Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
欠損歯列に対する咬合からのアプローチ
Author(s)
山下, 秀一郎
Journal
歯科学報, 114(3): 280-280
URL
http://hdl.handle.net/10130/3315
Right
歯列上の一部に歯の欠損が生じると,歯と同時にそれを支えていた歯周組織やそれに含まれる神経終末をも 失うことから,顎口腔系にはさまざまな影響がもたらされる。それらは欠損が生じた直後には一次性障害とし て起こるが,欠損を放置した場合には二次性障害として発現し,その時間や口腔環境,身体的条件などによっ て広範囲に及び,ときには対応が困難になることさえある。二次性障害の終末像である咬合位の変化が生じた 場合には,崩壊した咬合に対して新たな再構成を行わなければならず,いわゆる難症例として扱われることが 多い。 このような難症例に対して咬合の再構成を行う上で考慮すべき要件は,1)咬合高径,2)咬合平面,3) 咬合支持,4)咬頭嵌合位,5)ガイドの5項目に集約される。今日の部分欠損に対する補綴手段としては, ブリッジ,局部義歯,インプラント等があげられるが,これら5項目に対する術前の診断とそれに基づく術後 の予測を明確にすることは,各補綴方法を選択する際のアウトカムを客観的に評価する一助となるはずであ る。 “補綴には診断に役立つ検査がない”という言葉をよく耳にする。確かに臨床の場では,エビデンスという よりも術者の経験と勘に頼りながら試行錯誤を繰り返すという曖昧模糊な状況が多い。プロビジョナルを数か 月間使用して特に問題がなかったので,最終補綴に移行したという症例報告が散見されるのが現実である。プ ロビジョナルを装着する際に,はたして咬合高径は変化させたのか,咬合平面はどのように整えたのか,臼歯 部の咬合支持は確実に機能しているのか,咬頭嵌合時に顎関節や筋肉は調和しているのか,偏心位のガイドは 適切に付与されているのか,など明確にすべき項目は多々あるはずである。 演者は,このような臨床的疑問に答えるべく,咬合に関する基礎的あるいは臨床的研究を行ってきた。特に 近年では,主機能部位としての第一大臼歯の存在意義を明確にし,大臼歯部における咬合支持の重要性に関す る研究を継続的に推進している。昨今,北欧を中心として提唱されている短縮歯列の概念に対しては,その是 非について疫学的研究のみならず,機能的なアプローチが早急になされなければならないと考える。 本講演では,演者のこれまで蓄積した咬合に関する研究成果や,現在進行している研究の概要について解説 を行い,欠損歯列に対する咬合からのアプローチの一端を明らかにしたい。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 1984年3月 東京医科歯科大学歯学部卒業 1988年3月 同大学院修了(歯科補綴学専攻・歯学博士) 1992年4月 同大学歯科補綴学第1講座助手 1997年4月 米国テキサス大学ヘルスサイエンスセン ターサンアントニオ校留学 1999年4月 松本歯科大学歯科補綴学第1講座講師 2001年12月 同大学総合診療科助教授 2003年4月 同大学大学院顎口腔機能制御学講座助教授 2004年2月 同大学大学院顎口腔機能制御学講座教授 2007年2月 同大学歯科補綴学第2講座教授(兼務) 2011年4月 東京歯科大学口腔健康臨床科学講座教授 2011年11月 同大学口腔健康臨床科学講座講座主任 2013年6月 同大学水道橋病院副病院長 <所属学会> 日本補綴歯科学会指導医 日本顎関節学会指導医 日本口腔インプラント学会専門医