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伝え合い学び合う子どもの育成 : 複式学級における算数科指導,数学的な考え方を育む算数科の指導のあり方

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Academic year: 2021

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伝え合い学び合う子どもの育成

∼複式学級における算数科指導数学的な考え方を育む算数科の指導のあり方∼

川 村 繁 博

複式教育では,子どもたち一人一人が自分の考えをもち,主体的に学ぶ姿が重要となる。間接指導時に,子ど もだけで問いに向かい課題を追求していかなければならないためである。様々な個性をもつ子どもたちが,互い に思考をつなぎ学びを深めていくためには,課題を的確に捉え,考えを表現する力がより必要なる。 複式学級における算数科教育の第一歩として,子どもたちが課題場面や思考過程を絵・図に表したり具体物を 用いたりして場面や考えを視覚的に表現することで,課題や思考を共有させ,学び合いの下地を整え主体的な学 び合いの場をつくることを目指したいと考えている。 キーワード :複式教育数学的な思考力,表現力,算数的活動

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研究目的

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はじめに

本年度の複式研究テーマは, 「問いがつながる複式 教育∼司会者・記録者 ・フォロワーの学びの質を高め ることを通して∼」である。本校複式部では,本年度 から学び手としての司会者・記録者・フォロワーのつ ながりを軸に,関わりや役割に改めて着目口冊究を進 めている。「子どもたちにどのような力が必要なのか。」 「どの学年 ・どの段階でどの力を育てるのか。」 「子 どもたちをどのように関わらせつなげるのか。」とい った6年間の子どもたちの育ちを見通した系統立てた 指導が複式における主体的学び合いに必要であると改 めて感じたからである。 「複式の学び手は1年で育つ ものではない」複式学級で学ぶ子どもたちの6年間で の育ちを見据えた指導の在り方について研究を進めて きた。 先にも述べたように,複式学級では,子どもたちの 主体的な学び合いがより重要となる。そのためには, まず,子どもたちが本時の学習課題を的確につかみ, 見通しをもって学習に向かうことができなければなら なし¥ 複式学級の子どもたちが主体的に学びを深めていけ る算数科の学習を目指し,昨年度から「再現」をキー ワードに課顎場面や思考過程を具体物や絵・図などを 活用し,視覚的に表現させる活動を大切にしている。 表現する活動を通し思考を整理することで,数学的な 思考力を養い,視覚的に事象を捉えさせることで合理 的・論理的なものの見方が育つと考えたからである。

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教科提案との関わり

本年度学校提案サブテーマは∼子どもの言葉でつく る授業∼である。本校算数部では,学校提案を受け, 教科研究テーマを「子どもがつなぐ算数授業∼解釈と 共有を軸にして∼」と設定した。 「子どもの言葉」について,学校提案には,子ども の表「青,しぐさ,視線,語り,姿勢これらすべてが それにあたると述べられている。つまり,学び手であ る子どもたちの興味• 関心や思考理解といった内面 が表出された瞬間をしつかりとみとり,子どもたちの 言葉を媒体として学びを深めていこうということであ る。また,子どもの言葉は内面的なものだけでなく, 式や絵・図言葉などの言陪として様々に表現される。 それらの言葉を子どもたちが互いに解釈し,共有して いくことが学びにおいて祖要であると考えている。 2

研究方法

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学び合いの風土

友達に自分の考えを伝えるためには,その内容を分 かりやすく整理しようとする。また,分からないこと を相手に伝えるときも疑問点を整理する。つまり自分 を表現することで,自己の思考が更新され構築される。 授業の中で子どもたちが互いに相手意識をもち,学 び合う姿を実現するためには,誰もが自己肯定感をも ち自分を表現できる学級風土が重要である。教室にお ける学び合いは,常に対等なものである。子どもたち には,それぞれ得意なこと不得意なことがある。それ は,優劣ではなくそれぞれのもつ個性である。教室の 中では「教える」 「教えてもらう」 という姿がよく見 られる。それは, 自然な光景で,とても大切なことで ある。 「分からないから問く」 「聞いてくれるから答 えられる」このような関係があるからこそ,子どもた ちは互いに考えを深め合い,学び合うことができるの である。一人一人が課題意識や相手意識をもち,受容 的に個性や考えを認め合いながらつないでいくこと で,学びを深化させていきたいと考えた。 - llO

