緒 言
アンプルカット時に発生するガラス片などの不 溶性異物が,血管内に入ると血栓症などの致命的 な症状を起しかねない.実際,ガラスアンプル注 射製剤を用いた高カロリー輸液および末梢輸液調 製時にガラス片が混入した事例が多数報告されて いる.1, 2)このため高カロリー輸液や末梢輸液製剤 などへガラスアンプル注射製剤を注入する際に は,フィルターを用いないとガラスアンプル由来 のガラス片が混入する危険性が高まる.3-5)倉本6) は,これらの不溶性異物などの危険性を防ぐため, 中心静脈栄養液調製時においては,0.22 μm のフィ ルターを使用することが必要であると報告してい る.しかし,乳剤性製剤などはフィルターを通過 し難いため,ろ過の際には粒子径を考慮する必要 がある.さらに,フィルターへの吸着7-10)や薬剤 によるフィルターの変性,11, 12)安全性なども考慮 しなければならない.また,コストや手間の問題 もあり,全てのガラスアンプル注射製剤にフィル ターを使用することは難しい. 河崎ら13)は,ガラスアンプル注射液中へのガ ラス片混入防止策として,カット部をエタノール 綿などで清拭してカットした後 60 秒以上の静置 が必要であると報告している.しかし,この報告 は注射用水を用いた 2 分間の調査により行われて おり,粘度・密度などを考慮した検討は行われて いない.さらに,ガラスアンプル注射製剤由来の ガラス片の沈降に要する静置時間についての情報 も乏しいのが現状である.そこで本研究では,ア ンプルカット(easy-opening アンプル)の際のガ ラス粒子の分布状態14)(全粒子径の 96.4%が 5~ 50 μmの粒子)や土木工学部門などで沈降時間の 予測や粒子径の予測式15, 16)としてストークス式が * 福岡県福岡市東区馬出3-1-1 39(10) 581―586 (2013)ストークス式による予測沈降時間から考慮される
市販注射薬のガラス片混入の危険性
中島和博*,岡山未来,松本 望,末安正典,江頭伸昭,大石了三 九州大学病院薬剤部Risk of Mixing of Glass Pieces in Commercial Injections Predicted
by Sedimentation Time Using Stokes Equations
Kazuhiro Nakashima*, Miki Okayama, Nozomi Matsumoto,
Masanori Sueyasu, Nobuaki Egashira and Ryozo Oishi Department of Pharmacy, Kyushu University Hospital
Received March 22, 2013 Accepted August 14, 2013
There is little information on sedimentation time of glass pieces in glass ampoules. In this study, we predicted the sedimentation time of glass pieces in commercial injections using Stokes equations. First, we measured the viscosity and density of 21 types of commercial injection. The viscosity of injections changed largely with temperature, and the higher viscosity showed a longer predicted sedimentation time. Moreover, considering factors such as storage temperature and the height from bottom to surface of injections, the predicted sedimentation times of glass pieces was long, that is 3.9-19.0 min/ampoule at 20°C. These results suggest the risk of mixing glass pieces in parts of commercial injections.
一般的に利用されることが多いことから,今回 我々は,ガラスアンプル入り市販注射薬 21 種類 の粘度と密度を測定し,不溶性異物(ガラス片) の沈降に要する時間をストークス式17, 18)を用い予 測した.
