高血圧自然発症ラットにおける
カムカム投与が高血圧を抑制する
生理学的メカニズムの研究
2014 年
目 次 第 1 章 研 究 の 背 景 と 目 的 1 .生 活 習 慣 病 に お け る 高 血 圧 性 疾 患 の 現 状 ・・ ・・・ ・・ ・・ 2 2 . 高 血 圧 予 防 対 策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 3 . 国 際 農 業 開 発 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 4 . 日 米 コ モ ン ア ジ ェ ン ダ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 5 . ペ ル ー の 国 土 と カ ム カ ム ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 6 .ペ ル ー に お け る 貧 困・社 会・麻 薬 問 題 及 び 自 然 保 護 対 策・・10 7 .研 究 に お い て カ ム カ ム を 対 象 と し た 理 由・・・・・・・・・ 12 8 .本 研 究 の 目 的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 第 2 章 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト に お け る 内 皮 型 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 ( eNOS)タ ン パ ク 質 お よ び ア ン ジ オ テ ン シ ン Ⅱ タ イ プ 1( AT1) 受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 に 及 ぼ す カ ム カ ム( Myrciaria dubia) 果 皮 抽 出 液 の 影 響 1 .緒 言 ・ ・・・ ・ ・・・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・・ ・・・ ・・ ・・ 17 2 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 19
3 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 23 4 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 26 5 . 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 29 6 . 表 図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 31 第 3 章 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト に お け る 内 皮 型 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 ( eNOS ) タ ン パ ク 質 お よ び ア ン ジ オ テ ン シ ン Ⅱ タ イ プ 1 ( AT1) 受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 に 及 ぼ す カ ム カ ム ( Myrciaria dubia) 果 汁 の 影 響 . 1 . 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 36 2 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 38 3 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43 4 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 45 5 . 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49 6 . 図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 51 第 4 章 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト に お け る カ ム カ ム 果 汁 投 与 に よ る 血 圧 抑 制 に 内 皮 型 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 が 与 え る 影 響
1 . 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 59 2 .実 験 方 法 ・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ 62 3 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ 69 4 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 73 5 . 要 約 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78 6 . 表 図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ 80 第 5 章 総 括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 謝 辞 ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・ 92 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 93 英 文 抄 録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106
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2 1 . 生 活 習 慣 病 に お け る 高 血 圧 性 疾 患 の 現 状 厚 生 労 働 省 に よ る と , 生 活 習 慣 病 は , 「 食 習 慣 , 運 動 習 慣 , 休 養 , 喫 煙 , 飲 酒 等 の 生 活 習 慣 が , そ の 発 症・進 行 に 関 与 す る 疾 患 群 」 と 定 義 さ れ る 。 現 在 , 悪 性 新 生 物 , 心 臓 , 脳 血 管 疾 患 を 合 わ せ る と 死 因 の 約 6 割 を 占 め る な か , 2011 年 患 者 調 査 の 概 況 1)に お い て , 悪 性 新 生 物 , 脳 血 管 疾 患 , 虚 血 性 心 疾 患 , 糖 尿 病 , 高 血 圧 性 疾 患 と い う 生 活 習 慣 病 の 総 患 者 数 は , 高 血 圧 性 疾 患 907 万 人 , 糖 尿 病 270 万 人 で あ り , 悪 性 新 生 物 , 脳 血 管 疾 患 , 虚 血 性 心 疾 患 を 合 計 す る と 約 1800 万 人 に 達 し , 高 血 圧 性 疾 患 は ,約 50%を 占 め て い る 。 ま た ,2011 年 度 の 国 民 医 療 費 の 概 況 2 )は , 悪 性 新 生 物 3.6 兆 円 , 高 血 圧 性 疾 患 1.9 兆 円 , 脳 血 管 疾 患 1.8 兆 円 で あ り , 糖 尿 病 , 虚 血 性 心 疾 患 を 合 わ せ て 合 計 10 兆 900 億 円 に 上 り ,高 血 圧 性 疾 患 は ,約 20%を 占 め て い る 。さ ら に 2010 年 国 民 健 康・栄 養 調 査 結 果 3 )に よ る と 高 血 圧 と い わ れ た こ と が あ る 者 の 割 合 は 男 性 37.2%,女 性 31.3%で あ り ,2000 年 の 同 調 査 に 比 べ て 男 女 と も 増 加 し て い る 。 2 . 高 血 圧 予 防 対 策 こ れ ま で ,高 血 圧 の 予 防 お よ び 改 善 対 策 と し て ,食 生 活 の 改 善 ,血
3 圧 を 調 整 す る 栄 養 素 の 摂 取 ,適 度 な 運 動 と 生 活 習 慣 の 改 善 ,高 血 圧 治 療 薬 な ど が あ げ ら れ て き た 。本 項 で は ,と く に 栄 養 関 連 項 目 に 対 す る 予 防 対 策 に つ い て の み に 言 及 す る 。 ( 1 ) 保 健 機 能 食 品 の 開 発 食 品 衛 生 法・健 康 増 進 法 等 に 基 づ き ,食 品 安 全 行 政 で は ,厚 生 労 働 省 ,薬 事・食 品 衛 生 審 議 会 ,保 健 所 ,検 疫 所 な ど ,さ ま ざ ま な 機 関 の 連 携 に よ る 対 策 が 行 わ れ て い る 。 現 在 , 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品 お よ び ア レ ル ギ ー 物 質 を 含 む 食 品 の 表 示 が 義 務 づ け ら れ て い る が , 消 費 者 の 健 康 志 向 の 高 ま り に よ り ,「 健 康 食 品 」の 有 効 性 や 安 全 性 に か か わ る 対 策 も 重 要 と な っ て い る 。 さ ら に , 国 民 の 健 康 に 対 す る 関 心 が 高 ま り , 食 品 に 求 め ら れ る 機 能 も 複 雑 か つ 多 様 化 す る な か , 消 費 者 に 対 し て 適 切 に 情 報 が 提 供 さ れ る こ と を 目 的 と し て , い わ ゆ る 健 康 食 品 の う ち , 一 定 の 条 件 を 満 た す も の を 保 健 機 能 食 品 (特 定 保 健 用 食 品 お よ び 栄 養 機 能 食 品 ) と 位 置 づ け ,こ れ に つ い て 健 康 の 維 持・増 進 に 役 立 つ 表 示 を 可 能 と す る 制 度 が 2001 年 4 月 よ り 施 行 さ れ て い る 4 )。 ( 2 ) 特 定 保 健 用 食 品 の 市 場 の 現 状 1993 年 に 特 定 保 健 用 食 品 表 示 許 可 第 1 号 の 商 品 が 誕 生 し , 2011
4 年 12 月 末 現 在 , 特 定 保 健 用 食 品 と し て 表 示 許 可 ・ 承 認 さ れ た 食 品 は 983 品 目 と な っ て お り ,「 血 圧 が 高 め の 方 に 適 す る 」 表 示 を し た 食 品 は , 119 品 目 で 全 体 の 12%と な っ て い る 。 市 場 規 模 は ,1997 年 度 以 来 ,2007 年 度 ま で 上 昇 し 続 け て き た が , 2009 年 度 で は 初 め て 減 少 し た 。 2011 年 度 は 5175 億 円 ( メ ー カ ー 希 望 小 売 価 格 ベ ー ス )と 推 定 さ れ ,2009 年 度 の 市 場 規 模 5494 億 円 に 比 し 94.2% と な り ,若 干 減 少 し た が ,「 血 圧 が 高 め の 方 に 適 す る 」 表 示 を し た 食 品 は , 2011 年 度 は 245 億 円 で 2009 年 度 に 比 べ 118% で あ り , 増 加 し て い る 5 )。 ( 3 )特 定 保 健 用 食 品 の「 血 圧 が 高 め の 方 に 適 す る 」旨 の 表 示 の 関 与 成 分 と 作 用 機 序 特 定 保 健 用 食 品 の 「 血 圧 が 高 め の 方 に 適 す る 」 旨 の 表 示 の 関 与 成 分 と 作 用 機 序 は , ペ プ チ ド 系 に つ い て は , ACE 阻 害 作 用 , フ ラ ボ ノ イ ド( ポ リ フ ェ ノ ー ル )系 に つ い て は ,血 管 内 皮 依 存 性 の 血 管 弛 緩 作 用 ,γ- ア ミ ノ 酪 酸 に つ い て は ,血 管 収 縮 を 緩 和 す る 交 感 神 経 抑 制 作 用 , 杜 仲 葉 配 糖 体→血 管 平 滑 筋 を 弛 緩 す る 副 交 感 神 経 系 亢 進 作 用 , 酢 酸 に つ い て は , ア ル ギ ニ ン バ ソ プ レ ッ シ ン に よ る 血 管 収 縮 の 抑 制 作 用 が 許 可 さ れ お り , い ず れ も 血 管 平 滑 筋 の 収 縮 と
