検 診 発見 に よ る早期 肺 癌 に関 す る研 究
第1編
早期 腺癌 の検討
岡 山 大学 医学部 第二 内科 学教 室(指 導:木 村 郁 郎教 授)
森
公
介
(平成6年2月25日
受稿)
Key words: Mass screening, Early lung cancer, Adeno carcinoma
緒
言
近 年 肺 癌検 診 の普 及 に よ り肺 癌 発 見率 が 上 昇
し,早 期 の 肺癌 の 占め る割合 も増 加 して い る.
検 診発 見 肺癌 の術 後5年 生 存率 は,自 覚 症 状 発
見肺 癌 の それ に 比 し有 意 に 良好 な成績 が認 め ら
れ るように なった1).この検 診 発 見 肺癌 の うち88%
はX線 発 見 で あ り,そ の 組織 型は 腺癌 が60%を
占め る2).この腺 癌 はX線 写 真 に出 現す る陰影 が
発見 の唯 一 の 手 がか り とな るため, X線 検 診 は
その早 期 発 見 の重 要 な手段 と言 え る. X線 検 診
は肺 癌 をX線 上 径2cm以
下 で発 見 す る こ とを 目
標 に して い るが,腺 癌 に お い て は径2cm以 下 で
切 除 で きて も既 に進 行 癌 で あ るこ とが あ り,現
在 までの 成績 では早期 の腺 癌 は検 診 発 見の約20%
に過 ぎな い2).
そ こ で検 診発 見 の 径2cm以 下 の 腺癌 につ いて
早期 発 見 の 手 が か りを得 るため に臨床 的解 析 を
行 い,そ の特 性 を検 討 し併 せ て径1.5cm以 下 の腺
癌 につ いて もそ の意 義 を検 討 した.
対 象 と 方 法
対 象 は1981年 か ら1989年 の9年 間 に 岡 山大 学
医学 部 第 二 内科 お よび 結核 予 防会 岡山 県支 部 が
行 っ た岡 山 方式 の住 民 肺癌 検 診 に よ る間接X線
発 見 の 肺癌 で あ る.こ のX線 検 診 で発 見 され た
全 肺 癌 は493例 で,そ の う ち腺 癌 は304例 で あ り,
さ らにX線 上 径2cm以
下肺 野 型 腺 癌 は112例 で,
その切 除例 は92例 で あ った.こ れ ら を対象 と し
て 以下 の 項 目につ いて検 討 した.な お早 期 腺癌
は肺 癌 学 会 の肺 癌 取 扱 規約 に よ り術 後 腫 瘍径2
cm以 下 で病期 はI期 でTNM分
類 で はT1N0
M0と
した.
肺 癌 検 診 の 岡 山方 式 とは図1の ご と くであ る.
す な わ ちX線 検 診 は間 接X線 写 真 を二 人の 読影
医 が独 立 して読 影 し(ダ ブ ル チ ェ ッ ク,二 重読
影),さ らに要精 査 は前 年 のX線 写 真 を比較 読影
して肺 癌 疑 い を しぼ りこみ,組 織 診,細 胞 診 で
確 定 診断 を行 い,続 いて病 期 お よび 治療 方 針 を
図1 岡 山 方 式 の 住 民 肺 癌 検 診 シ ス テム 621622 森 公 介 決 定 す る.従 っ て こ の 肺 癌 検 診 の 流 れ に お い て 前 年 の 間 接X線 写 真 の 陰 影 の 有 無 をrestro spectiveに 検 討 す る こ と が で き た. 1) X線 検 診 に よ る 肺 癌 発 見 率 は じめ に 径2cm以 下 の 腺 癌 が 検 診 発 見 肺 癌 の な か で 占め る位 置 づ け を 明 ら か に す る た め に 肺 癌 検 診 の 成 績 を示 し た.検 診 受 診 者 を 性 別 に 全 年 齢 と40歳 以 上 に わ け て 発 見 率 を10万 対 比 で 検 討 し た. 2) X線 発 見 肺 癌 の 臨 床 的 特 徴 検 診 発 見 肺 癌 の 臨 床 的 特 徴 と し て,性 別,年 齢,発 生 部 位,組 織 型,臨 床 病 期 を検 討 し,ま た 腺 癌 の 肺 癌 全 体 に 占 め る 割 合 を み た. 3)腺 癌 の 切 除 率 と 臨 床 病 期,術 後 病 期 お よ び 径2cm以 下 肺 野 型 腺 癌 の 位 置 づ け X線 検 診 に お い て 発 見 さ れ た 腺 癌 の 切 除 率, 臨 床 病 期,術 後 病 期 を 検 討 し,径2cm以 下 肺 野 型 腺 癌 の 位 置 