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超微小電極法によるガマ心筋線維の電気生理学的研究 : 第1報 静止電位と活動電位及びその温度効果

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(東京女医大誌一第27巻第9号頁:520−528昭和32年9月)

超微小電極法によるガマ心筋線維の電気生理学的研究

第1報 静止電位と活動電位及びその温度効果

1.緒

東京女子医科大学生理学教室、

山 ヤマ 中 ナカ 妙 タエ ‘子 L1

(受付 昭和32年8月7日)

心臓の興奮に際しての電気的活動については約 60年にわたり種々の研究が行われてきた!4)26)。そ れら心臓の活動電流に関する研究(いわゆる:EK Gに関する研究)はあくまでも心臓全体の興奮の ある形での和を示すものでその発生を追求するた めには心臓の基本的な単位である心筋線維の電気 的諸特性を知ることが極めて:重要であると考えら れた22)23)25)。過去約15年来,電気生理学の分野で は単独な形の神経線維や骨格筋線維の興奮過程に おける電気的性質が次第に明らかとされてきたが 5)5)6)21’C特にHodgkinら7)∼11)は無髄神経線維 に関する研究により興奮時の電気的変化の原因が 細胞膜内外のイオンの移動による事を証明し,神 経線維の活動電位の本質はあるイオン(Na, K, Cl)に対する細胞形質膜の透過性の変化によると いう説明を豊富な実験により裏附けた。その後多 くの人々の研究は他の神経線維27)及び骨格筋線維 15)も同様な性質を持つものである事を示し,更に 心筋の電気的特性や活動電位のイオン的基礎も Weidmannら55・により神経線維や骨格筋線維で えられた成績を基礎として研究が進められてき た。

特にこれらの研究を容易にしたのはLing&

Gerard(1949)16)による超微小電極法である。こ れを用いて心筋線維のように比較的細い細胞につ いても殆んど細胞を損傷することなしに形質膜を 介しての電気的変化の絶対値を記録することがで きるようになったことは心筋の電気生理学的研究 に非常な進歩をもたらした。叉,この方法を動き の大きい心筋に適応するための適切な方法も考え られ現在までに,カエル心室(Woodbury, Hecht &Christopherson 195158)),カメ心・室(島本・{左 野ら195624),Weidmann 1956 b54)),ネコの右心 房叉は右記乳頭筋,犬の右心房三島乳頭筋(Burgen & Terroux 1953 ai・), Trautwein & Dudel 19 5428)),犬の右心房,右室乳頭筋,心室固有筋また は仮減法(Hoffman&Suckling 1953 bi2),195 415),松田・星・亀山195619)20),Coraboeuf& Weidmann 19492)),ヤギ及びヒツジの仮腱索(Dr− aper&Weidmann 19514))及び仔牛の仮腱索(Co−

raboeuf&Weidmann 19542)などについて多

くの威果が報告され,心筋線維の電気生理学も漸 くその基礎ができてきたように思われる。心筋は 自動能を有しておりまた形態学的にはシンシチウ ムをなしておるなどの特徴を有しこれらの点が将 来追求されねばならないところであろう。 一方心筋の活動電位は他の筋線維等に比べて非 常に長い持続を有することなど形質膜の性質その ものとしても著しい特徴を有すると老えられこれ も文重要な問題である。この点についてはWeid− mann55)の温一血動物の刺激伝導系の線維に関する 研究が主なものであり心室固有筋に関する研究は 少い。著者は心臓の生理学的研究に広く用いられ ているガマの心房固有筋について超微小電極法を 適用し2,3の知見を得た。このガマ心房固有筋に関 する静止電位及び活動電位に関する詳細な報告は 未だなされていないので続報にて発表する事柄の

Taeko YAMANAKA (Dopartment of Physiology, Tokyo Women’s Medical College) : ElectrophysioT

logical investigations of cardiac muscle fibers of Toad with superfine microelectrode. Part 1 . On the

resting and action potentials.

