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マッカーシー知能発達検査における ことばの流暢 さ の分析
著者 豊田 弘司, 清水 益治
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 27
ページ 151‑159
発行年 1991‑03‑01
その他のタイトル Analyses of Verbal Fluency in McCarthy scales of children's abilities.
URL http://hdl.handle.net/10105/6766
マッカーシー知能発達検査における
ことばの流暢さ′′ の分析*
豊 出 弘 司日・清 水 益 治日ホ
(心理学教室) (奈良保育学院)
要旨:マッカーシー知能発達検査(MSCA)の下位検査の中で、言語尺度に対 応する ことばの流暢さ(verbalfluency)〝検査について4歳から6歳6か 月の幼児を対象に発達的な分析を行った。この検査は、一定時間内に特定のカ テゴリーに属する事例をできるだけ多く口頭で答えさせるものであった。分析 の結果、正答した事例の数は、幼児期全般に渡ってゆるやかに増加する傾向が 示された。また、思考の柔軟性得点(言及したカテゴリ一致)は、非常にゆる やかな発達傾向が示された。さらに、正答した事例数と柔軟性得点の相関は、
年齢とともに低下し、年長になるにつれて柔軟に反応するよりも、一定のカテ ゴリー内の事例を徹底的に言及するという方略によって正答の事例を得ている ことが示された。
キーワード:マッカーシー知能発達検査、ことばの流暢さ、言語尺度
マッカーシー知能発達検査は、McCarthy Scales of Children s Abilities(MSCA)のE]本 版(小田・茂木・池川・杉村,1977)である。この検査は、年少児でも楽しみながら飽きること
なく、テストが受けられるように工夫されており、幼児の知能測定には適した検査であり、以下 に示したような5つの能力を査定することができる尺度に割り当てられている。(1)言語尺度:言 語的刺激を理解し、処理する能力と自分の考えを言語で表現する能力を査定する。(2)知覚一遂行 尺度:具体的なものの操作を通して、視覚一運動の整合と非言語的な推理能力を査定する。(3)数 量尺度:数を扱う能力と数概念の理解力を査定する。(4)記憶尺度:多種の視聴覚刺激についての 短期記憶を査定する。(5)運動尺度:粗大運動と細かな運動の整合を査定する。これらの尺度のう
ち、言語、知覚一遂行及び数量の3つの尺度を合成したものが一般知能尺度であり、これによっ て全体的な知能機能が測定され、一般的知能として表される。
このように、MSCAは幼児用の知能検査としてはかなり診断的な良い検査であるが、個別検 査であるが故に実施や解釈にはかなりの時間と労力を要する。そこで、できるだけ検査項目を限 定し、そこからおおまかな知能の程度を推測する工夫が必要になる。著者らの研究(豊田、1986、
Analyses of VerbalFluencyin McCarthy scales of children s abilities.
