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子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について

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(1)Title. 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について. Author(s). 早勢, 裕明. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第45号: 49-58. Issue Date. 2013-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7300. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第45号(平成25年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.45(2013):49-58. 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について 早 勢 裕 明 北海道教育大学釧路校学校カリキュラム開発専攻算数グループ. Study on the Elementary School Mathematics Class where Children want to say "That's Because" Spontaneously Hiroaki HAYASE Hokkaido University of Education Kushiro Campus. 要 旨 多くの授業研究の際に教員のイメージする「よい授業」が異なっているように感じた。授業の改善点を一定程度模索す る研究協議をよりよいものにするためには,我が国の算数教育のスタンダードである学習指導要領解説算数編に根拠を求 めつつ, 「よい授業」とはどのような授業なのかを改めて明確にするとともに,「よい授業」を構想するためのいくつかの ポイントを探る必要があると考えた。本稿では, 「よい授業」の要素として,①「考え表現する力」を高める,②目的意 識をもって主体的に取り組む(算数的活動の充実),③問題解決的な学習,④考えつづける,⑤発見したと思えるが考え られることを述べる。また, 「よい授業」を構想するポイントとして,①教科書を逆から教える発想で授業を構想する, ②子どもが「だって」と言いたくなるよう場面を授業展開の要所要所に仕組む,③子どもが考えつづけられるように逆接 的に問う,④子どもが発見できるように比較の場面を位置付けることについて,具体的な授業例を示して提案する。. 1.はじめに. 2.算数科の「よい授業」とは. 多くの現職の先生や学生と算数科の授業について勉強す. ここでは,算数科の「よい授業」とは,現行の小・中学. る機会を得る中で,議論がかみ合わない場面に遭遇するこ. 校学習指導要領解説算数・数学編に根拠を求めつつ,あわ. とが少なくない。. せて,我が国の数学教育史を顧みて,一般的に「理念は正. 勿論,参観した授業についての研究協議であるので,い. しかったが,時代が早過ぎた」と評される生活単元学習の. ずれの参加者も,本時の目標が達成されたかどうかという. 時代と数学教育の現代化の時代の理念からも考察していく。. 視点で意見を出し合っているのだが,過去の自分の授業を 棚に上げて述べることを許してもらえるならば,次のよう. ⑴ 今日,求められる授業としての「よい授業」. な,極めて素朴な疑問を感じるのである。. ① 算数科の目的から はじめに, 「なぜ,算数を教えるのか」という算数教育. ・算数科としての目的や学習指導要領の目標を踏まえ. の目的を改めて確認しておきたい。. た授業なのか。. 研究者によって様々な立場があるが,ここでは,本校の. ・本時の目標が達成されたと判断する子どもの姿を明. 小学校算数科教育法の授業で使用しているテキストを参考. 確にもった授業なのか。. にする。(算数科授業研究の会,2010). 授業の改善点について一定程度の方向性を模索するに. ・人間形成的目的(陶冶的目的):算数を通して人間が. も,研究協議に参加している各自の頭の中にあるいわゆる. 持っている能力などを育てようとするもの. 「よい授業」のイメージがばらばらなのではないかと感じ. ・実用的目的:算数を使うための知識や能力を身に付. るようになったのである。. けさせるとするもの. 本稿では,「よい授業」とは,どのような授業なのかを. ・文化的目的:算数のよさや楽しさを知らせるとする. 考察し,具体的な事例を通して「よい授業」を実現するた. もの. めの手立てについて提案したい。 勿論,それぞれの目的は,それぞれの特徴をもちつつ, 互いに重複してもいるが,人間形成的目的は「思考力,判. - 49 -.