5 弛 緩 作 用 に 関 与 す る も の で 食 品 に 含 ま れ て い る 成 分 で あ る 6 )。 ( 4 ) 栄 養 と 高 血 圧 予 防 お よ び 改 善 効 果 高 血 圧 の 発 症 に は さ ま ざ ま な 要 因 が あ げ ら れ て い る が , そ の な か で も 習 慣 的 な 栄 養・食 生 活 の 偏 り は 大 き な リ ス ク と な る 。近 年 , 野 菜 , 果 物 , 低 脂 肪 乳 製 品 な ど を 中 心 と し た 特 定 の 栄 養 素 や そ の 比 率 に こ だ わ ら ず , 食 品 の 組 み 合 わ せ を 改 善 す る こ と で 血 圧 コ ン ト ロ ー ル を す る DASH (Dietary Approaches to Stop Hypertension) が
高 血 圧 治 療 と し て 提 唱 さ れ て い る 7 )。 ま た , ビ タ ミ ン B 6, ビ タ ミ ン C, ビ タ ミ ン E お よ び 脂 肪 酸 な ど 豊 富 に 含 む 食 品 の 栄 養 素 は , イ ン ス リ ン 抵 抗 性 の 維 持 , 血 圧 の 正 常 化 , 腎 血 管 損 傷 の 改 善 な ど に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 報 告 さ れ て い る 8 )。従 っ て , 「 食 事 か ら の 予 防 」 と い う 観 点 か ら 検 証 を す る こ と で 高 血 圧 に 対 す る 効 果 的 な 食 材 を は じ め , 栄 養 成 分 や 食 事 性 の 効 果 な ど が 期 待 さ れ る と 考 え ら れ る 。 な か で も , 水 溶 性 で 強 力 な 抗 酸 化 作 用 を も つ ビ タ ミ ン C は , 体 の 組 織 細 胞 ,歯 ぐ き ,血 管 ,骨 ,歯 の 成 長 お よ び 修 復 に 重 要 な 物 質 で あ る コ ラ ー ゲ ン の 形 成 に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 報 告 さ れ て い る 9 )。 ビ タ ミ ン C は , 柑 橘 類 , ベ リ ー 類 , 緑 色 葉 野 菜 , ト マ ト ,
6 ピ ー マ ン な ど に 多 く 含 ま れ て お り ,コ ラ ー ゲ ン の 生 成 を 助 け る こ と か ら サ プ リ メ ン ト だ け で な く ,化 粧 水 や 美 容 液 な ど に も 使 用 さ れ て い る 。 一 方 で , ビ タ ミ ン C の 欠 乏 は , コ ラ ー ゲ ン の 同 化 が 進 行 せ ず ,歯 の ぐ ら つ き・血 管 の 脆 弱 化・皮 膚 か ら の 出 血・怪 我 の 回 復 や 免 疫 機 能 の 低 下 , 貧 血 な ど , 壊 血 病 の 諸 症 状 を 呈 す る よ う に な る 。 他 方 , ビ タ ミ ン C は 強 い 抗 酸 化 作 用 を 持 つ こ と か ら , 糖 尿 病 改 善 1 0 ), 冠 動 脈 疾 患 予 防 11 ), 酸 化 ス ト レ ス 抑 制 1 2 )な ど の 作 用 が あ る こ と も 報 告 さ れ て い る 。 先 行 研 究 に よ れ ば ,食 事 か ら 摂 取 す る ビ タ ミ ン C 補 充 は , 高 血 圧 モ デ ル ラ ッ ト の 血 圧 を 顕 著 に 抑 制 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 3 )。。 本 態 性 高 血 圧 疾 患 者 に 対 す る ビ タ ミ ン C の 摂 取 は , 内 皮 機 能 障 害 を 改 善 さ せ る 働 き が あ る こ と も 報 告 さ れ て い る 1 4)。 ま た ,植 物 に 多 く 含 ま れ る 色 素 や 苦 味 の 成 分 で あ る ポ リ フ ェ ノ ー ル は , ほ と ん ど が 植 物 に 存 在 し , 淡 色 ・ 無 色 の 「 フ ラ ボ ノ イ ド 類 」 と , そ れ 以 外 の 「 ノ ン フ ラ ボ ノ イ ド 類 」 に 大 き く 分 け ら れ る 。 そ の 種 類 は カ テ キ ン ,ア ン ト シ ア ニ ン ,イ ソ フ ラ ボ ン ,フ ラ ボ ノ ー ル な ど 300 種 類 以 上 と い わ れ て い る 。リ ン ゴ , ブ ル ー ベ ル ー ,ナ ッ ツ 類 , お 茶 , ワ イ ン , チ ョ コ レ ー ト な ど に も ポ リ フ ェ ノ ー ル が 豊 富
7 に 含 ま れ て お り ,活 性 酸 素 を 除 去 す る 抗 酸 化 効 果 が 強 い と 知 ら れ て い る 1 5 )。 ま た , 野 菜 や 果 物 な ど に も 含 ま れ て い る ポ リ フ ェ ノ ー ル に は ,動 脈 硬 化 予 防 1 6 ),糖 尿 病 改 善 1 7 ),が ん 予 防 1 8 )な ど の 作 用 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。ま た ,高 血 圧 モ デ ル ラ ッ ト を 用 い た 研 究 に よ り 赤 ワ イ ン に 由 来 す る ポ リ フ ェ ノ ー ル に は 血 圧 抑 制 作 用 が 認 め ら れ ,大 動 脈 の 内 皮 機 能 障 害 が 改 善 さ せ る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 9 )。さ ら に ,同 じ よ う に 高 血 圧 モ デ ル ラ ッ ト に よ り ,お 茶 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル に は イ ン ス リ ン 耐 性 の 改 善 ,血 圧 の 抑 制 お よ び 内 皮 機 能 障 害 の 改 善 作 用 の あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 0 ) 。 3 . 国 際 農 業 開 発 世 界 人 口 の 5 分 の 4 を 占 め る 開 発 途 上 国 の 多 く は , 熱 帯 地 域 に 位 置 し , 農 業 を 基 幹 産 業 と し て い る 2 1 )。 こ れ ら の 諸 国 の 農 業 を 通 じ て 開 発 と 発 展 に 寄 与 す る こ と は 国 際 農 業 開 発 に お い て 重 要 性 が 高 い 。 こ れ ら の 国 々 は , 豊 か な 国 づ く り の た め に 賢 明 に 努 力 を 重 ね て い る が ,そ の 多 く は ,依 然 と し て 食 料 不 足 や 貧 困 の 問 題 を 抱 え て お り ,先 進 国 と の 格 差 は 拡 大 す る 方 向 で あ る 。 農 業 ・ 農 村 の 振 興 に よ る 開 発 は ,主 要 な 課 題 と 考 え ら れ る が ,一 方 ,無 秩 序 な 開 発 が ,森 林 の 喪 失 ,
8 耕 地 の 荒 廃 , 砂 漠 化 の 進 行 な ど を 引 き 起 こ し , 深 刻 な 問 題 と な っ て い る 。ま た ,こ の よ う な 現 状 は ,地 球 規 模 の 環 境 破 壊 の 原 因 と し て , 国 際 的 に も 広 く 関 心 を 集 め て い る 。 開 発 途 上 国 支 援 に お い て は , 人 口 , 環 境 , 食 料 問 題 な ど と 地 球 規 模 の 課 題 へ の 取 り 組 み の 重 要 性 が 増 し て い る 。 4 . 日 米 コ モ ン ア ジ ェ ン ダ 1993 年 よ り 日 米 間 に お い て 日 米 包 括 経 済 協 議 の 重 要 な 柱 の 一 つ と し て 「 地 球 的 展 望 に 立 っ た 協 力 の た め の 共 通 課 題 ( コ モ ン ア ジ ェ ン ダ )」を 推 進 し て き て い る 。コ モ ン ア ジ ェ ン ダ は ,環 境 ・ 人 口 ・ エ イ ズ・WID( 途 上 国 の 女 性 支 援 )な ど 一 国 の み が 個 別 に 取 り 組 む の で は 有 効 な 効 果 を 上 げ る こ と が 出 来 ず , 地 球 的 な 規 模 で の 対 応 が 必 要 と さ れ る 種 々 の 問 題 を 日 米 両 国 の 共 通 課 題 と し て 捉 え , 日 米 両 国 が 積 極 的 に リ ー ダ ー シ ッ プ を 発 揮 し て い く こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。米 国 で は ,ペ ル ー 国 に お い て 麻 薬 代 替 作 物 の 開 発 ,栽 培 促 進 を 重 点 課 題 の ひ と つ と し て 実 施 中 で あ る 。 日 本 と し て は , 麻 薬 代 替 作 物 開 発 支 援 に 関 す る 技 術 協 力 に つ い て , 治 安 に 対 す る 慎 重 な 配 慮 が 必 要 で あ る も の の ,例 え ば ,カ ム カ ム( 熱 帯 果 実 の 一 種 )の 栽 培 や 稲 作
9 の 振 興 , 麻 薬 使 用 予 防 の た め の 啓 蒙 活 動 , な ど に お け る 協 調 な ど に つ い て , 日 ・ 米 ・ ペ ル ー 間 で 検 討 を し て い る 2 2 )。 5 . ペ ル ー の 国 土 と カ ム カ ム ペ ル ー は 南 米 大 陸 の 太 平 洋 岸 の 中 部 に 位 置 し , 熱 帯 か ら 亜 熱 帯 に 属 す る 地 帯 で あ る 。太 平 洋 岸 を 流 れ る 寒 流 ,フ ン ボ ル ト 海 流 と ,ア ン デ ス 山 脈 の 標 高 差 な ど に よ り , と て も 多 く の 気 象 区 分 に 分 か れ て い る 。 そ の 多 く の 気 象 区 分 を 地 理 的 条 件 に よ り 大 き く 三 つ の 異 な っ た 地 帯 に 分 け ら れ ,ほ と ん ど 雨 の 降 ら な い 砂 漠 の 海 岸 地 帯 ,ア ン デ ス 山 脈 の 連 な っ て い る 山 岳 地 帯 ,熱 帯 雨 林 気 候 の ア マ ゾ ン 地 帯 で あ り ,国 土 面 積 の 約 59%は ア マ ゾ ン 地 帯 で あ る 2 2 )。 カ ム カ ム は , こ の ア マ ゾ ン 河 流 域 原 産 の フ ト モ モ 科 に 属 す る 植 物 で , 灌 木 種 ( 背 の 低 い 木 ), 樹 木 種 ( 背 の 高 い 木 ) に な る も の な ど 何 種 類 か あ り ,中 で も ,ビ タ ミ ン C が 最 も 多 く 含 ま れ て い る 灌 木 種 の , Myrciaria dubia と い う 品 種 が あ る 。こ の 品 種 は ,自 然 の 状 態 で は ,ア マ ゾ ン 河 流 域 の 流 れ の 緩 や か な 水 辺 の み に 自 生 し て い る 。 雨 季 と 乾 季 の 水 位 差 は 10m 前 後 あ り , 雨 期 に な る と 3 ヶ 月 か ら 5 ヶ 月 の 間 は 水 没 し て し ま い ,そ の 後 ,水 位 が 下 が り 水 の 中 か ら 出 て く る と 芽 が 出
