名経法学 第41号 (2018年) 論 説
学校給食の民間化に関する一考察
学校給食における
P
F
I
手法の導入を中心に
萩 原 聡 央
目次 はじめに I 学校給食の民間化の現状について 民問委託・PFr手 法 の 導 入 l 学校給食における民間委託の実際 ひとつの自治体の例を素材として 2 学校給食におけるPFr事業の実際 学校給食センタ一事業を素材として E 学校給食におけるPFr手法導入の問題点と課題 l 学校給食の意義と PFr手法導入の問題点 2 学校給食におけるPFr手法導入の課題 おわりにはじめに
近年,多くの自治体は,悪化が進む財政状況を立て直し,財政の健 全化を図るために,さまざまな取組みを行っている。学校給食もその 例外ではなく, 学校給食における調理業務の民問委託や,学校給食セ ンター施設等の整備・運営における PFI手法の導入など,学校給食 の民間化lに向けた取組みをすでに行っている自治体もあれば,その l 一般に 「民営化」とは.1"r
固有 公有』と『完全な私有』と対比して, その聞に段階的に差のある各種の所有形態のあることを前提としつつ, 前者からより後者の所有形態に近づく移行=r
改革J=転換を指す言葉導入に向けた検討を行っている自治体もある。 ところで,行政の民間化に目を向けてみると,
1
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8
0
年 代 以 降 の 民 間 化 政 策 は , 行 政 の 役 割 な い し 守 備 範 囲 を ど の よ う に 考 え る の か と い う 問 題 を 行 政 法 学 に 対 し て 提 起 す る も の で あ り2, 行 政 の 公 共 性 の 再 検 討 を 提 起 す る も の で あ っ た と い う こ と が で き るら そ し て , こ の1
9
8
0
年 代 以 降 の 民 間 化 政 策 は , 教 育 行 政 の 領 域 に お い て も 改 革 の 潮 流となり,1
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9
0
年 代 以 降 も一 層 拡 大・推進されてきたわけである40 そうだとすれば,教育・教育行政領域における民間化に関し,教育・ として使用されるもの」であり,すなわち, 1①政府・直営事業,②公社, ③公社特殊会社以外の特殊法人, ④特殊会社, ⑤一般の株式会社の順序 で公的関与は減少しているのであって, ①から⑤へ近っくことJ(原野麹 I~民営化』 と 『公共性』 の確保J ~現代行政法と地方自治J (法律文化社,1
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9
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年)2
8
1
頁)を 「民営化」と理解することができる。他方,いわゆ る「民間化」については,民営化,民間委託,公的分野への民間企業の 参入,行政への民間的手法の導入など 「官から民へ」の名のもとで進め られてきた一連の政策を総称する概念として用いられている(晴山一穂 「新自由主義の展開と行政法の変容J~行政法の変容と行政の公共性J (法 律文化社,20
0
4
年)1
7
頁)。したがって,1
民間化」は「民営化」よりも 広い概念として理解することが可能であり,また, 1教育・教育行政の領 域における 『民営化』は,その現象形態に照らせば,単に事業活動の経 営・管理形態の変更(狭義の民営化)の問題にとどまらず,右のように, 教育という課題をさまざまな段階および形態において民間=私人が引き 受けること (1私化J)
の問題として,検討されることが必要J
(竹内俊子 「教育行政における 『民間化』論」原野麹・浜川清・晴山一穂編 『民営化 と公共性の確保J(法律文化社,2
0
0
3
年)9
2
頁参照)であることから, 本稿では広く 「民間化」という用語を用いることにする。2
この点に関し,1
従来の行政法学は,一定の事務 その内容や範囲に ついては必ずしも明確な定義をしないままに が 『行政』の守備範囲 (責任領域)に属することを前提としたうえで,その 「行政』を対象とし て, ~公法と私法』 論,行政概念論,法治主義論,行政救済論,行政裁量 論など主要な行政法理論を組み立ててきた。したがって, ~行政の守備範 囲』をどのように考えるのかというこの問題は,これらの行政法理論す べてのあり方に直接かかわる問題であり,さらにいえば,行政法と行政 法学そのものの存在意義を問う問題であるといってよL、」との指摘があ る(晴山一穂 「日本における民営化・規制緩和と行政法J~行政法の変容 と行政の公共性J(法律文化社,2
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年)1
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2
頁)。 3 室井力 「国家の公共性とその法的基準」室井力・原野麹・福家俊朗・浜 川清編 『現代国家の公共性分析J(日本評論社,1
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年)15
-
1
6
頁参照。4
竹内・前掲注(1)9
2
頁。 2学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 教育行政領域において行政が担うべき役割・役務とは何か,教育・教 育行政の公共性とは何か,そして教育・教育行政における民間化はこ れをどのように捉えなおそうとするものなのか,についての検討が求 められることになるであろう。しかし,教育・教育行政領域の民間化 に係るこれらの問題すべてを検討することは,この小稿の行い得ると ころではない。 そこで,本稿では,教育・教育行政領域の民間化のうち,検討の対 象を学校給食における民間化の問題に限定して論じることにした L、。 以下では,学校給食における民問委託や
PFI
手法の導入に関する実 例を踏まえながら,学校給食の民間化の現状を概観したうえで(1,) 学校給食センター (学校給食共同調理場)等におけるPFI
手法導入 に係る検討をとおして,学校給食の民間化における問題点と課題を明 らかにすることとする (ll)。I
学 校 給 食 の 民 間 化 の 現 状 に つ い て 民 間 委 託 ・P
F
I
手 法 の 導 入1
9
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年代以降の行政改革は,全国各地の自治体における 「行革」 の推進に影響を及ぼし5,学校給食業務の民間化にもその影響が及ぶ こととなった。すなわち,1
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5
年に文部省体育局長から各都道府県 教育委員会教育長に宛てられた 「学校給食業務の運営の合理化につい てJ
(文体給第5
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号1
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年1
月2
1
日文部省体育局長通知)では,学5
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8
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年7
月9
日,臨時地方行政改革推進小委員会は地方公共団体におけ る行政改革の推進方策に関する報告書を提出したが,それは第二臨調の 各種答申の論理を踏襲し,より一層踏み込んだ形で地方行革を推進する 内容を含んでおり,地方行革に重要な影響を与えるものであった。この 点については,原野麹 iW行革審』における 『地方行革』論JW現代行政 法と地方自治J(法律文化社,1
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年)2
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-
