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渋 谷   均 佐々木 賢 一 原 田 敬 介

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Academic year: 2021

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(1)

                         

 過去13年間に手術を施行した大腸憩室炎15例について臨床的検討を行った。性別は男7例、女8例、発症部位 は右側結腸5例、左側結腸10例で、年齢は30-86歳、平均年齢は63歳であった。術前診断は15例のうち11例が腹膜 炎と診断された。術式は右側5例の1例は憩室部位を縫合閉鎖、他の4例は右半結腸切除を行った。左側10例の うち4例は縫合閉鎖、2例は部分切除、1例は瘻孔部位の切除閉鎖、2例は人工肛門造設、1例は前方切除+cov- ering  colostomyを施行した。合併症として3例に縫合不全を認めたが死亡例はなかった。本疾患の多くは腹膜炎と 診断され緊急手術が行われることが多く、術前検索が十分でないことが多い。そのため術式の選択が難しく、ま た術前処置が行われていないことから、切除縫合した場合に縫合不全のriskが高い。特にS状結腸、直腸の憩室穿 孔による腹膜炎の手術で切除縫合する際には、慎重な操作と状況によっては付加手術として口側に一時的人工肛 門を造設することが必要である。 

   

大腸憩室症、大腸憩室炎、手術術式、合併症   

 

 近年、社会の高齢化と食生活の欧米化により大腸憩室症は増加傾向にある。それに伴い合併症としての憩室炎 とこれに関連した膿瘍形成、穿孔性腹膜炎、出血、狭窄、瘻孔形成など手術適応となる症例が増加しているのが 現状である。今回、過去13年間に経験した15例の大腸憩室炎手術症例の治療成績について報告する。 

       

 1990-2002年までに当科で手術を施行した15例の大腸憩 室炎について発症部位、年齢、術前診断、術式、合併症、

予後について検討した。 

 

 性別では男7例、女8例、平均年齢は63歳であった。

憩室の発症部位は右側結腸5例(盲腸3例、上行結腸2例)、

左側結腸10例(S状結腸8例、直腸2例)で左側結腸に 多い結果であった。平均年齢を右側、左側結腸で比較す

ると右側は55歳、左側は67歳であり左側結腸で年齢層が 高い傾向であった(表1)。 

                       

市立室蘭総合病院 外科

渋 谷   均 佐々木 賢 一 原 田 敬 介

高 島   健 井 上 大 成 伊 東 竜 哉

市立室蘭医誌(第29巻 第1号 平成16年4月) 

(2)

 

 右側5例の術前診断は急性虫垂炎1例、憩室炎1例、 

腹膜炎3例、また左側10例では腹膜炎8例、膿瘍形成に よる直腸狭窄1例、結腸膀胱瘻1例であった(表2)。 

 

 右側の1例は術前に憩室炎と診断され、また左側の2 例は術前に結腸膀胱瘻、膿瘍形成による直腸狭窄と診断 されており待機手術が可能であったが、他の症例は緊急 手術が行われた(表3)。 

 

 右側5例のうち1例は憩室穿孔部位を縫合閉鎖+虫垂 摘除、他の4例は一期的に右半結腸切除を行った。左側 10例のうち4例は憩室穿孔部位を縫合閉鎖、2例は部分 切除、1例は瘻孔部位を切除閉鎖、2例は人工肛門造設、

1例は前方切除+covering colostomyを施行した(表4)。 

 

 これらの症例のうち縫合閉鎖、右半結腸切除、前方切 除を行った3例に縫合不全を認めた。その後の処置とし て症例1は人工肛門造設を行い半年後に再吻合を行った。

症例2はcovering  colostomyの閉鎖を半年後に行った。症 例3は回腸横行結腸バイパス手術を行った(表5)。い ずれの症例も無事退院し、結果として死亡例は経験しな かった。 

                   

 大腸憩室症は欧米に多い疾患とされてきたが、本邦に おいても近年増加傾向にあり、外来患者に行われた注腸 造影検査で20%を越える頻度で憩室が認められたと報告 されている1,2)。性別では男性に多く、発症部位では欧 米と異なり右側結腸に多く60-80%を占めている。平均年 齢は右側結腸で50歳代、左側結腸で60歳代にpeakがあり、

高齢化とともに左側に増える傾向がある一方、右側結腸 では30-40歳代の若年者が多いのが特徴である1,2,3)。 従って合併症を有する憩室疾患の手術例も右側結腸に多 いとされているが、自験例では左側結腸が多い結果であり、

当室蘭市は高齢化が進んでいるためとも推測されるが、

同様の報告4,5,6)も見られることから地域性、食習慣、

高齢化などの要因が複雑に関与しているものと思われる。

憩室症の合併症としては憩室炎、膿瘍、穿孔、瘻孔、狭窄、

出血などがあるが、憩室炎が最も多いと報告されている3,

5,6)。これら合併症の発症部位の特徴は、右側結腸では 腸内容が流動性であることから憩室周囲炎、または傍結 腸膿瘍を呈することが多い。一方、左側では便が固形で 憩室内に貯留しやすく、また腸管内腔が右側結腸より狭 いことにより、穿孔による腹膜炎や瘻孔、狭窄、出血な ど重篤な症状を呈することが多い1,5)。自験例では右側、

左側ともに憩室穿孔による腹膜炎が多い結果であった。 

 術前診断は右側結腸では急性虫垂炎と診断されること が多く、施設によっては70%以上の症例で急性虫垂炎と 診断されていた7,8)。一方、左側結腸では穿孔による腹 膜炎と診断されることが多く3,5)、自験例も10例中8例 は腹膜炎と診断された。 

