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色素 ─金属イオン錯体のNMR測定技術の開発 利用統計を見る

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(1)

色素 ─金属イオン錯体のNMR測定技術の開発

著者

下村 与治

雑誌名

技術報告集

5 (1999年度)

ページ

13-18

発行年

2000-04

URL

http://hdl.handle.net/10098/7555

(2)

色素一金属イオン錯体の NMR 測定技術の開発

第 2 技術室化学計測技術班 下村与治 1. はじめに 複数の窒素を配位原子とするアゾ色素化大環状化合物(色素)は金属イオン、分子等のゲ ストを捕捉し錯体を形成する。また、これら錯体の評価は一般的に紫外・可視吸収スペクトル を測定して行っているが他にも幾つかの評価法がある。その一つにNMR測定法があり、その 錯体形成による立体構造の変化をケミカルシフトから推測するものである。 過去の研修において金属イオン錯体の機器分析を行った際、紫外・可視吸収スペクトル (溶液及び国体)、赤外吸収スベクトル(国体)では明瞭なスペクトノレ変化を観測したが、 NM Rスペクトルでは期待した程のスペクトル変化を示さず解析はできなかった。よって今回、測定 の前段階である試料調製について主に検討したので報告する。 2. 実験 右図に示した色素ー金属イオン錯体はモデル化合物 2 ,4-ピ スブ、チルアミノー6-p-ジメチルアミノフェニルアゾー 1 , 3 , 5-トリアジ ン; mp198--199t と金属塩[塩化リチウム(LiCl) ;99.9%,塩化銅

(n

)(CuCb);95%]から合成した。 ~(CH3l2 2-1 色素-Li+イオン錯体の合成と試料調製 NMR試料管の中に色素 2mg とLiCl

0.2mg (

1

:

2) を入れ、 80t で 1 時間、真空乾燥した。引き続き脱水した CDC130.4ml を注射器でセプタムキャップを通して導入し、 24時間、超音波洗 浄機の中で振蕩した。同様に色素 2mg とLiCl

2mg

(

1

:

20) の 試料を調製した。 2-2 色素ー Cu2+イオン錯体の合成と試料調製

NMR試料管の中に色素 2mg と CuCb

0.6mg (

1

:

l, CDCla) 、色素 2.3mg と CuCb1 .4mg

(

1

:

2

,

DMSO-d6) 、色素 1.9mg と CuCh

1

.

4mg(1: 2

,

CD30D) を入れ、 15 時間静置して 調製した。 [色素ー金属イオン錯体] 2-3 重水素化溶媒の脱水 重水素化溶媒 [Aldrich

9

9

.

8

-

-

9

9

.

9

atom %

oJ として 1) クロロホルム (CDCb) 2) ジメチ ルスルホキシド (OMSO-d6) 3) メチルアルコール (CD30D) を使用し、脱水剤に重水素化溶 媒用モレキュラシープス 3Aを 10wt%入れ脱水した。 内 δ 噌EA

(3)

2-4 溶媒導入法 溶媒導入法として 1) 開放導入 2) セプタムキャップ導入 3) 密閉導入 の 3 方法につ いて検討した(図 1) 。 [セプタム導入] [密閉導入] 図 1 溶媒導入法

2-5

NMR測定 NMR測定は 1) 未脱水溶媒 2) 脱水剤投入 24 時間後 3) 脱水剤投入48 時間後 に 各溶媒導入法で導入して測定した。 縦軸の水分量は各溶媒中に含まれる D化されていない溶媒を 1 とした時の水分量である。 2-6 使用機器 NMR測定は以下の装置を使用した。 FT- 核磁気共鳴装置 (FT-NMR) 日本電子製 JNM-LA500 超電導磁石: 1 1. 74T、ボア径 52mm プロープ: 5φ チューナプ、ルプロープ

NM-50 TH5

測 定 〉法:シング、ルパルス励起法(測定モード名 :non) 試料管:径 5mmφ 3. 結果・考察 3-1 各溶媒導入法での溶媒中の水の測定 図 2'"'-'4から分かるとおりクロロホルム、ジメチ ルスノレホキシドではいずれの導入法でも水分 量が極端に減少している。また、セプタム導入、

密閉導入ではほとんど差は見られなかったが開

3

放導入で、は水分量が多くなっている。これは開 放導入は投入時において空気中の水分をかな り吸収していることを示している。また、投入に 要する時間も無視できず、ジメチルスルホキシ ドの場合それを端的に現している。 -14 ー 。 。 、、 、託 <CD3CI> 、父 、、もよ

'

、、

一一

一一-ー一ーーー ーーーーーーーーーー ーー.・ーーーーーーーーーーーーーー喝ーー 24 48 a 木時間 (h) 図 2 クロロホルム中の水分量

(4)

く OISO-d ,> 2 制雨明 ν 官 24 鋭水時間 (h) 48 図 3 ジメチルスノレホキシド中の水分量 <COaOO>

!

