川部健t近藤芳朗‡寺元貴幸§
Relaxation Phenomena of On−off intermittent Chaos
Takeshi KAWABE, Yoshiro KONDO and Takayuki TERAMOTO
Abstract
Two homogeneous chaos systems generated by a logarithmic map synchronize by connecting with a coupling strength C. On−ofiintemittent chaos is observed and the critical value C, is numerically obtained as af㎞ct三〇n of a control parameter臥The syste瓜atic chaos systems withα=一〇.9 lead to the synchronization with smaller coupling strength than the theoretical value C. . Relaxation time to the synchronized state exhibits the scaling law e hi just above C, and its probability has a single peak.
Key wo7 ds=syロchronization, olレ。∬intermittency, logarithlnic皿p, relaxation time
.1 はじめに
非線形力学系に関連して現れるカオスの一つとして,
よく知られたPomeau−Mannevilleタイプの間葛欠性カオ ス1)がある.これは周期運動を含むregulαrな運動か
ら乱れた運動に変化する際に現れる現象である.ここ では2つのカオスカ学系を結合した系を扱う.結合強度 Cが小さいときには2つのカオス力学系は独立に運動
しているが,結合強度が大きくなると2っのカオス力 学系は同調して同じ振る舞いをする.同調が起きる結 合強度の臨界値0,があって,σ、より僅か小さいとき に,2 つのカオス力学系は準同調(off状態,ラミナー 相)と非同調(on状態,バースト相)が繰り返される。
そして,臨界値0,に近づくにしたがってラミナー相 が長くなっていく.2つのカオス結合系で起こるこの ような運動は,最初,藤坂,山田2)によって見いださ れ,その後N.Plattら3)はこれをon−off間弾性カオ スと名付けた.結合カオス系の実験としては,電子回 路系の2つのダイオード間電位差4)で観測されている が,その他に化学振動子系,地震発生の断層モデル系,
Zeemanレーザー系,強磁性共鳴系で見出されている
5︶
2つのカオスカ学系としてロジスティック写像からつ くられるカオスが一般的によく用いられる.αをロジ スティック写像の制御パラメータとするとき,解析的に 同調する条件は0、>a−3,(α>3)で与えられる6).
ここでは著者らの研究対象であった対数写像7),8)を用 いて,en一 off間敏性カオスの振る舞いや元のカオス系
*原稿受付 平成14年8月31日
t一般科目 (物理)
..t川崎医科大学(情報科学)
1§情報工学科
のリアプノブ指数とこれらのカオス系が結合したとき の結合の臨界値0、がどのような関係を持っているの か調べる.元のカオス力学系に対数写像を用いるメリッ
トはロジスティック写像と違って,リアプノブ指数が制 御パラメータaのスムーズな関数(lal≦1)で変化し ていることにある.但し,解析的に求めることができ ないので数値解析を行うことになる.また,結合が臨 界値C、より少し大きいとき,結合系の定常状態に達す るまでの緩和時間とその分布を計算する.これらの内 容は以前に解析しているが,今回,再検討を行った9).
カオスの数値解析には,一般に膨大な時系列の計算 を行わなければならない.このCPUとメモリーの問題 を克服するために,計算機専用サーバとWebサーバを 接続して多数のパソコンをネットワークで接続,計算 の分散化により処理していくことが望ましい.これら 多数のパソコンの計算状況をコントロールするシステ ムの構築を行って10),今回の問題に応用することを検
討する.
2 結合カオス系の同調現象
2つの1次元力学系は時系列{xY)},{x£2)}で与え られ,それぞれ次の差分方程式に従って運動している.
x9!i = f(x9)) = ln(lxS」)1) +a (i = i, 2) (1)
制御パラメータαの値によって,この力学系は規則的 な運動(lal>1)やタイプ1,タイプIIIの間敏性運動 を含むカオス運動(回≦1)をする7),8).この2つの力 学系が次の式
迎一f(・S」))+号歯{f(・£i))一∫健))}(・)
i=1
津山高専紀要第44号 (2002)
6⊃
Xn
o
一5
a=O
o loo n 200
図1:カオス力学系(1),(2)の時系列
で与えられるような結合をしているときの系の振る舞 いは,系(1),系(2)が本来もっているカオスの性質(制
御パラメータaによって変化する)や結合強度0に よって様々な様相を呈するだろう.
最初に,on一。が間歌性カオスの発生する状況を見る ために,2っの系が共に対数写像(1)でa=Oのカオ ス運動(図1)をしている場合を考える.結合強度σ を少しずつ大きくして同調していく様子を数値実験で 確かめてみよう.同調状態を考えるのに便利な変数 v. = ;{x£i)一 x$2)} (3)
を定義しよう.一Vn=0のとき,2つの系(1),系(2)
が同調を起こす。逆に,Vn≠0のとき2つの系は非同 調状態にある.カオス停学系(1)は初期値¢9)=0.1,
力学系(2)は初期値x82)=0.7から運動始めるとする.
