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幼児における子ども画とことばの流暢さの分析

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

幼児における子ども画とことばの流暢さの分析

著者 杉村 健, 井上 登世子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 24

ページ 37‑43

発行年 1988‑03‑01

その他のタイトル Analyses of "Draw‑A‑Child" and "Verbal Fluency" in Kinderagrten Children

URL http://hdl.handle.net/10105/6658

(2)

幼児における子ども面とことばの流暢さの分析*

杉村 健・井上登世子**

       (心理学教室)

要旨:幼稚園年長児に「子ども画」と「ことばの流暢さ」のテストを実施し、

男女差および相互関係を分析した。非言語的概念形成能力を査定する子ども画 では、マッカーシー法でもグッドイナフ法でも、男児よりも女児の方が有意に よい成績を示した。言語的概念形成能力を査定することぱの流暢さでは男女の ちがいがなかった。男女ともに子ども面とことぱの流暢さの間には有意な相関 がなく、非言語能力と言語能力の間にはあまり関係のないことが示唆された。

キーワード1概念形成、言語的能力、非言語的能力

子ども画は、子どもの知的側面とパーソナリティの側面に関する情報を与えるものとして関心 が持たれてきた。知的側面に関しては、Goodenough(1926)が考案した人物画知能検査法が最

もよく知られており、これを受けっいで、Harris(1963)はGoodenough−Harris採点法を 作成した。その後、Goodenoughの下で訓練を受けたMcCarthy(19721小田ほか,1977)

は、マッカーシー知能発達検査の下位テストの1っとして子ども画を取り入れている。パーソナ リティに関しては、Machover(1949)は人物画によるパーソナリティの診断を試み、Koppitz

(1968)は総合的な心理学評価のために人物画を利用している。本研究においては子ども画の知 的側面を取扱う。

 グッドイナフ人物画知能検査では、子ども画を描く能力は動作性の能力であり・視覚一運動系 の発達段階が査定される。マッカーシー知能発達検査では、子ども画が知覚一遂行尺度と運動尺 度にはいっている。知覚一遂行尺度では・非言語的な概念形成、視覚一運動の整合および身体像

(body image)が査定され、運動尺度の場合には、細かな運動の整合が査定される(Kaufman&

Kaufman,1977)。このように、子ども画によって、非言語的表現による視覚一運動整合および 非言語的概念形成の能力が査定される。

 これに対して、言語表現による言語的概念形成の能力はいくつかのテストによって査定される が、本研究では、マッカーシー知能発達検査における ことばの流暢さ を用いることにした。

このテストでは、1つのカテゴリー(例えば、動物)に属する事例名をできるだけたくさん言わ せる。これによって、子どもの言語表現による言語的概念形成、論理的分類、拡散的思考といっ

*  Analyses of Draw−A−Chi1d and Verba1F1uency in Kinderagrten Children

** Takeshi Sugimura and Toyoko Inoue(刀ゆαr舳e耐。ゾPsツ。ん0ZOgツ,Mαrασπカers比ツ   0ゾ肋㏄α亡{0π,Mαrα)

(3)

た能力が査定される(Kaufman&Kaufman,1977)。

本研究の目的は、幼稚園年長児に子ども面とことぱの流暢さのテストを実施し、子ども画によっ て査定された非言語的概念能力とことぱの流暢さによって査定された言語的概念能力に男女のち がいがあるかどうか、そして両者の能力の間にどのような関係があるかを検討することである。

方      法

 調査対象  調査対象は、奈良市内の幼稚園年長児122名(男児59名、女児63名)である。男 児の平均年齢は5:10(5:3−6:3)、女児では5:1O(5:4−6:3)であった。

 実施法  (1〕子ども画一10〜i5㎝の長さの鉛筆(H BまたはB)を持たせ次の教示によって、

男児には男の子の絵を、女児には女の子の絵をA4版の白紙に描かせる。「ここに、男の子(女 の子)の絵を描いてください。できるだけていねいに、顔だけでなく・全体を描いてください。」