 手術時期については救急で搬送される患者が多いこと から、緊急手術が行われることが多い。自験例では術前 に明らかに憩室炎と診断された右側結腸の1例、結腸膀 胱瘻の1例、膿瘍形成による直腸狭窄の1例は待機的に 手術が行われたが、他の12例では緊急手術が行われた。 

 手術術式では右側結腸の場合、開腹時に明らかに憩室

(3)

炎であると診断されればたとえ膿瘍形成、あるいは炎症 性腫瘤があっても虫垂摘除と炎症部のドレナージで十分 であり、腸切は行うべきではないとする報告がある9,10,

11)。この際の虫垂摘除は後に憩室炎が再燃した場合に虫 垂炎を除外診断するために行われる。この術式の根拠と して、1)腰椎麻酔から全身麻酔に切り替えることのrisk の増加、2)術前に腸内清掃が行われていないことによ る吻合術のriskの増加、3)憩室炎が反復する頻度は10%

程度、4)癌との鑑別で癌でない場合は過大侵襲となり、

また癌の場合は郭清が不十分となる可能性が高いことな どが挙げられている。この意見に対し、炎症性腫瘤があ る場合は積極的に腸切を行うべきとする報告もあり4,8,

13)、その理由として、1)炎症性腫瘤では抗生剤を投与 しても腫瘤の縮小、痛みの改善がみられないことがある、

2)癌である場合でも郭清は十分に行えるためとしている。

自験例では5例中4例に右半結腸切除を行ったが、これ らの症例も炎症性腫瘤が著明で癌との鑑別が難しかった ことによる。一方、左側結腸では高齢者が多いこと、ま た腹膜炎など重篤な合併症を起こしていることが多いこ とから可能であれば一期的に切除吻合しても良いが、

poor risk例では単純に人工肛門を造設する、あるいは病変 部を切除し、人工肛門を造設するHartmann手術を行うこ とが安全であり、患者の状況に応じて二期的に再吻合を 行うことが良いとされている7,12,13)。これらの手術後 の合併症の発症率は20-30%と報告されており7,10,13)、 縫合不全、創部感染、膿瘍遺残、腸閉塞、死亡例などが 含まれる。 

 以上のことから、大腸憩室炎の術式の選択は非常に難 しいと言えるが、今回の症例検討の結果として右側結腸 で炎症が軽い場合は虫垂摘除+ドレナージ、また炎症が 著明で癌との癌別が難しい場合は直視下の吻合操作が容 易であることから右半結腸切除の適応と考える。一方、

S状結腸、直腸では切除範囲の設定の難しさ、また縫合 不全のriskが高いことを考慮すると一時的に人工肛門造設 を付加する術式が必要であると考えられた。 

    

 15例の大腸憩室炎の手術症例を経験し、その3例に縫 合不全を認めた。術式の選択が難しい左側のS状結腸、

直腸憩室の穿孔例ではpoor riskの症例が多く、侵襲の少な い術式を選択すべきで、縫合閉鎖、部分切除にせよ一時 的人工肛門を造設することが安全な術式である。 

   

1)杉原賢一:大腸憩室炎の手術適応と術式.医のあゆ  み 151:147-149, 1989. 

2)久保明良、加賀屋寿孝、中川均:大腸憩室疾患.日 

臨 46:417-422,1988. 

3)冨田凉一、丹正勝久、黒須康彦:大腸憩室症手術例  の検討.外科 54:982-985,1992. 

4)鈴木温、宮本憲幸、行部洋、大竹節之、宗村忠信、 

真名瀬博人、藤森勝、関下芳明、塩野恒夫:大腸憩 室疾患手術症例の検討.帯厚医誌 2:26-28,1999. 

5)増田秀樹、谷口利尚、佐和尚信、林成興、中村陽一、 

堀内寛人、渡辺賢治、林一郎、加藤克彦、田中隆:

合併症を有する大腸憩室症の検討.外科診療33:

1521-1525, 1991. 

6)寿美哲生、勝又健次、原知憲、鈴木彰二、向出将人、 

岡田了裕、鈴木芳明、高木眞人、山崎達之、青木利明、

富岡英則、青木達哉、小柳泰久:大腸憩室炎手術症 例の検討.日本大腸肛門病会誌 55:661,2002. 

7)伊藤博、泉良平、唐澤久史、角谷直孝、福島亘、村  岡恵一、寺田逸郎、天谷公司、山崎徹:大腸憩室炎 の手術的治療.日腹部救急医会誌 20:675-681,2000. 

8)Lo CY, Chu KW: Acute deverticulitis of the right colon.  

Am J Surg 171: 244-246,1996. 

9)Harada RN, Whelan Jr Tj: Surgical management of cecal   diverticulitis. Am J Surg 166: 666-671, 1993. 

10)Ngoi  SS,  Chia  J,  Goh  MY,  Sim  E,  Rauff  A:  Surgical    management  of  right  colon  diverticulitis.  Dis  Colon  Rec- tum 35: 799-802, 1992. 

11)杉原賢一:憩室炎に対する手術、一期的手術:外科 58: 

993-995,1996. 

12)長尾二郎、炭山嘉伸、斉田芳久:憩室炎に対する手術、 

二.三期的手術.外科 58:995-997,1996. 

13)永川祐二、二見喜太郎、長谷川修三、城下豊生、東  二郎、有馬純孝:結腸憩室症手術症例の検討.日本 大腸肛門病会誌 53:865, 2000. 

参照

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