金 融 政 策 の 理 論
阪 口 伸 六 郎
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は し が き
金本位制度の自動調整作用 管理通貨制度の自動調整作用 通貨主義対銀行主義(通 貨政策) 金融政策の短期的課題
金融政策の長期的課題
む す び
は し が き
金 融 政 策 の短 期 的 な 目標 は 金 本 位 制 度 の調 整 作 用 に よって 自動 的 に達 成 さ れ る と考 え られ てい たが,今 日の 金 融 政 策 の課 題 は 自動 的調 整i作用 に 代 る政 策 を 見 出す 点 に あ る とい っ て よい で あ ろ う。
最 近 は 経 済成 長 に 伴 って長 期 的 な 金 融 政 策 の 効 果 が 注 目され て きた が,日 本 経済 の 現 実 に 照 ら してみ る とき 経 済 成 長 の 主 体 は 産 業 に あ るの で あ るか
ら,旧 来 的 な モ ネ タ リーサ イ ドの ワク内 ばか りで な く,産 業 の体 質 を 真 に強 め る よ うな 財 政金 融 一位 の 対 策 を 講 ず べ きで あ って,金 融 政策 の基 本 的 な再 検 討 の必 要 性 が 意 識 され てい るの で あ る。
した が って金 融 政 策 の課 題 を短 期 的 な課 題 と長 期 的 な課題 とに分 け て検 討 す る こ とにす べ きで あ る と考 え る◎
1.金 本 位 制 度 の 自動 調 整 作 用
古 典 派 の経 済 学 者 は 経 済 活 動 の 目的 を国 民 経 済 の消 費 に 求 め て,生 産 ・分
配 ・交 換 に つ い て論 じて い るが,古 典 派 経 済 学 の主 張 は,非 常 に精 密 な数 学
的 静 態 均 衡 概 念 に も とつ い て い る もの で は な く,自 由 な 個 人 の創 意 を 無 限 に 発 揮 せ しめ る 自由経 済 の体 制 の 実 現 に あ っ た とみ て よい 。 そ れ 故 に近 代 理 論 の研究 と分 析 は,古 典 派 の 自 由経 済 の 体制 を よ り深 く進 め て い るが,そ の 理 論 と して の経済 分 析 に 対 して は,今 一 度古 典 派 の政 策 理 論 の基 準 を 想 起す る 必 要 が あ る と痛 感 す る次第 で あ る。
金 本 位 制 度 の 自動 調 整 作 用 は,自 由経済 の 体制 に対 す る信 頼,す なわ ち, 消費 者 の選 択 の 自由 と生 産 者 に と って の選 択 の 自由 とに よっ て機 能 され るか ら,そ の機能 は市 場 メ カ ニズ ム と自由 競争 の 力 に よっ て もた ら され る と考 え られ てい る と判 断 され るの で あ る。
金 本 位 制 下 に あ っ ては,銀 行 の貸 出可 能 量 は,金 の存 在 量 に よって制 限 さ れ て い た の で あ るか ら,貨 幣利 子 は運 転 資金 に対 す る需 要 と供 給 とを 均 衡 せ
しめ る価 格 で あ った 。
通 貨 主 義 に よれ ば貨 幣 と して もっ と も完 全 な もの は正 貨 で あ り,正 貨 の み が流 通 す る貨 幣制 度 を 理 想 的 で あ る とみ る結 果,金 の 自動 的 調 整 作 用 を 通 じ て 各 国 の物 価 の安 定 と国際 収 支 の均 衡 とが達 せ られ る とみ て い るので あ る。
この 考 え方 に よれ ば,正 貨 の ほか に銀 行 券 が 流 通 してい る場 合 で あ って も, 金 の国 際 間 に お け る流 出 入 に応 じて貨 幣量 の増 減 を 引 き起 こす よ うに な らな け れ ば な らな い 。そ の た め に は発 券 銀 行 を して,発 行 銀 行 券 と同額 の正 貨 準 備 を 保 有 せ しめ る全 額正 貨 準 備 制 度 で な くて は な らない 。