2
5
8
頁を参照。校給食の 「業務の運営については,臨時行政調査会,臨時行政改革推 進審議会及び総務庁から合理化の必要性が指摘されている」とし, 「地域の実状等に応じた適切な方法により運営の合理化を推進する」 こ と を 自 治 体 (=学校設置者)に求めるものであった。そこでは,合 理化の実施に関し,学校給食の質の低下を招くことのないように十分 配慮することを前提としたうえで, ①パートタイム職員の活用,②共 同調理場方式の採用,および③ 民 問 委 託の実施などの方法により, 「人件費等の経常経費の適正化を図る必要があること」が指摘されて いる60 このように, 1980年代以降において学校給食の民間委託化が推進 される中,学校給食業務の民間化の新たな手法として,学校給食セン ターや学校給食共同調理場などの整備,維持管理および運営等におけ る
PFr
(
P
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F
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a
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r
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i
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e
)
手法の導入が主張されるように なった。このPFr
については,一般に,民間の資金や経営能力・技 術力を活用して,公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・ 運営を効率的・効果的に整備する公共事業の手法であると理解されて おり, 1999年7月の 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等 の促進に関する法律J(以下
iPFr
法」という。)の成立(同年9
月施 行)によって,PFr
手法による事業の実施が可能となった7。このPFr
6 なお, この通知では, 1960年12月14日付け体育局長通知 「学校給食に 従事する職員の定数確保および身分安定について」で示された学校給食 調理員の配置基準の弾力的運用の要請に係る指摘のほか, 1971年 4月 8 日付け体育局長通知 「学校給食の食事内容について」に触れ, これは 「学校給食の調理の原則を示したものであって,学校給食業務の民問委託 を禁ずるものではない」との指摘がなされている。7 2
000年3月にP
F
I
事業の実施に関する基本方針が告示され,その後, 4P
F
I
に関する5
つのガイドラインが公表されている。なお, "1経済財政運 営と改革の基本方針2015J(2015年6月30日閣議決定)や "IPPP
j
P
F
I
の抜本改革に向けたアクションプランJ(
20日年6月6日民間資金等活用 事業推進会議決定)なとにおいて,地方自治体には公共施設等の民間開 放を進めることによる民間の創意工夫を生かしたサービスの創出学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 手法の導入の目的について, 内閣府は,
I
安くて優れた品質の公共サー ビスの提供を実現することを目的と」するとの説明を行ってきたとこ ろであが,学校給食においても,学校給食センタ一等へのP
F
I
手法 の導入が進められている。 本章では,このような学校給食における民間委託やP
F
I
手法の導 入に関する一部の具体例を取り上げながら,学校給食における民間化 の現状の一端に触れることにしたL。、 1 学校給食における民間委託の実際 ひとつの自治体の例を素材として (1)学校給食の提供方式と民問委託の対象業務 学校給食の提供については,各自が家庭から弁当を持参する方式を 除けば,主として,①単独調理場方式(自校方式),②センタ一方式 (共同調理場方式および親子方式を含む),③デリパリ一方式が挙げら れる。文部科学省の 「学校給食実施状況等調査(
2
0
1
6
年5月 1
日現 在H
によれば,全国の公立小学校における単独調理場方式は4
8
.
0
%
, センタ一方式は5
1.5%
であり,全国の公立中学校における単独調理 場方式は2
6
.
9
%
,センタ一方式は6
2
.
2
%
である。 小中学校いずれも センタ一方式の割合が高くなっていることが分かる。また,同調査に よれば,単独調理場方式およびセンタ一方式における外部委託比率は, 調理が4
6
.
0
%
,運搬が4
4
.
7
%
,物資購入・管理が1
0
.0%
,食器洗浄 が4
3
.
5
%
,ボイラー管理が2
2
.
3
%
,その他の業務が1
3
.4%となって おり,学校給食における 「調理J,I運搬」および 「食器洗浄」に係る(
P
P
P
j
P
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I
への取組み)を進めることが求められている(国立市 「国立 市立学校給食センター整備基本計画J(
2
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1
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年1
1
月)4
2
頁参照)。8
内閣府の民間資金等活用事業推進室(
P
P
P
j
P
F
I
推進室)ウェブサイト参 日召。 9 政府統計の総合窓口 (e-Stat: https:jjwww.e-stat.go.jp)参照。外部委託比率が高い数値を示していることが分かる九 このように,完全給食および補食給食を実施している学校のほぼ半 数が,調理・運搬・食器洗浄といった学校 給 食 業 務 を 外 部 (=民間) に委託しているのが現状である。そこで,以下において,飯能市にお ける学校給食の民間委託の実際について触れることにしたい。ここで 飯能市の実例を取り上げる理由は,飯能市が2013年度から学校給食 における調理業務の民問委託を継続的に進めており, 学校給食民問委 託化に係る最近の実例であるほか,同市が学校給食民問委託化を推進 する理由として 「正規調理員の定年退職に伴う退職不補充
J
l
l
の方針 を挙げているなどの特徴がみられるからである。 (2)飯能市における学校給食の民間委託 飯能市では, 2007年3月の 「学校等給食検討委員会報告書」にお いて,1
1
0
校の給食調理室の統廃合を行い,退職不補充による正規調 理員1施設l名配置の困難化の解消及び給食経費の削減を図り,将来 退職不補充が進んだ場合は,業務委託等の検討を行う」という方針が 示された。教育委員会ではこの方針にもとづいて共同調理化を進め, 2009年度および2011年度にそれぞれ2か所,計4か所の共同調理場 を開設することで対応してきたが,退職不補充による正規調理員の減 少が進み, 2013年度からは正規調理員の数が施設数を下回るため, 10公立小中学校の学校給食における調理,運搬および食器洗浄の外部委託 比率は,2012年5月1日現在はそれぞれ35.8%,41.2%および34.3%, 2014年5月1日現在はそれぞれ41.3%,43.9%および39.3%であり, 2012年から 2016年にかけていずれの割合も増加傾向にある (政府統計の 総合窓口・前掲注 (9)参照。) 11 飯能市ホームページ「学校給食の調理業務の民問委託化 (公開日:2017 年l月19日)J (https:jjwww.city.hanno.lg.jpjarticlejdetailj1069)に よれば,岡市では正規調理員が退職した場合でも代わりの正規調理員を 採用しないこととしており, 学校に配置されている正規調理員は2035年 度末で全員退職になるとされる。 6学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 調 理 場
l
施 設 に 正 規 調 理 員1