HiroshiTOYOTA(Department of Psychology,Nara University of Education,Nara)
ヰ日MasuharuSHIMIZU(Nara Teachers College of Early Childhood Education)
1987a;杉村・豊田、1985;豊田・澤田、1989)では、現場の保育者がこのMSCAの診断的な側 面を活用し、少しでも子どもの発達理解に役立っために、MSCAの下位検査に注目してきた。
そして、各年齢ごとの平均得点を算出して、発達診断に役立っ資料を提供してきたのである。例 えば、豊田(1986、1987a)は、知覚一遂行及び運動尺度を構成する下位検査のうちの、、図形の 模写〝に注目し、幼児の模写図形から発達の程度を推定するための資料を提供した。また、杉村・
豊田(1985)は、 子ども画〝について、豊田・澤田(1989)は ことばの記憶〟 の第Ⅱ部(物 語記憶)について発達診断に役立つ資料を提供している。
本研究では、これまで検討されてこなかった言語尺度を構成する下位検査である ことばの流 暢さ〝 に注目して、発達診断に役立つ資料を提供しようとするものである。なお、一般的には、
「ことばの流暢さは、拡散的ないし創造的思考の一面である」とみなされている。ただし、この 検査は一定時間内に特定のカテゴリーに含まれる事例をできるだけ多くあげさせるものであるの で、カテゴリーに関する知識に関して、量及び質的に発達的な分析ができるようになっている。
量的分析とは、カテゴリーに関する知識の量を測定するものであり、質的な分析とは、知識の構 造及びその利用に関する分析である。前者の指槙は被験児のあげた事例数であり、後者のそれは 後述する柔軟性得点、すなわち被験児によって言及されたカテゴリー数である。本研究では、上 述した2つの分析から、知識構造を発達的に検討することを目的とするが、まず、分析1では、
量的な分析を行い、カテゴリーに関する知識の量を発達的に検討する。
分 析 1
方 法
調査対象 調査対象は、1979年から1989年までの過去11年間にMSCAを受検したN保育学院 附属幼稚園の幼児であり、のべ人数は509名であった。その内訳は表1に示されている。
実施法 検査は日本版手引に従い、以下に示すような教示を与え、個別的に実施された。
(1)食べ物 「私が、やめ、と言うまでに、あなたは、どれだけ多くの食べ物の名前を思いつく でしょう。パンとか、じゃがいもとかいうように言ってください。わかりますね。用意、始め!」
表1調査対象の年齢別、性別の人数
年齢 4 41/2 5 51/2 6 6り2
3−9−16 4−3・16 4−9−16 5−3−16 5−9−16 6−3−16
範囲 1 1 1 1 1 1
4−3−15 4−9−15 5−3−15 5−9−15 6−3−15 6−9−15
男児 39 40 43 45 56 50
女児 19 28 40 43 47 59
合計 58 68 83 88 103 109
(2働物 「よくできました。今度は、私が、やめ、というまでに、あなたは、どれだけ多くの 動物の名前が言えるでしょうか。措とか、熊とかいうように言ってください。わかりますね。用
意、始め!」。
(3)からだにつけるもの 「今度は、私が、やめ、というまでに、あなたは、できるだけ多く、
からだにつけるものを言ってください。靴、というように言ってください。わかりますね。用意、
始め!」。
(4)乗り物 「今度は、私が、やめ、と言うまでに、あなたは、どれだけ多くの乗り物の名前を 思いっくでしょうか。バスというように言ってください。わかりますね。用意、始め!」。
なお、上記の4項目のどれにおいても、教示を与えた後、ストップウォッチを押し、20秒たっ たら、「やめ!」と言う(日本版手引P126〜127)。
採点法 日本版手引の採点法(日本版手引P127〜131)に従って採点した。採点に関する一 般的なルールは以下に示す通りである。
(1)正当とみなされる応答が2つ以上ある場合には、1点だけを与える。