銀 行 主 義 に お い て は,銀 行 預金 の 存在 が正 貨 や 銀 行 券 と同様 に 物価 に影 響 を与 え る もの と考 え るか ら,し た が って 金 の退 蔵 につ い て も同様 に 考 え て, 通 貨 主 義 の説 く金 に よ る貨 幣 量 の統 制 の有 効 性 を否 定 して,銀 行 は確 実 な商 業 手 形 を割 り引 くこ とに よって 銀 行 券 が発 行 され る限 り,取 引 きの 必 要量 を 越 え て銀 行 券 が発 行 され る こ とは あ りえな い,と 主 張 す るの で あ る。
通 貨主 義 に よれ ば 国 際間 に配 分 され た 金 に 基 づ い て銀行 券 が 供 給 され,銀
行 主 義 に よれ ば 生 産物 の 生産 も し くはそ れ に よって 振 り出 され た 手形 に基 づ
い て 銀 行 券 が供 給 され る もの と解 され,両 主 義 の見 解 は,た が い に あ い対 す
る もの の よ うに理 解 され て いた の で あ った 。 そ れ 故 に通 貨 主 義 対 銀 行 主 義 の 論 争 に お い ては,景 気 の消 長 を巡 って い ろい ろ な論 議 が 提 起 され て い る こ と
は周 知 の通 りで あ る。
古 典 派 経 済 学 者 の大 多 数 は 金 属 貨 幣 を 支持 した が,リ カ ー ドや 通 貨 主 義 者 は 紙 幣発 行 の厳 重 な取 締 りに賛 成 した 。 これ に 対 して ツ ー クや 銀 行 主 義 者 は 自由 な銀 行 券 の発 行 を 支 持 した の で あ る。 しか し 通 貨 主 義 者 も 銀 行 主義 者 も,貨 幣 お よび信 用 に関 す る問題 の重 要性 を充 分 に認 識 してい た が,通 貨 の 供 給 や規 制 につ い て は 両 者 の 意 見 が 分か れ て い た のみ で 政 策 一般 に対 す る態
度 と して,そ れ 以上 に は 発 展 しな か った ので あ る。
古典 派 の 人 び とは 政 策 理 論 の 基 準 を 効用 の原 理 に求 め て,法 律 も制 度 も行 動 も この基 準 に よっ て判 断 す るか ら,目 的 に つ い て も手 段 に つ い て も個 人主 義 者 で あ った 。そ れ 故 に私 有制 度 と市場 の メカ ニズ ムは,消 費 に つ い て 自由 選 択 制 度 を確 立す るた め の必 要 な 生 産 組織 で あ る。そ して この 個 人 主 義 的 生 産 組 織 が 充 分 に機 能 す るた めに は,法 律 と秩 序 の制 度 と国家 機 能 との複 合 体 が前提 とされ て い るの で あ る。 従 っ て 自 由経 済 の体 制 につ い て は,個 人 的 自 由 を社 会 的 幸 福 に役 立 たせ るた め の ル ール の 体 系 の も とに生 産 組 織 が構成 さ れ て い る と考 えて い る。
古典 派 の 自動 調 整作 用 は 物 価 と金 利 に 反 映 され て 国 内経 済 に 不 均 衡 が 生 じ・そ の 国内 経 済 の不 均 衡 が 国 際収 支 の変 化 を通 じて 自然 に 国 内 経済 の不 均 衡 を正 し,そ の結 果 国際 収 支 の均 衡 を回復 す る と考 え て い るか ら,金 融 政 策 と して は 均 衡 回復 作 用 を営 んで い る金利 の動 向 に 追随 して,金 融 政 策 を運 用 して 金 融 調節 を して おれ ば よか った ので あ った 。 従 って 金 本位 制 下 の政 策 の 基 本 理 論 は 通 貨 主 義理 論 で あ る こ とは説 明 を要 しな い 。
2.管 理 通 貨 制 度 の 自動 調 整 作 用
今 日の金 融 政 策 は 古典 的 な経 済 の 自動 調整 作 用 に充 分注 意 を払 い,経 済 の
自律 的 均 衡 回復 力 に 従 って 運 用 す べ きで あ るが,そ れ だ け で は 不 充 分 で あ
るo
