一 133 一 〔綜 読〕 (東京女子医大誌・第22巻第4号133頁∼139 昭$ll 27年10月)
溺
死
に
就
東京女子医科大学法医学教室教授 吉
ヨシ 成 ナリ 京 キヨウ 子 コて
1.緒 言 溺死は窒息死の一型で,変死者死因中,重要な 項目で,法医学領域では,・昔から多くの学者によ り之について詳細な研究が行われている。爾近年 我国に於ても,鑑察医務院の設立により,多数の 行政解剖が施行され,溺死に就ても種々統計的観 察が行われる様になった。:叉,窒息の研究は恩師 浅田博士の積年のテーマーで,その中には溺死に 関して多数の研究発表がある。しかし一・方には昨 年日本法医学会総会に於て論争を起した様に,現 在倫諸家の見解の一致しない点も残っている。私 は今回渉猟し得た文献に,当教室及び浅田博士門 下諸氏の研究成績を加え,溺死に関する問題を簡 単に述べようと思う。 2.歴史的事項 昔は世界各国で溺死を処刑に応用し?こ。日本で は,弟橘姫が自分の身を犠牲にして,夫の危難を 救ったとXう事がある。16世紀の終から17世紀 の始めにかけ,Ambroise Par6及びZacchiasは 既に溺死の勝見を記載している。即ち,胃め中に 水のある事,鼻孔から泡沫液の出る事,前額部に 擦過傷のある事により,三三の溺死である事が確 認出来るとした。13世紀の中頃,Louisは溺死者 は泡と水との為に窒息して死ぬ事,死体を三水し ても水は肺に入らない事を指摘し,事件の鑑定に 応用し7こ。ユ9世紀の始にFod6r包ま肺の気腫と」血 液稀釈を記載した。以後近頃の研究になる。5.発生頻度
搦死には災害,自殺,他殺があるが,どこの国でも災 害と自殺が多い。他殺は大入では稀であるが,殺児の手 段としては若干見受けられる。 災害搦死は,仏のMartini)によると,全災害のi/4で 1年に3∼4000入あると云う。ノールウェe・一のHarbitz2 は全災害の30%と云い,濤本で昭和21年東京都衛生局 変死者死因統計によると,全災害の2/3になるが,之は 時期が4月から9月迄の統計で,丁度溺死の多い時期であ ったからと思う。 自殺溺死は,Martinによると,全自殺の27%, Harbitzは35%,仏のSimonin3)は1/4以上と云い, 東京都衛生局のでは30.5%になる。 自殺の方法としてよく使われる方法は,国により異な り,ノールウェー,仏では燧死,溺死の順で,米国は, 銃火器が第1位,次が溺死である。国本で高這)による と,趨死,溺死の順であるが,之は昭和3年から23年迄 のもので,鑑察医務院佐藤5)による近頃の統計では,毒 物,総死,溺死の順である。 自殺溺死男女別に湿て 米国は,男ユ.0に対し女2。2,イタリーは男lk, fti12 と何れも女が多い。ドイツのPonsold6)も女が多いと云 う。日本でも高橋によると女が多く,年齢は20歳台が多 い0 4.生前徴候,生理,病理 (i) 溺死経過 溺死経過は,Hofmann7), MaschkaS)等の書 典的文献以来,初期無呼吸期,呼吸困難期,痙攣 期,終末前呼吸停止期,終末呼吸期に分けられ,全経過,Hofmannは動物で4∼5分, Martih
は三三はβ分,犬5分,人聞ぱもっと長いと云い オランダのRo119)は入聞で4分,英のKerrlo)ば 2∼5分と云う。 (ii)初期無呼吸期並に終宋前呼吸停止期の発 現に就て, 溺死は水中の窒息であるから,他種窒息と同様 の経過をとるが,異るところは,溺死に初期無呼 吸期のある事で,之を認めている者に伊のCan撫 一 1一to11),ノールウェーのHarbitz,独のStrassma− nnユ2), Ponso正d, Pietruskyi3),オ・・一ストリアのHo− rnann, Reuter14),仏のMartin等があり,前述 のRoll・英のGlaisteri5)嫁之を認めていないQ 此の初期無呼吸期の発生原因を,HoS皿ann・ Reuterぱ冷水の皮膚刺戟で反射的に起ると云い Mart三nは,水が鼻口に入ると驚愕し,水の侵入 に抵抗する為,胸を動かさなく,呼吸運動をやめ ると云い,Harbitzは冷水が気道粘膜を刺戟する からと云う。 