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日本 不 動産 学 会 誌/第5巻 第1号 大 都 市圏 に お け る住 宅 ス ト ッ ク形 成 に 関す るSD モ デ ル に よ る戦 後 日本 の 住宅 政 策 の 分析(II) 図-1住 宅 ス トッ ク形 成 モ デ ル の基 本 的 枠 組 み 51

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大 都 市 圏 に お け る住 宅 ス トック形 成 に 関 す るSDモ

デ ル

に よ る戦 後 日本 の 住 宅 政 策 の 分 析(II)

―建 設 実 現 率(α)に 基 づ く検 討―

暉*

恒*

1.  は じ め に 前 回 の論 文*1)で大 都 市 圏 に お け る住 宅 ス ト ック 形 成 に 関 す るSDモ デ ル を構 築 し,公 的 借 家 建 設 政 策 と持 家促 進 政 策 の短 期 的 及 び長 期 的 な効 果 に つ い て評 価 を行 った。 この分 析 は戦 後 の住 宅 が 不 足 しか つ 国民 の経 済 力 が低 い段 階 か ら経 済 力 の大 き くな った段 階 ま で の各 時 期 にお い て行 わ れ た 。 一 般 的 に生 産 量 の大 小 は経 済 発 展 の初 期 段 階 ほ ど 供 給 能 力 に よ って決 定 され,高 度 な段 階 にな るほ ど需 要 の量 に よ って決 定 され て くる と認 識 され て い る。 戦 後 日本 の住 宅 建 設 につ いて も同 様 な結 論 が指 摘 され て い る*2)。しか し住 宅 の場 合 は一 般 の 消 費 財 と異 な り,世 帯 に とっ て膨 大 な 資 金 を必 要 とす るの で,経 済 発 展 の初 期 段 階 にお いて は む し ろ 需要 側 の経 済 能 力 に も強 く作 用 され る と考 えな け れ ば な らな い。 この こ とか ら前 回 のSDモ デル で は,住 宅 取 得 能 力 に基 づ く需 要 の顕 在 化 の 構 造 を 把握 し,そ の 需要 の顕 在 化 量 を建 設 に対 す る圧 力 と仮 定 した。 しか し前 回 の報 告 で は,需 要 の圧 力 に対 す る供 給 の反 応 につ い て,つ ま りモ デル の 中 で 計 算 され る需 要 量 か ら供 給 量 を決 め る建設 実 現 率(α)の 分 析 が課 題 と して残 され て い た 。 建設 実 現 率(α)の 分 析 とは,住 宅 取 得 能 力 を もとに して 算 定 され る住 宅 需要 量 とそれ に対 して 供給 さ れ る住 宅 建設 量 との 間 の関 係 を規 定 す る要 因 を明 らか にす る こ とで あ る。 本 論 文 で は,ま ず 建設 実 現 率(α)の 定 義 式 を示 し,分 析 の枠 組 み を検 討 す る。次 に そ の枠 組 み に基 づ い て,関 連 す る諸 要 因 と建 設 実現 率(α)の 挙 動 との 関 係 につ い て分 析 す る。最 後 に この分 析 の結 果 に基 づ い て,戦 後 の 日本 の 各 時期 に お け る住 宅 供給 策 の 適 合 性 の評 価 を行 う。 本論 文 は以 上 の分 析 を通 じて, 1)  SDモ デ ル中 の住 宅 建 設 量決 定 の仕 組 み を 明 確 に す る こ と 2) 建 設 実現 率(α)を 用 いて,各 時期 に お け る住宅 供給 策 の あ り方 を明 らか にす る こ とを 目的 と して い る。 2.  建 設 実 現 率(α)の 基 本 的 な 考 え 方 建設 実現 率(α)の 計 算 の 仕組 み を 明確 に す る た め に,前 報 に お け るSDモ デル の建 設 実 現 率 (α)の 定 義 式 及 び住 宅 需 要 量 の計 算 の仕 組 み を再 録 し,そ の限 界 を明 らか に した上 で,そ れ に対 す る改 良 を説 明 す る。 次 に その 枠組 み に基 づ く建 設 実現 率(α)の 性 格,つ ま り建 設 実現 率(α)を *(ち よ う き ・正会員 東京工業大学理工学研 究科社会工学専攻 ふかみ たかつね ・正会 員 東京工業大学工学部社会工学科)

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日本 不 動産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8

大 都 市圏 に お け る住 宅 ス ト ッ ク形 成 に 関す るSD

モ デ ル に よ る戦 後 日本 の 住宅 政 策 の 分析(II) 51

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52 大都市圏におけ る住宅 ス トック形成に関す るSD モデルに よる戦後 日本の住宅政策 の分析(II) 日本 不 動 産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 規 定 す る基 本 的 側 面 を明 らか にす る。 1) 建 設 実 現 率(α)の 定 義 式 と 需 要 量 の 計 算 方 法 前 報1)に お け るSDモ デ ル の中 で,住 宅 建 設 実 現 率(α)は 次 式 で 定 義 した。 α= 供 給t /供 給t-1 × 需 要t-1 /需 要t これ は 需要 量 の変 化 に対 して供 給 が どの く らい 変 化 す るか とい う関係 を示 す パ ラメ ー タ ーで あ る (この考察 につ いては前報1)の付録 を参照 されたい)。 し か し,SDモ デ ル の計 算 に 当 た っ て,初 期 時 点 で は,前 期 の 需要 と供 給 の デ ー タが な い ので,そ れ ぞ れ を1と した。 ま た,供 給 に は ス ト ックの 空 家 と建 設 が含 ま れ るた め,α の意 味 の解 釈 は複 雑 に な る。 前 回 の モ デ ルで は,各 タ イ プ別 住 宅 の 需 要 の推 計 は,世 帯 主 年 齢 別 世 帯 数 と住 宅 取 得 能 力 を用 い て行 った が,世 帯 の現 在 居 住 す る住 宅 の属 性 を考 慮 して い な か った。 そ の た め現 住 宅 の タ イ プ別 に 住 宅 タ イ プ間 の移 動 量 を モ デ ル に組 み込 む ことが で きな か った。 従 って,住 宅 ス ト ックの 住宅 需要 発 生 へ の影 響 が反 映 されず,公 的 借 家 建 設 と金 融 条 件 の政 策 の操 作 が各 期 だ け に影 響 を与 えて,次 期 に影 響 を与 え な い こ と とな っ て い た。 そ こで,住 宅 建 設 実 現 率(α)の 性 格 を よ り明 確 に させ るた め に,前 回 の モ デ ル の定 義 を次式 の よ うに改 め た。 a= 住 宅建設/量 新規住宅 需要算 定量 ま た そ の新 規 住 宅 需 要 算 定 量 の計 算 方 法 は,住 宅 ス トッ クの影 響 が反 映 され る よ うに改 良 した 。 す な わ ち,新 し く公 的 借 家 世 帯 と給 与 住 宅 世帯 と 民 営 非 木 造 借 家 世 帯 と木 造 共 同建 住 宅 世 帯(木 造 共 同建 住 宅 世 帯 は既 存 変 数 を修 正 した も の で あ る)の4つ の レベ ル変 数 を設 け,住 替 え の潜 在 需 要 と した(図-1)。 さ らに,モ デ ル を簡 略 化 す る た め に住 替 え の方 向 を 図-2に 示 す よ うに仮 定 し た 。住 替 え需要 の発 生 を住 宅 ス トック の形 成 と関 図-2  移 り変 わ りの 方 向 連 づ け る こ とに よ って,今 期 の需 要 と建 設 実 現 率 (α)か ら決 定 され る タ イ プ別 住 宅 の建 設 が ス ト ッ ク の形 成 を通 じて,次 期 以 降 の各 期 の需 要 の 発 生 に影 響 を与 え る構造 とす る こ とがで きた。一 方,需 要 ブ ロ ックで は,段 階的 に タ イ プ別 住 宅 新 規 需 要 量 を決 定 して い く構 造 とな っ て い る。 す な わ ち, 表-1  タ イ プ別 住 宅 需 要 の 算 定 式