10 て 葉 が 茂 り ,花 が 咲 き ,実 が な る 。と く に 新 し い 枝 に 多 く の 実 が な る 習 性 が あ り ,現 地 で は 昔 か ら ジ ュ ー ス に し て 飲 ま れ て い て ,肌 荒 れ 防 止 ,風 邪 の 予 防 や 便 秘 ,肥 満 ,糖 尿 病 ,高 血 圧 の 改 善 な ど に 良 い と 言 わ れ て い る 2 3 )。 6 . ペ ル ー に お け る 貧 困 ・ 社 会 ・ 麻 薬 問 題 お よ び 自 然 保 護 対 策 ペ ル ー の 近 現 代 史 は , 政 治 と 経 済 の 不 安 定 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る 。 民 主 的 な 手 続 き を 経 て 選 ば れ た 政 権 は 軍 事 評 議 会 に 取 っ て 代 わ ら れ ,そ の 後 ,民 主 政 権 に 引 き 継 が れ る も の の ,再 び 軍 事 政 権 が 誕 生 す る と い う 歴 史 が 繰 り 返 さ れ て き た 。 政 治 経 済 の 不 安 定 が 続 く 中 で , 疲 弊 し き っ た 農 村 部 か ら 都 市 部 へ の 急 速 な 人 口 流 入 , 政 府 の 統 治 能 力 の 急 激 な 低 下 と 並 行 し た ゲ リ ラ 活 動 と テ ロ 活 動 の 拡 大 ,都 市 周 辺 部 と 旧 市 街 地 の ス ラ ム 化 ,全 般 的 な 治 安 の 悪 化 が 進 行 し て い っ た 。 テ ロ 活 動 は 経 済 の 破 綻 と 統 治 能 力 の 急 低 下 に 比 例 し て 激 し さ を 増 し て い っ た 。ま た ,コ カ 栽 培 は ,テ ロ 活 動 の 資 金 源 と な る 。こ の 間 ,国 民 の 福 祉 水 準 は 1970 年 代 半 ば を ピ ー ク と し て ,そ れ 以 降 悪 化 の 一 途 を た ど っ た 。農 村 部 を 中 心 に 活 発 化 し た テ ロ 活 動 が 治 安 の 悪 化 を も た ら し , 一 般 的 な 経 済 の 悪 化 と 歴 史 的
11 に 受 け 継 が れ て き た 農 村 部 の 貧 困 は 都 市 へ の 人 口 流 入 を 加 速 さ せ , 社 会 の 不 安 定 性 を 高 め て き た 2 2 )。 貧 困 対 策 と し て ,カ ム カ ム の 栽 培 を 促 進 す る こ と で ,農 作 物 を 植 え て も ほ と ん ど 現 金 収 入 の な い ア マ ゾ ン 地 域 で 収 入 増 大 を 支 援 す る こ と に よ っ て 現 地 の 人 た ち の 生 活 水 準 の 向 上 を 図 る こ と が で き る 。 社 会 問 題 対 策 と し て , 貧 困 層 の た め に 活 動 し て い た グ ル ー プ が 過 激 化 し ,テ ロ リ ス ト に な っ て し ま う ケ ー ス に 対 し ,カ ム カ ム の 栽 培 に よ っ て 生 活 水 準 向 上 が で き る と う っ た え る と と も に , 間 違 っ た 方 向 に 走 っ て し ま っ た グ ル ー プ に も 理 解 さ せ 武 器 を お い て 一 緒 に 働 け る よ う 栽 培 指 導 を お こ な っ て い く こ と が で き る 。 麻 薬 問 題 対 策 と し て , コ カ イ ン の 原 料 に な る コ カ の 主 な 産 地 の ペ ル ー の 農 民 達 は , 他 に 現 金 収 入 を 得 る こ と が で き る 作 物 が な か っ た た め に ,収 入 を 得 や す い コ カ を 栽 培 し て い た 。農 民 達 は コ カ の 代 わ り に 収 入 を 得 る 作 物 が あ れ ば , そ れ を 栽 培 す る こ と を 望 ん で い る こ と か ら ,コ カ の 代 わ り に カ ム カ ム の 栽 培 を 奨 励 し ,コ カ の 栽 培 面 積 を 減 少 す る こ と を 目 標 と す る こ と が で き る 。 自 然 保 護 対 策 と し て , ア マ ゾ ン 森 林 地 域 で は 年 々 乱 伐 が 進 ん で お り ,自 然 保 護 が 急 務 と さ れ ,カ ム カ ム の 木 は ,季 節 に よ っ て は 水 没 し
12 て い ま い 他 の 植 物 を 植 え る こ と の で き な い 地 域 で も 栽 培 が 可 能 で , こ の カ ム カ ム を 植 林 し 森 林 面 積 を 増 や す こ と に よ っ て 自 然 保 護 と 地 球 環 境 の 改 善 を 進 め る こ と が で き る 2 3 )。 こ の よ う に ,ペ ル ー の 貧 し い 農 家 の 生 活 向 上 支 援 ,カ ム カ ム の 安 定 供 給 と CO2 削 減 , ま た , カ ム カ ム の 栽 培 は コ カ の 代 替 え 作 物 と し て 成 功 す れ ば 麻 薬 の 撲 滅 に つ な が る こ と か ら , 国 際 貢 献 度 の 高 い も の と 考 え ら れ る 。 7 . 本 研 究 に お い て カ ム カ ム を 対 象 と し た 理 由 本 研 究 の 対 象 と な る 南 米 ペ ル ー ・ ア マ ゾ ン 河 支 流 に 自 生 す る カ ム カ ム (Myrciaria dubia) に は , 果 実 中 に ビ タ ミ ン C, ビ タ ミ ン B1, ビ タ ミ ン B2, ク エ ン 酸 な ど が 豊 富 に 含 ま れ て い る が , 近 年 , 果 皮 中 に 高 血 圧 を 抑 制 す る と さ れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 を 多 く 含 む こ と が 報 告 さ れ て お り , 高 血 圧 に 対 し て 抑 制 作 用 の あ る こ と が す で に 報 告 さ れ て い る 2 4 )。 つ ま り , カ ム カ ム は , 果 汁 の み で な く 果 皮 に も 高 血 圧 に 対 し て 抑 制 作 用 が あ る こ と が 明 ら か で あ る 。 果 皮 中 に 高 血 圧 を 抑 制 す る と さ れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 を 多 く 含 む こ と が 報 告 さ れ て お り , 血 圧 上 昇 の 抑 制 メ カ ニ ズ ム に つ い て よ り 詳 細 な 検 討 が 行 わ れ て き た 。
13 樫 村 ら 2 5 )は , SHR を 用 い , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ り , 摘 出 胸 部 大 動 脈 に お い て , ノ ル エ ピ ネ フ リ ン お よ び フ ェ ニ レ フ リ ン に 対 す る 収 縮 反 応 は ,非 投 与 ラ ッ ト と 比 較 し て 顕 著 に 抑 制 さ れ ,さ ら に ア セ チ ル コ リ ン に 対 す る 弛 緩 反 応 で は , 非 投 与 ラ ッ ト に 比 較 し 顕 著 に 促 進 す る こ と を 報 告 し た 。 ま た ,現 在 は ,カ ム カ ム 果 汁 の み が 商 品 化 さ れ て い る が ,カ ム カ ム は , そ の 果 汁 製 品 パ ル ブ 1 ト ン に 生 果 実 2 ト ン が 必 要 と さ れ て い る こ と か ら , 高 血 圧 抑 制 作 用 が 認 め ら れ て い る 果 皮 な ど の 残 渣 の 有 効 利 用 法 を 検 討 す る こ と に よ り , よ り 効 率 良 い 経 済 効 果 と 環 境 保 護 が 期 待 さ れ る 。 し か し , カ ム カ ム 果 汁 お よ び 果 皮 に お い て 高 血 圧 抑 制 作 用 が あ る こ と は 報 告 さ れ て い る が , そ の 生 理 学 的 メ カ ニ ズ ム が 詳 細 に 検 討 さ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。 8 . 本 研 究 の 目 的 本 研 究 で は ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト( SHR) に 投 与 し た 場 合 の 変 化 に つ い て , 血 圧 に 対 す る 作 用 を 観 察 す る と と も に ,血 管 平 滑 筋 の 弛 緩 作 用 に 関 与 す る ,一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素( NOS)
14 お よ び 同 収 縮 作 用 に 関 与 す る ,ア ン ジ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素( ACE)が 与 え る 影 響 を ,大 動 脈 の NOS 活 性 ,大 動 脈 の 内 皮 型 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 (eNOS)タ ン パ ク 質 発 現 , ACE 活 性 , お よ び 大 動 脈 ア ン ジ オ テ ン シ ン Ⅱ タ イ プ 1( AT1) 受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 の 両 面 か ら 検 討 し た 。 次 に ,株 式 会 社 メ ル カ ー ド 東 京 農 大 に て ,ア マ ゾ ン の 果 実・カ ム カ ム で 作 ら れ た 甘 酸 っ ぱ い ジ ュ ー ス と し て 商 品 開 発 し て い る 果 汁 に つ い て は ,高 血 圧 抑 制 作 用 に 関 す る 検 討 は ほ と ん ど さ れ て い な い 。こ の た め , 市 販 さ れ て い る カ ム カ ム 果 汁 を SHR に 投 与 し た 場 合 の 変 化 に つ い て ,血 圧 に 対 す る 作 用 を 観 察 す る と と も に ,前 述 と 同 様 の 観 点 か ら 検 討 し た 。 こ の こ と か ら , カ ム カ ム 果 皮 に 豊 富 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 や ビ タ ミ ン C が , SHR の 血 管 内 皮 細 胞 の 損 傷 を 修 復 し , 血 管 弛 緩 物 質 で あ る 一 酸 化 窒 素 の 放 出 を 促 進 さ せ る 可 能 性 が あ る と 推 察 さ れ た 。 す な わ ち , 交 感 神 経 伝 達 物 質 に よ る 血 管 収 縮 反 応 お よ び 交 感 神 経 系 を 介 さ な い 血 管 弛 緩 物 質 の 発 現 の 機 序 が 観 察 さ れ た 。そ こ で ,市 販 さ れ て い る カ ム カ ム 果 汁 100%を SHR に 投 与 し , 血 圧 の 上 昇 抑 制 に 対 す る 交 感 神 経 系 活 性 収 縮 物 質 ,内 皮 細 胞 由 来 弛 緩 物 質 ,レ ニ ン・ア ン ジ オ テ ン シ ン 系 収 縮 物 質 お よ び 平 滑 筋 由 来 弛 緩 物 質 の 各 関 与 に つ い
