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博(生)甲 第163号

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Academic year: 2021

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(1)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

報 告 番 号

博(生)甲 第163号

氏 名

山口 芳文

学 位 審 査 委 員

主査 教 授 相 樂

隆 正 副査 教 授 古 川 睦 久 副査 教 授 森 口 勇

論文審査の結果の要旨

山口芳文君は,長崎大学工学部応用化学科を平成5年3月に卒業して就職したが,株式 会社安川電機に在籍中の平成15年4月に長崎大学大学院生産科学研究科博士後期課程に 入学し,現在に至っている。

同君はこれまでに所定の単位を修得するとともに,研究成果の主要な部分をまとめた 学位論文を平成20年10月に完成させ,参考論文2編(いずれも審査付きの国際学術誌の 英文原著論文で,2編とも公表済)を添えて長崎大学大学院生産科学研究科教授会に博 士(工学)の学位を申請した。

長崎大学大学院生産科学研究科教授会は,平成20年12月17日の定例教授会において論 文内容の要旨を検討し,受理を決定後,上記の審査委員を選定した。委員は主査を中心 に論文内容について慎重に審議し,公開論文発表を行わせるとともに口頭による最終試 験をいずれも平成21年1月19日に行い,論文の審査および最終試験の結果を,平成21年2 月18日の研究科教授会に報告した。

提出された論文「カーボンナノチューブと高分子材料によるコンポジットフィルムの 作製に関する研究」は,フッ素系・炭化水素系高分子フィルムの表面における短・長波 長の紫外線照射法および紫外線・オゾン法による表面機能化と,デキストラン誘導体お よびシラン剤による界面機能化に関する研究,さらには,形成したカーボンナノチュー ブ薄膜の物性を明らかした研究について述べたものである。表面処理・プライマー処理 技術によって形成した多層膜の表面・界面構造と,可溶化処理したカーボンナノチュー ブで形成した薄膜の光学的・電気的特性を,物理化学的手法によって明らかにした結果 を中心にまとめられている。

本論文は全

6

章からなる。第

1

章に緒言として,高分子アクチュエータや透明導電膜 の代替材料の一般論と研究の背景についての国内外の研究の現状を述べている。また,

本研究での問題提起を明示し,研究の位置付けを述べている。第

2

章では,短波長紫外

(2)

線による

Nafion

の表面改質と,物理化学的手法による単層カーボンナノチューブの表 面修飾について述べている。第

3

章では,長波長紫外線による

PET

フィルムの表面改 質と,物理化学的手法による単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)の集積化,および導 電特性について述べている。グラフト化したカチオン性ポリマーと

s-SWNTs

がポリイ オンコンプレックスによって強固に結合し,カーボンナノチューブ薄膜が二次元的に形 成していることを明らかにし,また,カーボンブラックの均一分散モデル式を用い表面 抵抗値に対する

SWNTs

間距離の影響について論じた。第

4

章では,二液混合溶液中に おけるデキストラン誘導体のコンホメーション変化による吸着挙動および多層カーボ ンナノチューブで形成した導電膜の電気特性に対するデキストラン吸着層の効果つい て述べている。デキストラン誘導体の吸着には,二液混合溶液の温度と体積分率に依存 性があることを明らかにした。第

5

章では湿式オゾン・紫外線照射法による

PET

SWNTs

の表面修飾と、導電膜の低抵抗化の実現において,プライマーとしてのシラン

剤の効能,および,パーコレーション理論に基づいたコンポジットフィルムの導電発現 機構の課題について述べている。第

6

章では研究を総括し,本研究結果全般について考 察するとともに,簡易的な手法による成膜新技術を提案し,さらにカーボンナノチュー ブやフラーレンの用途開発に関する今後の展望について述べている。

以上を要するに,本研究は,紫外線照射法と物理化学的手法による簡易的な手法で カーボンナノチューブ薄膜を有する透明な導電性フィルムを作製できることを明らか にした。また,カーボンナノチューブをベースとした導電膜の物性と低抵抗膜を構築す るための課題を解明した。本研究によって,カーボンナノチューブ複合材料の開発に先 鞭をつけ,当該学術分野を先導しうる成果が得られた。この成果は,導電性高分子フィ ルムを本質的に理解するために重要なデータを与えたのみならず,物理・化学・エレク トロニクスの分野の発展にも貢献するものである。

上述したように,本研究は,カーボンナノチューブの機能開発の重要な一側面を解明 したものであり,表面・界面科学分野,特に複合材料に関する研究分野に学術的なイン パクトを与えた。また,表面・界面制御技術の理解を基礎として,カーボンナノチュー ブによって発現する機能を実現させる指針を示したものであり,ナノサイエンスの学術 的発展にも貢献するところ大である。

審査委員会は,本論文が分子機能科学の発展に学術的かつ工業的に大きく寄与するも

のであると認め,博士(工学)の学位に値するものとして合格と判定した。

参照

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