浅田博士の下で鈴山16)は家兎を使い,溺死の際 の気管内圧及び血圧を測定し,:叉,レ線キモグラ フtpで呼吸運動及び心臓運動を記録し2溺死の 際の初期無呼吸の発生原因を次の様に説明した。 気管内圧測定でbj:,初期無呼吸期に,20例中16 例に呼気性呼吸停止を示し,他の4例ぱ,呼吸停 止の間に時ftマノメeタe一一が陰圧を示したが,之 も概して呼気性呼吸停止であった事,心臓運動は レ線キモグラフィ.Pで,処置後10秒及び60秒の 2回に,2秒間のキモ検査では静止している様に 見え江事,心臓容積増大を縦,横の積で仮に現わ すと,此の時期に増大している事,血圧曲線ぱ, 10秒では溺没直後の下降から上昇の途中で,’60秒 では最高血圧の前後である事忌の所見から,鈴山 は,・水の寒冷刺戟で全身皮膚血管が収縮し,.心臓 1に急に血液が集り,心臓は膨満し,高血圧でCyon 紳経叢i,頸動脈洞を刺戟し,迷走神経が興奮し, 呼気の緊張が高まり,交感袖経緊張は低’下し呼気 が起らす,反射的無呼吸を起すと云う。 依って之は溺水の温度に関係する事が老えられ 当教室で私は佐藤17)と共に家兎で,冷水による溺 死と,48。Cの温水での溺死の場合の心臓容積増 大に就て,レントゲン写真で観察し,心臓容積増 大が温水の場合に冷水の時より稻々遅れる事を明 かにした。続いて,来栖1s)ぱ,温水溺死の場合に ,血圧は高まるが・無呼吸は著明でない事を呼吸曲 線,血圧曲線から証明した。烏扇は鈴山の説を裏 付ける結果になる事と思う。 終末前呼吸停止も,今迄多くの学者は筋疲労で 説明して居り,叉,生理攣者Mossの云う様な肺 胞内Acapnea説は窒息の場合あてはま・らない。 興終末前呼吸停止も,鈴山は,気管内圧が呼気性 である事,レ線撮:影で心臓容積の増大している事 ヒスタミンショジク,失血の場合に終末前呼吸停 止の無い事,窒息で痙攣の強い場合に此の呼吸停 止の時間が長い二等から,之ぱ痙攣期に身体末梢 の血管収縮で,.機械的高血圧が起り,頸動脈洞刺 戟で反射的無呼吸を起すのであると云う。 (iii)痙攣に就て 窒息痙攣ぱ,始め交替性で,次第に強縮性痙攣 に移行する。溺死の場合も同様であり,時間的に は鈴山によると,家兎を固定台に緊縛しアこま5の 溺死でぼ,交替性痙攣の持続虚聞は強縮性痙攣の 持続時間より僅に短し)。しかし土屋19)によると, .Vウスを用い,身体の自由な場合の溺没で1ま,交 替性痙攣ぱ游泳運動,跳躍運動,或は苦悶の状態 とまぎらわしく,主として游泳運動と記載し,之 が交替性痙攣に該当するものと思われると云う。 二二は窒息痙攣が交替性痙攣20)21)と名づけられた 所以である。 (iv)溺水侵入の時期に出て 溺水が如何なる時期に気道内に侵入するかに就 て,Reuterはメチレン青白:申で家兎を溺らせ, 終末呼吸期以前なりとし,Hofmann, Paltauf, Brouardel, Wachholz u. Horoszkiewiczは呼
吸困難期に入ると幽い,Revenstorfはレ線観察 により呼吸困難期に侵入する事を認め,三田は吸 気性呼吸困難期に侵入する事を実験的化学的に証 明し,諸橋はレ線透視で之を確め沢水が肺胞に達 するのは痙攣期直前であると云うQ当教室でも私 と佐藤は,家兎での実験で硝子製気管カニューレ を透し,溺水は呼吸困難期に侵入する事を認めて 居り,鈴山ぱ痙攣期の終迄には肺胞に入ると云う。 (v)溺水侵入が各臓器に及ぼす影響 之に顧てS三monin3)の簡単な図解がある。それ によると,水は吸引され気管に入り,更に肺に入 ると肺胞内の空気は水と入れ代りに泡とな?て外 へ出る。肺の深部に残存する塞気は侵入した水の 二二の末梢へ圧迫され,肺胞壁が破れナこbして 肺気腫が起る。又同時に水による水腫も起る。肺 気腫,水腫,水圧の為肺循環が妨げられ,左心ぱ 血量が少く,右心に欝血が起り,延いてぱ上下大 静脈欝血,脳,肝臓に欝血が起る。晶晶は肺に留 まらす循環の盛んな聞は血行へ移行し,左心血が 一 2
一一 135一 第1表 死 体 所 見 1\人名 1所\
1見\
米
Gonzales オーストリア Reuter 仏Martin コ屍体硬直早い事あり屍体硬直強U
外辰. 冷 ,
独 Strassmann 竪樋
鷲 皮「 rf皮膚蒼白1\一_.