15 て , カ テ ー テ ル 挿 入 に よ る 覚 醒 状 態 で の 体 血 圧 測 定 お よ び 摘 出 大 動 脈 に よ る 張 力 測 定 に よ り , そ の 血 管 反 応 の 変 化 を 検 討 し た 。 こ れ ら の 実 験 結 果 を も と に , カ ム カ ム に 関 す る 機 能 と 作 用 機 序 を 明 ら か に す る こ と で ,科 学 的 根 拠 か ら 付 加 価 値 を 促 進 し ,食 品 と し て の イ ン セ ン テ ィ ブ を 高 め , ぺ ル ー に お け る 国 際 農 業 開 発 の 貢 献 に 対 す る 湿 潤 熱 帯 地 域 で の 貧 農 民 救 済 や 農 業 振 興 に 対 し 寄 与 で き る も の と 考 え , 研 究 目 的 と し た 。
16
第 2 章 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト に お け る 内 皮 型 一 酸 化
窒 素 合 成 酵 素( eNOS)タンパ ク質およびア ンジオテン
シ ン Ⅱ タ イ プ 1(AT
1)受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 に 及 ぼ
17 1 . 緒 言 血 管 内 皮 機 能 障 害 は , 高 血 圧 , 動 脈 硬 化 , 糖 尿 病 , 脂 質 異 常 症 な ど 様 々 な 要 因 か ら 引 き 起 こ さ れ る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 6 ) , 2 7)。な か で も , 高 血 圧 は 脳 卒 中 の 最 も 危 険 な 因 子 と さ れ , 臓 器 障 害 や 心 血 管 性 疾 患 の 合 併 に も 深 く 関 与 す る と 指 摘 さ れ て い る 2 8)。 高 血 圧 の 発 症 お よ び 悪 化 に 関 与 す る 主 な 機 序 は , 血 管 収 縮 因 子 で あ る ア ン ジ オ テ ン シ ン ( Angiotensin,AT)Ⅱ ,エ ン ド セ リ ン -1,ト ロ ン ボ キ サ ン ,セ ロ ト ニ ン な ど の 増 加 や , 血 管 弛 緩 因 子 で あ る 一 酸 化 窒 素 (NO), ブ ラ ジ キ ニ ン , プ ロ ス タ サ イ ク リ ン な ど の 減 少 が 関 与 す る と 考 え ら れ て い る 2 9)。 血 圧 の 調 節 に 関 与 す る NO は , L-ア ル ギ ニ ン を 基 質 と し て NO 合 成 酵 素 (NOS) に よ り 生 成 さ れ ,な か で も 動 脈 に お い て ,内 皮 型 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 ( eNOS) に よ り 産 生 さ れ た NO は , 血 圧 調 整 や 内 皮 機 能 障 害 な ど の 心 血 管 性 の 恒 常 性 維 持 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 3 0 ) , 3 1)。ま た ,血 管 平 滑 筋 に お い て は ,サ イ ク リ ッ ク GMP の 増 大 を 通 じ て 血 管 を 弛 緩 さ せ る こ と 3 2)や , eNOS 活 性 の 低 下 に よ る NO 産 生 の 減 少 が 血 圧 上 昇 に 関 与 す る こ と も 報 告 さ れ て い る 2 6)。 同 様 に レ ニ ン -ア ン ジ オ テ ン シ ン 系 に お い て ,ア ン ジ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素 (ACE) 活 性 上 昇 は , 強 力 な 血 管 収 縮 作 用 で あ る ATⅡ を 増 や す 結
18 果 と な り 3 3),高 血 圧 の 発 症 お よ び 悪 化 に 関 わ る 要 因 と な る 。そ の ATⅡ に は , ATⅡ タ イ プ 1( AT 1)と タ イ プ 2( AT 2)の 2 種 類 の 受 容 体 が 存 在 す る 3 4)。 特 に AT 1受 容 体 は ,血 管 平 滑 筋 ,肺 ,肝 臓 ,腎 臓 な ど に 分 布 し , 血 管 の 収 縮 , 血 管 壁 肥 厚 , 心 筋 肥 大 に 関 与 し て い る 3 5)。 南 米 ペ ル ー ・ ア マ ゾ ン 川 支 流 に 自 生 す る カ ム カ ム ( Myrciaria dubia) は ,果 実 中 に ビ タ ミ ン C,ビ タ ミ ン B1,ビ タ ミ ン B2,ク エ ン 酸 等 が 豊 富 に 含 ま れ て い る 植 物 で あ る 。 近 年 , カ ム カ ム 果 皮 中 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 が 血 圧 上 昇 抑 制 作 用 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 4 )。 さ ら に , 樫 村 ら は , 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト (SHR)の 摘 出 胸 部 大 動 脈 を 用 い て , ノ ル ア ド レ ナ リ ン お よ び フ ェ ニ レ フ リ ン に 対 す る 収 縮 反 応 を 検 討 し , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ り 収 縮 反 応 が 有 意 に 抑 制 さ れ る こ と を 報 告 し た 2 5)。 ま た , ア セ チ ル コ リ ン に 対 す る 弛 緩 反 応 は , 有 意 に 増 大 し た こ と か ら , カ ム カ ム 果 皮 に 豊 富 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 が ,SHR の 血 管 内 皮 細 胞 の 損 傷 を 修 復 し ,血 管 弛 緩 物 質 で あ る NO の 放 出 を 促 進 さ せ る 可 能 性 が あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 2 4)。 そ こ で ,SHR に カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 し た 場 合 の 変 化 に つ い て , 血 圧 に 対 す る 作 用 を 観 察 す る と と も に ,NOS お よ び ACE が 与 え る 影 響 を , 大 動 脈 の NOS 活 性 , 大 動 脈 eNOS タ ン パ ク 質 発 現 , 血 清 ACE 活
19 性 , お よ び 大 動 脈 AT 1受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 の 面 か ら 検 討 し た 。 2 . 方 法 ( 1 ) 実 験 動 物 お よ び 飼 育 条 件 本 態 性 高 血 圧 の 疾 患 モ デ ル 動 物 で あ る 5 週 齢 の 雄 性 SHR ( SHR/NCri, 日 本 チ ャ ー ル ズ ・ リ バ ー 社 ) と , そ の 対 照 と し て 5 週 齢 の 雄 性 正 常 血 圧 ラ ッ ト で あ る Wistar Kyoto rat (WKY/NCrj, 日 本 チ ャ ー ル ズ ・ リ バ ー 社 )を 用 い た 。ア マ ゾ ン ジ ャ パ ン 株 式 会 社 の カ ム カ ム 果 実 を 果 汁 と 残 渣 に 分 け パ ル プ 化 し た 。 そ の カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 は ,テ フ ロ ン 製 経 口 ゾ ン デ (イ ナ リ サ ー チ )を 用 い て ,胃 内 に 1 日 1 回 0.25 mL(総 ポ リ フ ェ ノ ー ル 含 有 量 0.6 mg/kg 体 重 )を 樫 村 ら の 方 法 に 準 じ て 2 4)慎 重 に 投 与 し た 。な お ,こ の カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 調 製 は そ の 都 度 行 い , 樫 村 ら の 方 法 に 準 じ て 2 4), カ ム カ ム 果 皮 を 乾 燥 さ せ た 粉 末 10 g( 水 分 7.4 g/100g,タ ン パ ク 質 6.6 g/100g,脂 質 13.0 g/100g, 灰 分 2.2 g/100g, 炭 水 化 物 70.8 g/100g) を 100℃ の 熱 湯 250 mL で 10 分 間 煎 じ た 後 に ろ 過 し , 不 溶 物 を 除 い た (最 終 液 量 230 mL)。 ま た , 水 を 投 与 す る 群 に は , 水 道 水 を 同 様 に 投 与 し た 。 飼 育 期 間 を 先 行 研 究 よ り 2 4 ), 2 5) 5 週 間 に 設 定 し た 。1 週 間 の 予 備 飼 育 後 , SHR に カ ム カ
20 ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 す る 群 (以 下 SC 群 ,n=5)と 水 を 投 与 す る 群 (以 下 SW 群 ,n=5)に 分 け た 。ま た ,WKY は ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 す る 群 (以 下 WC 群 n=5)と 水 を 投 与 す る 群 (以 下 WW 群 , n=5)に 分 け た 。 飼 育 環 境 は ,小 動 物 飼 育 制 御 装 置( ク リ ー ン ラ ッ ク ,日 本 医 化 器 機 製 作 所( 株 ))を 用 い ,室 温 を 約 23℃ に 設 定 し た 。食 餌 は オ リ エ ン タ ル 酵 母( 株 )社 製 の MF を 用 い ,水 は 水 道 水 を 自 由 摂 取 さ せ た 。飼 育 室 の 照 明 は ,朝 8:00 か ら 夕 方 20:00 を 明 期 ,20:00 か ら 翌 朝 8:00 ま で を 暗 期 と し た 。 ( 2 ) 測 定 項 目 お よ び 分 析 方 法 体 重 測 定 は , デ ジ タ ル 計 量 計 (株 式 会 社 A&D 製 , NT-3000) を 用 い ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 前 お よ び 試 験 終 了 時 に 測 定 し た 。飼 育 開 始 か ら 1 週 間 の 間 に , 血 圧 測 定 に 慣 れ さ せ る た め に 毎 日 ハ ン ド リ ン グ し ,非 観 血 式 自 動 血 圧 測 定 装 置 (株 式 会 社 ソ フ ト ロ ン 製 ,BP-98A) を 用 い て 事 前 測 定( 2 回 )を 実 施 し た 。そ の 後 ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 開 始 前 日 か ら 投 与 5 週 目 ま で 血 圧 測 定 を 実 施 し た 。血 圧 測 定 は , ラ ッ ト 尾 動 脈 に カ フ セ ン サ ー を 装 着 し ,あ ら か じ め 20 分 間 ラ ッ ト を 固 定 器 (保 温 状 態 38℃ ) に 留 置 し , 尾 動 脈 血 流 を 確 認 後 , 収 縮 期 血
21 圧 , 拡 張 期 血 圧 お よ び 心 拍 数 を 5 回 測 定 し , 最 高 な ら び に 最 低 血 圧 を 除 い た 3 回 の 値 か ら 平 均 値 を 算 出 し た 。 測 定 時 刻 は , 明 期 の 午 前 中 8:00 か ら 12:00 の 間 で あ っ た 。 飼 育 終 了 時 に ,ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル 麻 酔 下 (50 mg/kg 体 重 ,腹 腔 内 ) で 胸 骨 正 中 切 開 に て 開 胸 し ,胸 部 大 動 脈 よ り 約 5 mL 採 血 し た 。血 液 は 冷 却 遠 心 器 (エ ッ ペ ン ド ル フ 社 ,5415R) を 用 い て 4℃ ,3000rpm で 10 分 間 遠 心 分 離 し , 得 ら れ た 血 清 は 直 ち に - 20℃ で 保 存 し た 。 採 血 後 ,胸 部 大 動 脈 を 摘 出 し , 4℃ の 生 理 食 塩 水 で 洗 浄 し た 後 ,組 織 を 直 ち に 液 体 窒 素 で 凍 結 さ せ ,- 80℃ で 保 存 し た 。凍 結 し た 胸 部 大 動 脈 は , 柏 木 ら の 方 法 に 準 じ て 3 6), ホ モ ジ ナ イ ゼ ー シ ョ ン バ ッ フ ァ ー
