 廖 (4J ≡了 一一・OJ 司 ) 2 8 人 6 0 人 3 2イ 4 こ *  プ n グ フ /ヽ実 施 学 年 は 現 3 年 生 で あ る *  暴 力 行 為 は 「 対 教 師 暴 力 」「 生 徒 間 暴 力 」「 対 人 暴 力 」「 器 物 損 埴 」に 「 け ん か 」を 含 む 第 5 章   総 合 考 察 と 今 後 の 課 題 本 プ ラ ン で 取 り上 げ た 暴 力 行 為 予 防プ ラ グ ラ ム は,学 校 現 場 の 教 師 が 今 必 要 性 を 強 く 感 じ て い る こ と と,生 徒 が 将 来 に 亘 っ て 今 学 ぶ べ き こ と は 何 か を 探 っ てい く な か で 行 き着 い た テ ーマ で あ る。 教 師 は 研 修 の 必 要 性 を 感 じ て い る も の の,多 忙 感 を 抱 く な か で そ の 意 義 や 満 足感 を 得 るこ とが 少 ない 。そ の理 由 とし て は,マ ン ネ リ 化 し か 研 修 内 容 や ニ ー ズ に 合 っ た研 修 が組 ま れて い ない こ と が 挙 げ ら れ る。 今 回 のプ ロ グラ ムで は 「 暴力 行 為 の 予 防 」 と い う共 通 の 目 的 意 識 に 基 づ く テ ー マ を 設 定 し た こ と で,教 師 の 取 り 組 み が 積 極 的 で あ っ た と 思 われ る。ま た,教 師に 対 す る 意識 調 査 を も と に ニ ー ズを 探 り,職 員 研 修 を 企 画 し か こ と も,積極 的 な 参加 を促 進 す る 結果 と な っ た。さ ら に 調 査 を 通 じ て 学 校 現 場 の教員 が 実 践的 な研 修 を求 め てい るこ と も 分 かっ た。 275 −

(20)

生 徒 指 導 とい うと 問題 の 後 追い 指 導 に 陥 り が ち で あ る が,実 際 に は 予 防 的・ 開 発 的 な 取 り 組 み が重 要 で あ る こ と はい うま で も ない 。 し か し,学 校 の危 機 意 識 や 危 機 管 理 とい う予 防 活 動 が 極 め て 重 要 な 問 題 に お い て も,学 校 現 場 で は 事 件 が 起 き た 事 後 対 応,事 後 指導 が 殆 ど で あ る。 本 プ ラ ン で は,事 前 の 予 防 的 ・開 発 的 なプ ロ グラ ムを 実施 す る こ と で 教 員 間 の 危 機 意 識 を 高 め る と と も に,生 徒 の 暴 力 行 為 へ の 関 心 と理 解 を 深 め る こ と が で き た と 考 え て い る。 重 要性 は 高い と認 識 され て い て も 効果 が す ぐ に は み え に く い 取 り 組 み の 場 合,教 師 の 意 識 の 内 面 に そ の 必 要 性 の 実感 を 伴っ た 位 置 付 け を 図 る こ と が課 題 で あ る と 感じ てい る。 様 々 な 背 景 を持 つ 生 徒 が 同 じ 場 所 で 生 活 す る 学 校 は,異質 な も の の ぶっ か り 合 い の な か で 暴 力 行 為 が 起 こ りや す く,そ の た め に 深刻 な影 響 を 相 互 に 受 け る 可 能 性 を 持 っ た 環 境 で あ る。 し た が っ て,学 校 が 暴 力 行 為 の予 防 に全 校 を 挙げ て真 剣 に 取 り 組む こ と は,生 徒 の 安 心 感 ・ 安 全感 を 育 む う えで 大 き な 意 味 を も つ も の と考 え るこ と が で き る 。 そ の 点 で,学年 全 体 の 協 働 の も と に 実施 さ れ た 今 回 の一 連 のプ ロ グラ ム(SVPP) は 一 定 の 効 果 が あ っ た と評 価 で き る。 生 徒 た ち の今 後 の 人 生 にお け る 長 期 的 なプ ロ グ ラ ム 効 果 が 期 待 さ れる 一 面 も あ り,そ の 検証 がで き ない こ と は 残 念 で あ る。 生 徒 向 けSVPP は暴 力 行 為 の 予防 的 ア プ ロ ー チ とし て 様 々 な効 果 が 期 待 さ れ る が, こ れ に よ りす べ て の暴 力 行 為 が 解 決 さ れ る わけ で は な い。 特 に 前 章 の考 察 で 述 べ た よ 引 こ,女 子 の 内面 的 攻 撃 性 に 働 き か け たプ ロ グ ラ ム の 導 入や,特 定 の 生 徒や グル ー プ に 焦 点 を 当 て た働 き かけ を 具 体化 す る こ と が今 後 の課 題 で あ る。 学校 に お け る 暴 力 行 為 の 発 生 は,学 校 崩 壊 だ け で な く 教 師 の崩 壊 へ もつ な が り か ね ない 大 き な社 会 問題 で も あ る。 本プ ラ ン の 開発 を 通 じ て 感 じ た こ と は, 学 校 現場 で は 危 機 へ の 対 処 に あ た っ て 即 効 性 を 求 め が ち で あ る が,重 要 な こ と は 生 徒 の 将 来 を 見 据 え,先 の展 望 を持 っ た 教育 を行 うこ と であ る。 そ の た め に は 回 り道 に 見 えて も 理 論 や 学 問 的 な知 見 を 基盤 とし た 時 間 を か け た 地 道 な 実 践 を 具 体化 す るこ と が重 要 で あ る と 考 え る。実 践 に あ た っ て は,絆(social bond) を 意 識 し 洞 僚や 生 徒 との 信 頼 関 係 を 築 く こ と が 不可 欠 の前 提 と な る。 276

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