<論説>環境法における私法の役割(後篇)(3)・(完)--集合的・公共的利益の実現に対する民法と行政法の相互補完の可能性
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(2) めの条件を示す。さらに、 その条件を基礎において、本稿第二章第三節において検討を加えた相隣関係と建築基準法 川仰. の関係についての二つの議論の検討も行う。. 以下、本章第二節一. において公法的規制の遵守を私法上適法と評価することを認めるための条件を示したうえ. で、本章第二節二. においてその条件のもとに建築基準法(以下条文を示す場合は﹁建基法﹂)六五条の建物と民法. 二三四条の関係についての議論に検討を加える。続いて、本章第三節一. において公法的規制の不遵守を私法上違法. と評価することを認めるための条件を示したうえで、本章第三節二. においてその条件のもとに建基法四二条一項五. 川 川. 2. 号に基づいて道路の位置指定を受けた私道(以下﹁位置指定道路﹂)の幅員と私道通行権についての議論に検討を加 -えず匂。. 公法的規制の道守を私法上適法と評価する場合の条件. はじめに. 一.公法的規制の遵守を私法上適法と評価する場合の条件. 笹川二時即. ) 4EEA. ,,,目、、. 以下では、 日本法における民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造のもとで考慮される必要のある点を基礎 として、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することを認めるための条件を示す。 公法的規制の遵守を私法上適法と-評価するための条件. 第一が、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠が存在していることで. A. 公法的規制の遵守を私法上適法と 評価することについての議論において考慮が必要とされる点は次の四点である。. ( 2 ). 第5 2巻第 2号 近畿大学法学.
(3) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ω. ある。第二が、公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性である。第三が、公法的規制の遵守を. 私法上適法と評価することを通じて、従来私法上の評価を行うことによって果たされてきた私法上の制度の機能が失 mw-. われないことである。第四が、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することの民法理論上の根拠づけである。この. 第四の点に関して、公法的規制の遵守を私法上適法と評価する議論においては、公法的規制における評価を私法上の. 側. 制度に基づく評価と捉えることによって私法上の権利が制限されるのはいかなる民法上の理論的根拠に基づくのかと いう問題について、民法理論上の根拠を示す必要がある。. このうち、第一の点及び第三の点はそのまま条件として示すことができると考えられる。さらに、第二の点につい. ては本稿第三章において、第四の点については本稿第四章第三節においてそれぞれ検討を加え、 それぞれの理論から. 一不される条件を導き出した。以上から、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することを認めるための条件として、 次の七つの条件を掲げることができる。. m. 第一の条件は、公法的規制の規律の目的となる﹁公益﹂が﹁私益の集合﹂と捉えられることである。. 第二の条件は、私法上の制度と行政法における公法的規制とが同一の私益聞の利害調整を規律の対象としているこ m w. とである。. 第三万条件は、公法的規制の規律対象であるところの集合的・公共的利益の性質が、外郭秩序における利益として 民法学の対象額域に含まれうる性質であることである。. 州側. 第四の条件は、公法的規制の規律対象であるところの集合的・公共的利益から一定の市民に対して個別に利益が割. り当てられている、という意味において市民個人の私的利益の個別性が維持されていることである。. 3-.
(4) 第五の条件は、具体的な事案において、民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則 川酬. のもとでの調整基準を満たすことである。. 第六の条件は、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠が存在してい 仰. ることである。 側. 第七の条件は、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することを通じて、従来私法上の評価を行うことによって果 たされてきた私法上の制度の機能が失われないことである。 民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態. ω に示した条件が満たさ. なお、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することについての議論の構造のもとでは、問題となる私法規範の性 脚. 質に基づいて、民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態が考察される。そのため、前述. れて、公法的規制の遵守を私法上適法と-評価することが可能とされる場合には、それぞれの議論において問題となる. において示した公法. 私法上の制度の性質を考慮して、 その公法的規制の遵守を私法上適法と評価することがどのような形態によって認め られるのか、という点を示す必要がある。. はじめに. 二.建築基準法六五条の建物と民法二三四条の関係 4EEA. 、 、 , , , ,. (. 制. ω .. 以下本節二. では、建基法六五条の建物と民法二三四条の関係についての議論に、本節一 的規制の導守を私法上適法と評価するための条件をあてはめて検討を加える。. -4-. ( 3 ). 第5 2巻第 2号. 近畿大学法学.
(5) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 公法的規制の導守を私法上適法と評価するための条件に基づく検討 ﹁私益の集合﹂を規律の目的とする公法的規制. 間. 第一の条件に関して問題となるのは、建基法六五条の目的となる公益である。建基法六五条は、防火地域及び準防. 火地域内における﹁防火﹂及び﹁土地の合理的・効率的利用﹂という公益を目的としている。. まず﹁防火﹂は、防火地域及び準防火地域の目的と密接に関係している。防火地域は、 その地域内の建築物をほぼ. 完全に不燃化することによって、火災から当該地域を守り、他の地域からの火災の拡大を防止することを目的として 仰. ω. いる。また、準防火地域は、防火地域の周辺に指定され、市街地の建築物について全体的に防火性能を高め、火災の. 延焼を防ぐことを目的としている。ここでは、地域内の建築物をほぼ完全に不燃化し当該地域を守ることが求められ. ていることから、抽象的に当該防火地域及び準防火地域内の火災の防止がはかられているというだけではなく、具体. 的に当該地域内の個々の建築物への延焼の防止がはかられているといえる。そこで、﹁防火﹂は﹁私益の集合﹂と捉 えることができよう。 側. 他方、﹁土地の合理的・効率的利用﹂に関して、この問題における特則説の側から、個々の土地の敷地について最. 大限の利用を認めることがその内容として示されている。この内容は、防火地域及び準防火地域内における個々の土. 地の利用を促進することによって、全体の利益の向上をはかるという意味であると捉えられる。そのため、この特則. 仰. 説の側から示された建基法六五条において考慮される﹁土地の合理的・効率的利用﹂は﹁私益の集合﹂と捉えること ができよう。. 以上の検討から、建基法六五条の規律の目的は、﹁防火﹂及び﹁土地の合理的・効率的利用﹂といういずれも﹁私. -5-. ( a )( 2 ).
