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ウスバシロチョウの地理的変異に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

ウスバシロチョウの地理的変異に関する研究( 内容の要旨 )

Author(s)

河合, 和幸

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 甲第058号

Issue Date

1996-03-14

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/2399

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 点 河 合 和 幸 (岐阜県) 博士(農学) 農博甲第58号 平成8年3月14日 学位規則第4粂第1項該当 連合農学研究科 生物環境科学専攻 岐阜大学 ウスバシロチョウの地理的変異に関する研究 主査 岐 阜 大 学 教 授 横 井 宏 紀 副査 岐 阜 大 学 教 授 百 町 満 朗 副査 静 岡 大 学 教 授 西 垣 定治郎 副査 岐 阜 大 学 教 授 堀 内 孝 次 副査 信 州 大 学 教 授 森 本 尚 武 論 文 の 内 容 の 要 旨 ウスバシロチョウ(ウスバアゲハ)里釘!坦5裏t担組塁旦呈.蛮虫BUTLERは、近年全国的に分 布を拡大する傾向にあり、その形態的変異も多様である。また、本種は環境指標種として 重要である。地理的変異と環境の関連を研究することは自然保■掛こ関連した重要な分野で あるが、これまで十分になされてこなかった。また、地理的変異を発生させる機構や原因 は他種の屋虫についても十分に明らかにされていない。本研究では年1化性昆虫であるウ スバシロチョウの前期長と趨の黒化の変異を岐阜県の20個体群について詳しく調査し、両 形質の時間的変動、標高および気候との関連を研究した。なお、個体の黒化の程度は遡の 5箇所の異化指数(A,B,C,D,T)を合計した異化指数(K)で定義した(5≦E≦50)。また、終齢幼 虫時の気候要素として4月の平均気温、降水量、日照時間およぴ3月の最深積雪量を取り 上げ、それぞれメッシュ気候値によって表した。さらに、県内の個体群を依存食草別の2 集剛こわけて、気候との因果関係を検討した。また、全国の13個体群についても前増長と 異化の変異を調べ、緯度との関係を見た。なお、遡の黒化バターンについて、岐阜県の個 体群と全国の個体群それぞれにクラスター一分析を試みた。得られた主要な結論は次の通り である。 1)個体群内では、前細長の季節的変動はなく、発生期を通して安定していると判断され た。また、環境が維持されるかぎり、数年の間には個体群の前細長は変化しないと判断 され、このことは調査した全個体群についていえた(ANけVA)。 2)前細長(Y)と標高(‡)の問に高い負の相関が認められ、概して標高が上昇するはど個体

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-48-群の前細長は小さくなる傾向にあった。 維:r=-0.807(N=20,P〈0.0 1),Y=-0.005叉+37.3 雌:rンl).624(N=20,P〈0.01),Y=-0.0029X+35.38 3)前増長と各気候要素との臓位相関は以下の通りであった(雄)。また、垂回帰分析の 結果、気温との闊達が最も強いことが示された。しかしながら、その真意は発育零点以 上の温度域の長短にあると推測された。 気温:rS=0.794(N=20,P〈0.01),降水量:rS=0.595(N=20,P〈0.01) 積雪泉:rS=-0.722(N=20,P〈0.01),E]照時間:rS=-0.558(N=12,P〉0.05) 4)食草集団別に分けた場合、ムラサキケマン依存型集団では前項目と同様な傾向を示し たがヤマエンゴサク依存型集団では各気候要素と有意な相関がみられす、小型化の適応 限界である可能性も考えられた。また、垂回帰分析の結果、食草の違いが前切長に及ぼ す影響は小さいものと推測された。 5)全国の個体群に標高を加味した場合、前組長と緯度の関係は、高緯度になるほど個体 群の前細長は小さくなり、逆ベルクマンの法則に適合した。 6)黒化指数は、個体群によっては年次的に安定していたが、一方で、不安定な個体群も 多く、可変的な形質であると判断した。 7)岐阜県全体でみた場合、個体群の黒化指数と標高の間には、相関が認められなかった が、飛騨川流域に限定してみると雄は上流ほど黒化指数が低かった。 8)垂回帰分析の結果、3月の最深積雪量が遡の黒化と関連が最も強いと判断され、積雪 量が多いはど、黒化指数は雄雌ともに高い傾向にあった。黒化指数と各気候要素との順 位相関は次の通りであった(雄)。 気温:rS=-0.086(N=20,P〉0.05),降水量:rS=0.000(N=20,P〉0.05) 積雪量:rS=0.690(N=20,P〈0.01),日照時間:rS=0.269(N=12,P〉0.05) 9)食草別の集団にわけた場合、いずれの集団でも黒化指数と積雪量の有意な相関は認め られなかった。 10)岐阜県下の個体群および全国の個体群の黒化パターンの類似度は、地理的距離には対 応せず、異化の著しい個体群は日本海側の山間部にみられた。 1_1)総合的に考察した結果、前遡長は各個体群の幼虫期の有効温量に適応後、遺伝的同化 された形質と推測された。遡の異化は体温上昇に有利な適応的形質である可能性が考え られた。 審 査 結 果 の 要 旨 平成8年1月26口(金)、岐阜大学大学院連合農学研究科ゼミナール室において、審 査員全員出席のもとに約40分間に亘る発表と、最終試験を兼ねて約20分間の質疑応答 が行われた。ひきつづいて審査委員全員出席のもとに、研究内容について審査委員会を開 催し、学位論文の構成および内容、基礎となる学術論文等を慎重に審議した。論文の内容 および審査員の評価は下記の通りである。 本論文は4章から成っており、自然保護および環境アセスメント、農業害虫の分布拡大