(Homogenization buffer,50 mM Tris -HCl, 1 mM EDTA, pH 7.4)を 加 え ホ
モ ジ ネ ー ト し た 後 , 上 述 の 冷 却 遠 心 器 を 用 い て 4℃ , 16,000 G で 15 分 間 遠 心 分 離 し , 上 清 を 抽 出 液 と し て -80℃ で 直 ち に 凍 結 保 存 し た 。
NOS 活 性 の 測 定 は , 市 販 の 分 析 キ ッ ト (BIO-RAD Laboratories
KK ,DC protein assay kit ) を 用 い て , 上 清 中 の タ ン パ ク 濃 度 を 均 一 に
し た 上 で , マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー ( 波 長 750 nm , BIO-RAD Laboratories KK, Model 680) を 用 い て ,NOS 活 性 測 定 キ ッ ト (フ ナ コ シ
22
ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ (Western blotting) 法 よ る 大 動 脈 eNOS
お よ び AT1 受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 の 分 析 は , 胸 部 大 動 脈 の 血 清 抽 出
液 を DC protein assay kit を 用 い て タ ン パ ク 質 量 を 測 定 後 , Denaturing buffer (100 mM Tris-HCl, 2% SDS, 20% ス ク ロ ー ス , 0.06% ブ ロ ム
フ ェ ノ ー ル ブ ル ー , 100 mM ジ チ オ ス レ イ ト ー ル ) を 抽 出 液 と 同 量 を 添 加 し 5 分 間 煮 沸 し た 。 SDS-PAGE は , 10% ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル (C10L, ATTO) お よ び Running buffer (25 mM Tris -HCl, 192 mM グ
リ シ ン , 0.1% SDS) を 用 い て 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 泳 動 後 , 直 ち に ゲ ル を PVDF 膜 (AE-6668, ATTO) に 転 写 し , TBS-T (25mM Tris-HCl,
150mM NaCl, Tween-20) に 非 タ ン パ ク 質 ブ ロ ッ キ ン グ 剤 (AE-1 470CP,
ATTO) を 加 え た 溶 液 に 浸 し , 60 分 間 ブ ロ ッ キ ン グ を 行 っ た 。 1 次 抗
体 に は , eNOS (eNOS/NOS typeⅢ , BD Biosciences)お よ び AT1受 容 体
(SC-1173, Santa Cruz)抗 体 を 用 い , TBS-T と 1:2500 の 割 合 で 調 製 し ,
常 温 に て 120 分 間 反 応 さ せ た 。反 応 後 ,2 次 抗 体 (HRP Goat Anti-Mouse lgs, BD Biosciences)を TBS-T と 1:1500 の 割 合 で 調 製 し , 常 温 に て 60
分 間 反 応 さ せ た 。そ の 後 ,化 学 発 光 試 薬 (ECL plus, Amersham)512.5μl
を 均 等 に 添 加 し , 高 感 度 冷 却 CCD カ メ ラ (Light-Capture AE-6971, ATTO)を 用 い て 撮 影 し ,発 光 輝 度 を 画 像 解 析 ソ フ ト (CS, Analyzer ver.
23 2.0, ATTO)に て 解 析 し た 。ま た ,求 め た 発 光 輝 度 か ら 解 析 し た タ ン パ ク 質 発 現 バ ン ド は , 水 道 水 投 与 群 で あ る WW 群 の 発 現 バ ン ド を そ れ ぞ れ 基 準 (平 均 を 1.0) と し て , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 群 投 与 群 の 発 現 バ ン ド の 比 率 を 求 め た( 以 下 ,発 現 率 )。凍 結 し た 血 清 を 室 温 で 溶 解 し た 後 , ACE カ ラ ー キ ッ ト (富 士 レ ビ オ )を 用 い て 血 清 ACE 活 性 を 分 析 し た 。吸 光 度 測 定 は ,分 光 光 度 計 (タ イ テ ッ ク )を 用 い て 波 長 505 nm で 行 っ た 。な お ,タ ン パ ク の 発 現 は ,AT-1R(43kDa),eNOS(140kDa)の プ ロ テ イ ン バ ン ド を 用 い て. 3 7 )確 認 し た 。 す べ て の デ ー タ は , 正 規 性 の 確 認 を し た 上 で , 平 均 値 ± 標 準 偏 差 ( S.D.) で 示 し た 。 各 群 間 ( SC, SW, WC,お よ び WW 群 ) に お け る 有 意 差 検 定 は , 一 元 配 置 分 散 分 析 で 解 析 し た 後 , Schéffe の 多 重 比 較 検 定 を 用 い て 行 っ た 。統 計 解 析 に は ,エ ク セ ル 統 計 解 析 ver2.0 ( 株 式 会 社 エ ス ミ )を 用 い た 。な お ,各 群 間 の 有 意 差 の 検 定 は ,す べ て 危 険 率 5% 水 準 で 示 し た 。こ の 実 験 は ,東 京 農 業 大 学 実 験 動 物 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 し た 。 3 . 結 果 ( 1 ) 体 重
24 Fig.1 は ,SC 群 ,SW 群 ,WC 群 お よ び WW 群 の 体 重 の 推 移 を 示 し た 。 SHR は , WKY に 比 較 し て 低 い 値 を 示 し た が , SC 群 と SW 群 お よ び WC 群 と WW 群 の 間 に は , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ る 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 2 ) 収 縮 期 血 圧 , 拡 張 期 血 圧 , 心 拍 数 Fig.2 は , 各 群 に お け る 投 与 5 週 間 ま で の 収 縮 期 血 圧 の 変 化 を 示 し た 。投 与 前 か ら 投 与 後 5 週 間 に お け る 収 縮 期 血 圧 に お い て ,SHR は , WKY に 比 較 し て SC 群 は 有 意 に 高 い 値 を 示 し た 。 一 方 , 投 与 5 週 目 に お け る 収 縮 期 血 圧 は , SW 群 に 比 較 し て SC 群 は , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ っ て 有 意 に 低 値 を 示 し た (p<0.05)が ,WC 群 と WW 群 の 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 Fig.3 は , 各 群 に お け る 投 与 5 週 間 ま で の 拡 張 期 血 圧 の 変 化 を 示 し た 。投 与 5 週 目 に お け る 拡 張 期 血 圧 は , SW 群 に 比 較 し て SC 群 は , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ っ て 有 意 に 低 値 を 示 し た (p<0.05) が ,同 じ 投 与 期 間 に お け る WC 群 と WW 群 の 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 Fig.4 は , 各 群 に お け る 投 与 5 週 間 ま で の 心 拍 数 の 変 化 を 示 し た 。 SHR は , WKY に 比 較 し て 心 拍 数 は 有 意 に 高 値 を 示 し た (p<0.05)。 SC 群 と SW 群 お よ び WC 群 と WW 群 の 間 に は カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投
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与 に よ る そ れ ぞ れ 統 計 的 な 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 3 ) 血 清 ACE 活 性
Table1 は , 各 群 に お け る 血 清 ACE 活 性 値 を 示 し た 。 WKY と 比 較 し て ,SHR に お い て 低 値 を 示 し た (p<0.05)。し か し ,WW 群 と WC 群 お よ び SW 群 と SC 群 の 間 に は そ れ ぞ れ カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ る 差 が な か っ た 。
( 4 ) 大 動 脈 NOS 活 性
Table1 は ,各 群 に お け る 大 動 脈 NOS 活 性 値 を 示 し た 。大 動 脈 NOS
活 性 値 は , SHR と 比 較 し て , 統 計 的 な 有 意 差 は 得 ら れ な か っ た 。 ( 5 ) eNOS タ ン パ ク 発 現
Table1 は ,大 動 脈 に お け る eNOS タ ン パ ク 質 の 発 現 を 示 し た 。eNOS
タ ン パ ク 質 の 発 現 率 は ,SW 群 に 比 較 し て ,統 計 的 な 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 6 ) 大 動 脈 AT1受 容 体 タ ン パ ク 発 現 Table1 は , 投 与 後 の 大 動 脈 AT1 受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 率 を 示 し た 。 AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 率 は , SW 群 に 比 較 し て カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ る SC 群 で 有 意 に 低 値 を 示 し た (p<0.05)。