(6) 同一の私益聞の利害調整を規律の対象とする私法上の制度と公法的規制. 益の集合﹂と捉えられる公益であるといえよう。そこで、第一の条件は満たされているといえる。 eaEEE. , , 、 ・ υ h. 第二の条件のもとで問題となるのは、私法上の制度と公法的規制のそれぞれの規律の対象とする私益聞の利害調整 である。. 民法二三四条は、隣接する土地において、建築を行う際に境界線から五0 センチメートルの間隔をおくことを定め. ている。他方、建基法六五条は、防火地域及び準防火地域において、隣接する土地において、接境建築を認める旨を. -6-. 定めている。この両者は、 いずれも、建築の際の境界線からの間隔について、隣接する土地所有者間の利害調整を規. 律の対象としているといえる。そのため、民法二三四条と建基法六五条は同一の私益聞の利害調整を規律の対象とし ているといえよう。ここから、第二の条件は満たされていると解されうる。 民法学の対象領域に含まれると捉えられる集合的・公共的利益の性質. するという意味を持つ。すなわち、当該防火地域及び準防火地域内においては、個々の市民の建築物の延焼が防がれ. 地域内の建築物をほぼ完全に不燃化することによって、火災から当該地域を守り、他の地域からの火災の拡大を防止. 防火地域及び準防火地域内における﹁防火﹂は、前述糾に示した通り、当該防火地域及び準防火地域内において、. かどうかという点を重視して検討を加える。. は、広中俊雄教授の示す﹁生活利益秩序﹂のもとで問題とされる﹁共同享受される環境﹂にこのいずれかが含まれる. 的・公共的利益は、防火地域及び準防火地域内における﹁防火﹂及び﹁土地の合理的・効率的利用﹂である。以下で. 第三の条件では、公法的規制の規律の対象となる集合的・公共的利益の性質が問題となる。ここで問題となる集合. ( c ). 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(7) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ている。ここでは、当該地域において、 いわば、都市環境における﹁延焼防止﹂という利益が、当該地域内の住民に. よって共同享受されていると捉えることができよう。 そのため、この﹁防火﹂という集合的・公共的利益は民法の対 象領域となる﹁生活利益秩序﹂に含まれると解されよう。. 他方、前述糾に示した通り、防火地域及び準防火地域内における﹁土地の合理的・効率的利用﹂の内容は、個々の. 土地の敷地の最大限の利用が確保という内容として捉えられる。そこで、この﹁土地の合理的・効率的利用﹂は、共. 同享受される都市環境とはいえない。しかし、この内容は、個々の土地の敷地の利用内容を割り当てていると捉えら. れうる。そこで、﹁土地の合理的・効率的利用﹂は、広中教授の示す財貨の帰属主体に当該財貨の有する利益内容を. 7-. 割り当てている﹁財貨帰属秩序﹂に含まれるとして、民法の対象領域となると考えられよう。 以上の検討から、この問題に関して、第三の条件は満たされているといえよう。 集合的・公共的利益における私的利益の個別性の維持. る、と捉えられる。. 以上の検討から、防火地域及び準防火地域内における﹁防火﹂及び﹁土地の合理的・効率的利用﹂から、. 一定の市. の合理的・効率的利用﹂に関しては、まさに個々の土地が対象とされ、それぞれの敷地の最大限の利用が確保され. 火災の防止がはかられているだけではなく、具体的に個別の建築物の保護もはかられていると解される。また、﹁土地. 前述糾に示した通り、防火地域及び準防火地域内における﹁防火﹂によって、抽象的に防火地域及び準防火地域の. となる。. 第四の条件では、公法的規律の対象となる集合的・公共的利益が私的利益の個別性を維持しているかどうかが問題. ( d ).
(8) 民に対して個別に利益が割り当てられていると解しうる。そのため、第四の条件は満たされているといえよう。 比例原則の適用. 判明する。そこで、この内容が満たされていることが具体的な事案において示された場合に、建基法六五条の遵守を. ぎではならないことが求められる。これが満たされるかどうかは、個々の具体的な事案を検証することによってのみ. 仰. 利を制限される当事者が失う利益と公法的規制の規律の目的となる利益の衡量のもとで、当事者の失う利益が大きす. 最後に、﹁均衡性の原則﹂のもとでは、建基法六五条の遵守を私法上適法と捉えることによって自らの私法上の権. 範は提示されていない。そのため、この﹁必要性の原則﹂に基づく判断は行われない。. ているかどうかが問題となる。しかし、現在の議論において、公法的規制の遵守を私法上適法と捉えるための他の規. 側. 続いて、﹁必要性の原則﹂に関して、当該訴訟において確定された事実に基づいて適用されうる他の規範が存在し. のもとで、この問題において公法的規制の遵守を私法上適法と捉えることは否定されない。. よって、防火地域内での接境建築を認めるという建基法六五条の内容は実現されうる。そのため、﹁適合性の原則﹂. る。建基法六五条の建物と民法二三四条の関係に照らしてみると、建基法六五条の遵守を私法上適法と捉えることに. の権利の制限﹂という手段によって、 その対象となる﹁公法的規制の実現﹂という目的を実現しうることが求められ. まず、﹁適合性の原則﹂に関して、﹁公法的規制による評価を私法上の制度に基づく評価と捉えることによる私法上. なる。. ω. 第五の条件においては、民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則の適用が問題と. ( e ). 私法上適法と捉えることが理論的に可能となる、といえよう。. -8-. 第5 2巻第 2号 近畿大学法学.
(9) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ) fl 法政策的根拠の存在 、 J I. 第六の条件は、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠が存在してい ることである。. 建基法六五条の建物と民法二三四条の関係についての議論で、この法政策的根拠として捉えられるのは、平成元年. 川柳. 判決における判断の背景として推定されていた、接境建築が多く見られる現状において非特則説を採ると多くの紛争. が生じ、非特則説を採ると混乱するおそれがあるという実質的な考慮である。しかし、この考慮は学説においてあく. -9-. まで推定されるにすぎず、特則説の側の見解においても明示されていないことが問題となる。また、このような現状. 追認ともとれる内容の法政策的根拠が、民法的保護と行政法的保護の一致を基礎づけることができるのか、という点. にも疑問が残る。これらの点を踏まえれば、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の. 法六五条においてその規律の目的とされていた公益は、﹁防火﹂及び﹁土地の合理的・効率的利用﹂である。すなわ. 余地を残すという意味における早い者勝ちの防止、及び生活環境利益の確保という機能が示されていた。他方、建基. 側. 非特則説においては、民法二三四条一項の機能として、隣地の建物の建築あるいは修繕のために境界線から十分な. 私法上の制度の機能が失われないことである。. 第七の条件は、公法的規制の導守を私法上適法と評価することを通じて従来私法上の評価によって果たされてきた. 私法上の評価を行うことによる私法上の制度の機能. 法政策的根拠が明確には示されていないと捉えられよう。そのため、この第六の条件は満たされていないと解され る ( g ).