(2)検査者が上げた例を反復した場合には、できたとはみなさない。しかし、検査者が挙げた例 によく似た応答(例がじゃがいもで、マッシュポテトという応答)をした場合には、できたとみ なす。
(3)同じことばの反復を含む一連の物の名前(例:ボート、フェリーボート、セイルポートなど)
を言った場合には、この一連のことば全部で、2点を与える。
(4)一般的カテゴリーやそれに属する数個の名前(例:犬、コリー、ブルドッグ、プードルなど)
を言った場合には、一般的なカテゴリー(すなわち犬)を含めて、それぞれの応答に1点ずつを 与える。得点は、正答とみなされる応答1つにつき1点を与える。各項目で正答とみなされる応 答が9つまでで、1つの項目で、9つ以上の正答とみなされる応答があっても、9点とする。
結果と考察
項目ごとの発達的変化 上記の採点法にしたがって、各項日ごとの得点を年齢ごとに示したの が表2である。どの項目においても、順調に得点の上昇が認められ、幼児期において ことばの 流暢さ〝が着実に伸びていることがうかがえる。なかでも項目3( からだにつけるもの′′)につ
いては、4歳では平均すれば1点程度であるのに、6歳半になると4点にまで到達しており、そ の発達の程度は、他の項目に比べて大きいといえる。項目1( 食べ物〝)や項目2( 動物〝)に ついては4歳から比較的得点が高く、幼児期の初期の段階においてもかなり知識量の多いことが
うかがえる。一方、先にのべた項目3( からだにつけるもの′′)は、得点の上昇は著しいが、6 歳半においても平均すれば4点にとどまっており、知識の量としては多くないことがうかがえる。
同様に、項目4(、、乗り物〝)についても、得点が低く、このカテゴリーの知識量の少なさが示さ れている。
ところで、ある特定のカテゴリーに含まれる事例名を多く答えることができるというのは、そ
のカテゴリーに関する知識の量が多いということとともにそのカテゴリーの構造の安定性を反映
表2 年齢別、性別、項目別、平均正答数(標準偏差)
項目 年齢 4 4り2 5 51/2 6 6リ2 男児 2.9(1.6) 3.4(2.0) 3.6(2.0) 3.9(2.2) 4.1(1.9) 4.8(2.5)
食べ物 女児 3.3(1.5) 3.4(1.5) 3.8(1.8) 3.4(1.9) 4.2(1.7) 4.4(1.9)
平均 3.1 3.4 3.7 3.6 4.1 4.6 男児 3.4(1.3〉 3.5(2.0) 4.4(1.7) 4.8(2.1) 4.7(1.8) 5.6(2.0)
動 物 女児 2.7(1.6) 3.5(1.4) 3.7(1.7) 4.20.8) 4.3(1.3) 4.8(1.7)
平均 3.1 3.5 4.1 4.5 4.5 5.2 男児 1.1(1.3)1.8(1.5) 2.3(1.9) 2.9(1.9) 3.1(2.0) 4.2(1.9)
からだ 女児 1.2(LO) 2.2(1.7) 2.2(1.6) 2.5(1.6) 3.2(2.0) 3.8(1.7)
平均 1.1 2.0 2.2 2.7 3.2 4.0 男児 2.4(1.5) 2.6(1.5) 2.7(1.4) 3.1(1.7) 3.3(1.5) 3.8(1.8)
乗り物 女児 1.8(1.3) 2.3(1.2) 2.5(1.3) 2.6(1.5) 2.7(1.3) 3.2(1.3)
.乎均 2・1 2・5 2・6 2・8 3・0 3・5 注)平均は重みをつけない平均である。
していると考えられる。安定性とは、カテゴリー名とそのカテゴリーに含まれる事例との結合が 非常に強固であり、活性化拡散の理論(Anderson,1983)から考えれば、カテゴリ一名の活性 化によって事例の活性化水準が急速に上昇する構造であるといえる。そのような安定した構造に 含まれる事例は、記憶の際に同じカテゴリーに含まれる他の事例とともにまとまり(体制化)を 形成しやすいといえる。最近の記憶研究の枠組みから言えば、ある特定の項目(この場合は、同 じカテゴリーに属する他の事例)に関係する情報(この場合は、カテゴリ一名)を付加するとい う項目間精緻化の基盤を提供する構造であるといえるであろう(Ritchey,1980;豊田、1987b)。