(3) 早 勢 裕 明 断力,表現力」と,実用的目的は「知識・技能」と,そし. ことについて,次のように解説されている。. て,文化的目的は「関心・意欲・態度」と,現行学習指導 要領の学力の3要素との関連からも捉えられ,次の,学校. この部分が算数科の目標の全体にかかっている。こ. 教育法第30条2項の記述との整合性も当然ながらうかがえ. れは,それ以下に示されている目標を実現するため. る。(若井,2013). の,学習指導の基本的な考え方を述べたものである。 (p.18下線は早勢). 前項の場合においては,生涯にわたり学習する基盤 が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させる. もとより,日々の授業は算数科の目標達成を目指して行. とともに,これらを活用して課題を解決するために必. われる営みである。この解説は,その授業を「算数的活動. 要な思考力,判断力,表現力,その他の能力をはぐく. を通して」という学習指導を基本として行うよう要請して. み,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に. いるのである。. 意を用いなければならない。. 極端な解釈をすれば, 「算数的活動を通して」が学習指. (下線は早勢). 導の基本的な考え方なのだから,算数的活動のない授業は では,小学校学習指導要では,どのように捉えているの. 例外なのである。. だろうか。小学校学習指導要領解説算数編には,次のよう. 現行の学習指導要領が求めている授業,すなわち, 「算. な記述がある。. 数的活動のある授業」が「よい授業」でないはずはないと 考える。. 算数科においては, 問題を解決したり, 判断したり,. 加えて述べるなら,日々の算数の授業は,算数的活動を. 推論したりする過程において,見通しをもち筋道を立. 通して行ってほしいという,現行学習指導要領に示された. てて考えたり表現したりする力を高めていくことを重. 極めて強い期待をも感じているのである。. 要なねらいとしている。こうしたねらいは他教科等に. 次に,算数的活動とは何かを確認しておきたい。小学校. おいても目指しているところであるが,特に算数の内. 学習指導要領解説算数編には,次のように書かれている。. 容のもつ系統性や客観性から見ても,上記のねらいに 最も大きな貢献ができると考えられる。. 算数的活動とは,児童が目的意識をもって主体的に. (p.21下線は早勢). 取り組む算数にかかわりのある様々な活動を意味して いる。 (p.18下線は早勢). 誤解を恐れずに述べるなら,①で確認した算数教育の3 つの目的の中でも,算数科の重要な目的は,子どもの「考. この解説から「算数的活動のある授業」とは, 「子どもが,. え表現する力」 を高めることと言えるのではないだろうか。. 目的意識をもって主体的に取り組んでいる授業」と考えら. それならば,算数科の目的からの「よい授業」とは,子. れる。. どもの「考え表現する力」を高める授業なはずである。 「よい授業」とは ・・・・・ ⑴-② 「よい授業」とは ・・・・・ ⑴-①. 子どもが,目的意識をもって主体的に取り組んでい. 子どもの「考え表現する力」を高める授業. る授業 (算数的活動のある授業). そして,このような授業は,年に数回行うだけでは,到. なお,精選版日本語大辞典(小学館)では,主体的とは,. 底,子どもの「考え表現する力」を高めることはできず,. 「他に強制されたり,盲従したり,また,衝動的に行った. 日常的に教師が意識して行う必要があると考える。. りしないで,自分の意志,判断に基づいて行動するさま」. ② 学習指導要領の算数科の目標から . と説明されている。. 現行の小学校学習指導要領における算数科の目標は,次. このことを加味すると,学習指導要領の算数科の目標か. のようになっている。. ら考えられる「よい授業」とは,解説算数編に反例として あげられている「教師の説明を一方的に聞くだけの学習」. 算数的活動を通して,数量や図形についての基礎. や「単なる計算練習を行うだけの学習」にとどまらないこ. 的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象に. とがうかがえる。. ついて見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力. 例えば,「すべて教師の指示で進められる授業」や「子. を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理的な処. どもが路頭に迷うような授業」なども「よい授業」とは言. 理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようと. い難いのではないだろうか。. する態度を育てる。 (p.18下線は早勢). ③ 「算数的活動」の一層の充実から 現行の学習指導要領改訂に向けて,中央教育審議会の答. そして,目標のはじめに「算数的活動を通して」とある. 申に示された算数科,数学科の改善の基本方針のキーワー. - 50 -.

