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〈論説〉
医療契約における顛末報告義務
石 田 瞳 1.はじめに 2.医療契約の性質 (1)雇用契約説 (2)請負契約説 (3)準委任契約説 (4)無名契約説 3.委任契約としての医療契約 (1)医療契約の成立 (2)民法における公共性 (3)報告義務 (4)顛末報告義務 4.おわりに 90 90 91 91 91 92 94 94 96 98 100 106医療契約における顛末報告義務 90 -1. はじめに 医療契約は諾成契約であり、実際には、患者の申込みに対して医師が承諾 することにより成立する。不法行為は契約を前提とはしていないが、債務不履 行責任の場合は、この医療契約(診療契約ともいうが、引用でない限りは医療 契約で統一する)を前提として、医療過誤があった場合に、患者と医療者側の 医療契約上の義務違反と捉え、医療契約に基づく損害賠償請求を求めること となる。 医療契約とは、準委任契約であると一般的に理解されている1。判例によれ ば、医療契約とは、「診療行為を遂行すること自体を内容とする債務を負担す るという「準委任契約」である」2、と明示している。準委任契約とは、当事者 の一方が、特定の行為をすることを委託する契約である、期間を定めて依頼 し、その期間に行ったことを報告することが原則である。準委任契約は、法律 行為ではない事務の処理を委託するという点で、通常の委任契約とは異なる。 しかし、実際は、656条の委任の規定が準用されるため、ほとんど委任契約と 同じ性質である。
近年、提唱されているACP(Advance Care Planning)においても、医療契 約が前提である。また、医療等IDの活躍場面も医療機関へ受診時に使用する ものである以上、医療契約の締結時に必要となるものである。そこで、本稿で は、患者と医師の法的関係を紡ぐ医療契約の法的性質を再検討する。特に、 医師の説明義務でもある患者への顛末報告義務が準委任契約の報告義務か ら導き出せるのかを検討課題とする。 2. 医療契約の性質 医療契約の性質は、医療契約が民法典の規定するいずれの典型契約に属 するかという、いわば類型論争から出発している。その中心は委任か請負かと いう対立であり、主として訴訟における証明分配の観点から、診療債務は結
高岡法科大学紀要 第32号 91 -果債務か手段債務かという問題として議論されてきた。村上教授は、医療契 約の類型を以下のように分類3されている。 (1)雇用契約説 雇用契約説は、医療契約の当事者である患者を雇用者とし、医師を被用者 とする雇用契約であると解する見解である。 ドイツでは医療契約を民法典の中に独立に成文化し、医療契約は特別の 契約類型として民法630条aから630条hに規定されている。医師と患者との契 約がドイツ民法典のどの契約類型に分類されるかは、雇用契約または請負契 約である(611条以下、631条以下)。患者の権利法の立法者は、これまでの通 説4に賛同し、患者の医学的治療に関する医師との契約を雇用契約の特別類 型として規定した(630条b参照)。 (2)請負契約説 請負契約説は、医療契約を請負契約と捉える見解である。医療が委任か 請負かという問題は、診療債務が結果債務か手段債務かで論じられてきた。 本説は、医療契約から発生する債務を結果債務であると捉える。初期の請負 契約説5では、診療債務は「治癒」いう結果を達成する結果債務であると捉え ていた。そのため、悪結果の発生というものは、債務不履行あるとしていたの である。これにより、過失の証明責任の転換は明白であることから、医療過 誤は、債務不履行構成の方が患者側に有利だと帰結されたのである。しか し、医学の限界や患者の個体差を無視するものであるとの批判6から、現在の 請負契約説は、「治癒」ないし「成功」をもって結果とするのではなく、医療行 為の「完了」それ自体を結果として捉え7、既述の批判を回避している。しかし、 これに鑑みると、準委任契約との差異が見当たらないという結果になる8。 (3)準委任契約説 医療契約の診療債務を手段債務と捉えることで、医療契約は準委任契約
医療契約における顛末報告義務 92 -であるとする見解である。診療債務は、「善管注意をもって医療行為を実施す ること自体」を内容とする手段債務である9とされた。 大阪大学名誉教授であった中野先生によれば「手段債務としての診療債 務の特質上、その履行不完全の事実は診療経過における医師側の注意義務 違反の具体的内容を内包せざるをえず、履行不完全につき患者側が負担する 具体的証明責任が、実質上、一般の場合に帰責事由の証明責任の内容として 取扱われるべき事項をも大幅に背負い込む結果となり、そのかぎりにおいて、 不法行為構成によったときに医師側の過失の証明責任を患者側が負担するの と大差がない」10とされている。つまり、債務不履行構成でも不法行為構成で も証明責任上は大差ないと結論付けられたのである。判例においても、一般 に準委任と述べている。東京地裁昭和46年4月14日判決11によれば、医療契 約の内容、法的性質について準委任契約と解するのが相当であるとした。 (4)無名契約説 医療契約を非典型契約として捉える見解である。