1 学位論文
セマンティック Web 技術を活用したコンテンツ提示・利用分析手法に関する研究 Study on the Way of Offering Contents and Analyzing Usage of Contents by Utilization of
Semantic Web Technology
2019 年 5 月
⾧崎大学大学院工学研究科生産システム工学専攻
浦川 真
Urakawa Makoto
2
セマンティック Web 技術を活用したコンテンツ提示・利用分析手法に関する研究
目次
第 1 章 序論 ... 7
1.1 研究の背景 ... 7
1.3 本論文の構成... 10
第 2 章 コンテンツ提示へのセマンティック Web 技術の応用 ... 12
2.1 はじめに ... 12
2.2 関連研究 ... 13
2.3 NHK for School と「りかまっぷ」 ... 14
2.3.1 「りかまっぷ」を支えるデータ構造 ... 17
2.3.2 学習指導要領から学習順序データの生成 ... 18
2.3.3 動画情報のデータ化 ... 19
2.4 システム構成 ... 20
2.5 ログ設計... 22
2.6 利用実績 ... 22
2.6.1「NHK for School」と「りかまっぷ」での動画視聴 ... 23
2.6.2 「りかまっぷ」における行動分析 ... 25
2.7 考察 ... 26
2.8 まとめ ... 27
参考文献 第 3 章 コンテンツの繋がりにもとづく利用実績分析方法に関する研究 ... 30
3.1 はじめに ... 30
3.2 ログ分析における課題 ... 30
3.3 アプローチ ... 31
3
3.3.1 コンテンツ関係を示すインスタンスの生成 ... 33
3.3.2 利用実績の追加処理 ... 34
3.4 検証 ... 35
3.4.1 シミュレーターの開発 ... 35
3.4.2 シミュレーターによる評価 ... 39
3.5 まとめ ... 42
参考文献 第 4 章 コンテンツホルダーへのコンテンツ利用実績の提供方法 ... 43
4.1 はじめに ... 43
4.2 関連研究 ... 44
4.3 データモデルと生成処理 ... 45
4.3.1 インスタンス化処理 ... 46
4.3.1.1 スポット ID と関連情報を表すトリプルの生成 ... 47
4.3.1.2 トリプルのインスタンス化 ... 47
4.3.1.3 ユーザーが登録したことを示すトリプルの生成 ... 48
4.3.1.4 RDF ストアに登録するクエリ ... 48
4.4 トリプルデータへのフィードバック処理 ... 50
4.4.1 データモデル... 50
4.4.2 フィードバックデータの追加 ... 51
4.4.3 フィードバックデータの確認 ... 52
4.5 LOD プラットフォーム ... 53
4.5.1 データアーキテクチャ ... 54
4.5.2 システムアーキテクチャ ... 55
4.5.3 データ登録アプリケーションの試作 ... 57
4.5.4 データ参照アプリケーションの試作 ... 58
4
4.5.5 データフィードバックの確認 ... 58
4.6 評価 ... 59
4.6.1 ワークショップ ... 59
4.6.2 データモデルの有用性 ... 60
4.7 まとめ ... 63
参考文献 第 5 章 まとめ ... 65
図目次
図-1.1.1 セマンティック Web 技術の応用 ... 8
図-1.1.2 本研究が対象とするスコープ ... 9
図-2.1.1 軸の入れ替えたコンテンツサービスのイメージ ... 13
図-2.3.1 NHK for School での検索結果例(左)と動画再生例(右) ... 15
図-2.3.2 「りかまっぷ」トップ画面 ... 15
図-2.3.3「母体内の成⾧」を基点とした学習順序 ... 16
図-2.3.4「細胞分裂と生物の成⾧」を基点とした学習順序 ... 16
図-2.3.5 データモデルイメージ ... 18
図-2.3.6 学習指導要領における本研究での学習項目の定義 ... 18
図-2.3.7 学習順序に関する構造化データ例 ... 19
図-2.3.8 動画情報データ例 ... 20
図-2.4.1 システム構成 ... 21
図-2.5.1 ログ発行イベントと画面の対応 ... 22
図-2.6.1 各動画の視聴回数分布(NHK for School) ... 23
図-2.6.2 各動画の視聴回数分布(りかまっぷ) ... 24
5
図-3.2.1「りかまっぷ」で蓄積されているログ ... 31