26 4 . 考 察 本 研 究 で は ,本 態 性 高 血 圧 モ デ ル で あ る SHR に カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 し ,高 血 圧 が 抑 制 さ れ た 。そ の 抑 制 に つ い て ,血 圧 調 節 機 構 に 関 与 す る 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 お よ び ア ン ギ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素 が 与 え る 影 響 を 検 討 す る た め ,大 動 脈 NOS 活 性 ,大 動 脈 eNOS タ ン パ ク 質 と 血 清 ACE 活 性 , AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 に つ い て 検 討 し た 。 一 般 的 な 高 血 圧 抑 制 の 機 序 の 一 つ と し て , 大 動 脈 に お け る 内 皮 依 存 性 弛 緩 の 障 害 を 減 弱 さ せ , 血 管 内 皮 細 胞 で の eNOS 活 性 化 が 報 告 さ れ て い る 3 8 )。Actis et al.は ポ リ フ ェ ノ ー ル の 一 種 で あ る フ ラ ボ ノ ー ル を 豊 富 に 含 む 食 品 は ACE 活 性 を 抑 制 し ,血 圧 上 昇 の 抑 制 と 関 連 す る 可 能 性
を 指 摘 し て い る 3 9)。さ ら に ,Ying et al.は , 茶 ポ リ フ ェ ノ ー ル に は ATⅡ
に よ り 誘 発 さ れ た 高 血 圧 に 伴 う 内 皮 細 胞 機 能 障 害 や 心 血 管 性 疾 患 を 予 防 す る 働 き が あ る こ と を 報 告 し て い る 4 0)。 カ ム カ ム に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル に は , ア ン ト シ ア ン や エ ラ グ 酸 な ど が 含 ま れ る こ と が 報 告 さ れ て い る 4 1 )。 AT Ⅱ は 血 管 内 皮 細 胞 や 平 滑 筋 細 胞 の 細 胞 膜 酵 素 で あ る NADH/NADPH 活 性 を 刺 激 し ,ス ー パ ー オ キ シ ド ラ ジ カ ル を 産 生 さ せ る 。 高 血 圧 や 高 脂 血 症 を 有 す る 動 物 の 血 管 壁 で は ス ー パ ー オ キ シ ド ラ ジ カ
27 ル の 産 生 が 増 加 し て お り , SHR の 大 動 脈 に お い て も 内 皮 依 存 性 弛 緩 の 障 害 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 4 2 )。 つ ま り , ラ ッ ト の 血 圧 上 昇 に 従 い , 内 皮 依 存 型 の 障 害 が 増 す こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 本 研 究 で は ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を SHR に 経 口 投 与 し た 場 合 ,投 与 5 週 後 に お け る SHR の 収 縮 期 お よ び 拡 張 期 血 圧 は 有 意 に 抑 制 さ れ ( 血 圧 抑 制 率 は , そ れ ぞ れ 32.0% , 54.4% ), 大 動 脈 の AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 レ ベ ル は カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ り 有 意 に 低 下 し た 。
Iyer et al.は ,AT1受 容 体 ア ン チ セ ン ス オ リ ゴ デ オ キ シ ヌ ク レ オ チ ド を
含 む ウ イ ル ス 粒 子 の 投 与 は ,WKY の 血 圧 に は 影 響 し な い が ,SHR の 血 圧 を 有 意 に 低 下 さ せ る こ と を 報 告 し , 多 く の 組 織 に お け る AT1 受 容 体 の 減 少 が 血 圧 低 下 を も た ら す と 推 察 し て い る 4 3 )。 カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 が SHR に お け る AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 が 減 少 し た こ と に 関 す る 機 序 は 不 明 で あ る が , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ る 血 圧 上 昇 抑 制 作 用 と の 関 連 性 が 推 察 さ れ る 。本 研 究 で は ,SHR の 大 動 脈 NOS 活 性 お よ び eNOS タ ン パ ク 質 発 現 ,血 清 ACE 活 性 に つ い て は カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ る 有 意 な 影 響 が 得 ら れ な か っ た こ と か ら , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 に 含 ま れ る 関 与 成 分( あ る い は そ の 代 謝 産 物 )が 直 接 ACE を 阻 害 す る と い う 可 能 性 は 残 る も の の , 少 な く と も eNOS 活 性 お よ び
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eNOS タ ン パ ク 質 発 現 量 か ら は 血 圧 上 昇 抑 制 に 対 す る 寄 与 は 低 い も の
と 推 察 さ れ る 。
一 方 , 酸 化 ス ト レ ス に よ る 血 管 内 皮 細 胞 の 障 害 も 血 圧 上 昇 の 一 因 と
な る 。ATⅡ は ,AT1受 容 体 に 依 存 し て NADPH オ キ シ ダ ー ゼ の 遺 伝 子 発
現 を ア ッ プ レ ギ ュ レ ー ト に よ り 酸 化 ス ト レ ス を 増 大 さ せ る こ と が 報 告 さ れ て い る 4 4 )。 紅 茶 お よ び 緑 茶 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル は , そ れ ら の 抗 酸 化 作 用 に よ り 脳 卒 中 易 発 症 高 血 圧 ラ ッ ト の 高 血 圧 進 行 を 減 弱 さ せ る 働 き が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 4 5 )。 ま た , 加 齢 に 伴 う ATⅡ や AT1受 容 体 発 現 の 増 加 に つ い て ,赤 ワ イ ン ポ リ フ ェ ノ ー ル が そ れ ら を 抑 制 す る こ と も 報 告 さ れ て い る 4 6 )。本 研 究 に お い て レ ニ ン -ア ン ジ オ テ ン シ ン 系 を 抑 制 す る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル を 分 析 し た が 含 ま れ て い な か っ た 。 し か し , Miyazaki et al.は , 赤 ワ イ ン に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル の 一 種 で あ る レ ス ベ ラ ト ロ ー ル (3, 5, 4'-trihydroxystilbene) が , AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 お よ び mRNA の 発 現 を 顕 著 に 抑 制 す る こ と を 報 告 し て い る 4 7 )。
ま た ,Tien Thuy et al.は ,SHR へ の IGF-1 レ セ プ タ ー ア ン チ セ ン ス オ リ
ゴ デ オ キ シ ヌ ク レ オ チ ド の 投 与 に よ っ て AT1 受 容 体 タ ン パ ク 質 が 低 下
し た こ と で , 血 圧 上 昇 が 有 意 に 抑 制 し た こ と を 報 告 し て い る 4 8 )。 上 記
29 る AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 の 低 下 が SHR の 血 圧 上 昇 抑 制 の 要 因 の 1 つ で あ る こ と が 推 察 さ れ る 。 こ の 他 に , SHR の 内 皮 依 存 性 弛 緩 の 障 害 機 序 は ,内 皮 由 来 弛 緩 因 子 の 減 少 ,プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン H2に よ る 内 皮 由 来 収 縮 因 子 の 遊 離 増 加 お よ び 内 皮 由 来 過 分 極 因 子 の 遊 離 減 少 な ど が 考 え ら れ て お り 3 8 ), い ず れ に し て も 血 管 内 皮 が 血 圧 上 昇 の 一 要 因 に
な っ て い る 。今 後 は ,誘 導 型 NOS( iNOS)発 現 と リ ン 酸 化 と い っ た eNOS
の 活 性 な ど 4 9 )も 含 め , 血 圧 上 昇 抑 制 に 関 与 す る カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 に 含 有 さ れ る 活 性 成 分 の 検 討 が 必 要 と 思 わ れ る 。 5 . 結 論 本 研 究 に お い て , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ る SHR の 大 動 脈 AT1 受 容 体 タ ン パ ク 発 現 は ,有 意 な 減 弱 を 示 し た 。ま た ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ る 血 清 ACE 活 性 値 は , WKY と 比 較 し て ,SHR に お い て 有 意 に 低 値 を 示 し た 。 し か し , WW 群 と WC 群 お よ び SC 群 と SW 群 の 群 間 に カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 投 与 に よ る 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ の こ と は ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 が ATⅡ の レ セ プ タ ー で あ る AT1受 容 体 を 介 し て , 血 圧 上 昇 の 抑 制 に 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。
30 WW WC SW SC ACE activity (IU/L) 32.7±5.7 33.0±5.9 22.2±1.4** 22.5±1.1** NOS activity (pmol/mg protein/min) 6.6±1.4 7.9±1.3 6.0±1.1 6.6±0.6 eNOS protein 1.00±0.44 1.00±0.57 0.48±0.38 0.49±0.32 AT1 protein 1.00±0.40 0.87±0.20 0.70±0.26 0.28±0.12* Table 1 Effects of CamuCamu extract on ACE,NOS activities and eNOS, AT
1 protein expressions.
1 )
1 )
Individual data are means ±SD(n=5) . * (p<0.05) vs SW * * (p<0.05) vs WW,WS 2 ) Expressed as ratio of WW
31
Fig.1 Effect of Camu-Camu pericarp extract on body weight in WKY and SHR. Individual data are means ± SD (n=5 for each group).