名 を 配 置 す る こ と が で き な い こ と が 予 想 された。 こ の よ う な 状 況 か ら , 飯 能 市学 校 給 食 検 討 委 員 会は 2010年 8月 か ら7回 の 会 議 を 開 催し, 正 規 調 理 員 の 退 職 不 補 充 と 自 校 方 式 ( 給 食 共 同 調 理 場 を 含 む ) の 堅 持 を 前 提 条 件 と す る 2013年 度 以 降 の 学 校 給 食 の あ り 方 を 検 討 し , そ の 結 果 を 2011年 3月 に 「学 校 給 食 検 討 委 員 会 報 告 書」としてまとめた。 同 報 告書に よ れ ば , 調 理 業 務 , 配 膳 , 後 片 付 け ・ 清 掃 の み の 委 託 で あれば,将来にわたる学 校 給 食の 質 の 維 持 と 安 定 的 な 供 給 に つ い て 十 分対応できると考えられるので, 2013年 度 か ら 調 理 業 務 の 民 間 委 託 化 が望 ま し い と の 結 論 が 示 さ れ た120す な わ ち , 学 校 給 食 業 務 に お い て民 間 委 託化される業務は,I
調 理 作 業j,I
配 膳j,I
洗 浄 ・ 清 掃 ・ 保 管」であり,この3
つ の 業 務 を 市 採 用 の 調 理 員 に 代 わ っ て 民 間 会 社 採 用 の 調 理 員 が 行 う こ と に な る が , そ の 他 の 学 校 給 食 業 務 で あ る 「献 立 の 作 成j,I
食 材 の 発 注j,I
調 理 の 指 示」に つ い て は 今 ま で ど お り , 学 校 の 栄 養 士 が 行 う こ と に な る 九 12 飯能市学校給食検討委員会 「学校給食検討委員会報告書j(2011年 3月) 9頁。なお,同報告書によれば,給食の提供方法に関し, i(A案)全調理 員の臨時職員化j,i(B案)調理業務の民間委託化j,i(C案)人材派遣 の活用」およびi
(
D
案)保育所正規調理員の異動」の4
案について検討 が行われ,最終的には A案と B案の比較検討の結果, B案が望ましいと の結論に至ったことが述べられている。なお,埼玉県内の学校給食の民 間委託の状況に関し, 20日年度における埼玉県内の自校方式で学校給食 を提供している小中学校は 496校(小学校 362校,中学校 134校)であ り,そのうち調理業務を民問委託している小中学校は 20市町で 316校 (小学校192校,中学校124校)となり,全体の 63.7%の給食の調理業務 が民間委託されているとの指摘がある(飯能市ホームページ・前掲搾 (11)参照)。 13 飯能市の学校給食においては, ①献立の作成 〔栄養士)=争②食材の発注 〔栄養士〕今③調理の指示 〔栄養士〕今@調理作業 【民間会社】今⑤調理 の検食 〔学校長・栄養士)=争@配膳 【民間会社】=争⑦給食時間 〔担任・ 栄養士〕キ@洗浄・清掃・保管 【民間会社】とL寸学校給食の流れのう ち,民間委託される業務は0
,(I)および@のみとされた。この報告を受けた飯能市教育委員会は, 2011年
5
月1
9
日に開催さ れた飯能市教育委員会5
月定例会において,学校給食の自校方式(給 食共同調理場を含む)を堅持するとともに,退職により正規調理員が 配置できない施設における調理業務の民間委託導入を決定した。その 結果, 2013年度には中学校3校,そして2014年度には中学校1校の 給食調理業務がそれぞれ民問委託され,さらに2015年度には3施設, 2017年度には2施設の給食共同調理場の給食調理業務がそれぞれ民 問委託された。 飯能市は,民問委託後の学校給食に関し,①学校で選定した物資を 使い,調理指示書にもとづいて調理するため,給食の質や味が低下す ることはない,②できあがった給食は,児童生徒に提供される前に学 校長や学校栄養士が検食し,調理指示書のとおり調理できているかを 確認する,③食物アレルギーへの対応については,基本的に従来の対 応を採りながら,より充実した対応が可能となるように業者と協議す る,④安全および衛生管理面については飯能市教育委員会が責任をもっ て業者を指導し,万一,給食に起因する事故等が発生した場合は飯能 市教育委員会が責任をもって対応する,⑤民問委託にともなって給食 費が変更されることはない,⑥食育は各学校の食に関する全体計画, 年間指導計画にもとづき,給食の時間だけでなく様々な教科や学級活 動等の全教育活動で行われ,また,担任・教科の教諭が栄養教諭・栄 養職員と連携し,食育の狙いに沿って児童・生徒に指導するため,調 理業務の民問委託が食育に影響することはないと説明し,I
今後も, 安定した安心・安全な学校給食の提供に努め,順次給食調理業務の民 問委託化を進めてし、く予定で」あると述べている九1
4
飯能市ホームページ・前掲注 (11)および同 「調理業務の民問委託に関 するQ&AJ(https:jjwww.city.hanno.lg.jpjarticlejdetailj1069)参照。 8学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 2 学校給食における PFI事業の実際 学校給食センタ一事業を素材として 学校給食業務に関する施設である学校給食センターや学校給食共同 調理場などの整備,維持管理・運営等に係る事業手法としては,表1 のとおり,従来の方式である公設公営方式のほか,前述した飯能市に おける学校給食センターの民問委託にみられるような公設民営方式お よび
PFr
手法にもとづく各方式などが挙げられる。 ところで,学校給食において導入されるPFr
手法として,BTO
C
B
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方式,BOT C
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方式およびBOO
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e
)
方式が存在する。この3
つ の方式で大きく異なるのは,学校給食事業の期間中または終了後にお いて,当該施設を自治体(公)が所有するのか,それとも民聞が所有 するのかという点である。BTO
方式では施設が自治体に譲渡された 後に事業が運営されるのに対し,BOT
方式(またはBOO
方式)で 表1 学校給食センタ一等の整備,維持管理・運営等に係る事業手法 事業方式 資金調達 設 計 維持管理 施設の所有 -建設 -運営 運 営 中 事 業 終 了 後 公設公営方式(従来方式) 公 公 公 公 公 公設民営方式 公 公 民間 公 公BTO
方式 民間 民間 民間 公 公B
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BOT
方式 手 民間 民間 民間 民間 公 法B
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方 式 民間 民間 民間 民間 民間所有B
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又は撤去P
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方 式 公 民間 民間 公 公 的D
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手DB
方式 公 民間 公 公 公 法D
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B
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i
l
d
民設民営方式 民間 民間 民間 民間 民間 リース方式 民間 民間 公・民間 民間 民間 (出典)国立市 「国立市立学校給食センター整備基本計画J(2016年11月)42頁は民聞が施設を所有しながら事業を運営し,事業期間終了後に当該施 設を自治体に譲渡する(または撤去もしくは民聞が所有する)ことに なる。 この
BOT
方式については,施設を民聞が所有したまま事業を運営 するため, ①BTO
方式に比 べ て 運営の裁量性や自由度が増し, 事 業 者の創意工夫をいっそう発揮しやすい,②修繕リスクなどの想定され るリスクの多くを,P