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日本不動 産学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 大都市圏におけ る住宅 ス トック形 成に関す るSD モデルに よる戦後 日本 の住宅政策の分析(II) 53 持 家 の需 要 と建 設 が決 定 され て か ら,借 家 世 帯 の 持 家 へ の住 替 え に よ る ス トッ ク供給 量 が決 定 され る。 次 に,借 家 需 要 か ら公 的 借 家 と給 与 住 宅 の供 給 及 び ス ト ック供 給 を差 し引 い た もの を非 木 造 民 営 借 家 新 規 需 要 とす る。 最 後 に,木 造 共 同建 住 宅 新 規 需 要 は新 規 世 帯 か ら他 の住 宅 に 入居 した もの 及 び ス ト ック供給 を除 い て決 定 され る。 た だ し, ス ト ック供給 量 は住 替 え に よ る空 家 と 既 存 の 空 家 及 び滅 失 に よ って決 定 され る。 タ イ プ別 住 宅 新 規 需 要 の 算 定式 は表-1に 示 す通 りで あ る。 所 有 形 態 別 借 家 世 帯 の持 家 需要 顕 在 化 率(1)は住 宅 取 得 可 能 指 数 に よ って シ フ トされ る と して い る。 こ こ で,住 宅 取 得 可 能 指数=住 宅 取 得 能 力 指 数/公 庫 個 人 住宅 融 資 申込 倍率 とす る。 住 宅 取 得 能 力 指 数 は公 庫 融 資 を受 け る と仮 定 して計 算 され た もので あ る。 需 要 の 発生 は その融 資 の抽 選 率 に も大 き く 左 右 され る と考 え られ る。 顕 在 化 率 は昭 和35,44, 48,53,58年 の 建設 省 「住 宅 需要 実 態 調 査 結 果 報 告 」 の 東 京 圏 と大 阪 圏 の所 有 形 態 別 住 替 計 画 の デ ー タ を利用 して お り,回 帰 分 析 の結 果 は表-2に 示 す通 りで あ る。 表-2  持 家需要顕在化率 と住宅取得可能指数 2) 建 設 実 現 率(α)の 基 本 的 考 察 建 設 実 現 率(α)に つ いて は,い くつ か の異 な る角 度 か ら問 題 を提 示 す る ことが で き る。 こ こで は まず1)の 説 明 を踏 ま えな が らSDモ デ ル の中 で 建設 実現 率(α)の 計 算 式: α= 住宅 建設量 /新規住宅 需要算 定量 (1) か ら建 設 実 現 率(α)を 規 定 す る内 容 に つ い て検 討 す る。 次 に, 住 宅 建 設 量=建 設 実 現 率(〓)× 新 規住 宅 需 要算定量 (2) の式 に基 づ い て現 実 の住 宅 建 設 量決 定 の仕 組 み を 検 討 す る。 さ らに, 新規住宅需 要算定量= 住宅建設量 建 設 実 現 率(α) (3) の式 と併 せ て住 宅 供 給 策 の 策 定 に お け る建 設 実現 率(α)の 利 用 可 能 性 を検 討 す る. (a)建 設 実 現 率(α)を 規 定 す る3側 面 モ デ ル の需 要 量 計 算 の 説 明 か らわ か る よ うに, 住 宅 需 要 算 定 量 は住 宅 を取 得 し よ うとす る主 体 の 取 得 計 画 の段 階 で 顕 在 化 され た 需要 量 で あ る(た だ し木 造 共 同建 需 要 だ けが 他 の住 宅 に 入居 で きな か った新 規 世 帯 で あ る)。 そ こで,式(1)か ら, 建 設 実 現 率(α)の 値 は 以下 の3つ の側 面 か ら決 ま って くる と考 え られ る。 (1)需要 側 にお いて,需 要 の計 画 を実 現 す る た め の条 件 が完 全 で あ るか ど うか (2)供給 側 にお いて,需 要 の情 報 を如 何 に把 握 し て い る か (3)供給 側 にお いて 建設 能力 と経 営 条 件 が十 分 で あ る か ど うか よ っ て, α<1の 場 合: 1. 需 要 側 に お い て計 画 段 階 で 顕 在 化 され た 需要 の 実現 条 件 が不 完 全 で あ っ た。 2. 需 要 の量 に対 して,供 給 側 が 過 小 評 価 した。 3. 需要 に対 して建 設 能 力 と経 営 条 件 が不 十 分 で あ っ た。 以 上 の3つ の うち,少 な く と も1つ 以上 の原 因 が必 要 条 件 とな る。 α<1の 場 合: 1. 需 要 の量 に対 して供 給 側 が過 大 評 価 し