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一49-メカニズム等の分野に広く応用できるものである。第1章は調査方法について詳細に述べ られ、特に調査個体群の気候にメッシュ気候値を応用したことは評価できる。また、異化 指数の定義や、変化に富む個体群の異化指数を平均値で代用したことはやや問題があるが 現在のところ最上の方法と見るべきであろう。統計的な手法は適切である。調査地域は岐 阜県の周辺の県まで拡大すると、さらに確固とした法則が導きだせるであろう。 第2章はウスバシロチョウの概要について記述され、特に岐阜県における本種の分布を 詳しく調査している。また、近年における分布拡大現象は非常に興味深く、その原因は休 耕地の増加等が挙げられている。さらに、本種の生活環について生態写真と共に理解しや すく記述されている点は評価できる。 第3章は前知長の変異について詳述されている。雌儒間の差異および個体群内の変異が 最初に明らかにされたうえ、前趨長の時間的安定性が周期変動と年次変動に分けて述べら れている。時間的安定性は調査した個体群すべてに年次的な変動が認められないことから 結論付けているが、遺伝的な裏付けが欲しいところである。次に岐阜県における前遡長の 変異の地理的な傾向と、標高との関係が述べられている。この点については学術論文第2 報に詳しく論じられているが、概して標高が高くなると前期長が小さくなる傾向は逆ベル クマンの法則に適合しており、この点を明らかにしたことは評価に値する。さらに、前知 長の変異と気候要素との関連を論じ、垂回帰分析などから幼虫期の気温との関連が最も強 く、気温が高い個体群はど大きな前細長をもつ傾向にあることを示している。このことは 学術論文第1報に詳しい。しかしながら、その真意は発育零点以上の温度域の長短にある のではないかと示唆に富んだ考察を行なっている。また、依存する食草集団別に分類して 気候との関連を追求した点は注目される。 第4章は趨の黒化変異について述べられ、前遡長の変異と同様な過程で研究が進められ ている。個体群ごとの黒化は時間的に必ずしも安定的ではなく、標高との関連も認められ ない。しかしながら、3月の最深積雪量が多い個体群ほど遡の黒化が進行するという興味 深い現象を見いだしている。窯化の適応的意義として文献等から体温上昇の有効性を挙げ ているが、これについては実験的裏付けと生理、生態的側面からの研究が望まれる。 審査の結果、一部記載上の補足を要するが、全体的に良くまとまっており、図表の出来 具合も良いとの高い評価を受け、審査委貝全員一致をもって本論文が岐阜大学大学院連合 農学研究科の学位論文として充分ふさわしいことを認めた。

参照

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