WW:WKY given water.
WC:WKY given Camu-Camu pericarp extract. SW:SHR given water.
32
Fig.2 Effect of Camu-Camu pericarp extract on systolic blood pressure in WKY and SHR .
Individual data are means ± SD (n=5 for each group) . *p<0.05 compared with SW.
The groups were the same as Fig .1.
33
Fig.3 Effect of Camu-Camu pericarp extract on diastolic blood pressure in WKY and SHR.
Individual data are means ± SD (n=5 for each group). *p<0.05 compared with SW.
34
Fig.4 Effect of Camu-Camu pericarp extract on heart rate in WKY and SHR. Individual data are means ± SD (n=5 for each group) .
35
第 3 章 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト に お け る 内 皮 型 一 酸 化
窒 素 合 成 酵 素( eNOS)タンパ ク質およびア ンジオテン
シ ン Ⅱ タ イ プ 1(AT
1)受 容 体 タ ン パ ク 質 の 発 現 に 及 ぼ
36 1 . 緒 言 現 在 ,血 圧 ,動 脈 硬 化 ,糖 尿 病 ,脂 質 異 常 症 な ど 様 々 な 要 因 か ら 血 管 内 皮 機 能 障 害 が 引 き 起 こ さ れ る 2 6 )。 な か で も , 高 血 圧 は 脳 卒 中 の 最 も 危 険 な 因 子 と さ れ , 臓 器 障 害 や 心 血 管 病 の 合 併 が 深 く 関 与 す る と 指 摘 さ れ て い る 。NO は L-ア ル ギ ニ ン を 基 質 と し て ,NO を 触 媒 す る 酵 素 で あ る NO 合 成 酵 素 (NOS)に よ り 生 成 さ れ る 。eNOS か ら 産 生 さ れ NO は , 血 圧 調 整 や 内 皮 機 能 障 害 な ど の 心 血 管 性 の 恒 常 性 維 持 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 3 0 ), 3 1 )。 ま た , 血 管 平 滑 筋 に お け る サ イ ク リ ッ ク GMP の 増 大 を 通 じ て ,弛 緩 反 応 を 誘 発 し ,NO 産 生 を 増 加 す る こ と も 知 ら れ て い る 3 2 ) 。 し か し , 血 管 内 皮 細 胞 に お け る NOS の 低 下 に よ り , 血 管 弛 緩 に 関 与 す る NO 量 の 減 少 が , 高 血 圧 の 抑 制 に 関 与 す る こ と を 報 告 し て い る 2 6 )。 血 圧 の 調 節 に 関 与 す る レ ニ ン -ア ン ギ オ テ ン シ ン 系 に お い て ,ア ン ギ オ テ ン シ ン I を ア ン ギ オ テ ン シ ン II に 変 換 す る 酵 素 で あ る ア ン ギ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素 (Angiotensin Converting Enzyme,ACE) は ,主 に 肺 や 血 管 内 皮 細 胞 に よ っ て 活 性 化 さ れ , 血 圧 の 調 整 に 関 与 す る 因 子 で あ る 。 ま た , ア ン ギ オ テ ン シ ン II は , 強 力 な 血 管 収 縮 作 用 の あ る こ と が 知 ら
37 体 が 存 在 す る 3 4 )。 特 に AT 1受 容 体 に は , 血 管 平 滑 筋 , 肺 , 肝 臓 , 腎 臓 な ど に 分 布 し ,血 管 収 縮 作 用 ,血 管 壁 肥 厚 作 用 ,動 脈 硬 化 作 用 ,心 筋 肥 大 作 用 を 介 し て い る 。 こ の ア ン ギ オ テ ン シ ン 系 の 障 害 は , 病 態 生 理 学 的 に 見 て も 高 血 圧 , 腎 臓 病 お よ び 心 不 全 な ど に 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い 3 5 )。 な か で も , 高 血 圧 の 発 症 お よ び 悪 化 に 関 与 す る 要 因 と し て , ACE の 増 大 5 0 ), 血 管 平 滑 筋 に 関 与 す る 血 管 収 縮 物 質 で あ る ATII の 増 加 5 1 )な ど が 関 与 す る と さ れ て い る 。 こ の こ と か ら , 高 血 圧 の 改 善 メ カ ニ ズ ム と し て ,間 接 的 に eNOS 活 性 の 増 大 ,あ る い は ACE 活 性 の 低 下 が 部 分 的 に 関 与 す る 可 能 性 が 推 察 さ れ る 。 南 米 ペ ル ー ・ ア マ ゾ ン 川 支 流 に 自 生 す る カ ム カ ム ( Myrciaria dubia) は ,果 実 中 に ビ タ ミ ン B1, ビ タ ミ ン B2, ビ タ ミ ン C, ナ イ ア シ ン , ク エ ン 酸 , カ ル シ ウ ム な ど が 豊 富 に 含 ま れ て い る が 5 2 ), 近 年 , 上 記 成 分 だ け で な く , 果 皮 中 に 高 血 圧 を 抑 制 す る と さ れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 を 多 く 含 む こ と も 報 告 さ れ て い る 2 4 )。 さ ら に ,樫 村 ら は ,SHR の 摘 出 胸 部 大 動 脈 を 用 い て , ノ ル ア ド レ ナ リ ン お よ び フ ェ ニ レ フ リ ン に 対 す る 収 縮 反 応 を 検 討 し , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 に よ り 収 縮 反 応 が 有 意 に 抑 制 さ れ る こ と を 報 告 し た 2 5)。 ま た , ア セ チ ル コ リ ン に 対 す る 弛 緩 反 応 は , 有 意 に 増 大 し た こ と か ら , カ ム カ ム 果 皮 に 豊 富 に 含 ま れ
38 る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 が , SHR の 血 管 内 皮 細 胞 の 損 傷 を 修 復 し , 血 管 弛 緩 物 質 で あ る NO の 放 出 を 促 進 さ せ る 可 能 性 が あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 3 6)。 そ こ で , SHR に 東 京 農 業 大 学 で 販 売 さ れ て い る カ ム カ ム 果 汁 を 投 与 し た 場 合 の 変 化 に つ い て ,血 圧 に 対 す る 作 用 を 観 察 す る と と も に ,NOS お よ び ACE が 与 え る 影 響 を ,大 動 脈 の NOS 活 性 ,大 動 脈 eNOS タ ン パ
ク 質 発 現 ,血 清 ACE 活 性 ,お よ び 大 動 脈 AT1受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 の 面 か ら 検 討 し た 。 2 . 方 法 ( 1 ) 実 験 動 物 お よ び 飼 育 条 件 本 態 性 高 血 圧 の 疾 患 モ デ ル 動 物 で あ る 5 週 齢 の 雄 性 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト ( SHR/NCri,日 本 チ ャ ー ル ズ・リ バ ー 社 )と ,そ の 対 照 と し て 5 週 齢 の 雄 性 正 常 血 圧 ラ ッ ト で あ る Wistar Kyoto rat (WKY/NCrj, 日 本 チ ャ ー ル ズ ・ リ バ ー 社 )を 用 い た 。 投 与 す る カ ム カ ム 果 汁 液 は , 農 大 メ ル カ ー ド (株 ) の カ ム カ ム 果 汁 100%を 用 い て ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 濃 度 (1.35mg/ml: 総 ポ リ フ ェ ノ ー ル 量 0.3375mg) と 同 様 に 設 定 し , 水 道 水 で 希 釈 を 行 い カ ム カ ム 果 汁 液
39 (以 下 : 果 汁 )と し た 。 果 汁 液 は , テ フ ロ ン 製 経 口 ゾ ン デ (イ ナ リ サ ー チ )を 用 い て , 胃 内 に 1 日 1 回 0.25ml (ビ タ ミ ン C 量 2.25ml) を 慎 重 に 投 与 と し た 。な お ,こ の 果 汁 の 調 製 は ,そ の 都 度 行 っ た 。ま た ,水 を 投 与 す る 群 に は , 水 道 水 を 同 様 に 投 与 し た 。 飼 育 期 間 を 先 行 研 究 よ り 2 4 ), 2 5 ), 5 週 間 に 設 定 し た 。 1 週 間 の 予 備 飼 育 後 , SHR に カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 す る 群 (以 下 SC 群 ,n=5)と 水 を 投 与 す る 群 (以 下 SW 群 ,n=5)に 分 け た 。ま た , WKY は ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 を 投 与 す る 群 (以 下 WC 群 n=5)と 水 を 投 与 す る 群 (以 下 WW 群 , n=5)に 分 け た 。 飼 育 環 境 は ,小 動 物 飼 育 制 御 装 置( ク リ ー ン ラ ッ ク ,日 本 医 化 器 機 製 作 所( 株 ))を 用 い ,室 温 を 約 23℃ に 設 定 し た 。食 餌 は オ リ エ ン タ ル 酵 母( 株 )社 製 の MF を 用 い ,水 は 水 道 水 を 自 由 摂 取 さ せ た 。飼 育 室 の 照 明 は ,朝 8:00 か ら 夕 方 20:00 を 明 期 ,20:00 か ら 翌 朝 8:00 ま で を 暗 期 と し た 。 ( 2 ) 測 定 項 目 お よ び 分 析 方 法 体 重 測 定 は , デ ジ タ ル 計 量 計 (株 式 会 社 A&D 製 , NT-3000) を 用 い ,カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与 前 お よ び 試 験 終 了 時 に 測 定 し た 。飼 育 開 始 か ら 1 週 間 の 間 に , 血 圧 測 定 に 慣 れ さ せ る た め に 毎 日 ハ ン ド リ