づ け を 試 み た. 4)径2cm以 下 肺 野 型 腺 癌 X線 上 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 と そ の 手 術 症 例 に つ い て 臨 床 的 特 徴 を性 別,年 齢,腫 瘍 径 別, 臨 床 病 期 と術 後 病 期,前 年 の 陰 影 の 有 無 に つ い て 検 討 し た. 5)腺 癌 の 腫 瘍 径 別 お よ び 前 年 の 陰 影 の 有 無 と 術 後 病 期 次 に 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 を 術 後 径1.5cm 以 下 群 と1.6∼2.0cm群 の2群 に 分 け,前 年 の 間 接X線 写 真 の 陰 影 の 有 無 と術 後 病 期 を検 討 した. 6)腺 癌 の 腫 瘍 径 別 の5年 生 存 率 術 後 径1.5cm以 下 群 と1.6∼2.0cm群 の5年 生 存 率 を検 討 し た.生 存 率 は 術 後 径 別 にKaplan-Meier法 に て 検 討 し,有 意 差 検 定 はx2検 定 お よ びGeneralized-Wilcoxon testに よ り行 っ た. 7)術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 腫 瘍 径 別,症 期 別 の 確 定 診 断 お よ び 手 術 ま で の 期 間 術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 に つ い て術 後 径1.5cm以 下 群 と1.6∼2.0cm群,お よ び 術 後 病 期I期 群 と
II, III, IV期 群 に わ け,そ れ ぞ れ 間 接X線 撮 影 か ら確 定 診 断,手 術 ま で の 期 間 を 検 討 した. 8)術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 進 行 癌 の 臨 床 的 検 討 次 に 術 後 径2cm以 下 でTNM分 類III, IV期 の 進 行 癌 で あ っ た 症 例 に つ い て 性,年 齢,術 後 径, TNM分 類,組 織 分 化 度,間 接X線 撮 影 か ら診 断,間 接X線 撮 影 か ら手 術 ま で に 要 し た 日数, 前 年 の 間 接X線 写 真 上 の 陰 影 の 有 無 に つ い て 検 討 し た. 結 果 1) X線 検 診 に よ る 肺 癌 発 見 率 住 民 肺 癌 検 診 の 受 診 者 延 べ1,570,535人 の 中 のX線 検 診 に よ る 発 見 肺 癌 数 は493人 で,発 見 率 は10万 人 対31.39で あ る.こ の 受 診 者 数 を性,年 齢 別 に み る と40歳 以 上 が78%を 占め る.こ の40 歳 以 上 か ら 発 見 さ れ た 肺 癌 数 は490例 で その 発 見 率 は10万 対39.91と な る.男 女 別 に み る と40歳 以 上 の 男 性 で は 発 見 率 は84.03で あ り,同 じ く女 性 で は19.80で あ る(表1). 40歳 以 下 の 肺 癌3例 に つ い て は2例 が 女 性 で, 39歳 と34歳 で あ り, と も に 腺 癌 のI期 で あ り他 の1例 は 男 性 で, 39 歳,小 細 胞 癌, III A期 で あ っ た.肺 癌 検 診 の 年 齢 を40歳 以 上 に 限 っ た 場 合 に は こ の よ う な 若 年 者 の 腺 癌 が 除 外 さ れ る. 2) X線 発 見 肺 癌 の 臨 床 的 特 徴 次 にX線 発 見 肺 癌493例 の 臨 床 的 特 徴 を み た (表2). 男 女 比 は1:0.5と 男 性 に 多 く年 齢 は34歳 か ら 97歳 ま で で,年 齢 中 央 値 は70歳 で あ っ た.発 生 部 位 別 で は 肺 野 型 が418例, 85%,肺 門 型 が65例, 15%と 肺 野 型 が 多 い.組 織 型 は 腺 癌 が304例, 62%,扁 平 上 皮 癌 が124例, 25%,小 細 胞 癌 が48 例, 10%,大 細 胞 癌 が10例, 2%で,そ の 他 が 7例, 1%で あ っ た.そ の 他7例 の 内 訳 は カ ル 表1 肺 癌 検 診 のX線 に よ る肺 癌 発 見率 (1981年∼1989年)