(4) 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について ドは「算数的活動・数学的活動の一層充実」であった。. んでいる授業. ②で述べた,算数科の目標が「算数的活動を通して」か. (算数的活動のある授業). 1-3 算数的活動を充実させる「問題解決的な学. らはじまるように変わったことも,算数的活動の一層の充. 習」による授業. (「問題解決の授業」). 実に向けた強い期待であるはずである。 ここでは,「算数的活動の一層の充実」はどのように図 ればよいのかという点から, 「よい授業」を考えたい。. ⑵ 過去に理想とされた授業の理念からの「よい授業」. 「算数的活動」と「数学的活動」は,基本的に同様のも. 教育は学習指導要領の改訂のたびに,その振り子を大き. のであることから,中学校学習指導要領解説数学編にある. く振らす傾向があるものである。当時は画期的な改訂を. 次のような解説に注目したい。. 行ったが,いわゆる失敗とされた時代に昭和26年の「生活 単元学習」と昭和43年の「数学教育の現代化」がある。 . ・主体的に問題解決的な学習に取り組むことができる. その他の時代の学習指導要領もこの2つの時代の理念を. ような数学的活動を充実させることが必要である。. 取り入れながら改訂されていると捉えることができること. (p.31). から,次に,振り子の両端とも言えるこの2つの時代に焦. ・これらの数学的活動は基本的に問題解決の形で行わ れ. 点を当て,「よい授業」について考えていきたい。. (p.39). ① 「生活単元学習」からの示唆. ・通常の授業においても,数学的活動などを基に,生. 「這い回る経験主義」 , 「学力低下」と批判された生活単. 徒の主体的な学習を促すような問題解決的な学習を. 元学習について,吉田 稔氏は戦後の数学教育史を概観. 定着,充実させていくことが求められる。 (p.170). し,次のように記している。(吉田,1997). ・通常の授業における各領域の内容に関する問題解決 的な学習を継続し. (p.170). 昭和22年 新制中学校の内容が戦前より1~2年引き 下げられ,数学的処理に重点が置かれた。. 「問題解決的な学習」をA, 「数学的活動」をBとすると,. 「統計,力学,天文,経済,数学史」とい. 「A⇒B,B⇒A」と読め, 「A⇔B」を類推できる。. う個性ある素材も見られた。(後略). 勿論,「基本的に」という言葉や,厳密には命題の形で. 昭和23年 和田義信らの指導で「単元学習」が開始さ. 書き表されたものではないが, 「数学的活動」の充実は「問. れ, (中略)社会的有用性や生活経験が重. 題解決的な学習」によって図られるのである。 「算数的活. 視されたが,その素材の扱いに多くの教師. 動」と「数学的活動」は基本的に同様のものであるのだか. は手を焼き,その結果いわゆる学力低下 (後. ら, 「算数的活動」の充実も「問題解決的な学習」によっ. 略). て実現されると考えられる。 「算数的活動」を一層充実させた授業が現行学習指導要. さらに,昭和26年改訂学習指導要領(試案)算数・数学. 領で求められる「よい授業」であり,それは「問題解決的. 科の主担当だった和田義信氏は,昭和26年試案の作成段階. な学習」による授業と考えられる。. の様子を「単元学習についての思い出」として,次のよう に語っている。(和田,1997). 「よい授業」とは ・・・・・ ⑴-③ 算数的活動を充実させる「問題解決的な学習」によ. 私が単元学習なるものに足を踏み入れたのは(中. る授業. 略)指導内容の切り下げをいかにごまかしていくかと. (「問題解決の授業」). いうことにあったのです。しかし,単元学習がコア・ なお,②でも述べたように,算数科の目標の文頭に「算. カリキュラムにつながるものであるとのことを,CIE. 数的活動を通して」というフレーズが位置付いたことは,. の係官から話されると,これはいけないことだと思い. 学習指導の基本的な考え方を示しており,すなわち,日々. ました。(中略)そのままに放っておくことができま. の算数の授業は「算数的活動」を通して行うのであった。. せん。それで臨時に委員会を開き,その章を削除する. それならば,算数の授業でも, 「問題解決的な学習」を. ことにいたしました。(中略)単元学習を取り上げた. 毎時間のように行わなければならないということになる。. のは,熱心な先生によっては,その教材をいかように. (1)-①,(1)-②,(1)-③ から,今日,求められる授. も取り扱うことができると思ったからです。(中略). 業としての「よい授業」とは,どのような授業かについて. 私としては,指導内容の切り下げについては,いろい. は,〔表1〕のようにまとめることができる。. ろと異論が出されておりましたもので,(中略)現場 の先生方が必ずや期待に応えて下さるものと信じて. 〔表1〕 「よい授業」とは(その1). おったのであります。ところが事実と違いまして, (後. 1-1 子どもの「考え表現する力」を高める授業. 略) (下線は早勢). 1-2 子どもが,目的意識をもって主体的に取り組. . - 51 -.

