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2016 年度 ハーツにおけるシュート ザ ムーンの検証 坂本 将吾 研究室 グリムベルゲン

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[ 卒 業 論 文 ]

ハーツにおける

シュート・ザ・ムーンの検証

指導教員 Reijer Grimbergen

コンピュータサイエンス学部

グリムベルゲン研究室

学籍番号 C0113217

氏名 坂本 将吾

[ 2016 年度 ]

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2016

年度

グ リ ム ベ ル ゲ ン 研 究 室

(3)

内表紙

東京工科大学

ハーツにおけるシュート・ザ・ムーンの検証

指導教員

Reijer Grimbergen

提出日 2017 年 1 月 18 日

提出者

学 部

コンピュータサイエンス学部

学籍番号

C0113217

氏 名

坂本 将吾

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2016 年度 卒業論文概要

ハーツにおけるシュート・ザ・ムーンの検証 コンピュータ サイエンス学部 氏 名 坂本 将吾 指 導 教 員

Reijer Grimbergen

学籍番号 C0113217 本検証ではトランプゲームのハーツを題材にした.ハーツはジョーカーを除くトラン プ52 枚を使用し,プレイヤー4 人で遊ぶゲームである.このゲームではマイナス点とな るカードを取らないことを目的としている.しかし,マイナス点のカードを全て取った 場合は「シュート・ザ・ムーン」が発生する.「シュート・ザ・ムーン」が発生すると, 他のプレイヤー全てにマイナス点を与えることができる.本検証では積極的に「シュー ト・ザ・ムーン」を狙う戦略の有効性について検証した. 「シュート・ザ・ムーンを狙う AI」「トリックの勝利を避ける AI」「ポイント札を出す AI」「マイナス点が少ない相手を妨害するAI」の 4 種類の AI を作成し,10000 回の対戦 を行わせた. 「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」は約 30%で 1 位,約 50%で 4 位になった. 「シュート・ザ・ムーン」へのリスクを軽減することはできなかったが,狙うこと自体は 間違いではないと考えられる. 「シュート・ザ・ムーン」を狙い,失敗した際の対策を行うことができれば,勝率は上が ると考えられる.

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目次

1. 序論 ... 1 1.1. 背景 ... 1 1.2. 本検証の狙い ... 1 2. 理論 ... 2 2.1. ハーツとは ... 2 2.2. ハーツのルール ... 2 2.3. シュート・ザ・ムーンとは ... 5 2.4. シュート・ザ・ムーンの問題点 ... 6 3. 提案手法 ... 7 3.1. 提案手法の説明 ... 7 3.2. 実装する AI の説明 ... 7 4. 実験 ... 15 4.1. 実験目的 ... 15 4.2. 実験手順 ... 15 4.3. 実験結果 ... 16 4.4. 考察 ... 18 5. 結論 ... 20 5.1. まとめ ... 20 5.2. 今後の課題 ... 20 謝辞 ... 21 参考文献 ... 21

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1. 序論

この章では,本検証の背景及び狙いについて記述する.

1.1. 背景

ハーツはジョーカーを除く52 枚のトランプを使用する 4 人用のゲームである.各プレイ ヤーに13 枚の手札が配られ,1 枚ずつカードを出していく.大きいカードを出したプレイ ヤーがカードを獲得し,獲得したカードの点数を競う.点数が 100 を超えるまでゲームを 繰り返し,点数が一番少ないプレイヤーが勝者となる. ハーツには「シュート・ザ・ムーン」というルールがあり,これを達成すると他のプレイ ヤー全てに26 点を与えることができる.「シュート・ザ・ムーン」を積極的に狙うことで, 相手との差を広げ,ゲームを有利に進めることが期待できる.

1.2. 本検証の狙い

本検証では「シュート・ザ・ムーン」を積極的に狙うことの有効性について検証する.さ らに,本検証を通じて「シュート・ザ・ムーン」を狙うべき状況について考察する. 「シュート・ザ・ムーン」とは,スペードのクイーン及びハート13 種類の全てを獲得す ることで発生する.これを達成することで他の相手プレイヤー全てに26 点を与えることが できる.