方 法
1.沈降時間の予測 当院採用ガラスアンプル注射薬 21 品目の粘度 および密度を下記方法で測定し,それらをストー クス式へ代入,沈降時間を予測した.ストークス 式を使用するにあたって,ガラス片の大きさは, 単一粒径の球体と仮定し沈降時間を予測,求めた 沈降速度はレイノルズ数(Re)の適応範囲内で あることを確認した. なお,粒子径においては,毛細血管の栓塞の原 因となりうる 10 μm(ヒトの毛細血管の平均径は 8~10 μm19, 20))を,粒子密度は一般的なガラスの 密度(2.4~2.6 g/cm3)である 2.6 g/cm3を用いた. ストークス式 V = g(ρ-ρ0)d2/18η (但し,Re = dVρ0/η<0.25) V:沈降速度(cm/s) ρ:ガラス粒子の密度(2.6 g/cm3 ) ρ0:注射薬の密度(g/cm3) η:注射薬の粘度(mPa・s) d:ガラス粒子の直径(cm) g:重力の加速度(980 cm/s2 ) Re:レイノルズ数 調査に用いた当院採用ガラスアンプル注射薬は 以下の通りである. なお,ビタシミン注射液は高濃度(25%)注 射薬でもあり冷所保管注射薬であるため両方の区 分に入れている. <一般注射薬> ラシックス注 20 mg(サノフィ(株)) ガスター注射液 20 mg(アステラス製薬(株)) タガメット注射液 200 mg(大日本住友製薬(株)) アドナ注(静注用)50 mg(田辺三菱製薬(株)) ヘパリンナトリウム注 N 5 千単位 (味の素製薬(株)) トランサミン注 10%(第一三共(株)) ウロミテキサン注 400 mg(塩野義製薬(株)) <冷所保管注射薬> アデホスコーワ L 注 20 mg(興和(株)) ネオラミン・スリービー液(静注用) (日本化薬(株)) ビタシミン注射液 500 mg(武田薬品工業(株)) <コロイド状の注射薬> メドレニック注(テバ製薬(株)) フェジン静注 40 mg(日医工(株)) <油脂性ビタミン注射薬> チョコラ A 筋注 5 万単位(エーザイ(株)) ケイツーN 静注 10 mg(エーザイ(株)) <乳濁性・乳剤性注射薬> リプル注 10 μg(田辺三菱製薬(株)) プリンク注 10 μg(テバ製薬(株)) ロピオン静注 50 mg(科研製薬(株)) <高濃度( 25%)注射薬> パントール注射液 250 mg(トーアエイヨー(株)) ビタシミン注射液 500 mg(武田薬品工業(株)) <凍結乾燥注射製剤> タチオン注射用 200 mg(長生堂製薬(株)) 水溶性プレドニン 20 mg(塩野義製薬(株)) HMG注テイゾー (あすか製薬(株)) 2.粘度測定 測定には第 16 改正日本薬局方21)に記載されて いる円錐平板型回転粘度計[E 型 TVE-22LT,東 機産業(株),東京,測定範囲: 0.6~1200 mPa ]を 用いた。コーン・ロータを使用し,回転数 100 rpm,測定レンジ M,回転開始 30 秒後の粘度を 20 ± 0.2℃,30 ± 0.2℃,40 ± 0.2℃で測定した. 測定値は,3 回測定し,その平均値を求めた.なお, 粘度計の校正用標準液として水を用いた. 3.密度測定 マイクロピペット(正晃(株),福岡) と電子天 秤 AG104(DKSH 日本(株),東京)を用い 1000 μL の重量を 20 ± 0.2℃,30 ± 0.2℃,40 ± 0.2℃で測定した.測定値は,3 回測定し,その平均値を求 めた. 4.統計解析 水と各注射薬間の粘度および密度の比較には, Student's t-test を用い,各温度間の粘度および密 度 の 比 較 は, 一 元 配 置 分 散 分 析(one-way ANOVA)後,各群間の比較を Bonferoni-Dunn test により検定した.検定には Stat view J-5.0(Abacus Concepts, Inc., Berkely, CA, USA)を用い危険率 5%を有意水準とした.
