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東京女子医科大学三会第22回総会演説抄銀
昭和31年10月20,21日
翌週京女子医科大学臨床講堂
1,新抗i疑団剤(Hedulin)を使用せる2臨床例 (演)(三神内科)小林博子 (眼科)渡辺 ヒロ 私達は,最近擁骨動脈を触れない所謂脈無し病を2例 経験し,これに対し新羽擬固剤Hedulinを使用し臭好 なる経過を得たのでここに報告する。 脈無し病は,明治41年高安氏が「奇異なる網膜中心』血 管の変化の1例」として,始めてその特有な眼症状を述 べ,その後,主として限二二面で高安病として注目され てきたが,昭和23年清水,佐野両氏により詳細に報告さ れ,脈無し病として提唱されるようになった。本病は総 頸動脈起始部乃至分岐部及び鎖骨下動脈等に血栓形成を 起し,その二七部に血行障害を起すため,脈搏の触知不 能,特有な眼症状及び頸動脈洞反射二進という3主徴を あらわしてくるもので,私達の経験した1例も18こ口女 子で,定型的な「清水」の脈無し病と思われる。初めは 我国に特有な疾患ときれていたが,他方外国に於ても, 擁骨動脈を触れない症例が報告され,Pulse!ess disease との名称もみられるようになった。1946年,:Frφv三9に より始めてその臨床像が紹介され,大動脈弓症候群とし ての概念が示唆されたが,1953年Ross及びMcK:usick の丁丁によりそれが確立された。即大動脈弓からの各分 枝起始部或はその近くに於て,各種原因により起る血管 内腔の狭窄及び閉鎖の各組合せによる症候群と説明され ている。私達の他の1例は27才の女子で,大動脈瘤があ り,大動脈弓症候群の1例と思われた。 以上2例に対し,その成因に大きく関係する血栓形成 という事を考慮し,近来著しく進歩してきている丁丁固 剤に着目し,Hedulin(Pheny工indandione)を使用した 所,前症例は擁骨動脈は触知しえないが,眼底所見及び 一般臨床症状の好転をみ,更に後症例に於ては撹骨動脈 を触れ,衙眼底所見及び一般臨床症状の軽快を示したの で報告する。 2,溺死に関する研究 特に臓器内プランクトンについて(第1i報) (法医) 田村 リツ. 海,河刀、吸び湖沼等の水中において死体を発見した場 合,これが溺死したものであるか或は死後,水中に投ぜ られたものであるか(死因は溺死ではない)を決定するこ とは法医学上極めて重要な問題であるにも拘らず,解剖 所見のみからは上々その解決が困難である場合に遭遇す る。溺死の場合には水中にても呼吸運動が持続するため に二水が気道を通じて肺の毛細」血管から血中に入り,全 身を循環することが考えられていたが,二水と共に微浮 遊生物(プランクトン)も毛細管壁を通過して循環系に 導入され,全身の諸臓器に分布することが近年長崎大学 友永教授により発表され,水中死体の死因が溺死か否か の問題に対し解決の鍵が与えられるようになった。そこ で私も実際に溺死したと思われる死体の諸臓器からプラ ンクトンを証明したが,東京都内に於て発生した溺死々 体についてこの方面に関する研究は殆ど無く,更に本問 題に関しては種々の観点に立って筒一層,詳細に亘る研 究の必要性を感じ本研究に着手した。即ち東京都内の海, 河川及び池等で発生した溺死々体10例の脳,肺,肝,心, 腎,脾及び骨髄(大腿骨)を採取し,発煙硝酸,濃硫酸 及び過酸化水素水にて壊増し,その沈渣中に発見される プランクトンの検出状態を顕鏡検査し,更に三水を現場 より採取町田し,プランク5ンの種類,量及び大きさ等 から溺死及び臓器内プランクトンの相関々係について調 査した。更に実検的に溺死させた家兎の諸臓器について も同様に検索し,同時に溺死をも採取して両者を共に観 察したのでこれら諸成績から得た知見につき報告する。’ 3,癌の骨転移について (整形外科)(演)和知英男栗原文子,榊多鶴子
我々の教室に於て,癌の骨転位を来した10例につき, 経過観察,考察を行い報告します。癌は骨に原発するも のでなく必ず他の内臓々器に原発巣が存し,本症例で は,胃,乳房,卵巣,肺,甲状腺,三等にみられまし た。 骨転移部位は,大腿骨に多く,特に大転子よりやや末 梢部に多く,しばしば病的骨折により発見されました。 次に脊椎,骨盤,上腕骨,肋骨弓にも多く見られまし た。 診断は,年令,既往歴,レレトゲン写真によるが,鑑 別すべき疾患中特に好発部位臨床症状等類似し,鑑別困2 難である多発性骨髄腫について述べ,最後に交心的考察 をしたいと思います。 