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-図1学び合う姿

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低学年における算数科指導 子どもたちの主体的な学びの姿を実現するための手 立てとして,課題把握や思考過程を具体物の操作や絵・ 図にかき表す活動を多く取り入れるようにしている。 子どもたちは,もともと柔軟な思考力の素地をもっ ている。しかし,抽象化された課題をいきなり提示さ れただけではとまどい,見通しをもてない者もいる。 課題を明確に捉えられないままでは, 自分の考えをも ち,話し合うことはできない。学び合う姿を実現する ためには,教室にいる子どもたち一人一人が課題を的 確に捉え,共有することが不可欠であると考えたから である。 視覚的にとらえることのできる具体物や絵図は,課 題場面をつかませることにおいて有効な道具である。 また,子どもたちが思考過程を再現し視覚化すること で考えを共有したり,実際に手に触れ操作したりする ことで思考を確かなものにできる道具である。この具 体物や絵・固といった道具に子どもたちが十分に触れ て{科倹することで,初めて意味理解がはかられると考 えた。 2. 1. 3

司会・記録・

フォロワーの育成

司会や記録(図2)は複式学級の子どもたち特有の学 習活動である。勿論単式学級においてもこれらの役 割が必要とされる場面や学習活動はあるが教科学習を 進めていく中で複式学級ではその役割は非常に大きい。 その役割を十分に機能させていくためには,系統だっ た指導とスキ/vtデルが必要である。本年度は,それ ぞれの役割について低・中・高学年と段階を追ったモ デル(図3)を子どもたちにも示して複式部全体で共有 し司会・記録・フォロワーの育成を図った。 図2 司会・記録・フォロワー

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ずらしとわたり

本年度は,授業の導入に本時の学習の内容を話し 言葉で「ガイド文(図4)」として事前にホワイトボード に提示することを試みに授業の「導入でのずらし」 の際に,より効果的に本時の学習活動を明確にとらえ させるためである。この話し言葉の吹き出しを活用す ることにより,子どもたちが課題や学習の流れを的確 につかみ,見通しをもって学習に向かうことができた。 図4ガイド文 2. 1. 5教師の出「学習環境」 複式学級の低学年では,入学して間もない子どもた ちが司会や言改屎を行わなければならない。特に構造化 された板書は教師にとっても難しいものである。記録 の役割は,平仮名や数字を学習したばかりの子どもた ちにとっては大変難しいことである。 「どこに」 「何 を」 「どのように書けばいいのか。」子どもたちにと っては戸惑うことも多い。実際,子どもたちに板書を すべて任してしまうと学習の流れや思考が散乱したも のになってしまう。 子どもたちの思考を整理していくために,似た考え や賛成の意見を赤色で書く こと,違った考えや反対の 意見を青色で書くことなどを意識づけたり,黒板をテ ープで分割し板書の場所に制限を加えたりして構造化 を図った。

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教師の出「価値づけ」 複式学級における子どもたちは中学年や高学年にも なると,授業の進め方にも慣れ活発に話し合うことが

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-できるようになる。低学年の子どもたちも上学年にも なると活発に発言し,授業が滞りなく進んでいるかの ように感じることも多い。しかし, 「本時のねらい」 と照らしてその内容を吟味していくと,本時の目標や 付けたい力とは離れたところで話し合いが進んでいる ことも少なくない。それを適切に見極め,修正したり 深めたりすることが必要となる。 また,本時の目標に繋がる発言や板書を捉え価値づ けていくことで子どもたちの学びを深めていくことが できる。

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数学的な思考力の育成を目指して 3.