(5) 早 勢 裕 明 内容は減らしたが,色々な異論が出ているし,教師の指導. が,そこでは「問題解決」が「算数的活動」に取って. 力に期待したがダメだったということになるだろうか。. 代わっている。 (下線は早勢). では,和田氏の真意は,どのようなものであったのだろ うか。昭和26年当時,和田氏は生活単元学習での「生活」. 清水氏は,「数学的な考え方」と「算数的活動」は「問. についての考えを次のように述べている。(和田,1997). 題解決」の化身とも表現している。 〔表1〕の「よい授業」1-1に挙げた「考え表現する力」. (前略)生活といえばこれは日々の我々の行ってい. を高める授業ともリンクする生活単元学習の理念と捉える. ることではないかといわれるかもしれない。 (中略). ことができる。. しかし自分は人間としての生活を数学科という窓口か. ② 「数学教育の現代化」時代の発見学習からの示唆. ら見たときに,必ずしもそんな簡単にすましているこ. 昭和43年からの現代化の時代は,現代数学の内容を学校. とができないのであります。 (中略)人間は昔から考. 数学に取り入れようと「集合」に代表される内容面の増加. えるという働きをもっていることで特徴づけられてい. を迎え,いわゆる「落ちこぼれ」という言葉が生まれるな. るのであります。考えてものを創造することで特徴づ. ど,教師の指導力が追いつかなかったという一般的な評が. けられているのであります。人間は考えつづけて,創. なされている。. 造し自分の思考や行為を改善しつづけていくところ. しかし,様々な指導法が研究され,意欲的な実践もなさ. に,本当に人間らしい生活があると考えるのでありま. れており,学ぶべき点も多い。. す。 (下線は早勢). ここでは,それらの中から「発見学習」を取り上げ, 「よ い授業」について考ていく。. 和田氏は,「生活」を単に日常の暮らしそのものを指す. ア「発見学習」の目的や意義. のではなく, 「考えること」によって特徴づけている。「我. 発見学習で目的とするものは,概念や法則等の教材内容. 思うゆえに我あり」という言葉にも象徴されるように,人. のそのものの記憶よりも,その結果に到達するまでの子ど. 間にとって「考えること」が生活している証なのである。. もたちの発見のプロセスの習得である。いわゆる発見の方. 和田氏の「生活」の捉え方から,昭和26年当時の指導要. 法の学習が主なねらいであった。. 領編纂者の意図した生活単元学習は, 「消費生活中心」で「道. 子どもたちは与えられた問題に対し,既習事項や既習経. 具教科としての算数」と批判された授業実践とは質を異に. 験を使い,試行錯誤を繰り返しながらも概念の獲得や法則. したものであったことが推測される。. の発見に独自の方法で迫っていく。. 現行の学習指導要領でも,算数科の目標に「進んで生活. 子どもが発見した事柄は「再発見」であって,純粋な意. や学習に活用しようとする態度を育てる」というフレーズ. 味で人類の新しい発見とは言えないかも知れなが,子ども. があり, 「考え表現する力」 を育むために, 生活における様々. たちにとってはまさに「新しい発見」である。. な事象との関連を考慮しつつ指導するというスタンスがう. 発見学習の信条はブルーナーの次のような言葉に代表さ. かがえる。. れる。. 子どもが考えつづけて,よりよいものへと高め合う授業 こそが, 和田氏が生活単元学習で本来ねらった 「よい授業」. 人間が真に所有し,理解する知識は,自ら発見した. なのではないだろうか。. 知識のみである。. (片桐・古藤,1978). 「よい授業」とは ・・・・・ ⑵-①. 当然,この言葉をそのまま受け止めて授業を展開するこ. 子どもが,考えつづけている授業 (生活単元学習). とを想定するならば,時間がいくらあっても足りないのが 事実であろう。当時も,この旨の批判があり,現在,発見. また,現在は評価の観点として位置付いている「数学的. 学習の声高な主張は耳にしなくなっている。. な考え方」も,昭和33年の学習指導要領の算数科の目標に. しかし,子どもが本当に理解するには,自ら発見すると. 登場して以来,一貫して重視されている。. いう流れが重要であるということは捉えることができる。. 清水静海氏は,次のように述べている。(清水,2011). イ「発見学習」のタイプ 発見学習では,教材内容の結果的な理解よりも,与えら. 中島健三氏は昭和33年の学習指導要領で目標の表現. れた問題に対して一人一人の子どもが自分の考えをどのよ. を考える際に,それ以前の単元学習時代からの課題で. うに使って解決していくか,そのプロセスに指導の重点を. もある「問題解決の能力をのばすこと」を強く念頭に. おいている。したがって,与えられた問題の解決の技法や. 置き,表現にかなり迷った末「数学的な考え方,処理. アイデアの優劣は問題にしない。すなわち,こどもたちの. のしかた」とした。(中略)平成元年の学習指導要領で. 「思考の多様性」が尊重される傾向にあると言える。. は「問題解決にかかわる配慮事項」が加えられた。こ. また,ビッグス(E.E.Biggs)は,算数・数学科の授業に. の項目は,現行学習指導要領でも受け継がれている. おいて, 「教師によって制御されプログラム化された学習」. - 52 -.

