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化学形別安定同位体セレンの生体内動態の解析

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(1)

化学形別安定同位体セレンの生体内動態の解析

著者

小山 洋

(2)

化学形別安定同位体セレンの生体内動態の解析

(07557036) ■ 平成7年度∼平成9年度科学研究費補助金(基盤研究(A)(2) )研究成果報告 平成10年3月 研究代表者 小山 洋 東北大学医学部助教授

(3)

はしがき 研究組織 研究代表者:小山 洋 I 東北大学医学部助教授 セレン動感モデル作成 競計学向解析 研究分担者: 佐藤 津 ∫ 東北大学医学部教授 セレン動態モデルの検討 セレン栄養示標の検討 研究分担者: 渡辺 知保 東北大学医学部助手 現:東京大学医学部人類生態学 助教授 ICP質量分析装置によるセレン測定 研究経費(千円) 平成7年度    7,000千円 平成8年度    5,800千円 平成9年度    5,200千円 計     18,000千円 キーワード 00010133231 セレン、セレン蛋白、グルタチオンベルオキシダーゼ、セレノプロテイン・P、アフイニ テイクロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、 ICP-質量分析、安定同位体

(4)

-1-研究発表

(1)学会誌等

Koyama. H・, C・ Watanabe, H. Satoh, H. Hosokai andS. Tamura (1995).

Consistent relationship between-selenium and apolipoprotein A-ⅠⅠ

Concentrations in the sera of fasting middle・aged male abstainers and

regular consumers of alcohol. Biological Trace Element Research 50: 33・42.

小山洋,渡辺知保,笠沼勇一,江島晃子,金忠龍,中塚晴夫and佐藤洋(1995).

HPLC・ICP・MSによる食後血祭中セレンの増加画分の同定. Bi。medical

Research on Trace Elements. 6: 145・146.

Koyama. H・. Y・ Kasanuma, C:Y. Kin, A. Ejima, C. Watanabe, H. Nakatsuka and

H・ Satoh (1995). chromatographic patterns offasting and postprandial plasma selenium. Journal of Trace Elements in

Experimental Medicine. 8: 88.

小山洋,笠沼勇一,渡辺知保and佐藤洋(1996). HPLC・ICP・MSによる血清中セレ

ンの分別分析と食品群別セレン摂取量との関連.Bi叩edical Research 。。 Trace

Elements. 7: 129・130.

笠沼勇一,小山洋,渡辺知保,江島晃子and佐藤洋(1996).ICP・MSによるセレ

ンの測定と臭素による影響. Biomedical Research 。n Trace Elements. 7:

213・214.

小山洋(1996)必須微量元素による発がん抑制効果とそのメカニズム.日本臨床

54:52・58.

Koyama. H・. Y・ Kasanuma, C.・Y. Kin. A. Ejima, C. Watanabe, H. Nakatsuka and

H・ Satoh (1996). Distribution ofselenium in human plasma detected

by high performance liquid chromatography・plasma ion source mass spectrometry. Tohoku Journal of Experimental Medicine. 178: 17・25.

小山洋,笠沼勇一,渡辺知保and佐藤洋(1997)セレン補給TPN患者および安定 同位体セレン投与マウスにおける尿中セレンの分別分析-HPLCJCP・MS分析-.

(5)

(2)口頭発表 小山洋,◆渡辺知保,笠沼勇一,江島晃子,金恩寵and佐藤洋(1995) HPLC・ICP-MSによる血清中セレンの分別分析. 第65回日本衛生学会博明、平成7年3月31剛 小山洋.渡辺知保,笠溶勇一,江島晃子,金息龍,中塚晴夫and佐藤洋(1995) HPLC・ICP・MSによる食後血祭中セレンの増加画分の同定. 第6回日本微量元素学会【東京、平成7年7月17日】 小山洋,笠沼勇一,金忠龍,江島晃子,渡辺知保,中嫁晴夫and佐藤洋(1995) 高速液体クロマトグヲフイ・プラズマイオン源質量分析装置を用いた血祭中セレン -分布の分析. プラズマイオン源質量分析法の医・生物学的応用に関する仙台シンポジウム 【仙台、平成7年8月4日】 佐藤洋(1995) ICP・MSによる生体微量元素の分析. 第3回分析科学技術講演会【仙台、平成7年8月25別

Koyama, H.. Y. Kasanuma, C.・Y. Kin, A. Ejima, C. Watanabe. H. Nakatsuka and H. Satoh

(1995).