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具体と抽象をつなく操作式と文・絵図 の関係 【第 1学年】子どもたちの日常生活の中でも「

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個多 い。」 「△個少ない。」と物の個数を並べて比較する 姿は多く見られる。運動会の玉入れの球数や給食のお かずの個数を比べる姿もその一つであろう。しかし, それらがテキストに置き換えられたとたん,場面は子 どもたちにとって複雑なものとなる。このことは,子 どもたちが場面を捉える際に視覚に頼るところに起因 するのではないだろうか。低学年の子どもたちにはよ りその傾向が強く見られる。このことからも,具体物 を操作して場面をつかんだり,言葉,数式,図を用 いたりして表現する算数的活動が重要であると考え た。 本単元では,問題文を読み,その場面や考える過程 を数図ブロックや〇図を用いて整理して表していく思 考法を獲得させていくことをねらいとした。 「∼は∼ より多い。」 「∼のほうが∼よりいくつ少ない。」と いう数量関係を具体物の操作や図に表す活動を通し て,問題の構造を捉える力を育て,加法・減法の意味 について理解を深めさせたいと考えた。 く実際の授業と考察> 1年生課題 「おおいほうのかずをもとめよう」 あかいかんには,あめが5こ あおいかんには,あかより 3つあめがおおくはいっています

T :

どっち色のあめが多いか分かる? なっ:青。あめが5個入っている。赤より青の方が多 いってこと。 ゆい:わからん。 なっ:赤より青の方が3個多いってことです。 まみ:なつ君の言いたいことは,青の缶は赤より3個 多いって書いてるからって言いたいんだと思う。 初めは,直観的にとらえていたあめの数を友達に説明 する必要性の中から,問題文に書かれた要素に着目し 諷題場面を捉えることができた。 つき: 3個多いって書いてるやろ 5個と 3個で 8? 分からん。

T :

じゃあ一度ブロックや絵で考えてみようか。 つき:はじめ5個ある。次に3個足して 8個やろ。 答えは, 8個です。 りさ:なんで青の話やのに,赤足すん? ゆい:なんで赤と青違うのに赤の数足すん? まみ:つきくんのかいた 5個は私のかいてるここ。 だから,赤と青の 5個のところは同じなん。

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(同じ部分)

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(多いところ) まみが,つきの図と自分の図を比較しながら説明する ことで,子どもたちは考えをより深めて数量の関係を 捉えることができた。また,新しい表現の手段を知っ た瞬間でもあった。 【第2学年】子どもたちの生活場面で一枚のヒ°ザを3 人で分けたとしてその大きさを「数」として正確に表 現する必要性はない。それらの場面で子どもたちが必 要とするものは,見た目や感覚的なものに頼るところ が多く,個数などと違い数にこだわることもないから ではないだろうか。ゆえに,子どもたちにとって分数 は,整数のように身近に存在する数とは言い難い。さ らに,分数は分子と分母の2つからなる数を 1つの数 としてみなければならない。これらのことからも, 2 つの数を操作して作られた分数という数は,それだけ で子どもたちにとって高度な抽象化された数であると 考えられる。 第2学年の分数の目標は,具体物を用 いた活動などを通して,数についての感覚を豊かにす ることである。本単元ではl/2, 1/3, 1/4などの簡単な 分数をつくる活動を通して,様々な大きさや形の分数 を比較し分数のもつ意味を捉えさせる。また,それら の活動を通して分数を具体的な数として生活の中にあ る算数的な事象と重ね合わせることで豊かな数感覚・ 量感数慨念を培っていきたいと考えた。

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-112-また,本実践では, 1/2,1/3,1/4,をつくる活動を通 して,乗法及び徐法につながる割合的なものの見方や 考え方の素地を育てる機会としたまず,折り紙など の具体物を折ったり切ったりする活動を通して,元の 大きさと 1/2や 1/3などの大きさを直接的に比べるな どの活動を通して,分数の概念をつかませた。また , それに加え(図5)のような連続量と分離量の重なった 具体物を分ける活動を通して分数のもつ意味理解を 拡張し,乗法や除法に繋がるものの見方の素地に繋げ たいと考えた。 12 fliの 112は6僅 12償の 1/3は 4償 12償の 1/4は 3償" 図5 連続量と分離量の分数の捉え方 く実際の授業と考察> 2年生課題 「1/2の大きさの分数をつくろう」

