2011年度日本実験力学会論文賞を受賞して
著者名(日)
藤松 信義
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
34
ページ
3
発行年
2012
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002093/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja
**祝 賀**
2011年度日本実験力学会論文賞を受賞して
理工学部 機械工学科 藤松信義
私は2011年度日本実験力学会学会賞として,論文賞
を受賞しました.私は2011年4月から本学に着任した
ため,今回の受賞は,前勤務校である青山学院大学での
研究成果が評価されたものです.そのため,本誌原稿を
執筆するのは恐縮ではありますが,なかなか無い機会だ
と思いますので,受賞の言葉を自ら書かせて頂きます.
受賞対象論文は,「乱流組織運動を考慮したVITA法
および4象限解析の改良」です.乱流の構造を理解する
には,流れの中に存在している渦の様子を調べる必要が
あります.複雑な流れの中から,渦の特徴を捉えるため
に様々な統計的手法が提案されてきましたが,これまで
の方法は単一の速度変動から,その特徴を調べる方法で
した.渦は3次元運動をしていることから,論文では,
従来法の問題点を明確に示し,多次元に拡張することで,
統計的に妥当な結果が得られる方法を提案しています.
この研究成果が評価されて論文賞を受賞しました.
このような賞を頂けたのも,私が青山学院大学で助手,
助教として勤務した際に,指導を受けた三栖功先生の御
蔭です.先生は乱流現象に関する実験的研究を長年続け
てきた方でした.様々な経験を身に付けた方から直接指
導を受けながら,装置の設計と製作から,実験,データ
解析まで全て自分でできる環境を与えられたことは幸運
であり,貴重な経験となりました.このとき学んだこと
は,私が東洋大学で研究室を立ち上げるために,とても
役立っています.
本学機械工学科の原秀介先生が運営されている熱流体
工学研究室には,とても立派な実験装置があります.流
体力学の実験では,流れを発生させる風洞や水槽が必要
です.しかし,自分で装置を製作することが困難な場合
があり,また,業者に製作を依頼すると高額になること
から,大学の研究室では小規模な装置しか設置されてい
ないことが少なくありません.原先生の研究室には,低
速風洞,超音速風洞,煙風洞,回流水槽,非定常風洞が
あります.これだけ様々な実験装置を製作されており,
多様な実験に取り組める環境を作られたことに敬服しま
す.他の研究者や大学教員にも,この話をしましたが,
皆同じように驚いていました.
原先生が今年度退官されると同時に,現在の実験棟を
解体することになっているため,残念ながら,計測装置
以外の実験装置を引き継ぐことは出来ませんが,少しず
つ自分の研究環境を築いていきたいと思います.
どのような実験でも,よい結果を得るには,様々な点
に注意する必要があります.乱流現象に関する実験でも
同様です.例えば,枝が少し揺れる程度の風が吹いてい
る日は小さな気圧の変化が生じるため,実験しても良い
結果を得ることができません.また,実験室が外気温の
影響を受けやすかったこともあり,気温が変化しやすい
日中は,実験室の室温が変化して,安定に実験すること
ができませんでした.そのため,実験結果の再現性を得
るには,風がない日の夜遅くに実験をする必要がありま
した.
制限された実験環境でも楽しく研究に取り組めたの
は,学生と共に過ごせたからだと思います.実験準備か
らデータ解析を終えるまで長い時間が掛かることもあ
り,それらの合間には,学生からの研究に関する話,進
路の相談,個人的な話まで,耳を傾けていました.この
経験から,学生の声を聞くことが,教員と学生との間で
円滑な関係を築くために大切であると知ることができま
した.
私にとって本学最初の卒研生達(春学期生6名,秋学
期生2名)とも勉強会や研究報告会で会うだけでなく,
足しげく実験室に行き,日々声を掛けています.研究室
の立ち上げは大変であると言いますが,学生が主体的に
取り組んでいるので,良い意味で驚くと共に,明るく何
事にも積極的に取り組む学生に恵まれた幸せを感じてい
ます.現在,研究環境を整備するために,材料と道具を
揃えて,学生達と実験装置や模型の製作,プログラムの
作成に取り組んでいます.彼らが論文提出を終える3月
には,実験環境が整う予定です.
今回の受賞は,前勤務校の成果でしたが,学生達と共
に研究環境を築き,次は東洋大学での研究成果で表彰さ
れるように,研究に取り組みたいと思います.
一3一
工業技術No.34(2012)