ただし、上述したこれらの得点の変化が知識量及び知識構造の安定性の変化にすべて対応して いると考えるのは、早計であろう。頭の中に貯蔵されていても、その情報を引き出す(検索する)
ことができないという可能性が考えられる。このような検索失敗は、小学生を被験者とした記憶 研究において指摘されており(Kobasigawa,1974)、それより年少の幼児期においては、その可 能性はより高いと考えられる。したがって、知識の量の増加とともに、検索の能力の発達という 観点からもこのデータをとらえる必要があろう。
項目間の関係 年齢ごとの各項目間の相関係数が、表3に示されている。この裏から明らかな ように、年齢の増加とともに相関係数が大きくなっている。これは、年長になるにつれて、カテ ゴリー間の違いは少なくなり、どのカテゴリーについても知識量及び知識構造の安定性とともに 似通ってくることを示している。
ところで、Roschら(Rosch,1978;Rosch et.al,1976)は、下位概念、基礎概念及び上位
表3 正答数の項目間の相関
項目対 4歳 5歳 6歳 食べ物一動 物
食べ物−からだ 食べ物一乗り物 動 物−からだ 動 物一乗り物 からだ−乗り物
.朋5 .435 .512
.229 .321 .429
.229 .303 .購3
.160 .258 .443
.319 .437 .購8
.102 .417 .375
概念からなる階層的なカテゴリー構造を仮定しているが、本研究で扱ったカテゴリー名は、Ros chの区別でいえば、上位概念に対応している。したがって、本研究で示された発達的な変化は、
上位概念についての発達に限定されるものであるといえよう。ただし、年齢とともに、これらの カテゴリーが似通ってくるということから、これらの上位概念を包摂するさらに上位の概念の発 生を推察できよう。したがって、本研究の結果は、Roschの主張する階層的カテゴリー構造の傍 証となりうると考えられる。
分 析 2
Kaufman&Kaufman(1977)によれば、この下位検査は質的な分析が可能である。例えば、
項目1で 食べ物′′の名前を言うように求められたとき、同じように5個の名前を言ったとして も、ある子どもは リンゴ、バナナ、ミカン、ブドウ、ナシ〝 というように果物の名前ばかりを 言うかも知れない。別の子どもは キャベツ、さつまいも、だいこん、にんじん、はくさい〟 と いうように野菜の名前ばかり言うかも知れない。また別の子どもは りんご、キャベツ、鳥肉、
カレー、チョコレート〟 というようにさまざまなカテゴリーから名前を言うかも知れない。分析 1の量的分析では、どの子どもも5点として処理されるが、質的な分析を行うと、最初の子ども は果物に、次の子どもは野菜に興味があると考えられる。また、最後の子どもは興味という点で は何とも言い難いが、いろいろなカテゴリーに柔軟に思考が働くと考えられる。このように質的 な分析を行うと、子どもの興味や柔軟な思考能力が査定できる。そこで本研究では、この検査に おける柔軟性に焦点を当てて、発達差、性差、及び項目間の関係を調べる。臨床の現場で子ども を判定したり、診断したりするときには、1つの検査からなるべく多くの情報を得ることが求め られる。その際にこのような柔軟性についての情報は有効なものとなるであろう。
本研究の第2の目的は量的な分析で測定された能力、すなわち正答数と質的な分析によって測 定された能力、すなわち柔軟性得点の関係を明らかにすることである。ある項目について多くの 言葉を産出できるからといって、必ずしもその項目について柔軟に思考が働くとは限らないかも
しれない。そこで本研究では2つの測度の相関を調べる。
方 法
調査対象 先の分析で用いた4才児126名(男児79名、女児47名)5才児171名(男児88名、女 児83名)6才児212名(男児106名、女児106名)である(表1参照)。
実施法 マッカーシー知能発達検査の手引に従って実施した(分析1参照)。
採点法 Kaufman&Kaufman(1977)が示したリストを参考に、以下の2つの制限の下で、
