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富士登山による眼圧の変化

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Academic year: 2021

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(1)           . 川崎医療福祉学会誌   原  著. 富士登山による眼圧の変化 中尾善隆£½  橋本勇希£¾  田淵昭雄£¾  小野寺昇£¿. 要     約 富士山( 海抜.

(2)   )は日本一高い山として ,登山客が足を運ぶことが多い .しかし ,眼圧は気. 圧により変化することから ,登山中の眼圧の変化には注意が必要である.しかし ,これまで富士登山 と眼圧との関係を報告した例は我々が調べた範囲内ではなかった .今回,我々は富士登山による眼圧 の変化を調べるため ,実際に登山を行い平地と山頂での眼圧を計測した .対象は正常眼圧で眼科的疾.  名( 男性名,女性名),平均年齢 歳であった.眼圧測定は接触型眼圧  測定機器  ­  を用い ,測定者は視能訓練士  名とした .今回,アセタゾ ラミド 服用 による眼圧の変化がないことを確認し ,高山病予防のため全被検者にアセタゾラミド   を服用 させた.登山前の平均眼圧は右眼    ,左眼  ,山頂での平均眼圧は右眼    ,左眼  であり,これらに有意な差はなかった .この結果は ,富士 患を伴わない正常成人. 登山による急激な眼圧の変化はないことを示唆した .. 緒. り,普段の生活においても登山嗜好者は. 言.  名だけで. に到達することにより,低圧低酸素環境に対する呼.  予防のため全被検者にアセタゾ ラミ  ド(ダ イアモックス­ ) (  錠)を登山開始の 午後 時, 合目出発の午前 時の計  回服用させ, 医師  名,看護師  名も同行した .眼圧の測定は接  触型眼圧測定機器  ­ ( '"$(")! )  ­ (以下    )を用い,被検者は座位の 状態にして視能訓練士  名が測定した( 図  ).測 定眼は両眼で ,数回の測定により誤差率 *以下と. 吸循環系をはじめとする様々な順化が起こり,換気. なる値を採用した .事前実験としてアセタゾラミド. あった ..

(3)   )は日本一高い山として知ら. 富士山(海抜. れていて ,登山客が足を運ぶことが多い.登山ルー. . トとしては , 合目から出発する富士宮口,須走口, 御殿場口,河口湖口があり,登山の所要時間は約. 時間以上である.長時間の登山となるため疲労によ る体調不良もみられるが ,海抜. 

(4)   以上の高地. 量や脈拍数などが増大する急性高山病(以下 :  !"  #!$# %$&#"%% )が出現すると報告されて. ではなかった .そこで今回,富士登山により平地と.   服用による眼圧の変動を調査するため ,被 検者 名中 ,  名において服用前 ,服用後  時間 ,  時間と眼圧を測定した.全被検者 名において平 地( 海抜  )と山頂の山小屋(海抜

(5)   )で 眼圧を測定し ,その測定時間は ,平地( 海抜  ) が午前  時 ,山頂の山小屋( 海抜

(6)   )が翌朝 の山頂到着後  時間以内である午前 時から  時の. 富士山頂で眼圧を測定し ,眼圧の変化を検討した .. 間とした.. いる  .さらに ,眼圧も高度により変化することが. 知られていて ,これは長期間の高地滞在において重 要な問題となる  .しかし ,富士登山中に眼圧を測 定し ,その変化を確認した報告は我々が調べた範囲. . 

(7)  )の河口湖 までバスで行き,河口湖口を午後 時に出発,午後  時に  合目( 海抜

(8)    )にて約 時間の休憩 (夕食に  時間,仮眠に  時間程度)した後,午前 時に登山開始,午前 時頃に山頂到着予定とした . 登山ルートは , 合目( 海抜. 対象および方法. . 対象は緑内障を含む眼科的疾患を有さない成人. 名,女性名),平均年齢 歳(  歳). 名(男性. であった .また ,全員が今回初めての富士登山であ.  医療法人社団ひかり会  木村眼科内科病院   川崎医療福祉大学  医療技術学部  感覚矯正学科  川崎医療福祉大学  医療技術学部  健康体育学科 呉市中道   木村眼科内科病院 (連絡先)中尾善隆   〒  .  .