(10) ち、建基法六五条において、早い者勝ちの防止、及び生活環境利益の確保という機能は、 その関心から外されている. と解される。他方、特則説の側から、この点に関する応接はなされていない。そのため、現在の議論を基礎におけば、. ここで検討の対象とする問題について民法的保護と行政法的保護の一致を行うことによって、従来私法上の評価を行. うことを通して果たされてきた私法上の制度の機能が失われる、と評価されうる。 そのため、この第七の条件は満た されていないといえよう。 まとめ. ω の検討から、建基法六五条の建物と民法二三四条の関係において公法的規制の遵守を私法上適法と捉えるこ. 前述. とについては、次の二つの条件が満たされていないということができる。一つは民法的保護と行政法的保護の不一致 仰. を回避すべきである、という内容の法政策的根拠の存在という条件であり、もう一つは公法的規制の遵守を私法上適 4. 法と 評価することを通じて従来私法上の評価を行うことによって果たされてきた私法上の制度の機能が失われないこ. とという条件である。そこで本稿の考察に基づけば、現在の状況のもとではこの間題において公法的規制の遵守を私. 法上適法と捉えることが否定されるべきであるとの結論が導かれる。ただし、この二つの条件を満たすような議論の. 展開あるいは立法上の手当てがなされれば、この間題において公法的規制の遵守を私法上適法と捉えることが肯定さ. れうると考えられる。そのような場合には、個々の具体的な事案において、建基法六五条の遵守を私法上適法と捉え. ω. ることによって私法上の権利を制限される当事者の失う利益が大きすぎない場合には、理論的に公法的規制の遵守を 私法上適法と捉えることが肯定されることとなる。. 1 0-. ( 3 ). 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(11) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 第三節. 公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する場合の条件. はじめに. 一.公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する場合の条件 一. . t ' ' '. 4EE. ‘ 、〆,tム 、 、. 側. 以下では、 日本法における民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造のもとで考慮される必要のある点を基礎. として、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することを認めるための条件を示す。 公法的規制の不遵守を私法上違法と-評価するための条件. 川柳. 公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する議論の構造においても、公法的規制の遵守を私法上適法と評価する議. 仰. 論と同じ四つの点についての考慮が必要となる。そこで公法的規制の遵守を私法上違法と-評価する議論における第一 の条件ないし第七の条件がここでも同様に条件となる。. これに加えて、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する議論では、公法的規制における評価を私法上の制度に 側側. 基づく評価と捉える場合にいかなる理論構成のもとで公法的規制を実現する主体として私人が認められるのかという. 鳥、及び公法的規制の不遵守の是正が私法上の制度の機能を通じて達成される必要性という点の二つの点も考慮に入 れなければならない。. このうち前者の点、すなわち公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉える場合にいかなる理論構. 成のもとで公法的規制を実現する主体として私人が認められるのかという点に関しては本稿第四章第四節において検. 川柳. 討を加えた。この検討から、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することを認めるための理論的根拠から導かれ. る条件として、さらに次の二つの条件を掲げることができる。その一つが既存の私法上の制度の要件を満たして私人. -11-. ( 2 ).
(12) 聞に差止請求権が発生していることである。もう一つが当該公法的規制の実現に関して公法的手段に不全が生じてい ることである。. 他方、後者の点、すなわち、公法的規制の不遵守の是正が私法上の制度の機能を通じて達成される必要性に関して. は、公法的不全の存在が重要な要素となる。そして、この公法的手段に不全のあることは、公法的規制の不道守を私. 法上違法と評価する議論においてのみ考慮しなければならない点のうちの前者の点(公法的規制における評価を私法. 上の制度に基づく評価と捉える場合にいかなる理論構成のもとで公法的規制を実現する主休として私人が認められる. のかという点)に基づいた条件として存在している。そのため、その条件が満たされている場合には、公法的規制の. 不遵守の是正が私法上の制度の機能を通じて達成される必要性の存在という条件も満たされると解することができよ. 1 2-. 一. 。 λノ. 以上の検討から、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価するための条件として次の九つの条件を示すことができ る 。. 第一から第七の条件としては、公法的規制の遵守を私法上違法と評価する議論における第一の条件ないし第七の条 件がそのままここでも同様に条件となる。. 第八の条件は、既存の私法上の制度の要件を満たして私人間に差止請求権が発生していることである。. 第九の条件は、当該公法的規制の実現に関して公法的手段に不全が生じていることである。 民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態. なお、公法的規制の遵守を私法上適法と評価する議論と同様に、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する議論. ( 3 ). 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(13) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ωに示した条件が満たされる場合には、. においても、前述. それぞれの議論において問題となる私法上の制度の性質を. において示した公法的規制の. 考慮して、その公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することがどのような形態によって認められるのか、という 点を示す必要がある。. はじめに. 二.建築基準法上の位置指定道路の幅員と私道通行権 4EEA. ,、 tt. ). 以下本節二. では、位置指定道路の幅員と私道通行権についての議論に、本節一. ω .. - 1 3. 不遵守を私法上違法と評価するための条件をあてはめて検討を加える。 公法的規制の不遵守を私法上違法と評価するための条件に基づく検討 ﹁私益の集合﹂を規律の目的とする公法的規制. 者の避難、防災、安全、交通、衛生等を目的としていると解される。すなわち、この﹁道路の幅員﹂は、当該道路に. とを基礎におけば、建基法四二条において定められている﹁道路の幅員﹂は、当該道路に接する敷地、建築物の利用. 条に規定されている道路の定義は、この道路の制度の目的を念頭に置いたうえで解釈すべきであるとされる。このこ. 交通、衛生等に支障なきを期するため、一定の都市空間を解放し、都市整備をはかるための制度である。建基法四二. 的となる公益が問題となる。建築基準法上の道路は、当該道路に接する敷地、建築物の利用者の避難、防災、安全、. ここでは、まず、道路の定義に関する規定である建基法四二条において定められている﹁道路の幅員﹂の規律の自. 第一の条件において問題となるのは、位置指定道路の幅員に関する公法的規制の規律の目的となる公益である。. ( a )( 2 ).
(14) 接する敷地、建築物の利用者の私益が集合したものとして捉えられる公益を規律の目的としているといえよう。. さらに、この問題において対象となる私法上の制度は、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求. 権である。そのため、この問題においては、建基法四四条に規定されている当該道路上の建築制限についても、前述. した妨害排除請求権との同質性を示す必要がある。そこで、建築基準法上の道路における建築制限が規律の目的とし ている公益に対しても、検討を加える必要がある。. 道路の制度の役割には、前述の通り当該道路に接する敷地、建築物の利用者の交通、避難、防火等に加えて、道路. の上方空間を確保して都市環境の維持向上をはかるという機能も含まれているとされる。建基法四四条において規定. されている道路内の建築制限は、これらの機能を妨げる道路内建築等の制限を内容としている。そこで、道路内の建. 築制限は、当該道路に接する敷地、建築物の利用者の私益、及び当該道路の存する都市に居住する者の私益の集合と しての公益を規律の目的の一つとしているといえよう。. 同一の私益聞の利害調整を規律の対象とする私法上の制度と公法的規制. 以上の検討から、第一の条件は満たされていると解されうる。 tJ'. h u 、 、 ,,目、、. 第二の条件で問題となる私法上の制度は、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求権である。こ. れは、道路の通行利益に関して、位置指定道路の所有者と当該位置指定道路を通行する私人との利害調整を規律の対 象としている。. 他方、ここで問題となる公法的規制であるところの建基法四二条に定められている﹁道路の幅員﹂及び建基法四四. 条に定められている道路内の建築制限は、位置指定道路の所有者と、当該位置指定道路に接する敷地及び建築物の利. -14-. 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(15) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 用者との利害調整を規律の対象としていると捉えられうる。ここで、﹁道路の幅員﹂及び道路内の建築制限が、当該. 位置指定道路に接する敷地及び建築物の利用者の避難及び交通も目的としていることが重要となる。ここから、当該. 公法的規制の規律の対象となっている当該位置指定道路に接する敷地及び建築物の利用者は、当該位置指定道路を通. 行する私人としても捉えられているといえる。すなわち、建基法四二条に定められている﹁道路の幅員﹂及び建基法. 四四条に定められている道路内の建築制限は、道路の通行利益に関して、位置指定道路の所有者と当該位置指定道路 を通行する私人との関係を規律の対象の一つとしているといえよう。. 以上の検討から、この問題において、私法上の制度と公法的規制は同一の私益聞の利害調整を規律の対象としてい. 民法学の対象領域に含まれると捉えられる集合的・公共的利益の性質. 1 5-. ると捉えられることから、第二の条件は満たされていると解されよう。. v. 。 つ. よ. れも﹁共同享受される環境﹂であると捉えられうる。そこで、この問題において第三の条件は満たされているといえ. 当該道路の存在によって公法的規制の対象者全員が共同して享受する都市環境に関する利益である。そのため、 いず. 交通、衛生等、並びに道路の上方空間を確保して都市環境の維持向上である。ここに掲げられている内容はいずれも、. ここで問題となっている集合的・公共的利益は、当該道路に接する敷地及び建築物の利用者の避難、防災、安全、. うか、という視点から検討する。. 側. 的・公共的利益が、広中教授の示す﹁生活利益秩序﹂のもとで問題とされる﹁共同享受される環境﹂に含まれるかど. 第三の条件では、公法的規制の規律の目的となる集合的・公共的利益の性質が問題となる。以下では、この集合. ( c ).