近年の学説においては、 医療契約とは、ある種、特別の契約であるいう主張が行なわれている。その多 くが準委任契約に近い内容でではあるが、今日では多くの論者が無名契約説 をとっている12。判例13においても無名契約説をとっているものも存在するが、 野田博教授によれば、「診療契約」ないし「医療契約」としか述べていない 多数の裁判例は、内容的には準委任契約的な無名契約説をとるものである14 と指摘されている。 今日の多くの論者が、この無名契約説をとっている理由としては、そもそも、 医療契約を契約という法技術を用いることで医師の義務を債務という法的な 枠組みの中で理解することができ、また、対等な医師・患者関係を構築するこ とができるからである。労務の提供を目的とする契約の中において、医療契 約の手段債務性を鑑みれば、委任契約とするのがふさわしい。さらには、医 療というものは、法律行為ではなく、事実行為である以上、準委任契約と理解 されることには一定の評価は得られるであろう。しかし、①準委任契約は諾
高岡法科大学紀要 第32号 93 -成契約であるため、その成立について合意を前提としている(民法656・643 条)。しかし、医師には医師法19条による応召義務が課されている。医療者 側には、このような応召義務や守秘義務といた公法上の義務が課せられてい る。公法上の義務を私法分野の契約上の義務として取り込むことが可能なの か否か。②民法651条1項は両当事者が自由に契約を解除できる旨を定めてい る。しかし、医師側からの契約の解除により、治療中の患者を医師が見捨てる ようなことが許されるのか。③民法645条の報告義務は患者からの請求がな ければ診療終了時に限定されることとなるが、適切な時期に医療者側から自 ら報告することが医師の義務ではないのか。④準委任契約は本来的に財産 関係の事務の委託を想定しているため、およそ医師・患者関係に適用しえな い規定がほとんどである(民法646、647、653条など)ことが指摘されてきた 結果である。 そもそも、医療契約を契約だと捉えるのであれば、無名契約であろうと一 種の契約であるため、次のような問題が浮き彫りになるのではないかと思わ れる。まず、第一には、患者側と医療者側との情報格差である。民法上の契 約は、私的自治の原則・契約自由の原則が存在するため、原則として当事者 双方が対等であることが前提となる。しかし、患者側は、圧倒的に医学的知 識がない状態で診療を受けざるを得ないため医師との間では情報格差が存 在する。ゆえに、契約の当事者は平等でなければならないという民法の契約 の原則が崩れているのである。第二に、医療契約が双務契約である以上、患 者から治療費が支払われない場合、医師は診療を拒むことができるのか。と いう問題もある。これは、医師が同時履行を主張して診療を継続しないこと が妥当か否かにも繋がる。 このような見解15から、近時においては、「専門家の責任」や「専門家を一 方当事者とする契約」の提唱16がなされている。専門家の例として、医師のほ かに、弁護士、公認会計士、税理士などが挙げられ、共通の特色として、①準 委任契約であること、②情報の格差、③債務内容の不確定性等が抽出されて いる。
医療契約における顛末報告義務 94 -3. 委任契約としての医療契約 委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手 方がこれを承諾することによって、成立する(民法643条)。法律行為でない 事務の委託をする場合は、「準委任」となる(民法656条)。委任契約が成立 した場合、委任をした人は「委任者」、承諾した人は「受任者」という立場に なる。受任者は、善管注意義務(民法644条)、報告義務(民法645条)、受 取物引渡義務(民法646条)などを負う。他方、委任者は、一定の場合、報酬 支払義務(民法648条)、費用前払義務(民法649条)、費用償還義務(民法 650条)を負うこととなる。 (1)医療契約の成立 医療契約を準委任契約と捉えるのであれば、契約成立要件を充足しておか なげればならない。すなわち、患者が自己の精神的・肉体的疾病を治療しても らいたい旨の申込をする際には、患者には行為能力が必要となる。ただし、患 者が制限行為能力者である場合は、未成年者は親権の一内容17として、事理 弁識能力を欠く患者の場合は、身上監護の一内容として医療契約を締結する ことができるとされている。緊急を要する場合に、成年後見人等によってなす ことが不可能であれば、追認によって医疲契約を成立させることができる。 医療契約の当事者の申込みによらずに、入院をすることも認められている。 感染症法では、1類と2類の感染症や新型コロナウィルスといった指定感染症 (表1)は都道府県知事の入院措置・入院勧告が認められている。また、精神 保健福祉法29条において、自傷・他傷の恐れがある場合には、都道府県知事 による入院措置が認められている18。このように、患者が医療契約の成立要件 である診療申込をするのか否かは感染症法や精神保健福祉法以外では一切 自由であり、また医師を選択する自由も患者側には自由がある。