(9)  . 中尾善隆・橋本勇希・田淵昭雄・小野寺昇.  時間が   ,左眼平均眼圧は服用前が   ,服用後  時間が   ,  時間が     となり服用前後で有意な 変動はなかった..  .富士登山中の  発症頻度.  合目以降に頭痛,吐き気,めまいなど の症状を訴えた被検者は  名中  名(  * )であっ た .また ,そのうち  名(  名が  合目,  名が  登山中の. 合目に向かう途中)が激しい嘔吐,脱力を訴え ,登 山続行不可能という医師の判断により下山した.. .平地(海抜  )と富士山頂の山小屋 (海抜

(10)   )での眼圧(表  ). .  名に 行っ た.その結果,平均眼圧が右眼    ,左 眼  であった . 富士山頂の山小屋( 海抜

(11)   )での測定は , 山頂到着時から  時間以内である午前 時から  時 の間に行った .登山の途中に  を発症した被検 者の中で ,体調不良で測定が困難であった 名と , 途中下山した  名を除く名に測定した結果,平均 眼圧が右眼   ,左眼  平地での測定は午前 時に全被検者. 図.  ­  による眼圧測定風景 被検者を座位の状態にし ,視能訓練士  名が眼圧を. 測定した.. なお,今回は当大学健康体育学科大学院生により, 登山による血中酸素濃度の変化についても調査して いるが ,その成績については割愛する. 結. であり,左右眼ともに平地と富士山頂での眼圧に有. 果. 意な差はなかった(.  .アセタゾラミド   服用による眼圧への影響 アセタゾ ラミド.   服用が正常成人の眼圧に. 考. 影響を与えるか確認するため ,事前実験として ,今.  名中  名を対象とし ,アセタゾラミド   服用前 ,服用後  時間,  時間の眼圧を確 認した(図  ).その結果,右眼平均眼圧は服用前が     ,服用後  時間が   , 回の被検者. 図. +  )( ! !"%! )( 図 ). 按. 富士登山時の眼圧への影響を調査する目的で ,.  ­  を用いて登山前後の眼圧を比較 検討した.今回は高山病予防に有用とされるアセタ ゾラミド.   服用下での調査であった .対象の  名全員が今回初めての富士登山であり ,. 正常成人. アセタゾラミド

(12)  服用前,服用後の平均眼圧の変化 本研究対象者 名のうち  名を被検者とし ,アセタゾラミド

(13)  服用前,服用後 時間, 時間の眼 圧を測定した.平均眼圧は右眼が服用前

(14)   ,服用後    ,   となり,左眼が服用前   ,服用後 

(15)   ,    となった .こ の結果から服用前後で有意な変動はなかった.. . . . . . .

(16)  . 富士登山による眼圧の変化 表. 図. 平地(海抜

(17) )と富士山頂の山小屋(海抜

(18)

(19) )での眼圧測定結果. 平地(海抜

(20) )と富士山頂の山小屋(海抜

(21)

(22) )での平均眼圧の変化 平地での測定は全被検者 名に行い ,平均眼圧は右眼

(23)   ,左眼   で あった .富士山頂の山小屋での測定は被検者名に行い ,平均眼圧は右眼   ,左眼    であった .これらに有意な差はみられなかった(  ).. . . . . 登山前後の眼圧の変化はなく,高山病に罹患したの は.  名中  名(  * )という結果であった .. た ,本薬は緑内障など 高眼圧の治療薬としても古く から用いられているが ,矢野  は ,アセタゾラミ. アセタゾラミド は炭酸脱水酵素抑制作用により肺. ド. ,. 胞中の  の尿中排泄を増加させるとともに,他 方代謝性アシド ーシスを起こし ,  を増加させる.. . .   単回投与により高眼圧患者に眼圧低下作. 用が起こり,その薬効は個人差があるものの投与後 約.  時間後にはみられるとこを報告している.しか.  により呼吸中枢が刺激され ,換気量. し ,今回,我々が正常成人を対象として測定した結. 増大,低酸素・炭酸ガス換気応答を改善させること. 果では ,眼圧に大きな変動はみられなかった .アセ. 増加し た. . から ,. の予防薬として使用されている  .ま. タゾ ラミド.   服用は ,正常成人を対象とした.