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54 大 都 市 圏 に お け る住宅 ス ト ック形 成 に 関 す るSD モ デル に よ る戦 後 日本 の 住 宅 政 策 の 分 析(II) 日本不動産学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 た 。 2. 建 設 能 力 と経 営 条 件 が十 分 で あ った 。 以 上 の2つ と も必 要 条 件 とな る。 (b)  住 宅 建 設 量 決 定 の仕 組 み 式(2)は 住 宅 建 設 量 が需 要 と建 設 実 現 率(α) に よ って決 定 され る とい う仕 組 み を示 して い る。 この考 え方 は主 に2つ の こ とを意 味 す る。 第1に は,す で に初 め の と ころ に述 べ た よ うに,建 設 量 に対 す る需要 量 の作 用 が経 済 力 の大 き くな っ た段 階 だ けに 限 らず,経 済 力 の低 い段 階 に お い て も強 く働 い て い る こ とで あ る。 特 に,自 立 建 設 を主 と す る住 宅 建 設 の場 合 で は"世 帯 の経 済 力 が強 い規 定 条 件 とな って お り,こ の特 徴 が顕 著 で あ る。例 え ば,「住 宅 需 要 実 態 調 査 」 の 資 料 に よれ ば,昭 和 30年 代 で は借 家 世 帯 の うち持 家計 画 を持 って い る もの の割 合 は20%で あ っ たが,40年 代 に入 る と, 30%以 上 に まで 伸 び て きた。 事 実,住 宅 に 困 窮 し て い な が ら,居 住 改 善 計 画 を持 って いな い理 由 の うち,一 番 大 きい もの は経 済 要 因 で あ っ た。 す な わ ち戦 後 の各 期 の住 宅 建 設 量 は,各 時 期 の住 宅 取 得 能 力 の も とに計 算 した住 宅 需 要 量 を1つ の要 因 と して説 明 され る こ とに な る。 第2は,建 設 実 現 率(α)を 規 定 す る 内容 で あ る。2-2)-(a)で 検 討 した建 設 実 現 率(α)の3 側 面 を式(2)を 用 い て考 え る と,建 設 量 は需 要 量 と建設 実現 率(α),す な わ ち,需 要 側 の計 画 実 現 条 件 と供給 側 の 需 要 情報 の 把握,及 び建 設 能 力 と 経 営 条 件 に よ って決 定 され る こ とに な る。 (C)  住 宅 供給 策 の 策 定 に お け る建 設 実現 率(α) の 役 割 式(2)に お い て,建 設 実 現 率(α)は 計 算 され た住 宅 需 要 に対 して,ど の く らい 建設 で き るか の 限 度 を示 す 指 標 で あ る。 この建 設 実 現 率(α)の 大 小 は,需 要 を刺 激 した と きに,そ の 増 加 に対 し て,建 設 量 の増 加 が期 待 で きる程 度 を示 す ことに な る。 この 時,建 設 量 の増 加 を供 給 策 で 刺 激 して 期 待 す る とす れ ば,建 設 実 現 率(α)が その 供給 策 が期 待 で き る程 度 を示 す指 標 に な る。 次 に,式(3)に 基 づ い て,住 宅 供 給 策 の 策 定 に お け る役 割 を検 討 して み よ う。 式(3)は 需 要 量 が 建 設 実績 と建 設 実現 率(α)で 求 め られ る こ とを 示 して い る。 住 宅 供給 策 を立 案 す るに 当 た っ て は,タ イ プ別 住宅 に対 す る需 要 量 の把 握 が 基 本 と な って い る。 しか し,タ イ プ別 住 宅 需 要 は未 知 の 量 で あ り,そ れ を知 るた め に は,大 規 模 な調 査 を 行 わ ね ば な らな い。 頻 繁 に この よ うな大 規 模 な調 査 を行 うこ とは費 用 の面 で 困難 で あ る。 そ こで, 建 設 実 績 は着 工 届 け に よ り短 期 間 ご とに知 る こ と が で き るので,建 設 実 現率(α)が わ か れ ば,式 (3)か ら住 宅 需 要 量 が 推計 で きる。 過 去 の建 設 実 現 率(α)は 過 去 の資 料 に基 づ い て求 め た 需要 量 と建設 実績 か ら得 られ る。 この 建 設 実現 率(α) を規 定 す る諸 要 因 を明 らか にす れ ば,そ れ らの要 因 の 資料 を用 い て現 在 の建 設 実 現 率(α)を 推 計 す る こ とが で き る。 よっ て,頻 繁 で大 規 模 な調 査 を避 け,非 常 に簡 単 な方 法 で タ イ プ別住 宅 の お お よ その 需要 量 を把 握 す る こ とが で き,ど の タ イ プ の 住宅 を どの く らい供 給 す れ ば よ いか が わ か る。 3. 建 設 実 現 率(α)に 作 用 す る要 因 モ デ ルで計 算 され た タ イ プ別 住 宅 建 設 実 現 率 (α)の 値 は図-3に 示 す通 りで あ る。 こ こで,建 設 実 現 率(α)の3側 面 に基 づ き,そ れ ぞ れ の住 宅 タ イ プ につ いて 考 察 した要 素 の項 目 を表-3に ま とめ た。 そ の うち の一 部 の項 目に お い て大 都 市 圏 の デ ー タ が な い た め,全 国 の デー タを 用 い て い る。 資 金,資 材,技 能 労 働者 は市 場 需要 に応 じて 流 動 可 能 な要 素 で あ り,大 都 市 圏 の住 宅 建 設 に も 図-3  タイ プ別 住 宅 の建 設 実 現 率(α)の 値

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日本不動産学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 大 都 市圏 に お け る住 宅 ス ト ッ ク形 成 に関 す るSD モ デ ル に よる 戦 後 日本 の 住宅 政 策 の分 析(II) 55 表-3  建 設 実 現 率(α)を 決 定 す る3側 面 に お い て考 察 した要 素 説 明 で きる と考 え る。 しか し,宅 地 の場 合 は 固定 的 要 素 で あ り,考 察 に限 界 が あ る。 1) 需要側の計画実現条件 需 要 側 の計 画 実現 条 件 とは,供 給 が十 分 存 在 す る とい う仮 定 の もとで,需 要 計 画 か ら実 行 まで の 過 程 に お け る需 要 側 の必 要 条 件 で あ る。 実 現 条 件