表4のようなカテゴリーリストを作成した。①子どもの反応の中に全く存在しないカテゴリーは 除き、子どもの反応の中によく現れるカテゴリーを付け加えた。例えばKaufman&Kaufman は、食べ物のカテゴリーとして調味料を含めたが、調味料について言及した子どもはいなかった ので、リストからは除いた。また食べ物の項目において、多くの子どもは「ハンバーグ」、「カレ ー」などのすでに調理されたものを言及したために、これらを調理食品としてリストに付け加え た。②日本で文化的に適合しないと思われるカテゴリーは除き、適合すると患われるカテゴリー を含めた。Kaufman&Kaufmanは動物のカテゴリーとして、野生動物(動物園にもいるが、
アメリカでは野生動物とみられるもの、シマウマ、リスなど)をあげているが、日本において、
この意味の野生動物はほとんどいないために、家の周りでみられるは乳類とした。
結果と考察
言及したカテゴリー数を柔軟性得点とした。例えば、 食べ物′′の項目において、 リンゴ、バ ナナ、ミカン というように果物ばかりを言った場合は1点、 リンゴ、キャベツ、カレー とい うように果物、野菜、調理食品をあげた場合は3点とした。項目ごとに平均柔軟性得点(標準偏 差)を年齢別、性別に示したものが表5である。
まず全体的に分析1の結果と比べると、年齢が高くなっても柔軟性得点はあまり変化しないこ とがわかる。各項目における生成される事例数は年齢によってかなり増加するが、柔軟性はあま り変化しないといえる。
表4 柔軟性を調べるカテゴリーリスト
1 .食 べ 物 2 .動 物 3 . 体 に つ け る物 4 .乗 り物 A . 肉 ・魚 A .動 物 園 で 見 られ A . 普通 の用 品 A .地 上 の 乗 り物 B .果 物 る哺 乳 類 B . 肌着 ・ナ イ トウ (モ ー タ ー付 き)
C .野 菜 B .家 の回 りで 見 ら エ ア B .地 上 の乗 り物 D .デ ザ ー ト ・キ ヤ れ る哺 乳 類 C .上 着 (モ ー タ ー な し)
ンデ ィ C .鳥 類 D . ア クセ サ リー C .空 中 の乗 り物 E .乳 製 品 ・卵 D .爬 虫類 ・両 性 類 E .特 別 な 場 合 に 着 D .水 中 の 乗 り物
F .小 麦粉 製 品 ・魚類 る物 E .動物
G .調 理 食品 E .昆 虫 類 F .娯 楽 の 乗 り物
表5 年齢別、性別、項目別、平均柔軟性得点(標準偏差)
項目 年齢 4 4リ2 5 51/2 6 6リ2 男児 1.8(1.0)1.8(1.0)1.8(0.9) 2.1(1.2) 2.2(1.0) 2.1(1.0)
食べ物 女児 2.1(0.9)1.7(0.9)1.9(0.9)1.8(1.0)1.7(0.9) 2.3(1.0)
平均 1.9 1.8 1.9 2.0 1.9 2.2 男児 1.3(0.5)1.5(0.9)1.8(0.8)1.6(0.8)1.9(0.8) 2.2く1.5)
動 物 女児 1.4(0.8)1.3(0.7)1.7(0.9)1.8(0.9)1.9(0.6〉 1.9(0.8)
平均 1.4 1.4 1.8 1.7 1.9 2.0 男児 0.9(0.9)1.2(1.0)1.5(1.1)1.9(1.2)1.9(1.0) 2.3(1.0)
からだ 女児 1.0(0.8)1.4(1.0)1.4(0.9)1.5(0.9)1.9(1.1〉 2.1(1.0)
平均 0.9 1.3 1.5 1.7 1.9 2.2 男児 1.3く0.8)1.4(0.7)1.5(0.7)1.7(1.0)1.7(0.8)1.5(0.7)
乗り物 女児 1.2(0.6)1.5(0.8)1.5(0.7)1.4(0.8)1.4く0.6)1.6(0.7)
平均 1.2 1.4 1.5 1.6 1.5 1.6 注)平均は重みをつけない平均である。
食べ物〟の項目では、年齢及び性による変化はほとんど見られず、いずれの年齢でも2点程 度である。最も多く言及されたカテゴリーは果物であり、次いで野菜が多かった。t.この年齢の幼 児にとって、食べ物とは主に果物と野菜であると言える。興味深かったのは 果物、リンゴ、ミ