Chromatographic patterns of fasting 一and post・prandial plasma selenium.

Fourth Meeting of the lnternational Society for Trace Elements Research in Humans; 【Taormina, Italy. 27 September 19951

小山洋(1995) 医学試料(特に生体)分析-のICP-MSの応用. 第36回プラズマ分光分析研究会, 【東京、 11月10別 小山洋,笠沼勇一,中塚晴夫,渡辺知保,佐藤洋and渡辺孝男(1996) 陰膳方式による食品群別セレン摂取量の測定および簡易調査表作成の試み. 第66回日本衛生学会; l札幌、平成8年5月30別 笠沼勇一,小山洋,渡辺知保,江島晃子and佐藤洋(1996) ICP・MSによるセレンの測定と臭素による影響. 第7回日本微量元素学会【京都、平成8年6月12日】 小山洋,笠沼勇一,渡辺知保and佐藤洋(1996) HPLC・ICP・MSによる血清中セレンの分別分析と食品群別セレン摂取量との関連. 第7回日本微量元素学会(京都、平成8年6月12別

(6)

-3-小山艶渡辺知見笠沼勇一and佐藤洋(1997) セレン(Se)欠乏マウスにおける投与安定同位体77S。の分布. 第67回日本衛生学会;庫京、平成9年4月3日】 小山洋(1997) 血清脂質と微量元素:生活習慣との関連および血渠中微量元素の分別分析の試み. 第67回日本衛生学会【東京、ー平成9年4月4別 小山洋.笠沼勇一.渡辺知保and佐藤洋(1997) セレン補給TPN患者および安定同位体セレン投与マウスにおける尿中セレンの分口 分析-HPLC・ IC P -MS分析-. 第9回日本微量元素学会;平成9年7月24日;東京. ′ 小山洋・笠沼勇一・渡辺知保,佐藤洋,佐久閉まり子,大久保孝義,今井潤(1998) 血清セレン濃度とその後の脳血管疾患発症リスク. 第62回日本民族衛生学会【前席、平成9年11月7別 小山洋,渡辺知保,笠沼勇一and佐藤洋(1998) セレン補充TPN患者における血清・赤血球および血菜成分中セレンの経時的変化 第68回日本衛生学会 岡山、平成10年3月25日】

(7)

研究実績の概要一

研究目的

1)本研究では、セレンの安定同位体である77seをさまざまな化学形で実験動物およ びヒトに投与し、経時的に血祭/尿/臓器中のセレンを化学形別に追跡測定することに よって、セレンの生体内での動きを明らかにすることを目的とする。 2) セレンは、生体内においてきわめて重要な必須微量元素であるが、一方で中毒物 質としても知られている。また、摂取(あるいは投与)される化学形ごとに代謝経路 が異なり、化学形ごとの適正な摂取レベルや栄養状態の診断方法などを確立していく 必要がある。 3)従来この種の研究では、実験動物に放射性同位体である75seが用いられたが、 77se は安定同位体であるため取扱が容易であり、ヒトに対しても無侵葬で用いることが可 能であるなど利点が大きV',. 研究の背景 セレンは、生体内においてきわめて重要な必須微量元素であるが、一方で中毒物質 としても知られている。また、摂取(あるいは投与)される化学形ごとに代謝経路が 異なり、化学形ごとの適正な摂取レベルや栄養状態の診断方法などを確立していく必 要がある。従来この種の研究では、実験動物に放射性同位体である75seが用いられたが、 77seは安定同位体であるため取扱が容易であり、ヒトに対しても無侵襲で用いることが 可能であるなど利点が大きい。本研究では、セレンの安定同位体である77Seをさまざ まな化学形で実験動物およびヒトに投与し、経時的に血兼/尿/臓器中のセレンを化学 形別に追跡測定することによって、セレンの生体内での動きを明らかにすることを目 的とする。 研究の概要 本研究では、以下に示す各事項について検討・調査を行った。 Ⅰ. HPLC・ICP-MS法の開発 1) ICP・MSによる安定同位体セレンの測定 2) HPLCによる血祭セレンの分離 Ⅱ.セレン欠乏マウスの作成 Ⅲ. TPN患者における亜セレン酸補充 Ⅳ.セレン栄養状態に関する疫学調査 1) 陰膳食事調査 2) 簡易食事調査票の作成 V.尿中セレンの分別分析

