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イギリスにおける外国訴訟差止 一一エアバス事件イギリス貴族院判決の示す課題一一

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〈 論 説 〉

イギリスにおける外国訴訟差止

-│エアパス事件イギリス貴族院判決の示す課題ーーー

57一一『奈良法学会雑誌』第13巻 3・4号 (2001年 3月)

五 四 三 二 一 はじめに エアパス貴族院判決までの判例の動き エアパス事件 エアパス判決以降の動き おわりに は め

外国訴訟差止とは、裁判所が当事者の申立により、被申立人に対して、外国の裁判所において原告として訴訟を開 始したり継続したりすることを裁量により禁止するものである。これは、外国で訴訟されることによって受ける不当 な圧迫から当事者(外国訴訟における被告)を守るという正義に根ざしたものである。他方でこれは、外国裁判所が

(2)

第13港3・4号一一58 自らの手で訴訟を行う権利に対し異議を唱えることにも通じる。したがってそこでは、被告を守るという正義と、外 国裁判所の訴訟を尊重するという国際礼譲

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可 ) と の 調 和 が 問 題 と な る 。 イギリスにおいては従来、裁判所は差止命令を出す裁量権を有するとされてきた。そしてこの外国訴訟差止につい ては、①これが当該外国裁判所に対しての禁止ではなく、被申立人に対する命令であること、②そのため申立を受け た裁判所は被申立人に対する対人管轄権を有する必要があるとされること、③この命令に反した被申立人は裁判所侮 辱として制裁が課されるこ口④差止命令を求める申立人は本案についての訴訟を同時に起こす必要はないとされる ( 3 ) こと、等の説明がなされてきた。差止命令は、国際的訴訟競合の状態を解消するための有力な手段である反面、命令 が裁判所の裁量に委ねられる事による問題点も指摘されており、 その裁量権行使の基準については、イギリスにおい ても議論がなされてきた。この議論は、イギリスにフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理、すなわち、外国訴訟 差止のちょうど裏側に当たる訴訟中止命令や、管轄外の被告への送達許可に関する裁判所の裁量権行使についての法 ( 4 } それに対応する形でなされてきた。しかし、フォーラム・ノン・コンビニエンス法理について 理が定着する際にも、 の議論に比べ、差止に関する議論は未だ不十分の観をぬぐえなかった。またその議論の間際を縫うようにして、原則 ( 5 ) として裁判所の裁量を認めないブラッセル条約の下でなお外国訴訟差止を認めようとする判例の動きもあり、この間 題については、イギリスでは流動的な状態が続いた。そのなかで一九九八年、外国訴訟差止に関する新たな基準を示 すイギリス貴族院判決が下され、注目を集めた。それがエアパス事件である。これは、イギリス以外の二つの国であ る事件の管轄が争われ、しかもその事件の本案に関してはイギリスは適切な法廷地宮山

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ではないと判断 される状況において、イギリス裁判所にその内の一つの国における訴訟の差止命令を求める申立のみがなされたとい う事案である。先に述べたように、イギリスで従来認められてきた外国訴訟差止の要件としては、④にあるように、

(3)

差止命令を求める申立人は、同時に本案についての訴訟を提起する必要はないとされる。だとすると、イギリス裁判 所は、イギリス以外の他の二国間で管轄が争われている場合であっても、被申立入、すなわち事件の本案における原 告、に対する対人管轄権さえあれば、差止命令を出す資格があるのであろうか。従来イギリスにおいて、差止の申立 についての管轄権の有無の判断と、差止命令を下すにあたっての裁量との間の区別が、判然としないまま放置されて ( 6 } きた状況ともあいまって、この事件は、外国訴訟差止に関する問題を提起する格好の事例となったのである。本項で は、この事件をきっかけに再燃した外国訴訟差止命令に関するイギリスでの議論を追いながら、 その裁量権行使の基 準について考察、検討したい。 エアパス貴族院判決までの動き ( 1 ) 主な判例 59一一イギリスにおける外国訴訟差止 エアパス貴族院判決の位置づけを見ていくために、まず、同判決までの外国訴訟差止に関する判例の動きを概観し

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判決 イギリスにおける外国訴訟差止の先例となるのは、一九八七年の

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判決である。この事件は、プルネイで起こ ったヘリコプター事故について、その遺族からブルネイとテキサスの両方で訴えを起こされたヘリコプター製造業者

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が、テキサスでの訴えの差止を求めてブルネイ裁判所に申し立てたものである。ブルネイ裁判所の第一審、 第二審において申立を認められなかった製造業者の上告に対し、イギリス枢密院はテキサスでの訴訟差止を認め、そ の際、外国訴訟差止に関して以下のようなルールを示した。すなわち ( 1 ) 申立の時点においてイングランドで本案に

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第13巻3・4号一-60 ついての訴訟が係属しているといないとを問わず、イングランド裁判所がその事件に関して自然的法廷地

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外国訴訟が被告を圧迫し、困惑させるものであること守男巳目。

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巾 ) を 要 す る とした。これらのうち、 ( 1 ) の自然的法廷地の概念は フォーラム・ノン・コンビニエンス法理においても、判断基 準として用いられるものである。しかし外国訴訟差止の場合は、外国の裁判手続への介入を意味するため、自然法廷 地の基準に加えて、

