Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
大腸癌の動向と治療法の現況
Author(s)
大久保, 剛
Journal
歯科学報, 114(3): 277-277
URL
http://hdl.handle.net/10130/3351
Right
厚生労働省の人口動態統計によれば,1981年以来わが国の死因の第1位は,悪性新生物で,近年では総死亡 数の約3割をしめている。 とりわけ大腸癌死亡数は増加の一途をたどり,2012年の大腸癌死亡数は4万7千人を超え,女性の全悪性新 生物による死亡の中では最多である。男性では,肺癌,胃癌に次いで多く,その死亡率の差は過去数年間で 徐々に縮まり,近い将来男女ともに大腸癌は死因の第1位となる可能性が高い。ただ,大腸癌は早期に発見し 治療すれば,ほぼ100%の治癒が見込める,癌の中では最も性質の良い癌でもある。よってこの大腸癌死亡率 の増加は,生活習慣の改善による予防(一次予防)と,スクリーニングの普及による予防(二次予防)が,ま だまだ日本では遅れている事が要因と言えよう。 さて,大腸癌の切除法は大きく分けて,内視鏡的切除と,手術療法の2つだが,近年それぞれの治療法の進 歩は目覚ましいものがある。内視鏡的切除は,従来はポリペクトミーと呼ばれ,対象は,小さく茎を有する隆 起型の病変に限られていたが,現在は EMR(内視鏡的粘膜切除術),さらに ESD(内視鏡的粘膜下剥離術) と呼ばれる手技が主体となって,深達度が粘膜に留まる病変であれば,大きさや,形態に関係なく切除が可能 となった。 手術療法では腹腔鏡下大腸切除術(以下,鏡視下手術)の進歩と普及が歴史を変えたといっても過言ではな い。この術式は,本邦では1993年に報告されて以来20年になるが,手術器具の改善や,たゆまぬ手技の訓練に よってここ10年の間に,多くの施設で開腹手術例数と鏡視下手術例数が逆転した。また,当初は良性疾患や早 期大腸癌(しかも,結腸癌のみ)と適応も制限されていたが,現在は進行癌,直腸癌症例にも施行されるよう になった。 また,分子標的薬剤の登場で化学療法も変化してきている。2005年大腸癌研究会が中心となり,大腸癌治療 ガイドラインが刊行され,これまで3回の改訂があった。これは,大腸癌の標準的な治療方針を示し,治療の 施設間格差をなくし,過剰,過少治療を防ぎ,内容を一般に公開することで医療者,患者間の相互理解を深め ることを目的としている。本講演も最新のガイドラインに基づいた治療の適応や,方法を紹介するが,治療法 の進歩に伴う新たな問題点についても述べる。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 昭和55年3月 順天堂大学医学部卒業 昭和55年6月 順天堂大学外科学研修医 昭和57年6月 順天堂大学第一外科専攻生 昭和62年7月 順天堂大学第一外科助手 昭和62年10月 医学博士(順天堂大学)受領 平成5年4月 順天堂大学第一外科講師 平成6年3月 済生会川口総合病院外科部長 平成20年4月 東京歯科大学千葉病院内科学准教授 平成23年5月 東京歯科大学千葉病院内科学教授 <所属学会> 日本外科学会認定登録医 日本消化器外科学会専門医指導医 日本消化器病学会専門医 日本内視鏡学会専門医