(16) 集合的・公共的利益における私的利益の個別性の維持. 第四の条件は、当該集合的・公共的利益について私的利益の個別性が維持されていることである。. 前述例において示したように、避難、防災、安全、交通及び衛生、並びに道路の上方空間の確保による都市環境の. 維持向上を目的とする道路制度は、当該道路に接する敷地及び建築物の利用者をその対象としている。そこで、ここ. で問題となる公法的規制によって規律の目的とされている利益は、当該道路に接する敷地及び建築物の利用者のそれ. ぞれによって個別に享受されることが予定されているといえよう。そのため、これらの利益については、市民個人の. 比例原則の適用. 私的利益の個別性が維持されていると捉えうる。以上の検討から、第四の条件も満たされているといえよう。. ω. 第五の条件においては、民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則の適用が問題と なる。. まず、﹁適合性の原則﹂に関して、﹁公法的規制による評価を私法上の制度に基づく評価と捉えることによる私法上. の権利の制限﹂という手段によって、 その対象となる﹁公法的規制の実現﹂という目的を実現しうることが求められ. る。位置指定道路における建基法四二条に基づく道路の幅員及び建基法四四条に基づく建築制限の不遵守を、人格権. 的権利に基づく妨害排除請求権のもとで私法上違法と捉えることによって、前述した建基法四二条及び同四四条の内. 容が実現されうるといえる。そのために﹁適合性の原則﹂のもとで、この問題において公法的規制の不遵守を私法上 違法と捉えることは否定されない。. 続いて、﹁必要性の原則﹂に関して、当該訴訟において確定された事実に基づいて適用されうる他の規範が存在し. -16-. 何) ( e ). 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(17) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ているかどうかが問題となる。しかし、現在の議論において、公法的規制の不遵守を私法上違法と捉えるための他の 規範は提示されていない。そのため、この﹁必要性の原則﹂に基づく判断は行われない。. 最後に、﹁均衡性の原則﹂のもとでは、建基法四二条及び建基法四四条の不遵守を私法上違法と捉えることによっ. て自らの私法上の権利を制限される当事者が失う利益と公法的規制の規律の目的となる利益の衡量のもとで、当事者. の失う利益が大きすぎではならないことが求められる。これが満たされるかどうかは、個々の具体的な事案を検証す. ることによってのみ判明する。ただし、この点については、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請. 求権の第三の要件として、敷地所有者が通行の受忍によって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段 仰. 州側. 1 7-. の事情のないことが示されている。すなわち、この要件が満たされて妨害排除請求権が成立する場合には、﹁均衡性の 原則﹂によって公法的規制の不遵守を私法上違法と捉えることが否定されない。 法政策的根拠の存在. 私法上の評価を行うことによる私法上の制度の機能. いると解しえよう。. 不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠として捉えられよう。そこで、この第六の条件は満たされて. う点が、﹁道路の現実開設﹂要件を不要とする見解において指摘されていた。これは、民法的保護と行政法的保護の. 側. この点については、道路の現実開設を常に必要とすると、事実上建築基準法違反の状態を容認することになるとい. という内容の法政策的根拠が存在していることである。. まず、実際上の機能的根拠を基礎におく第六の条件が、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、. ( f ) ( g ).
(18) 実際上の機能的根拠を基礎におく第七の条件が、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することによって、議論. されている問題について、従来私法上の評価を行うことによって果たされてきた私法上の制度の機能が失われないこ とである。. この問題においては、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求権の要件の一つである、﹁道路の現. 実開設﹂要件において行われる私法上の評価が検討の対象となる。しかし、﹁道路の現実開設﹂要件において行われ. 叩叫. る評価は、公法的規制における評価と私法上の制度の評価の異質性から導き出された制約であり、積極的な私法上の 機能を果たしているとは捉えられない。. さらに、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求権には、 その権利者の当該位置指定道路の通行. 利益を確保する機能が備わっている。この機能が、﹁道路の現実開設﹂要件を不要とし、公法的規制の遵守を私法上 適法と評価することによって失われることは考えられない。. 既存の私法上の制度に基づく差止請求権. 以上の検討に基づけば、この第七の条件は満たされているといえよう。 hH. 第八の条件として、既存の私法上の制度の要件を満たして私人間に差止請求権が発生していることが挙げられる。. ここで問題となる既存の私法上の制度は、位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求権(以下﹁当該 妨害排除請求権﹂)である。. 当該妨害排除請求権の認められる要件としては判例上次の三つの要件が示されている。第一の要件が、位置指定道. 路が現実に開設されていることである。第二の要件は、この道路を通行する者に日常不可欠の利益が認められること. -18-. 第5 2巻第 2号 近畿大学法学.
(19) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). である。そして、第三の要件が、敷地所有者が通行の受忍によって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなど. 仰. の特段の事情がないことである。ただし、現在、当該妨害排除請求権の要件として、﹁現実の道路開設﹂要件を必要. とするか、不要とするかという問題が議論されている。そのため、この第八の条件における意味での既存の私法上の. 制度としての当該妨害排除請求権に関して、﹁道路の現実開設﹂要件が必要となるか否かについての検討が必要とな. 本稿において示した公法的規制の実現主体として私人を認めるための理論構成のもとで、既存の私法上の制度を満. たして私人に差止請求権が発生していることを必要するのは、当該私人を公法的規制の実現主体として認めることを. 基礎づけるためである。すなわち、当該私人が公法的規制の実現主体となるための前提として、既存の私法上の制度. が問題となる。ここで求められるのは、当該私人自身の利益の実現に関して、当該私人に私法上の権利が付与される. か否かという点であり、 その際に当該公法的規制の実現に関する考慮がなされていないことが前提となる。. ただし、既存の私法上の制度のもとにおいて公法的規制が考慮される場合はすべて、この第八の条件に基づいて公 帆 抑. 法的規制の実現主体として私人を認めることができない、という結論となるわけではない。例えば、従来の議論にお. いて、健康被害を示す指標である闘値と行政上の基準を関連付ける見解が主張されている。この見解は、当該私人自. 身の健康被害の有無を判断する際の公法的規制の考慮が問題とされている。ここでは、公法的規制の規律の目的とな. る公益の実現に関する考慮がなされているわけではない。すなわち、当該私人自身の利益に対する侵害の有無を判断. する際の公法的規制の考慮と、当該公法的規制の実現に関する考慮は、質的に異なる考慮であると考えられる。そし. て、この第八の条件においてなされていないことが前提となるのは、後者の意味における公法的規制の考慮である。. 1 9-. る.