表2 肺癌検診X線 発 見肺癌の臨床 的特徴
チ ノ イ ド3例,腺 扁 平 上 皮 癌2例,腺 嚢 胞 癌1 例,粘 表 皮 癌1例 で あ る.臨 床 病 期 はI期 が346 例, 70%, II期 が32例, 6%, III期が63例, 13%, IV期 が52例, 11%で あ っ た. 3)腺 癌 の 切 除 率 と臨 床 病 期,術 後 病 期 お よ び 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 の 位 置 づ け a)腺 癌 の 切 除 率 と 臨 床 病 期,術 後 病 期 X線 発 見 肺 癌 の62%を 占め る 腺 癌 に つ い て 検 討 を 行 っ た(表3). 腺 癌304例 の 臨 床 病 期 は, 1期 が230例, 75%, II期 が10例, 3%, IIIが27例, 9%, IV期 が26 例, 9%で あ っ た.切 除 率 は304例 中211例, 69.4% で,術 後 病 期 はI期 が122例, 58%, II期 が8例, 4%, III期が29例, 14%, IV期 が10例, 5%, 不 明 が42例, 19%で あ っ た. b) X線 検 診 に お け る径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 の 位 置 づ け X線 検 診 発 見 の 腺 癌 の な か で 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 の 割 合 を み た(図2).腺 癌304例 の う ち肺 野 型 が292例, 96%に 対 し肺 門 型 が12例, 4% で,肺 野 型 が 圧 倒 的 に 多 い.肺 野 型 腺 癌 で は, X線 上 径2cm以 下 で 発 見 さ れ た も の は112例,表3 腺癌の切除率 と臨床病期 お よび術後病期
切 除 率 は304例 中211例, 69.4%図2 肺癌検 診X線 発見肺癌
38%で あ り,こ れ は 径2cm以 下 で 発 見 さ れ た 肺 野 型 肺 癌131例 の85%に あ た る. 4)径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 a)径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 と そ の 切 除 例 の 臨 床 的 特 徴 径2cm以 下 で 発 見 さ れ た 肺 野 型 腺 癌112例 お よ び こ の う ち の 切 除 例92例 の 臨 床 的 特 徴 を 対 比 し て 検 討 し た(表4). 切 除 率 は112例 中92例, 82%で あ っ た.男 女 比 は 両 者 と も1:1.7で,こ れ は 検 診 発 見 全 肺 癌 の 男 女 比1:0.5に 比 し女 性 に 多 い.年 齢 範 囲 は 同 じで 年 齢 中 央 値 は そ れ ぞ れ66歳 と63歳 で あ っ た. 腫 瘍 径 に つ い て み る と, X線 上 径2cm以 下 の 腺 癌112例 で は 径1.0cm以 下 が7例, 6%,径1.1624 森 公 介
表4 検 診発見X線 上径2cm以 下 腺癌の臨床的特徴
切 除率 は112例 中92例, 82% ∼1 .5cmが44例, 40%,径1.6∼2.0cmが61例, 54% で あ っ た が,切 除例 の92例 で み る と術 後 径 で2 cm以 上 を わ ず か に 超 え る例 が18例, 20%あ り, 径1.0cm以 下 が5例, 4%,径1.1∼1.5cmが24例, 26%,径1.6∼2.0cmが45例, 50%で あ っ た. X 線 上 径2cm以 下 の 腺 癌112例 の 臨 床 病 期 はI期 が104例, 93%, III A期 が6例, 5%, IV期 が2 例, 2%で あ っ た.切 除 例 の92例 に つ い て み ると,臨 床 病 期 はI期 が89例, 97%, III A期 が3 例, 3%で,術 後 病 期 はI期 が82例, 89%, II 期 が3例, 3%, III A期 が6例, 7%, IV期 が