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の要素、すなわち乱用的提訴の要件も必要とするとするのが

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判決の主旨である。 ( 8 ) 2 . コンチネンタル銀行判決 その後、先にも触れたように、 ブラッセル条約の下でなお外国訴訟差止を認める判決が出される。これが一九九四 年のコンチネンタル銀行判決である。事件は、 アメリカのコンチネンタル銀行と、同銀行のアテネ支唐を通じて融資 を受けたギリシアの船会社との聞で ロ ' s e a t ン返済に関して生じた紛争によるものである。船会社が銀行に対し損害賠 償を求めてギリシア裁判所に提訴したのに対し、銀行側は、 ローン契約にはイギリス裁判所を管轄とする専属的管轄 合意があったとして、ギリシア訴訟の差止をイギリス裁判所に求めた。イギリス裁判所が、原則として裁判所の裁量 を認めないとされるブラッセル条約の下であえてギリシア訴訟差止を認めた理由は、 それが管轄合意違反の提訴であ ったからであった。この事案は、イギリスのコモン・ロ

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上築かれた正義の観点からすれば、ギリシア訴訟を血止す その結論に賛成する向きもあるものの、他方で、 ( 9 } ン・ロ!上の基準をそのまま持ち込むことに対する疑問も出されている。

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3 . エンジエリック・グレイス号判決 ブラッセル条約にコモ べきであると判断される状況であったため、 これは エンジエリック・グレイス号の衝突事故について、船主であるパナマ会社と、傭船者であるイタリア会社 の聞で生じた紛争に関するものである。傭船者がイタリア裁判所に提訴したのに対し、船主は、傭船契約中にロンド

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ンを仲裁地とする仲裁条項があることを理由にイタリア訴訟の差止を求めた。イギリス裁判所は、 一九九三年の第一 審 一九九四年の第二審ともに、差止を認めている。とりわけ第二審のレガット判事は、イギリスにおいて紛争解決 をするとの合意に反してなされた外国訴訟については、その差止をするにあたって国際礼譲の障害はないと述べてお ( 日 ) り、国際礼譲のハードルを低くした判決として注目された。判決中に、上記のコンチネンタル銀行判決の引用が多く ( ロ ) なされており、同判決の流れを受けたものと位置づけられよう。 かくしてこれらの先例により、イギリス法上、①イギリスが白然的法廷地であり、外国訴訟の被告が困惑し圧迫を 受けている場合と、②管轄合意違反である場合には、外国訴訟差止は認められ、国際礼譲は障害とならないとされる ( 日 ) との説明がなされるに至る。さらにこれらのうち、②の管轄合意違反については、以下に見るように、その後一連の 判例によって事例の細分化がなされていく。 ( U ) 4 . 口 吉 田 o -、 吋 円 山 口 印 。 ℃ O 円 。 ロ 可

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﹀ 判 決 この事件は、本船タグボートの事故に関して、本船の傭船者(原告)に対し、再傭船者等が南アフリカにおいて提 訴したものである。これに対し傭船者は、傭船契約中のイギリス裁判所を管轄とする専属的裁判管轄条項を理由に、 南アフリカ訴訟の差止を求めた。 一九九六年、第一審は差止を認めたが、 その際、専属的裁判管轄合意の事例におい ては、管轄合意に反して提訴された外国裁判所が事件と密接な関連を有するかどうかによって、差止を認めるか否か を判断するとした。これは、管轄合意とフォーラム・ノン・コンビニエンス法理との関係についての先例である巴 ( 日 ) ﹀尾山知事件の基準、すなわち、外国裁判所の管轄合意に反してイギリス裁判所になされた訴えを卑印可するかどうかに ついてはイギリス裁判所と事件との関連の密接さにより判断するという基準を、鏡に映した像のように対照的に用い ( 珂 ) るとの考えを示したものである。

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片 品 ・ 判 決 これは、オーストラリア会社(原告)とシンガポールの保険会社との保険契約において、保険会社が保険金支払を 拒否した事件である。同保険契約には、イギリス裁判所を管轄とする管轄条項があったが、原告はオーストラリアと イギリスにおいて提訴した。保険会社はこれに対し、オーストラリア裁判所に呉昌ーの申立をしたが認められなかった 一 九 九 七 ため、シンガポールにおいてオーストラリア訴訟の差止を求め、さらにイギリス裁判所に反訴を提起した。 年に下された判決の中で、イギリス裁判所は争点の一つとして、自らがオーストラリア訴訟の差止を認めるべきかを 判断し、差止を認めないと判示した。その際、差止を認めるか否かの判断基準において、合意された管轄がイギリス ( 叩 岬 } 裁判所であるか外国裁判所であるかは問わないとの見解を示している。これは右の

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窓 口 問 何 回 口 司 自 の め 判 決 この事件は、大豆加工品の売買に関し、引き渡された商品の状態が不良であったとして、買主が売主に対しフラン ス裁判所に提訴したものである。これに対し売主は、売買契約中に、紛争解決はの﹀句、吋﹀(の

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oロ)の仲裁により、仲裁地はイギリスとするとの仲裁条項があるとして、イギリス裁判所にフランス訴訟の 差止を求めたものである。判決は、第一審、第二審とも、差止を認めた。第一審のコルマン判事は、仲裁条項違反の 事例と、裁判管轄条項違反の事例との基準を区別した。すなわち、仲裁裁定の執行はニューヨーク条約によウて保証 されており、仲裁地は問題とならないため、当該外国裁判所の適性さについての考慮は、裁判管轄条項違反の場合と は 異 な り 、 ほとんどあるいは全く重要ではないとした。第二審においてフィリップ判事は、二つの管轄の基盤、すな わ ち