(20) 以上の点を踏まえて、﹁道路の現実開設﹂要件に関する現在の議論を検討すると、まず、この要件を必要とする立. 場から示される根拠は、道路が現実に開設されていない部分に関しては、生活の本拠と外部と交通するという利益が. 日常生活上不可欠なものとなりえない、とするものである。すなわち、当該私人自身の通行利益を主張しうるのは道. 路が現実に開設されている部分である、という点が根拠とされている。他方、この﹁道路の現実開設﹂要件を不要と. 仰. する見解において、道路の現実開設という事実をまったく考慮しないことが主張されているわけではなく、この事実. を﹁日常不可欠な利益﹂という要件のもとでの総合的判断のなかで考慮することが主張されている。すなわち、﹁道. 路の現実開設﹂要件を不要とする立場においても、現実の道路開設という事実が当該私人自身の享受しうる通行利益 川州側. 解においては、建築基準法違反状態の私法上容認することへの疑問、及び建築法規違反行為の是正という根拠が掲げ. の範囲の確定にとって、大きな役割を果たすことが示されている。さらに、﹁道路の現実開設﹂要件を不要とする見. られていることを鑑みれば、﹁道路の現実開設﹂要件を不要とする立場における公法的規制の存在の考慮は、当該私. 2 0-. この点については、道路の現実開設を不要とする立場から、建築法規違反行為の是正のための行政訴訟の方法が機. 第九の条件で問題となるのは、当該公法的規制の実現に関する公法的手段に不全が生じているかどうかである。. ) 1 位置指定道路に関する公法的規制の不全 (. 妨害排除請求権の三つの要件が満たされる場合に、この問題における第八の条件の充足が認められると解される。. 妨害排除請求権の要件として、﹁道路の現実開設﹂要件は必要である、といわざるをえない。そこで、前述した当該. 以上の現在の議論に関する検討を踏まえれば、この第八の条件における意味での既存の私法上の制度としての当該. 人自身の通行利益を判断するためではなく、むしろ公法的規制の不遵守の是正が目的となっているといえよう。. 一. 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(21) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 州側. 能していないことが示されていた。他方、道路の現実開設を必要とする立場からは、この必要性を否定する主張は示. されていない。さらに、行政法学における議論において、建築基準法の実効性の確保に関して、その執行不全の存在 側. が指摘されている。 以上を踏まえれば、第九の条件は満たされているということができよう。 民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態. ω の検討に基づけば、位置指定道路の幅員と私道通行権の関係において、公法的規制の不遵守を私法上違法と. 前述. 捉えることは認められるという結論が導かれる。そこで、この議論において問題となる位置指定道路における人格権. 的権利に基づく妨害排除請求権(以下﹁当該妨害排除請求権﹂)の性質を考慮して、その公法的規制の不遵守を私法. において行った検討. 上違法と評価することがどのような形態によって認められるのか、という点を示すことが必要となる。. 帆 仰. ここで、私人を公法的規制の実現主体として認めることを基礎守つける理論構成、及び前述. ω. において検討したように、. が重要となる。本稿における構成のもとでは、私人を公法的規制の実現主体として認める前提として、既存の私法上 の制度のもとで私法上の権利が当該私人に付与されている必要がある。さらに、前述. ω. ここで問題となるのは伝統的意味での私法上の制度であり、当該私人自身の利益を実現するにあたって、公法的規制. の実現に関する考慮がなされていないことも前提となる。 そのため、本稿の構成のもとでは、当該妨害排除請求権の. 要件に関する現在の議論において主張されている﹁道路の現実開設﹂要件を不要とする見解をとることはできない。. それでは、この問題において、公法的規制の不遵守はどのような形で私法上違法と捉えられるのか。本稿において. 示した構成に基づけば、この問題の構成は、三つの要件を満たして私人に当該妨害排除請求権が認められるときに、. - 2 1. ( 3 ).
(22) ω において示した条件を満たしたので、当該私人の相手方の建基法四二条及び建基法四四条の不遵守が. さらに、前述. 私法上違法と捉えられる、という構成となる。すなわち、集合的・公共的利益の実現を考慮にいれることを通じて、. 既に発生した私法上の権利の内容に別個の内容が加わる、と捉えることができよう。さらに、当該妨害排除請求権の. 要件として﹁道路の現実開設﹂要件が存在していることから、この変更は、既存の私法上の権利の内容を、公法的規 制によって定められた内容にまで拡張すると捉えられることになろう。. 以上の検討から、 この問題においては、私法上発生した妨害排除請求権の効果に、集合的・公共的利益との調整の. もとで建基法四二条及び建基法四四条によって定められる内容にまで妨害排除の効果が拡張する、という形態で公法 的規制の不遵守が私法上違法と捉えられる。. ︿ 注 ﹀. *本稿は、二O O二年五月に一橋大学に提出した博士学位論文(﹁環境法における私法の役割││私人が公法的規制を私法的手段を 通じて実現する可能性﹂)の後半部分を一部要約したうえで補筆・修正を加えたものである。なお同論文の前半部分については、 これを一部要約したうえで補筆・修正を加えた宮津俊昭﹁環境法における私法の役割(前篇)││ドイツ環境法における民法と. ω i ω. 行政法の調和と相互補完 ・(完)﹂一橋法学二巻一号一二九頁、同二号二五五頁、同三号二二一頁(二O O一二年)を参照。 側本稿においてはこの考察が対象となる。本稿第一章第二節に示した民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の構造の うち、個別具体的な問題における民法的保護と行政法的保護の一致の条件の充足についての考察、及び民法的保護と行政法的保 護の一致の実現形態についての考察は改めて行うこととしていた(本稿第二章第一節参照)。本章ではこの点に関する考察も加 える。 川脚本稿第一章第二節三.参照。. 仰なお、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論が日本において民法学の対象となりうるのか、という民法上の位置付け. - 22-. 第5 2巻第 2号 近畿大学法学.