2 1 分類 規定されている感染症 分類の考え方 一類感染症 の 二類感染症 の 三類感染症 の の の 四類感染症 の 五類感染症 の と 新型インフルエンザ 等感染症 の とと の の と の 指定感染症 1 と の の 新感染症 の り患し た場合の症状が重篤 の の の の の 1 2 9 2 と の と と との の の の の の の の と と の と の と の の と の の の と の
の の の の の と と の の 12 の の と の (2)民法における公共性 のと の の と のと 19 の の の と の と の の と 20と と のと の のと の と と の と と と と 21と の の の と 22 の と と の の のと と の と の 19 1 の と 2 の と
2 の と の と の の と の と 2 の の 19 19 21 9 1 の の の と の の と 2 2 の 27 28 29 0と のと の の の と と の と の と の と の と と と と の と の の と の と の と の の の の と
の と の の の の の の と と の の の と の の の の と とと の とと と の の と の と と とと 11 7 10 1 と の の の と と と の の の (3)報告義務 の と と の
2 と の の の の の 2 の と の の の と の とと と の の の の の と の の と の の の と比較 の の の の の と 7 8 の の の の 9 と の の の の と0 と の の と1 の の の と と の の の の の の の の と
の と の の と と と と の と の の の 2 の の と の の の と と と と の と の の と の の の と と と の と との の の と と の の の の の の (4)顛末報告義務 ① 生存している患者への顛末報告義務 の と の の の の の の との の と の の の の
2 の と の の の の の の の と の の と の と の と との と の の の と の と と の とと と の の の の の の の の の の と の の の の の と の と の の の の の と と の の の の と 7 の と
と の の の と の と と の の と の の の の の の と の の の と の の と と の と の の と の と ② 死亡した患者への顛末報告義務 の の の の と の と の の と と 8 9 の と の の の と と の の と の の の の の の
2 の の の の と との 0 の との の の と の と の と の 1 と の と と の と の の と の の の の と 2 の と の と の と の との の の と との の と と の と の の の と と の の の と と と の の の の と と と の の の の
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2 の の の と の の の と の の と の の の の と と の の の の の の の 8 とと と と と の と と の の の の と の と の の と 9 と の と の の と の の と と の の との の の と の と の の の の の と と と と と と と
と の の の と の と の の の の の と の と と のと と と と と 4. おわりに の とと の の とと の の と と と の と の の の と と の の の の の と 【謝辞】
2 <参考文献> 2000 の 8 2 1 91 の の 1 2 19 22 2 1 100 と の の 7 122 200 の と 200 <注> 2000 21 1 の 8 2 200 の と rte l o 9 12 197 182 7 197 0 1919 90 の 19 1 199 9 1 19 7 と 198 1 7 197 8 の 1978 88 の 2001 91 の 1 2001 81 の と 10 200 77 と 21 200 171 の と 200 19 10 9 101 11 1 22 72 の と 2 1971 8 と と と と の 2 1971 2 0 197 78 の と 11 1972 1 9 12 と と 1971 199 の 1979 0
198 229 と 1 1999 19 1 217 1 18 91 1 1 199 9 1 8 109 1 の の の の 199 の 1997 29 の と のと 8 78 17 10 12 の の の の と との と 18 と の の の 1970 0 19 の の の 1998 20 19 21 1 22 2000 2 10 9 191 9 2 の 2000 2 1 の の の 2 11 7 10 の と 1 19 の との と の と 27 18 1 28 1 1 29 1 1 0 1 2 2 と の の 1 の 2 の 7 7 81 7 の と と
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