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2. 理論

この章では,本検証で扱うハーツについて記述する.

2.1. ハーツとは

ハーツとは,トランプを用いて行うトリックアボイダンスゲームの一種で,特定のカード を取るのを避けることが目標となる [1].このゲームでは,ハートのカード 13 種類とスペ ードのQ を取るのを避けることが目標となる.

2.2. ハーツのルール

本検証では,Windows に付属しているハーツのルールを用いる.各プレイヤーには 13 枚 ずつ手札が配られる.その後,手札から任意の3 枚を選んで他のプレイヤーと交換する.プ レイする毎にカードを渡す対象のプレイヤーが変わる.表2.1 にカードを渡す相手の推移を 示す.カードを渡す相手は自分から見て左,右,向かい側,交換しない,といった順番で行 う. 表2.1 カードを渡す相手の推移 1 回目 自分から見て左の相手 2 回目 自分から見て右の相手 3 回目 自分の向かい側の相手 4 回目 カードを交換しない 5 回目 自分から見て左の相手 6 回目 自分から見て右の相手 7 回目 自分の向かい側の相手 8 回目 カードを交換しない 手札の交換を終えたら,クローバーの 2 を持っているプレイヤーから,時計回りの順番 にカードを1 枚ずつ出していく.全員が 1 枚ずつ出し終わった段階で最も大きい数字を出 したプレイヤーが出したカードを獲得する.ゲーム進行の例を図 2.1 に示す.図 2.1 の場 合,クローバーのA を出したプレイヤーが場に出された 4 枚のカードを獲得する.これを 全員の手札が無くなるまで繰り返し,獲得したカードの点数に応じてプレイヤーの点数が 加算される.

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3 図2.1 ゲーム進行の例 先述の流れをいずれかのプレイヤーの点数が100 点に達するまで繰り返し,最も点数の 少ないプレイヤーの勝利とする.図2.2 に,ハーツの対戦結果の例を示す.図 2.2 では, プレイヤー(人間)1 人と AI(西,北,東の 3 体)で対戦している.対戦結果は,西が 109 点で 100 点を超えたため,ゲームが終了している.この時点で最も点数が少ない東が 勝者となる.

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4 図2.2 ハーツの対戦結果の例 カードの強さは強いものから順に以下に示す. A>K>Q>J>10>9>8>7>6>5>4>3>2 ハーツでは以下のカードを獲得した場合点数が加算される.  ハートのカード 13 種類(1 枚につき 1 点)  スペードのクイーン(1 枚 13 点) 本検証で使用するハーツの用語 [2]についての説明を以下に示す.  トリック プレイヤーが1 枚ずつカードを出す小勝負を指す.リード(後述)されたマークの中で 最も大きい数字を出したプレイヤーがそのトリックの勝者となり,出したカードを獲 得する.トリックの勝者が次のカードをリードする.  リード トリックにおける最初のカードを出すこと.ゲームの最初のリード(オープニングリー ドと呼ばれる)はクローバーの2 を持っているプレイヤーから行う.  フォロー リードされたカードのスート(マーク)と同じスートのカードを出すこと.フォローで

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5 きる場合はフォローしなければならない.これをマストフォロールールと呼ぶ.  ディスカード リードされたカードに対してフォローできなかった場合,任意のマークのカードを出 すこと.ディスカードの例を図2.3 に示す.図 2.3 の場合,ダイヤのカードをリードさ れたのに対してクローバーの 4 をディスカードしている.この場合,ディスカードさ れた数字の大きさに関わらず,ダイヤのジャックを出したプレイヤーがカードを獲得 する. 図2.3 ディスカードの例  ブレイク ハートのカードが初めて出された場合を指す.ブレイクが起こるまではハートのカー ドをリードすることができない.