1

l---=-;:~二本二二

。 。 24 48 脱水時間 (h) 図 4 メチルアルコール中の水分量 一方、メチルアルコールでは脱水前に比べいずれの導入法で、も若干水分量が増加してい る。これは購入時クロロホルム、ジメチルスルホキシドがスクリュウキャップボトルで、あったのに 対しメチルアルコールはアンプルであったこと、及び各溶媒をパイヤル瓶に移し替えたことが 起因している。また、投入した脱水剤は水を吸 収した後においては水分量を減らすことはで きず、維持するだけであることが分かる。 3-2 色素-Li+イオン錯体における水分の 影響 窒素を配位原子とした配位子と金属イオン

との錯体は遷移金属イオンが共有結合性の [0)

強い相互作用で錯体を形成するのに反し、 アルカリ金属イオンは最外殻軌道が球状であ ることから厳密な方向性を持たない。そのた め錯安定性が低く、周りの環境によって結合 の解離が懸念される。特に水との親和性が非 [C) 常に強くそれ自体安定な水和物を形成し配 位子との錯体形成に影響を与える。 以上のことから NMR を測定する場合、溶 媒中に存在する水が錯体形成に少なからず 影響を与える可能性があるため、溶媒の脱水 [B) 前及び脱水後における錯体の lH-NMR を 測定し、評価した。この結果(図 6) 、フェニル プロトン a , b が明らかに変化していることが分 かる。 [A] は色素のスペクトル (b:6.

70

,

6. 7

2

p

p

m

a:8.02 , 8.04ppm)で、ある。 まず色素とLiCl(1 :2)錯体を溶媒の脱水前と 脱水後で比較すると、脱水前の [B] のスベク トル (b:6.69 , 6.71ppm a:8.01 , 8.03ppm) は多少 ブロードではあるが [A] と余り変わらなかった。 >=N

J片由→(CH

3

h

Ligand:LiCI=l :20 COCb

^

-

^

A

Jし

Jl

p h U 4EA ligand:LCI=l:2 ωC 13 (dehyd. )

ノに

Ligand:LiCI=l:2 αlC la

A

Ligand αlC ll -l a m

-)へー

..国 7 汚 1.5・ 1. 7 個 ・沼

.

.

.

図 5 色素-Li+イオン錯体の NMRスベクトル

(5)

それに比べ脱水後の [C] のスペクトル (b:6.67

,

6.69;6. 7

0ppm a

:

7

.97

,

7

.98;8.00 , 8.02ppm) は明 らかに変化しており、錯体に基づく新たなピークが認められた。一方、色素とLiCl(1:20)錯体 の脱水前の [D] のスペクトル (b:6.67

,

6.68;6. 7

0ppm a

:

7

.

96

,

7

.98;8.00 , 8.02ppm) は [cJ のそれ と余り変わらない。このことから脱水前の [B] のモル比 1: 21こおいてはLi+イオンが溶媒中に 含まれる水と水和物を形成して安定化し、錯体を形成することができなかったと考えられる。 一方、 [D] のモル比 1:20 においては溶媒を脱水していないにも関わらず、一部のLi+イオン が水和に預かったものの過剰に存在するLi+イオンと錯体を形成したものと考えられる。 3-3 色素一 Cu2+イオン錯体の NMR クロロホルム、ジメチルスルホキシド、メチルアルコールの各溶媒における色素および色素 ー Cu2+イオン錯体の lH-NMRを測定した。いずれの溶媒においても錯体はブロードなスペ クトルを与えた。特にメチルアルコールは試料調製時に既に沈殿を生じた結果、ピークは殆ど 観測されなかった。 圃恒 1. [COCI.] [COCb] CHCI.

.

.・ 。圃 防副 他。 (Dおか由] 四郎か也1 圃値畠

.

.

.

.

.嗣 泊。 t凶 印刷加] [COoリI) 惜晶

.

.・

.

.

.

.

図 6 色素の NMRスペクトル(CDCI3,DMSO-d6,CD30D) 図 7 色素ー Cu2+イオン錯体のNMRスペクトル F 0 4 a A

(6)

ここで、比較的ピークのはっきりしているクロロホルムを溶媒とした錯体について、積算回数(パ ルス照射回数)が 48 回 (5min48sec) と 6 , 600 回 (12h50min) についてスベクトル変化を観察し た(図 8) 。これから積算回数の増加と共にピークが変化していることが分かる。 TI闘 :48 偏 i n48.前} atch

.

.

.

.