金 の束 縛 を脱 して通 貨 の数 量 を物 価 安 定 を 目指 して 人 為 的 に管 理 す るに つ れ,資 本 主 義 経 済 が 金 本位 制 下 の如 く 自由主 義 的 に 円滑 に 推 移 しな くな る と,金 融 政策 の手 段 とされ る もの が 通 貨 量 だ け で な く,財 政 が 金 融 を補 うも の と して 財 政 々策 と金 融 政 策 が 密 接 な関 係 を もつ に 至 って,通 貨 の量 だ け で な く投 資 の量 や 質 を 問題 とす るに 至 った 。
今 日で は経 済成 長 が 完 全 雇 用 や 物 価 の安定 と並 んで 重 要 な 経 済 政 策 の 目標 と考 え られ るか ら,成 長 促 進 のた め の財 政 金 融 政 策 の有 効性 と限界 に つ い て 充 分 な検 討 を加 えな け れ ば な らな い 。
管 理 通 貨 制 度 の も とで は,貨 幣 当 局 は必 要 に応 じて あ る程 度 自由 に 国 内通 貨 の供 給 を増 減 す る ことは で き るが,し か し金 ・外貨 を 自由 に創 出す る こ と は で きな いか ら,そ こで 国際 収 支 が 悪 化 して金 ・外 貨 が 継続 的 に流 出す る場 合 に は,貨 幣 当 局 は 金 融 を 引締 め ざ るを え な い 。そ の結 果 有 効 需 要が 減 少 し 失 業 の増 大 は避 け られ な くな るの で あ るが,現 下 の 固定 為 替 レー トの も とで は貨 幣 当 局 が 自由 に金 融 政 策 を 行 な い うる余 地 は 少 な いか ら,金 融 政 策 は 国 際 収 支 の動 向に よって 左 右 され るに 至 るので あ る。
戦後IMF体 制 が 登 場 した の で あ るが,IMF体 制 では 為 替 レー トにつ い ては 金 為 替 本 位制 度 下 と異 な らな い か ら,現 下 の体 制 の も とで 国 々の為 替 レ
ー トが 妥 当 な水 準 に 決 め られ て い な い 場 合 は ,国 内金 融 は 国際 均 衡 と矛 盾 を 生 じて完 全 雇 用 を達成 す る こ とが で きな くな る。そ の結 果 金 融 政 策 を有 効 な ら しめ るた めに は,金 融 政策 の 特徴 か ら くる影 響 を特 に 考 え る ことが 必 要 と な る。
管 理 通 貨 制 度 の政 策 の 基本 理 論 と しては 通 貨 の供 給 は 金 に よっ て規定 され な い ので あ るか ら,財 貨 の側 に導 かれ る結 果 銀 行 主 義 理 論 に よって 行 な われ
るべ きで あ る。
管 理 通 貨 制 度 の体 系 に従 って 通 貨 制 度 の 構 造 は 如 何 に 要 求 せ られ るで あ ろ
うか 。金 本 位制 度 に お い ては,金 に よって 調 整 され 同時 に 財貨 の 動 きに よ っ
て調 整 され て いた ので あ った か ら,通 貨 は 全流 通 経済 の体 系 に よって 規 定 さ れ,金 は 規 準 を あ た え るに す ぎな か った の で あ る。 管 理 通 貨制 度 に お い て
は,銀 行主 義 理 論 に よっ て通 貨 供 給 を行 な い物 価 水 準 の 安定 を 目標 と して管 豊 理 す るので あ る。
経 済 的 自由 主義 に よ る均 衡 達 成 が最 良 で あ る ことは ケイ ソズ も認 め るの で あ るが,古 典 派 の前 提 と した あ らゆ る弾 力性 が 失 われ た の で あれ ば,長 期 の 不 均 衡 の与 え る影 響 に は堪 え えな い の で あ るか ら,均 衡 回復 を阻 止 す る作 用 を除 去す るた めに 新 しい均 衡 へ の 途 を求 め る必 要 を生 じた ので あ る。 そ の た め に ケイ ンズ は この新 しい途 に お い て通 貨 主 義 と銀 行 主 との調 和 を 見 出そ う