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契約違反の提訴を差し止める裁量権と、 ( 2 ) 外国裁判所での訴訟が良心的でないという理由で差し止める権

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限とに分けた。そして、本件においてフランス訴訟は、それが契約違反の訴訟であるがために差し止められるのであ って、何ら非良心的なものであるとの理由ではないとした。

( 2

)

判例の動きとそれに対する批判 以上見てきたように、外国訴訟差止は、①イギリスが自然法廷地である場合、 および②管轄合意違反である場合に は認められる可能性があることをこれらの判例は示している。さらにその中でも、管轄合意違反についての一連の判 例は、先に述べた担﹀ヨユ

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判決の流れに乗るものであり、

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と外国訴訟差止とを、鏡に映る像のように対照させ、 同一の基準で判断しようとする傾向が見られる。これは、管轄合意違反の事例においては、外国訴訟差止も広い意味 でのフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理に取り込んでいこうとする観点に立つものといえよう。その結果、管 轄合意違反の場合は、より容易に外国訴訟差止が認められているようである。しかし先に触れたように、外国訴訟差 止は、自らの訴訟を伴者ーする場合とは異なり、外国での裁判手続へのある種の介入を意味するため、このように両者 ( 初 ) を一体と考えていく立場については、国際礼譲に対する配慮を一掃するものであるとの指摘、批判もなされている。 また判例においても、この傾向に対する懸念が示されている。上記 6 の吋

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℃砂﹃判決第二審のフィリップ判事は、結 論では先例としてのエンジエリック・グレイス号の拘束力を認めて外国訴訟差止を認めたものの、管轄合意違反にお ける外国訴訟差止のハードルを低くした同判決を心地よく感じてはいないことを示し、この点についてはいずれ上級 ( 幻 ) 審で判断されるであろうと述べている。

エアパス貴族院判決が下された背景には、上記のような判例の状況があった。これらの判例で示された外国訴訟差

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第13巻3・4号一-64 止の基準となる、①自然的法廷地と、②管轄合意の二つの要素に関して言えば、 エアパス事件は、先にも述べたよう に、イギリス裁判所が自然的法廷地廷地ではなく、また管轄合意もない事案であった。そのような事案において、貴 族院が国際礼譲を前面に出し、外国訴訟差止を認めなかったため、大いに注目された次第である。この事件はまさに、 エアパス判決を下したゴフ卿の言葉を借りれば、イギリス裁判所が、﹁外国訴訟差止を認める管轄権行使に対して国際 ( 幻 ) 礼譲が課す制限を確認する必要に迫られた﹂事例であったといえる。 ( 1 ) 事実の概要 エアパス事件の概要は以下の通りである。 一 九 九

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年二月一四日、インドの国内線ボンベイ発バンガロー行きのイ ン ド 航 空 機 が 、 バンガロー空港への着陸時に墜落、炎上し、多数の乗客が死傷した。事故機は、主たる営業所をフラ ンスに置くエアパス・インダストリ

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社が一九八九年にフランスのトゥ

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ルーズで設計、組み立てた後、同年インドへ 輸出したものであった。、インド航空はインド国内線の周航のみを行なっており、事故機もインド国内の飛行にのみ使 用されていた。事故調査委員会の報告によれば、墜落の原因はパイロットの操縦ミスにあり、また空港当局の消火作 業等の不適切さにより被害の拡大を招いたとの事であった。被害を受けた乗客であるロンドン在住のインド系英国人 二家族(以後﹁被申立人﹂とする)は 一九九二年二月一二日インドにおいて、インド航空および空港当局に対し損 害賠償請求訴訟を提起した。同年三月六日、インド航空に対する請求は和解が成立したが、空港当局に対する訴訟は、 訴訟手続の遅延及び被申立人側の立証困難等により、進展しない状況であった。 インドでの訴訟と並行して、被申立人は同じく一九九二年二月、 アメリカテキサス州において、今度はエアパス社 をはじめ事故機に何らかの関連を持ちうる複数の当事者に対し、訴訟を提起した。訴えにおいて被申立人は、 エ ア パ ス社の事故機に対する製造物責任、及ぴ事故機のパイロットがフランスで受けた操縦訓練においてエアパス社の指導

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に過失があった旨を主張した。テキサス州裁判所のエアパス社に対する管轄権については、 エアパス社が過去にテキ サス州法人と取引を行なっているため、同裁判所は管轄権を有することになる。また当時、テキサス州はフォーラム・ ノン・コンビニエンス法理を採っていなかったため エアパス社は同法理による訴訟停止をテキサス州裁判所に申立 てることができなかった。そこでエアパス社は、合衆国の主権免除法笥

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、すなわ ち外国政府が過半数の株を有する企業に主権免除を認める同法が、自社に適用されると主張して、テキサス州裁判所 の 管 轄 権 を 争 っ た 。 その一方でエアパス社は、これと並行して一九九二年十一月、インドのバンガロー裁判所において、自らが同裁判 所の管轄に服することを申し出た上で、被申立人に対するテキサス州での訴訟の差止を求める訴えを提起した。被申 立人はこれに対し管轄を争ったが、バンガロー裁判所は一九九五年四月、同裁判所がインドの手続法(イギリスの

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-のもとで被申立人に対する管轄権を有し、またフォーラム・コンビニエンスの観点