図-3.3.1 コンテキストベース分析を可能とするアプローチ ... 32
図-3.3.2 ハッシュ値によるインスタンス生成イメージ ... 34
図-3.3.3 利用実績更新のための SPARQL クエリ ... 34
図-3.3.4 利用実績更新のための SPARQL クエリによるデータ処理イメージ ... 35
図-3.4.1 りかまっぷログシミュレーターシステム構成図 ... 36
図-3.4.2 「りかまっぷ」シミュレーター(トップ画面用) ... 37
図-3.4.3 「りかまっぷ」シミュレーター(学習順序表示画面) ... 38
図-3.4.4 「学び直し」の学習項目選択回数取得クエリ ... 39
図-3.4.5 「学び直し」の学習項目選択回数取得結果 ... 39
図-3.4.6 学習項目同士の「学び直し」選択回数取得クエリ ... 40
図-3.4.7 学習項目同士の「学び直し」選択回数取得結果 ... 40
図-3.4.8 学習項目と動画の組み合わせ別の再生回数取得クエリ ... 41
図-3.4.9 学習項目と動画の組み合わせ別の再生回数取得クエリの結果 ... 41
図-4.2.1 RDF Statement によるインスタンス化 ... 45
図-4.2.2 Singleton Property によるインスタンス化 ... 45
図-4.3.1 トリプルデータのインスタンス化イメージ ... 46
図-4.3.2 提案するインスタンス化モデル ... 46
図-4.3.3 SPARQL クエリ... 49
図-4.3.4 トリプルデータのインスタンス化クエリのモデル ... 49
図-4.3.5 生成されるトリプルデータモデル ... 49
図-4.4.1 利用実績の発生元アプリを特定するためのデータ構造イメージ ... 50
図-4.4.2 フィードバックデータモデル ... 51
図-4.4.3 フィードバッククエリモデル ... 52
図-4.4.4 フィードバックデータ確認用クエリ ... 53
図-4.4.5 フィードバックのためのデータモデル・データ処理 ... 53
図-4.5.1 データアーキテクチャ ... 55
6
図-4.5.2 システムアーキテクチャ ... 56
図-4.5.3 データ登録アプリケーション・スポット登録画面 ... 57
図-4.5.4 参照アプリケーションでのフィードバック例 ... 58
図-4.5.5 登録済スポット情報確認画面 ... 59
図-4.6.1 登録されたスポット一覧 ... 60
図-4.6.2 Statement における重複表現 ... 61
図-4.6.3 データ処理性能検証のためのデータとクエリ ... 62
図-4.6.4 データ処理性能に関する評価結果 ... 63
表目次
表-2.4.1 RDF ストアの性能検証... 21
表-2.5.1 ログ発行タイミングと送信値 ... 22
表-2.6.1 視聴された動画の本数 ... 23
表-2.6.2 動画視聴回数上位 10 の動画(NHK for School) ... 24
表-2.6.3 動画視聴回数上位 10 の動画(りかまっぷ) ... 24
表-2.6.4 両サイトにおける動画視聴回数と再生完了率 ... 25
表-2.6.5 ページビューと動画視聴数 ... 25
表-2.6.6 「りかまっぷ」内の動線分析 ... 26
表-4.4.1 フィードバックデータ確認用クエリ結果 ... 52
7
第1章 序論
1.1. 研究の背景
インターネットが始まった頃は,メディア企業が自身の Web サイトで情報を発信し,一 般ユーザーが Web サイトにアクセスし,メディア企業が発信した情報を得るという単純な 構造だった
1)2).メディア企業が発信する情報は,html フォーマットで記述され,Web サイ ト上で公開されたそれらの情報を,Web ブラウザが表示することにより,情報発信とその 消費が形成された
3).しかし,html により情報を記述し Web サイトで公開するだけでは,
情報発信・消費の拡張性に乏しいため,XML(Extensible Markup Language)での情報記述
4)
,RSS(Rich Site Summary)での情報発信
5)6),API(Application Programming Interface)
によるデータ提供
7)やオープンデータによる公開
8)が取り組まれてきた.つまり,ヒトが読 むための html から,システムが受け取るための RSS・API・オープンデータと変化を遂げ ている.その結果,システムが受け取ることができる情報が増え,情報を受け取ったシステ ムが,動画やニュース記事といったコンテンツの提供をおこなうことが可能となっている.