(2)

基礎的知見の意味も含めて第1報にわいては静止

電位及び活動電位の大きさ波形並びにそれについ ての温度効果に関してえられた結果を報告する。

2..実験方法

実験動物にはガマ(Bufo vulgariS for皿osus)を用 い実験直前に心臓(約1∼1.5g)を摘出し冷血動物用 Ringer唾液中で血液をよく洗い去り,心房部から巾約 5mm,長さ1.5cmの条片標本を作製した。これを直 ちに長さが約130%伸展するごとく心内膜面を上にし てRinger氏藩中プール内のコノレク板上に固定した。 このように伸展固定したのは収縮時の動きを比較的少 くするためであるがこの程度の伸展による静止電位及 び活動電位への影響は殆ど考える必要はないと思われ る。条下標本の作製には主として右回の洞房漏斗,房 窒漏斗をさけ,歩調取り部(pacemaker)の含まれな い部分を用いた。実験の巨盤上このように全く自動性 を有しない標本を用いたが自動性のなかったものが蒔 問の経過とともに心房固有搏動を始めたり,あるいは 電気刺激によって自動性の反覆興奮を引きおこす事も あったが,そのようなときには新しい標本と取り替え るかまたはその条片について新たに歩調取り部となっ た部をとり去って用いた,,このようにして準備された 心筋標本に双眼実体顕微鏡(倍率×30)下で誘導電極 を刺入した。 第i図は実験装置の配置を示したもので誘導電極 (第1図M.E.)としては先端直径0.5μ以下のガラス製

脛瓢

Square pulse generator tti.F..ttt,:.g .一N >cl ff Prv−cmp elαソ ircuit Potentiaj recor.ding D. C. am p. 第1図実験装置,M。E.:超微小電極, S.E.:刺 激電極(本文参照) 微小ピペッNに 3 MKCIを煮沸法により満したいわゆ る超微小電極17・であり,電極の電気抵抗は約10∼30M .Ωのものを用いた.B超微小電極の固定には電極を微動 .装置に油土で直接固定する方法を用いるか,タングス テン線56)(直径30μ,.長さ.約10c皿),または銅線(直径 70μ,長さ5∼10cmのエナメル線)の先に長さ約2cm の銀線(直径100μ)をハンダ附けしたものの先に超微 小電極の先端部だけを附けて18)微動装置から吊して 使用した。 電位の誘導はこの超微小電極から外液中におかれた Ag−AgCl電極に対して行われ,電位はまつ細胞内電 極用前置増巾器(pre−a皿p)に導かれ次いで主増巾器 (D・C・amp・)を経て観察及び記録のための二現象Braun 管オツシ・グラフの一方の縦軸に入るようにレた。倫 ここで用いた前置増巾器17)40)は初段に6BE6を用い .て通常より低い陽極電圧及び線条電圧で仇かせ,その 後5AK5及び12AT7の直結合回路に導き容量農還 を附したもので,grid電流は10−12amp.,入力抵抗は 1012Ωであり抵抗20MΩ程度の微小電極を接続して 1000サイクルの矩形波を殆ど歪なしに増巾することが できたものである。こ.の際Braun管の他の一方は静 止電位を知る上に便利なように細胞外液の電位を示す ようにし必要に応じてtime markが入るようにした。 電気刺激はブラウン管オツシqスコープの掃引に同 期して行ったが,この同期パルス(湖中点線)は途中で 遅延回路(Delay circult)により任意の時点で刺激が与 えられるよう}こした。束U激はラ唖形波発生装置(Squa「e pulse generator)から出力絶縁回路(lsolator)を経て .同心電極(S.E,)に与えられる。刺激用同心電極は不錺 ..│製の1/3注射針の先端を鈍角に削t),その内部にピツ .チ.を塗った100μ銀線を通し先端を揃えて固定して両者 .の間が完全に絶縁されているのを確めた後,内外をそ れぞれの極として用いた。通常の場合,電気刺激は同 心電極の外側を陰極とし銀線側を陽極として双極刺激 で与え,刺激持続時間は常に5msecとし刺激強慶は 閾値よりわっかに大きいところを用いた。 実験は常に外液に95%q十5%CO2混合気を供給し つつ行った。図においてRinger氏液プールの下部に ある蛇管はガスボンベと連絡していてここよりプづレ に混合気を宙返するとともに溶液の適当な語感が行え るようにしてある。ここでRinger二三と称したもの はWe1dmann52)による温血動物心臓用の溶液組成を 冷血動物用に修正したものでその組成は次のようであ る。