×
考 所 tr tt皮膚蒼白
〃 〃 ヘヘへi x.\.ヨ
Harbitz 薪塵児に認めす死灘二面\\.一∼士\一一一.t坪
島 顔面チアノーゼ. 4.5% あり rt隆鰐下幽々
8.0%\}ある・とあり1・・…醐欄・
i鼻口より泡沫液
見\躁
13.5%母 皮1\、脳
欝 血 1 1頸筋・胸筋出血あoll一’ i
l内ト気管内泡沫及び賜 1 13.2% rt肺容積膨大1
80%1景塵下鱒畷鑛概子欝
肝 欝 血 あ り rr1所1\1
−xx
x
x 脾牧縮57% 見 胃腸内容フk分圭曽カロ, 異物あり あり rt Canuto n tt rt あり tr 気嚢状にふくれ重 い 稀 rt一x−x一
×
tr tr肺は膨脹す
一s一一s−s−x
×
tr Simonin Simonin, Roll, Harbitz\\\一\佐
rr 屑内に多量に三二の羅聴1・小翫
Simonin稀なりと Simonini!4−vi!3 の重量増加 藤 石 丸 大塚(副腎アドレナ 翌) 佐 藤(腎重量) i有馬(膀胱尿) 斜線は記載なぎ事を示す。 稀釈される。胃にも水を呑む。 (vi)解剖所見 1Gonzales22), Reuter, Martin, Simonin, St−
rassmann, Pietrusky, Harbitz, Ro11等の挙 げている所見をまとめると,第1表の様になる。 (a)外表所見 死体硬直が早い事があり,叉強い事があると云 い(Gonzales, Reuter),死体の厭冷,鳶皮ぱ殆 んど凡て.の者が認めているが,Harbitzは薪生児 に鷲皮は見られないと云う。死斑は軽度に赤く, 平島23)によると漂流死体ぱ死斑が少いと云う事で ある。顔面にチアノーゼがあり,眼結膜下盗血点 }ま,他種窒息には多いものであるが,溺死の場合 は余り無いと云う。鼻孔からの泡沫ぱ何れも認め て居b,診断的価値がある。 (b)内景所見
脳の欝血をReuter, Martin, Simoninが挙 げ,頸筋,胸筋等補助呼吸筋の出血が認められ, Pietruskyは,此出血の所見から亭亭を考えてぱ ならないと云う。気管に泡沫があり,こ∼にゴミ 砂等の水中異物がある。 、 肺所見は,容積増大,気嚢状で,助膜下盗血点 ぱ,Reuterぱ大人に稀と云い,フランス派でも 稀と云う。重量増加ぱ佐藤24)によると,紐死の場 合と同程度,中には経死の方が重いのがあると云 う。之は溺水が肺胞内に侵入しても循環の盛んな
間は,血行へ吸収される事を物語っていると思わ れる。肺容積は溺死が最大で,血:量は二死の方が 多い。液量は溺死に多く,気管及び,気管枝内容 も溺死に多い。 組織学的に欝血,水腫,出血,,肺気腫があり, その他,心臓病緬胞の出現を認めている。Reuter は落屑細胞が溺死の肺胞内に見られると云い,山 本25)の家兎での研究によると,之ぱ,溺没中及び 溺死後5分のものになく,3H以後検査のものに 見られ死後変化であろうと云う。 肝臓には欝血があり,容積ぱSimoninによる と1/4∼1/3増加し,Muskatnus類似で,小葉の中 心が欝血し,出血しているσ 牌臓ぱ窒息の場合一一般e:収縮し,佐藤によると 正常値:の1/2になる。 その他,腎臓重:量増加があり,膀胱の内容充満 は,溺死に屡々認められる。之等の所見は溺死の 際肺から血行へ移行した慨則が,速に腎臓から排 泄される事を示し,生体溺死の確証ともなる重要 な藤見である。 導水の胃腸内への侵入は多少なりとも必ず認め られると云い(井上26)),石丸27)は家兎を固定台 に括りつけたま㌧溺死させナこ場合,胃内に二水が 無いか,叉はあっても少許なる事を実験した。旧 事ぱ法医学上,溺死者が自由な状態にあったか, 束縛の状態にあっナこかを鑑別するのにょい参老資 料となる。 (vii)血液稀釈に就て 溺水が肺胞に侵入すると,更に肺胞壁毛細管壁 を滲透し,血管内へ吸収され,左心血は右心血よ り薄くなる。 之に予て,昔から多くの研究があり,左右心血 に醗き,乾燥物質量比較,赤血球数計算,血液比. 