a=Oの場合に,図2は結合強度σを少しずつ大きく していくと,時系列Vnが非同調状態(a)からon−off間 内性カオス状態(b),(c)を経て,.同調状態(d)に至る状 況を示している.結合強度の臨界値はσ、=0.43394で あるが,図(b),(c)からも分かるように,時系列はラミ
ナー相と呼ばれるoff状態(Vn〜0)とバーストと呼 ばれる。n状態からなっていて,臨界値に近づくに従い ラミナー相が長くなる.
a=0,0=O.433の場合,on−off間骨性カオスの 時系列を詳しく観察するとカオスに一般的な特徴であ る自己相似な時系列が観測される.その状況は図3に 与えられるが、(a)の時系列ではほとんどラミナー相に 見える部分n=30, OOO〜35,000を10倍に,縦軸は 100倍に拡大したものが(b)図である.変化の様子が類 似しており自己相似性を示している.
航42
=
σ司︵
=.講灘∴ ・・魏 O.ゾ︐.灘㍗
.∵箏・.馬●
、.?兼蛛A
● 蝕飛h
?語t
熊
嶺
4
0 隔
・O.
一〇,4
0 1000
2000
n
0隔 4 (b) C = O.43
o鍵暗譜魏
一一Z.4
o 1000 n 2000
3 リアプノブ指数と0,の関係
J,Heagyら11)(a on一 offカオスを起こす基本的な条 件は写像の非線形性ではないとして,結合がランダム な時系列Yn+1= Zn f(Yn),(Znが結合ランダム変数)
O.4t (c).O= O.432.
1」乳
︒
」i
一〇,4
・鯉ll≒
1
o lcoO 2000n
4鴨0り ︒
=O.4
(d) C = O.434
o 100q n ptoo
図2:0n−off間歌性カオスと同調現象
4.0
2.0
o
一2.0
2Vn
t
.
(a)
.
. L .( b)
....: le:. )1.t, ,
.
.
=軸 .{vi
.
.
ilxioh
1 2
一方,結合力学系のリアプノフ指数λ は
At=無去1・1舞1
麟書㎞1藷1
〈1司藷1>
最後の式で〈…〉は長時間平均を表す.(8)式から
4,0
1i[× 1 o21
2.0
o 3 n 4 5
o
・2.0
2Vn (b)
,撫』。癩望
、 ● ・. 》 ㌦
,[・loう
30 31 32 33 n 34 35
図3:..on・off間歌姓カオス(a=0,0=0.433)の自 己相似性
で与えられるようなモデルを用いて解析を行った.そし て,oη一〇∬間歌性カオスの一般的性質としてラミナー の分布関数は一3/2のべキ則に従い,ラミナー長さの 臨界指数は一1で与えられるという結論を得ている.
On. ofi間歌性カオスから同調へ至る状況をみるため に,同調解{Xon}の近傍で(2)式に従う時系列{誼)}(」=
1,2)を展開する.
xS」 ) =: xo. +6xS 〉 (4)
λ = 〈1皿11−Ol>十〈1皿1ノ (¢〔li)1>.
(9)
(10)
第2項は結合していない(0=O)元の系(1)と(2)
のりアプノフ指数λを与えるから
,)t = 〈ln 11 一Cl> 十A. (11)
を考慮して
・。。+、+δ・£i)=ノ(m。。)+ア (・。。)礫) (5)
+ upt (xon)S.{6,ff)一6xY)},
i=1 同調解は
¢da+i = f(¢da) (6)
を満たすので,これを考慮して(2)式に代入すると
ixS」!, = f (x,.){6¢£」) + g SI) (6¢lj) 一 6.sJ ))}.
i=1
(7)
(3)式から
6vn+1 = f (¢on)(1 一 C)6vn (8)
同調が起こるとき,結合力学系のリアプノブ指数λ は 0になり,結合強度の臨界値σ、を与えることになる から
Os=1一ビλ (12)
の関係が導かれる.
対数写像(1)に従う系のリアプノフ指数は数値計算で 求められるから,(12)式より0、が得られる,この結 果をaの関数として図4に示す.一方,元の力学系(1)
の制御パラメータαの種々の値一〇.9,一〇.6,0.0,0.5 に対して.結合力学系(2)が同調を起こす結合強度の臨 界値0、を数値解析で求めることができる.結合力学系
(2)の数値解析では,力学系(2)の初期値をx82)=e.13 とし,力学系(1)の初期値x8i)を乱数で適当な25個を 選んで,それぞれについて結合強度0を変えて同調を 起こす臨界値0、を求めた.初期値¢82)=0.13には特 別な意味はなくどんな数値でもよい.結果を図5に示 す.α=一一〇.9以外は大体よい一致を示している.aニ0 の場合には0 =0.432で100万回の時系列をとっても 同調を見出すことはできなかったが,(] = O.433では
1.0
O.8
O.6
O.4
O.2
A. : Lyapunov exponent
C,: threshold of coupling strength
rA
C./2
,ZX 一 N
一1 .o o a 1.o typ・川 typ・1
図4:元の力学系のλと0、の関係
津山高専紀要第44号 (2002)
O.6
Cs
O.4
O.2
0
¢,=Oj3
4.