その結果,マッシュアップやキュレーションサイトが増えることになった
9)10).その一方 で,SNS(Social Networking Service)等のコミュニティサイトの発展や,スマートフォン を始めとしたインターネット接続デバイスの普及により,メディア企業だけでなく,情報消 費者でさえ情報発信者になれる時代になっている.そのため,UGC(User Generated Content)と呼ばれる,消費者が生成するコンテンツが増加し,CGM(Consumer Generated Media)という定義も生まれている
11).火災現場での第一報映像など,メディア企業がカバ ーできないコンテンツを消費者が生成できるため,メディア企業においても UGC の活用が 進んでいる
12)13)14).
このように,コンテンツの制作形態が多様化し,さらにはコンテンツ数が膨大になる中,
利用者の多寡がサービスの価値につながるコンテンツプロバイダーとしては,利用者から,
より多くのコンテンツにより多くアクセスされるかが重要になる.同時に,コンテンツがど のようにアクセスされたのかといった利用分析も,次のコンテンツ提供を考える上で重要 になる.また,誰でもコンテンツ制作者になることができる今,高品質な UGC を獲得して いくことも,良質なコンテンツを揃えるという点で重要である.高品質な UGC を獲得して いくためには,金銭以外のインセンティブが必要なことが分かってきているように
15),コ ンテンツの利用実績をコンテンツ制作者に還元することは,コンテンツの制作や公開を支 える重要な要素になると考えられる.
現状のコンテンツ提示方法において,コンテンツ利用者が Web サイトで滞在する時間を
延ばすことを目的に,検索された結果に合わせて関連コンテンツも提示する場合が多い.し
かし,コンテンツ同士の関係性が曖昧であるため,利用者がその関連性を理解しながらコン
テンツアクセスを継続することは難しい.コンテンツ同士の関係性を明示したコンテンツ
8
サービスを実現するためには,コンテンツ利用者がその関係性を理解することや,コンテン ツ利用者の目的に応じた体系にコンテンツを配置することが必要となる.しかし,そのため に必要となるコンテンツ運用として,コンテンツの利用目的に合わせてコンテンツ同士の 繋がりを再定義していく必要があり,多様なコンテンツで構成されることが多い今,そのコ ンテンツ運用は困難を伴う.
一方、コンテンツ提示結果の分析の現状については,コンテンツの繋がりにもとづく分析 が可能になっているとは言えない.多種多様なコンテンツが共に表示されるキュレーショ ンサービス等を考えると,あるコンテンツが他のコンテンツのアクセスに影響しているこ とが考えられる.しかし現状では,あるコンテンツの再生といった,一つ一つのアクション がログに蓄積されるだけであるため,コンテンツの繋がりにもとづく分析が難しい. また,
コンテンツの利用実績は.コンテンツプロバイダーから情報を提供してもらう必要がある ため,コンテンツプロバイダーにコンテンツを提供しているコンテンツホルダーが,コンテ ンツの利用実績を直接把握することは難しい.
1.2. アプローチ
多種多様なコンテンツがコンテンツプロバイダーから利用者に提示される構成において,
コンテンツは他のコンテンツと共に提示されることがほとんどである.そのため,本研究で は,コンテンツの提示やその分析においても,コンテンツの繋がりに着目して考えることが 重要だと考える.つまり,本研究では「繋がり」に着目する.コンテンツの繋がりにもとづ く提示や分析を実現するため,情報の意味や繋がりを柔軟に定義でき,ヒトが読むための html から,システムが読むための Web を実現するセマンティック Web 技術が活用できる と考える.セマンティック Web 技術は,一つ一つのデータを一意に特定できるリソースと して表現し,さらにはリソース同士の繋がりの意味を記述することで,意味を定義した関係 でデータ同士を繋げていくことに特⾧がある.