F
r
事業を実施する民間事業者に移転しやすい, などのメリットが主張されている。また,BOT
方式のデメリッ卜と して考えられる災害時の緊急対応についても,東日本大震災後の復旧 を例に挙げ,民間所有であるがゆえに,より迅速な復旧が進められた との見方もある九 このようなメリットが主張されるBOT
方式であるが,文部科学省 はBOT
方式における公立学校施設の完工時の負担金の交付について, 「公立学校施設整備費の支出対象は公共の資産を形成するものに限定 されており,BOT
方式における施設完工時に国庫補助を行うことは, 資 産 を 形 成しない事業に補助金を行うことと同義であ」り,I
所 有 権 を取得していない地方公共団体に対し,国庫補助を行うことはできな い」と説明している160 そのためか, 最近においては, 学校給食PF
r
事 業としてBOT
方式が用いられた事例は少なく17,ほとんどがBTO
1
5
総務省i
P
F
I
の推進に関する行政評価・監視結果に基く勧告J(
2
0
1
5
年4
月)13
-
1
4
頁。1
6
総務省i
P
F
I
の推進に関する行政評価・監視結果に基づく勧告J(
2
0
1
5
年4
月)1
6
頁。なお,文部科学省「複合化公立学校施設P
F
I
事業のための 手引書J(2
0
0
4
年3
月)4
3
頁には,公立学校施設の整備に当たりBTO
方 式のみならず B01'方式による施設整備であっても国庫補助の対象とすると していたが,現在においてBOT
方式は原則として国庫補助の対象となって いない(文部科学省ホームページi
P
F
I
を活用した公立学校施設の整備J)。1
7
近年におけるBOT
方式の例としては,仙台市南吉成学校給食センターの 事例を挙げることができるが(仙台市 i(仮称)仙台市南吉成学校給食セ ンター整備事業実施方針J(2
0
1
4
年1
月)5
頁参照),BOT
方式を採用す る自治体はごく一部にとどまると思われる。 10学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 方式となっているのが現状である。 そこで,以下では,一般に指摘されている
PFI
の目的および効果 について確認するとともに, 学校給食におけるBTO
方式によるPFI
導入の実際について指摘する。 (1)PFI
手法導入の目的と効果PFI
法4
条1
項にもとづき国が策定した 「民間資金等の活用による 公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針J(
2
0
0
0
年3
月 1
3
日総理府告示第1
1
号)は,I
公共性のある事 業 (公共性原則) を,民間の資金,経営能力及び技術的能力を活用して(民間経営資源 活用原則),民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより, 効率的かつ効果的に実施するものであり(効率性原則),特定事業の 選定及び民間事業者の選定においては公平性が担保され(公平性原則), 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されねば ならない(透明性原則)Jと述べ,PFI
事業における5
つの原則を示 している。さらに,PFI
事業の実施にあたっては,I
各段階での評価 決定についての客観性が求められ(客観主義),公共施設等の管理者 等と選定事業者との聞の合意について,明文により,当事者の役割及 び責任分担等の契約内容を明確にすることが必須であり(契約主義), 事業を担う企業体の法人格上の独立性文は事業部門の区分経理上の独 立性が確保されなければならない(独立主義)Jとし,PFI
事業実施 における3
つの方針が示されている。 そして,同基本方針は,この5
原則3
主義にもとづくPFI
事 業の 実施により次のような効果が期待できるとする。すなわち,①国民に 対して低廉かっ良質なサービスが提供され,②公共サービスの提供に おける行政の関わり方が改革されるとともに, ③民間の事業機会を創 出することを通じて経済の活性化に資する,という3
つの効果である。 したがって,公共施設等の管理者等は,公共サービスの提供を目的に事業を行おうとする場合,
I
当該事業を民間事業者に行わせることが 財政の効率化,公共サービスの水準の向上等に資すると考えられる事 業については,できる限りその実施をPFI事業として民間事業者に 委ねることが望まれる」と指摘している。 また,多くの自治体においても, PFI導入の効果として次の内容が 挙げられるのが一般的である。すなわち, ①良質な公共サービスの提 供=PFIを導入することにより,民間事業者の経営ノウハウや技術的 能力を公共事業に活用することに加えて,設計・建設・維持管理・運 営を一体的に行うことにより創意工夫が発揮されることで質の高い公 共サービスの提供が期待できる,②事業費の削減=性能発注や一括発 注等による事業期間全体のコスト管理が効率的に行われることによる 事業費の削減が期待できる, ③行政と民間のパートナーシップの形成= 民間事業者の創意工夫を尊重しつつ,公共施設の設計,建設,維持管 理,運営に関する業務を,可能な限り民間に委ねることにより,官民 の適切な役割分担にもとづく新たなパートナーシップの形成が期待で きる, ④公共の財政支出の平準化=PFI事業者が施設整備等の初期投 資に必要な費用を調達することにより,市は施設整備費相当額を事業 期間中にサービスの対価として分割して支払いを行うこととなるため, 財政支出の平準化が可能となる,⑤民間の事業機会の創出=従来,市 が行ってきた事業を民間に委ねるため,民間事業者にとっては新たな 事業機会を得ることになるとともに,これにより地域経済の活性化へ の寄与が期待される, ⑥行政の説明責任の確保=PFI事業の発案から 終結に至るまで,透明性の確保が求められるため, 実施方針の公表・ 特定事業の公表・公募・事業者の選定等の手続を通して行政の説明責 任が確保される,といった効果である180 18 静岡市 「静岡市立南部学校給食センターPFI導入可能性調査報告書 (概 要版)J
(2007年7月)6頁。なお, PFI事 業の効果のうち低廉かっ良質 12学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) なお,公設民営方式とPFI事 業 と の 違 い で あ る が , 公 設 民 営 方 式 が主として単年度かっ個別的契約であるのに対し, PFI事業は長期か っ包括的契約であるという違いがある。すなわち, PFI事業において は,業務を長期的・包括的に民間事業者に委ねることにより,①民間 事業者が自らのノウハウを最大限活用できる仕組みを導入できること, ②業務に係るコストの削減とサービスの質の向上を同時に図ることが できること,などのメリットが期待できるとされる九 公 設 民 営 方 式 が存在するなかでPFI事業の導入が主張される所以である。 (2)学校給食における PFI事 業 (BTO方式)の実際 学校給食における PFI事業のうち,ここではBTO方式にもとづく PFI事業の例として,学校給食における PFI事 業 の 先 行 事 例 と い え る 「八雲村学校給食センター施設整備事業」および2020年度の運用 開始を目指している 「須坂市学校給食センター整備運営事業」の
2
つ を取り上げることにしたい。 ① 八 雲村学校給食センター施設整備事 業20 八雲村学校給食センター施設整備事 業は,島根県八束郡八雲村(現 なサービスの提供については, IPFIは,民間の資金や技術的能力を活用 しより少ない財政支出で質の高い公共サービスを市民に提供することに ある。このため,PFIでは費用対効果の観点から,税金 (Money)の使 用価値 (Value)を最大化しようとする考え方 (VFM=Value For Money)が基本となっている。PFI事業において, IVFMJは最も重要 な概念のひとつであり,サービス提供の事業主体を公共と民間のどちら にするかを決める際に,公共と民間とが提供するサービスが同ーの水準 にある場合は, 事業期間を通じた公的財政負担の縮減が期待できる方を 採用するという考え方を基本としている」との説明がある(静岡市・同 「報告書 (概要版)J5頁)。1