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吋口に相当するル

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を 出 し た 。 バンガロー裁判所の出したこの差止命令は、被申立人がインドの裁判所の管轄外に所在するため、被申立 し か し 、 人に対し執行することができなかった。そこでエアパス社が、被申立人が居住し国籍を有するイギリス裁判所におい て、再度、被申立人に対するテキサス訴訟の差止命令を求めて訴訟を提起したのが本件である。かくして、被申立人 とエアパス社との聞で、 アメリカのテキサス州とインドのバンガローの二つの裁判所の管轄がそれぞれ争われる状況 において、そのうちのテキサス州での訴訟の差止を求める訴えがイギリス裁判所に提起されたわけである。このよう な形で、イギリス裁判所に差止命令が求められたのは、本件が初めての事例であった。

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第13巻3・4号一一 66 被申立人がテキサス州での訴訟に及んだのは、同州で製造物責任の厳格責任主義を採っていたこと、懲罰的損害賠 償金が認められていたこと、弁護士報酬について成功報酬制が認められていたこと、 がその原因であったと考えられ る。またテキサス州は当時、 フォーラム・ノン・コンビニエンス法理を採用していなかったため、訴えられたエアパ ス社が同州で訴訟中止の申立をする途は閉ざされていた。テキサスでの訴訟を避けたいエアパス社に残された途は、 訴訟差止命令を求めることしかなかったのである。 ( 2 ) 事件の争点 1 . バンガロー裁判所の命令の執行の可否 イギリスでの訴訟においてエアパス社は、当初、 被申立人へのテキサス訴訟差止命令を求める根拠として、 ( I ) パ ンガロ!判決の承認・執行、 およぴ ( 2 ) イギリス裁判所自身による被申立人への差止命令、 の二つを主張していた。 第一審のコルマン判事はまず ( 1 ) の問題を取り上げた。この問題についての判示も注目すべき点があるので、まずこ ちらに触れておきたい。 連合王国において、外国金銭判決の執行については、相手国との間に締結した条約によっていくつかのパターンが ( μ ) ( お ) あり、インドの判決については、条約に基づく一九三三年法により執行される。そこで本件においては、インドのパ ンガロ!裁判所の下した、金銭判決ではない﹁差止命令﹂が一九三三年法の適用範囲に入るのか、もし入らないとす れば、より一般的な つまり条約の対象外となる外国判決の執行のルールである コモン・ロ

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ルによる執行 は可能かという点が問題となった。 コルマン判事は、外国判決の﹁承認﹂と﹁執行﹂とは、全く異なる原則が適用さ れるとして両者を区別したうえで次のように述べる。まず、 一九三三年法は コモン・ロ

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上の外国判決の執行手続 を簡素化したものであって、考え方の基本は同じであること。そして、外国判決の﹁執行﹂は、定額の金銭判決に限

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られること。それは コ モ ン ・ ロ

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上、外国判決であれ園内判決であれ、執行のための訴えが﹁判決債務﹂に基づい てなされることをイギリス裁判所が従来認めてきたからであること。そして、外国判決の﹁承認﹂については、同一 当事者聞における再提訴の抑制、イッシュウ・エストッペルという別個の原則に基づいているため、対象となる外国 判決は定額の金銭判決にかぎられないこと。以上の点を述べた上でコルマン判事は、金銭判決ではないバンガロー裁 (Mm} 判所の判決は一九三三年法による執行の対象とはならず、またコモン・ローによる執行もできない。と結論づけた。 コルマン判事は傍論ながら、そもそもバンガロー裁判所は被告に対する管轄権も有していなかったと述べて ま た 、 いる。被告のパンがロ

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裁判所への出廷は、あくまでも同裁判所の管轄権を争い、訴訟中止を求めるためのものであ って、同裁判所の管轄権に服したものではなく、また、 バンガロー裁判所がインドの手続法を根拠に自らに管轄権あ りと判断したことは誤っていたとしている。そのため、もしも、 バンガロー判決が執行の対象となっていたとしても、 判決は裁判所の管轄権の欠知を理由に執行は拒否されていただろうとしている。 ' い ず れ に せ よ エ ア パ ス 社 は 、 バンガロー判決の﹁執行﹂という形で、イギリス裁判所によって被申立入に対するテ キサス訴訟差止が実効的に行使されることは否定された。かくして争点は、イギリス裁判所自らが、被申立人に対し 差止命令を出せるかどうかという本題に入ることになる。 2 イギリス裁判所による差止命令の可否 これまでの差止訴訟においては、被申立人がイギリス裁判所の管轄外におり、その被申立人に対する対人管轄権の 成立(これも最終的には裁量により判断される)と差止命令を下す裁量との区別が判然としなかったケ

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ス が 多 か っ た。これに対し本件においては、被申立人はイギリスに在住しているため、被申立人に対する対人管轄が成立する点 に問題はなかった。しかし本件では当事者間で他のこ国において管轄が争われており、本案の審理がイギリスでなさ

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第13巻3・4号一-68 れる可能性はほぽ全くなく、また仮に本案訴訟が提起されたとしても、イギリス裁判所が自然的法廷地

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-皆吉田)ではないと判断される状況であった。したがって本件においては、第一に、このような状況においても被申立 人に対する対人管轄さえあれば、イギリス裁判所に差止命令を下すか否かの判断をする管轄権があるのかがまず問題 となり、第二に、そのような管轄権があるとすれば、①自然的法廷地、 および②管轄合意の要素のない本件のような 事例において差し止め命令を認める判断基準はどうなるか、 が 問 題 と な っ た 。 3 . 第一審判決 第一審のコルマン判事は、第一の点について先例を参照し、特にレイカ