(8)

ー5-Ⅰ. HPLC・ICP・MS法の開発 1 ) ICP・MSによる安定同位体セレンの測定 当初、セレンの安定同位体測定のためにMIP質量分析装置(MS)の使用を予定して いたが、アルゴンガスを用いるICP・MSに変更した。 MIP-MSは、プラズマ源として窒素 ガスを用いるため、 ICP・MSに比べ、一セレンの安定同位体の中でもっとも存在比の高い 80se (49.61%)の測定に優れている。アルゴンガスを用いるICP・MSでは、プラズマ中 でアルゴンの分子種40Ar40Arが生成されるため、質量数80での測定は不可能である。 しかしながら、他のセレン安定同位体である77se (7.63%)や82se (8.73%)の測定に 関してはICP・MSのほうが感度良く測定できることが明らかとなった。 本研究では、セレン安定同位体の自然存在比と、スパイク後の比の変化が重要であ り・いくつかの同位体を同時L=測定する必要がある。 MIP・MSは、 80seの測定には優れ ているが、他の同位体に関しては、 ICP・MSのほうが感度がよく、結果的に存在比の測 定精度はICP・MSのほうが高くなる。 また、この変更にともない、スパイクに用いるセレン安定同位体として、 82seを77se へ変更したd当初、内在性セレンの示標として80seを、外来性(投与)セレンの示標と して82seを測定する予定であったが、 ICP・MSでの測定が容易な77seおよび82seを測定す ることとし、 82seを内在性セレンの示標、 77seを外来性(投与)セレンの示標とした。 ICP・MSにおける77seおよび82seでは、生体試料に含まれる塩素および臭素による干渉 を受ける。これらの元素がプラズマ中でアルゴンや水素と結合し、質量数77の分子種 40Ar37clおよび質量数82の分子種lH81Brが生成するためである。臭素81Br (49.31%)と 水素による干渉については、臭素のもう一つの安定同位体である79Br (50.69%)が ICP・MSで測定可能であることから、補正法について検討を行った。その結果、プラズ マ出力などの条件が一定であれば、臭素濃度に応じて分子種lH81Brの生成割合も一定で あることから、セレン測定時に臭素濃度(79Br)を同時にモニターすることによって、 干渉を補正することが可能であることを明らかにした。 2) HPLCによる血祭セレンの分離 血祭中にはセレンをセレノシステインの形で含有するセレン特異的蛋白として

extracellular glutathione peroxidase (GSHPx.m.W.=92,000)およびselenoprotein P (m.W.=41.000)の二つがある。さらにセレンがセレノメチオニンの形でメチオニン残 基の代わりにアミノ酸配列中に取り込まれている非特異的蛋白があり、これは血祭中 では、ほぼalbumin (m.W.-69,000)に限られる。 当初、分離カラムとして分子ふるいカラムであるTSKge13000や、基本的に分子ふる いカラムであるが、アルブミンの溶出が遅れるAsahipakGS520HQ等を単独で用いてい たが、充分な分離能が得られなかった。

そこで、 selenoprotein Pがheparinに対して親和性を有することに着目し、 heparin

affinityカラムと分子ふるいカラムをタンデムに結合して用いる方法について検討を行っ

た。その結果、移動層として、

A buffer : 0.02M sodium phosphate bufferpH7.5、 in lOOmg/I EDTA2Na B buffer ∴ 500 unitheparin/ml in Abuffer

(9)

吸着させたのち、 Bbufferで溶出させ、他のセレン蛋白と溶出時間に差を持たせること が可能になった。なお、このタンデムカラム方式による血清中セレンの回収率は、 94 %であった。

Ⅱ.セレン欠乏マウスの作成

新たに開発したtandem column方式によるHPLC(heparin AFpak + Asahipak

520)-ICP-MS分析法により、ヒト血渠中セレンをGSHPx活性を有する第1peak、 albumi。と同 じ溶出時間をもつ第2peak、プロム干渉によるghost peakおよびheparin加buff。rで溶出 されるselenoprotein・Pが主と思われる第3peakに分離することが可能となった。 セレン欠餅で4週間飼育したICRマウスの血祭では第1peakは痕跡程度、第2peakは見 られず、第3peakはセレン充足マウスの約40%に低下してし.・た.安定同位体セレン ′