9
国立市・前掲注(
7
) 4
3
-
4
9
頁のほか,川崎市教育委員会 「川崎市立中 学校完全給食実施方針J(2014年10月)7頁など参照。なお, PFI導入 に係るデメリットについては, BOT方式およびBOO方式について運営 期間中の市の関与の困難性と補助金が適用されない可能性が挙げられる ほか, I一般に資金の調達に係る金利が市債の金利よりも高くなるJ,ISP C設立・運営に係る費用が必要である」との指摘がある。松江市,
2
0
0
5
年に閉村)において,旧学校給食センターを建て替え, 衛生的かっ安全で働きやすいHACCP
対応の施設を整備し当該施設 の維持管理を行うPFI
事業として,2
0
0
2
年9
月1
日から運用が開始 された施設である(事業期間は3
0
年間)。同給食センターの運営は, 所長1
名,栄養士1
名,調理員4
名および臨時調理員数名の体制で行 われ,給食供給能力は一日約1
,0
0
0
食,年間稼動日数は約2
0
0日であ
る。 同給食センターの特徴は,PFI
事業の範囲が施設整備および維持管 理に限定され,給食センターの運営がPFI
事業の範囲から除かれて いる点にある。すなわち,地産地消や食育といった八雲村の方針を維 持継続していくため,献立作成や調理等の運営業務は従来どおり,村 (市)の直営により行うこととし,給食センターが中核となって学校 や地域が連携して地元の新鮮で安心な食材を使った給食の提供を実現 しているとの説明がなされている。 センター運営におけるコス トやリスクの点については,本事業は事 業期聞が3
0
年と長期にわたるため,その聞に,新技術を用いた設備 機器が開発され,それを新たに整備して用いる方が事業期間全体のコ ストが低減される可能性があり,こうした施設陳腐化リスクが発生し た際には,官民で協議して柔軟に適切な対応をとることができるよう に事業契約書に 「技術革新による施設の陳腐化が発生した際には官民 で協議して対策を講じる」旨が記載されている。また,食中毒が発生 した場合の責任は,食中毒発生の原因者が負うこととなるが,食中毒 の原因を特定することができなかった場合には,村が損害賠償等を行 う=リスク分担とすることで,民間事業者に過度の負担を与えず,よ り多くの民間事業者が本事業へ応募可能となるように配慮したと説明2
0
八雲村 「八雲村学校給食センター施設整備事業実施方針J(
2
0
0
1
年4
月) 参照。 14学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) されている。 なお,八雲村は,本事業のPFr導入のメリッ卜について,多くの 民間の創意工夫やノウハウを取り込むことができ,良質な施設により 職員の意欲が高められ, 事業費の削減が実現できたことを挙げている。 他方, PFr導入のデメリッ卜については 「特段のデメリットは見当た らなし、」と述べており, PFr事業が成功したとの認識を示している九 ②須坂市学校給食センター整備運営事業22 長野県須坂市では,共同調理場方式による学校給食の提供を行って きた学校給食センター
(
1
9
7
6
年建設)の老朽化と2
0
0
9
年に改正され た 「学校給食衛生管理基準」への対応の必要性から,新しい学校給食 センターを整備することとし,2
0
1
7
年8
月に 「須坂市学校給食セン ター整備運営事業に係る PFr手法導入可能性調査業務報告書」 を, 同年1
0
月には i(新)須坂市学校給食センター整備運営事業実施方針」 を公表し, PFr手法による学校給食センター(以下 「新学校給食セン ター」という。)の実施を明らかにした。 そこでは,新学校給食センターの施設整備・運営に関し, (i) 学 校給食衛生管理の基準およびHACCP
の考えにもとづいた作業区域 の確保と衛生管理設備の整った施設とし,調理の工程管理を行う, (u) 施設見学や栄養教諭等による食育の研修ができ,食育を地域に 発信できる施設とする, (函)食物アレルギーに対応できる調理設備 を整えた施設とし,調理・配送・配膳までを考慮した一連のアレルギ一 対応システムを構築する, (iv) 地場産業の活用, 日本型の食文化を 継承できるような多様な献立に対応できる施設とする, (v) 災害時2
1
内閣府ホームページ 「事例8八雲村学校給食センター施設整備事業(事 業概要) (事業データ)J (http://www8.cao.go.jp/pfijpfi_jouhou/ tebikijjireijjirei08_01.html)参照。2
2
須坂市 i(新)須坂市学校給食センター整備運営事業 実施方針J(
2
0
1
7
年1
0
月)。の稼働を想定し多様なエネルギーを組み合わせた施設とし,非常食の 備蓄を行うことで,インフラ復旧後に炊き出しができる施設とする, ( vi) 省エネルギー機器の導入, 自然エネルギーの活用等環境に配慮、 した施設とする,という
6
つの基本方針が示された。 事業の内容としては,1
日4
,5
0
0
食の調理能力を有する新学校給食 センターの設計・建設および維持管理・運営を行うこととされる。ま た, 事業方式については,P
F
I
法1
4
条l
項にもとづき,須坂市が事 業者と締結するP
F
I
事業に係る契約に従い,事業者が新学校給食セ ンターの設計・建設等の業務を行い,須坂市に所有権を設定した後に, 事業契約締結日から2
0
3
5
年7
月末までの期間中,維持管理および運 営業務を遂行する方式(BTO
方式)により実施することとなってい る。 新学校給食センターの事業範囲に関し, (i)市が実施主体となる 業務として,献立の作成,食材の調達,給食の検食,食育に関する指 導とする一方, (u)事業者が実施主体となる業務として,施設の設 計・建設,調理,給食配送・回収,廃棄物処理,食器等洗浄,建築物 保守管理業務,建築設備・厨房機器等保守管理業務,什器・備品等保 守管理・更新業務,食器類・食缶等の更新業務,外構等維持管理業務, 環境衛生・清掃業務,保守警備業務,修繕業務としている。 ところで,須坂市では,新学校給食センターの事業実施に向けての 定量的評価と定性的評価を行っている九このうち,定量的評価に関 しては,P
F
I
手法にもとづくVFM
が3
.
1
%
であり,市財政負担総額 が従来の手法(公設民営)の場合には4
4
億7
2
3
万2
千円であるのに 対し,P
F
I
手法の場合は4
2
億6
,8
8
9
万円となっている。また,定性 的評価に関しては,P
F
I
手法の場合は,財政負担の平準化が可能,コ2
3
須坂市 「須坂市学校給食センター整備運営事業に係るP
F
I
手法導入可能 性調査業務報告書(概要版)J(2017年8月)5-6頁。 16学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) ス卜縮減が可能,効率的な事業推進が可能,良好な状態での施設維持 が可能,市内の企業参画の可能性, 事業契約後の事務負担の軽減など が挙げられている。須坂市では,これらの定量的および定性的評価に もとづき,
I
新学校給食センターの整備運営手法について,従来手法 で行った場合に比べてP
F
I
手法等で実施した場合,市の財政負担の 軽減が見込まれ,定性評価においてもP
F
I
手法等の優位な点が確認 でき」ると述べている。 なお,須坂市では,2
0
1
8
年7
月1
8
日,すでに新学校給食センター 整備運営事業者を決定しており,2
0
2
0
年2
学期から運用を開始する 予定である。そこでの落札価格は4
6
億4
,1
1
3
万8
,0
0
0
円 (本事業の 予定価格は4
8
億1
,0
5
6
万円とされ,いずれも消費税及び地方消費税 額を含んでいな L、)と記載されており24,2
0
1
7
年8
月に報告された新 学校給食センターの事業実施に向けての定量的評価におけるコストと の違いがみられる。また,2
0
1
7
年1
1
月2
9
日付の I(新)須坂市学校 給食センター整備運営事業 特定事業の選定について」では,財政負 担額の比較の結果,P
F
I
事業として実施する場合には本事業を市が自 ら実施する場合に比べて3
.