セマンティック Web 技術のコンテンツへの応用研究としては,主にコンテンツへの静的
なメタデータの付与を対象としている.例えば,コンテンツの内容に関する情報をセマンテ
ィック Web 技術により定義する研究
16)や,コンテンツの出典情報を付与する研究
17)18)があ
る.これらの研究は,コンテンツに関する静的な情報を付与する研究と言える.一方,本研
究は,コンテンツが生成・公開され,利用され,さらにその利用実績が分析され,次のコン
テンツ制作がなされるコンテンツサイクルで発生する情報を,セマンティック Web 技術を
応用することで付与することに主眼を置く.つまり,コンテンツに関する動的な情報を付与
する研究であると言える.具体的には,コンテンツ同士の繋がりにもとづくコンテンツ提示
や,コンテンツと利用実績やコンテンツホルダー情報との繋がりにもとづく利用分析に対
して,データの繋がりを実現するセマンティック Web 技術を応用することを提案する(図
-1.1.1).
9
図-1.1.1 セマンティック Web 技術の応用
コンテンツ提示においては,コンテンツ利用に合わせた体系をセマンティック Web 技術 で生成し,コンテンツとコンテンツの繋がりを生成した体系により間接的に定義する方法 を提案する.本手法により,コンテンツ利用者の視点では,コンテンツ同士の関係が明示さ れるため,コンテンツの関係を把握しながらコンテンツを辿ることが可能となる.一方,コ ンテンツを提示するコンテンツプロバイダーの視点では,コンテンツ同士の繋がりをコン テンツに直接付与するのではなく,コンテンツの関係を定義する体系を入れ替えることが できるため,柔軟な運用が可能となる.
コンテンツの利用分析においては,セマンティック Web 技術の特徴である,リソースを URI で表記する考えを応用する.複数のコンテンツが共に表示される状況において,Web リソースであるコンテンツの繋がりを都度生成し,繋がり自体をハッシュ値によりインス タンス化することで,利用実績を付与する方法を提案する.これにより,キュレーションサ ービスで表示される,あらゆるコンテンツホルダーのコンテンツの繋がりに利用実績を付 与できる.そのため,コンテンツの利用に他のコンテンツが寄与していることなど,コンテ ンツの繋がりにもとづき分析できる.さらに,コンテンツの繋がりに利用実績だけでなく,
コンテンツホルダー情報なども付与することで,コンテンツホルダーが,自身が制作したコ ンテンツの利用実績を直接確認できるようになる.
本論文ではまず,膨大なコンテンツを保有するコンテンツホルダーが,コンテンツの利用 を拡大するためのコンテンツの提示方法(図-1.1.2 中の①)へのセマンティック Web 技術 を適用することで,膨大なコンテンツを体系的に提示する方法とその効果を検証する.その 次に,コンテンツ利用状況の把握・提供手法として,セマンティック Web 技術によりコン テンツ同士の関係を定義した上で利用実績を把握する方法(図-1.1.2 中の②)と,コンテン ツホルダーに利用実績を確実に提供する手法(図-1.1.2 中の③)を検証する.
コンテンツ制作者情報 コンテンツ情報
(タイトル、表示内容など) コンテンツ提示・利用実績
コンテンツ提供実績
(コンテンツホルダーへの還元)
従来のセマンティックWeb技術の応用 本研究が目指すセマンティックWeb技術の応用
10
図-1.1.2 本研究が対象とするスコープ
1.3. 本論文の構成
コンテンツへのアクセスを増やすためのコンテンツの提示方法(図-1.1.2 中の①)につい ては,膨大にあるコンテンツを構造化データ上に配置することで体系的に提示する方法を,
セマンティック Web 技術を応用してサービス化した NHK の「りかまっぷ」という Web サ イトを例に,第 2 章にて示す.コンテンツの繋がりにもとづく利用実績把握手法(図-1.1.2 中の②)では,Web ページや動画コンテンツといった Web 上のコンテンツ同士を関係づけ た状態で,利用実績を付与できるデータモデルおよびデータ処理を第 3 章で提案する.コ ンテンツホルダーへの利用実績提供手法(図-1.1.2 中の③)については,コンテンツ制作の 方法から研究が必要であり,実サービス化された「りかまっぷ」での研究が困難であるため,
地域情報の生成と公開を想定する.第 4 章で,セマンティック Web 技術における情報の組 み合わせである「主語 述語 目的語」を構成するトリプルデータ単位で利用実績を付与す ることにより,コンテンツホルダーへの利用実績提供をおこなうことができるプラットフ ォームを第 4 章で提案する.最後に,第5章でまとめる.
【参考文献】
1)
齋藤正史,山口英:インターネットの情報サービス,情報処理,Vol34,No. 12,pp.1415-1421(1993).