ソ=0.5 ...、;隔
● 層 , ●Oo ■ o ● ● ● ● o ●
q=0.0
舳 o ● ・ .● ・ ● ○管
uf=一〇.6
●■●
ず
■ ● ●.B o● ●託9ラ・ ・●怐@grじ
一2.0 0・O x♂Ω 2.0
n
lo4
103
102
101
榊鱒. モ
(a) Cs=O.43394 Crc、(1+ε)
一1 n oc E
℃
10−3 10−2 io i e loO
図5:数値解析(黒丸)と理論式(12)(実線)の比較
14万回程度の時系列で相対誤差10−15の精度でxSi)
と¢S2>は一致,即ち同調する.従って,0、は両者の 間にあると推測される.一方.a=0の対数写像(1)
の時系列を100万回とってリアプノフ指数λを数値解 析で求めた.さらにこれを初期値平均(10回)行うと λニ0.56906が得られる.(12)式から既に与えている 0,= O.43394が求められ,上記との誤差は0.3%以内 にある.
a=一〇.9の場合の不一致は何処からきているのであ ろうか,数値解析でCeを求めるときに,同質なカオ ス系で異なる初期値から出発して力学方程式(2)を解 いて,¢Si)と¢£2)が相対誤差10−15以内(計算機の倍 精度の限度)で一致するとき,時刻nで2つの力学系 は同調したとみなしてそのときの0、を確定してきた.
しかし,理論式(12》には同調を起こすまでのこのよう なダイナミックスは含まれていない,所謂,熱力学的な 平衡状態の式に対応していて,無限長さの時系列の平 均値になっている.a=一〇.9はタイプIIIの間歌性カ オスで,かなりsystematicな時系列を与える7),8).そ
して,その時系列{Xn}の分布は方程式
一一 ?=@1me 十a
n
tO3
102
tGl
・● ●●●《向
e (b) c.=O.24265 c=c.(1 + e )
イ n oc e
.
.
(13)
の解げを中心とする鋭いローレンツ分布を示す.a→
一一Pで分布はδ関数に近づき,一1より大きくなるに従 いピーク幅はひろくなる.同質のカオス系であるから この解ゴの近傍で¢£1)とx£2)が一致する確率が大き くなる.従って,(12)式で与えられるσ、より小さな 値で同調するようになる.図5の結果はこのことを裏
付けている.
4 0、近傍の緩和現象
結合強度がC、を越えると同調するが,任意の初期値
lo−3 lo−2 lo t 100 E
図6:0、近傍の緩和時間:(a)a=Oと(b)a=一〇.9
m81), xE2)から出発して同調するまでの時間(number oノ伽アα伽η5)即ち,緩和時間(Relaxation time)n は0=(フ、(1+e);(ε《1)を定義するとき,eを小 さくしていくに従い長くなっていく.(a)a=Oと(b)
a=一〇.9の場合にそれぞれ800個の初期値平均の数値 解析の結果を図6に示した.スケーリング則〈n>oc e−1 がarOとα=一〇,9の両方の揚合に成り立っている
ことが分かる.この関係はタイプIIのスケーリング則 12)と同じである.しかし,a=一〇.9の方がスケーリ
ング則の成り立つ領域がa=Oの揚合よりεの大きな 方へずれている.これは,同質の結合系においては,元 のカオス系がsystematicなほど揺らぎが大きくなるこ
とを示している.
最後に,a=0の揚合の緩和時間nの分布P(n)を ε=0.1とε=0.2に対して求めた,図7のようにそれ ぞれきれいな正規分布を示す.そして,onL ofi間歌性 カオスの緩和時間の分布が1っのピークをもつという 普遍性を裏付けるものになっている13). εに対する
ピークの相対的な位置も妥当な結果を与えている,
O.03
P・ 狽?j
O.02
O.Ol
O
i a=O・o cs=o,43394
=
⁝
3・ε富0.2
・1
:=
● 5
λノ慢
200 400 磯・n
図7:緩和時間nの分布
5 おわりに
元の力学系として同質の対数写像(1)を用いて,OTi・
0:ff二二性カオスの振る舞い,自己相似性,結合強度と 制御パラメータで決まる元のカオスの性質の関係を数 値解析で調べた。そして,時系列がでたらめな振る舞 いのカオス(a=0に相当)よりもsystemoticな振
る舞いのカオスの方が結合力学系の。伽。ガ二二性カオ スの揺らぎが大きくなる.07)一〇fi間歌性カオスのラミ ナー相の長さの平均はCsの前後でε『1のスケーリン グ則に従うことが知られているが11),0>Csに対し
てこれを確認した.σ<σsのスケーリング則を数値 的に求めることは簡単ではないが,元のカオスの性質 がどのように関係するのだろうか.今後の課題である,
多数のパソコンを使った数値解析の分散化は,まだ 準備段階で今回の解析には応用できなかったが,残さ れた問題に適用していきたい.
参考文献
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コ義 政 上 井
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9 1 1 1 1 ︶ 0 1 2 3 ︵ 99泊蛛E・算−空空シ繭 ア 年 月 く 岡 199
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