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。さむ君と先生は2人で仲良く 1/2ずつ分けまし

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※不平等に分けられた板チョコの場面図を提示し,話 し合わせた。また,既習の1/2を含む分数の概念を確 かめるとともに本時の学習活動に見通しをもたせるた めである。 図6 課題提示 しず:形が違うやん たけ :形は違ってもいいけど,大きさ違うやん ゆい:なんで,大きさ違うってわかるん重ねてないよ 。 こう:粒の数を数えても分かるやんおさむ君のは 1.2.3.4.5.6. 7.8やろ。先生のは 16個もあるやん。 子どもたちは,教師からの支援がなくても,前時まで の連続量をもとにした分数づくりから分数の概念を発 展的に捉え,分離量をもとにした分数づくりに考えを つなげることができた ∼中略(1/2の大きさづくり)∼ T : いろんな1/2を作ることができたね。じやあ 今まで習ってきた1/4, 1/6, 1/8も作ることがで きるのかな。 ゆい :1/4, 1/6, 1/8も全部できる。 みゆ :まって,他にもいろんな大きさの分数つくるこ とができるよ。 た< :他にもって,例えば? みゆ :えっと,例えば1/24とか。 た< :そうか。それやったらいっぱいできそう 子どもたちは,本時までの学習で1/3の分数づくりの 際に偶然発見した1/61/4づくりで1/8 を発見して いるため,様々な大きさの単位分数があることを獲得 していt~ これらの学びが生かされたのである

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成果と課題 本年度は,前述したガイド文を用いて授業の導入を 行った。低学年の子どもたちにとって,音声による言 葉はいくら端的なものであっても消えてしまいがちで ある。ガイド文で,本時の学習活動や目標を示してお くことで,誰もが見通しをもって学習活動に取り組む ことができたと考えるまた,司会にとっても常に立 ち返る場所であるガイド文を提示しておくことで話し 合いが本時の目標からそれた時もガイド文に着目させ ることで修正させることができたと考える 言己禄についても,本実践を含めて常に価値づけをし 言単価することによって図の活用の仕方や表現方法を身 に着けるものも多くなってきたしかし,領域や単元 が変わると今まで獲得してきた表現方法をうまく活用 できないものもいる 本実践でも見られたように子どもたちは日々の授 業の中で今までの学習をスパイラルに活用し,新しい 思考を構築していくものである1年生が,プロック を活用し,問題場面を再現していくことに始まり,そ こから発展的に思考を巡らせ,同じ部分を見つけるこ とで,見えない部分を視覚化していくことができたこ ともそうであろうし2年生の分数づくりにおいて本 時までに取り扱ってきた連続量での分数づくりで具体 物を活用した体験的な学習があったからこそ,分数の 理解が確かなものとなり新しい内容であった分離量の 分数づくりにもその概念を活用し,課題解決に向かう ことができたと考える 複式教育において,子どもたちの主体的な学びの姿 を実現するためには誰もが見通しをもち学びに向か うことのできる学習環境や自分の考えを伝えあうこと のできる技能,表現力が必要不可欠である勿論,こ れらは単年で完成し完結できるものではない 子ども たちの6年間での育ちを見通した指導の在り方につい て今後も研究を深めていきたいと思う 参考文献 新学習指導要領算数編 笠井健一(2017)学習指導要領改訂のポイント 平林一榮・坂間利昭(1979) 新しい「量と測定」 「数量関係」の指導

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図 1 学び合 う姿 2 .   1 .   2 低学年における算数科指導 子どもたちの主体的な学びの姿を実現するための手 立て として,課題把握や思考過程を具体物の操作や絵・ 図にかき表す活動を多く取り入れるようにしている。 子どもたちは,もともと柔軟な思考力の素地をもっ ている。 しか し ,抽象化 された課題をいきなり提示さ れただけではとまどい,見通しをもてない者もいる。 課題を明 確に捉えられないままでは, 自分の考えをも ち, 話し合うことはできない。学び合う姿を実現する ためには,教室にいる子

参照

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