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塩田平のため池群における水資源利用の変遷と新たな利用価値の創出

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Academic year: 2021

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環境ツーリズム学部教授* 環境ツーリズム学部教授** 環境ツーリズム学部元准教授(現所属:三重大学大学 院…生物資源学研究科准教授)***  環境ツーリズム学部助教****

髙 橋 大 輔*

…Daisuke…TAKAHASHI

髙 橋 一 秋**

…Kazuaki…TAKAHASHI

森 本 英 嗣***

…Hidetsugu…MORIMOTO

吉 村 武 洋****

…Takehiro…YOSHIMURA

研究実績の概要  本研究は、塩田平のため池群の保全と地域資源と しての活用を促進するための基盤となる学術情報を 集積することを目的とし、これまで欠けていた社会科学 的な視点から水資源利用の変遷について統一的な整 理を行うとともに、ため池群が本地域の生物多様性の 向上や生物間相互作用の複雑化に及ぼす効果を明 らかにするための調査を行う。加えて、ため池の維持・ 管理において発生する底泥の肥料としての活用の可 能性について検討し、ため池群の新たな価値創出を目 指すこともねらいとする。  平成30年度(2018年度)は、非農家や新規住民 等を巻き込んだ中長期的なため池管理運営の方 策を考えるため、上田市柳沢地区の住民(98戸)を 対象にアンケート調査を実施した。生態系サービス (ES:Ecological Services)や多面的機能への認識とた め池の管理意欲の関係性に着目し、以下の3つの仮 説の検証を行った。  ①ESならびに多面的機能の認識とため池管理活 動への参加意欲には正の関係がある。  ②ESの認識において文化的サービスの認識が高 い。  ③ため池の決壊に対する防災対策は十分である。  今回の結果では、現状におけるため池の保全・管理 活動は農家・非農家あるいは耕作経験の有無に関係 なく参加しているものの、今後の管理活動への消極的 な意見も少なくなく、少しでも意欲向上を図るために は、ため池のESや多面的機能の認識を深めることが 必要と考えられる。  また、塩田地域のため池管理に関わる体制やそれに 関わる費用負担については、土地改良区や水利組合、 自治会など様々な団体が関与しており、対象とするた め池によっても体制が異なることが推察される結果と なった。また、ヒアリング等を通じて、特に多面的機能 支払制度を活用した維持管理が一定の役割を果たし ていることが明らかになってきた。引き続き、いくつかの 管理組合にヒアリングすることと併せて、直接支払制 度の制度体系を明らかにしていく必要がある。  そして、ため池群が塩田平の里山生態系にもたらす 役割を解明するために、昨年度に引き続き塩田平の代 表的なため池の一つである舌喰池および周辺の陸域 において動植物を採集し、生物相の調査を行った。そ の結果、生産者であるハスやヒシなど3種、植食者で あるオオミズムシとモノアラガイの2種、捕食者である クロイトトンボ幼虫やアキアカネ幼虫などの17種、雑食 者であるモツゴやドジョウなど5種、デトリタス食者で あるマシジミとタニシの2種、計29種の動植物が採集 された。採集された動植物の内、測定可能な量が採集 された20種において炭素−窒素安定同位体比分析を 行ったところ、生産者である沈水植物の一種から雑食 者ウシガエル幼生と続く系とデトリタス食者であるマシ ジミからアキアカネ幼虫へと続く系の2種類が確認さ れた。また、これら2つの系はより高次の栄養段階であ るモツゴなどの魚類につながると思われた。そして、生

塩田平のため池群における水資源利用の変遷と新たな利用価値の創出

(地域・社会貢献研究)

−…99…− 長野大学紀要 第41巻第2号  99—100頁(207−208頁)2019

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産者であるヒシを利用する植食者は今回採集されな かったものの、ヒシを起点にコガムシ幼虫、クロイトトン ボ幼虫につながると予想される系も見られた。一方、陸 生捕食者であるコシロカネグモと水生捕食者であるマ ルケシゲンゴロウのδ13Cとδ15Nの値が類似していたこ とから、これらの捕食者はほぼ同一の餌生物を利用し ている可能性が示唆された。もしコシロカネグモとマル ケシゲンゴロウが同じ餌生物を利用しているのであれ ば、これら2種は同じ資源を巡る競争関係にあるかもし れない。また、陸生捕食者であるコクサグモと水生植 食者であるオオミズムシはδ13Cとδ15Nの値がほぼ同 じ値を示した。この結果は、両種が全く異なる食物連 鎖系に属していることを示唆する。  さらに、ため池の底泥の肥料としての有用性を把 握するために、池干し期間中の11月に9か所のため池 (塩野池、女池、水沢池、上窪池、小島大池、荒池、 下之郷新池、手洗池、山田池)から底泥を採取し、簡 易土壌診断キット(みどりくん)を用いて底泥のpH、 硝酸態窒素(NO3-N…kg/10a)、水溶性リン酸(P2O5… kg/10a)、水溶性カリウム(K2O…kg/10a)を分析した。 なお、底泥は、各ため池の水を抜く流出口付近の2 地点で、7つの堆積層(池底面から深さ0cm、5cm、 10cm、15cm、20cm、25cm、30cm)から採取した。 分析中ではあるが、ため池によって栄養成分の濃度が 異なり、肥料として十分な濃度のため池と不十分な濃 度のため池が認められた。また、栄養成分の濃度は、 底泥の堆積層で高い値を示す傾向が認められた。 研究発表(平成30年度の研究成果)  〔雑誌論文〕 計( 1 )件 著 者 名 論  文  標  題 髙橋大輔 里山林に造成されたため池および周辺林内に生息する動植物の炭素・窒素安定同位体比分析に関する予備的研究 雑  誌  名 査読の有無 巻 発 行 年 最初と最後の頁 長野大学紀要 無 40 2 0 1 8 49-56  〔図書〕 計( 1 )件 著 者 名 出 版 社 藤谷 岳・吉村武洋 みすず書房 書  名 発 行 年 総ページ数 寺西俊一・石田信隆・山下英俊編著 『農家が消える──自然資源経済論からの提言』の第5章 「景観・文化の保全──かけがえのない価値を守る仕組み」 2 0 1 8 302 長野大学紀要 第41巻第2号    2019 −…100…− 208

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