5
%
の削減を期待できるとし,市から事業 者に移転するリスクを勘案すればVFM
の拡大がより見込まれると述 べている。 さらに,2
0
1
8
年7
月3
1
日付で公表された I(新)須坂市学校給食 センター整備運営事業 事業者選定結果J
7
頁によれば,市が直接実 施する場合の財政負担額が4
4
億2
,8
0
0
万円であるのに対し,P
F
I
事 業として実施する場合の財政負担額は4
1
億1
,4
0
0
万円であり,市の 財政負担の削減効果として,現在価値換算(割ヲ│率を2
.
5
%
とし,物2
4
須坂市i
T(
新)須坂市学校給食センター整備運営事業』に係る落札者の 決定についてJ(
2
0
1
8
年7
月1
8
日)須坂市ホームページ(
h
t
t
p
s
:
/
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w
w
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i
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y
.
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k
a
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a
g
a
n
o
・j
p
/
)。
価上昇率等は見込んでいない)で約7.1%削減されることになったと 指摘されている。 このように,各報告書において従来の手法による場合と
PFI
事 業 として実施する場合のコスト表示に違いがみられるが,これに関する 十分な説明は行われていないように思われる。E
学 校 給 食 に お け るP
F
I
手 法 導 入 の 問 題 点 と 課 題 本章では,すでに指摘した学校給食の民間化の現状を踏まえ,学校 給食の意義からみた学校給食センタ一等におけるPFI
手法導入の問 題点を明らかにしたうえで,学校給食の公共性確保に向けた学校給食PFI
手法導入における課題について述べることにする。1
学校給食の意義とP
F
I
手法導入の問題点 (1)学校給食の意義 学校給食法は, "[この法律は,学校給食が児童及び生徒の心身の健 全な発達に資するものであり,かっ,児童及び生徒の食に関する正し い理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすものであること にかんがみ,学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施 に関し必要な事項を定め, もって学校給食の普及充実及び学校におけ る食育の推進を図ることを目的とするJ
(1条)と定めている。 そして,同法2
条は,義務教育諸学校における教育の目的を実現す るために,学校給食を実施するにあたっての7
つの目標を挙げている九 25 文部科学省 「学校における食育の推進・学校給食の充実」では,食育基 本法 (2005年)や食育推進基本計画の制定に関連し,学校において積極 的に食育に取り組んでいくことの重要性と,学校における食育の生きた 教材となる学校給食の充実を図ることを述べ,学校における食育の推進 と学校給食の充実の関係について指摘している(文部科学省ホームペー ジ参照)。 18学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) すなわち,①適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること(1 号),②日常生活における食事について正しい理解を深め,健全な食 生活を営むことができる判断力を培い,及び望ましい食習慣を養うこ と (2号),③学校生活を豊かにし,明るい社交性及び協同の精神を 養うこと (3号),④食生活が自然の恩恵の上に成り立つものである ことについての理解を深め,生命及び自然を尊重する精神並びに環境 の保全に寄与する態度を養うこと
(
4
号),⑤食生活が食にかかわる 人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め,勤労 を重んずる態度を養うこと (5号),⑥我が国や各地域の優れた伝統 的な食文化についての理解を深めること (6号)および⑦食料の生産, 流通及び消費について,正しい理解に導くこと (7号)である。 学校給食の目的および目標を掲げる学校給食法の制定趣旨について,1
9
5
4
年9
月2
8
日の文部事務次官通達 「学校給食法並びに同法施行令 等の施行についてJ
(文管学第5
4
3
号)は,I
学校給食は,小学校等に おける教育目的の実現を期するために実施されるもので,これは児童 に望ましい食事に関する経験をかさねさせ,それによる食生活の科学 的,合理的進歩向上をめざしている」と説明している。このように, 学校給食法によれば,学校給食は教育の一環として位置つeけられてい ると理解することができる。(
2
)学校給食における
PFI
手法導入の問題点 学校給食におけるPFI
手法導入の問題として,次のような指摘を 行うことができると思われる。 ① 学校給食法の趣旨からみた問題 すでに述べたとおり,学校給食法によれば学校給食は教育の一環と して位置づけられるべきものである。学校給食は献立の作成と調理に よって成り立つため,栄養士と調理員の協力 ・連携が不可欠である。 栄養士の指示内容は,単なる献立の作成にとどまらず,決められた栄養価にもとづく材料選択から具体的な調理方法に至るまで詳細にわた るが,これは学校給食が教育の一環と位置づけられていることからく る必然的なものである九 しかし,献立作成業務を自治体が行い,調 理業務を民間事業者が行うという場合,栄養士と調理員との連携や協 働作業に影響が生じ得ることが一般に指摘されている九 したがって, 学校給食の目的を「児童及び生徒の心身の健全な発達に資するもの」 (1条)とし,学校給食を実施にするにあたり 「義務教育諸学校にお ける教育の目的を実現するため
J
(2条)の目標を掲げている学校給 食法の趣旨からは,調理業務を献立作成業務と切り離して民間事業者 に委ねることの問題を指摘することができる。 ② 子どもの権利保障からみた問題 学校給食法によれば,学校給食は「心身の健全な発達に資するもの」 (1条)であり,教育の一環であると理解されることから,憲法26条l
項の教育を受ける権利のほか,憲法2
5
条の生存権とも関わる内容 でもある。したがって,学校給食のあり方を考えるうえでまず優先さ れるべき基準は,子どもの権利や発達の保障という視点であるという ことができるヘ 学校給食の安定的供給や安全性 ・質の確保は,子ど もが給食をおいしいと感じるかどうか,子どもが給食を通して食に関 する正しい理解を持つなどの教育的効果を有するかどうか,給食が子 どもの成長に資するかどうか,という観点と密接に関係する。子ども の権利の保障という観点からからみた場合,学校給食の安定的な供給 26 自治体アウトソーシング研究会編著『改訂版Q&A自治体アウ トソーシ ングlJ(自治体研究社,改訂第2
版.2
0
0
5
年)1
2
0
頁。2
7
二宮厚美『自治体の公共性と民問委託 保育・給食労働の公共性と公務 労働一Jl (自治体研究社.2
0
0
0
年)1
4
3
-
1
4
4
頁。ここでは,東京都の民 間委託の例を挙げながら.I
栄養士の献立作成という 『頭の労働』を公共 部門に残し,調理師の 『手の労働』は民問委託にしてもかまわない,と いう理屈がここで破産していることがわかる」との指摘がある。2
8
二宮・前掲注(
2
7
)
1
4
8
頁参照。2
0
学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) とその安全性および質が確保されるとともに,教育的効果がもたらさ れているかどうかが問題となる。 ところで,民問委託の場合と同じく, 自治体が
PFI