と努 力 した 。 通 貨 主 義 の 問題 点 は,国 際 均 衡 と対 内均 衡 とが 同時 達成 可 能 と 考 え る とこ ろに あ り,銀 行 主 義 の 問題 点 は,生 産 に 要す る時 間 と種 類 が 消費
と一 致 しな い が た めに,市 場 に お け る需 要 に 応 ず る こ とが価 格 水 準 の安 定 と な りえな い こ とに あ るので あ る。
そ こで ケイ ンズは 速 か に繁 栄 へ の途 を 開 くた め に,貯 蓄 と投 資 の 均 等 の 条 件 を 求 め た の で あ る。 しか し不 況 の部 分 的 回復 は 政 策 な しの 時 の 経過 に よっ て 期 待 す る ことが で き るけ れ ど も,そ の完 全 回復 は 容 易 に 望 む こ とが で きな か った か ら,貯 蓄 と投 資 との不 均 等は 利 潤 また は 損 失 の 発 生 を 意味 す る と こ ろか ら,そ の 不均 等 を排 除 す る こ とを管 理 通 貨 制 下 の貨 幣政 策 の 基準 と した の で あ る。
3.通 貨 主 義 対 銀 行 主 義(通 貨 政策)
通 貨 主義 の 自動 調 整 作用 に つ い て は,現 在 の 如 き混 合 貨 幣 制 度 下 の場 合 も
全 額 正 貨 準 備 制 度 が 理 想 で あ る ことは前 述 した 通 りで あ るが,現 実 に 国際 資
本移 動 に関 しては19世 紀 の イ ギ リス経 済 の実 際 は 理 論 と一 致 したけ れ ど も,
対 内経 済 の面 で は 理 論 と実 際 は 一 致 しな か った ので あ る。 す なわ ち 古 典派 の
学 者 の い わ ゆ る完 全雇 用 とは,資 本 の完 全 雇 用 で あ っ て労 働 力 の完 全 雇 用 で
は なか ったか ら,国 際収 支 の 赤字 は い ろ い ろ の原 因で 起 るで あ ろ うが,そ の
対 策 は デ フ レー シ 。 ソ対 策 とな るの で あ るか ら,不 均 衡 の過 程 で 失 業 を生 ず る結果 とな り,均 衡 回復 対 策 は 失業 を 生 み 出す ことに ほか な らな い 。
19世 紀 に おけ る イ ソフ レー シ 。 ン対 策 は 金 本 位制 度 を維 持 す る政 策 を とっ た か ら,金 価 格 を維 持 し免 換 を履 行 す る ことで よい と考 えた が,そ の後 ピ ー ルー 派 の恐 慌 頻 発 問 題 に対 す る見 解 の誤 ま りを 整 理 して 自動 調整 作 用 を意 味 づ け るた めに,ジ ョン ・ス チ ュア ー ト ・ミル の相 互 需 要説 が あ らわ れ た ので あ った 。
1925年 以後 通 貨 政 策 は 非 常 に 大 きな変 化 を遂 げ,通 貨 政 策 の 目標 は 恐 慌 の 発 生 を防 止 す る こと とな り,物 価 の安 定 が通 貨 政 策 の 目標 で あ る こ とは 今 日
も昔 と変 りは な い とは い え,金 本位 制 度 の時 代 とは 異 な った 視 角 か らと らえ られ ね ばな らな くな った 。 各 国 が管 理 通 貨 制 度 に移 っ てか らは,物 価 の 安定 が 経 済 の 安定 を 意 味 し うるか が疑 問 とな るに お よんで,物 価 の安 定 の 外 に 生 産 費 ・生 産量 ・雇 用 量 等 の変 化 に注 目 して,投 資 と貯 蓄 の 均 等 に 政 策 の 目標 を 求 め,資 本 と して の貨 幣 の作 用 に 着 目す るに 至 った ので あ る。
銀 行 主 義 に よる政策 手 段 は,実 物 経 済 が 先 行 して貨 幣 経済 の変 化 がそ れ に 追 随 せ しめ る こ とにあ るの で あ る。信 用 の供 給 に対 す る規 制 が通 貨 主 義 的 で あ れ ば,信 用 に対 す る 需 要 の規 制 が 銀 行 主 義 的 で あ る とい っ て よいで あ ろ う。 通 貨 に対 す る需 要 の変 動 は 景 気 循 環 と結 び つ い て い るの で あ っ て,設 備 投 資需 要 が 財 の供 給 能 力 を 増 大せ しめ,そ の供 給 の変 動 が 有 効 需 要 との 相 互 関 連 に おい て景 気 循 環 を 生ぜ しめ るか らで あ る 。