1例, 1%で あ っ た. す な わ ちX線 上 径2cm以 下 で 切 除 さ れ た 肺 野 型 腺 癌 で は,術 後 病 期IV期 が1例 あ っ た が 臨 床 病 期 と大 き い 開 き は な か っ た. b)径2cm以 下 の 腺 癌 の 早 期 癌 と進 行 癌 径2cm以 下 で 発 見 さ れ た 肺 野 型 腺 癌 の う ち 早 期 癌(TNM分 類I期, T1N0M0)と 進 行 癌 (III, IV期)の 割 合 を み た(図2,表4). X線 上 径2cm以 下 の 腺 癌112例 の うち切 除 例 は 92例 で あ る が,こ の う ち 術 後 病 期I期 は82例 で, さ ら に 早 期 癌 は53例 で あ っ た.す な わ ち こ の 腺 癌 の 早 期 癌 は, X線 上 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 の 切 除 例92例 の58%で あ る が,非 切 除 例20例 を 含 む112例 で み る と47%に な る. 一 方X線 上 径2cm以 下 で あ っ て も 進 行 癌 で あ っ た も の は,術 後 病 期 がIII, IV期 と 判 明 し た7 例 で,切 除 例92例 の8%で あ る が,臨 床 病 期III, IV期 の た め 手 術 を行 わ な か っ た2例 を加 え る と 9例 に な り, X線 上 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌112 例 中 少 な く と も9例, 8%が 進 行 癌 で あ っ た こ とに な る. retrospectiveに 前 年 のX線 写 真 に 陰 影 が あ る も の は,全 症 例 と切 除 例 で,そ れ ぞ れ62%, 71% で あ っ た. 5)術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 腫 瘍 径 別 お よ び 前 年 の 陰 影 の 有 無 と術 後 病 期 切 除 例92例 に つ い て 術 後 腫 瘍 径 と術 後 病 期 と の 関 連 を検 討 し た(表5). 92例 の う ち 術 後 径2cm以 下 の74例 を さ ら に 術 後 径1.5cm以 下 の29例 と1.6∼2.0cmの45例 に大 別 す る と,術 後 径1.5cm以 下 は 全 例I期 で あ り,そ の う ち 早 期 癌 が26例, 90%を 占め 進 行 癌 は 認 め な か っ た.こ の う ち径1.0cm以 下 の5例 は す べ て 早 期 癌 で あ っ た.術 後 径1.6∼2.0cmで はI期 は 36例, 80%で 早 期 癌 は27例, 60%と な り,一 方 III A期 が5例, IV期 が1例,計6例, 13%の 進 行 癌 が 認 め ら れ た.す な わ ち 肺 野 型 腺 癌 は 術 後 径1.5cm以 下 で 切 除 で きれ ば 早 期 癌 で あ る可 能 性 が 高 く,術 後 径1.6cmを 超 え る と径2cm以 下 で切 除 で き て も進 行 癌 が あ る こ とが わ か っ た. 次 に 前 年 の 陰 影 の 有 無 と術 後 病 期 を検 討 し た. 切 除 例 の う ち術 後 径2cm以 下 で あ っ た74例 で は, 前 年 に 陰 影 の あ る も の は55例, 74%で あ っ た. こ れ を 術 後 径1.5cm以 下 と1.6∼2.0cmに 分 け る と,術 後 径1.5cm以 下 の29例 で は22例, 76%に 前 年 の 陰 影 が 認 め ら れ た が,す べ て 術 後 病 期I期 で あ っ た.一 方 術 後 径1.6∼2.0cmの45例 で は33
表5 腺癌の術後腫瘍径別 前年の陰影の有無 と術後病期