2)
小町祐史:3-1 インタネットメディア,画像電子学会誌,Vol.33,No.6,pp.902-904(2004).
3) 北村泰彦:インターネット上での知的情報統合,In: Advanced Database Symposium’9 8,pp.167-174(1998).
4)
村田真:XML の背景と基礎 (< 特集>「XML: インターネット上での情報の記述と交コンテンツホルダー コンテンツプロバイダー コンテンツ利用者
公開
利用 制作
分析
①体系的なコンテンツ提示
②コンテンツの繋がりにもとづく利用分析
③コンテンツホルダーへの利用実績提供
11
換」),人工知能学会誌, Vol.13,No.4,pp.507-514(1998).
5) 林賢紀,宮坂和孝: RSS (RDF Site Summary) を活用した新たな図書館サービスの展 開,情報管理, Vol.49,No.1,pp.11-23(2006).
6) Judith,T: RSS: the latest feed,
Library hi tech
, Vol.22,No.4,pp.404-413(2004).7) 藤井章博:広がる Web API の活用─ マッシュアップの幅広い可能性─,科学技術動 向 2010 年 1 月号, pp.9-18(2010).
8) 大向一輝:日本におけるオープンデータの進展と展望,情報管理, Vol.56,No.7,
pp.440-447(2013).
9) 村上圭子, 黛岳郎, 平田明裕, 星暁子, 有江幸司 :ユーザーからみた新しい放送・ 通信 サービス,放送研究と調査, Vol.68,No.7, pp.2-27(2018).
10)幡鎌博:IT・ネットが生み出すサービス・イノベーション,経営情報学会 全国研究発 表大会要旨集 2007 年度春季全国研究発表大会,経営情報学会,2007
11) 一色正男, 深見嘉明:コンシューマが切り拓くディジタル化社会の新しい潮流: 1.
ソーシャルメディアなどコンシューマ参加型サービスを発展させる標準技術,情報処 理,Vol.53,No.10,pp.1014-1020(2012).
12) 上倉一人,⾧谷山美紀,村上和人:3-2.メディア流通・処理,映像情報メディア学会 誌, Vol.62,No.8,pp.1251-1254(2008).
13) 田中孝宜:公共メディア BBC のマルチプラットフォーム戦略,放送研究と調査,
Vol.68,No.7,pp.28-41(2018).
14)安田恵子,牛田圭子,和田のり子ほか: 4.ユーザの創造力向上を図ったコンテンツ 自動生成システムの活用事例, 映像情報メディア学会誌,Vol.62,No. 2,pp.177- 180(2008).
15) 奥村祥成, 嶋田敏, 緒方大樹ほか:消費者生成メディアにおけるインセンティブ設計の ためのサービス構造分析,精密工学会学術講演会講演論文集 2014 年度精密工学会春 季大会,精密工学会,pp.397-398(2014).
16)
Liang Bai, Songyang Lao, Gareth J.F.Jones, et al: Video Semantic Content Analysis based on Ontology, International Machine Vision and Image Processing Conference, IEEE, pp.117- 124(2007).
17) Jennifer Golbeck:Combining provenance with trust in social networks for semantic web content filtering, International Provenance and Annotation Workshop,
Springer,pp.101-108(2006)
18)
Olaf Hartig:Provenance Information in the Web of Data, LDOW,538(2009).
12
第2章 コンテンツ提示へのセマンティック Web 技術の応用
2.1. はじめに
インターネット経由で映像コンテンツを視聴できる Web サイトが増える中,映像コンテ ンツの数も膨大になっている.そのため,コンテンツプロバイダーは,保有する様々なコン テンツへのアクセスを増やすため,キーワード等を入力して検索する機能や,ジャンル等の 属性を指定して絞り込む機能を実装している.また,視聴されたコンテンツに関連するコン テンツを提示することなども行われている
1).しかし,キーワード検索にもとづくコンテン ツ視聴では,視聴したコンテンツにヒットするためのキーワードを利用者が把握する必要 がある.また,Web サイト側から推薦される関連コンテンツは,コンテンツ数が膨大にな る状況においては,事前にコンテンツ同士の関係性を定義することが難しいため,関係性が 明確にされないまま提示されていることが多い.そのため,「関連動画」といった表現で関 連コンテンツが表示されている場合は多い.
