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IRUCAA@TDC : 下顎後退症患者において顎矯正手術が日本語母音に及ぼす影響について

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

下顎後退症患者において顎矯正手術が日本語母音に及ぼ

す影響について

Author(s)

金子, 早知子

Journal

歯科学報, 113(3): 316-317

URL

http://hdl.handle.net/10130/3117

Right

(2)

論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 顎矯正手術が不正咬合者の母音の構音に及ぼす影響を明らかにするため,下顎後退症患者の術前後における 音声を分析し,さらに上下顎の骨格的な位置関係や前歯部の咬合関係が母音に及ぼす影響を検討した。また, 音声の周波数に影響するといわれる共鳴腔としての気道の大きさの術前後の変化と母音の周波数との関係性を 検討した。 2.研 究 方 法 顎矯正手術が必要と診断され,標準語を話す下顎後退症患者女性10名を対象とし,術前,術後3か月および 術後6か月の日本語5母音の音声データを採取し,周波数分析を行った。また,顎口腔系機能に異常のない標 準語を話す個性正常咬合成人女性10名を対照とした。また,術前および術後3か月のセファロ側貌写真より skeletal pattern に関する5項目および denture pattern に関する5項目の計10項目を計測し,上下顎の位置関 係および前歯部の被蓋関係と母音の周波数との相関関係を検討した。さらに,画像検査より術前および術後3 か月の気道径5項目を計測し,母音の周波数との相関関係を検討した。 3.研究成績および考察 正常人との比較では,術前の下顎後退症患者の/e/の F1は正常人よりも有意に低かった。下顎後退症患者 の前歯部の被蓋関係や大きく後退している下顎位のために,/e/の構音点が正常人と比較して上方に位置する と考えられた。/o/の F2-F1は有意に高かった。これは,下顎後退症患者の構音点は後方に位置するという 予想に反していた。術後3か月および術後6か月,前歯部の被蓋関係や下顎の位置が変化すると有意差は認め られなくなった。 下顎後退症患者における術前後の音声の変化を比較した。術前と術後3か月および術後3か月と術後6か月 の比較では有意差は認められなかった。しかし,術前と術後6か月との比較では,/a/,/e/および/o/の F1 は術後6か月に有意に上昇していた。/a/,/e/および/o/の F1は時間の経過とともに緩やかに変化したと考 えられる。 セファロ側貌の計測値と周波数の相関関係の検討では,狭母音である/i/の F2-F1は術前も術後も SNA, SNB と正の相関関係を認めた。また,術後の F1は L1 to MP および overjet と負の相関関係を示した。半狭 氏 名(本 籍) かね こ さ ち こ

早 知 子

(千葉県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1909 号(甲第1161号) 学 位 授 与 の 日 付 平成23年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 学 位 論 文 題 目 下顎後退症患者において顎矯正手術が日本語母音に及ぼす影響に ついて 掲 載 雑 誌 名 日本顎変形症学会雑誌 第22巻 1号 20−27頁 2012年4月 論 文 審 査 委 員 (主査) 柴原 孝彦教授 (副査) 櫻井 薫教授 末石 研二教授 田 雅和教授 歯科学報 Vol.113,No.3(2013) 316 ― 94 ―

(3)

母音である/e/は術前の F1が L1 to MP と負の相関関係を示し,incisal angle および overbite と正の相関関 係を示した。これまでの顎変形症患者の構音に関する報告同様,下顎後退症患者も狭母音および半狭母音に前 歯部の咬合関係や骨格による影響が認められた。 気道径と周波数の相関関係の検討では,セファロ側貌より,術後3か月で下咽頭腔は術前と比較し有意に拡 大していた。しかし/a/,/i/,/e/および/o/の周波数と咽頭腔はほとんど相関関係を認めなかった。奥舌母音 である/u/のみが,多くの項目で相関関係を認めた。特に,HY-C3と術前後の F2-F1が負の相関関係を示し た。奥舌母音は,茎突舌筋の収縮が大きく影響を及ぼすとされている。/u/は茎突舌筋の作用により舌背を後 上方へ挙上し軟口蓋と奥舌で狭めを形成し構音点を作る。HY-C3で表わされる舌骨の位置が前方にあるほど 奥舌はより強く引き上げられ,軟口蓋との狭めを作る傾向にあると考えられる。 4.結 論

SNA,SNB は,術前および術後3か月においても狭母音/i/の F2-F1に影響を与えた。また,術後の/i/の F1は L1 to MP と overjet に影響を与えた。半狭母音/e/は術前の F1と L1 to MP が負の相関関係を示し, incisal angle および overbite と正の相関関係を示した。術前と術後3か月の気道径の変化は奥舌母音/u/には 影響を及ぼすと考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 不正咬合患者における顎矯正手術前後の母音の音声学的分析はこれまでにもいくつか報告がなされている が,声道の形態を決定する因子と母音の周波数との関係は検討されていない。本研究は,術前後の音声周波数 の変化の比較のみではなく上下顎の位置や咬合関係の変化との相関の有無を検討した。また,術前後の気道径 の変化と周波数との相関の有無も検討した。それより,下顎後退症患者において顎矯正手術による前歯部の咬 合や骨格の変化は,狭母音および半狭母音に影響を及ぼし,なかでも前舌母音である/i/および/e/に大きく影 響した。気道径の変化が母音周波数に影響を及ぼしたのは奥舌母音である/u/のみであったという結果であっ た。 本審査委員会では,1)臨床的意義,2)データ採取時の詳細な設定,3)統計の選択などの質問がなされ たが,いずれも概ね妥当な回答が得られた。また,論文の記述に関して,データ採取時の詳細な設定の記載, 文献紹介の整理,figure legend の修正の指示がなされた。 本研究で得られた結果は,顎矯正手術を施行する患者における機能の把握に寄与するところ大であり,学位 授与に値するものと判定された。 歯科学報 Vol.113,No.3(2013) 317 ― 95 ―

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