4,綱膜内活動電位と網膜活動電位の発生部位に 関して (生理X演)田沢 美禰,山中 妙子 網膜活動電位の発生部位及び発生機序に関し富田等が 微小電極を用いた結果を報告したがSveatichin等の反 駁あり,更に超微小電極を使用し網膜活動電位の総ての 因子は両極細胞層より発生するものと前回同様な結果を 得,最近決定的な報告をしたところであるが,私達は富 田の新たに考案せるペンシフレ型電極を使用し,食用蛙の :剥離叉は非剥離網膜の内境界膜側或は視細胞層側より電 極を挿入し,網膜活動電位と網膜内活動電位の比較検討 を行うと共に,agingによる影響, strychnineの作用 により局所反応を消失せしめた場合をも同時に観察し, 本質的に富田等と同様な結果を得たので報告する。 5,毛髪の研究 ほ)頭髪表面像の電子追徴鏡的観察 (皮膚)細木 梅子 正常毛,病的毛,電髪毛,コールドウエーヴ最中,種 々頭髪の表面像につき,比較観察を試みた。 6,毛包の組織化学的研究(第1報) (解剖)八十田敏男 毛包中に見出せるDNA, RNA,アルカリホスフデ ターゼ,SH基, SS基について成熟モ7レモットを用い て組織化学的にその局在性を検索した。 DNAは毛母基細胞,毛皮質,内払鞘の核形質中に強、 い染色性を示した。その他各層中の核形質も陽性を示し たが染色性の程度は異るものであった。 RNAは毛皮質及び毛母基細胞の形質中に強い染色性 を呈レ,毛髄及び毛乳頭には見出せない。 アルカリホスファターゼは毛乳頭に強い反応を呈し, 次いで外根鞘及び毛母基細胞にも陽性に現われる。 SH基の反応を呈する部位は毛包中央部の毛皮質であ り,上方に向っては急劇に消失し,下方では漸減する, 毛髄に於いても染色性を呈するが,皮質より拡散きれた ものと思われる。 SS基は充分角質化した毛皮質に顕著な反応を呈す る。 7,クロロマイセチン耐性腸チフス菌の電子顕微 鏡的研究・ (細菌)小林 千鶴 先にCM耐性腸チフス菌では鞭毛を認めない事を染色 及び培養により証明したが,今回は電子顕微鏡によりこ れを確認した。即ち腸チフス三原株と耐性株の8∼14時 間培養について,菌浮游液をコロジオン膜をはったシー トメッシュにのせて乾燥し,これを電子顕微鏡で観察し た結果,原株では周囲多毛性の鞭毛を多数認めたのに対 して耐性株では全く鞭毛を認める事が出来なかった。又 質体内の構造については,原株では電子線を一様に透過 する均一な像がみられたのに対して,耐性株では所々に 電子線透過度の不平等な箇所があり,連体1つ1つにつ いても電子線の透過度を異にするものが混在していた。 この耐性株の菌体内構造の不均一に関しては培養時間, シャドウの条件など種々に変えて検討してみたのでその 結果についても併せて報告する。
8,INAH誘導体の臨床(第H報)
INAH−Pyruvic acid Hydrazon(1.P.)及び 其のカルシウム塩(1.P.C.) (海上寮療養所) 中沢喜美子 結核の化学療法剤として現在INAHは広く一般に使 用きれその効果についても目覚ましいものがあるが,近 年更に一層の治療効果を望んでINAHの誘導体の研究 が盛んに行われている。私達は先にIHMSについて報告 したが,其の後1.P.及びLP.C.を使用する機会を得 たので一応御参考の為に報告する。症例は31例で,症状は 比較的軽度の8例を除き全てが混合型肺結核と考えて良 く,排菌状態も23例は菌陽性を示していた。全症例中1.P. 或は1.P.C。単独使用例9例, PASとの併用例13例, SM.PASとの三者併用例が9例であり.使用期間はユ ヵ月以上最長8ヵ月である。投与方法は1.P.叉は1. P・C.1目2g毎日継続又は副作用其の他により1日1 g∼1.5g毎日投与継続し,PAS1日10g毎日,SMは1目 1g週2回法を行った。臨床効果は体温・体重・食欲. 喀疾・十度・血沈・排菌状態・血液所見・肝機能・X線 所見・皮膚毛細血管抵抗,副作用の12項目に由り観察を 行ったが,咳鰍,喀湊,排菌の敢善が著しかった。肝機能 (BSP)への影響は使用前30分20%を示していた2例 に改善がみられたが,使用前5%を示していた1例に使 用後25%の機能低下をみたが本丁は臨床的には著効をみ ている。X線所見は本剤使用例が殆ど全て重症慢性肺結 核或は比較的古い病巣を有する患者であり,且つ使用期 間も短い為結論は出し得ないがご,三の症例に顧て,陰 影の消失又は萎縮橡の増加を認めた。1.P.投与により 約半数に副作用をみたが,食欲不振,悪心,嘔吐等の胃 腸障碍が大部分であり,且つ是等の症例は普段から胃腸 障碍のある症例で1例は中止のやむなきに至ったが,他 例は減量又は一時休薬により消失をみ,頭痛,睡眠障 碍,倦怠感を訴えた例は,軽く一過性で特に服薬を中止 しなければならない様な事はなかった。しかし副作用の 点ではしP.C.が勝り, LP.C.}こ切り替えてからは副 作用は全く見られなかった。 以上から1.P.C。は先に報告したIHMS同様将来有 望な結核治療薬剤と考えられる。