(23) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). に関する点は、具体的な問題において民法的保護と行政法的保護の一致を議論する際に考慮される問題ではないので、以下では. ω .. 川別注側)参照。. 取り上げない。この点については、宮津俊昭﹁環境法における私法の役割(前陣痛)││ドイツ環境法における民法と行政法の 参照。. ω ・(完)﹂一橋法学二巻三号一八一頁(二OO三年)(前稿第五章第三節三. 調和と相互補完 側本稿第一章第二節三.及び第二章第四節一. ω .. 問ただし、この法政策的根拠が必要となるのは、公法と私法の峻別を基礎とした従来の議論状況、あるいはそれに代わる公法と. 私法の相互補完の議論がいまだに発展途上にある現在の議論状況を基礎とした場合である(公法と私法の関係に関する現在の. 日本における議論状況については、宮津俊昭﹁環境法における私法の役割(前篇)││ドイツ環境法における民法と行政法の. ω﹂一橋法学二巻一号二二六頁以下(二O O三年)(前稿第一章第一節三.参照)。もし、両法分野において、. 調和と相互補完. 他方との同質性のある場合が意識され、その意識を基礎とした相互補完の議論が成熟した段階においては、この条件をあえて掲. げる必要はなくなる。なぜなら、このような議論は、まさに民法的保護と行政法的保護の不一致の解消を目指す方向を向いてい. るものであり、この議論の存在自体が包括的な法政策的根拠の存在を示すものであると考えられるからである。. 側この点が日本法における民法的保護と行政法的保護の一致を議論するにあたって考慮されなければならないことについての. 理論的基礎については、本稿第三章第四節注側参照。なお、この点についての理論的基礎に関しては、民法領域と行政法領域を. 含めた各法領域の相互の関係を明らかにするための共通の基盤としての憲法と民法の関係についての理論的枠組の考察(﹁(仮. 題)民法と憲法の関係および民法と行政法の関係についての一考察││現代立憲主義国家において国家法としての民法を制定 例及び例参照。. する意味﹂)のなかで、より明確に示すための検討を行う予定である。. . ω ω. 間脚本稿第二章第四節一. 側ただし、第一の点については前掲注側参照。また、第三の点については前掲注側参照。 脚本稿第三章第四節参照。なお、この条件は前述の第二の点から導かれる条件である。. 側本稿第三章第四節参照。問題となる私法上の制度と同一の私益聞の利害調整が、当該公法的規制の規律の対象の一部となっ. 及び同節四参照。民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則のも. 及び同節四.参照。なお、この条件は前述の第四の点から導かれる条件である。. 及び同節四.参照。なお、この条件は前述の第四の点から導かれる条件である。. ていれば、それでこの第二の条件が満たされたこととなる(本稿第三章第四節参照)。なお、この条件は前述の第二の点から導 かれる条件である。 側本稿第四章第三節三 川柳本稿第四章第三節三 ω . 側本稿第四章第三節三 ω . ω .. - 23-.
(24) ω例参照。. とでの満たされることが求められるそれぞれの部分原則の内容は、本稿第四章第三節三. 四の点から導かれる条件である。. なお、この条件は前述の第. 側この条件は前述の第一の点から導かれる条件である。なお、前掲注側で示したように、将来的にはこの条件が必要とされなく なることが考えられる。 仰なお、前掲注側参照。なおこの条件は前述の第三の点から導かれる条件である。 馴脚本稿第一章第二節五.参照。. ω .. 川柳建基法六五条の建物と民法二三四条の関係についての現在の議論については、本稿第二章第三節一 参照。 側建基法六五条が旧市街地建築物法一三条の立法趣旨を引き継いでいることについては、好美清光﹁建築基準法と相隣関係﹂. . ω ω. 成田頼明編﹃行政法の争点(初版)﹄二八七頁(一九八O年)、同﹁判批﹂ジュリ九五七号七二頁(一九九O年)参照。また、 建基法六五条の目的に関しては、本稿第二章第三節一 的及び例における現在の議論の検討も参照。 側荒秀他編著﹃改訂建築基準法﹄四九五頁︹米窪克治執筆︺(第一法規、一九九O年 ) 。 側荒秀他・前掲注側四九五頁︹米窪執筆︺。. . ω ω. 柳本稿第二章第三節一 的及び肋参照。ただし、建基法六五条の立法趣旨に﹁土地の合理的・効率的利用﹂は含まれてい なかったとされる(好美・前掲注細川﹁建築基準法﹂二八七頁)。. . ω ω. 側これに対して、非特則説の側からは、﹁土地の合理的・効率的利用﹂がオープンスペースの確保の要請等といった趣旨に捉え られている(本稿第二章第三節一 仲及び例参照)。しかし、これは、建基法六五条において考慮されていないが、本来は 考慮されるべきである﹁土地の合理的・効率的利用﹂として示されている。そのため、建基法六五条と民法二三四条との同質 性の検討に際しては、この内容を検討の対象とすることができない。. ω .. ω .. 側﹁生活利益秩序﹂に関しては、広中俊雄﹃民法綱要総論上﹄一八頁以下(創文社、一九八九年)、及び本稿第四章第二節 二 参照。また、民法学の対象領域に含まれる集合的・公共的利益の性質の問題に関して、本稿において広中教授の理解を 基礎として以後の考察を進めていることについて、本稿第四章第三節三 注側参照。 仰なお、前掲注側及び前掲注側参照。. 側財貨帰属秩序については、広中・前掲注側四頁以下参照。 酬明民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則のもとでの満たされることが求められるそれぞれ の部分原則の内容は本稿第四章第三節三 例参照。. ω .. - 24-. 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
(25) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 柳本稿第四章第三節三 . ω ω 側本稿第四章第三節三 . ω ω . ω ω 柳本稿第二章第三節一. 及び紛参照。 及び紛参照。 肘参照。. .ω. 約三そこで、この建基法六五条の. 側例えば、本稿第二章第三節一 において検討した秋山靖浩助教授の見解において示される根拠のなかで、当事者における予 測可能性及び法的安定性を高めること、及び都市計画で指定された内容を実効的に実現に移す必要性が、それぞれ民法的保護と. . ω ω. 行政法的保護の一致を要請する法政策的根拠であると評価した(本稿第二章第三節一 例参照。. 建物と民法二三四条の関係についても、同様の法政策的根拠が示されうるかどうか、という点についての検討が課題となろう。. . ω ω. 柳本稿第二章第三節一. 川柳ただし前掲注側参照。 仰なお、現在の議論において、この間題について立法的な解決の必要性を示す見解が多数存在している(本稿第二章第三節 糾注側参照))。 一. において示した、民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態に関しては、非特則説において、建基法六 川柳なお、本節一 ω . 五条の存在を民法二三六条における慣習の認定の際に考慮に入れることによって柔軟な解決をはかることが主張されている ω . ω. (石田喜久夫 H田中克志﹁判批﹂判タ二二 O号一 O O頁(一九七四年)、東孝行﹁相隣関係と建築基準法﹂民商九三巻臨増 一 四四頁(一九八六年)、甲斐道太郎﹁判批﹂判評三四二号二六頁(一九八七年)、原田純孝﹁判批﹂判タ七二二号五七頁(一九. 九O年))。ただし、ここでも建基法六五条が、民法二三四条の早い者勝ちの防止、及び生活環境利益の確保という機能を考慮に. . ω ω. 及び同. ω的及. 入れていないことが問題となる。そこで、民法二三六条における慣習の認定において建基法六五条を考慮に入れる場合には、こ の点を踏まえて慎重に検討がなされる必要があろう(前掲石田 H田中・一 OO頁、前掲原田・五七頁等参照)。 制本稿第一章第二節三.参照。. 。. 脚本稿第一章第二節に示した民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造、並びに本稿第二章第四節一. .ω. び例参照。 柳本章第二節一. . ω ω. 仲及び助参照。 脚本稿第二章第四節一 脚本稿第一章第二節に示した民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造参照。. 仰なお、本稿第四章第四節における検討から導き出された公法的規制を実現する主体として私人を認める理論構成のもとでは、. - 2 5.
