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松田 大輝 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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松田 大輝 論文内容の要旨

主 論 文

A Study on the Effect of Mental Practice using Motor Evoked Potential-based Neurofeedback

運動誘発電位に基づくニューロフィードバックを用いたメンタルプラクティスの 効果に関する研究

松田 大輝,森内 剛史,壱岐尾 優太,光永 済,藤原 謙吾,

松尾 萌美,中村 次郎,鈴木 智高,菅原 憲一,東 登志夫

Frontiers in Human Neuroscience, section Brain Imaging and Stimulation, 2021, in press

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:東 登志夫 教授)

緒 言

近年,運動の上達を図るために運動イメージ(MI)を繰り返し実施するメンタルプ ラクティス(MP)が注目されている.MPは特別な機器を必要とせず,時間や場所に 関係なく取り組めることや,実際に体を動かさず心的なシミュレーションを実施する ため,脳血管障害による麻痺を呈した患者などにも安全に適用できるといった利点が ある.MP の効果についてはすでにシステマティックレビューで一定の根拠が示され ているが,効果的な実践方法についてはまだ十分に確立していない状況にある.これ に対して,近年MP中の脳活動を,fMRINIRSによって計測されたデータをリアル タイムにフィードバックすることでMPの効果が増強したとの研究結果が報告されて いる.しかしながら,先行研究で用いられた脳イメージング技術は高価で拘束性も高 く,現場での活用は現実的ではないと思われる.そこで本研究では,比較的安価で拘 束性が少ない経頭蓋磁気刺激(TMS)により誘発した運動誘発電位(MEP)の振幅

peak-to-peak)を指標として,対象者にMP中の脳活動をリアルタイムにフィードバ

ックすることによって,MPの効果が増強されるかを検証した.

対象と方法

対象は右利きの健常成人24名(男性14名,女性10名;平均年齢22.4歳)とし,

TMSによるMEP振幅の大きさをMP中の脳活動の指標としてフィードバックを与え

Real-FB群と実際に得られた MEP 振幅の大きさに関係なく事前に準備した数値を

ランダム化した偽の値をフィードバックとして用いる Sham-FB 群の 2 群に無作為に 振り分けた.MI 課題はターゲット(円)が十字に重なったときに右示指でタイミン グよくスイッチを押す課題とし,20試行を1セットとして5セット(合計100試行)

(2)

実施した.対象者へのフィードバックは,1 試行ごとにターゲットが十字に重なるタ イミングでTMSを与え,導出されたMEP振幅の大きさを指標として行った.パフォ ーマンス評価はMI課題を実施する前(Pre評価)と後(Post評価)でそれぞれ20 行ずつ,MI 課題を実際に行った際のスイッチを押したタイミングがどの程度中心か ら離れているか算出した値を誤差の指標とした.TMSにおける刺激部位は,第一背側 骨間筋から最も良好なMEPが導出可能な部位とし,刺激強度は安静時に0.5~1mV MEPが導出できる強度とした.統計解析は,パフォーマンス(誤差の合計)と主観的 運動イメージ鮮明度(VAS)をそれぞれPre評価とPost評価の変化率を用いて比較検 討を行なった.MP中のMEP振幅は「群(Real-FB vs Sham-FB)」と「試行セット(安 静時,1–5セット)」の二要因による二元配置分散分析を行い,事後検定として群内比

較にDunnet法を,群間比較には対応のないt検定を採用した.

結 果

統計解析の結果,パフォーマンスの変化率はReal-FB群の方が有意な向上が認めら れた.MEP振幅は二元配置分散分析を実施し,「群」「試行セット」に有意な主効果 が認められ,事後検定の結果 Real-FB群の安静時の MEP 振幅と比較して5 セット目 で有意差が認められ,群間比較では4,5セット目においてSham-FB群との間に有意 差が認められた.一方,VASを用いて評価した MI中の鮮明度の変化率は,2 群間に 有意差が認められなかったものの,Real-FB群においてPre評価とPost評価でVAS 値の改善傾向が認められた(p=0.059)

考 察

本研究は TMS により誘発された MEP 振幅を用いたニューロフィードバックによ MPの効果が増強されるかを検討した.パフォーマンスは中心からの誤差の合計の 変化率において群間での有意差が認められた.先行研究では,primary motor cortex(M1)

の脳活動をフィードバックすることでM1の活性化とMPによるパフォーマンスの変 化との間に正の相関が認められたとの報告があり,本研究においてもM1を含む皮質 脊髄路の興奮性を反映している MEP 振幅を用いてフィードバックしたことがパフォ ーマンス変化に影響したのではないかと考えられる.MP中のMEP振幅の比較では,

Real-FB群において安静時と比較して経時的な有意差が認められ,群間では4,5セッ

ト目に有意差が認められた.MEP 振幅をフィードバックとして用いた研究において 対象者は自分の MEP を増加させたり減少させたりと自己調整できることが明らかと なっており,本研究においてもReal-FB群のMI中のMEP振幅が高値を維持すること ができたのではないかと考える.Sham-FB 群では偽のMEP 振幅をフィードバックし たことにより混乱が生じ,自分のMIの正確さに不安を感じるなどして,MEP振幅が 低迷した可能性も考えられる.本研究の限界として,フィードバックを与えていない 群との比較検討を実施していないため,本研究結果がフィードバック由来の変化であ るかの詳細は不明である.さらに1日での短期的なMPの効果を検討した研究である ため,今後はリハビリテーションにおける効果的な方法を明らかにするためには長期 介入の設定や Control 群との比較などを行うと共に,脳卒中患者に対する MP など臨 床場面で応用を検討していく必要があると考える.

本研究により,MEP振幅を指標としたフィードバックは,MPの効果を増強する可 能性が示唆された.

参照

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