を導入するメ リットとして挙げるのはコスト削減を図ることができるという点にあ る。しかし,コスト削減が図られるといっても,多くの場合は結局の ところ人件費の問題にいきつくと思われる九 つまり,民間事業者に あっては,非正規雇用 の 職員の採用や正規雇用であっても労働条件・ 賃 金水準を低くするほか,十分な人員を配置しないなどの人件費抑制 の手段を講じることが予想される。そうすると,調理をはじめとする 学校給食業務に係る経験を有していない職員や,学校給食は教育の一 環であり,その教育の担い手であるという意識を十分に有していない 職員による調理業務が行われる可能性を否定することができず,学校 給食の安定的供給や安全性・質の確保を図ることができない状況を招 くおそれがある300 このように,子どもの権利を保障するという立場からは,学校給食 業務を民間事業者が行うことの問題を指摘することができる。 ③ コスト削減の指摘からみた問題 学校給食におけるPFI
手 法 導 入 を 目 指 す 自 治 体 は , そ の 理 由 の ひ とつとして,コスト削減を図ることができる旨を挙げている。前述の 須坂市もPFI
事 業 と し て 学 校 給 食 業 務 を 運 営 し た ほ う が コ ス ト 削 減 を図ることができることを主張している。 しかし,実際にコスト削減を図ることができるのかというと,必ず2
9
二宮・前掲注(
2
7
)
1
5
0
頁。3
0
たとえば,給食業務の民間委託の事例であるが,新学期が始まる直前に, 職員を確保することができなかったという理由で受託者から辞退の申し 出があったため,2
0
日年に浜松市西区の小中学校4
校で学校給食が行え なかったケースがある(
2
0
1
5
年 4月 3日静岡新聞,2
0
1
5
年 4月 6日静岡 新聞参照)。しもそうであるとは言い切れない。たとえば,須坂市の場合,すでに 述べたとおり,
P
F
I
手法導入の可能性について検討していた2
0
1
7
年8
月時点では従来の手法約4
4
億円に対してP
F
I
手法約4
2
億円と算出 したが,2
0
1
8
年7
月時点の落札価格は約4
6
億円であり,また, 実際 にP
F
I
事業として実施する場合は約4
1
億円と説明するように, 算出 額が正確であるのかという疑問が生じる310 また,民間化後にコスト 削減がどの程度達成されたのかが必ずしも明らかとなっていないし, 仮にコスト削減を図ることができるとしても, 学校給食の 「質」が保 証されなければ何のためのコスト削減なのか理解できなくなる。 学校 給食において自治体がP
F
I
手法を導入する目的は,民間のノウハウ を活用して学校給食の効率的・効果的な運用を行い,従来の学校給食 サービスの維持・向上を図るためであって,コスト削減そのものが目 的ではないからである。 学校給食の安定的供給や安全性・質の確保を図ることができるとい う保証のみならず,コスト削減を図ることができるという保証もない ままに進められている現在の学校給食へのP
F
I
手法導入については, 正当な根拠を欠くものであると考えることができる。2
学校給食におけるP
F
I
手法導入の課題 (1)学校給食センターの管理運営について 学校給食センターは公の施設として,住民(子ども)の権利保障や 住民自治に関わるものであって,公正に管理運営されなければならな し 、九 他方, 学校給食センターにP
F
I
手法が導入された場合,民間事 31 学校給食センタ一事業の場合,必ずしも一定ではない光熱水費や輸送コ ストをどのように算定するべきかという問題をはじめ,あらゆるコスト の想定が不可能である以上,P
F
I
導入時に算定されなかったコストが今 後発生する可能性を否定することはできないと思われる。3
2
原野遡 「公の施設の管理と住民の利用権J
Ir現代行政法と地方自治J
(法 22学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 業 者 に よ っ て そ の 管 理 運 営 が 行 わ れ る た め , 公 正 な 管 理 運 営 の 保 証 と い う 意 味 で は 行 政 が 運 営 し た 場 合 と 比 べ て 劣 る と 考 え る の が 一 般 的 で あろう330 現 在 , 多 く の 自 治 体 が 学 校 給 食 セ ン タ 一 等 に お け る PFI手 法 の 導 入 を 検 討 し て い る が , 自 治 体 の 財 政 状 況 の 改善を図る=コ ス ト 削 減 を 図ることがその目的となっているようにも思われる。 し か し , 学 校 給 食 法 が , 学 校 給 食 は 児 童 及 び 生 徒 の 心 身 の 健 全 な 発 達 に 資 す る も の で あ り ( 1 条 ), 義 務 教育 諸 学 校に お け る 教育 の 目的 を 実 現 す る た め に 自 治 体 は 学 校 給 食 を 実 施 す る
(
2
条 ) こ と を 定 め て い る こ と に 鑑 み れ ば , 子 ど も の 権 利 保 障 に 関 わ る 公 共 施 設 と し て の学 校 給 食 セ ン タ ー は , 自 治 体 が 設 置 し , 自 治 体 が 公 正 に 管 理 運 営 す る こ と が 望 ま れ る の で は な い だ ろ う か340 律文化社, 1999年)85頁は,住民自治の手段であり人権実現の手段であ るとされる公の施設については,住民の権利保障や住民自治にかかわる からこそ,公正な管理運営の必要性を指摘することができる旨を述べて いる。 33 資金の調達や運用の面でも, PFI手法では民間事業者が資金調達を行う ことから,金融機関による監視 (監査)が行われる一方,行政によるチェッ クが及ばないという問題を指摘することができる。学校給食センターが 公正に管理運営され,学校給食の安定的供給や安全性・質の確保が図ら れるためには資金の調達・運用に対する行政のチェックが必要であると 考えられるが, PFI手法にはそれが及ばないという問題がある。 34 なお, 学校給食法は,同法2条各号の目標を達成するために,児童または 生徒に対し実施される給食を 「学校給食」というと定義したうえで (3条 l項,) "1義務教育諸学校の設置者は,当該義務教育諸学校において学校給 食が実施されるように努めなければならなL、
J(4条)と定めるとともに, 「国および地方公共団体は, 学校給食の普及と健全な発達を図るように努 めなければならなL、
J(5条)と定めている。 このように,同法4条および 5条は,いわゆる 「努力義務」を定めたものであるということができる。 ただし, 学校給食が 「児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであ り,かつ,児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上 で重要な役割を果たすものであることにかんがみJ(同法l条,) "1小学校 等における教育目的の実現を期するために実施されるものJ
(前掲・文部 事務次官通達)であると理解するならば,同法4条および 5条が定める努 力義務の内容・程度も異なって良いのではないかと思われる。なお,同法
1
1
条l
項は,I
学校給食の実施に必要な施設及び設備に 要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるも のは,義務教育諸学校の設置者の負担とする」と定めている。そして, 同法施行令(19
5
4
(昭和2
9
)
年政令第2
1
2
号)2
条は,I
義務教育諸 学校において学校給食に従事する職員(…略…)に要する給与その他 の人件費J
(1号)および 「学校給食の実施に必要な施設及び設備の 修繕費J
(
2
号)に係る経費を,義務教育諸学校の設置者が負担する 学校給食の運営に要する経費として定めている。そうすると,この規 定は,市町村立学校の学校給食の運営には地方公務員である職員が従 事することが予定されていると理解することができる350 以上から, 学校給食センターは自治体が設置・管理・運営し,その 運営には地方公務員が従事することが望ましいと考える九 (2)学校給食における公共性確保に向けて これまで学校給食における PFr手法の導入を中心に学校給食の民 間化の現状について触れ,そこに内在する問題について不十分ながら 検討を加えてきた。しかし,これらの問題を抱えつつも学校給食の民 間化が現在もなお進められているという現状を踏まえると,学校給食 の民間化の問題性を指摘するとともに,学校給食の公共性を確保する ための方策について検討する必要があると思われる。 第一に,学校給食の民間化に際しての 「要検討事項」の十分な検 討を挙げることができる。すなわち,学校給食業務を自治体が担うべ きなのか民間事業者に委ねるべきなのかについて検討する場合, 当該 業務を自治体または民間事業者が担うことのメリッ卜・デメリッ卜を 35 自治体アウトソーシング研究会・前掲注 (26)119頁,尾林芳匡『新自治 体民営化と公共サービスの質lJ(自治体研究社,2