図3 術 後 径2cm以 下 腺癌 の 腫 瘍 径 別 生 存 率 例, 73%に 陰 影 が み とめ ら れ,こ の な か にIII A 期 が5例, IV期 が1例 あ っ た. ま た 前 年 の 陰 影 の 有 無 と細 胞 分 化 度 と の 関 連 を検 討 し た と こ ろ,前 年 に 陰 影 の あ る55例 の 細 胞 分 化 度 は 高 分 化 型 が35例, 64%,中 分 化 型 が 11例, 20%,低 分 化 型 が5例, 9%で あ り,一 方 前 年 に 陰 影 の な い12例 で は 高 分 化 型 が8例, 67%,中 分 化 型 が2例, 17%で あ っ て,前 年 の 陰 影 の 有 無 と細 胞 分 化 度 に は 有 意 差 な く一 定 の 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た.さ ら に 術 後 径1.5cm以 下 と,術 後 径1.6∼2.0cmの2群 間 や,各 術 後 病 期 の 間 で も細 胞 分 化 度 に 差 が な か っ た. 6)術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 腫 瘍 別 生 存 率 次 に 腫 瘍 径 別 に5年 生 存 率 に つ い て 検 討 し た (図3). 腺 癌 の 術 後 径1.5cm以 下 と術 後 径1.6∼2.0cm 表6 腫 瘍 径,病 期 別 の 間 接X線 撮 影 か ら確 定 診 断, 手術 まで の期 間(日) で, 5年 生 存 率 に 差 が あ る か 否 か をKaplan-Meier法 に よ り検 討 し た. 5年 生 存 率 を み る と 術 後 径1.5cm以 下(n=29)で は100%で, 1.6∼2.0 cm(n=45)で は72.1%で あ り術 後 径1.5cm以 下 と術 後 径1.6∼2.0cmの 間 で5年 生 存 率 に 有 意 差 が 認 め ら れ た(p<0.05).術 後 径2cm以 下 腺 癌 全 体(n=74)で は83.5%で あ り予 後 は 良 好 で あ っ た.す な わ ち 腺 癌 は 術 後 径1.5cmま で に 発 見 し 切 除 で きれ ば 前 述 の ご と く早 期 癌 が90%を 占め, 予 後 の期 待 で き る こ と が5年 生 存 率 か ら確 認 さ れ た. 7)術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 腺 瘍 径 別,病 期 別 の 確 定 診 断,手 術 ま で の 期 間 間 接X線 撮 影 か ら確 定 診 断 ま で と 撮 影 か ら手 術 ま で に 要 した 平 均 日数 は そ れ ぞれ 術 後 径1.5cm 以 下 群 で83日 と128日,術 後 径1.6∼2.0cm群 で69626 森 公 介
日 と106日 で あ り,両 群 間 に有 意 差 は なか っ た.
また病期 別 にみ て もI期 群 は それ ぞれ78日 と115
日で, II, III,
IV期 群 は75日 と120日 で あ り有 意
差 は な か っ た(表6).
8)術
後径2cm以
下 の腺 癌 に お け る進 行 癌
術 後径2cm以
下 で進 行 癌 で あ った6例 の 臨床
的 特徴 お よび細 胞分 化 度 をみ た(表7).
術 後病 期 はIII
A期 が5例,
IV期 が1例 であ る
が,全 例 に 前年 に陰 影 が認 め られ 細 胞分 化 度 に
は関 連 は な か っ た.間 接 撮 影 か ら手術 ま でに 要
した期 間 は64日 か ら179日 と幅 が あ っ たが, 2例
は至 急 精査 に よ り72日 と64日 で早 い 対応 が な さ
れ て い た.
考
察
肺 癌 検 診 が1989年 よ り老 人保 健 法 で全 国的 に
実 施 され る こ と とな った が,著 者 らは これ に先
駆 け てす で に1973年 よ り地域 住 民 を対 象 に した
肺 癌 検 診 を実施 して きた.そ
して この肺 癌 検 診
の有 用 性 は 町 田3)が,また効 果 的 な検 診 方 法 は西
井1)が報 告 し,岡 山方 式 と して確 立 され 老 人保 健
法 に よ る肺 癌検 診 の方 式 に ほぼ 全 面 的 に 取 り入
れ られ て い る と ころ であ る.肺 癌 検 診 はX線 検
診 と肺 門部 肺癌 の高 危 険群 に対 す る喀 痰 細 胞 診
を併 用 して 行 わ れ るが, X線 検 診 は従 来 の結 核
検 診 を利 用 した もの で あ り,喀 痰 細 胞 診 はX線
無所 見 の肺 門部肺 癌 の検 出 に有 効 で あ る.こ の
方 式 の検 診 で,
Sobueら4)は 症 例 対 象 研 究 に よ り
肺癌 死 亡 率 の28%の 減 少 を報告 して い る.