2.3. シュート・ザ・ムーンとは

ハーツではハートのカード及びスペードのクイーンを獲得した場合に点数が加算される. 1 ゲーム中にそれら全てを獲得した場合,「シュート・ザ・ムーン」が発生する.本来であ れば獲得したカードに応じてプレイヤー自身に点数が加算されるが,「シュート・ザ・ムー ン」を達成した場合には相手プレイヤーに点数が加算される.加算される点数はハート13 枚(1 枚につき 1 点)及びスペードのクイーン(13 点)を合計した 26 点が加算される.

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6 「シュート・ザ・ムーン」は達成したプレイヤー以外の相手プレイヤー全てに26 点が加算 されるため,「シュート・ザ・ムーン」を達成することができれば大きく点差をつけること ができる.図2.4 に「シュート・ザ・ムーン」の例を示す. 図2.4 シュート・ザ・ムーン

2.4. シュート・ザ・ムーンの問題点

「シュート・ザ・ムーン」を達成するためには,ハートのカード及びスペードのクイーン(以 下これらをポイント札と呼ぶ)を全て集める必要がある.しかし,ポイント札を1 枚でも集 め損なうとその分のポイントが自身に加算されてしまう.そのため,「シュート・ザ・ムー ン」のみを狙っていっても結局損をしてしまうことが予想される. この問題を解決するためには,「シュート・ザ・ムーン」に失敗した場合には,なるべく ポイント札を取らないように立ち回る必要がある.

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3. 提案手法

この章では提案手法の説明,実装するAI の説明を記述する.

3.1. 提案手法の説明

「シュート・ザ・ムーン」を狙うことがどの程度有効であるかを検証するために「シュー ト・ザ・ムーンを狙うAI」「トリックの勝利を避ける AI」「ポイント札を出す AI」「点数の 低い相手を妨害するAI」の 4 種類の AI を作成して対戦させる.AI が可能な行動を以下に 示す.  手札を交換するとき  リードするとき  フォロー,またはディスカードするとき

3.2. 実装する AI の説明

ここでは,本検証で作成したAI のフローチャートと,AI の説明を記述する. 図3.1 に,「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」のフローチャートを示す.この AI は, 「シ ュート・ザ・ムーン」を積極的に狙うことで相手との点数差を広げることを目的としている. Hearts のすすめ [3]の「2-2-1 ムーンを狙うには?(基礎編)」では,「シュート・ザ・ムー ン」を狙えるカードについて以下のように示している. “1,ハートのエース(HA)から HK、HQ、HJ・・・とハートの上を連続で持っている とき。 2,HA 以外のハートを 1 枚も持たず、かつ他のスートの数字が全体的に高い場合。 3,HA 以外のハートを 1 枚も持たず、かつ一つのスートを多く持っているとき。” これらの条件に当てはまる手札になるよう手札の交換を行う.ハートのカードが 3 枚以 下ならば,それらを全て交換することでハートが手札に無い状況を作ることが出来る.また, ハートで小さい数字(7 以下)を 4 枚以上持っている場合は交換してもハートが残る.よっ て,クローバー,ダイヤから数字の小さいカードを交換する. 「シュート・ザ・ムーン」を狙うためには,ポイントカードが出されたトリックで必ず勝 利しなければならない.リード,フォローまたはディスカードする場合には,ポイント札 が出ている場合には数字の大きいカード,出ていない場合には数字の小さいカードを出す ようにする.また,3 回以上リードされたマークに対しては,相手が同じマークを持って いる可能性が低くなるため,ハートをディスカードしてきやすくなる.そのため,数字の 大きいカードを出してトリックの勝利を狙う.