(6) 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について と「児童・生徒の全く自由な活動にゆだねる学習」との間. 導保育の理論を唱えている。. を,次の5段階のタイプに設定している。. 誘導保育は,自由遊びを中心に,子どもの遊びの実態を 踏まえ,その遊びが子ども自身によってより充実,発展し. ① 援助なしの発見 (Imprompt discovery). ていけるように指導するもので,教師は環境構成を工夫し. ② 自由な探究による発見. たり,子どもの気づきを促す援助を行う。. (Free exploratory discovery). そこには,教師による強制や指示ではなく,子どもの思. ③ 導かれた発見 (Guided discovery). いを実現させていくようなかかわりが求められる。これ. ④ 直接的な発見 (Directed discovery). は,子どもの目的意識をもって主体的に取り組む姿を実現. ⑤ プログラム化された発見 (Programmed learning). することともリンクする。すなわち,導く程度が大切にな るのである。. ①の「援助なし」の発見学習の授業は,教師から子ども たちへの問題提示も,解法に対するヒントも一切与えない. 「よい授業」とは ・・・・・ ⑵-②. 場合を想定している。子どもたちは全く自由な発想で問題. 子どもが,あたかも自分たちで発見したと思える授. を勝手に作り,それを自分たちの力で解決していく。教師. 業 (発見学習). は相談役でしかない。したがって,内容的にも時間的にも 規制されている現行の算数の授業では,この型の授業は考. さらに, 「直接的な発見」の「教師誘導型」についても,. えられないかもしれない。考えられるとすれば,それは課. 授業とは,そもそも教師の意図的な営みであるのだから,. 外活動の時間においてであろう。. 教師のリードにより,個々の子どもの発想や子どもたちの. ②の「自由な探究」による発見学習では,教師は子どた. 集団討議の結果を大切にし,解決の重点をおさえながら進. ちに問題の設定・提示を行う。そして,子どもたちの考え. められることは,本時の目標を達成するために重要なこと. の方向が誤らないように適当な援助は与えるが,それ以外. である。. はいっさい子どもたちの考えに任せる。したがって,子ど. ただ,教科書を用いて,その流れの順序に従って展開す. もたちは,与えられた問題の解決のために,既習経験や既. ることについては,発見学習の信条が損なわれることも十. 習事項を想起し,試行錯誤をくり返しながら多くの時間を. 分に想定されることから,慎重に吟味し,検討する必要が. かけ,独自で解決に取り組む。このタイプの授業も日々の. あると考える。. 実践は難しいように感じる。. これらのことから, 「発見学習」の信条である「子ども. ③の「導かれた発見」は,もっとも多く使われる発見学. が本当に理解する知識は,自ら発見し達識だけ」という理. 習である。このタイプは教師の指導の中で子どもが再発見. 想を,日々の授業における現実的なレベルで捉え直し, 「導. をする授業である。教師は問題解決に関する数学的な考え. かれた発見」もしくは「直接的な発見」のレベルで教師の. 方を意図して日々の授業を行い,子どもは既習の考え方を. 適切なかかわりのもと, 「子どもが,あたかも自分たちで. 参考に類推的,帰納的に考え,自分でいろいろなアイディ. 発見したと思える授業」 と考えることができないだろうか。. アを用いて問題を解決する。このタイプは,現在の「考え. そしてこの授業は,〔表1〕1-2の「子どもが目的意. 表現すること」を重視した,言い換えれると「算数的活動. 識をもって主体的に取り組む授業」と重なるように思われ. を充実させた問題解決の授業」に近いと捉えられる。. る。. ④の「直接的な発見」は教師誘導型の発見学習である。. ⑵-①,⑵-②から,生活単元学習と発見学習の理念を. 教師のリードにより,個々の子どもの発想や子どもたちの. 生かす授業としての「よい授業」を,〔表2〕のようにま. 集団討議の結果を大切にし,解決の重点をおさえながら進. とめておきたい。. められる。このタイプは,ふつう教科書を用いて,その流 れの順序に従って展開する授業に見られる。. 〔表2〕 「よい授業」とは(その2). ⑤の「プログラム化された発見」はスモールステップに. 2-1 子どもが,考えつづけている授業 (生活単元学習). よるプログラム学習であるので,ここでは考えないことと. 2-2 子どもが,あたかも自分たちで発見したと思. する。. える授業 (発見学習). 以上のようなことから,発見学習の信条を尊重しつつ, 日々の授業としての実践を考えたとき, 「導かれた発見」 か「直接的な発見」を意図した授業がよいのではないかと 考えられる。. ⑶ 日々の授業としての「よい授業」とは. なお,「導かれた」という言葉からは「誘導」という教. 算数の授業を語るとき,ややもすると,研究授業のよう. 師にとってあまりよい印象を受けない言葉が連想される。. な授業を協議のテーブルにあげる。たまに行う特別な授業. しかし,幼児教育で日本のフレーベルと称された倉橋惣. について研究することも大切ではあるが,日々行う普段の. 三氏は,「幼児保育としては極く一寸する丈のこと」と誘. 授業こそ,子どもたちに与える影響が大きいと考える。. - 53 -.

