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2) ガラスにおける「偶然と必然」

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Academic year: 2021

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(1)特. 集. ニューガラスフォーラム創立30周年記念. 主査・委員長からのメッセージ. ガラスにおける「偶然と必然」 神戸大学大学院. 理学研究科. 内野. 隆司. 先日,家の納戸を整理していたら,学生時代に購入した J. モノー著, 「偶然と必然」と いう書物を目にした。生物の進化が「偶然」による擾乱と自然選択を経て,最終的に「必 然」とも思える形に収斂していくのは何故か。本書では,その疑問に対して,分子生物学 の観点から興味深い試論が展開されている。さらに議論は,脳,精神,人類における文化 などの諸問題にも及ぶ。40年以上前に書かれた本であるが,今もってなお深く考えさせら える内容を多く含んでいる。 この本を読みながら, 「偶然と必然」と思える現象は生物の進化以外にも,身の回りに 数多く存在すると感じた。例えば,地球から見た太陽と月の見かけの大きさが殆ど同じで あること。これは,全くの偶然といわれているが,この偶然がなければ,日食は観測され なかったであろうし,日食が観測されなければ,重力レンズ効果の観察,すわなち一般相 対性理論の「実験的検証」もずっと後のこととなっていたと思われる。 もっと卑近な例でいえば,結婚もこの範疇に入るかもしれない。ただ,結婚が「必然」 となるかどうかは,互いの不断の「忍耐」と絶え間ない「譲歩」が不可欠であろうが…。 話を科学に戻すと,人類にとってはガラスの透明性も「偶然と必然」と呼べる現象であ ろう。二酸化ケイ素という,地殻中に普遍的に存在するこの化合物が偶然にもガラス形成 酸化物であり,さらに,偶然にもこの材料が可視領域で透明な材料であった。可視領域と いうのは,地球上における太陽光のスペクトル分布に合うように,生物(人類)が進化の 過程で獲得した特別な波長領域であろうから,この波長領域とケイ酸塩ガラスの透明域が 一致していたというのは,何という偶然であろう。透明なガラスがなければ,窓ガラスを 用いた採光は不可能となり,人類の文明もこれほどまでに急速に発達することもなかった であろうといわれている。ガラスの透明性は結果的に人類にとって「必然」であった。 では,透明性に代わるガラスの新しい「偶然と必然」はあるか?その問いに対する肯定 的な解を探索するのが,ガラスに関わる技術者,研究者の仕事である。光ファイバー,強 化ガラス,薄板ガラス等々実績は着実に積み重ねられ,また,新しい芽も育ちつつ有る。 17.

(2) NEW GLASS Vol. 30 No. 116 2015. しかし,今後の道のりは決して平坦ではないであろう。ニューガラスフォーラムが,ガラ スの技術者,研究者にとって,新しい「偶然と必然」を切り開くための道しるべとなるこ とを切に願う。. 18.

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