0
0
8
年)1
4
6
頁。 36 学校給食提供における自校方式または学校給食センタ一方式の問題につ いては,機会をあらためて論じることにしたL、。 24学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) 把握しながら行うことが有用であると考える370 なお,予想される民 間化に係るデメリッ卜として,さしあたり,①住民参加や情報公聞が 困難になり得ることへ ②市場経済原理を導入することで運営支出が 抑制されることは実証されていないばかりか,民間化によって業務の 質の低下の危険性が高まる可能性が否めないこと,③当該業務の一部 民間化によっては,全体として統一性をもった業務の遂行が確保しに くくなるおそれがあること,④自治体が当該業務を担う限りにおいて は業務を担当する公務員労働者の労働条件について一定の歯止めを掛 けることがでユきるが,民間化された場合には安価な労働力,劣悪な労 働条件のもとでの業務の提供を否定し得ないこと,⑤白治体が当該業 務を担うかぎり,業務の遂行の上で,秘密の保持や公務員に一定の資 格が要求されることなど当該業務への信頼が確保され得るが,民間化 された場合に当該業務への信頼が確保され得るか疑問であること,⑥ 民間化に係る選定手続における民主的統制が不十分であれば,自治体 (=行政)の腐敗や汚職を生み出しかねないこと,を挙げることがで きる。 このように予想されうるデメリットに優越するメリッ卜が,民間化 によって生じ得るかどうかについて十分に検討を行ったうえで,当該 業務を自治体が担当するべきか否かを問わなければならないと考える。 同時にまた,民間が担当するべきであるとの帰結を導く際には,民間 化した方がわれわれの生活にとってその業務の本来の目的が一層有意 義に達成されることが保証されなければならない。 37 行政が担当していた役務の民間化における要検討事項の検討の必要性に 関しては,原野麹 「行政の公共性と現代行政法の法理J~行政の公共性と 行政法
J
(法律文化社.1997年)11-14頁を参照。 38 PFIのような長期契約の場合における透明性や責任の低下の問題につい ては,榊原秀司1["1イギリス・ブレア政権の行政民間化の経験」榊原秀司1[・ 家田愛子・尾林芳匡 『イギリスの市場化テストと日本の行政J(自治体研 究社.2006年)95-98頁参照。民間化しても行政的規制により公共性を確保することができるとの 見解もあり得るが,民間化後の行政的規制によって公共性の確保を完 全に図ることができるという証明がない限り,当該業務を行政が担当 することによる公共性の確保こそが望まれるのではないだろうか390 このことを説得的に述べるためにも,学校給食業務を自治体が担当す ることの意義について検討していくことが,今後のわたしたちの重要 な課題であるといってよ L、。 第二に,民間化された事 業・業務をコン トロールするための法的仕 組みを構築することが重要になると思われる。学校給食業務が民間化 され,自治体が行ってきた業務を民聞が代わって行うことになったと しても,それが当該業務の公共的な性格の消滅を理由とするものでな い限り,当該業務の公共性は継続的に確保されねばならないし,当該 業務の実施によって提供される公共性確保のための法的仕組みが存在 しなければならない九 そして当該業務の公共性を継続的に確保するためには,当該業務に おいて公共性が存在する限り,形態、は違っても行政的関与の体系が必 要とされることは明らかである。そうであるならば,当該業務の質・ 量ともに従来どおり維持されねばならず,そのための法的コントロー ルが従来と同じく,あるいは民聞が行うという新たな形態であるがゆ えに一 層 重 要な課題となるはずである九 したがって,学校給食業務 の民間運営に対する適切な監視(情報公開と住民の参加を含む)と,
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民間化を行うとしても,I
住民の福祉の向上を増進する目的」に適った状 況を作り出すことが重要(協定・条例の制定,住民の権利保護,公的責 任の明確化,議会・住民の関与,働く人の労働条件など)である。4
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民間化によっても公共施設の 「公共性」や業務の 「公務性」は変わらな いことについて,市橋克哉 「公務に携わる者のあり方を問う年に」東海 自治体問題研究所所報5
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号(
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年1
月)1
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頁を参照。4
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紙野健二I
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PM
と行政法学の課題」法律時報7
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巻9
号(
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年)3
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頁参照。2
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学校給食の民間化に関する一考察 (萩原) その運営(民間化された給食業務の運営)をどのようにコン トロール するのかに係る法理の構築が今後の重要な諜題になると思われる。
お
わ
りに
これまで述べてきたことをまとめておきたL、。学校給食の民間化を 推進する自治体は,学校給食の民間化に関し,民間の創意工夫やノウ ハウを取り込むことができてコス トの削減を実現できると説明してき た。しかし,取り込まれた民間のノウハウの内容やその効果は明らか ではなく,また,民間化を進めようとする段階ではコス ト削減の効果 を主張する一方で,民間化後にコスト削減がどの程度達成されたのか は必ずしも明らかとなっていない。さらに,調理業務を献立作成業務 と切り離して民間事業者に委ねることは学校給食法の趣旨に適うもの ではないし,学校給食の安定的供給や安全性・質の確保を図ることが できない状況を招くおそれがあるなど,子どもの権利保障の観点から も問題があると言わざるを得なL、。 このように, コスト削減や公共サービスの向上が実証されないばか りか,学校給食の安定的供給や安全性 ・質の確保を図ることができな いという危険性をはらむ現在の学校給食の民間化については,否定的 に理解されるべきであろう。したがって,教育の一環として位置づけ られる学校給食業務は,PFI
手法の導入などの民間化によって行われ るべきではなく,義務教育諸学校の設置者=自治体が行うべきである と思われる。 【追記】本稿は,2
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年7
月1
日に開催された,一宮の学校給食を 考える会主催の学習会i
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I
と学校給食」における報告に加筆修正し たものである。当日御参加頂いた方々から多くのご教示を賜った。ま た, 一宮市議会議員の彦坂和子氏および東海自治体問題研究所事務局長の長谷川洋二氏には資料の点でも大変お世話になった。この場を借 りて御礼申し上げる次第である。