(7) 早 勢 裕 明 そこで,⑴と⑵で考察してきた「よい授業」について,. 日々の授業は,教師の「算数的活動の充実」( 1-2). 日々の授業レベルで捉え直しておきたい。. を図った「問題解決的な学習」( 1-3)によって行われ. 改めて, 〔表1〕と〔表2〕でまとめた「よい授業」に. る。そして,その授業では,子どもが「目的意識をもって. ついて,そのキーフレーズを示すと〔表3〕のようにまと. 主体的に取り組む」姿( 1-2),すなわち, 「考えつづけ. めることができる。. る」姿(2-1)によって具体像となる。 そのような子どもの姿が顕著な授業では,子どもは自ら. 〔表3〕 「よい授業」のキーフレーズ. 「発見したと思える」( 2-2)だろう。逆に, 「発見した. 1-1 「考え表現する力」を高める(教師). と思える」と,また次も考えたいという「目的意識」が生. 1-2 目的意識をもって主体的に取り組む (子ども). まれ,「主体的な取組」が誘発され,「考えつづける」こと に楽しさを感じるようになっていく。. ⇔ 算数的活動の充実(教師) 1-3 問題解決的な学習(教師). このような授業が,日々積み重なっていくことで, 「考. 2-1 考えつづける(子ども). え表現する力」を高めるという算数科の目的が達成される. 2-2 発見したと思える(子ども). のである。 こうした関連を見ていくと, 〔図1〕の矢印の中核に子. これらのキーフレーズを要素として,関連を〔図1〕の. どもの姿として「考えつづける」という要素が見えてくる。. ように表してみた。. 当然のことではあるが, 「考え表現する力」を高めるに は,「考える」機会が少なくては到達できない。「目的意識 をもって主体的に取り組む」とは「考えつづけている」姿 であり, 「発見したと思える」にも「考える」ことは不可 欠である。 このように考えてくると, 「よい授業」とは,最も端的 に表現すると,次のように言えるのではないだろうか。 教師が意図した「本時の目標」の達成に向けて,子 どもが「考えつづけている」授業 まさに,目的意識をもって主体的に取り組むという算数 的活動のある授業とも言える。 3.よくない授業から見えた「よい授業」のポイント ⑴ 本時の目標の達成が疑わしい授業から 数学教育学Ⅰの授業での事例である。グループで模擬授 業の指導案を作っていたが,どうしても納得がいかないと いう学生たちの訴えであった。 授業の単元は小学2年「三角形と四角形」である。教師 用指導書では,本時の目標は「長方形の意味や性質を理解 する」となっていたとのことであった。 6社の教科書を調べると, 〔図2〕のような流れが多かっ た。 このような展開の授業で「本時の目標」が達成されるの かという疑問であった。. 1-1については,本時だけでの達成というよりは,算. 「かどの形を調べましょう」という課題らしきものの提. 数科の目的でもあり,大きなフレーズと捉えられる。いわ. 示の直後に「直角はいくつでしょう」という発問である。. ゆる算数科のゴールのようなもので,そのゴールとも言え. 子どもは,先生が言ったから数え,「4つ」と答える。こ. る「考え表現する力」が高まった子どもの姿の実現のため. の発問に対する誤答は考えづらい。そうですねなどと認. に,日々の授業が「本時の目標」の達成を目指して積み重. め,まとめ①を提示するのであろう。. ねられていくのではないだろうか。. すると,今度は「向かい合っている辺の長さを調べましょ. 日々の授業が,「本時の目標」の達成をなくして「よい. う」である。子どもは言われるがままに調べて「同じ」と. 授業」とは言えないということについては異論はないだろ. 答え,まとめ②である。. う。. 最後の練習問題でちょっと考える余地が生まれるが,方. - 54 -.