(24) . 中尾善隆・橋本勇希・田淵昭雄・小野寺昇. 富士登山による眼圧変動に与える影響は少ないと考え. 据置き型機器であり,顎台に顔を固定して測定する. られた.また,アセタゾラミドは頻尿,口渇,しびれ,. が ,今回はそのような大型の装置を利用することは.   と軽量で  ­  を用いた  .しか. 悪心,嘔吐などの副作用を伴う  .今回は頻尿以外. 困難であることから ,超小型で質量. の副作用はみられなかったものの ,投与する場合,. ある携帯型の. 医師による徹底した管理が必要であると考えられた.. し ,本器を用いて正確な眼圧を測定するには ,本器. これ まで様々な高度の山や高地と眼圧の関係が. に習熟する必要があった .そのため ,測定者を視能. -)$#(## #%"# ./## ++#!$# を用い, ヒマラヤ 山脈の海抜

(25)  ,

(26)   ,

(27)   のそれぞれの高度にて ,滞在時間  時間後に眼圧 ら  は 接. 報告され ている . 触型眼圧測定機器. を測定し た結果 ,全ての高度で有意な眼圧の低下. ,0")# ら  は接触型眼圧測定機器  ­ ( "#!) 1 )と非接触型眼 圧測定機器 ,  #"!")( +# )を用いて パイクス山の海抜

(28)   地点にて ,滞在時間  時. を確認し ,. . 訓練士 名と固定し事前に測定練習を行った .これ により信頼できる値が得られたと考えている. 一方,今回の富士登山中の.  発症頻度は  *.  名中  名)であり,これは ,加藤ら  による富 士登山での  発症頻度 *の報告,&"!!. (. ら 

(29)  による,ネパールヒマラヤのペリシェ峰(海. 

(30)   )での  発症頻度 * ,レーニエ峰 (海抜

(31)   )での  発症頻度  *の報告より 抜. も低い値であった .彼らは登山にアセタゾラミド を.  発症頻度は ,   服用の効果による可能性が. 間以降に眼圧を測定し た結果 ,全ての時間にて有. 服用しておらず ,今回の低値の. 意な眼圧の低下を確認し た .また ,. アセタゾ ラミド. -0") ら  は.  ­ ( "#!) 1 )を用い,気圧 を一定に保たない条件の飛行機内にて海抜

(32)   , 到達時間 分での眼圧測定を行ったところ,有意な. 示唆されたが ,今後,アセタゾラミド の服用ありの 条件と ,服用なしの条件で登山を行い,比較検討す る必要性があると考えられた .. 眼圧の変化は確認できなかったと報告している.こ れらの報告から ,海抜. 

(33)   以上の高度に  時間. 以上滞在し た場合 ,眼圧の低下がみられることが. 結.   論. 正常成人を対象として高山病の予防目的でアセタ. いる.今回の我々の測定は高度が海抜.   を服用し富士登山を行い,平地(海 抜  )と富士山頂の山小屋(海抜

(34)   )での 眼圧を比較検討した .富士登山中の  発症頻度 は  *と低値を示し ,また ,富士山頂での眼圧の. 在時間. 有意な変化は確認できなかった .これにより,海抜. の実験高度より低く ,滞在時間も短かったことが ,. おいて ,有意な眼圧の変化は起こらないことが示唆. 眼圧変化が惹起されなかった理由と考えられる.ま. された .今後はアセタゾ ラミド. た ,平地( 海抜. る. 考えられる.さらに. -)$#(## #%"# ら  は ,. 低気圧地による眼圧低下の原因は ,網膜静脈の膨張 により房水流出が促進されたためであると述べて.