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事件の貴族院判決にお行けるディプロツ ク卿の意見を引用している。 レイカ!事件は、イギリスでの本案訴訟がイギリスの制定法上不可能である状況におい て、唯一訴訟が行われていた外国(アメリカ合衆国) での訴訟の差止が、イギリス裁判所に求められた事件である。 このような、イギリスが代替法廷地とはなり得ない、いわゆる単一法廷地(包括ぽ同

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の事件においても、イギリ ス裁判所が差止命令を出しうる可能性があるとしたディプロック卿の意見を、 コルマン判事は本件に引用する。そし てコルマン判事は、本案審理をイギリス裁判所がなしうるかどうかは、差止命令を与える管轄権行使のための必要な 前提条件ではないとして、差止命令の管轄権成立を認めたうえで、そのような場合においても、被申立人がイギリス 裁判所の管轄権に服し、自然的法廷地でない外国裁判所での訴訟追行が被告を圧迫し困惑させるもの(耳目民

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4 0 ) であれば、差止命令を出しうるとした。ただし、そのような場合においては差止命令を下すにあたっては、 { 幻 ) 非常に慎重であるべきで、したがって、ごくまれにしか差止命令は下されないと述べた。 その上でコルマン判事は、差止命令を出すに足りる明らかな過酷性 ( O ℃

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が本件において存在したかどうか の判断に入る。この点について判事は、インドが自然的法廷地であることを認めながらも、それがテキサスでの管轄

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権行使を不当とするには至らないとする。そして、被申立人の主張、すなわち、①本件の差止を認めたとしても、 そ の対象とならない他の当事者によってテキサス訴訟が継続しうること、②テキサス州における成功報酬制度の恩恵な しには被申立人は訴訟を維持する資力がないこと、③インド訴訟は長期化する懸念があること、等を上回るほどに決 定的な不正義の存在をエアパス社は立証せず、テキサス訴訟が被告たるエアパス社にとって圧迫し困惑させるものと { お ) コルマン判事は、テキサス訴訟差止を認めなかった。 はいえないとして 4 . 第二審判決 エアパス社の控訴を受けた第二審のホブハウス判事は、第一の問題点について、

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判決等の、イギリスにおい て本案の訴訟がなされる事案における先例も、本件のようにイギリス裁判所で本案訴訟がなされない事案をカバーす ( 怨 } るとして、本件において差止を認めるかどうかを判断する管轄があるとした。次に第二の問題点である、差止め命令 を与える基準については、第一審のコルマン判事が、被告たるエアパス社がテキサス訴訟により圧迫、困惑を受ける 69 かどうかを判断基準とした事に対して、これを、テキサス州裁判所がフォーラム・ノン・コンビニエンス法理を採用 しない事実を考慮しない点で誤っていると指摘した。そしてホブハウス判事は、差止命令を与える基準は、司法的な 不正義を防ぐためにそれが必要かどうかによると示した。その上で、①本件の自然的法廷地は第一にインド、第二に フランスであり、被申立人の提訴したテキサスは明らかに不適切な法廷地であること、②テキサス訴訟によりエアパ ( 初 } ス社は不利益を被ること、③テキサス訴訟を差し止めた事により被申立人の正当な利点を奪うことにはならない、と して、差し止め命令を認めた。 以上のように、第一審と第二審は、イギリス裁判所がテキサス訴訟差止の可否について判断する管轄は認めたもの の、具体的に差止命令を認めるか否かの基準の違いにより、結論は異なっている。

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第13巻3・4号一一 70 5 . 貴族院判決 これに対し、貴族院のゴフ卿は、第一番目の問題点について、裁判所が介入することが国際礼譲により認められる それは通常の場合、当該裁判所が自然的 ( 幻 ) 法廷地であるときをいうと述べ、外国訴訟差止の事案における国際礼譲による制限をを前面に出した。そして本件に のは、当該裁判所が紛争に十分な関連や利害関係を有するときのみであり、 おいては、イギリス裁判所は問題とされる紛争とは関連や利害関係を有しないため、テキサス訴訟差止の管轄は持た ないとして、第二審である控訴院の命じた差止命令を破棄した。第二審のホブハウス判事が、テキサス州がフォ

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ラ ム・ノン・コンビニエンス法理を当時採用せず、 エアパス社による∞富山、の申立がテキサス裁判所に認められない点を 重視したことについて、 ゴフ卿は、問題にあたることができるのは管轄に利害関係を有する裁判所のみであるとする のが原別であり、当該裁判所がその問題に対処できないからといって、他の管轄の裁判所がそれに代わって対処する ことを正当化する理由とはならず、イギリス裁判所がテキサス裁判所に代わって、適切な法廷地の判断をすることは ホブハウス判事の見解に反対の旨を示した。そしてゴフ卿は、これが外国訴訟差止命令という ( 位 ) 救済の制度上の限界であるとしている。 認められないと述べ、 ﹂の貴族院判決は それまでの判例で広く認められ エアパス事件の第一審、第二審の判決でも一不された見解、す なわち被告に対する対人管轄があり、 正義がそれを求めている場合には、外国訴訟差止は認められるとする見解に反 対したものであり、その理由としてはじめて真正面から国際礼譲をあげたことから、大きく注目された。ゴフ卿によ って、差止命令に対する慎重な姿勢が示され、外国訴訟差止にこの後、抑制がかかるかとの推測もされた。また他方 で、この判決は、第一の問題点についてイギリス裁判所の管轄権を一般的に否定したのみで、第二の問題点、すなわ ち、外国訴訟差止の管轄権が例外的に認められる場合における、裁量権行使の基準については何も述べなかったこと