前 述 の如 く,金 本 位制 度 下 の 金 融 政策 はそ の ま ま通 貨 政 策 であ り,通 貨 と
物 価 の 自動 調 整 作 用 を 背 景 とす る政策 の 基本 原 理 は 通 貨 主 義 であ った 。 通 貨
主 義 に よれ ば 国 際 間 に配 分 され た金 に 基 づ い て通 貨 が 供 給 され るか ら,国 際
経 済 の面 に 対応 し,銀 行 主 義 に よれ ば 生 産 に 基 づ い て 通 貨 が供 給 され るか
ら,対 内 経 済 の面 に 対応 した の で あ る。 しか し第1次 大 戦後 国 内 金融 重 視 に
変 り,経 済 政 策 の 目標 は 財 政 々策 を導 入 して完 全 雇 用 ・適 正 成 長 ・国際 収 支
に 重 点 を お くに至 った 。通 貨 は 財 貨 に 対 して供 給 され,経 済 循 環 の 均 衡 的 な
流 れに 従 っ て,財 貨 の生 産 ・交 換 ・分配 ・消費 ・投 資 に よって管 理 す るに 至 り・ 銀 行 主 義 を 生 産 物 の 生 産 に 基 づ い て 通 貨 を 供 給 す る もの ≧ 解す う と き は,銀 行 主 義 の 中に通 貨 主 義 が 全 く包 含 せ られ る結果 とな った ので あ る。す
なわ ち 要 素費 用 や原 材 料 の支 払 資 金(運 転 資金)の 供 給 が,財 貨 生産 と貨 幣 造 出の 平行 関 係 に よっ て貫 か れ る場 合 に は,通 貨 主 義 的 銀行 券 の発 行 は 外 国 為 替手 形 の割 引に よる輸 出生 産物 の生 産 の た め に発 行 され るので あ る。
従 来通 貨 政策 は 中央 銀 行 が 公 定 歩 合 を 操作 して 貨 幣量 と物 価 を規 制 す る こ とで あ る,と され て い たが,現 在 通 貨 政 策 の 重 点 は貨 幣 の供 給 を調 節す る こ とに 移 って きた 。
ケイ ソズ革 命 以 後,国 民 総 生 産 や独 立 投 資 が 理 論 の 上 で 重 ん じて,乗 数 理 論 や 加 速 度原 理 が 脚 光 を浴 び るに 至 った が,し か し古 典派 的二 分 法 の考 え の 如 く実物 経 済 と貨 幣 経済 との 間 に所 得 理 論 のみ を と りあ げ て,通 貨理 論 を 放 棄 して しま って は い け な い 。通 貨 の機 能 を再 発 見 し通 貨 政 策 を復 活 して,貨 幣 数量 説 の再 述 や 通 貨 変 動 が物 価 変 動 に影 響 を与 え る こ とを 訴 え,金 融 経 済 構 造 に そ く した 新 しい通 貨 理 論 の なか に所 得理 論 を融 合 して,新 古 典 主 義, 新 自由 主義 へ の道 が 開か れ て ゆ く(古 典派 理 論 と ケイ ソズ理 論 との綜 合 へ の 道)理 論 づ け を 見 出 して ほ しい こ とを念 願す る 次第 で あ る 。
4.金 融 政 策 の 短 期 的 課 題
金 融 政 策 の 目標 を 国 際収 支 の均 衡 を 図 り,金 準 備 を 守 る こ とに 力 点 を お く 時 は,金 本 位制 度 の 自動 調整 作 用 に立 脚 しな が ら中央 銀 行 が 公 定歩 合 を 上 げ 下 げ す れ ば よい の で あ るが,国 際 均 衡 に 重 点 を お い た もの で あ ったか ら,国 際 収 支 の均 衡 や 外 国為 替 相 場 の 安 定 は 期 待 で きた が,国 内 の物 価 の変 動 や恐 慌 に 対 して弾 力的 に 対 処す る こ とが で きな か った 。
金 融 政策 の短 期 的 な課 題 が,物 価 の 安定 ・国 際収 支 の均 衡 ・完 全 雇 用 とい
う三 つ の 目標 の 同 時達 成 に存 す るので あ れ ぽ,自 動 的調 整 作 用 の補 完 ない し