結 果
1.市販注射薬の粘度 今回,調査に用いた市販注射薬の 20,30 および 40℃における粘度を表 1 に示す.多くの注射薬に おいて,温度上昇と共に粘度の減少が見られた. 水の粘度と比較するとすべての注射薬で高い傾向 にあり,ラシックス注,ネオラミン 3B 注,ガスター 注,アドナ注,アデホス L 注以外の注射薬では, どの温度においても有意差が認められた. 2.市販注射薬の密度 市販注射薬の 20,30 および 40℃における密度 を表 2 に示す.いずれの市販注射薬においても, 密度は 20,30 および 40℃においてほとんど変わ らなかった.また,水の密度と比較すると,ビタ シミン注およびフェジン注では約 1.2 倍と高く, どの温度においてもわずかではあるが有意に高い ものが多かった. 3.注射液中のガラス粒子の予測沈降時間 表 3 はストークス式により求めた 20 および 30℃における市販注射薬中ガラス片の予測沈降時 間(分/cm),並びに薬液量を考慮したアンプル 当たりの予測沈降時間(分/アンプル)を示した ものである.20 および 30℃でのガラス粒子径 10 μmの薬液 1 cm 当たりの予測沈降時間は,それ ぞれ,油脂性注射薬(チョコラ A 注)やコロイ ド状注射薬(フェジン注)では 8.6~8.9 分および 6.0分,乳濁性・乳剤性注射薬(リプル注,プリ ンク注,ロピオン注など)では 2.7~4.3 分および 2.1~3.8 分,溶液濃度が 25%の注射薬(パントー ル注,ビタシミン注など)では 5.1~5.2 分および 表 1 20,30 および 40 ℃における市販注射薬の粘度 粘度(mPa・s) 20 ℃ 30 ℃ 40 ℃ チョコラ A (油性) 4.63 ± 0.04** 3.13 ± 0.03**†† 2.57 ± 0.03**†† ケイツーN 1.39 ± 0.01** 1.01 ± 0.03**†† 0.84 ± 0.02*†† メドレニック 1.32 ± 0.01** 0.94 ± 0.01**†† 0.82 ± 0.02*†† フェジン (コロイド) 4.06 ± 0.03** 2.78 ± 0.02**†† 2.22 ± 0.03**†† リプル (乳剤性) 2.25 ± 0.03** 2.02 ± 0.03** 1.66 ± 0.02** プリンク (乳剤性) 2.20 ± 0.03** 1.55 ± 0.02**†† 1.24 ± 0.02**†† ロピオン (乳剤性) 1.44 ± 0.01** 1.07 ± 0.02**†† 0.95 ± 0.01**†† ビタシミン (25%) 2.47 ± 0.01** 1.73 ± 0.01**†† 1.35 ± 0.01**†† パントール (25%) 2.62 ± 0.01** 1.91 ± 0.02**†† 1.54 ± 0.01**†† ウロミテキサン (10%) 1.12 ± 0.01** 0.88 ± 0.02**†† 0.72 ± 0.01*†† タガメット (10%) 1.31 ± 0.01** 0.91 ± 0.02**†† 0.85 ± 0.01**†† トランサミン (10%) 1.50 ± 0.01** 1.04 ± 0.02**†† 0.90 ± 0.06*†† アデホス L 1.02 ± 0.01 0.73 ± 0.02†† 0.66 ± 0.01**†† アドナ 1.18 ± 0.01** 0.84 ± 0.02†† 0.73 ± 0.01**†† ガスター 1.21 ± 0.01** 0.88 ± 0.02†† 0.70 ± 0.00†† ネオラミン 3B 1.11 ± 0.01** 0.78 ± 0.00†† 0.62 ± 0.01†† ヘパリン 1.18 ± 0.01** 0.82 ± 0.00**†† 0.76 ± 0.01**†† ラシックス 0.97 ± 0.01** 0.78 ± 0.01**†† 0.62 ± 0.01††Mean ± SD(n = 3).粘度計校正用標準液 --- 水 (20℃:1.00 mPa・s, 30℃:0.79 mPa・s, 40℃:0.65 mPa・s).