(26) 問題となる公法的規制が私法上の制度と同質と捉えられること、及び当該公法的規制が民法一条一項の﹁公共の福祉﹂概念を. ω .. 根拠として私法的制限と捉えられることが条件として示される(本稿第四章第四節五.参照)。しかし前述したように、ここで において示した公法的規制の遵守を私法上違法と評価する議論における理論的根拠から導かれる五つの条 は本章第二節一. ω .. 参照。. ω. 件が満たされる必要がある。そして、これらの条件が満たされる場合には、問題となる公法的規制が私法上の制度と同質と捉え ることができ、かっ、当該公法的規制が民法一条一項の﹁公共の福祉﹂概念を根拠として私法的制限と捉えることができる(本 参照)。そのため、これらの点に関して改めて別の条件を示す必要はない。また、同様に、公法的規制を実現す 章第二節一 る主体として私人を認める理論構成のもとでは公法的規制の規律の目的となる集合的・公共的利益と既存の私法上の制度の要 件を満たして保護される私人の利益が同じ性質を備えていることが求められるが、これは前述の第二の条件と同一の内容を示 しているものなので、改めて別の条件として示す必要はないと考えられる。 注側参照。 川柳本稿第四章第四節五.参照。ただし、本稿第四章第四節四 川脚本稿第四章第四節五.参照。 脚本稿第一章第二節三.参照。 参照。 脚本章第二節一 脚本章第二節一 ω . ω .. ω .. ω .. 制建築基準法上の位置指定道路の幅員と私道通行権の関係についての現在の議論については、本稿第二章第三節二 参照。 仰荒秀他・前掲注側三六一頁︹関哲夫執筆︺。 側荒秀他・前掲注側三六一頁︹関執筆︺。 側 荒 秀 他 ・ 前 掲 注 側 四O六頁︹関執筆︺。 側 荒 秀 他 ・ 前 掲 注 柳 田O六頁︹関執筆︺。 側前述糾参照。 側前掲注側参照。 側前述糾参照。 側民法上の集合的・公共的利益と私人の利益の調整の基準としての比例原則のもとでの満たされることが求められるそれぞれ 例参照。 の部分原則の内容は本稿第四章第三節三 仰位置指定道路に関する人格権的権利に基づく妨害排除請求権の要件については、 本稿第二章第二節一. 参照。. ω. -2 6. 2号 第5 2巻 第 近畿大学法学.
(27) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 仰なお、公法的規制の不遵守を私法上違法と捉える場合に、既存の私法上の制度の要件を満たしていることが求められることに. ω. . ω ω . ω ω . ω ω. ω .. ω .. ついて、後述 参照。 脚本稿第二章第三節二 的参照。 肋参照。 側本稿第二章第三節二 参照。 脚本稿第二章第二節一 参照。 脚本稿第二章第三節二 糾参照。この理論構成のも 側公法的規制の実現主体として私人を認めるための理論構成については、本稿第四章第四節四 とで既存の私法上の制度を満たして私人に差止請求権が発生していることが必要とされることについては、本稿第四章第四節. . ω ω. . ω ω. 的参照。 例参照。. ω .. 四 参照。 側津井裕﹃公害差止の法理﹄二九頁、同一 O 一頁以下(日本評論社、一九七六年)。津井教授の見解に関しては、宮津・前掲注 制的i )) 参照。 側二三O頁l 二一三頁(前稿第一章第一節四 的参照。 脚本稿第二章第三節二 側大塚直﹁判批﹂ジュリ一 O四六号七七頁(一九九四年)、池田恒男﹁判批﹂判タ九八三号七O頁(一九九八年)、多田利隆﹁判 批﹂リマ lクス一八号二一頁(一九九九年)。 m w 例えば多国教授は、人格権の観点から客観的に相当と判断される利益享受に必要な範囲の限界を画する際に、道路の現実開設 という事実がその限界を示す有力な手がかりとなるとしている(多田・前掲注側二一頁)。. . ω ω 川脚本稿第二章第三節二 川脚本稿第二章第三節二 . ω ω . ω ω. 助参照。 川脚本稿第二章第三節二 側道路の現実開設を必要とする立場からも、行政的手段の機能不全が指摘されている(岡本詔治﹁建築基準法上の私道と通行. の自由権(私権)﹂島法三五巻四号二四頁以下(一九九二年))。 側建築基準法における執行不全については、宮崎良夫﹁行政法の実効性の確保﹂雄川追悼﹃行政法の諸問題上﹄二二八頁以. 下(有斐閣、一九九O年三大橋洋一﹁建築規制の実効性確保﹂同﹃対話型行政法学の創造﹄一九六頁以下(弘文堂、一九九九 年)参照。一般的な行政法の執行不全の問題については、阿部泰隆﹃行政の法システム伺︹新版︺﹄三九九頁以下(有斐閣、一. 九九七年)、大橋洋一﹃行政法﹄三九七頁以下(有斐閣、二O O一年)参照。また、行政の執行不全に関する問題は、第六O回. 2 7-.
(28) ω .. 日本公法学会において﹁行政の実効性確保﹂という統一テ l マのもとで議論されている(公法五八号一三七頁以下(一九九六 年)参照)。この他、行政執行過程の研究として、北村喜宣﹃行政執行過程と自治体﹄(日本評論社、一九九七年)がある。 例参照。 側私人を公法的規制の実現主体として認めることを基礎付ける理論構成に関しては、本稿第四章第四節四. ω .. 側本稿第四章第四節四 例参照。 制吉田克己教授は、人格的利益の次元で法律構成を考えることは認めたうえで、人格権的利益による差止という構成は一種の仮. 託であり、その実質は生活利益秩序違反による差止であるとする(吉田克己﹁判批﹂民商一二O巻六号一七四頁以下(一九九 九年))。そのうえで、﹁道路の現実開設﹂要件の事案に応じた緩和を主張している(前掲吉田・一八O頁)。ここで、吉田教授 は、﹁現実の道路開設要件に関していえば、人格権的構成を前提にしってその不要論を説くことは不可能ではない。:::。し かし、﹃私人による法の実現﹄をより直裁に志向するとすれば、やはり問題が外郭秩序に属することを正面から認めることが近. ω ). 道である﹂と述べている(前掲吉田・一八一頁以下注 。このように問題が外郭秩序に属することを正面から認めることに異 論はない。しかし、道路の現実開設という事実が当該私人の通行利益という人格的利益の範囲確定にとって重要となることは 否定できない。そこで、吉田教授の示す﹁道路の現実開設﹂要件の緩和という構成ではなく、本稿における構成のように、当. 該妨害排除請求権に関して、人格的利益の次元において﹁道路の現実開設﹂要件を必要としたうえで、さらに、生活利益秩序 の一部をなす公法的規制について、その維持・形成の実現主体として当該私人が認められると評価されうる場合には公法的規制. 結語││本稿の結論と今後の課題. 前稿及び本稿の考察の概観. 仲間空ハ且早. の不道守を私法上違法と捉えることができる、と構成する方が、﹁私人による法の実現﹂を認めるための基準をより明確に示し うるし、また、人格秩序の外郭秩序たる生活利益秩序という性質に沿う構成となるのではなかろうか。. 笹川一時即. 前稿及び本稿においては﹁環境法における私法の役割﹂という課題を掲げて考察を進めてきた。以下では、本節に. おいて、前稿及び本稿の考察内容を概観したうえで、第二節において、前稿及び本稿の課題において掲げた﹁民法と. 2 8-. 2号 第5 2巻第. 近畿大学法学.