Nacl lo6. oomM

NaHCO3 11. 90mM

NaH2PQi .,2 HL,O O. 32mM

KCI 2. 80mM

Mgα2・6H20 0.49皿M CaCle ・2HciO 1. 36mM 葡萄糖 5.10血M Ringer液11中 実験室の温度は15。C∼180C:であり,温度効果の場 ‘.合を除いては実験時液温は特1こ調整しなかった。温度 効果の実験ではRinger氏液のプールをシーノレドした サーミスPt e一附電熱器の入った水槽に入れて周囲より

(3)

暖めるか,また低温に保ち旧いときは水槽に氷を入れ て目的の温度をえた。

5.実験結果

1) 静止電位と活動電位の大きさ・・ 微小電極を条片標本に対して進めて行くと大き い陰性の電位飛躍を生ずるが,このとき電極:先端 が細胞内に刺入せられたと考えられる。これは細 胞膜の分極により細胞内が外に対して負電位に保 たれているために起るものでこの電位の差が静止 時膜電位または静止電位といわれるものである。 著者の実験では標本は全て自動性を有しないから 刺激を与えなければ膜電位はそのままの状態を保 つが,このとき電気刺激を与えると刺激電極部位 より初まり標本全体に伝播する収縮を惹きおこ し,膜電位については脱分極が生ずる。この脱分 極が活動電位であり,.この大きさはある範囲では そのときの静止電位の大きさに略比例するような 関係を持っている。即ち静止電位が大きいときに はえられる活動電位も大きく,また一般に活動電 位の大きさは静止電位より大きい。つまり活動時 の膜電位の極性は逆に細胞内が陽性になり活動電 位はovershootを有しいる。第2図はえられた静 止電位及び活動電位の大ききを度数分布で示した

20

1} 奮 呂 豊 la IO

一L

AP

20 40 60 80 IOO 120 140 160 Distrlbution of pot,(mV) 第2図静止電位と活動電位め度数分布, R.P.:静止電位, A.P.;活動電位 液温15ty1806 ものである。静止電位の平均は76.1±23,2mV, 活動電位95.2±26.3mV, overshootは・19.1± 24・・7mVであ.りしづμ、棚い秀布を示している。 その理由については後述するが,この中で大きな 電位がえられた時は誘導条件が良かったものと考 えられる(考察参照)。 』2)活動電位の波形

1

100mV’

1

O O.5 SEC.

第3図細胞内誘導による心房筋の活動電位 3例,液温17。C(本文参照) 第3図は17QCにわいてある標本について異っ た部位からえたられた活動電位の3例を示したも のである。えられた活動電位波形も条件によりい ろいろ変化があるが,最:も良し∼’と想われる条件(特 に誘導電極先端が充分細いこど友びmechanical disturbanseが少いことなど)で誘導されたもの の多くは同図の中段に示されるような波形であ る。この波形がこの温度における典型的なものと 考えられるが上段及び下設に示したごとき波形及 びその間の移行型に相当するような型もしばしば 認められた。活動電位は興醒に立上る上昇相(脱 分極相),非常にゆるやかに下降する部分(或いは 殆ど一定の脱分極部分,plateau)及び比較的速 かに下降する再分極相とからなっている。活動電 位と重ねて記録されているのは細胞外の電位(0 電位)でこれより陽性の部分即ちovershootは全 経過の%∼/3に及ぶ。:更にこの図で中毅と下段は 上昇相からplateaUに移行する部分にスパイク (initial spik¢)が認められその後からPlateau が始まっている。活動電位持続時間はその時の温 一 522 一

(4)

1OOmV

J

P 05 SEC. O OJ SEC.