(35)   ,滞  時間以内での測定であり,眼圧低下を記録 した -)$#(## #%"# ら  や ,0")# ら    )と富士山頂の山小屋( 海抜

(36)   )の眼圧測定時間は異なることから ,得ら. れた眼圧値に日内変動が影響していることが示唆さ. ゾラミド.

(37)   地点,滞在時間  時間以内での富士登山に.   服用が与え  発症頻度への影響をさらに追及し ,また ,. 眼圧の日内変動を考慮した上で登山と眼圧の変化を 調査する必要性が考えられた .. れる.このことから ,今後は登山前に被検者全員の 眼圧の日内変動を調査した上で登山を行い,眼圧値 を検討する必要性があると考えられた .. 稿を終えるにあたり,本研究の内容にご 理解いただき , 快く協力して戴いた川崎医療福祉大学の学生,並びに川崎. 眼圧測定法については ,通常の眼圧測定は大型の. 学園の職員の皆様に厚く御礼申し上げます.. 文       献.  )松沢幸範:急性高山病.臨床スポーツ医学, (  ), , .  )

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(46)   ,( ' ),. '&('(' ,''' .  )篠塚規:ダイアモックス (成分名;アセタゾラミドナトリウム)    %! ( ) *% + %  ,$-

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(48)   %, .日本旅行医学会学会誌,  ,' ,''& . & )矢野育子:薬剤師による医薬品適正使用症例集  高眼圧患者におけるアセタゾラミド の体内動態と薬効の速度論的解析..

(49) . 富士登山による眼圧の変化 薬事, (  ),('(' ,''' .. ( )矢野育子:薬剤師による臨床研究の進め方 日常業務から医療薬学研究のシーズを育てる臨床研究の実例と進め方の ポイント 緑内障治療薬アセタゾラミド の体内動態と薬効の速度論的解析 着眼点と進め方のポイント .薬事, (  ),.  ,'' .  )

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(71)   , (  ),(&(&( ,''& ..  )湖崎淳:眼圧検査 ( .手持ち眼圧計.丸尾敏夫,小口芳久,西信元嗣,澤充,湖崎克,眼科検査法ハンドブック,第  版,医学書院,東京,( , ..  )加藤義弘,松岡敏男,城弟知江,大平幸子:富士登山における脈拍数,動脈血酸素飽和度,高山病症状発症の検討 小児 と大人との比較.登山医学, (  ),   & ,''( .. ' ).   . !  % +:- %%!  ,% $

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図   ­  による眼圧測定風景 被検者を座位の状態にし ,視能訓練士  名が眼圧を 測定した. なお,今回は当大学健康体育学科大学院生により, 登山による血中酸素濃度の変化についても調査して いるが ,その成績については割愛する. 結 果  .アセタゾラミド   服用による眼圧への影響 アセタゾ ラミド  服用が正常成人の眼圧に 影響を与えるか確認するため ,事前実験として ,今 回の被検者  名中  名を対象とし ,アセタゾラミド  服用前 ,服用後  時間,  時間の眼圧を確 認した(図  ) .その
表  平地(海抜   )と富士山頂の山小屋(海抜   )での眼圧測定結果 図  平地(海抜   )と富士山頂の山小屋(海抜   )での平均眼圧の変化 平地での測定は全被検者  名に行い ,平均眼圧は右眼   ,左眼   で あった .富士山頂の山小屋での測定は被検者  名に行い ,平均眼圧は右眼   ,左眼   であった .これらに有意な差はみられなかった(  ). 登山前後の眼圧の変化はなく,高山病に罹患したの は  名中  名(  * )という結果であった . アセタゾラミド は炭酸脱水酵素抑制作用によ

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