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56 大 都 古 圏 に お け る住 宅 ス トッ ク形 成 に 関 す るSD モデルに よる戦後 日本の住宅政策 の分析(II) 日本 不 動 産 学会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 表-4  住 宅建設 資金源構成 の推移(個 人持家建築主) 上段:実 数(万 円) 下段:構 成比(%) 資料:建 設省 「民間住宅建設資金実態調査 結果」 を この よ うに定 義 す る と"そ れ を考 察 す る際 に持 家 計 画 の場 合 と借 家計 画 の場 合 を分 け て考 えな け れ ば な らな い。 持 家 の場 合,需 要 の計 画 を実 現 す るた め に,需 要 者 が資 金 を調 達 で きるか ど うか が 重 要 な条 件 とな る。 借 家 の場 合,需 要 側 にお け る 実 現 条 件 は持 家 の場 合 と比 べ て は るか に弱 い もの で あ って,こ の側 面 の要 因 が建 設 実 現 率(α)を 大 き く左 右 す る とは考 え に くい。 そ こで 持 家 需 要 者 の資 金 調 達 につ いて"(1)建設, 購 入資 金 源 構 成,(2)資 金 調 達 の難 易 度 とい う2つ の点 か ら考 察 を行 う。 (a) 個 人 の住 宅 建 設 資 金 源 構 成 個 人 持 家 建 築 主 の住 宅 建 設 資 金 源 構 成 を み る と (表-4),借 入 金 の割 合 が 昭 和45年 で は44%で あ っ たが,50年 代 に な る と60%近 くまで 伸 び て き た。30年 代 にお け る デ ー タが な い が,こ の推 移 か ら,30年 代 で は借 入 金 の 割 合 が もっ と低 くて,自 己 資 金 に対 す る依 存 度 が よ り高 か った と推 測 され る。 結 果 と して借 入 金 の 割 合 が 高 くな って きた こ とは,借 入 金 の必 要 度 が 上 昇 して きた こ とを意 味 す る とは限 らな い。 資 金 供給 の 困難 な 時期 に は大 量 な 自己 資 金 を持 って い る人 だ けが 家 を建 て られ て い たが,金 融 が 整 備 され た こ とに よ って 多 くの 人 が 融 資 で 家 を建 て られ る よ うに な った こ とを意 味 す る と考 え られ る。 借 入 金 の構 成 を み る と"住 宅金 融 公庫 の融 資 の 図-4  タ イ プ別 公 庫 融 資 申 込倍 率 資料:住 宅金融公庫 「業務統計」 全 体 に 占 め る割 合 が 当 時 の7.5%か ら,28.3%に 伸 び て きて,資 金 調 達 の改 善 に 当 た って主 要 な役 割 を担 っ て い る。 ま た,住 宅 金 融 公庫 の融 資 供 給 が ま だ少 な い時 代 で は,勤 務 先 が大 きな資 金 の提 供 先 だ っ た こ とを示 して い る。 (b) 資 金 調 達 の難 易 度 借 入金 の主 な資 金 源 は,住 宅 金 融 公 庫 で あ る。 資 金 調 達 の難 易 度 を示 す個 人 住 宅 融 資 申込 倍 率 (申込戸数/融 資計画戸数)が 昭和40年 代 は じめ 頃 まで は5倍 前 後 に達 して い た(図-4)。 一 方,表 -5を み る と,企 業 内持 家融 資 制 度 の設 置 率 が昭 和39年 時 点 で22%で"対 労働 者 数 の設 置 率 が60% 前 後 で あ っ た と推 定 す る こ とが で き る(こ れ は30 人 以 上 の企 業 に対 す る調 査 で企 業 全 体 の場 合 を考 え る と,こ の設 置 率 の 値 が低 下 して く る)。 また,

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日本不動産学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 大 都 市 圏 に お け る住宅 ス トッ ク形 成 に 関す るSD モデルによる戦後 日本 の住宅政策の分析(II〕 57 表-5  企業持家援助制度の設置率 と融資条件 資料:労 働省 「労働者福祉施設制度等調査報告」 ()内 は,労 働者に対す る設置率である。 -は ,デ ータが不備。 そ の融 資 条 件 をみ る と企 業 内 の持 家 融 資 の金 利 は 住 宅 金 融 公 庫 の金 利 よ り も低 い。 しか し,企 業 の 融 資 が 個 人 住 宅 資 金 の調 達 に か な りの役 割 を果 た して い た とは い え"金 融 公庫 の 申込 倍 率 が示 唆 し て い る よ うに,全 体 の資 金 調 達 の 条 件 は や は り厳 しか った と言 え る。 40年 代 後 半 か ら資 金 調 達 条 件 が 大 幅 に改 善 され た 。公 庫 個 人 住 宅 融 資 の 申込 倍 率 が1.3前 後 に低下 して きて い る。民 間 金 融 も急 速 に整 備 され て きた。 以 上 を ま とめ る と,需 要 側 の実 現 条 件 と して の 資 金 調 達 条 件 が 昭和30年 代 で は厳 しか った た め, 計 画 まで 顕 在 化 され た持 家 需要 量 と実 際 に計 画 を 実 行 で きる量 との間 に ギ ャ ッ プが生 じて"持 家 住 宅 の建 設 実 現 率(α)を 抑 え る作用 が あ った。 ま た40年 代 か ら住 宅 金 融 の改 善 が その 建 設 実 現 率 (α)を 高 め た。 一 方,昭 和50年 代 に入 る と,一 戸 建 住 宅 の建 設 実 現 率(α)が 低 下 して い る。 し か し資金 の 供給 能 力 は十 分 に余 裕 を示 し て い る こ とか ら,こ の 時期 の建 設 実現 率(α)の 低 下 は資 金 調 達 を原 因 とす る もの とは考 え に くい。 2) 供 給 側 の 需 要 情 報 の 把握 この側 面 の 要 因 につ い て,デ ー タ に よる実 証 は 非 常 に困 難 で あ る。 しか し,次 の よ うな こ とが 考 え られ る。 需 要 情 報 の 把 握 に つ い て持 家 と借 家 と を比 べ る と"大 き く異 な って い る。 持 家 の場 合"特 に木 造 一戸 建 の場 合,需 要 者 自体 が 供給 者 で あ る こ とや供 給 者 も需 要 者 か ら受 注 して か ら建 て る こ とが 多 い。 民 営 借 家 の場 合,各 々の 供給 者 が正 確 に市 場 の 需要 量 を把 握 す る の は非 常 に難 しい こ と で あ る。住 宅 公 団 の 「首 都 圏 にお け る民 間RC造 賃 貸 住 宅 の居 住 ・経 営 に関 す る実 態調 査 」*3)によれ ば,民 間RC賃 貸 住 宅 の経 営 者 の経 営 開 始 時 の苦 労 の 内容 をみ る と,公 団 民賃 と公 庫 土 地 担 保 賃 貸 の場 合,「 入 居 者 の募 集」 が苦 労 の 内容 の うち, 2番 目 に多 く挙 げ られ て い る。 そ の た め,民 営 借 家 の 建築 主 に と って,競 合 関 係 に あ る公 的 借 家 と給 与 住宅 の 供給,及 び民 営 借 家 自体 の空 家 の情 報 が 需 要 量 を把 握 す るた め の参 考 要 素 とな って くる。40年 代 末 か ら木 造 共 同建 住 宅 の 空 家 が大 量 に発 生 してお り,建 設 実現 率(α) を低 め る方 に作 用 した と考 え られ る。 3) 供給側 の建設能力 と経営条件 この側 面 に お い て は,a)建 設 能 力,b)供 給 側 の 資金 調 達,c)供 給 組 織 と経 営 者 経 済 力 とい う3つ の 側面 か らア プ ロー チ して い く。 (a)  建 設 能力 建 設 能 力 とは物 的建 設 能 力 を指 す もので あ る。 こ こで は,資 材 の 供給,技 能 労 働 者 の需 給,宅 地 の供 給 及 び建 築 技 術 につ い て考 察 を行 う。 建 設 資 材 の需 給 は,住 宅 部 門 以外 の建 設 活 動 と も関連 し,ま た輸 出 と輸 入 と も関連 す るの で,住 宅 との 関連 に つ い て は おお よ そ の傾 向 を把 握 す る こと しか で きな い。 建 設 資 材 の生 産 指 数 と在 庫 指 数(図-5)か ら以 下 の点 が考 え られ る。30年 代 で は,資 材 の 生産 能力 は全 般 的 に低 く,低 水 準 の 住 図-5  建設資材の生産 指数 と在庫指数 資 料:通 産 省 「生 産,出 荷,在 庫 統 計 」