(77se)を亜セレン酸の形で100/`g Se/kg body weight胃内投与し、 24hr後に採血したマ

ウス血祭では、 77seは第1peakと第3peakにのみ認められ、第1peakはセレン充足マウス の約40%、第3peakでは約60%にまで回復しており、第3peakは欠乏時に減少しにくく 再補給時に優先的に増加すること、また亜セレン酸として投与されたセレンはalbumin と見られる第2peakには分布しないことが示された。 臓器間分布の検討では、セレン充足マウスと比較したセレン欠マウスの臓器中セレ ン濃度の減少率は肝や腎で大きく、大脳および精巣でのセレン減少はわずかであった。 減少分に対する77se投与後24hrにおける77se取り込み率をみると、精巣がその他の臓器 に比べ最も高かった。大脳では、投与後24hrで観察した場合、セレンの取り込みは少 ないことが示された。 また現在、亜セレン酸投与後の各臓器における経時的なセレン濃度の変動、セレン をセレノメチオニンとして含有している.と考えられるSe-rich酵母を投与したマウスに おける血祭中および臓器中セレンの分別分析を行っている。 Ⅲ. TPN患者における亜セレン酸補充 現在、経静脈的栄養(TPN)製剤中にセレンは含まれておらず、長期TPN療法ではセレ ン欠乏を来す。セレンの欠乏と補充に伴う血祭中、赤血球(RBC)中セレン濃度、血祭中 セレン分布の変化について検討を行い、ヒトにおけるセレン代謝およびセレン欠乏/補 充時におけるセレン栄養状態の示標について考察を行った。 セレン(sodium selenite)補充開始前後におけるTPN患者(caseA)血祭中セレンの分別分 析をHPLC-ICP・MS法を用いて行った。また、補充前の経腸栄養患者(caseB&C)、補充中 TPN患者(caseD)の血祭中およびRBC中セレン濃度の比軟を行ったoセレン濃度の測定 はwatkinson法で行い、精度管理にはNIST標準物質(1577b&1598)を使用した。 健康成人の血兼セレン(Fig.1)の分析結果より、ピーク1はGPx (セレン分布割合 19.2%)、ピーク2はalbumin (24.9%)、ピーク3は血祭中Brに由来するghostpeak、ピーク 4はselenoprotein P (55.9%)に含有されるセレンと考えられた。セレン補充開始前におけ るTPN患者の血祭セレン分布ではselenoprotein Pのピークのみが小さくみられ、補充を 開始すると早期からselenoprotein Pが増加し、また中断後も比較的のちまで血祭中に保 たれていたα経過中ピーク2の増加はほとんどみられなかった。セレン補充前の経腸栄 養患者では、セレン欠乏に伴うセレン濃度の低下は血祭中で顕著であり、 RBC中セレン

(10)