(8) 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について. 〔図2〕「三角形と四角形」の授業の流れ. 眼の上にかかれている図なので,見た瞬間に分かってしま う。1つだけ向きを斜めにした図があるので,その図につ いては三角定規の直角などを使って調べることができる。 教師が「いくつですか」や「調べましょう」と指示し, 子どもは言われるままに取り組むことで,本時の目標にあ る「理解」に至るのであろうかという趣旨の学生の発言に 頼もしさすら感じた。 言葉に語弊があるかも知れないが,教師に強いられて取 り組む子どもの姿は, 「目的意識をもって主体的に取り組. 〔図3〕模擬授業の流れ. む」姿と言えるのだろうか。 しかも,本時の目標が「理解する」である。どうしても 「真に理解する知識は,自ら発見した知識のみ」という言. にとっては,必要感をもって考えつづけることができる展. 葉を思い浮かべずにはいられなかった。. 開になるのではないだろうか。. さらに,この授業展開で子どもが考えつづけるだろう. 子どもが目的意識をもって主体的に取り組む姿として. か。もっと言うなら,考える場面はあるのだろうか。. 「考えつづける」には,授業の要所要所で子どもが「だっ. 疑問を呈したグループの模擬授業は, 〔図3〕のような. て」と言いたくなるような展開を考えればよいのかも知れ. 展開であった。. ない。. この授業は,教科書の練習問題を授業の導入段階で教師. ここで考察してきた2つの授業の比較から, 「よい授業」. が提示する問題にアレンジし, 「教科書を逆から教える発. を構想するポイントとして,次の点を確認したい。. 想で」(相馬・早勢,2011)構想されている。 少なくとも,子どもが「考える」部分は生み出されてい. A 教科書を逆から教える発想で授業を構想する。. る。2つの発問の後の話合いにスリルは伴うが,教師が明. B 子どもが「だって」と言いたくなるよう場面を授. 確な意図をもって話合いをコーディネートすれば,すなわ ち, 「導かれた・直接的な発見」を仕組むことで,子ども. - 55 -. 業展開の要所要所に仕組む.

(9) 早 勢 裕 明 ⑵ 大切なことをすべて教師が言ってしまう授業から. 研究協議で疑問として出されたことは, 「求残の意味や. 次に,ある小学校の授業参観と研究協議の場面で出会っ. 減法の式を理解する」の目標の達成についてであった。ど. た事例を基に考察する。. のような子どもの姿をもって目標の達成を評価するかが不. 授業の単元は,小学1年「ひきざん」である。初めてひ. 明確ではないかということであった。. き算を勉強する求残の場面を扱う時間で,次のような授業. 「求残の意味の理解」にかかわっては,たとえ,子ども. の概要であった。. が言葉のお話とブロック操作をつなげて発表していても, その姿で判断できるのだろうか。先生の示範をまねていっ ているだけかも知れないし,ただ,先生に言われたとおり の操作とお話の仕方を短期記憶して再生したのかも知れ ない。定型文に当てはめて話しているだけなのかも知れな い。「問題」についても,このような展開で,はたして子 どもに考える部分はあったと言えるのだろうか。 「減法の式の理解」にかかわっても,類似した場面で数 値を入れ替える練習をしていたとは言えないだろうか。 すなわち,子どもが考えつづけ,主体的に取り組んでい たと言えるのかどうかということである。 研究協議における先生方との考察を踏まえると,例え ば,次のような展開も考えられるのではないだろうか。. 本時の目標の「ブロックを使って問題場面を表せる」は 達成されていた。子ども全員が,求残の場面に応じた操作 を言葉でお話ししながらできていたからである。. - 56 -.