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から、この問題については今後に残されることとなった。さらにブラッセル条約の下での外国訴訟差止については、 本件は先例にはならないため コンチネンタル銀行判決が依然として先例となり、同判決に対する問題点や批判等も 残されたままとなった。 四 エ ア パ ス 判 決 以 降 の 動 き 右に述べたような状況の中で エアパス貴族院判決以降、 ブラッセル条約の下での外国訴訟差止命令に関する判決 がさらに出され、新たな問題を提起している。 ( お )

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σ o -Z ︿判決 こ れ は 、 パテントをめぐる紛争に関するもので、 ブラッセル条約第一六条のもとで専属管轄を有するイギリス裁判 所による外国訴訟差止命令が求められた事例である。オランダにおけるパテントを与えられた被告が、連合王国にお ける同パテントを与えられた原告に対し、連合王国およびオランダにおけるパテント違反に対する救済を求めてオラ ンダ裁判所に提訴した。原告はそれに何ら対応はせず、代わりにイギリス裁判所において被告に対する訴えを起こし た。被告が侵害を主張するパテントは全て連合王国のパテントに関するものであったが、原告側はそのパテントが無 効 で あ る こ と 、 したがって英国法上パテント侵害はないことを主張していた。その後原告は、本件においてはイギリ ス裁判所が専属管轄を有すること、連合王国に住所を有する原告に対しオランダで提訴することは原告を困惑させる ものであることを主張して、イギリス裁判所に対し、 オランダ訴訟の差止を求めた。原告はまた予備的請求として、 ヨーロッパ司法裁判所に本件に関連するブラッセル条約の解釈を求めて付託すること、また司法裁判所の判決が出る までの問、原告を保護するために暫定的に訴訟差止命令を出すことを求めた。イギリス控訴院は、 ヨーロッパ司法裁

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第13巻3・4号一一 72 判所への付託が適切と認めたが、その際自らの意見として、本件においてイギリス裁判所はブラッセル条約二ハ条の 下で専属管轄を有すると考えるとの見解を示した。他方で、原告の求めた暫定的な差止命令については、司法裁判所 の最終判断が出るまでは、そのような命令を出せばオランダ裁判所に間接的に影響を与える懸念があり、避ける方が 妥当であること、当事者の事業形態から見て、当面そのような暫定的命令を出さなくとも、重大な被害は被らないで あろう事との理由から、暫定的命令は出さないとした。 本 件 は 、 ヨーロッパ司法裁判所へ付託されたケースではあるが、専属的管轄を有する場合には、後訴裁判所であっ ても優先権が認められていることから、それからさらに外国訴訟差止命令を認める事へつながるかどうか、外国訴訟 差止を単なる手続規則としてイギリス圏内法に任せられるのか、 ( M }

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︿ ・ の 34R判決 司法裁判所の判断が待たれる事例である。 これは会社の顧問弁護士として雇用された原告と会社側との、解雇に関する紛争についての事件である。当初連合 王国において雇用された原告は、後にスペインのマドリッドでの勤務を命じられたが、同年、会社は系列会社に譲渡 された。その後原告は、新しい経営者との意見の衝突から、辞表を提出する一方で、解雇不当の訴えをロンドンの雇 用 審 判 所 宙 自 立 ミ

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に起こし、その直後、原告は義務放棄を理由に雇用者側から解雇通知を受けた。 ロンドンの雇用審判所は自らの管轄について、雇用者が連合王国に住所を有し、ブラッセル条約が適用されることに より認められるとした。雇用者はこれに対し、雇用契約違反を理由に損害賠償を求める訴えをスペイン裁判所に提起 した。原告はスペイン訴訟に何ら対応することはせず、代わりに、イギリス高等法院に対し、 スペイン訴訟が自らを 圧迫し困惑させるものであるとして当該訴訟の差止を求める申立をした。当初この申立は原告側により一方的手続で パンフリ

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判事により一時的に当該申立は認め なされ、双方審尋手続を要求する被告側が証拠提出の準備をする問、

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られた。しかしその後、高等法院大法官部

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弓盟三位。ロ)における双方審尋手続において、ドナルドソン判事 ( お ) はこの差止命令を取消した。その理由として判事は、ブラッセル条約の下では、スペイン裁判所が第五条の義務履行 地に当たるかどうかや、第二一条、あるいは二一条により訴えを却下ないし∞宮司すべきかどうかは、前訴裁判所たる ( 初 ) スペイン裁判所が判断するべき事であると述べた。そして、ブラッセル条約の下で外国訴訟差止を認めた前述のコン チネンタル銀行事件と本件を比較して コンチネンタル銀行事件においては専属的管轄合意があったのに対し、本件 ( 幻 ) にはそのような管轄合意が存在しない事を指摘して、両事案を区別した。 ﹂れに対し控訴審においてロウズ判事は 一転してスペイン訴訟差止を認めた。 ロウズ判事は、第一に ス ペ イ ン 訴訟が本件原告を圧迫し困惑させるために提起されたものであるとの原告の主張をドナルドソン判事が考慮していな い点、第二に、本件においてイギリスの雇用審判所が専属管轄を有している点を指摘し、これらにより、外国訴訟差 ( お ) 止を取消した高等法院の判決は誤っているとした。第一点目について判事は、外国訴訟が当事者(外国訴訟の被告) を困惑し圧迫させることのみを目的としてなされている場合には、イギリス裁判所は当該訴訟を差止めることができ ( 羽 ) るとした。また第二点目について判事は、本件においてスペイン裁判所は、イギリス雇用審判所が専属管轄を有する にもかかわらずブラッセル条約を誤って適用して自らの管轄権を行使したため、同条約二一条によりイギリス裁判所 ( 川 叫 ) が前訴裁判所になると述べ、この理由からも、外国訴訟差止による救済は正当化されるとしている。 本件控訴院判決は、 ブラッセル条約の下で外国訴訟差止を認めうる余地を新たに提示したこと、さらにその基準と して、先の