ー7-は比較的のちまで保たれていた。セレン補充中のTPN患者では、 RBC中セレン濃度は血 渠中セレンの増加に伴って上昇した。 以上より、セレン欠乏時にはselenoprotein PがGPxよりも比較的のちまで保たれ、さ らに血祭中よりRBC中セレンのほうが比較的のちまで保たれることが示された。また、 無機セレン補充では血祭中のピーク2は増加せず、このことはセレン補充時における血 祭セレン濃度の正常域を考える上で重要であると思われた。 Ⅳ.セレン栄養状態に関する疫学調査 セレンは、化学形態ごとに生体内における代謝経路が異なる。食品中セレンの化学 形態については十分に明らかではないが、一般に、動物性食品中ではセレノシステイ ′ ン、植物性食品ではセレノメチオニンが主要な化学形態であるとされている。魚介類 中セレンについての知見は少ないが、 bioavailabilityが低い可能性が指摘されている。 これら各食品群ごとのセレン摂取量を把撞する目的で、 24時間思い出し法および陰膳 食中セレン含有量の測定に加え、簡易食品摂取頻度調査票を作成し、個人ごとの長期 的な食品群別セレン摂取傾向の把握を試みた。 1) 陰膳食事調査 対象は岩手県内のある農林業地域の住民で、 1992・95年に40・60才代の381名の男女 に対し、 24時間思い出し法による食事調査(厚生科学健康増進調査研究事業)を実施 した。 1994年には40・60才代の19名(うち測定終了6名)の女性を対象に陰膳方式によ る食事調査を行い、サンプルを可能な限り各食品ごとに分別しICP・質量分析装置を用い てセレン濃度の測定を行った。 2) 簡易食事調査票の作成 上記測定および鈴木らの「食品の微量元素含量表」 (一都改)を用いて算出された 食品群ごとのセレン摂取割合の検討を行い、主要なセレン源である主食および間食で の米、小麦製品の摂取頻度、卵、主菜としての魚介類および肉類の摂取頻度を5段階評 価する食品摂取頻度調査票を試作し、 1995年の24時間思い出し法′による食事調査時に 同時に実施した。 1)この簡易調査票から求めた各食品群の摂取頻度、 2) 24時間思い出 し法データから求めた食品の平均摂取重量、 3)陰膳測定による食品群ごとの平均セレ ン含有量の三つより、個人ごとの食品群別セレン摂取量を算出した。 各方法で求めた食品群別および1日の稔セレン摂取量(Mean±SD)をTable 1.に示す。 方法ごとに推定値は若干異なるが、魚介類からのセレン摂取割合が最も高く次いで卵 であり、穀類および肉類と合わせると1日セレン摂取量の60・90%をこれら4食品群から のセレンが占めていた。 また、簡易調査票で得られた穀類および魚介類からのセレン摂取量のヒストグラム を24時間思い出し法によるものと比較したところ、穀類では大きな違いはみられない が、魚介類では、平均的な摂取を求めている簡易調査法で得られる摂取量のバラツキ に比べ、 24時間思い出し法で得られる各個人の1日摂取量のバラツキは非常に大きいこ とが示された。簡易調査法によって得られた個人ごとに各食品群からのセレン摂取量 については、個人間のバラつきが非常に大きいことが示され、簡易調査票によって、 各個人ごとにどの食品群からのセレン摂取が主であるかなどの特徴を把握できるもの と思われた。

(11)

Tablel・ Daily selenium intakes (〟 g) estimated by 24 hr recall, duplicate method and a

food・frequency questionnaire.

24 hr Recall Cal・●   Duplicate Msd.● Frequency Quest. Cal.=

181 men  2CiD women  6 women   44 men  50 women

Cereals 10.1± 5.5  7.0± 3.7 13.4±10.6  9.5± 4.0 6.9± 2.5 Fishes  128.6±117.0 78.6±71.6 36.6±30.2  47.8±25.5 39.8±20.7 Meats   17.8±33.6  9.3±16.2  6.9±10.8 15.0±15.0 14.8±11.6 Eggs    23.7±22.9  22.5±20.1 18.4±15.6  22.2±13.7 24.2±14.7 DailyTota1 199.1±128.9 137.3±77.0 121.9±26.4  94.5±37.4 85.8±34.2 ′

Msd・'; Meassured values・ Cal・●●; Mean selenium contents were used for each food gourp.

今回試作した食品摂取頻度調査票は、主食および間食での穀類、卵、主菜としての 魚介類および肉類の摂取頻度を5段階評価する簡易なものであるが、 24時間思い出し法 および陰膳法と組み合わせることによって食事からのセレン摂取稔量の約70%を把撞 でき、また各食品群からのセレン摂取傾向の個人差を容易に把握できるものと思われ た。 V.尿中セレンの分別分析

臨床医学領域において、経静脈栄養のTotal parenteral nutrition (TPN)の長期化に

伴いセレン欠乏が起こり、こうしたセレン欠乏に対してセレン補充療法が行われてい る。セレンは必須微量元素であると同時に毒物としても知られており、セレン補充療 法時にはセレン過剰とならないよう、慎重にセレン補充がなされている。 セレン栄養状態の示標として、血清中セレン濃度、セレン酵素であるGPx活性の測定 などが行われているが、セレン補充を続けた場合、こうした示標は頭打ちの状態とな り、過剰を表わす良い示標とは必ずしもいえず、こうしたことからセレン過剰状態の 示標が求められている。 尿中に排壮されるセレンについては、セレンの栄養状態によって尿中に排推される セレンの化学形態が異なることが実験的に示されている。過剰の際には、もっともメ チル化されたセレン化合物である、トリメチルセレノニウムイオンの尿中セレン割合 が増加するとされている。排推されるトリメチルセレノニウムイオンの量あるいは、 尿中稔セレンに占める割合などがセレン過剰の示標としてと考えた。 セレン欠乏および充足マウスにセレンを投与し、尿中セレンの経時的な変化を追跡 するとともに、セレン補充療法を行っているTPN患者尿中セレンの分別分析を行った。 1)症例 症例は、 2才の女児で、出生後から曜吐を繰り返し、生後8か月日から TPNを施行。胃幽門部における機械的な刺激に対する反射的な堰吐がみられ、堰吐中 枢への求心神経回路の異常などが疑われている。ただし、数ml程度の飲水は可能であっ た。生後24か月でセレン欠乏症状を呈し、 26か月日から経口でセレンが投与され、 10 〝g/kgのセレンが亜セレン酸水溶液として補充されている。

