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窒息に関する研究補遺 : 緩性窒息時の呼吸血圧の変化について

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(1)

(善驚墜蒐購騰肇1言)

窒息に関する研究補遺

緩性窒息時の呼吸血圧の変化について

灘 酒 サカ 東京女子医科大学法医学教室(主任 吉成京子教授) 言

弁 節

イ セツ

子・内山貴美子

U ウチ ヤマ キ ミ U

(受付昭和33年5月6目)

窒息に関する研究は極めて多いが,そのうち緩 性窒息に関して報告した:文献は,急性窒息のそれ にくらべてかなり少ないようである。そこで本報 告では,緩性窒息時の動物における呼汲,.血圧, 動脈一血全血の0,量の変化などにつき,基礎的研 究を試み,洗学の追試を企てた次第である。

実験方法

動物は2kg前後の雄性ウサギを使用した。 固定台は仰臥位に固定し,頸部を切開して気管を露 出し,甲状軟骨の下方で気管切開を行い,T字形気管 カニューレの一端を挿入し気管と共に絹綜で結紮固定 した。ヵ=ユ・一一レの側管にはゴム管を介し先端の内径 が1mmとなった短いガラス毛細管を連結した。ヵ= ユーレの術もう一端には開放したゴム管を接続しこの ゴム管をコッヘル氏鉗子で圧閉することにより呼吸は ガラス毛細管を通して行われ,死亡するまでの間キモ グラフィオン装置を使用して,呼吸及び血圧を描記し, 他方時間毎に頸動脈より1ccつつ採血し, Barcroft 氏検圧計を使用し,血中02量を測定した。

実験成績

第1図は呼吸及び血圧のキモグラムである。第 1表はこれの数値一覧表である。血圧はmmHg で現わし,呼吸は1分間の回数である。 第 1 図 窒息開始(矢じるし)によって呼吸振巾は主と して呼気側に増大し,術前の略4倍を示した。呼 吸数は術前5例平均43.4,術後は漸次滅少の一途 を辿り2分で47.4,10分で39. 8,20分目3δ.4, 30分で30.0以後ますます減少した。 全経過中呼吸の呼気側への増大は気んどみられ ず,急性窒息にみられるような呼気性呼吸困難と いう所見は認められなかった。 しかし末期には末期前呼吸停止,末期呼吸はす べての例に認められた。

Setsuko SAKAI & Kimiko VCHgYAMA (Department of LegaJ Medicine, Tokyo Worr. ien’s Medical

Coilege) Supplementary studies on Asphyxia: Changes in respiratory movement and in blood

pressure due to chronic asphyxia by rabbits.

(2)

第1表 緩性窒息

血 圧 呼 吸 数 ×

ユ 2 3 4 5 前 80 92 88 96 82 2 4 88 94 88 98 86 86 92 90 92 92 6 96 94 86 104 88 8 90 90 92 92 86 10 1 12 1 14 94 94 90 116 98 92 92 108 98 105 96 96 88 102 92 16 86 94 92 98 82 18 94 92 123 108 84 20 94 90 106 121 82 22 94 88 90 104 84 平均1・7・・69・・8i・…1・3・・1・…1・8・・499・・94・・i・…1・・…1・8・・i・2・・ 1 2 3 4 5 34 48 63 42 57 34 42 62 42 57 23 40 46 40 60 ,4 1 38 i 48 42 52 33 36 42 40 48 27 38 46 38 50 25 40 42 40 51 24 42 42 42 52 24 44 33 40 53 22 38 36 38 52 23 38

34

36 51 29 40 36 38 48 平剣・8・・[・7・・}・…1・2・・1・9・・・…1・9・・[・…1・8・・1371・236・・1・8・・ n・m嚇 120 80 40 .・n 一河性窒息血圧 一一一一一一 }性窒息血圧 一一’一 ノ性窒息ロ乎吸一 一t−t−tmtsk/tt tmtttxtmtJt−t−tttmt−tt−t一一一tt ’N 9’ 12 24 36 48分 第 2 図 .血圧については第1図でみると,急性窒息にみ られるような一血圧の急激な充進は全経過中全くな く,窒息開始により』血圧の動揺がやや大きくなる 程度と,窒息前に比べ僅かな.血圧の上昇がある のみであった。数値的には術前値5例平均87.6

mmHg(以下mmHg略),術後2分で90.4,10

分で98.4,18分で100.2となり,以後は漸次低 』下し全経過中100 mmHgを越すことは稀であっ た。5例のうち最高を示したものは第4例の20分

時の121 mmH9で,第3例は18分時に123mmHg

を示した。これを第2図に示すように急性窒息時 の血圧と比較すると両者の間には著しい相違がみ られた。急性窒息では窒息開始後2分で最高血圧 !48mmHgまで到達し(術前値を100とするとこ れは152に当る),以後急激に下降するが緩性窒息 では平均50分の生存期間のうち窒息開始後20分 頃血圧は最高を示すが上昇率は,術前値を100と すると最高値は5例平均の値で112であった。即 ち急性窒息時におけるようには著明な上昇は認め られなかった。20分以後は次第に低下し,次いで 呼吸曲線に末期を告げる頃になると血圧も急激に 下降するがそのまま血圧廃絶に移行することはな く,末期呼吸の頃毎常一つの山を形成してから廃 絶に移行した。 第2表は動脈血中の02量の一覧表である。 第3図はその6例平均の変化を示した。 一482一