肺癌 検 診 では, X線 発見 肺 癌 が85%5)∼88%2)
を 占 め,さ ら に そ の82%6)∼87%2)が 肺 野 型 肺 癌 で あ る.肺 野 型 肺 癌 につ い て は 腺 癌 が687)∼75%8) を 占 め 腺 癌 の 割 合 が 高 い.今 回 の 検 討 で はX線 発 見 肺 癌 の85%が 肺 野 型 肺 癌 で あ り,ま た 肺 野 型 肺 癌 の70%が 腺 癌 で 諸 家 の 報 告 と類 似 し た 成 績 で あ っ た.肺 野 型 肺 癌 は 早 期 に は 症 状 が な く, X線 写 真 に 出 現 す る 陰 影 が 唯 一 の 発 見 の 手 が か り と な る こ とが 多 い. X線 検 診 の 主 な 目 的 は こ の 肺 野 型 肺 癌 を 救 命 し う る段 階 で 発 見 す る こ と で あ る.そ こ でX線 検 診 に お い て 発 見 さ れ る頻 度 の 高 い 腺 癌,と くに 小 型 腺 癌 の 臨 床 的 特 徴 に つ い て 検 討 し た. 肺 癌X線 検 診 に お い て ど の 大 き さ ま で に 発 見 す る こ と を 目標 に す る か を,腺 癌 に つ い て 検 討 し た 報 告 は な い.そ れ 故X線 検 診 で 発 見 し た 腺 癌 の 腫 瘍 の 大 き さ と長 期 予 後 との 関 連 に つ い て も検 討 し た. 1981年 か ら1989年 の9年 間 に 肺 癌 X線 検 診 で 発 見 さ れ た 肺 癌493例 の う ち 腺 癌 は 62%で あ っ た.こ の 腺 癌 を 臨 床 病 期 別 に み る と, I期 が75%, II期 が3%, III期が9%, IV期 が 9%で あ り, I, II期 で78%を 占め て い た.こ れ は 池 田 ら9)の全 国 集 計 の 腺 癌I期 の51.8%に 比 べ て 優 れ た 成 績 と い え る.さ て こ れ ま で 早 期 肺 癌 の 指 標 と し て 大 き さ は 術 後 径2cm以 下 と さ れ て き た10).し か し大 き さ が 術 後 径2cm以 下 で あ っ て も進 行 癌 で あ る症 例 が12.911)∼28.7%12)に あ る こ と が 報 告 さ れ て い る.腺 癌 に つ い て の 今 回 の 検 討 で も, X線 上2cm以 下 の112例 中9例, 8% にIII, IV期 進 行 癌 が 認 め ら れ た.従 っ て,術 後 径2cm以 下 の73例 の5年 生 存 率 は85.3%で あ っ 表7 術 後 径2cm以 下 腺 癌 の 進 行 癌た.こ の 成 績 は 早 期 肺 癌 の5年 生 存 率 が 80.1%12), 85.4%13)と す る他 の 報 告 に 一 致 して い る.一 方 術 後 径1.5cm以 下 の29例 に 限 れ ば す べ て I期 で 進 行 癌 は な く,そ の5年 生 存 率 は100%で あ っ た. 次 に 術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 に つ い て,確 定 診 断,治 療 ま で の 期 間 を 検 討 し た.ま ず 腫 瘍 径 で み る と径1.5cm以 下 と径1.6∼2.0cmの 間 で差 は な か っ た.ま た 術 後I期 と 術 後II, III, IV期 で も 差 は な か っ た.さ ら に 進 行 癌 で あ っ た6例 に つ い て み る と,そ の う ち2例 は 至 急 精 査 の 方 式 で 間 接 撮 影 か ら確 定 診 断,間 接 撮 影 か ら 手 術 ま で の 期 間 は そ れ ぞ れ30日 と72日, 38日 と64日 で, 期 間 の 短 縮 に 努 力 し て い た.残 りの4例 もIII A 期 で 生 存 中 の1例 を 除 き遅 延 は な か っ た.