3.7~3.8 分であった.また,アンプル当たりの予測 沈降時間は,フェジン注で最も長く 20℃で 19.0 分, 30℃で 13.1 分であった.最も短いアデホス L 注で も 3.9 分および 2.8 分であった.図 1 は冷所保管注 射薬のリプル注,プリンク注,ビタシミン注,ア デホスコーワ L 注の温度と予測沈降時間の関係を 示したものである.これらの冷所保管薬品を,冷 蔵庫から取り出し,ただちにアンプルをカットし た場合(5℃とした場合)のガラス片(粒子径 10 μm)の沈降時間はグラフより 2.5~7.0 分と予測さ れた.表 4 に凍結乾燥製剤のタチオン注,プレド ニン注を注射用水(1 mL)で,HMG 注を添付の 表 2 20,30 および 40 ℃における市販注射薬の密度 密度(g/cm3) 20℃ 30℃ 40℃ 水 1.00 ± 0.00 1.00 ± 0.01 1.00 ± 0.00 チョコラ A (油性) 1.01 ± 0.00 1.01 ± 0.01 1.01 ± 0.01** ケイツーN 1.02 ± 0.01* 1.03 ± 0.02* 1.02 ± 0.01* メドレニック 1.00 ± 0.01 1.01 ± 0.01 1.00 ± 0.00 フェジン (コロイド) 1.16 ± 0.00** 1.17 ± 0.00**† 1.16 ± 0.00** リプル (乳剤性) 0.99 ± 0.01 0.99 ± 0.01 0.98 ± 0.00** プリンク (乳剤性) 0.98 ± 0.01 1.00 ± 0.01 0.98 ± 0.00** ロピオン (乳剤性) 0.99 ± 0.01 1.00 ± 0.01 0.99 ± 0.01 ビタシミン (25%) 1.14 ± 0.00** 1.14 ± 0.00** 1.14 ± 0.00** パントール (25%) 1.04 ± 0.01** 1.04 ± 0.01** 1.03 ± 0.00** ウロミテキサン (10%) 1.03 ± 0.01** 1.05 ± 0.01** 1.06 ± 0.02** タガメット (10%) 1.02 ± 0.00** 1.03 ± 0.01** 1.02 ± 0.00** トランサミン (10%) 1.01 ± 0.01* 1.02 ± 0.01* 1.02 ± 0.00** アデホス L 1.00 ± 0.00 1.01 ± 0.00 1.00 ± 0.00** アドナ 1.00 ± 0.01* 1.02 ± 0.01* 1.01 ± 0.00* ガスター 1.03 ± 0.00** 1.02 ± 0.00** 1.01 ± 0.00**† ネオラミン 3B 1.02 ± 0.00** 1.02 ± 0.00** 1.02 ± 0.00** ヘパリン 1.00 ± 0.02 1.01 ± 0.01 1.03 ± 0.03 ラシックス 1.00 ± 0.01* 1.01 ± 0.00* 0.99 ± 0.00†
Mean ± SD(n = 3).* P<0.05 vs 水,**P<0.01 vs 水(Student's t-test);† P<0.05 vs 20℃,†† P<0.01 vs 20℃
(Bonferoni-Dunn test). 表 3 20 および 30 ℃における市販注射薬中のガラス片の予測沈降時間 薬液の深さ (cm) 沈降時間(20℃) 沈降時間(30℃) 分 /cm 分 / アンプル 分 /cm 分 / アンプル 注射用水 ― 1.9 ― 1.5 ― フェジン (コロイド) 2.2 8.6 19.0 6.0 13.1 チョコラ A (油脂性) 1.8 8.9 16.1 6.0 10.8 トランサミン (10%) 4.7 2.9 13.6 2.0 9.5 ビタシミン (25%) 2.1 5.2 10.9 3.7 7.7 アドナ 4.7 2.3 10.7 1.6 7.6 リプル (乳剤性) 2.2 4.3 9.4 3.8 8.5 パントール (25%) 1.7 5.1 8.7 3.8 6.4 プリンク (乳剤性) 2.0 4.2 8.3 3.0 5.9 ロピオン (乳剤性) 2.5 2.7 6.8 2.1 5.1 ネオラミン 3B 5.2 1.3 6.8 1.5 7.9 ヘパリン 2.5 2.3 5.6 2.0 4.2 ケイツーN (油脂性) 2.1 2.7 5.6 1.6 3.9 タガメット (10%) 2.1 2.5 5.3 1.8 3.7 メドレニック 2.0 2.5 5.0 1.7 3.6 ガスター 2.1 2.4 4.9 1.8 3.6 ウロミテキサン (10%) 2.1 2.2 4.6 1.7 3.6 ラシックス 2.2 1.9 4.1 1.5 3.3 アデホス L 2.0 1.9 3.9 1.4 2.8
溶解液(1 mL)で溶解した場合の粘度および密度 とアンプル当たりの予測沈降時間を示した.溶解 時の溶液濃度が 20%のタチオン注では,20 および 30℃でのガラス粒子径 10 μm の薬液 1 cm 当たりの 予測沈降時間は,それぞれ 3.5 分および 2.6 分と予 測された.また,表 5 には凍結乾燥製剤であるタ チオン注を各種溶解液(注射用水,生理食塩液,5% ブドウ糖液,10%塩化ナトリウム液)1 mL で溶解 した場合のガラス片(粒子径 10 μm)の予測沈降 時間(20℃)を示した.これらの予測沈降時間は 溶解液の種類で異なり,注射用水で溶解した場合 よりも約 1.1~1.4 倍時間を要すると推測された.