カン… というように、カテゴリー名とその事例を同時に言及する子どもがいた事である。杉村・
清水(1988)は、「りんごとみかんは両方とも何ですか」と問い、「果物」という概念名を答えさ せる抽象能力検査を幼児に実施し、その結果から、幼児のカテゴリーは大入が考えるような階層 構造をなしていないと考えているが、本研究のような事例名を産出させる課題でも同じことが考
えられる。
、、動物〟 と 体につけるもの〟の項目では、わずかながら発達的な変化がみられた。すなわち、
4才児では1カテゴリーしか言及できなかったのに対して、6才児では2カテゴリー程度に言及 した。 動物〟については、4才児にとってそれは動物園で見られる哺乳類に限られるが、5才、
6才になるとペットや爬虫類、昆虫なども動物の仲間であるとわかるようになってくるのであろ う。 体につけるもの〟では、表2に示すように4才児ではまだ正答数が1程度であり、1つの 事例名にしか言及できなかったために、柔軟性得点も小さくなったのであろう。年齢が増すと、
正答数も増加し、それにともなって、柔軟性も増加したのであろう。
乗り物〟の項目では、発達的変化があまり見られず、いずれの年齢でも得点は1点程度であっ
た。この項目で最も多く言及されたカテゴリーは、地上の乗り物(モーター付き)であった。幼
表6 柔軟性得点の項目間の相関 項目対 4歳 5歳 6歳 食べ物一動 物
食べ物−からだ 食べ物一乗り物 動 物−からだ 動 物一乗り物 からだ−乗り物
.206 .190 .134
.103 .305 .294
.042 .165 .210
.031 .156 .238
−.030 .127 .140
.077 .318 .207
児にとって乗り物とは、タクシー、自動車、トラックなどのモーターのついた地上の乗り物を指 すと考えられる。またこの項目は他の項目と比べても柔軟性得点の値が小さいことがわかる。幼 児には柔軟に思考を働かせやすい項目と働かせにくい項目があり、乗り物はどちらかというと後 者の項目に属すると思われる。
人数を増やすために、性と抜歳の年齢を込みにして、項目間の相関係数(r)を求めた(表6)。
全体的にみてヤあまり高い値ではない。正答数の相関係数(表3)と比べても、いずれも柔軟性 得点の方が小さい値である。このことから柔軟性は項目間であまり関係がないといえる。すなわ ち、ある項目で柔軟に思考が働いたとしても、別の項目では必ずしも柔軟に思考が働くとは限ら ないといえる。
表7は正答数と柔軟性得点の相関係数(r)を示したものである。最も値が大きかったのは、
体につけるもの〝の項目であった。これは正答数や柔軟性得点自体の値が小さいので、分布に 依存していると考えられる。逆に最も値が小さかったのは、 動物〝の項目であった。このこと から動物の名前をたくさん知っているからといっても、さまざまなカテゴリーの動物を知ってい ることにはならないといえる。興味深いのは、いずれの項目でも、年齢が高くなるにつれて、相 関係数の値が小さくなることである。4才児では柔軟に反応することで、正答数も増加するが、
6才児では柔軟に反応することが、必ずしも正答数の増加に結びつかないことが示唆される。む しろ6才児はカテゴリーを利用しそのカテゴリー内の項目を徹底的に産出するという方略を用い ることで、多くの正答を得ているのであろう。
表7 正答数と柔軟性得点の相関 項目 4歳 5歳 6歳 食べ物
動 物 からだ 乗り物
.676 .733 .544
.524 .507 .269
.902 .880 .780
.619 .610 .媚4
付記 本研究はMSCAの日本語版著者である杉村健教授(心理学教室)の主催する「マッカー シー知能発達検査の基礎的研究」と連携したものであり、同教授に心から感謝の意を表します。
また資料の収集には心理学教室の学生と奈良保育学院附属幼稚園(奥村肯園長)の協力を得まし た。厚く御礼申し上げます。
引 用 文 献
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