(12)

-9-2)動物実験 この症例に併せ、 4週齢のICRマウスを用い、 KR酵母を主体としたセ レン欠乏(0.004mg/kgdiet)飼料および、この飼料にセレンを亜セレン酸として

0・4mg/kg di'et添加した充足飼料で4週飼育し、質量数77の安定同位体セレン(77se: 100, 200〝g/kgweight)を亜セレン酸溶液として経口投与し24hr後の尿をボウコウか

ら採取した。

size・exclution column (Asahipak GS 320 HQ)で分離後、 ICP-MS (Elan 5000)で測

定し、セレン充足(過剰)時における尿中セレンの化学形別分析を試みた。比較のた め用いた健康ヒト尿では27, 35, 47minに、セレン欠乏マウスではm/Z77でのみ35minお よび43minにセレンpeakがみられた。セレン充足マウスでは、 m/Z77および82とも 35minのpeakが主体であるがその他に複数のセレンpeakが見られ、セレン充足(過剰) 時におけるセレンの尿中排壮化学形は従来考えられていたものより多様である可能性 が示唆されたoセレン補充開始2週目のTPN患者尿では、セレ㌣peakはほとんどみられ なかった。      ′ セレンのメチル化については、肝がその主な場所とされるが、トリメチルセレノニ ウムイオンにまでメチル化されるどうかは、ある時間内にどれだけのセレンが肝にど れだけのセレンが短時間のうちに集積したかっを表わしているのではないか、と考え られた。 1.セレンをoneshotで経口投与した場合の、尿中トリメチルセレノニウムイオン排壮 割合は、マウスのセレン栄養状態に依存しない。すなわち、長期的なセレン栄養状態 の示標としては不適であると考えられた。 2.トリメチルセレノニウムイオンの尿中排壮排壮割合の経時的変化は、急速であり、 尿採取の時間を考慮に入れての評価法を確立していく必要があると考えられた。 3.以上より、少量の水分摂取が可能なTPN患者に対して行われている経口的セレン補 充療法におけるセレン過剰の示標として尿中トリメチルセレノイムイオン排壮割合を 用いることは、難しいと思われた。 今後、 1.セレンの尿中排壮形態には、以前から同定されているものの他に、さらにいくつか の化学形態の存在が示唆され、それらを同定することによって生体内におけるセレン 代謝を知る手がかりになるものと思われる。 2.通常のTPN製剤にセレンを添加しての、長期間におよぶ経静脈的なセレン投与時に おける尿中トリメチルセレノニウムイオンの意義については、今後引き続き明らかに していきたい。 謝辞 この間、瀬子義幸先生(山梨県環境科学研究所) 、千葉百子先生(順天堂大学医学 部) 、小山田則孝先生(茨城県衛生研究所)永沼章先生(東北大学薬学部)からご教 示をいただいた。また、疫学調査では、今井潤先生(東北大学第2内科) 、永井謙一先 坐(県立大迫病院)および大迫町保健福祉課の方々のご協力をいただいた。記して謝 意を表したい。 なお、フィールドに於ける食事調査は、佐藤千代子(大迫町)、佐藤玲子(尚網短大)、 笹田陽子(盛岡短大)、平田亜古(宮城学院)、中家祥子(栄養士)、渡辺孝男(宮城教育大) の各先生方との共同研究として実施された。

(13)

TOUR : Tohoku University Repository コメント・シート 本報告書収録の学術雑誌等発表論文は本ファイルに登録しておりません。なお、このうち東北大学 在籍の研究者の論文で、かつ、出版社等から著作権の許諾が得られた論文は、個別にTOUR に登録 しております。 TOUR http://ir.library.tohoku.ac.jp/

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