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8 開始 YES NO NO YES ハートのカードを可能な 限り渡し、残りはクロー バー、ダイヤから数字が 小さいカードを渡す リード可能か NO YES フォロー 可能か NO YES NO YES YES YES NO NO YES NO YES ハート以外で最も小 さい数字のカードを 出す 最も大きい数字の  カードを出す マークは 3回以上リードされ ているか 3回 以上リード されたマークを 出すか 最も大きい数字のカ ードををリードする 終了条件を 満たしたか ハート のカードが3枚 以下かつハートの Aを持ってい ない ハートの 7以下を4枚以上持 っている クローバー、ダイ ヤから数字が小 さい順に3枚渡す 手札交換 があるか 最も小さい数字のカ ードをリードする ハートの  カードが場に出て いるか ハートのカードを小さ い順に3枚渡す NO 終了 図3.1 シュート・ザ・ムーンを狙う AI のフローチャート

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9 図3.2 に「トリックの勝利を避ける AI」のフローチャートを示す.この AI は,トリッ クにおいて相手より小さい数字のカードを出すことでマイナス札の獲得を避けることを目 的としている. スペードのクイーン,キング,エースのうちいずれかが2 枚以上手札にある場合,スペー ドが出されたトリックに勝利しやすくなり,スペードのクイーンを獲得してしまう危険性 がある.そのため,これらのカードを優先的に交換する.数字の大きいカードもトリックに 勝利しやすいため,交換する. リードする際にスペードのクイーンがまだ出されていなければ,スペードのカードをリ ードする.これは,スペードのクイーンをディスカードされることを防ぐためである.手札 が少なくなるとリードしたカードを誰もフォローできないこともあるため,このような状 況ではスペードのクイーンを獲得してしまう危険性が高くなる.誰もフォローできなけれ ば,リードしたプレイヤーがそのトリックの勝者となるため,スペードのクイーンがディス カードされるような状況は避ける.それ以外の場合,手札の枚数が少ないマークかつ一番小 さい数字のカードをリードしてディスカードを狙う. フォローする場合には,相手より小さいカードかつその中で大きい数字のカードを出す. それが出来ない場合は,最も大きい数字でフォローする. ディスカードする場合には,そのトリックで勝利することはないため,数字の大きいカー ドを出す.

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10 開始 YES NO YES NO リード可能か NO YES フォロー 可能か NO YES NO YES NO YES スペードのカード をリードする 一番大きい数字 を出す YES NO スペードのQ,K,Aのうち 2枚以上がある 手札交換 があるか スペードのQ,K,Aを 可能な限り渡す クローバー、ダイヤ で数字の大きい順に カードを渡す スペード のQは出ている か 場のカード より弱いカードを出 せるか 場のカードより弱く、 その中で最も大きい 数字を出す スペードのQ,K,A, 数字が大きいカード , の優先順位で出す 枚数が少ないマーク で、最も小さい数字 のカードをリードする 終了条件を 満たしたか 終了 図3.2 トリックの勝利を避ける AI のフローチャート

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11 図3.3 に,「ポイント札を出す AI」のフローチャートを示す.この AI は,ポイント札を ディスカードして相手にポイントを与えることを狙う.手札を交換する際には,手札から 枚数の少ないカードを優先的に渡すようにする.これは,手札のマークの種類を減らすこ とでディスカードを狙うためである. リードする場合は,スペードのクイーンが出ていなければスペードのカードをリードす る.「トリックの勝利を避けるAI」と同様の理由でスペードのクイーンをディスカードさ れることを避けるためである.それ以外では枚数が少ないマーク,数字が小さいカードの 優先順位でリードする. フォローする場合は,相手より小さい数字のカードを出す.出せない場合,最も大きい 数字でフォローする. ディスカードする場合は,スペードのクイーン,ハートのカード,数字の大きいカード の優先順位でディスカードする.相手により多くの点数を与えることを目的としているた め,1 枚で 13 点になるスペードのクイーンは最優先でディスカードされる.

