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ウレエートを利用した強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒の創製と応用

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Academic year: 2021

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ウレエートを利用した強塩基性キラルブレンステッ

ド塩基触媒の創製と応用

著者

石川 奨

学位授与機関

Tohoku University

(2)

1

博 士 論 文

ウレエートを利用した

強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒の

創製と応用

石川 奨

令和二年

(3)

2

博士論文 要約

第 1 章 序論 本章ではまず、光学活性化合物の効率的な合成法の開発が医農薬品分野の発展など社会 的に与える重要性を述べた。またその触媒的不斉合成法の開発の発展について、特にキラ ルブレンステッド塩基触媒を用いた反応開発が有力な方法論の一つであることを例示した。 シンコナアルカロイドを触媒として用いた報告が成されて以降、現在までにキラル第 3 級 アミン触媒や、有機強塩基性を有する官能基の導入あるいは不斉修飾による触媒が非常に 有用な触媒分子として広く用いられてきた。しかしながらそれら従来の触媒の塩基性は総 じて低く、そのため反応に適用可能なプロ求核剤が、酸性度の高い化合物(pKa < 18)に制限 されることが課題となっていた。 この課題に対し当研究室では、適用可能なプロ求核剤の拡充による多様な反応開発を目 指して、従来の触媒に比べ格段に高い塩基性を有するキラルブレンステッド塩基触媒の開 発を精力的に進めてきた。有機超強塩基性を示す電気的に中性な官能基の不斉修飾による 触媒開発や、アルコキシドの高い塩基性に着目したアニオン性の不斉触媒の開発によって、 従来実現が困難だった酸性度の低いプロ求核剤を用いた様々な不斉反応を実際に達成して きたことを示した。しかしながら、これら有用な触媒にも未だ合成や条件検討における触 媒の置換基多様性の問題、実現可能な不斉触媒反応の制限という問題があることを述べた。 従って、今後多様な不斉触媒反応を開発するためには、強塩基性、高い基質認識能に加え、 合成や反応に応じた構造修最適化の容易さを指向した新たな分子設計に基づく触媒の開発 を必要不可欠であることを主張した。 第 2 章 ウレエートを利用した強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒の設計開発と 機能評価 本章では、強塩基性、高い基質認識能、合成や構造修飾の容易さなどの要件を満たす新 たな触媒のモチーフとして、ウレエートを利用したキラルブレンステッド塩基触媒の設計 開発を行なった。触媒設計の要点として、2 つの窒素上にアルキル基を有するウレエートの 強塩基性、共役酸のウレアの二重水素結合を介した高い基質認識能、ウレアの合成容易さ について述べた。そのような考えに基づき、側鎖に配位性官能基を導入した光学活性ウレ エートを設計し、実際に様々な配位性官能基を有する触媒の合成および触媒の機能評価を 行なった。触媒の機能評価を行なうための反応として、酸性度が低い α-チオアセトアミド (pKa = ca. 24)をプロ求核剤とする不斉付加反応を検討した。検討の結果、目的生成物が高収 率かつ高立体選択性で得られ、期待通り光学活性ウレエートが強塩基性キラルブレンステ ッド塩基触媒として有効に機能することを明らかにした。種々の検討から、生成物の高立 体選択性を獲得する上で、触媒の側鎖にシッフ塩基部位とキラルなアミド部位を導入する

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3 こと、また触媒のカウンターカチオンとしてナトリウムを用いることが必須であることを 明らかにした。本触媒反応系の基質適用範囲は広く、様々な置換基を有する α-チオアセト アミドに加えて、多様な求電子剤の適用が可能であった。 当研究室で既に開発された強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒を本反応に適用した ところ、生成物の高立体選択性は獲得できなかった。この結果から、多様な反応開発を目 指す上で、新たな分子設計に基づく触媒の開発が極めて重要であることを主張した。 第 3 章 触媒的不斉付加反応を利用した非連続不斉中心の構築 本章では、開発した不斉触媒の強塩基性を活用して、酸性度の低いプロ求核剤を用いた 触媒的不斉付加による非連続的な不斉中心の制御に取り組んだ。具体的には、酸性度の低 いα-チオアセトアミドと α 位にアリール基や種々のハロゲンを有する求電子剤との不斉付 加反応を検討した。その結果、高収率かつ高ジアステレオ選択性、高エナンチオ選択性で 対応する非連続的な 2 つの不斉中心を有する生成物が得られることを見いだした。この結 果から、酸性度の低いプロ求核剤を用いた不斉付加反応による非連続的な 2 つの不斉中心 の制御を初めて実現したことを示した。 第 4 章 1-アルケニルホスフィンオキシドの不斉ヒドロホスフィニル化反応の開発 本章では、開発した不斉触媒の強塩基性を活用して、不斉触媒反応における求電子剤の 拡充に取り組んだ。我々は強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒の開発により、主に適 用可能なプロ求核剤の拡充に着目した不斉反応の開発を達成してきた。一方で用いる求電 子剤は限定的であり、多様な光学活性化合物の合成という観点から、求電子剤の拡充も求 められると筆者は考えた。そこで本章では具体的に、求電子性が低く 1,4-アクセプターとし て適用例がほとんど無い 1-アルケニルホスフィンオキシドを用いた不斉ヒドロホスフィニ ル化を検討した。その結果、ジアリールホスフィンオキシドを用いた 1-アルケニル(ジアリ ール)ホスフィンオキシドへの不斉ヒドロホスフィニル化が効率的に進行することを見いだ し、目的生成物が高収率かつ高立体選択性で得られた。従って、本触媒を用いることで不 斉触媒反応における求電子剤の拡充も達成し得ることを示した。この反応により得られる 生成物は、還元することで不斉二座配位子として有用なキラル 1,2-ジホスフィノアルカンへ と変換することが可能であり、従来法では困難な多様な置換基を有するキラル 1,2-ジホスフ ィノアルカンの合成に成功した。 第 5 章 結論 本博士研究では、キラルブレンステッド塩基触媒を用いた不斉触媒反応系における適用 可能なプロ求核剤(pKa >20)などの拡充、より多様な不斉触媒反応の開発を目的として、新た な強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒の設計開発に取り組んだ。特に、強塩基性、高

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4 い基質認識能に加え、合成や構造修飾の容易さを指向した新たな分子設計に基づく触媒の 開発を計画した。それらの要件を満たす新たな触媒のモチーフとして、著者はウレアの脱 プロトン化により生じるウレエートに着目し、ウレエートを利用した強塩基性キラルブレ ンステッド塩基触媒の設計開発を行なった。その結果、酸性度が低い α-チオアセトアミド (pKa = ca. 24)をプロ求核剤とする不斉付加反応において、適切な構造を有する光学活性ウレ エートが強塩基性キラルブレンステッド塩基触媒として有効に機能することを明らかにし た。さらに開発した触媒の強塩基性を活用して、酸性度の低いプロ求核剤を用いた触媒的 不斉付加反応による非連続的な不斉中心の制御や、適用可能な求電子剤の拡充にも成功し た。従って本博士研究を通し、キラルブレンステッド塩基触媒を用いた不斉触媒反応系に おける適用可能な基質の拡充、より多様な不斉触媒反応の開発を達成し、新たな分子設計 に基づき開発した本触媒の有用性を示すことができた。本博士研究で取り組んだ触媒開発 により得られた知見は、次世代型の新たな設計に基づく高活性触媒の開発、そして多様な 不斉触媒反応の開発に繋がるものと考える。

参照

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