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58 大 都 市 圏 に お け る住 宅 ス トック形 成 に関 す るSD モデルによる戦後 日本の住宅政策の分析(II) 日本 不 動 産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 宅 建 設 に も供 給 の 限界 が あ った。40年 代 で は,資 材 の生 産 能 力 は 急成 長 して きた が,住 宅 建 設 もピ ー ク に な って資 材 の在 庫 指 数 は ま だ低 い状 態 を続 け て い た。40年 代 末 か ら建 設 資 材 の在 庫 指 数 水 準 が急 上 昇 し,生 産 指 数 の伸 び は鈍 化 し て き て い る。住宅 建 設 へ の 供給 能力 に は余 裕 を み せ て い る。 建 設 業 の技 能 労 働 力 の需 給 関 係 が,建 設 実現 率 (α)を 裏 付 け る要 因 の一 つ だ と考 え られ る。 労 働 省 の 「技 能 労 働 力 需 給 調 査 」 の 資料 に よ る建 設 業 技 能 工 の 不 足 率(図-6)を み る と,40年 代 は30% 前 後 に 達 して い て,製 造 業 に比 べ て技 能 工 の不 足 が か な り深 刻 で あ った。 熟 練 労 働 者 の供 給 の面 か ら,供 給 の 限界 を示 して い る。 ま た,資 材 と同 じ 挙 動 で,50年 代 に 入 っ て か ら供 給 の余 裕 をみ せ, 建 設 実 現 率(α)を 抑 制 す る原 因で は な くな って い る こ とが言 え る。 図-6  技能工 の不足率 の推移 資料:労 働省 「技能労働力受給調査」 (注)1.  公 的 供 給 と は,住 宅 ・都 市 整 備 公 団,地 方 公 共 団体 等 の 公 的 機 関 に よ る供 給 で あ り,こ れ らの 機 関 の 土 地 区 画 整 理 事 業 に よ る 供 給 を 含 む。 2. 民 間 供給 とは,民 間宅 地 開発 事 業 者,土 地 所 有 者 等 の 民 間 に よ る供 給 で あ り,組 合 等 の土 地 区 画 整 理 事 業 に よ る供 給 を含 む。 図-7  宅地供給量 の推移 出典:建 設省 「新 た な住 宅 ビジ ョン」1986年 宅 地 供給 量 の推 移(図-7)を み る と,そ の挙 動 が一 戸 建 住 宅 の 建設 実現 率(α)の 挙 動 に よ く似 て い る。 一 戸 建住 宅 の建 設 実 現 率(α)に と って, 資 材,技 能 工 の 供給 能 力 と資 金 の調 達 能 力 が 満 た され て きた段 階 で は,宅 地 の供 給 量 が もっ と も大 きな 制 限 条 件 とな って い る。 地 価 の上 昇 と非 木 造 対 木 造 住 宅 の 建築 費 の相 対 格 差 が減 少 して きた こ とにつ い て は,前 回 の 論 文1)で 分 析 した。 建 設 実 現 率(α)と の 関係 を考 え 表-6  住宅建設資金源構成の推移(個 人借家建築主) 上 段:実 数(万 円) 下段:構 成比(%) 資料:建 設省 「民 間住宅建設 資金実態調査結果」