(29) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). ω. 行政法の相互補完﹂という観点と、﹁私人の役割﹂という観点のそれぞれから、前稿及び本稿の考察に基づいた結論 を示し、さらに今後の考察が必要とされる課題を示したい。. まず、前稿においては、ドイツ環境法における公法と私法の関係についての議論に考察を加えた。 そして、ドイツ. 法における議論の考察からの示唆、及び日本法とドイツ法の違いを踏まえたうえで、 日本法において議論を行う際に. 側. 考慮しなければならない点、という意味における民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造を示した。. この議論の構造に基づいて、本稿において、日本法における具体的な問題として相隣関係と建築基準法の関係に関. する問題に分析を加えた。そして、この分析から、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論において、公法的. 規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性を基礎づける理論構成の考察と、公法的規制における評価を. 私法上の制度に基づく評価と捉える基礎となる民法理論の考察が必要となることを示し、これらの問題について、現 側. 在の日本法の議論の検討を通じて考察を加え、 それぞれについての理論構成を示した。この理論構成に基づいて、日. 本法において、公法的規制の遵守を私法上適法と捉えることを認めるための条件、及び公法的規制の不遵守を私法上. 違法と捉えることを認めるための条件をそれぞれ導き出し、更にそれぞれの条件を具体的事例にあてはめて検討を加 州側. えた。. 本稿の結論. ﹁環境法における私法の役割﹂と﹁民法と行政法の相互補完﹂. 第二節本稿の結論と今後の課題. ES. ‘ , ,、. a a. li ‘ 、4, , ,. 2 9-.
(30) 前稿及び本稿(以下両者を合わせて﹁本稿﹂と記述)においては、﹁民法と行政法の相互補完﹂という観点から具. 体的に考察する問題として次の二つの問題を掲げた。第一が、具体的な議論の対象となる問題状況がどのように整理. されるのかという問題、 そして第二が整理された問題状況において具体的にいかなる点が考慮されるべきなのかとい. う問題である。まず前者の問題に対する本稿の結論として、私法上の制度に基づいて権利が付与される当事者と公法. 的規制によって義務づけられる当事者の関係、及び公法的規制の遵守状況と私法上の違法性の評価の関係が、それぞ 側. れ問題整理の視点となることを示しうる。他方、後者の問題については、前述した視点から整理された問題に関する. 議論の構造、並びに公法的規制の遵守を私法上適法と捉えるための条件及び公法的規制の不遵守を私法上違法と捉え 仰. るための条件が、それぞれ結論として掲げられよう。. ただし、本稿の結論は、前述した視点に基づいて整理された問題における公法的規制と私法上の制度の関係につい. ての全ての議論に及ぶわけではない。本稿の結論の射程については次の点に注意する必要がある。それは、公法的規. 制が私法上の制度に与える影響を考える際に、次の二つの問題を区別する必要のあることが本稿の考察から示される. 点である。その第一の問題は、当該私人自身の利益が侵害されているか否かを判定する際に公法的規制を考慮に入れ. ることができるのか、さらに、考慮に入れる場合にはどのような形態で考慮に入れるのか、という問題である。第二. の問題は、当該私人自身の利益と集合的・公共的利益との関係を調整する際に公法的規制が私法上どのように考慮さ. れるのか、という問題である。このように二つの問題を区別した場合、本稿の考察は、後者の議論に属するものとし. て評価されることになる。そのため本稿の結論の射程が及ぶ議論は、環境法領域において前述した第二の問題を対象 としている議論である。. 3 0-. 第5 2巻第 2号. 近畿大学法学.
(31) 環境法における私法の役割(後篇) ( 3 )・(完). 今後の課題. ω に示した通り、本稿の結論の射程は、当該私人自身の利益と集合的・公共的利益との関係の調整の場面に限. 前述. られる。すなわち、当該私人自身の利益が侵害されているか否かを判定する際の公法的規制の考慮に関する問題につ. いては、本稿の結論の射程が及ばない。この問題については従来から議論がなされていた。しかし、そこでは本稿に. おける考察のような形で公法的規制の性質に言及したうえで行われている議論はない。そこで、公法的規制による評. 価と私法上の制度における評価の関係について本稿において行った考察を踏まえながら、この問題に関する議論の構 造をより具体的に考察していくことが今後の課題の一つとして示される。 側側. また、本稿においては、公法的規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性を基礎づける理論構成の考. 察と、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉える基礎となる民法理論の考察を通じて、民法領域. と行政法領域のそれぞれの法領域においてそれぞれ他方の法領域との同質性が認められる部分のあることを示し、こ 川柳. れによって本稿の結論を基礎づけた。このように、本稿の結論は、環境法領域の独自性を対象とした考察を基礎とし. て導き出したものではなく、民法及び行政法の基礎理論を対象とした考察を基礎として導き出したものである。この. ことから、環境法領域以外の法領域における﹁民法と行政法の相互補完﹂に対しても、本稿の考察を踏まえた研究を. 行う可能性が認められよう。このような研究の対象としうる領域に関して注目されるのは、現代民法学の取り組むべ. き課題の一つとして外郭秩序における法のあり方を示す吉田克己教授の指摘である。ここにいう外郭秩序としては、 脚. 本稿の考察と関わる﹁生活利益秩序﹂のほかに﹁競争秩序﹂が掲げられている。この吉田教授の指摘から、本稿の結. 論と関わる生活利益秩序における公法的規制と私法上の制度の関係についての議論は、外郭秩序における議論という. 3 1-. ( 2 ).
(32) 意味において、競争秩序における私法上の制度と公法的規制との関係に関する議論と共通性があることが示さょう。 m w. そこで、競争秩序における公法的規制と私法上の制度との関係について、現在の議論の状況を十分に検討したうえで、. 本稿の結論をふまえた研究を行うことも今後の課題の一つとしたい。この研究に際しては、民法と行政法の関係につ. いての更なる理論的考察のみならず、この両法領域の関係、さらには他の法領域との関係をも基礎づける共通の基盤. となる理論的枠組の構築が求められると考えられる。そして、 そのような理論的枠組の構築に向けては、民法と憲法 の関係についての理論的考察も必要となると考えられる。. 3 2-. 二.﹁環境法における私法の役割﹂と﹁私人の役割﹂ ム 4EE. 、‘,, 本稿の結論 (' z. 仰. 本稿においては、現在の環境法の議論において、環境保全における﹁私人の役割﹂を考察する必要性が指摘されて. 川柳. いることから、﹁私人の役割﹂を考察の観点の一つとした。この観点についての本稿における結論として、私人を公. において示した. 法的規制の実現主体として認めることを基礎づける理論構成と、本稿の考察全体を踏まえて示した、公法的規制の不 細川. ω .. 遵守を私法上違法と捉えるための条件を、それぞれ挙げることができる。この結論は、本節一 ﹁民法と行政法の相互補完﹂という観点からの本稿の結論と同じ射程を持つ。 今後の課題. なる課題として、次のような課題が掲げられる。. 前述. ωに示したような本稿の考察に基づいた結論を踏まえて、﹁私人の役割﹂という観点のもとで更に考察の必要と. ( 2 ). 2号 第5 2巻第 近畿大学法学.
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