(10) 子どもの「だって」を引き出す算数科の授業について 4.おわりに-「考えつづける授業」としての子どもが 「だって」と言いたくなるような授業- 本稿では, 「よい授業」とはどのような授業かを,我が 国の算数教育のスタンダードである学習指導要領に軸足を 置いて,やや極端に要素化した。また,授業の具体例から, 「よい授業」を構想するいくつかのポイントを抽出し,提 案した。 今日,求められる授業である「算数的活動を充実させた では,このような展開にすると「よい授業」になるのだ. 授業」は「問題解決的な学習」とも言えるが, 「子どもが. ろうか。. 目的意識をもって主体的に取り組む授業」である。これは,. まず, 「問題」 は, 教師の無言の演示である。 子どもは,じょ. 子どもの姿に置き換えて考えたとき,生活単元学習や数学. うろの時間的な変化を推し量りながら,自分なりの言葉で. 教育の現代化の理念とも捉えられる「子どもが考えつづけ. ストーリーをつくる。各自のストーリーを発表し合う中で. る授業」であり, 「子どもたちが発見したと思える授業」. 求残の場面のイメージが確かになっていき,キーワードと. と促えることができる。. しての「残りは」が教師によって強調され, 課題としての,. そして,そのような授業では,子どもが「だって」と言. 「求残の場面の答えの求め方を考え表現すること」が,自. いたくなるような教師の意図的なかかわりが見いだされた. 然な形で必然性をもって提示されることになる。子どもに. のである。. とっては,自分たちで課題を見つけたという思いにつなが. 現段階で特徴的に捉えられる,教師のかかわりの具体を. るのではないだろうか。. 端的にまとめると,次のようになる。. 子どもたちなりの言葉でのお話は,自然な言葉による説 明である。中学校の論証指導においても,生徒の自然な説. A 教科書を逆から教える発想で授業を構想する。. 明を次第に用語を用いた証明に高めていく指導がなされて. B 子どもが「だって」と言いたくなるよう場面を授 業展開の要所要所に仕組む。. いる。小学1年だから「型から入る」という考えも分から ないではないが,これまでの生活経験などを基に,各自の. C 子どもが考えつづけられるように逆接的に問う。. イメージを語り合うことが,求残の場面の理解を阻害する. D 子どもが発見できるように比較の場面を位置付け る。. とは考えづらいのである。 次に,答えの出し方についても,各自の方法を説明し合 うことで,各自の表現方法の多様さを比較する場面を設定. 今後も,小学校の先生方との授業研究を通して, 「よい. できる。 「比較」とは, 「分類」や「類別」という最も基本. 授業」の実現に向けた具体的な手立てを探っていきたい。. 的な知的活動の基礎になる,対象の「同」 「異」の弁別を. また, 「よい授業」の継続実践が算数科の目標とも捉え. 誘引する心的活動の最も素朴な形態である。(平林,1975). られる子どもの「考え表現する力」を高めることに直結し. 考える対象が具体的になり,考えつづけるきっかけとし. ているのか,「よい授業」が子どもの確かな「知識・理解」. て効果が期待される。さらに, 「みんなの考え方は違うの. にどの程度好影響を与えるのかについても検証していきた. か」と逆接的に問われることで,子どもたちは共通点を探. い。. そうという衝動に駆られるのである。ここでも子どもの. さらには,「考えつづける授業」が確かな「知識・理解」. 「だって」が引き出されている。. の定着を促すのかについても研究していきたい。. 共通点を探す中で,いずれの表現も「□□□→□」とい う動きが抽出され, 「求残」の場面とブロックの操作,言. 引用・参考文献. 葉での説明がつながるのではないだろうか。. 算数科授業研究の会,2010,改訂版算数科教育の基礎・基 本,明治図書,pp.10-11.. その後に,場面とリンクさせながら式表現を教師が提示 し,教えるべきことを伝えることで,子どもは,自分たち. 文部科学省,2008,小学校学習指導要領解説算数編,東洋 館出版社,. が十分に考えたことと与えられた知識に関連を感じ,あた かも自分たちで発見したと思えるのである。. 若井彌一,2013,必携教職六法,協同出版,p.20.. ここで考察してきた2つの授業を比較し, 「よい授業」. 吉田 稔,1997,「数学教育史概観」,日本数学教育学会 YEARBOOK,産業図書,p.xiv.. を構想するポイントとして,次の点を確認したい。. 和田義信,1997,和田義信著作・講演集2,東洋館出版社, p.56,314.. C 子どもが考えつづけられるように逆接的に問う。 D 子どもが発見できるように比較の場面を位置付け. 清水静海,2011, 「問題解決は子どもたちの自立のために」 , 算数授業研究vol.76.東洋館出版社,pp.4-5.. る。. 片桐重男・古藤怜・小高俊夫,新しい算数・数学の指導法. - 57 -.

(11) 早 勢 裕 明 の創造,1978,学習研究社,pp.71-99. E.E.Biggs,1971,The role of experience in Leatning of Mathematics,The Arithmetic Teacher No.5,NCTM. 相馬一彦・早勢裕明,2011,算数科「問題解決の授業」に 生きる「問題」集,明治図書,pp.25-28. 平林一栄,1975,算数・数学教育のシツエーション,広島 大学出版研究会,p.140.. - 58 -.

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参照

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