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日本 不 動 産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 大 都 市圏 に お け る住 宅 ス ト ック形 成 に 関す るSD モ デル に よ る戦 後 日本 の 住宅 政 策 の 分析(II) 59 る と,非木 造 建 築 費 が相 対 的 に高 か っ た時 期 で は, そ れが 非 木 造 住 宅 の建 設 実 現 率(α)を 抑 制 す る 要 因で あ っ た。 そ して,非 木 造 と木 造 建 設 費 の 接 近 が そ の抑 制 の作 用 を弱 め た。 さ らに 宅 地 供 給 量 の減 少,地 価 の上 昇 は一 戸 建 住 宅 の 建 設 実 現 率 (α)を 低 め て きた が,一 方 で は,建 築 主 が 高 価 な 土 地 取 得 費 に対 して,経 営上 採算 が取 れ る よ うに, 中 高 層 住 宅 を建 設 せ ざる を得 な い こ とにな り,結 果 的 に は非 木 造 住 宅 の建 設 実 現 率(α)を 高 め る 刺 激 要 因 とな って い る。 (b)供 給 側 の資 金 調 達 個 人 借 家建 築 主 の建 設 資 金 源 構 成 を み る と,40 年 代 で は,借 入金 の割 合 が個 人 持 家 建 築 主 に比 べ て きわ め て低 く,一 戸 当 た りの建 設 費 は きわ め て 低 い(表-6)。45年 時 点 で は,借 入金 の割 合 が 24.2%し か な か った。50年 代 に入 る と,借 入金 の 割 合 が大 幅 に伸 びて きた。 この こ とに は三 つ の原 因 が あ る と老 え られ る。 第1に,次 の と ころで 分 析 を行 うが,借 家建 築 主 の うち,高 所 得 層 の者 と 会 社 の 役 員 な どが 多 い。 ま た,土 地 所 有 者 で,自 分 の敷 地 で借 家 を建 設 す る者 が ほ とん ど で あ っ て,土 地 取 得 費 が 少 な い。 第2に,40年 代 で は 小 規 模 な 木 造 共 同 建 借 家 が圧 倒 的 に数 が 多 か った。 50年 代 か らの 借 入金 の 割 合 が 急 に伸 び た の は,木 造 共 同 建 住 宅 か ら非 木賃 貸 住 宅 に 変 わ っ て き た 際,建 築 の 規 模 の 変 化 に よ って よ り多 くの資 金 を 必 要 とす る こ とを意 味 して い る。 第3に,個 人 借 家 建 築 主 に対 す る公 的援 助政 策 は個 人 持 家 に比 較 して,相 対 的 に低 水 準 に とど ま って い る。 例 え ば 52年 時 点 で,個 人 持 家 建築 主 の場 合,公 庫 か らの 借 入 金 の割 合 が17.5%で あ っ たの に対 して,個 人 借 家 建 築 主 の場 合,わ ず か4.7%で あ った。 融 資 制 度 と して主 に,住 宅金 融 公 庫 の 一般 中高 層 と土 地 担 保 賃 貸(お よ び特 定 土 地 担 保賃 貸),住 宅 公 団 の民 営 賃 貸 特 定 分 譲 住宅,及 び国(地 方 自治 体) の農 地 所 有 者 な どへ の賃 貸 住 宅 建 設融 資 利 子 補 給 制 度 が あ るが,50年 代 の ピー クの 場合 で も,そ の 融 資 の合計 が5万 戸/年 前後 しか な い。 資 金 調 達 環 境 の改 善 につ い て,す で に1)-(a) 節 で 分析 した。 同様 な 内容 につ い て は ここで は省 く こ とに す る。 以 上 を ま とめ る と,30年 代 と40年 代 前 半 にお い て は資 金 調 達 の条 件が 厳 しか っ たた め,供 給 側 の 実現 条 件 が不 充 分 で あ っ て建 設 実 現 率(α)を 低 くす る作 用 が あ った と考 え られ る。 と ころが,公 的 資 金 供給 が 不足 して い て も,小 規 模 な借 家 に とって 大 きな 支 障 に は な らな か っ た。 (c)経 営 組 織 と経 営 者 経済 力 木 造 共 同建 住 宅 と非 木 造 民 間 借 家 の建 設 実 現 率 (α)を 作 用 す る要 因 につ い て は,借 家経 営 者 の 組 織,規 模 及 び経 済 能 力 が 重 要 な 側 面 とな って い る。 こ こで は,タ イ プ別 借 家 住 宅 経 営 者 の組 織 形 態,経 営 規 模 な どに お け る相 違 を明 ら か に し た 上,経 営 者 側 の変 化 の面 か ら,木 造 共 同 建 と非木 造 民 間 借家 の建 設 実 現 率(α)を みて み る。 建 設 省 と住 宅 公 団 な どの調 査 報 告*3)∼*7)によれ ば,民 間木 造 共 同建 住 宅 経 営 者 と民 間RC造 賃 貸 住 宅 経 営 者 の相 違 は以 下 の よ うに ま とめ る こ とが で き る。 木 造 共 同建 住 宅 の場 合*4),個 人 経 営 者 が 97%を 占め て お り,農 家,一 般 雇 用 者 の 経営 者 が 多 い。 アパ ー トが 同一 敷 地 内 ま た は近 隣 にあ るい わ ゆ る 「庭 先 ア パ ー ト」 が多 く,経 営 規 模 が1件 当 た り6.9戸 で,建 設 費 が500万 円で 小 規 模 の もの で あ る。 これ に対 して,民 間RC賃 貸 住 宅 の 場 合 図-8住 宅 洪給 開始時期別 に見 た企業数の累積 資料:建 設省 「住宅供 給企業 の住宅建設動向調査」 注:昭 和45年全 国住宅供給企業 の うち391件を調査 したもの。 棒グ ラフの高さは各時点 におけ る住宅供給企業数の累 積を表 す。 ■:そ の うち前期か ら当期 まで の間に新規に住宅供給を開始 し た企業 数。

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60 大都市圏 における住宅 ス トック形成 に関す るSD モデルに よる戦後 日本の住宅政策の分 析(II) 日本不動産学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 *3) ,法 人 経 営 が27%を 占 め て お り,役 員 の経 営 者 が 多 い。 経 営 規 模 が1件 当 た り17.8戸 で,建 設 費 が1億 前後 に集 中 して い る。 タ イ プ別 借 家 建 設 は そ の経 営 者 の経 済 力 に規 定 され て い る とい え る。 住 宅 供給 者 の主 な変 化 は2つ 認 め られ る。 第1 に,法 人企 業 供給 者 の増 加 で あ り,第2に,個 人 供給 者 の経 済 力 と経 営規 模 の拡 大 で あ る。 昭 和45 年 時 点 で調 査 した住 宅 供 給 企 業 の うち,住 宅 供 給 開始 時期 別 の企 業 数 の分 布 を示 して い る のが 図-8で あ る。 これ に よ る と,45年 ま で の 企 業 の う ち,30年 代後 半 か らの10年 間 に 開始 した もの は64 %も 占め て い る。 ま た そ れ は さ らに増 加 して い く 図-9  建 築主 別 借 家 建 設 戸 数 の割 合 資料:建 設省 「建築統計年報」 傾 向 を示 して い る。 資金 力,技 術 力 を持 って い る 住 宅 供給 法 人企 業 が 増 加 した こ とは,大 規 模 な良 質 住 宅 の 供給 を よ り可 能 に した と考 え られ る。 し か し,建 築 主 別 建 設 戸数 の 割合 か らみ れ ば,個 人 表-7  個人借 家建築主 によ る借家 の規模及 び 建築主年 収 資料:建 設省 「民間住宅建設資金実態調査」 建 築 主 に よ る借 家 建 設 戸 数 が 依 然 全 体 の60∼70% を 占 め て お り'基 本 的 に個 人 に よ る借 家 供給 の形 図-10  個 人 借 家建 築 主 の年 収 指 数 と工 事 費 デ フ レー ター 資料:建 設省 「民間住宅建設資金実態調査」 に変 化 は み られ な い(図-9)。 全 体 の居 住 水 準 の 向上 は,借 家 建 設 の主 役 で あ る個 人 借 家 建 築 主 の 済 経 力 の 向上 が な けれ ば困 難 で あ ろ う。 表-7に 示 して い る通 り,個 人 借 家 建 築 主 に よ る借 家 の規 模 が昭 和45年 の308m2/戸 か ら昭 和55 年 の56.4=m2/戸 に大 幅 に伸 びて きた。 さ らに,図 -10か らわ か る よ うに,個 人 借 家建 築 主 の年 収 の 伸 び が建 築 工 事 デ フ レ ー タ ーの伸 び よ り大 きい。 個 人 建 築 主 の経 済 力 の向 上 が 良質 な住 宅 供 給 を加 速 した と言 え る。 4) タ イ プ別 住 宅 建 設 実 現 率(α)の 定 式 化 最 後 に,以 上 の考 察 に基 づ い て,タ イ プ別 住 宅 の建 設 実 現 率(α)に お け る簡単 な定 式 化 を試 み た。 そ の結 果 は表-8に 示 して い る通 りで あ る。 そ れ に用 い た デ ー タ の種 類 と単 位 な どを表-9に 示 して い る。 いず れ の建 設 実 現率(α)も2つ の 時期 に分 け るス ィ ッチ ン グ 回帰 モ デル*8)を採 用 し て い る。 これ は長 い期 間 にお いて 構造 変 化 が起 こ って い る と考 え た か らで あ る。 木 造 一 戸 建 の 場 合,40年 代 前半 ま で,主 に住 宅 金 融 の 供給 能力 と 建 設 資 材 の生 産 能 力 に作 用 され,そ れ らの 能力 向 上 に よ って 建設 実 現 率(α)が 高 め られ た 。40年 代 後 半 か らは金 融 と資 材 の供 給 が す で に余 裕 をみ せ,一 方 で は宅 地 供 給 が大 きな制 限 と な っ て き た。 非 木 造持 家 に つ い て は,40年 代 前 半 まで 木 造 一 戸 建 の 場合 と同様 の考 え方 で あ る。40年 代 後 半