考 察
今回,調査を行った市販注射薬 21 種類の粘度は, アンドレードの式22)に示されるように温度上昇と 共に減少した.ストークス式中の沈降速度は,粘 度に反比例するため,粘度の大きい製剤や冷所保 存が必要な製剤では粘度が沈降時間に大きく影響 してくる.ストークス式から求めた 20℃での市販 注射薬の沈降時間は,注射用水(20℃の粘度:1.0 mPa・s)よりも 1.0~4.7 倍時間を要すると推測さ れた.(表 3)また,温度変化で粘度が 20~30% 増えた場合も,沈降時間はもとの 1.25~1.3 倍要す ることが予想された.一方,密度はすべての市販 注射薬において温度間での差は認められなく,温 度による密度変化の影響は少ないと考えられた. 薬液量が 10 mL の注射薬(アドナ注,トランサミ ン注,ネオラミン 3B 注)では,注射薬の底から 液面までの高さが約 5 cm で,薬液量が 2 mL の注 射薬の約 2.5 倍であり,アンプル当たりのガラス 片の沈降時間は長かった.冷所保管の注射薬を冷 蔵庫(5℃)から取り出し,ただちにアンプルカッ トした場合も,室温保管している注射薬に比べ注 射液の粘度が増えるため,沈降時間が長くなるこ とが考えられる.今回は,20~40℃における予測 沈降時間のグラフを基に 5℃における沈降時間を 予測した(図 1).アンプル入り凍結乾燥注射製剤 (タチオン注,プレドニン注,HMG 注)をアンプ ルカットする際にも,ガラス片混入の危険性が考 えられ,それらの注射薬を溶解する際の溶解液の 種類によっても沈降時間が異なることが明らかと なった(表 5).濃度が大きい溶解液(50~70%ブ ドウ糖液など)でこれらアンプル入り凍結乾燥製 剤や粉末製剤を溶解する際には,さらに沈降時間 が長くなることが推測される.凍結乾燥注射製剤 (バイアル製剤)に添付されているガラスアンプル 入り溶解液で溶解する際にも,ガラス片が混入す る危険性がさらに高まるので注意が必要である. 今回の結果から,比較的粘度が大きい注射薬(油 脂性注射薬,コロイド状注射薬,乳剤性注射薬, 薬液濃度が 25%以上の注射薬)では,ほかの注 射薬よりガラス片の沈降に時間を要することが予 想された.さらに,アンプルの底から液面までの 表 4 20 および 30 ℃における凍結乾燥製剤の粘度・密度・市販注射薬中のガラス片の予測沈降時間 20℃ 30℃ 粘度 (mPa・s) (g/cm密度3) 予測沈降時間 分 /cm (mPa・s)粘度 (g/cm密度3) 予測沈降時間 分 /cm タチオン 1.82 ± 0.01 1.03 ± 0.00 3.5 1.33 ± 0.00 1.05 ± 0.01 2.6 HMG 1.15 ± 0.00 1.00 ± 0.00 2.2 0.84 ± 0.01 1.00 ± 0.00 1.6 プレドニン 1.07 ± 0.01 0.99 ± 0.00 2.0 0.85 ± 0.00 0.99 ± 0.01 1.6 Mean ± SD (n = 3).タチオン注・プレドニン注は注射用水 (1 mL) で,HMG 注は添付の溶解液 (1 mL) で溶解. 図 1 冷所医薬品の予測沈降時間(粒子径 10 μm) ◆: リプル,×: プリンク,△: ビタシミン,○: アデホスコーワ L高さ(注射薬の液量)に加え注射薬の保管温度, 注射薬の剤形(凍結乾燥注射製剤や粉末注射製剤) などもガラス片の沈降時間に影響する.今回はス トークス式中の粒子径を球形(実際は不定形)と 考えて調査を行っている.このため,沈降時間は, 予測値(20℃で 3.9~19.0 分)よりもさらに長くな ることも考えられる.以上のことを考慮すると,一 部のガラスアンプル注射液においてはフィルター を使用しない場合,ある程度の静置時間をおいて ガラス片混入を防ぐことは臨床現場での対応上, 困難である可能性が高い.このため,早急にガラ スアンプルを用いない注射薬の開発が望まれる.
引用文献
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