40 ン グ し ,非 観 血 式 自 動 血 圧 測 定 装 置 (株 式 会 社 ソ フ ト ロ ン 製 ,BP-98A) を 用 い て 事 前 測 定( 2 回 )を 実 施 し た 。そ の 後 ,果 汁 投 与 開 始 前 日 か ら 投 与 5 週 目 ま で 血 圧 測 定 を 実 施 し た 。 血 圧 測 定 は , ラ ッ ト 尾 動 脈 に カ フ セ ン サ ー を 装 着 し , あ ら か じ め 20 分 間 ラ ッ ト を 固 定 器 (保 温 状 態 38℃ ) に 留 置 し ,尾 動 脈 血 流 を 確 認 後 ,収 縮 期 血 圧 ,拡 張 期 血 圧 お よ び 心 拍 数 を 5 回 測 定 し , 最 高 な ら び に 最 低 血 圧 を 除 い た 3 回 の 値 か ら 平 均 値 を 算 出 し た 。測 定 時 刻 は ,明 期 の 午 前 中 8:00 か ら 12:00 の 間 で あ っ た 。 飼 育 終 了 時 に ,ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル 麻 酔 下 (50 mg/kg 体 重 ,腹 腔 内 ) で 胸 骨 正 中 切 開 に て 開 胸 し ,胸 部 大 動 脈 よ り 約 5 mL 採 血 し た 。血 液 は 冷 却 遠 心 器 (エ ッ ペ ン ド ル フ 社 ,5415R) を 用 い て 4℃ ,3000rpm で 10 分 間 遠 心 分 離 し , 得 ら れ た 血 清 は 直 ち に - 20℃ で 保 存 し た 。 採 血 後 ,胸 部 大 動 脈 を 摘 出 し , 4℃ の 生 理 食 塩 水 で 洗 浄 し た 後 ,組 織 を 直 ち に 液 体 窒 素 で 凍 結 さ せ ,- 80℃ で 保 存 し た 。凍 結 し た 胸 部 大 動 脈 は , 柏 木 ら の 方 法 に 準 じ て 3 6 ), ホ モ ジ ナ イ ゼ ー シ ョ ン バ ッ フ ァ ー (50 mM Tris-HCl, 1 mM EDTA, pH 7.4)を 加 え ホ モ ジ ネ ー ト し た 後 , 上 述 の 冷 却 遠 心 器 を 用 い て 4℃ , 16,000 G で 15 分 間 遠 心 分 離 し , 上 清 を 抽 出 液 と し て -80℃ で 直 ち に 凍 結 保 存 し た 。
41
NOS 活 性 の 測 定 は , 市 販 の 分 析 キ ッ ト (BIO-RAD Laboratories
KK ,DC protein assay kit ) を 用 い て , 上 清 中 の タ ン パ ク 濃 度 を 均 一 に し た 上 で , マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー ( 波 長 750 nm , BIO-RAD Laboratories KK, Model 680) を 用 い て ,NOS 活 性 測 定 キ ッ ト (フ ナ コ シ
株 式 会 社 )を 用 い て , 吸 光 度 505 nm で 測 定 し た 。
ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ (Western blotting) 法 よ る 大 動 脈 eNOS
お よ び AT1 受 容 体 タ ン パ ク 質 発 現 の 分 析 は , 胸 部 大 動 脈 の 血 清 抽 出
液 を DC protein assay kit を 用 い て タ ン パ ク 質 量 を 測 定 後 , Denaturing buffer (100 mM Tris-HCl, 2% SDS, 20% ス ク ロ ー ス , 0.06% ブ ロ ム
フ ェ ノ ー ル ブ ル ー , 100 mM ジ チ オ ス レ イ ト ー ル ) を 抽 出 液 と 同 量 を 添 加 し 5 分 間 煮 沸 し た 。 SDS-PAGE は , 10% ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル (C10L, ATTO) お よ び Running buffer (25 mM Tris -HCl, 192 mM グ
リ シ ン , 0.1% SDS) を 用 い て 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 泳 動 後 , 直 ち に ゲ ル を PVDF 膜 (AE-6668, ATTO) に 転 写 し , TBS-T (25mM Tris-HCl, 150mM NaCl, Tween-20) に 非 タ ン パ ク 質 ブ ロ ッ キ ン グ 剤 (AE-1470CP,
ATTO) を 加 え た 溶 液 に 浸 し , 60 分 間 ブ ロ ッ キ ン グ を 行 っ た 。 1 次 抗
体 に は , eNOS (eNOS/NOS typeⅢ , BD Biosciences)お よ び AT1受 容 体
42
常 温 に て 120 分 間 反 応 さ せ た 。反 応 後 ,2 次 抗 体 (HRP Goat Anti-Mouse lgs, BD Biosciences)を TBS-T と 1:1500 の 割 合 で 調 製 し , 常 温 に て 60 分 間 反 応 さ せ た 。そ の 後 ,化 学 発 光 試 薬 (ECL plus, Amersham)512.5μl を 均 等 に 添 加 し , 高 感 度 冷 却 CCD カ メ ラ (Light-Capture AE-6971, ATTO)を 用 い て 撮 影 し ,発 光 輝 度 を 画 像 解 析 ソ フ ト (CS, Analyzer ver.
2.0, ATTO)に て 解 析 し た 。ま た ,求 め た 発 光 輝 度 か ら 解 析 し た タ ン パ ク 質 発 現 バ ン ド は , 水 道 水 投 与 群 で あ る WW 群 の 発 現 バ ン ド を そ れ ぞ れ 基 準 (平 均 を 1.0) と し て , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 群 投 与 群 の 発 現 バ ン ド の 比 率 を 求 め た( 以 下 ,発 現 率 )。凍 結 し た 血 清 を 室 温 で 溶 解 し た 後 , ACE カ ラ ー キ ッ ト (富 士 レ ビ オ )を 用 い て 血 清 ACE 活 性 を 分 析 し た 。吸 光 度 測 定 は ,分 光 光 度 計 (タ イ テ ッ ク )を 用 い て 波 長 505 nm で 行 っ た 。な お ,タ ン パ ク の 発 現 は ,AT-1R(43kDa),eNOS(140kDa)の プ ロ テ イ ン バ ン ド を 用 い て 3 7 ), 確 認 し た 。 す べ て の デ ー タ は ,正 規 性 の 確 認 を し た 上 で ,平 均 値 ±標 準 偏 差 で 示 し た 。 各 群 間 ( SC, SW, WC,お よ び WW 群 ) に お け る 有 意 差 検 定 は , 一 元 配 置 分 散 分 析 で 解 析 し た 後 , Schéffe の 多 重 比 較 検 定 を 用 い て 行 っ た 。 統 計 解 析 に は , エ ク セ ル 統 計 解 析 ver.2.0( 株 式 会 社 エ ス ミ )を 用 い た 。な お ,各 群 間 の 有 意 差 の 検 定 は ,す べ て 危 険 率 5% 水
43 準 で 示 し た 。こ の 実 験 は ,東 京 農 業 大 学 実 験 動 物 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 し た 。 3 . 結 果 ( 1 ) 体 重 Fig.1 は ,SC 群 ,SW 群 ,WC 群 お よ び WW 群 の 体 重 の 推 移 を 示 し た 。 SHR は , WKY に 比 較 し て 低 い 値 を 示 し た が , SC 群 と SW 群 お よ び WC 群 と WW 群 の 間 に は , カ ム カ ム 果 汁 の 投 与 に よ る 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 2 ) 収 縮 期 血 圧 , 拡 張 期 血 圧 Fig.2 は , 各 群 に お け る 投 与 5 週 間 ま で の 収 縮 期 血 圧 の 変 化 を 示 し た 。投 与 前 か ら 投 与 後 5 週 間 に お け る 収 縮 期 血 圧 に お い て ,SHR は , WKY に 比 較 し て SC 群 は 有 意 に 高 い 値 を 示 し た 。 一 方 , 投 与 4 週 か ら 5 週 目 に お け る 収 縮 期 血 圧 は , SW 群 に 比 較 し て SC 群 は , カ ム カ ム 果 汁 の 投 与 に よ っ て 有 意 に 低 値 を 示 し た (p<0.05)が , WC 群 と WW 群 の 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 Fig.3 は , 各 群 に お け る 投 与 5 週 間 ま で の 拡 張 期 血 圧 の 変 化 を 示 し た 。 投 与 4 週 か ら 5 週 目 に お け る 拡 張 期 血 圧 は , SW 群 に 比 較 し て SC 群 は , カ ム カ ム 果 皮 抽 出 液 の 投 与
44 に よ っ て 有 意 に 低 値 を 示 し た (p<0.05) が , 同 じ 投 与 期 間 に お け る WC 群 と WW 群 の 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 3 ) 血 清 ACE 活 性 Fig.4 は ,各 群 に お け る 血 清 ACE 活 性 値 を 示 し た 。投 与 後 に お け る ACE 活 性 値 は , SW 群 と 比 較 し て , SC 群 に お い て 低 い 傾 向 を 示 し た が , WW と WC お よ び SC と SW の 群 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 4 ) 大 動 脈 NOS 活 性 Fig.5 は ,各 条 件 投 与 後 の 大 動 脈 に お け る NOS 活 性 を 比 較 し た .投 与 後 に お け る NOS 活 性 値 は , SC お よ び SW 群 と 比 較 し て , WC お よ び WW 群 に お い て 高 い 傾 向 を 示 し た が ,SC と SW お よ び WC と WW の 群 間 に は 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た 。 ( 5 ) eNOS タ ン パ ク 発 現 Fig.6 は , 各 条 件 投 与 後 の 大 動 脈 に お け る eNOS タ ン パ ク 発 現 を 示 し た 。eNOS 発 現 率 は ,SW 群 と 比 較 し て ,SC 群 で 有 意 に 高 い 値 を 示 し た (p<0.05) 。し か し ,WC と WW の 群 間 で ,そ れ ぞ れ 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 ( 6 ) 大 動 脈 AT1受 容 体 タ ン パ ク 発 現 Fig.7 は , 各 条 件 投 与 後 の 大 動 脈 に お け る AT1受 容 体 の タ ン パ ク 発