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日本 不 動 産 学会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8

大 都 市 圏 に お け る住 宅 ス トッ ク形 成 に 関す るSD

モ デル に よ る戦 後 日本 の 住 宅 政 策 の 分析(II) 61

表-8  タイ プ別 住 宅 の建 設 実 現 率(α)の 定 式化(建 設 実現 率(α)を 実 現 率 と略 す)

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62 大都市圏におけ る住宅 ス トック形成に関す るSD モ デ ル に よる 戦 後 日本 の 住宅 政策 の分 析(II) 日本 不 動 産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 か ら,地 価 指 数 を説 明変 数 と して い る。 す で に前 で 述 べ た よ うに建 築 主 に とっ て地 価 の上 昇 が結 果 的 に高 い容 積 率 の非 木 造 住 宅 建 設 を刺 激 す る要 素 とな っ て くる。 この こ とは非 木 造 民 間 借 家住 宅 の 場 合 で も同 様 で あ る。 ま た,木 造 共 同 建 の場 合 で は,40年 代 後 半 以 降,民 間 借 家 建築 主 の経 済 力 を 示 す 建 築 主 収 入 を説 明 変 数 とした 。 各式 に お い て は 良 好 な統 計 検 定 結 果 が 得 られ て い る。

4. 各時期における住宅供給策の適合性

の評価

これ ま で,式(2)を 用 い て,す な わ ち,建 設 量 表-10  評 価 に用 い る住 宅 供給 策 の パ タ ー ン 図-11  住宅供給 策の適合性評価 の枠組 み

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日本不動産学会誌/第5巻 第1号4989.8 大都市圏 におけ る住宅 ス トック形成に関す るSD モデルによる戦後 日本 の住宅政策 の分析(II) 63 表-11  各時期にお ける木造一戸建 と非木造持家住宅の建設実現率(α)と持 家促進 型策 の適合性 表-12  各時期にお ける非木造 民営借家 と木造共 同建住宅の建設実現率(α)と民間借 家促進型策 の適合性 が 需要 と建 設 実現 率(α)に よ っ て決 定 され る と い うア プ ロー チ で 需要 と建 設 実 現 率(α)に 作 用 す る要 素 に つ い て分 析 して きた。 この中 で,建 設 に作 用 す る要 素 が 常 に一 定 の集 合 で あ る とは限 ら な い こ とを明 らか に し た。特 に建 設 実現 率(α) は住 宅 需 要 に対 して どの く らい 建設 で き るか の 限 度 を示 す指 標 だ と考 え られ,そ の 限度 を決 定 す る 制約 要 素 の項 目 は社 会 の変 化 に よ って異 な って く