L一一“一“ w

第4図 時間軸を引伸ばしてみた活動電位の初期,16DC 度に影響されるが(温度効果の項参照),15。C∼ 18Q Cでは約400∼500 msecである。上昇期より plateauの初めにかけての経過を観察するために

Braun管の掃引を早くして記録したのが第4図

(右側)である。左側の図は掃引を遅くして全経過 を記録したので波形は第3図の下段に相当するも のといえる。この例ではspikeは上昇相よりもゆ るやかに下降し再びやや上昇してplateaUl■移行 するという2相性の経過を示しているが単相性の spikeが認められる例もあった(第3図中段のご とき波形の場合多くは単相性spikeである)。ま たspikeの全く存在しない場合(例えば第3図上 段の活動電位)も認められたがそれらの差は温度, 酸素の供給,誘導電極の太さなどの条件によると 思われる。低温,酸素欠乏により明らかにspike は消失しまた誘導電極先端の折れにより細胞膜が 損傷されたように思われる場合には上昇相の立上 り最大傾斜(上昇率,V/sec)が小さくなり(この 揚合の上昇率の減少は活動電位がpeakに近付く に従って著明になり障害が少いときはpeak附近 だけ上昇率が減少するように思われる),spikeが 消失し更に活動電位や静止電位の減少する例は しばしば経験するところである、第5図は上昇相 が0電位を越えるあたりから一ピ昇率が著明に減少 しspikeも全く見られない例である。このような 型はしばしばえられるもので上図が16。C,下図 が18。Cの液温で記録されたものでいつれも酸素 ガスは供給しており誘導条件によるものと思われ る。第6図はある線維内より2回連続して誘導し た時の活動電位の記録である(但し刺激間隔は相 対不応期よりはるかに長い)が,上段の記録は spikeがなく下殺のものにはspikeがみられる。

1

toomv

J

O 05 SEC.

t一一ie一..A一.a.m.a一.」 第5図細胞内誘導による心房筋の活動電位,2例 (上段160C,下段18。C,本女参照)

1

100 mV ]

O O.5 SEC.

t−1一一一i−L一一i一一一

第6図同一誘導部位より記録した活動電位の2型 180C(本文参照)

(5)

両者の他の相の経過は殆ど等しくspikeがわっか の誘導条件の差で消失することを示している。 spikeの波形は後述するように温度によっても著 しく異なるし,第3図下段のように上昇相の極大 の点に重畳するもの,上昇相の途中で現われるも の(後述)なども認められる。spike、はplateauの 経過とはある程度無関係に活動電位経過の初期に 現われる一過性の電位変化だと考えてもよいよう に思われる。 3) マ重度権力果 第7図はまつ室温より28。C迄液温を上昇せし めた後,8QC迄の間5。C間隔に液温を降下させ 280C 2sec 旧。C lsec ] toorav SEC. O O.5 し0 e:g r. o.s ’8 9 o.7 cr くてO.6 :15 c O.5 ..o 鼈 .U o,4

B

O.3

x

Xe

Qfo=一1.7±025 e

×

eX

es m

Xe

sec 第7図温度効:果による波形の変化 て記録した活動電位波形を示したものである。四 温度毎に数回電極を挿入して細胞内電位を記録し そのうち代表的なものを示した。温度が28CCよ り次第に低下するにつれて最も大きな変化は活動 電位の持続時間の延長で次にspikeの波形の変化 である。持続時間と温度との関係を現わしてみる と第8図のようになり8。C∼180CでQle ・一1.8 ±=0.22,18。C∼28QCでQio=一1.5±0,30であり 平均するとQIe=一1.7±0.25で低温亀岡影響が 大きい。第9図はplateauと下降相における電 位変化の割合(再分極率)の絶対値をmV/secの 単位で温度の変化に対してPlotしたものでaで はQle=1.7±0.28, bはQie=1.4±0,9でaの部 分即ちPlateauの:方が下降相より温度によ.る影響 が大きい。この成績からは温度が低下した揚合め

Q2 一町騨一一星一・副一

8 i3 18 23 28

Temp. (ec) 第8図‘温度と活動電位の持続一回との関係 (第7図の例について測定したもの) (暢SEC.) 200t

鮭_二∼/

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igo:oi 一一‘一一一L一一一一一im一”一・一一一1一..一一L..一一F一一一.L一.;一一.一