(3)

血圧及び呼吸数

」血圧単位mmHg呼吸数/分 24 96 90 .88 76 106 26 94 92 28 1 30 84 88 60 i 48 63 41 102 1 98 92 90 72 36 96 32 96 90 62 12 96 t tt@t@tt@t@ttt@t ?tt 34 i 36 1 38 86 80 30 33 86 70 82 14 24 94 40 60 3 o 82 40 30 20 o o 88 42 10 35 o o 86 44 3 4 o e 62 46 [ 4, 2 o o o 36 o o o o 48

…1.E.:・レ・・177・・レ璽1一剛・6・・837・・1・剰・6・・1・3・・レ・19・・

一一T5’一’[’一num2iflan17−

d,g,一]’VrmiT16T5,gTEg,[,,Tfi, ,,1−1’一5T5

40 38 38 32 36 1 32 46 1 46 36 i 38 30 i 18 33 , 32 46 1 44 40 36 22 1 16 1s li 48 2 46 30 8 o 36 o o 42 i 44 18 o o 44 16 o o 44 12 o o 42 6 o o 38

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36 I16,JII].,一l15,J6一.,)a,.,”561.i,T’IMEgil−Ei,[一lil.sl”’pm,62i.o[pm,.6 T,.El−li.[一sllrT’一’7一.2 第 2表 正常ウサギの動脈血全血の酸素含量及び緩性窒息による酸素含景の動揺(Vol・%)

x

\、 分

No. ”xx 1 2 3 4 5 6 前 2 4 6 IO 2。.35旨3.。3 19. 46 18. 21 19. 66 17. 98 19. 99 16. 64 11. 44 7. 33 10. 06 12, 06 5. 63 IO. 66 1 8. 52 4. 49 1 3. 66 8. 35 ! 8. 02 9.42 一一.一 D_⊥ 8・441 4. 35 6. 06 2. 95 5. 43 3. 61 14 24 34 50

平 均・9・・28い…

3. 25 1 3. 05 3. 88 4. 52 2.66 4. 04 2. 11 3・3613・50 3・46

@2・76「2・50

3. 88 1 3. 00 2. 88 蕊「.…τ亙爽i一一「門嬰・]一一為7粛一寸96 鴫 20 1b. 緩性窒息 一一… }任窒息 前 to .20 第 3 図 毎分の血液について測定が行われなかったのは 抗凝血剤注射の前処置を避けたために一血L管カニュ ーレ内の凝血その他のために採血が不能な場合の 30 4e ロユ 50分 あったことにより測定可能な例3例以下のものは 表示しなかったからである。 窒息前の血中02量を1eoとすると平均値で, 一488一

(4)

2分で60%,4分で44%,6分で35%,io分

で23%,14分でユ8%,24分で18%,34分で16 %,50分で15%に減少していた。即ち窒息後10 分までの間に比較的大部分のOiが:失われ,以後 は死んど変化が僅少である。大塚(1939)1)の実 験成績を引用して同図に記入した曲線と比較する と,1大塚の急性窒息時の一血中02量の変化は極め て急激で,窒息2分までの間に殆んどの02が消 費されてしまう。これに比べ緩性窒息では甚だ緩 慢で死に直面してなお3vol.%の02を保有し, 窒息前の15%の02を有していた。したがって 緩性窒息では急性藩学、の時よりも02を消費し切 らないうちに死を招来するということが老えられ る。 総括及び考察 緩性窒息とは,窒息時の死までに要した時間が 急性窒息よりも長びいた場合のようなときに生じ る。しかしその死亡までの所要時聞の急性緩性の 厳密な限界はきめられていない。通常急性窒息で は個体差はあっても数分で呼吸は末期を示し,心 臓は呼吸が止ってからも10∼20分前鼓動を続け ているとはいえ,最早救出は困難な状態にある。 私共は動物の気道を狭窄して30分以上を経て死 亡したと診断する窒息死は緩性窒息死とした。勿 論私共の窒息死の判断は呼吸が停止し,血圧がす でに水銀柱位0を示した時をもってしている。 また緩性窒息と同様な意味の言葉として遷延性 窒息という名称がある。 このような緩性窒息或いは遷延性窒息と呼ばれ る事態は実際の場合としてはかなり報告されてい る。 例えば,他殺の場合に犯人が被害者の首をしめ て,ぐったりしたところを死んだと思って紐をゆ るめて逃走した工合とか,首つり自殺を敢行して 途中で紐が切れてしまった場合とか,そのような 揚合幸にも救出きれて人工:呼吸その他の処置が構 じられたがついに死亡した例などは通常遷延性窒 息といわれている。 また有名な昭和28年の二重橋事件や,昭和31 年窒息県の彌彦神社の事件などのような圧死事件 の中にはショック死や,急性窒息死もあるが,胸 廓圧迫や鼻口の不完全閉塞でかなりの時間を経過 して呼吸困難の結果死亡した緩性窒息もあったで あろう。 遷延性または緩性窒息死体所見としての特徴に ついての報告もあるQ 浅田2)などは心臓内に軟凝」血;塊や白色豚脂様凝 塊のあるものは死戦期の長びいたものであるとし て重要視している。 しかし山上,原田(1940)5)はこれに反論を行 って,かかる所見に対し一概に急性死を除外する ことは遠慮しなければならないといっている。