描くのをためらっている場合には励ましてやってもよいが、いったん描き始めたら援助しない。

例えば、身体の重要な部分が欠けているとき、その絵を完成するように促さない。子どもが描く のを中止したならば、「それで終りですか」と言うが、この促しは1回だけに限る。時間制限は ないが、5分を過ぎても完成しないときは、早く完成するように励ましてやる。しかし、子ども が絵に満足して自発的にやめるまでは、用紙を回収しない。

 (2〕ことばの流暢さ一食べ物・動物、身体につけるもの、乗り物の4つのカテゴリーに属する ことばを、それぞれ20秒間に、すばやく、できるだけ多く挙げさせる。開始後、5秒たっても応 答しないか、あるいは1つしか応答しない場合には、「私に、食べるもの(動物)をどんどん言っ てください。」と言う。応答はすべて記録する。子どもが非常に流暢に答えれば、略語などを用 いる・子どもの言う遠さについていけない場合には・正答とみなされる答を数える・しかし、疑 わしい応答は、あとでチェックするために、すべて記録しておく。子どもが同じ種類の物を多く 挙げ、しかも、そのすべてが、同じことばの反復(例:食べ物:卵、かき卵、卵焼きなど)であ れば、「そのほかに・どんなO○がありますか」と言う・

 採点法  (1)子ども画(マッカーシー法:小田ほか、1977)一表1に示す1O項目について、

2点、1点、O点で採点する(最高20点)。

 12〕子ども画(グッドナイフ法:小林、1977)一次に記した各項目の規準に合致するものに 各1点を与える(最高51点)。

①頭のあること。

②脚のあること。

③腕のあること。

④a.胴があること。b.胴の長さが幅より大。c.肩がはっきりしていること。

⑤a.肺および脚のっけ方がほぼ正しいこと。b.肺および脚が胴の正しいところにあること。

⑥a.くびの部分のあること。b.胴または頭と連続したくびの輪がくのあること。

⑦a.眼のあること。b.鼻のあること。c.口のあること。d.鼻と口とに輪がくがあり、

    かつ唇は上下あること。e.鼻穴のあること。

(4)

表1 子ども画採点規準(マッカーシー法)

2  点 1 点      0

縦長(卵型)の頭がある 頭がある 頭がない

髪 頭の上にきちんと画けている 粗雑に髪が画いてある 髪が固いてない 目と眉毛(まっ毛、瞳)がある

目がある

目がない    .立体的な鼻がある

鼻    幅より丈が長い

平面的、又は立体的な鼻がある       鼻がない 女より幅が広い

口が1つで唇が1つ、又は2っ 口が1つで唇が固いてない 口が固いてない 首 2本の縦線で面かれている   1本、文は2本の縦線

頭か胴体のどちらかに続いている頭にも胴体にも続いていない

首が固いてない.

胴  体 丈が横幅より長い 横幅が女より長い 首が画いてない

腕と手 2本の腕と2本の手 2本の腕と手は1本以下 腕が1本以下か 3本以上      2つの肩と2本の腕がしっかり

腕の取付け

     面かれている 両腕はいるが肩はない 腕の取付が悪い

脚と足 2本の脚と2本の足 脚は2本あるが足がない 脚が1本以下か 3本以上 年 齢 2才半  3才  3才半 4才 4才半 5才 5才半 6才半 7才半 8才半 得 点O.61.83.96.9 12,4   13,5   14,9   17,3   17.9 1817

⑧a.毛髪のあること。b.毛髪が頭の輪がく以上に描出されていること。

⑨a.衣服があること。b.衣服の標徴2個以上。c.衣服全部。d.衣服の標徴4個以上。

⑩a.指があること。b.指の数が正しいこと。c.指の細部が正しいこと。d.おや指がそ     の他の指と区別されていること。e、掌が指および腕と区別されていること。

⑪a.胃あるいは腕の関節のあること。b.脚の関節、膝または股のあること。

⑫a.頭の面積が胴の半分以上でなく、また%以下でないもの。b、腕の長さが胴の長さと同     等以上で膝に達しないこと。c.脚の長さが胴の長さより大で、胴の長さの2倍よりも     短く、足の幅はその長さよりも小であること。d、脚と足とが輪郭をもって描かれ、足     の長さは足のかかとから甲までの高さより長いこと。そして足の長さが脚の全長の%以     下、%以上のもの。e.腕と脚のつり合いがよくとれて両者共に輪がくをもっているこ     と。