8 13’ 18 23 2S

Terh p, (Oc) ・ 第9図温度とpateau(a)と下降相(b)の再分極率 (mV/sec)との関係 活動電位の持続時間の延長は主としてplateauの 時間的経過の延長が大きな効果をもつものと思わ れる。spikeは28QCで最も大きく(第7図)温度 の低下とともに次第に小さくなり80Cでは全く認 められない。13。Cにおける変化は異なった二種 類の波形をえたので両者を並べて示した。右側の 図はspikeの形からみて左側(13。C)と18。Cの波 形の中間の形を示していると思われる。左側の ものはspikeが上昇相の中頃に現われた形であ る。このような形を比較してみるとspikeと他の 活動電位の相とは温度効熟こ対して異なつ.た三度 を示して反応し,温度低下により活動電位の経過 が遅延する時,spikeの方は相対的に早く現われ るようになると思われる。.活動電位の大きさは 23QCにおいて最大であり温度の低下にて梢減少 一 524 一

(6)

するがあまり顕著ではない。 4.考 察 ω 第2図に示したように静止電位及び活動電 位の大きさが広い範囲(静止電位76.1±19.1mV, 活動電位95.2±26.3mV)に分布している原因は ガマ心筋線維iの直径が細いことにあると思われ る。約30μの直径をもつ犬の心室筋及び乳頭筋に ついて松田ら18)の示した度数分布は最大値と最小 値との差が20mVにすぎないし,同じく犬の仮腱 索(刺激伝導系線維)を用いたDraperとWeid− mann4)の実験でもそのちらばりは約30mV前後で ある。細い線維は超微小電極を細胞内に刺入する ことによりどうしても傷害され易いため実際の電 位より低い値がえられるものと考えられる。故 に第2図は標本または部位別の分布を示すもので はなくえられた電位の中で大きいものが傷害され ない正しい膜電位を現わしていると考えて差支え ないように思われる。このことはまたWoodbury 59)もカエルの心筋について細胞内誘導に関する実 験から,①太い線維よりも細い線維の方が値の 不揃いが著しい。② 電極先端の直径が大きい場 合はえられる電位は小さい。③細い線維につい ての最:高値が太い線維の平均値に近い,などのこ とを述べてえられた電位の最大値が実際の膜電位 第10図ガマ心筋線維の顕微鏡写真,上:心房, 下:心室,物指しは上下共通 50

40

50 20 翁

二Io

2

雪 0 24 6

g

並iO

Auricle 8 20 30

40

50 pmt l2 1.4 1.6 F) Ventricle 第11図 ガマ心筋線維直径の頻度分布 上:心房筋線維,下:心室筋線維 であると推論している。著者はガマの心筋線維の 組織標本を作りその線維直径を測定したが,その 顕微鏡写真を第10図に,測定した直径の頻度分布 を第11図に示した。この組織標本はホルマリン固 定であるので細胞の萎縮が当然考えられるが心房 筋の平均7.34±2.14μ,心室筋の平均8・30±2.50μ であるからたとえ10%の増加を見越しても平均値 は10μを越えることはない。 心筋線維について今迄に報告されている静止電 位及び活動電位の大きさの中主なものをあげると ヒツジのPurkinje線維が静止電位平均98mV, 活動電位132mV(Weidmann55)),犬の仮腱索平 均90mV,120mV(Trautweinら29)),同じく犬 の乳頭筋平均87mV,117mV(松田ら18・)及びカ エル心室筋平均64mV,78mV(Trautweinら29)), 64.5mV,77.2mV(Woodburyら52))でありカ エルでえられた電位は温血動物でえられたものに くらべて小さい。著者のえた電位の大きさは両者 の中間位で且つその最大値は温血動物についてえ られた電位の最大値に近い。このことは冷血動物 においても適切な条件下でえられた電位の大きさ は温血動物でえられたものに近い値に達すること を示すもので,両者の静止電位及び活動電位の大 きさはそれ程差異がないものと考えられる。 (Z〕活動電位の波形について温度条件を考慮し た上で今までの報告を比較するとWoodburyら (1952)57)がカエル心室筋についてなした報告及び

(7)