重測定,血色素量比較,粘稠度測定,比電気電導 度測定,結氷点降下度測定等により,左右心血間 の差異を見出し,溺水が血行へ侵入し呪事を証明 出来るQその他Gonzales, Canuto, K:err,山上 等ぱクロールの定量を推奨し,叉C&nutoぱKar− tenhaemometrieをi挙げているっ 溺死の場合,二水が左心血をうすめる事に就て は,既に異論のないところで,溺死の診断に重要 である。 淡水の場合,三田によると,左心血は右心血の 1/10うすまると去い,Martimま1/8r)1/3, Simonin }ま1/S ・V IL一., Rollぱ1/4うすまると云うQ此の1/10 とか1/sとか云う価ぱ,測定の瞬間の価であるか ら,全経過に於て血行へ移行した三水ぱ之の何倍 1こもなっている事が老えられるQ叉淡水溺死の場 合の血液稀釈に就て,月村,佐々木,古屋等によ る証明がある。その一つの月村28)の実験を見ても 家兎で,気管圧閉,絞頸,溺死の場合の動脈血中. 02を,窒息後1分,2分,3分と逐時的に測定. すると,溺死は旨旨窒息に比べ,02ぱ1分以後2 分,3分置減り方が強く,CO2は他種窒息では窒. 息開始後増加して居るが,溺死ば1分で増加して 居つアこのが2分間既に著明に減少し,3分では更 に減少して居る適意から,溺没ac 1分から3分の 闇で,血液が無水で強く稀釈される事がわかる。 海水の場合,クロPル量測定でぱ,右心血にク ロール量少く,左心血ぼ海水に水分を:取られ濃縮 すると云う説が一時支配したが,井上ぱKryosk opie,血液残余窒素,残余炭素,塩素量を測定し た結果,海水によっても,僅1こ稀釈される事を認 めナニ。然しHb測定で左心血が右心血より多い例 もあり,濃縮も否定出来ない(上野29)・篠田)と 云う様に血液稀釈の問題は未だ決定的でぱない。 書下が肺胞から血行へ吸収される機転に窪き, PonSoldぱ,溺水が肺胞から間質組織へ入り,肺 毛細管壁を通り血液へ入るので,此吸収ぱ,肺毛 細管圧が15mmHg,身体の他の部分の毛細管圧 は30mmH:g,であるのに比べエ/2であるから,溺 水の吸収は胃等1こ於けるより速に起ると云ってい るが,溺死の場合の肺の皿圧ぱ未だ不明で,之も 今後の研究に侯つところであろう。 5.死体が古くなった場合の所見 以上の所見ぱ,死体が薪しい場合であるが,古 くなった場合は,溺水の就下現象により,肺内の 二水は肋膜腔に浸出し,更に時間が経つとそれも 認められなくなる。叉肺の容積も却って縮閉する 事があると云う(Canuto)o此際,気道に侵入し た異物}ま残留し診断に役立っ。 血液の稀釈状態も,吉い死体では,無二が空虚 になつアこり,或は血液があっても禽敗,拡散等に よb血液濃度が変化し,稀釈状態が不明になる。 一 4一
一137一 S.死休のキズに凡て 溺死体のキズは水により洗われ,出血が不明に 啄る故,生前のキズか,死後のものか肉眼的には 不明になる事がある。組織学的に検すれば,生前 のキズにぱ炎性反応がある筈である。水中では死 体が漂流申,川底の磨擦,魚族によるキズが生す る事がある故注意を要す。 7.水中急死1こ就て 溺死の時の溺死に非ざる急死にシ。ック死があ る。それ1こぱ,喉頭ショック,寒冷ショック,疹 痛によるショック死等がある(Ponsold)。減等の 場合には,溺死肺所見を欠く筈である。植村30)ぼ 水中急死に就き広汎な実験的研究を行っている。 その他,心臓疾患めある者,健康でも飲酒後, 冷永中での游泳は,皮膚血.管が急に収縮し,血液 が心臓へ一度に蝟集し,心臓は忽ち過重の負担に 喘ぎ,心臓麻痺に陥るQ之ぱショック死ではない が同じく水中急死の原因となる。 叉飽食後の水浴ぱ,消化管と游泳運動の筋とに 同時に血管拡張が起り,心臓ぱ空回りをして水中 急死を起育と云う(Ponso工d)。溺死体の解剖に当 ってぱ特に之等の点に注意すべきである。 8.溺死の診断. GonzaleSは,溺死の死因の90%は液体が気 道に侵入して起る窒憲死で,2%は循環虚脱或ぱ syncope,8∼9%は窒息+syncopeであると云 う。 