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12 開始 YES NO NO YES リード可能か NO YES フォロー 可能か NO YES NO YES NO YES スペードのカード をリードする 一番大きい数字 を出す YES NO ハート以外に手札で3枚 以下のマークがある ハート以外のマーク が1種類以上無くなる ようにカードを渡す クローバー、ダイヤ から枚数が少ない方 のマークを3枚渡す 手札交換 があるか 場のカード より弱いカードを出 せるか スペード のQは出ている か 場のカードより弱く、 その中で最も大きい 数字を出す スペードのQ,K,A, ハート,の優先順位で 出す 終了条件を 満たしたか 枚数が少ないマーク で、最も小さい数字 のカードをリードする 終了 図3.3 ポイント札を出す AI のフローチャート

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13 図3.4 に「点数の低い相手を妨害する AI」のフローチャートを示す.この AI は,現在 の自分と相手の点数に応じて戦術を変化させるAI である.この AI 自身が最もポイントが 低い場合,「トリックの勝利を避けるAI」と同じ思考をする.それ以外の場合は.「ポイン ト札を積極的に出すAI」と同じ思考をする.ただし,この AI よりポイントが低いプレイ ヤーがポイントカードを獲得する可能性がある場合のみ,ポイント札を出す.

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14 開始 NO YES YES NO トリックを取ること を避けるAI NO YES ハートのカードを出す ハート以外の手札で 枚数の少ないカード を出す 自身が1位 であるか マイナス札を出すAI ディスカード時、自分より順 位が上のプレイヤーがトリックを取 る可能性がある 終了条件を 満たしたか 終了 図3.4 点数の低い相手を妨害する AI のフローチャート

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4. 実験

この章では実験の目的と手順,結果,考察について記述する.

4.1. 実験目的

「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」と「トリックの勝利を避ける AI」「ポイント札を出 すAI」「点数の低い相手を妨害する AI」の合計 4 種類の AI を対戦させる.その結果から, 「シュート・ザ・ムーン」を行うことの有効性と成功率を検証する.

4.2. 実験手順

「シュート・ザ・ムーンを狙う AI」と「トリックの勝利を避ける AI」「ポイント札を出 すAI」「点数の低い相手を妨害する AI」の合計 4 種類の AI を 10000 回対戦させる.対戦 の結果から,それぞれのAI の順位,「シュート・ザ・ムーン」を達成した回数,手札を記録 する.それらのデータから「シュート・ザ・ムーン」の有効性について考察する. 図4.1 に,本検証で使用したハーツの実験環境を示す.今回使用した環境では,プレイヤ ーを南,西,北,東で区別して時計回りに手番が回るよう設定している. 手札の表示に使用されている記号の説明を表4.1 に示す.カードのマーク(クローバー, ダイヤ,スペード,ハート)を表す記号と,数字を表す記号によって表示される.例えば, C2 と表示されている場合は,クローバーの 2 を意味している. 図4.1 本検証で使用したハーツの実験環境

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16 表4.1 手札の表示に使用されている記号の説明 C クローバー D ダイヤ S スペード H ハート J ジャック Q クイーン K キング A エース

4.3. 実験結果

4 種類の AI を 10000 回対戦させた結果を示す. 「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」の対戦結果を表 4.2 に示す. 表4.2 では,1 位の回数が 3303 回となった.しかし,4 位になった回数は 5133 回で 1 位 になった回数より多かった.一方で,2 位,3 位になった回数がそれぞれ対戦回数の 1 割に も満たないという結果になった. 「シュート・ザ・ムーン」の回数は16937 回であった.これは,1 回の対戦中に平均でお よそ1.69 回「シュート・ザ・ムーン」を行っている計算になる. 表4.2 シュート・ザ・ムーンを狙う AI の対戦結果 順位 回数 1 位 3303 回 2 位 723 回 3 位 841 回 4 位 5133 回 「トリックの勝利を避けるAI」の対戦結果を表 4.3 に示す. 表4.3 では,1 位が 2704 回で 3 位が 2700 回とほぼ同じ回数であった.最も多かった順 位は2 位で,4 位になった回数は最も少なかった. 「シュート・ザ・ムーン」は286 回で,10000 回の対戦回数の中でもほとんど行われて いないように見られる.