政 策 と して有 効 需 要 政 策 を 誤 る こ ζな く行 な うこ ζが 必 要 で あ る9
公 定 歩 合 の変 更 ・法 定 準 備 率 の 変 更 ・証 券 の オ ペ レー シ ョ ソ ・証 拠 金 率 の 変 更 な どに よっ て貨 幣 や流 動 資 産(各 種 有 価 証 券,貯 蓄 預金 等)の 需 給 に 影 響 を 与 え て間 接 に 有 効 需 要 の大 き さを コ ン トロールす るの で あ るが,も ち ろ ん金 融 政 策 のみ で 三 つ の 目標 の 同時 達 成 が な され る もので は な い 。
企 業 の 流 動性 資産 保 有 増 加 と財 政 面 か らの 資 金 供 給 増 加 は,金 融 機 関 貸 出 の量 的 調節 を通 ず る金 融 政 策 の 効 果 を 相 対 的 に 低 め る もので あ り,高 水 準 の 企業 流 動 性 資 産 は 政 策 の弾 力 的運 用 を 高 め る こ とを 可 能 にす るの で あ る 。従 っ て金 融 政 策 を これ に 対 処 せ ん と して運 用 す れ ぽ,企 業 の流 動 性 選 好 に 心 理 的 な影 響 を与 え て 政 策 の 効 果 を あ げ,そ の 政 策効 果 を あ げ るた め に は政 策 手 段 の整 備 が 必 要 とな るの で あ る。 現 代 の社 会 は 混 合経 済 で あ る か ら,特 に有 効 需 要 の適 切 な水 準 を 維 持 す る こ とが 義 務 づ け られ て い る点 を 注 目せ ね ば な
らな い 。
従 って シカ ゴ学 派 の 人 々は 政 策 の 一 定 の客 観 的 ル ール に従 って 自動 的 に 調 整 が 行 なわ れ る よ うな体制 を 確立 す る こ とが 望 ま しい と考 え,フ リー ドマ ン は 確 実 に コ ソ トロールす る こ との で き る貨 幣 の供 給 量 を 適 正 な経 済成 長率 に 合 わ せ て増 加 せ よ と主 張 して い る 。 この考 えは 金 本 位 制 度 の 自動 的 調 整 作 用 に 代 る 自動 的 安 定 装置 を建 設 す る もので あ るが,ケ イ ンズ の説 い た 消費 性 向 の安 定 性 に裏 付 け られ た乗 数 効 果 よ り も彼 は通 貨 の 回転 率 の 方が よ り安 定 的 で あ る と説 い て,現 金 残 高 効 果 こそ は通 貨 の機 能 を所 得 理 論 に 結 び つけ た も ので あ る と考 え た 。
ガ ー レイ や シ ョ ウの 金融 構 造 の変 化 の 分析 は,フ リー ドマ ソ的 数量 説 の 主
張 に 対 して 通 貨 の機 能 を 広 範 な 資産 選 択 の 問 題 と して と らえ る 考 え方 で あ
り,フ リー ドマ ソの恒 常 所 得仮 説 は,総 資産 の指 標 と して の恒 常所 得 を 導 入
した 資 産 選 択 理 論 で あ る。 これ らの 人 々は通 貨 と資産 を 並列 して 対 置 して醐
択 せ しめ て い るので あ るが,ケ イ ソズ は流 動 性 選好 説 に お い て 資 産 と して の
通 貨 と確 定 利 付 証 券 との選 択 を 問題 に して い るか ら,ケ イ ソズ の考 え方 とは
畢 好 の 仕 方 が 異 な るの で あ るg
ロ ーザ の ア ベ イ ラ ビ リテ ィー理 論 に お い て は,金 融 機 関 の 信用 供 与 の 能 力 と意 欲 の 状態 が,た とえ多 少 とも価 格 お よび賃 金 の 下 方 硬 直性 や 投 資 の利 子 弾 力 性 に 対す る疑 問 とか 利 子 率 の 硬 直性 が 存 在 して い て も,信 用 め ア ベ イ ラ
ビ リテ ィーを変 化 させ る ことが で き るか ら公 開 市場 操 作 を 中心 とす る金 融 政 策 が,金 融機 関 の 支 払 準備 ポ ジ シ ョ ンや流 動 性 ポ ジ シ 。 ソに影 響 を与 え て 有 効 に 働 くと説 い て い るの で あ る 。
