84 (26) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
カ トウ ヒロ ユキ加藤博之(昭和
博士(医学) 乙第1372号平成5年5月21日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
転移性肝癌予防の実験的研究 一特にAdriamycin-lipiodol emulsionの門脈内投与の効果について一 (主査)教授 羽生冨士夫(副査)教授浜野恭一,二瓶宏
論 文 内 容 の 要 旨
目的 消化器癌の肝転移再発の予防としての門脈内抗癌剤 投与の有用性を実験的に研究した. 材料および方法 家兎の門脈内にVX2細胞浮遊液(3.0×105個)を移 植し,移植直後あるいは移植3日後に経門脈的に抗癌 剤を投与した.抗癌剤にはAdriamycin単独1.5mg/ kg(以下ADR群),ADR-lip童odol emulsion(以下ALE 群)を用い,これにcontrol群の3群を設定,各群6羽・ で実験を行った. 移植後16日目の肝転移状況を肝表面転移個数などに より比較した.また,肝のAdriamycin濃度を経時的 に高速液体クロマトグラフィーにより測定し,さらに 門脈圧測定,血液生化学検査を行い,副作用の面を検 討した. 結果 1.肝転移抑制効果:移植直後投与では肝転移個数 は,ADR群0.17±0.37個, ALE群4.0±3.2個, control 群12±7個で各群間に有意な差を認めた(p<0.05). 移植後3日投与の肝転移個数は,ADR群15±14個, ALE群7.0±2.4個, control群48±19個で, ADR, ALE 群とcontrol群の間に有意な差を認めた(p〈0.05). 2.Adriamycin濃度:肝内濃度は, ADR群で初期 に高値でその後漸減するのに対し,ALE群では1時間 後にピークを認め,特に2時間後にADR群と比べ有 意に高い濃度を示した(p〈0.05). 3.門脈圧:ALE群のみで薬剤投与直後上昇したが 24時間後には正常に復した. 4.生化学検査:ADR群, ALE群ともに一過性の GOT, GPTの上昇をみるのみであった. 考察 臨床的に肝転移を考えると,細胞移植直後を術中癌 細胞の門脈内逸脱時,移植後3日を微小転移形成の1 つの時間的例と想定できる. 移植直後投与ではADR群に最も転移抑制効果を認 めた.細胞単位に対する抗癌剤の効果は高濃度ほど殺 細胞効果が強いことから,逸脱した癌細胞の転移防止 には抗癌剤の濃度が重要と考えられる.移植3日後投与ではALE群が有効であった.肝内濃度ではALE群
がADR群より長時間にわたり有効濃度を保っていた ことより,微小転移巣形成時には,抗癌剤の濃度とと もに濃度維持が必要と思われる. 結論 肝転移の予防に対する門脈内投与では,術中散布さ れた癌細胞の転移防止にはADRが,また術中既に微 小肝転移が考えられる場合はALEが有用であると考 えられる. 一690一85