溺死の場合,之さえあれば溺死であると云う様 な溺死の確徴ぱなく,解剖所見で,聖水による呼 吸器の変化と,循環器の変化の合計により診断が 下される。殊に水と共に肺或は胃に入っナこ砂,ゴ ミ,藁等の異物は,死体が腐敗しても残るので診 断に重要であるQ 叉,河,海,沼部の水中にぱ,硅藻,ミヂンコ 等のプランクトンがあ1),之に就ては小川・三浦 31)による詳細な研究がある。之が溺水と共に肺, 胃腸に入る為,プランク5ンを肺組織から,或ぱ 胃腸内容から検出する事により溺死の診断は確実 になる。又,予め,河,海,沼緑につき,プラン ク5ンの種類,%を調べておき,肺からの所見を それと照合する事により,どこの河,海で溺死し たかがわかるのであるが,斯る研究は日本でぱ友‘ 永32)の報告の他は余り聞かない。 外表所見で診断に役立つのは,鼻孔よりの泡と 手に何かしっかり掴んでいる事であると云う(G− 1aister)。叉Canutoは,鼻孔よりの泡は,水中 で呼吸しナこ証拠であると云う。しかし之はCO中 毒死や,他種窒息死にも来る故,溺死に特有では ないが,水から引揚げ7こ死体に之があれば,溺死 の徴と云ってよい。しかし腐敗が起ると価値がな くなる。 9.自他為災害別に就て 溺死の自他為災害別に就て,解剖所見では相違 点を認め得ないと云う(井上)。その判別に就てば 死体の着衣及びその周囲に於ける状況,或は自殺 企図を肯かせる様な身体的,精神的欠陥,叉は疾 病の有無に就き調査するが,溺死体の自他為災害 別は甚だ困難であると云われて居る。暴力の痕跡 がなければ,自殺か災害であるが死後水中で出来 たキズもある故,その鑑別には細心の注意を要す る。叉,他の方法で殺してから投黙し,自溺叉ぱ 災害1こ擬する事もあるが,此場合にぱ,溺死に特 有な肺所見,血液稀釈の所見はないと思うQ 10.死亡時間推定 死亡時間に就て,オランダのRo11ぱ,時計の止 っている時間が水に入つナこ時間で,普通の時計で は,投水煙数秒で止り,上等の時計でも十数分で 止ると云う。但しwater−proof watchでない事 を要する。 以上で,溺死に就ての即事から興味ある点を簡 単にまとめて見ナこ。然して爾今後の研究に侯たね ・ばならぬ問題も幾多残されてる事:を知り,今・耳蝉: に研究を進め不明の’点を究明しtこいと思う。 丈 献
1) Martin: Preci・s de medecine i6gale 1921, P, 437
2) Narbitz: Restmedicin 1926, S.219 3) Simonin: M6tsecine 16gale judiciaire 1948.
P189
4)高 橋:綜合医学 7巻10号14頁 昭和25年 5)佐 藤:束医大誌8巻3号242頁 昭和25年
6) Ponsold: Lehrb. d. ger. Med. 1950, S.2?.9 7)Hofgrmann: Lehrb. d. ger. Med. ElfteAufl.1927 8) Masch’trKa: Handb. d. ger. Med. 1. S. 1881
9) H.F. Rolg: Leerbeek Der Ger. Geneeskunde
Voor De Scholen Tot
10) A. kerr: Forensic Medicine 1946, P154
11)G.Canuto:Tesi di medicina 1949, Pユ50
12) E Strassmann: Lehrb.d. ger. Med. 1931, S193
13) Pietrusky: Handb. £ d. 6ffentl. Gesundhei−
tsdienst Herausgegeben vom Ministerialdire−
ktor D,r. Gutt Bd. 15, 1938
14) Reuter: Ger. Medizin 1931, S.353
15) J. Glaister: Medical lurisprudence & Toxic− olgy 9th ed. 1950 16)鈴 山: 日法常州 2巻 5∼6号121頁昭和23年 17)吉成・佐藤:女子医学研究21巻2号67頁昭和26年