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17 表4.3 トリックの勝利を避ける AI の対戦結果 順位 回数 1 位 2704 回 2 位 3233 回 3 位 2700 回 4 位 1363 回 「ポイント札を出すAI」の対戦結果を表 4.4 に示す. 表4.4 では,1 位の回数が 1809 回で他の順位と比べて最も少なかった.また,「シュー ト・ザ・ムーン」は322 回でほとんど行われていない. 表4.4 ポイント札を出す AI の対戦結果 順位 回数 1 位 1809 回 2 位 2979 回 3 位 3367 回 4 位 1848 回 「点数の低い相手を妨害するAI」の対戦結果を表 4.5 に示す. 表4.5 では,突出した結果は見られなかったが,「トリックの勝利を避ける AI」と同様 の順位の傾向が見られた.「シュート・ザ・ムーン」は274 回で,ほとんど行われていな い. 表4.5 点数の低い相手を妨害する AI の対戦結果 順位 回数 1 位 2402 回 2 位 3199 回 3 位 2837 回 4 位 1562 回

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4.4. 考察

「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」(以下ムーン AI)の勝率はおよそ 33%(表 4.2)で他 のAI より高い結果を示したが,4 位になった回数も他の AI と比べて最も多かった.本検 証では,10000 回の対戦において 80831 回のプレイが行われた.その中で,ムーン AI が 「シュート・ザ・ムーン」を達成した回数は16937 回であった.この回数は他の AI と比べ て,およそ56 倍の回数である.「シュート・ザ・ムーン」の成功率はおよそ20%であるが, 残りのおよそ80%は失敗していることになる.ムーン AI は,ポイント札の獲得に重点を置 くため,「シュート・ザ・ムーン」に失敗した場合に多くの点数を取ってしまう. この問題を解決するためには,「シュート・ザ・ムーン」が可能な手札とそうでない手札 を見分ける必要がある.「シュート・ザ・ムーン」が困難な手札で無理に狙おうとすれば, 中途半端にポイント札を獲得することになるためである. 表4.6,表 4.7,表 4.8 に,「シュート・ザ・ムーン」を達成した手札の例を示す.表4.6, 表4.7,表 4.8 では,「トリックの勝利を避ける AI(南)」「ポイント札を出す AI(西)」「点 数の低い相手を妨害するAI(北)」「シュート・ザ・ムーンを狙う AI(東)」の対戦時の手 札を示している. 表4.6 シュート・ザ・ムーンを達成した手札の例 1 プレイヤー 手札 南 C5 C6 C7 C10 CK DQ DK S8 SA H3 H4 H6 H10 西 C3 CJ D2 D4 D6 D10 DJ DA S6 S9 SJ HJ HQ 北 C8 C9 D5 D7 D8 S3 S4 S5 S7 S10 H5 H9 HK 東 C2 C4 CQ CA D3 D9 S2 SQ SK H2 H7 H8 HA 表4.7 シュート・ザ・ムーンを達成した手札の例 2 プレイヤー 手札 南 C3 C5 CJ CK D2 D4 D8 S3 S8 SJ SK H6 H9 西 C4 C6 C7 D3 D6 D7 DQ DK S2 S5 S9 S10 H2 北 C8 C9 C10 CA D5 SQ H3 H5 H8 H10 HJ HQ HA 東 C2 CQ D9 D10 DJ DA S4 S6 S7 SA H4 H7 HK 表4.8 シュート・ザ・ムーンを達成した手札の例 3 プレイヤー 手札 南 C3 C4 C10 D4 D9 DQ S5 S6 SQ SK H2 H4 HQ 西 C2 C5 C8 CJ CQ D2 D6 D8 DA S2 H5 H7 H10 北 C6 C9 CA D7 DK S3 S4 S7 S8 S10 H3 H8 HJ 東 C7 CK D3 D5 D10 DJ S9 SJ SA H6 H9 HK HA