術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 の 進 行 癌 は, (1)術 後 径1.6 ∼2 .0cmの 大 きさで あ るこ と, (2)前年 のX線 写 真 に 陰 影 を 認 め る こ と, (3)細胞 分 化 度 や 診 断,治 療 ま で の 期 間 に は 関 係 な い こ とが 判 明 し た. ま た 今 回 の 検 討 で は 術 後 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌 の74%が 前 年 に 陰 影 を有 して い た.術 後 径 1.5cm以 下 な ら 前 年 の 陰 影 に 関 係 な く全 例I期 で, 5年 生 存 率100%と 予 後 は よ か っ た.一 方1.6 ∼2 .0cmで はIII, IV期 進行 癌 が6例 あ り,そ の 全 例 に 前 年 のX線 写 真 に 陰 影 が 認 め ら れ た.す な わ ち 術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 で は 前 年 に 陰 影 が な く発 育 が 速 い と考 え ら れ る もの で も術 後 病 期I, II期 に と ど ま り,む し ろ 前 年 に 所 見 を認 め る 発 育 が 遅 い と考 え ら れ る も の の な か に 径1.6∼2.0 cmの 大 き さ でIII, IV期 進 行 癌 が 認 め ら れ,し た が っ て術 後 径1.5cm以 下 の 大 きさ で 発 見 し切 除 す る こ と が望 ま し い. X線 写 真 の 画 質 に 関 し て,現 在 の 高 圧 撮 影, 100ミ リ ミ ラ ー カ メ ラ の 間 接X線 写 真 は,径1cm 前 後 の 陰 影 も認 識 可 能 な 画 像 を得 る こ とが で き, 肺 癌 の 微 細 な 陰 影 や 淡 い 陰 影 も発 見 で き る優 れ た 方 法 と い え る.そ し て 腺 癌 はX線 上 の 陰 影 が 唯 一 の 手 が か り と な る た め, X線 写 真 の 画 質 の 精 度 管 理 を 慎 重 に 行 い,診 断 に 際 し て は 読 影 技 術 を 高 め,前 年 のX線 写 真 に 見 ら れ る 腺 癌 の 早 期 像 を 習 熟 し,肺 癌 の 発 見 が 困 難 に な る 部 位 に 留 意 し た 系 統 的 な 読 影 方 法 で て い ね い に 読 影 を 行 う こ と に よ り,早 期 腺 癌 の 検 出 率 を 高 め る こ と が で き る も の と思 わ れ る. 結 論 肺 癌 検 診 に お け る早 期 腺 癌 の 発 見 の 重 要 性 に 着 目 し, X線 上 径2cm以 下 の 肺 野 型 腺 癌112例 の う ち 切 除 を行 っ た92例 に つ い て 腺 癌 の 特 性 と早 期 癌 の 要 因 を 検 討 し た.そ の 結 果 を 要 約 す る と 次 の ご と く で あ る. 1)前 年 の 間 接 写 真 に 陰 影 が あ っ た も の は 術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 全 体 で は74%で,術 後 径1.6 ∼2 .0cmで73%,術 後 径1.5cm以 下 で76%で あ っ た. 2)術 後 径1.5cm以 下 の 腺 癌29例 で は,全 例 がI 期 で 早 期 癌 は26例, 90%で あ っ た. 一 方 術 後 径1 .6∼2.0cmの45例 で は, I期 が36 例, 80%,早 期 癌 が27例, 60%で, III, IV期 進 行 癌 が6例, 13%あ っ た. 3)術 後 径2cm以 下 のIII, IV期 進 行 の6例 は, 全 例 が 術 後 径1.6∼2.0cmの 大 き さ で か つ 全 例 に 前 年 に 陰 影 が 認 め ら れ た が,細 胞 分 化 度 や 確 定 診 断,手 術 ま で の 期 間 に は 関 係 は な か っ た. 4)一 方 前 年 に 陰 影 が な く比 較 的 発 育 の 速 い と 考 え ら れ る 場 合 で も,術 後 径2cm以 下 で 発 見 で き れ ば 術 後 病 期I, II期 に と ど ま り, 83%が 早 期 癌 で あ っ た. 5)術 後 径1.5cm以 下 で あ れ ば 前 年 の 陰 影 の 有 無 に 関 わ らず 全 例 がI期 で あ り,ま た90%は 早 期 癌 で5年 生 存 率 は100%で あ っ た.