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梅津正美著『歴史教育内容改革研究-社会史教授の論理と展開-』(風間書房,2006年刊,385頁)

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全文

(1)

『社

第18

号 2006

(p.

116)

【書 

評】

梅津 正美 著『歴史教育内容改革研究一社会史教授の論理と展開−』

(風

房,

2006

刊,

385

頁)

11,500

二 井 正 浩 (国立教育政策研究所大学) 本書は,梅津正美氏が2003 (平成15)年に広 島大学へ提出された学位論文を公刊されたもので ある。本書は次のように構成されている。 序章 本研究の意義と方法 第1章 社会史教授の課題と類型 第1部 社会生活史教授の論理 第2章 社会生活領域史教授の論理 第3章 社会生活拡大史教授の論理 第4章 社会生活領域・拡大史教授の論理 第2部 社会構造史教授の論理 第5章 政治的社会構造史教授の論理 第6章 総合的社会構造史教授の論理 第3部 社会生活史・社会構造史教授の展開 第7章 社会史教授の原理と教育内容開発 第8章 社会生活史教授の展開モデル 第9章 社会構造史教授の展開モデル(1) 第10章 社会構造史教授の展開モデル(2) 終章 社会史教授の意義 社会史では,従来の実証主義に基づいた政治史 中心の歴史を,部分的・表層的なものにすぎない と批判する。そして,社会諸科学との連携を積極 的に推し進めながら,それまであまり顧みられる ことのなかった一般の人間の様々な活動にまで歴 史研究の対象を広げ,一面的でない歴史・重層的 な歴史(その意味での全体史)をめざす。20世 紀後半のこの動きは,歴史研究の領域を飛躍的に 拡大させ,家族,刑罰,病気,メンタリティー等々 といったテーマをもメインテーマへと押し上げる ことになった。また,このような動きは,権力・ 国家の支配を正当化することになっていた政治史 中心の歴史を刷新するものになっている。 なぜ今,歴史教育の改革に社会史なのか。筆者 は,①庶民の行為と社会構造・変化との相互の関 係を理解できる,②歴史過程における庶民の多様 な価値観や行為の選択のありようの理解を通じて 自己のあり方・生き方を自主的自立的に選択して いける,③歴史を通じて現代社会を理解できる, と説明する(2頁)。 本書ではまず,第1章で社会史の歴史教育への 導入のされ方について,社会生活史教授型として 匚社会生活領域史教授型」匚社会生活拡大史教授型」 「社会生活領域・拡大史教授型」の3類型,社会 構造史教授型として匚政治的社会構造史教授型」 「総合的社会構造史教授型」の2類型,合計5類型 を提示する。次に,第2章から第6章にかけて, それぞれの類型に該当するアメリカの中等歴史教 育プログラムを内容構成から授業構成まで一貫し て分析し,教材構成の理論と方法,特質と限界を 整理する。そして,第7章から第10章では,そ の整理に基づいて,高等学校世界史での実践を前 提とした具体的な教育内容開発を行い,教授計画 書を3例提示する。具体的な事実から,その目的・ 内容・方法を貫く理論を分析し,そして新しい事 実を創造している本書は,従来の社会史のアプロー チをふまえた歴史教育研究を総括し,新しい視角 を提供するものとなっている。 筆者は,日本の中等歴史教育の内容構成を匚社 会構造史教授,特に総合的社会構造史教授として 構想し展開していくことが,市民性育成のための 歴史教育内容改革を実質的・実践的に推進してい くにのに有効であるし,主題史的編成の多様な市 民性育成歴史教育論を活かす基盤にもなる」と結 んでいる(361頁)。政治史中心の歴史教育が踏 襲され,ナショナル・アイデンティティの育成も 声高な昨今であるが,社会史のアプローチはもっ と幅広く柔軟で魅力的な歴史教育の可能性を提供 できる。歴史教育・社会科教育に携わる多くの教 師,研究者が熟読吟味されるよう期待したい。 116−

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