松田が最:近ガマ心室筋について報告している波形 とほぼ一致するがTrautweinらがカエル心室で えた波形及びWoodburyら(1951)58・’がカエル心 室で得た波形がE9 5図で示した波形に相当するも のでこれらは満足すべき誘導条件でなかったもの と思われる。これらの違いの圭なものは活動電位 の初期(上昇相とinitial spike)にあり,この部 分の経過は前にも述べたように僅かの条件の差で 異なってくるものと心えられる。松田18)は犬心室 筋の活動電位について仮腱索ダPUTk三nje線維及 び乳頭筋などでの波形の差を報告しているが著者 のえた波形はこれらのうちでは乳頭筋型に類似し ている。ガマについてもこのように異なった部位 からはそれぞれ特徴ある活動電位が誘導されると 思われる。しかし著者が用いた条件の標本の中, 2種類以上の異なった活動電位を発生する線維が あり例えば1つからは第5図のような活動電位 が,他の1つからは第6図のような活動電位がえ られるという仮定は考え難い。 〔3)温度低下による電位の大きさの減少はあま り顕著でないが温1血動物についてのTrautwein ら50,及びCorabceufら2)の研究によれば温度38。 Cから25。C迄の低下では静止電位も活動電位も殆 ど変化しないがそれ以下では減少し15。Cでは85 %,100Cでは約70%となる。卜者の実験では28。 Cから80Cの範囲で僅かに5%の減少を示すのみ である。これは温一撃動物と冷血動物との差による もので同じ温度条件で比較することは適当でない と思われる。Woodbury58)はカエル心室で30。C から10。Cに至る範囲では全く活動電位の大きさ に変化なく,5。Cでいくらか減少を示し0.60Cに 至って約50%に電位の低下をきたすことをみてい るが,ガマの心筋も230C∼8QCの範囲では影響が ないものと揮えられる。 これに対し活動電位の持続時間は大きく変化し 28。C∼80CのQlcの平均は一1.7を示している。 これはカエル心室筋58’やヤギのPurkinje線維2) のQle=一2∼3に比べて梢小さいがこれが如何な る条件の差によるか充分検討していない。しかし ここで23。Cん180Cと18。C∼8QCとでは後者の方 がQieの絶対値が大きい(この盛合Q、o=一1.8) ことから温度によるQ1。の変化も考慮に入れねば ならないと思われる。また再分極率についても下 降期(b)よりplateau(a)の方がQwが大きいか ら温度効果の際の持続時聞の変化にPlateauがも っとも大きな役割を持っているわけである。 のikeが存在する時は高温で大きくなり低温に なるにつれ次第に小さくなる。そして消失する前 の段階で上昇相の頂点でなくその途中に現われ尉 ことがある。 ここでかりにspikeと.そ1の他の部 分(plateau’のcomconent)と分けて考えること が許されれば第7図の温度降下に際しての活動電「 位の波形の変化は次のようにいえる。spikeは経 過が早くなり且つ少しく短縮するように思われ,1 更に上昇率の減少も後者にくらべて著明でない。

一方plateauのcomponentは上昇率が減少し

持続旧聞が著しく延長する。結局両者は温度効果 が異なると老えられこれらが異な1つた発生機構を、 有するためと思われる。勿論現象論的な見地から の推測でその機構の差に関する実験的根拠はえて いない。しかしこれについて興味あることは松田 ら20)による塩酸プロカインの犬心室筋活動電位に 対する影響についての報告で著者のいうspikeの

componentとPlateauのcomponentが分離iし

ているのが認められる。活動電位の波形の項で述 べたような少しの条件の差でspike丈が消失する・ という現象もこのことと関連して考えるべきであ ろう。 5.要 約 (1〕細胞内誘導法により全く自動性のないガマ 心房筋引片標本より細胞内静止電位及び刺激時の 活動電位を誘導した。刺激は短い矩形波を双極刺 激として賜え,標本の入ったRinger氏液プール には常に酸素を供給した。 (2)えられた電位の大きさは静止電位は平均 76.1mV,活動電位は平均95.2mVでovershoot の平均は19.1rnVであった。活動電位の持続時間 は15∼18QCで400∼50Gmsecあった。 (3)活動電位の波形は上昇相,plateau及び下 降相からなりある程度以上ではinitial spikeが 認められる。 (4)温度の低下とともに電位持続時聞は延長し plateau及び下降相の再分極率が減少するが減少 率は前者の方が大きい。持続時間の延長は主とし てPlateauの延長による。またinitial spikeと 他の部分とは温度の変化に対する態度を異にし .た。、 欄筆するに当り終始御鞭燵を賜わった冨田恒男教授 一526一

(8)

重びに御指導御校閲下さった.田中一郎講師に深甚.なる

謝意を.表します。

二. :文. 献

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参照

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