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19 「シュート・ザ・ムーン」を達成できる手札の傾向として,以下のものが確認できた. 1. 数字の大きいカード(J~A)が 4 枚以上あること 2. 数字の小さいカード(2~5)が 3 枚以下であること 3. 特定の種類のマークのカードが少ないこと(2 枚以下) 「シュート・ザ・ムーン」を達成した手札の中からランダムに30 種類の手札を抽出 し,手札の傾向を分析した.その結果,上記1~3 が該当した回数を表 4.9 に示す. 表4.9 シュート・ザ・ムーンを達成した手札の傾向と該当した回数 手札の傾向 該当した回数 J~A が 4 枚以上 23 2~5 が 3 枚以下 18 特定のマークが2 枚以下 26 表4.9 から,手札の数字の大きさよりも特定のマークに偏りがある方が「シュート・ザ・ ムーン」を狙う際に重要であると考えられる.表 4.9 に示した傾向に該当しない場合には 「シュート・ザ・ムーン」を狙うことを避けた戦略を取ることができれば,ムーンAI の勝 率が上がると考えられる. 序盤に「シュート・ザ・ムーン」を達成することはできたが,その後も「シュート・ザ・ ムーン」を狙い続けたことにも問題があった.「シュート・ザ・ムーン」を達成すれば,相 手と26 点の差をつけることができる.点数が大きく有利になっていれば,無理に「シュー ト・ザ・ムーン」を狙う必要は無いと考えられる.そのため,相手と十分な差が付いていれ ば「シュート・ザ・ムーン」を狙う必要はないと判断する.このように戦略を切り替えるこ とで,「シュート・ザ・ムーン」で得た優位性を保持する必要があると考えられる.

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5. 結論

この章では,本検証の結果のまとめ,今後の課題について記述する.

5.1. まとめ

本検証はハーツで「シュート・ザ・ムーン」を狙うことの有効性を求めるために行った. 「シュート・ザ・ムーン」を狙うAI とその他の AI を 3 種類用いた合計 4 種類の AI を使 用し,「シュート・ザ・ムーン」を狙うことで得られる勝率と「シュート・ザ・ムーン」の 成功率を検証した. その結果,「シュート・ザ・ムーンを狙うAI」は 1 位がおよそ 33%,4 位がおよそ 51% という結果になった.他のAI と比べても 1 位の回数が最も多かったが,4 位の回数も最も 多かった.「シュート・ザ・ムーン」を狙うことはある程度は有効であるが,そのリスクを 軽減するまでには至らなかった.

5.2. 今後の課題

「シュート・ザ・ムーンを狙うAI(以下ムーン AI)」が 1 位を獲得するには「シュート・ ザ・ムーン」が必要不可欠であるが,「シュート・ザ・ムーン」を1 回行っても 1 位を獲得 することはできなかった.ムーンAI が 1 位を獲得した傾向として,「シュート・ザ・ムー ン」を2 回以上行ったパターンが多く見られた.「シュート・ザ・ムーン」を 2 回以上出来 れば大きく有利にはなるが,1 回達成するだけでも優位に立つことはできると考えられる. そこで,「シュート・ザ・ムーン」で得た点数の優位性を保つ戦略をAI に組み込む必要が ある.これを実装することで,リスクの高い「シュート・ザ・ムーン」を何度も狙う必要が 無くなり,結果的に点数の蓄積を抑えられると考えられる. また,「シュート・ザ・ムーン」を狙うことが困難な手札のパターンも存在する.例とし て,手札の数字が全体的に小さい状況が挙げられる.そのパターンを見極めて,「シュート・ ザ・ムーン」を狙わない判断をする必要がある.

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謝辞

本検証を行うにあたり,ご意見やご指摘をくださった Reijer Grimbergen 教授,グリム ベルゲン研究室の皆様に感謝します.ありがとうございました.

参考文献

[1] ハーツ(トランプゲーム)- Wikipedia (2017 年 1 月 12 日参照) https://ja.wikipedia.org/wiki/ [2] ハーツ攻略 – TOP (2017 年 1 月 12 日参照) http://www51.atpages.jp/nlet/hearts/index.html [3] Hearts のすすめ (2017 年 1 月 12 日参照) http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/2175/hearts/hearts.htm

参照

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