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64 大 都市圏 におけ る住宅 ス トック形成 に関す るSD モデルに よる戦後 日本の住宅 政策の分析(II) 日本 不 動 産 学 会 誌/第5巻 第1号 ・1989.8 る。 そ こで,建 設 量 の増 加 を期 待 す る促 進 策 の要 素(手 段 と対 象)が,あ る時期 お い て建 設 に有 効 に作 用 せ ず,建 設 を抑 制 す る要 素 が他 に存 在 して い れ ば,そ の 時 期 にお い て は,こ の供 給 策 の適 合 度 合 が 低 い こ とに な る。 す な わ ち,各 時 期 にお け る住 宅 供 給 策 の適 合 性 の評 価 とは,与 え られ た住 宅 供 給 策 の要 素 が そ の時 期 に お い て有 効 に住宅 建 設 に作 用 す る要 素 で あ るか ど うか を検 討 す る こと で あ る。 この適 合 性 評 価 の考 え方 は図-11に 示 し た。 検 討 され る住 宅 供 給 のパ タ ー ン は表-10に 示 し た よ うな,持 家 促 進 型 と民 間 借 家促 進 型 の2タ イ プで あ る。 それ ぞれ の適 合 性 の 評 価 は表-11と 表 -12に 記 述 して い る。例 えば,木 造一戸建住宅 の 場 合,昭 和30年 代 にお いて その 建設 実現 率(α) が 低 く,そ の1つ の制 約 要 素 は資金 調 達 が 困難 で あ っ た こ とで あ る。 よ り住 宅 金 融 を整 備 す れ ば そ の建 設 の増 加 が期 待 で きるが,同 時 に資材 な どの 供 給 も1つ の制 約 要 素 で あ り,金 融 策 だ けで は 限 界 が あ る。 しか し,50年 代 で は,資 金 供給 が す で に余 裕 を みせ てお り,宅 地 の 供給 が そ の建 設 実 現 率(α)を 抑 え る要 素 とな って お り,さ らに住 宅 金 融 を増 加 して も,大 きな 効果 が得 られ な い。 宅 地 供給 を対 象 とす る供給 策 が よ り重 要 とな って き て い る。 5.  結 語 (1) 建 設 実現 率(α)を 需要 量 に対 す る住 宅 建 設 量 の比 率 として 定 義 す れ ば,そ の建 設 実 現 率(α) が,1)需 要 側 の計 画 実 現 条 件,2)供 給 側 の需 要 に対 す る情 報 把 握,3)供 給 側 の 建設 能力 と経 営 条 件 に よ っ て決 定 され る。 この 枠組 み に基 づ き, タ イ プ別 住 宅 の建 設 実 現 率(α)に 作 用 す る具 体 的 な要 因 につ い て分 析 し,各 住宅 タ イ プ別 の建 設 実 現 率(α)の 簡 単 な 回帰 に よ る定式 化 を行 った。 (2) 住宅 建 設 量 は需 要 と建 設 実現 率(α)に よっ て 決 定 され る とい う式 に基 づ い て建 設 決 定 の仕 組 み を検 討 し た。 自力 建 設 を地 とす る住 宅 建 設 の場 合 で は,建 設 量 が 世帯 の住 宅 取 得 能 力 に基 づ い た需 要 量 の大 小 に強 く作 用 され る。 同時 に,建 設 実 現 率(α)の3側 面 の 諸 要素 に よ って も規 定 され る。 (3) 住 宅 供給 策 の策 定 に お け る建 設 実 現 率(α) の役 割 を検 討 し た。第1に,現 在 の住 宅 需 要 調 査 の資 料 が な い状 況 で,過 去 の資 料 か ら建 設 実 現 率 (α)を 決 定 す る要 素 を明 らか に して,現 在 の建 設 実 現 率(α)を 推 計 す る こ とがで き,建 設 実 績 だ け を入 手 す れ ば,現 在 の タ イ プ別 住 宅 の需 要 が 推計 で きる こ とにな る。 これ に よっ て,頻 繁 に大 規 模 な調 査 をす る必 要 が な く,非 常 に簡 単 な方 法 で,タ イ プ別 住宅 需要 量 の お お よそ を把 握 す る こ とが で きる。 しか し,こ の方 法 の実 用 性 につ い て は,建 設 実現 率(α)を 規 定 す る要 因 を正 確 に把 握 して い るか とい う点 に依 存 し,特 に,構 造 的 変 化 が起 こ った場 合 に は,新 た に,建 設 実 現 率(α)の 決 定 の 仕 組 み を再 度 検 討 しな けれ ばな らな い 。 第2に この建 設 実 現 率(α)の 大 小 は,需 要 を 刺 激 した と きに,そ の増 加 に対 して 建設 量 の増 加 が期 待 で きる限 度 を示 す 。 この 時 建設 量 の増 加 を 供 給 策 で 刺 激 して期 待 す る とす れ ば,そ の供 給 策 が期 待 で きる限 度 を建 設 実現 率(α)が 示 して い る こ とに な る。 さ らに,そ の 限度 を規 定 す る要 素 を 明 らか にす る こ とで,よ り有 効 に建 設 を促 進 して い くた め に,如 何 な る手 段 と対 象 を含 む供 給 策 を 必 要 とす るか が 明 らか に な って く る。 建 設 実 現 率 (α)の 分 析 の結 果 に基 づ い て,各 時期 に お け る持 家 促 進 型 と民 間 借 家促 進 型 供 給 策 の適 合 性 を検 討 した。 注: (1)  iタ イ プ借家世帯 の持家需要顕在化率 =持家 計画 の あ るiタ イ プ借 家 世 帯 数 iタ イ プ借 家世 帯 の総 数/ ×100% こ こで,持 家需 要 顕 在 化 率 を5ケ 年 車 位 とす る。 た だ し,本 研 究 で は以 下 の方 法 を用 い て5年 間 に 発 生 す る トー タ ル の需 要 量(持 家 計 画 を持 って い る世 帯数)を 計 算 した 。t年 次 で行 われ た 建 設 省 「住 宅 需 要 実 態 調 査 」 に よ る需要 量 をDtと して,次 の 年 次 に お け る需 要 量 は:

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日本不動産 学会誌/第5巻 第1号 ・1989.8 大都 市圏 における住宅 ス トック形成に関す るSD モデルによる戦後 日本の住宅政策の分析(II) 65 と な り,Ut(t+1)は 需 要Dtの うち か ら,t年 の う ち に 実 現 さ れ て い く 量 で,It(t+1)はt年 の う ち に 新 た に 発 生 す る 需 要 量 で あ る 。 こ こ で5年 間 内 の ど の 年 次 に お い て も同 様 な 需 要 調 査 結 果 が 得 ら れ,Dt= Dt+1と 仮 定 す る こ と が で き る もの と す る 。 こ れ に よ りIt(t+1)=Ut(t+1)と な る。 し た が っ て,5年 間 に 発 生 す る ト ー タ ル の 需 要 量 Dt∼t+4は U1∼2は 「住 宅 需 要 実 態 調 査 」 に よ る1年 内 に計 画 を実 現 す る世 帯 数 を用 い て い る。 (2) 実 際 の 借 家 の ス トック か らの供 給(SHとSW) と して,既 存 の 空 家 戸数 と,住 替 え に よっ て発 生 し て きた 空 家 戸数,及 び滅 失 して い く戸 数 を合 計 し た 空 家 が100%供 給 され るの で は な く,一 定 の空 家 率 で残 され る。空 家率 は住 宅 ス ト ック戸 数 に対 す る空 家 ス トック数 の比 率 で あ る。 参 考 文 献: 1) 深 海 隆 恒:大 都 市 圏 に お け る住 宅 ス トック形 成 に 関 す るSDモ デル に よ る戦 後 日本 の 住宅 政 策 の分 析 -公 的 借 家 建 設政 策 と持 家 促進 政 策 の検 討-日 本 不 動 産 学 会 誌Vol.3No.31988 2) ウ ォー レスF・ ス ミス:「 住 宅 問題 」-そ の社 会 ・ 経 済 的 要 素-鹿 島 出版 会1975 3) 日本 住 宅 公 団:「 首 都 圏 に お け る民 間RC造 賃 貸 住 宅 の 居 住 ・経 営 に 関 す る実 態 調 査 」 日本 住 宅 公 団1976 4) 日本 住 宅 公 団:「 民 間木 造 ア パ ー トの居 住 ・経 営 実 態 調査)日 本 住 宅 公 団1970 5) 日本 住 宅 総 合 セ ン タ ー:「 民 間 賃 貸 住 宅 の 経 営 ・ 管 理 実態 調 査 」 日本 住 宅 総 合 セ ン タ ー1983 6) 日本 住 宅 総 合 セ ン タ ー:「 民 間 賃 貸 住 宅 の 経 営 ・ 管 理 シ ス テ ム に関 す る調 査 」 日本 住 宅 総 合 セ ン タ -1988 7) 建 設 省 住 宅 局 編 「東 京 の賃 貸 住 宅-昭 和63年 度 貸 家 供 給 実 態 調 査 」 建 設 省1988 8) 刈 屋 武 昭:「 計量 経 済 分 析 の基 礎 と応 用 」 東 洋 経 済 新 報 社1970

参照

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