またModicaやHochstterなどの長時間窒息

時の多核白血,球増加を報告した文献などがあるが これらはそれ程重要な意義をみとめられていな い。 因に,Hochstterはこの多核白一血球の増加は窒1 息による自家中毒に対する骨髄の反応だと述べて いる。 島田,伊藤(1953)4)は30分から3時問位の ウサギの窒息、について,その緩性窒、息死の本態を 究明せんとして種:々の観察を試み,動脈血中02 量は急性窒息に比し緩慢に減少し,死が近づいて

もなお20∼30%の減少にとどまり,CO2は始

めやや増加するが末期には返って減少を示し,ま た血液pH:は著明な下降を示し明らかに急性窒息 とは異なった経過を示したと報告し,したがって その死の本態は急性窒息死はアノキシアであるに 反し,慢性窒息死はシヨツク死であると判じてい る。そして慢性窒息死の場合のシヨツク発現に与 える因子は単に02欠乏のみでなく,窒息時の異 常呼吸運動そのものであろうと述べている。 また志村(19?9)5’は急性窒息の時の心臓一血は 常に負数の02百分飽和度を示し,左右心血の02 量の差は正常時に比し極めて小さく,或は全く差 がなくなることもあるが,慢性窒息では左右’⇔血 02量の差は10 %以上に達し,従って緩性窒息で は肺胞中の空気がなお多少02を持っている間に 血行がとまることを推測して,緩性窒息の死型は 心臓死に近いものと考えると述べている。 しかし志村の急性窒息実験で左右の心臓血の 02量が常に負数を示すことについては後に古 屋6)がB壁crQft氏検圧計での測定の際,水槽中 の水温を37。Cにすることにより負数の出ないこ とを実1験証明した。 以上先学の文献は鑑定報告例の他に実験的報告 例などあまり沢山のものを見出せなかった。 しかし本実験の結果とよく符合する文献の二, 一一 48di 一

(5)

三を見出すことができた。 ただ今回私共の行った追試的実験研究の上か ら,緩性窒息死の本態にまで言及することは早計 と思われるので今後の研究にゆつることにする。 結 論 1)緩性窒息の呼吸型には急性窒息のごとき,呼 吸困難たとえば,吸気性,呼気性の区別は全く見 られず,極めて緩慢な呼吸困難であった。 2)緩性窒息の血圧の変化は急性窒息時のごとき 著明な1血圧充進.はみられなかった。 3)緩性窒息の血中量の変化は急性窒息のそれに 比し極めて緩慢で,死に両しても猶3vol.%の 02量を保有し,窒息前の15%のOL’をまだ残留 していた。 4)緩性窒息では殆んど痙攣が起らない。この痙 攣の起らないことと上述の呼気性呼吸困難の認め られなかったことは一連の関係のあることで,呼 気性呼吸困難が痙攣性のものであることの証左で ある。 5)以上緩性窒息ではすべての点において急性窒 息時の変化との間に相違があった。 終りに臨み御指導と御校閲を賜った恩諦吉成京子教 授に心からの謝意を表します。 孟要文献 1)大塚 阜:東京医学会雑誌53,326(1939) 2)「 田 一:診断と治療,25,1550(1938) 3)山上熊郎・原田優蔵:犯罪学雑誌,12,770, (1938) 4)島田信勝・伊藤園彦:呼吸と循環,1,197 (1953) 5)志村太賀志:北海道医学雑誌,7,463(1929) 6)古屋光信:東京医科大学雑誌,7,ユ99(ユ949) 一一 485 一

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