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判決で示された、外国訴訟が当事者(外国訴訟における被告)を困惑し圧迫させるものであるとの 基準を導入したことから注目された。ただし、この結論には賛否両論がある。フェンティマンは結論には賛成しなが ( 組 ) らも、その論旨の運ぴ方には疑問を示す。まず第一点目の乱用的提訴の要件については、 フェンティマンは、基本的

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第13巻3・4号一一74 に控訴院判決は正しいとする。その理由としてフェンティマンは、①外国訴訟がイギリス裁判所の手続を妨害するよ { 位 ) うなものである場合には当該外国訴訟を差止めてよいとする先例があること、②そのような場合に外国訴訟を差止め てもそれは外国訴訟そのものを云々するのではなく、外国訴訟によって妨害されるイギリス裁判所の当事者を守るた めにすることであるから、国際礼譲には反しないこと、③ブラッセル条約が乱用的提訴(与口由。。同℃

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について (日目} は締約国の手続規則によらしめていることはヨーロッパ司法裁判所の判例(問。持活忽判決)においても認められてい ( H H ) ブラッセル条約に反するものではないこと、をあげている。しかし、 るため、これを理由に外国訴訟差止を認めても、 本判決が依拠していると推測されるこれらの先例を引用していない点をフェンティマンは疑問視する。次に第二点目 についても、イギリス雇用審判所が専属管轄を有するとロウズ判事が指摘しつつ、 プラッセル条約の根拠条文として は第二条をあげるのみである点を、 フェンティマンは批判する。専属管轄の第三ハ条、あるいは合意管轄の第一七条 を根拠条文とすれば、後訴裁判所にも優先権を認める余地がそれぞれあり(一六条については先の

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O 問 。 判 決 、 一七条についてはコンチネンタル銀行判決てより説得力を持つことになるが、そうでなければ、ヨーロッパ司法裁判 ( 必 } 所 の 先 例 ( 。

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ロ判決)により、管轄を有するかどうかは前訴裁判所の判断に委ねることになるからである。 したがってフェンティマンによれば、控訴院判決はもっと議論を呼ぶべきものであったし、重要な問題を含んでおり、 その答えは控訴院判決に示されたよりもさらに多く、先例によって答えられていたものであったとして、このように 重要な判決がこのように不安定な基礎に基づいて下されたことを批判している。 他方ハリスは、本件高等法院大法官部のドナルドソン判事の判決に賛成し、控訴審判決には反対す一仰い ハ リ ス は 、 ①控訴院判決は、裁判所は専属管轄を有しない限り、外国裁判所の管轄をチェックしてはならないとするヨーロッパ 司法裁判所の。︿常招

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判決に反している、②問。括

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判決において、条約は訴訟規則には介入しないと同時

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に、訴訟手続きが条約の効果に介入することもあってはならないとされたにもかかわらず、控訴院判決はそれに反し ている、③イギリス訴訟が妨害されたとしてもそれはスペイン訴訟に端を発しているのであるから、乱用的提訴の有 無を判断するのはスペイン裁判所であるべきである、④ブラッセル条約が外国訴訟差止に何ら言及していないからと しでも、そこには何らかの合理的な制限が必要であって ロウズ判事の理由づけは とても危険性をはらんでおり、 コンチネンタル銀行の理由付けに似ている と 批 判 す る 。 このように控訴院判決に対する意見は分かれる。 いずれにせよ、本判決により、 ブラッセル条約の下で外国訴訟差 止が認められる要件として、外国訴訟が乱用的提訴であること、 コンチネンタル銀行判決の﹁管轄合 が 付 加 さ れ た 。 意の潜脱﹂に付け加えて、 ブラッセル条約の下での外国訴訟差止の要件が新たに加えられたことになる。しかし、裁 判所の裁量を認めないブラッセル条約の下で、 そもそも外国訴訟差止が認められるのか否かという点については、本 件においても、十分に述べられてはいない様に思われる。 一一イギリスにおける外国訴訟差止

わ り お 以上、イギリスにおける外国訴訟差止に関する判例を概観した。 エアパス貴族院判決において、 ゴフ卿が国際礼譲 を前面に出して外国訴訟差止を認めなかったことから、イギリスにおいて、この後、外国訴訟差止に新たな動き、 さ らに言えば抑制的な傾向が見られるのではとの推測もなされていた。しかしその後の判例を見る限り、そのような傾 向は今のところ見られない様に思われる。とりわけブラッセル粂約の下での外国訴訟差止は、先例に当たるコンチネ ンタル銀行判決が、これに対する批判や疑問も多く示されているにもかかわらず、未だ大きい影響力を有しているよ ブラッセル条約の管轄規則のもつ硬直性に対する批判が、 うに見受けられるのは注目される。これはひとつには、 コ