5.金 融 政 策 の長 期 的 課 題
、金 融 政策 に長 期 の成 長 促 進 効 果 を期 待 す る主 張 は,そ の 政 策 の 効 果 が 主 と して民 間 資 本 形成 に 影 響 を 与 え る点 に 注 目 してい るの で あ る 。
古 典 派 の経 済 理 論 は 価格 中 心 の 微 視 的理 論 で あ り,メ ヵ ニズ ムの理 論 を 母 体 と した景気 変 動 理 論 で あ った ことに 対 す る反 省 と して,ケ イ ンズ は 巨視 的 集 計 の方 法 に よ り経 済 学 か ら価 値 概 念 を 追 放 し,商 品 相 互 の 交 換 関 係 と して の 経 済 社 会 の概 念 に 代 えて,国 民 生 産 の概 念 に よっ て 国民 経 済 を 全体 と して の 規 模 に おい て と らえ,経 済成 長 概 念 を 新 しい 武器 と して 登 場 せ しめ た の で
あ った 。
資 源 の 完全 利 用 や労 働 の完 全 雇 用 は経 済 成 長 の大 前提 で あ る。 また成 長 率 の 高 い 国 ほ ど投 資 の 生 産効 率 が 高 く資 本蓄 積 率 も高 いか ら,消 費 を 抑 制 し投 資 を 促 進 す る政 策 も成 長 率 を 高 め るのに 役 立 つ ので あ る 。そ れ 故 に トー ビ ソ や サ ミュエ ル ソ ソの 唱 え る 投 資 に与 え る 長 期 的 な 効 果 を 検 討 す る必 要 が あ
る。今 日では 政 策 当 局 は財 政 金 融 政 策 に よっ て蓄 積 率 に影 響 を 与 え,経 済 成
長 率 を あ る程 度変 え る こ とが で き るので あ るが,国 際 収 支 の制 約 や成 長 に 伴
った 多 少 の物 価 上 昇 を 避け られ な い場 合 も生 ず るの は 止 む を え ない 。投 資 は
主 と して 消費 の増 加 率 に よっ て規 定 され る とい う加 速 度 原 理 の 考 え方 に立 つ
人 々は,新 古 典 派 の考 えを 疑 っ て い るが,そ もそ も金 融 政 策 の 中心課 題 は通
貨 の供 給 に あ るの で あ るか ら,そ の政 策 原 理 は 時 代 の変 遷 と と もに著 しい変
但 が み られ るのは 当 然 の こ ζで あ っ て,19世 紀 時 代 で は通 貨 主義 と銀 行 主 義
に 基 づ い て金 融 政 策 の 主 た る 目標 を 国 際 均 衡 と 国 内金融 と の 調 和 に 求 めた が,第1次 大 戦 後 の政 策原 理 は 所 得 や 支 出 を 重視 して,通 貨 の価 値 保 蔵機 能 を 重 ん じた結 果,通 貨 概 念 が 拡 大 され,第2次 大 戦 後 に 至 り新 しい 通 貨 理 論 が 続 出 して古 典 派 理 論 は ケイ ソズ理 論 と綜 合 され る新 古典 派 ・新 自由主 義 へ の理 論 を 生 む に 至 った 。他 方政 策 の 目標 も財 政 々策 を 導 入 して 適 正成 長 や 国 際収 支 に重 点 を お くこ と とな った 。 最 近 の 金 融政 策 の復 活 は金 利 を 意 図的 に 変 動 させ る こ とに よ る貸 し手 の貸 出意 欲 を 左 右 す る ことが で き る とい う ロー
ザ 効 果 の 主 張 や,流 動 性 ポ ジ シ ョ ソを変 動 させ る こ とに よ り,間 接 に総 需 要 を 規 制 で き る とい う一 般 流 動 性効 果 が 重視 され て きた。 こ こに おい て 通 貨 の 再 認 識 と第2次 大 戦後 の新 しい 経 験 は,金 利 政 策 よ りも公 開 市 場 操作 を 重 視 す るに 至 った の で あ る。