⑮踵をとくに描いたもの。

⑭a.描線A:描いた線がしっかりしていること。b.描線B:描線の一層進んで良好なも   の。c.頭の輪がくが正確に描かれているもの。d.胴の輪がくが正確に描かれているもの。

  e.腕と脚がいずれも輪がくを持ち、ことに胴にっくところが小さくならないこと。f.顔   貌が左右相称であること。

⑮a.耳があること。b.耳の位置およびその大きさの正しいこと。

⑮a.眼の細部、眉か鹿毛あるいはその両者のあること。b.眼の細部、瞳のあること。c.眼

  の割合、横の長さがその縦の幅よりも大であること。d.眼の向き、瞳の位置が両眼一致し

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  ていること。

⑰a.顎および顎、眼の、口の下に相当する広さのあること。b.顎の突出をとくに描出して   あること。

⑱a.横向きA:頭、胴および足が横向きに正しく描かれていること。b.横向きB:眼の形   を除く外、すべてが誤りなく横向きになっていること。

 (3〕ことばの流暢さ一一正答とみなされる応答1っにっき1点を与える。1つの項目で、9っ 以上の正答とみなされる応答があっても、9点とし、最高得点は36点とする。応答を判定する際 の一般的なルールは次の通りである。(小田ほか、1977)。

①正答とみなされる同じ応答が2っ以上ある場合には1点を与える。

②検査者が挙げた例を反復した場合には、できたとはみなさない。

③同じことばの反復を含むr連の物の名前(例:食パン・アンパン・クリームパン・○○パン)

  を言った場合には・この一連のことば全部で2点を与え乱

④一般的なカテゴリー名やそれに属する数個の物の名前(例:犬、コリー、ブルドック、プー   ドルなど)を言った場合には、一般的カテゴリー名(すなわち犬)を含めて、それぞれの応   答に1点すっ与える。

⑥2つ以上の同意語(例:ホットドッグとフランクフルト)を言った場合には、それぞれの応   答に1点すっ与える。

結果と考察

男女差  表2は、子ども画について、マッカーシー法とグッドイナフ法による検査結果を示 したものである。2つの採点法で最高点(20点と51点)が異なるので直接比較することはできな いが、それぞれの平均点に相当する大体の年令をみると、マッカーシー法では男児は4才半から 5才の間・女児は5才半に相当し・グッドイナフ法では男児は5:7才・女児は6:4才から61 8才の間に相当する。8Dをみると男女ともにグッドイナフ法の方が大きいが、これはグッドイ ナフ法の最高点の方が高いことによると考えられ糺

表2 子ども画の平均とSD

マッカーシー法  グッドイナフ法

平均 8D 平均 SD

男児13,08 2.1213,15 3,16 女児14,97 2.8817156 4.23 全体14,08 2.5115,81 4.23

男女の平均の差について亡検定を行ったところ、マッカーシー法では亡(120)=4.09、ρ<.01、

グッドイナフ法では亡(120)=6.44、ρ<.O1であって、ともに女児の方が有意に高かった。子

ども画の成績が男児よりも女児の方がよいという結果は杉村・豊田(1985)の研究でも得られて

(6)

いる。その研究では、4才から6才半までの幼児497名を半年ごとの年齢に区切って平均値を出 しているが、いずれの年齢区分においても女児の得点の方が高かった。本研究の結果と合わせて みると、少なくとも幼児期においては、子ども画で査定される非言語的概念形成、視覚一運動の 整合、身体像および細かな連動の整合といった能力については、男児よりも女児の方がすぐれて いると結論することができる。このように、どちらの採点法を用いるにしても男女のちがいが少 なくとも半年はあるので、子ども画の結果を解釈する際にこの点を留意しなくてはならない。

 表3は、ことばの流暢さについて項目別の平均とSDを示したものである。まず、全体の平均 はF(3,363)二33.31、ρ<.01で有意であった。表からわかるように、動物が最も高く、次が 食べ物であり、身体につけるものと乗り物が最も低い6このことから、この年齢の子どもは他の 概念と比べて動物の概念がよりよく身についていることが示唆される。別の見方をすれば、身体