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第13巻3・4号一一 76 モンロー国であるイギリスの裁判所の日からは、無視できないものと映るからであろう。確かに、イギリスをはじめ とするコモンロー体系のもつ柔軟さは、利点も多く、 現在草案作成中のハ

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グ新管轄条約においても、 ブラッセル条 約のような硬直性はコモンロー的柔軟さを取り入れて、ある程度緩和されている。しかし、外国訴訟差止は、 フ ォ

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ラム・ノン・コンビニエンスとは異なり、外国訴訟にある程度介入することを意味するため、慎重かつ精密な議論が 必要となろう。右のハ

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グ新条約草案においても フォーラム・ノン・コンビニエンス法理は限定的な形で導入され ているが、そこにおいてもなお、外国訴訟差止は採用されていないという事実も、両者の差を一不すものといえよう。 ( 1 ) 白 巾

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・ ﹀ ・ 自 己 C H Z E [ H S 品 ] 同 巧 - H b 岡 山 ・ 印 ∞ ∞ ・ 岡 野 ﹁ ブ ラ ッ セ ル 条 約 の 下 における外国訴訟差止の可否││第一二条に対するイギリス流アプローチの検討││﹂奈良法学会雑誌第七巻二号2頁以下参 照。もっともこの判例は、裁判所の裁量を一切認めないブラッセル条約の姿勢に対するイギリス裁判所の反論の一つであった と 考 え ら れ る 。 ( 6 ) 岡 野 前 掲 十 二 頁 以 下 参 照 。 ( 7 ) ∞ 。 円 山 岳

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円 DK 市ヤ ││hh (∞) 匿草 ilj ji;~創(∞) gj+ )ml(::;j)<-総監。 (~) Aggeliki Charis Compania Maritima S. A. v. Pagnan S. p. A. (The “ Angelic Grace") [1995J 1 L! oyd's Law Reports 87 , (撚 1 ~鞠:!;! [1994J 1. L! oyd's Law Repo 吋 3 168 ,) (口) Ib id. , p. 96. (出) Mal 巴 3 , 'Comity and Anti-suit Injunctions' LMCLQ (1998) , p.543 , 547. (ロ) Fentiman , 'An tisuit Injunctions and the Appropriate Forum' The Cambridge Law Journal (1997) p.46 , 46. (苫) [1996J 2 L! oyd's Law Report , 140.. 3:同宣' 図鑑怪紳士道総 Vo l. 25 , No.8 , 916 )ml(.'1**窓E;' æ 令~キ号令。。 (出) The El Am ria [1981J 2 L! oyd's Law Reports 119. (ヨ) Ib id. , p. 148. (口) [1998J 1 L! oy'ds Law Reports 90 (~) Ibid. , p. 104. (~) 織│蜘:!;!' [1997J 1 L! oyd's Law Reports 98. 組長 11 蜘:!;!' [1998J 1 L! oyd's Law Reports 379. (お) Fentiman , 'Comity and An tisuit Injunctions' The Cambridge Law Journal (1998) p.467 , 467. (同) [1998J 1 L! oyd's Law Reports 386. 'J E;'.l{j e .'1ゃニい:!;!' Mal 巴 s , supra note N o. 12 , p. 548. .'1.,;1)諜轄ゐ時時。 (お) Airbus Industrie GIE v. Patel and others ,車産 11 鞠:!;!' [1996J I. L. Pr. 465. 撚 11 蜘:!;!' [1997J 2 L! oyd's Law Reports 8. 価 韓基盤軍務:!;!' [1998J 1 L! oyd's Law Reports 63 1. 'J E;'体位.'1やニい:!;!tPI綾穏 1

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(お) The Foreign Judgments (Reciprocal Enforcement) Act 1933 宜釦 EE 引(+兵回総監。 (~) [1996J 1. L. Pr. 465 , 477. (お) Ibid. , pp.479-480. (~) Ibid. , 484. (gj) [1997J 2 Ll oyd's Law Reports 8 , 14. (g) Ibid. , pp. 17-18. (お) [1998J 1 Ll oyd's Law Reports 631 , 640 (~) Ibid. , 64 1. (~) Fort Doclge Animal Health Lt d. , v. Akzo Nobel NV and International BV [1998J 1. L. Pr. 732. (芯) [1999 J 3 All E. R. 616. (お) Reported in summary form at [1999J 1. L. Pr. 347. (沼) Ib id. , at para. 19. (お) Ibid. , at para. 22. (叙) [1999 J 3 All E. R. 616. (訟) [1999J 3 All E. R. 616 , 625. (ミ) [1999J 3 All E. R. 616. (可) Fentiman ,‘ Antisuit Injunctions and the Brussels Convention' The Cambriclge Law Journal (2000) p.45. (勾) Bank of Tokyo v. Karoon [1986J 3 W. L. R. 414 , C. A. (ミ:;l) Kongress Agentur Hagen GmbH v. Zeehaghe BV [1990J E. C. R. 1-1860 (E. C. J.) (ヨ) Supra note No. 40. , pp. 45-46. (忠) Overseas Union Insurance Ltd. , V. New Hampshire Insurance co. [1991J E. C. R. 1-5439. 'J E;'*~!1やユド:!j'匿勘程翠 利回 11 同\!D!(~ド一体墜。 (ヨ) Harris ,“ Use and Abuse of the Brussels Convention ," L. Q. R. Vo 1.1l 5. (1999) p.576.1 ∞ド││ゆ噌・的術的同機

参照

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