しか し経済 機 構 を反 省 す る時 に,新 自由主 義 の 競 争 的 市場 機 構 を生 か す た め に は,金 融 政 策 の長 期 的 課 題 と して,価 格 機 構 を通 じて 資源 の配 分 の能 率 を 高 め る ことが成 長 の た め の条 件 で あ り,資 金 市 場 で の金 利 の 自由化 に よっ て 資 源 の配 分 を 適 正 に し,資 金 を最 適 に 配 分 す る こ とが成 長 の た め の 重要 な 課題 で あ る こ とを 一層 重 要視 す べ き こ とは い うまで もな い 。
む す び
有 効 需 要 を 適 正 な 水 準 に 維持 しな が ら,古 典 派 経 済 学 が 教 え る経 済 合理 性 を 貫 徹 す る ことが,効 率 的 な経 済発 展 の た め に 最 も重 要 な原 則 で あ り,需 給 調 整 機 能 と して価 格 の もつ意 味 を顧 み て価 格 問題 を考 え,労 働 市 場 の流 動 化 を 図 り,利 子 率 の もつ 資金 需 給 調 整 機 能 の 働 き うる機 構 を うち た て る努 力 に 全 力 を注 ぐ ことが今 日の 金 融政 策 の基 本 理 念 で あ る 。
国 内金 融 政 策 の な か で,物 価 対 策 を 解 明す るに あ た っ て貨 幣 的 要 因 説 と構
造 的 要 因説 が あ る。貨 幣要 因が 投 資 を経 由 して所 得 の増 大 とな り,国 民所 得
の 増 加 量 が 技 術 革 新 に 吸 収 され て,安 定 した 卸 売 物 価 水準 を 現 出す るの で あ
るが,貨 幣 的 要 因譜 は 貨 幣供 給量 が 物価 高騰 の 要 因 で 拳 る とい うの に 対 し
な
て,構 造 的要 因説 は貨 幣的 要 因 を 否定 しな い が,貨 幣 的要 因が 投 資 を 経 由 し て 超過 需 要 を 生 み だす か ら,物 価 高騰 の 間接 的 要 因 で あ る構 造 的 不調 整 要 因 の究 明の 必 要 を 説 く。
構 造 的要 因説 は投 資乗 数 の 数 値 の安 定 性 を実 証 しな け れ ば な らな い の に 対 して,貨 幣 的 要 因説 は 貨 幣 の所 得 流 通 速 度 の方 が 国 際 比較 的 に も歴 史 的 に も 安 定 性 が あ る と主 張 し,貨 幣 供 給 の 増 加率 の あ る部 分 は 経 済 の実 質 的 成 長 に 反 映 し,他 の部 分 は 物価 の 上昇 に 反 映す るの で あ るか ら,こ の 比 率 を調 査 す れ ば一 応 の 目安 とす る こ とので き る数値 を 実 証 的 に 計算 して,貨 幣供 給 量 と 所 得流 通 速 度に よっ て国 民所 得 の予 測 も可 能 に な る と主 張 して い る。
ケイ ンズ体 系 に 貨 幣 的 要 因説 を摂 取 し拡充 化 す れ ぽ,古 典 的 経済 理 論 の 数 量 説 と ケイ ンズ体 系 との統 合 が 成 就 され,そ の 上 で 新 古典 学 派 ・新 自由主 義 の立 場 に 立 て ぽ,貨 幣 的 要 因 説 よ りも詳 しい 経 済成 長 を安 定 的 に実 現 し うる 政 策 の立 案 が 可 能 で あ る。
わ が 国 の経 済 成 長 に 対 す る第 一 の制 約 要 因 は,国 際収 支 の壁 とか 天 井 とか いわ れ て い る と ころ の 国際 収 支 の変 動 で あ るが,貿 易 立 国 の わが 国経 済 が 開 放 体 制 へ の移 行 に 当 っ て,保 護 貿 易 政 策 を とる ことは 国 内 産業 の発 展 を 助成 す る もの では ない 。 従 って 自由 経 済 とは何 を 意 味 し,自 由 経 済 が 国民 生活 に と って何 故 に 有 利 で あ るか,自 由 な国 際 経 済 が 何 故 に わ が 国 に望 ま しい の か の 問題 を充 分 に究 明 して,自 由 経 済 の体 制 を 十 全 に 実 現 す る こ とに 対 す る認 識 を深 め る必 要 が あ る。
新 古典 主 義 ・新 自 由主義 に 関 す る系 統 だ った 解 明 の努 力 が 要請 せ られ て い
け