術 後 径1.6 ∼2 .0cmで は, 60%は 早 期 癌 で あ るが5年 生 存率 は72.1%で あ っ た.従 っ て 術 後 径2cm以 下 の 腺 癌 全 体 の5年 生 存 率 は83.5%と な っ た. 6)腺 癌 はX線 上 の 陰 影 が 唯 一 の 手 が か り と な る こ とか ら肺 癌 検 診 に お い て 腺 癌 早 期 癌 の 検 出 率 を 高 め る た め に は, X線 写 真 の 画 質 を 向 上 さ せ る と と もにretrospectiveに 認 め ら れ たX線 所 見 に 習 熟 し,系 統 的 な 読 影 を 行 う こ と が 必 要 で あ る. 稿 を終 わ る に あ た り,ご 指 導 並 び に ご校 閲 を賜 っ た恩 師 木 村 郁 郎 教 授 に 深 甚 の 謝 意 を表 しま す.ま た 終 始 懇 切 な ご指 導 とご 助 言 を い た だ いた 結核 予 防 会 病 院 長 守 谷 欣 明先 生 に 深 謝 し ます.
628 森 公 介
文
献
1) 西 井 研 治:肺 癌 検 診 に 関 す る 研 究.岡 山 医 誌(1990) 102, 603-622. 2) 成 毛 韶 夫:肺 が ん の 集 団 検 診 精 度 管 理 と正 確 な 評 価 に 関 す る研 究;平 成2年 度 厚 生 省 が ん 研 究 助 成 金 に よ る 研 究 報 告 集,国 立 が ん セ ン タ ー,東 京(1990) pp123-129. 3) 町 田 健 一:肺 癌 の 診 断 と 治 療 に 関 す る 研 究.岡 山 医 誌(1985) 96, 953-959.4) Sobue T, Tuzuki T, Naruke T and The Japanese Lung-Cancer-Screening Reserch Group: A case control study for evaluating lung-cancer screening in Japan. Int J Cancer (1992) 50, 230-237. 5) 成 毛 韶 夫:肺 が ん の 集 団 検 診 の 正 確 な 評 価 に 関 す る 研 究;平 成 元 年 度 厚 生 省 が ん 研 究 助 成 金 に よ る研 究 報 告 集,国 立 が ん セ ン タ ー,東 京(1989) pp28-33. 6) 守 谷 欣 明:自 治 体 検 診 の 老 健 法 に よ る 肺 癌 検 診(62年 度 の 実 績 と 反 省);第4回 肺 癌 集 検 セ ミ ナ ー,日 本 肺 癌 学 会 肺 癌 集 団 検 診 委 員 会,東 京(1990) pp39-46. 7) 木 村 郁 郎,守 谷 欣 明:肺 癌 は ど こ ま で な お せ る か. Medical Practice(1986) 3, 1906-1911. 8) 青 木 正 和:肺 癌 集 検 提 要.結 核 予 防 会,東 京(1988) pp98. 9) 池 田 茂 人,沢 村 献 児,坪 井 栄 孝:肺 癌 集 検 追 跡 調 査 報 告.肺 癌(1985) 25, 283-290. 10) 池 田 茂 人:肺 癌 の 集 団 検 診.臨 床 成 人 病(1978) 8, 841-850. 11) 栗 田 啓,清 水 信 義,伊 達 洋 至,森 山 重 治,宮 井 芳 明,三 宅 敬 二 郎,中 野 重 治,安 藤 陽 夫,寺 本 滋:長 径 2cm以 下 進 行 肺 癌 の 検 討.日 胸 臨(1988) 47, 19-24. 12) 成 毛 韶 夫:早 期 肺 癌 の 臨 床 と そ の 手 術 成 績.治 療(1985) 67, 1043-1046. 13) 於 保 健 吉,斉 藤 雄 二,永 井 完 治:早 期 肺 癌.手 術(1981) 35, 625-633.