Ti嗣 :ωω(1 2t喝0・i 吋 atclo 図 8 積算回数における色素ー CuZ+イオン錯体の NMRスペクトル

.“'

それでは色素ー Cu2+イオン錯体が明瞭なスペクトルを示さなかった理由について考えてみ ると、 1) 錯体の溶解性 2) 色素の変化 3) プロトンの緩和時間 (TJ , Tz) の変化などが考え られる。まず、 1) の錯体の溶解性については錯体の構造が問題となり、色素と Cu2+ イオンが 交互に配位した高分子構造からくる溶解性及び分解能の低下が考えられる。また 2) の色素 の変化はCu2+イオンの触媒効果による色素の 分解が考えられる。 ここで最も可能性あるのは 3) のプロトンの 緩和時間の変化である。遷移金属である Cu2+ イオンは d電子殻に不対電子 1 個を持つため 常磁性(磁気モーメント :μ= 1. 73B.M.) であ る。このためプロトンの緩和時間が短くなりス ベクトルがブロードになったものと考えられる。 NMR測定においては化合物の緩和時間 を知ることが重要であり、それらを求める測定 法もあるがそれらの精密な測定には時間と労 力を要する。そのため一般的な測定にはそれ らの平均値を利用している。しかしながら Cu2+ イオンのような常磁性金属が配位していること が原因のーっとして考えられる今回のブ、ロー ドなスペクトルの場合、測定ノ号ラメータの値を それらプロトンの緩和時間の短縮を考慮した 値に変更する必要があるものと考えられる。 今回の測定にはシングルパルス法 (EXMOD :NON) を使用した。参考までにその測定パラ メータを示す(表 1) 。

POINT

32768

p

o

i

n

t

s

SAMPO

32768

p

o

i

n

t

s

FREQU

10000

Hz

FILTR

5000

Hz

DELAY

4

0

.

0

μsec

DEADT

57.1

μsec

INTVL

1

0

0

.

0

μsec

TIME

48

t

i

m

e

s

DUMMY

1

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3

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7232

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c

ACQTM

3

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7

6

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7998

msec

PREDL

1

0

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00000

ロlsec

INIWT

1

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s

e

c

RESOL

O.

3

1

Hz

PW1

5

.

80

μsec

OBNUC

1H

OBFRQ

5

0

0

.

00

MHz

OBSET

162160. 00

Hz

RGAIN

20

表 1 測定パラメータ (EXMOD:

NON)

可 t 噌・ 4

(7)

4. まとめ 本研修において NMR測定用重水素化溶媒中に含まれる水の存在は数mg以下の微量試 料を取り扱うとき問題となってくる。脱水剤としては活性アルミナが最適と考えるが、今回、入 手可能な重水素化溶媒用モレキュラシーブ、ス 3Aを使用した。特に水の存在はアルカリ金属イ オン錯体のスペクトルに影響を与えることが懸念されたため、以下の実験結果からその影響を 確認した。 1) 色素とLi+イオンのモル比 1:2 において、脱水溶媒では錯体に基づく新たなピー クの出現が認められたのに対し、未脱水溶媒中で、は確認できなかったこと。 2) 未脱水溶媒中 でもモル比 1:20 のように過剰のLi+イオンが存在している場合、含有水分量に応じて一部の Li+イオンは消費されるが残存するLi+イオンとの錯体に基づく新たなピークの出現を確認した ことが挙げられる。 一方、色素と Cu2+イオン錯体については何れの溶媒においてもブ、ロードなピークを与えたに すぎなかった。原因は幾っか考えられるが最大の原因は常磁性金属で、ある Cu2+イオンによる プロトン緩和時間 (Tl , T2) の短縮であると思われる。今回この件についてはこれ以上確認す ることが出来なかったが、今後の課題としたい。 5. 謝辞 今回の研修を実施するにあたり深いご理解を賜りました、材料開発工学科エネルギー・物 質変換化学講座有機合成研究室の瀬尾利弘教授及び諸先生方に感謝致します。 6. 参考文献

1

)

rJNM-LAシリーズ ユーザーズマニュアルj 、日本電子データム(株)

2

)

.

.

.

R.].Abraham, P.Loftus 著、竹内敬人訳、 r1Hおよび13CNMR概説J 、(株)化学問人、

(1981)

3

)

Andrew E

.

Derome 著、竹内敬人・野坂篤子訳、「化学者のための最新NMR概説 J (株)化学問人、 (1995) 4) 宗像恵・北川進・柴田進著、「多核 NMR入門 J 、(株)講談社サイエンティフィク、

(1996)

5) 武田裕行編者、「機能性大環状化合物の分析化学への応用」第 8 章、アイピーシー

(1990)

。。

参照

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