にっけるものや乗り物と比べて、動物に対する関心がより強いことを反映しているのかもしれな い。男児の平均もF(3,174)=27.18、ρ<.01で有意であり、動物が最も高く、食べ物、乗り 物の順で、身体につけるものが最も低かった。女児もF(3,186)=12.20、ρ<.01で有意であ

り、動物が最も高く、食べ物、身体につけるものの順で、乗り物が最も低かった。

 項目別に男女の平均の差を検定したところ、身体につけるものが、亡(120)二2.29、ρ<.05 で、女児の方が有意に高かっれ他の3項目では有意差がなかった。以上のように、身体につけ るものと乗り物の順位が男女で逆になっていること、および身体にっけるものでは女児の方が高 かったことは、言語概念形成の能力のちがいというよりも、興味・関心のちがいによるのかもし

れない。

 しかし、4項目の合計でみると男児は13.73、女児は13.97であり、ほとんど同じであった。

このことは、少なくともマッカーシー知能発達検査のことばの流暢さで査定される言語的概念形 成、論理的分類、拡散的思考といった能力には男女のちがいがないといえる。子ども画の結果と 合わせてみると、この年齢の幼児は非言語的概念形成の能力では女児の方がすぐれているが、言 語的概念形成の能力では男児と女児がほぼ同じてあると結論することができる。

表3 ことばの流暢さの平均とSD

食 べ 物   動   物 身体につける 乗り物

平均 SD 平均 8D 平均 8D 平均 SD

男児3,63 1,69 4.44 女児 3,49 1,48 4.32

1,36    2,64     1,48 1,65    3,27     1.53

3,03    0,92 2,89    1.16

全体 3,56 1,58 4,38 1,52 2,97 1,54 2,96 1.05

 テスト間の相関  表4は、人物画のマッカーシー法、グッドイナフ法およびことぱの流暢さ の間の相関を男女別に示したものである。表から明らかなように、男児と女児はほぼ同じ結果で あり、子ども画についてはマッカーシー法とグッドイナフ法の間には有意で高い相関があった。

このことから、マッカーシー法で採点してもグッドイナフ法で採点しても、相対的には類似した

(7)

結果が得られるといえる。

 子ども面とことばの流暢さの闇に正の相関があるが、いずれも有意ではなく、同じように概念 形成能力といっても、子ども画で査定される非言語的な能力とことぱの流暢さで査定される言語 的な能力との間にはあまり関係がないことが示唆される。この結果が一般的であるならば、幼児 の概念形成能力を的確に査定するのには、言語性テストと非言語性テストの両方を実施しなくて

はならない。

       表4 テスト間の相関(r)

テ ス ト 1子ども画(M)

2子ども画(G)

3ことばの流暢

1    2    3 76

77

15   03

13 14

㈲子ども画(M)はマッカーサー法、子ども画(G)

 はグッドイナフ法を示す。左下は男児、右上は女児  の相関。

要      約

 幼稚園年長児122名(男児59名、女児63名)にマッカーシー知能発達検査の下位テストである 子ども画 と ことばの流暢さ を実施し、男女差および相互の関係を分析した。子ども画に ついては、マッカーシー法で採点した場合もグッドイナフ法で採点した場合もともに、男児より も女児の方が有意によい成績であった。一方、ことばの流暢さでは全体的にみると男女のちがい がなかった。これらの結果から子ども画で査定される非言語的概念形成の能力は女児の方がすぐ れているが、ことばの流暢さで査定される言語的概念形成の能力は男児と女児がほぼ同じである と結論できる。男児も女児もともに、子ども画の榑点とことばの流暢さの得点の間には有意な相 関がなかったことから、同じように概念形成能力といっても、子ども画で査定される非言語的な 能力とことばの流暢さで査定される言語的な能力との間にはあまり関係がないことが示唆される。

引 用 文 献

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杉村健・豊田弘司 1985マッカーシー知能発達検査における 子ども画 の分析  奈良保育学   院研究紀要,第2号67−81.

<付記> 資料の収集にあたり奈良市立都跡幼稚園、佐紀幼稚園の協力を得ました。厚く感謝致

 します。

参照

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