そこで,本研究では,より多くのコンテンツへのアクセスを実現することを目的に,映像 コンテンツ同士を直接関連づけて関係性を記述するのではなく,柔軟に表現可能な軸に,映 像コンテンツを関連付けるデータモデルを提案する.提案するデータモデルでは,映像コン テンツ同士は,軸を経由して関連付けられることになる.つまり,軸を入れ替えることで,
映像コンテンツを活用した様々なコンテンツサービスが可能となる(図-2.1.1).図-2.1.1 は,
制作されたコンテンツを,学年をベースにした軸やレベルをベースにした軸,あるスコアを ベースにした軸に関連付け直すことで,様々なコンテンツ利用のニーズに合わせた提示が 可能となることを表わしている.また,利用者の視点においても,コンテンツの関係性が,
基準となる軸により明示されるため,関係性を把握した上で,コンテンツへのアクセスが容 易となるというメリットもある.提案するデータモデルは,上述したセマンティック技術に より記述されるため,コンテンツ同士の繋がりの意味をソフトウェアが処理することで,柔 軟なコンテンツ提示が可能となる.
本章では,映像コンテンツの活用が進む教育分野に着目し,学習指導要領から生成した学 習順序を軸として,NHK が教育向けに制作している映像コンテンツを関連づける.その上 で,映像コンテンツへのアクセスや視聴を増やすというコンテンツプロバイダー視点での 目的を実現できるか検証する.ここでの学習順序とは,例えば,「核」の後に勉強するのは
「染色体」, 「染色体」の後に勉強するのは「細胞分裂」, 「細胞分裂」の後に勉強するのは「遺
伝子」といった構造であり,その学習順序数や学習順序の分岐は内容によって異なる.「染
色体」を起点にした場合の学習順序や,物理の「運動」に関する学習順序は異なるものとな
る.つまり,軸となる学習順序は柔軟に表現可能である必要がある.一方,映像コンテンツ
の数についても事前に指定することなく関連付けることが出来れば,学習順序に従い柔軟
な映像コンテンツの提示や運用が可能となる.そのため,情報のつながりに意味を記述でき
13
るセマンティック Web 技術
2)のデータ記述方法であり,情報構造を柔軟に定義できる RDF
(Resource Description Framework)形式で記述する.
この構造化データをもとに,学習順序を辿りながら,映像を視聴できる教育向け Web サ イトである「りかまっぷ」を開発した.既存の動画視聴 Web サイトである「NHK for School」
と「りかまっぷ」は,同じ映像コンテンツを定常的にインターネットで一般公開しているた め,両サイトでのコンテンツ視聴傾向を比較することで,コンテンツ提示方法の検証が可能 である.そこで,本章では,どちらがより幅広く動画が見られているか,また,どちらが 1 回の訪問においてより多くの動画が視聴されているかといった傾向を分析し,より多くの コンテンツ視聴に寄与するコンテンツ提示方法について考察する.さらに,「りかまっぷ」
上での利用者の行動分析を行う.
図-2.1.1 軸を入れ替えたコンテンツサービスのイメージ
2.2. 関連研究
コンテンツ検索に関する研究は多くおこなわれている.例えば,キーワード検索の問題を 解決するために取り組まれている研究として,動画による検索方法の研究
3),検索検索結果 が推薦された理由を提示する研究
4)や, Web ブラウジングにおける周辺情報の提示研究
5)など,多く行われている.これらの研究は,検索方法に関する研究であり,構造化データに 着目した本研究とは着眼点が異なる.一方,構造化データを活用したコンテンツ提示の研究 としては,利用者が付与したタグを階層化し,その階層関係から関連動画を推薦する手法
6)や,ニュース映像をトピック毎に時系列に提示する手法
7)が研究されているが,あくまで
制作公開 利用
制作
初心者向け
中級者向け
上級者向け 小学生向け
中学生向け 高校生向け
大学生向け
スコア5点
スコア3点
スコア1点
B A
X Y Z
A B X Y
Z
様々な軸
制作されたコンテンツ
14
ある特定の構造でコンテンツを提示することに留まっている.本研究の応用分野である教 育分野においても,構造化データに着目した研究は存在する.コンテンツ間の関係性明示が 学習者の動画視聴行動に影響することを示した研究や
8),学習対象メタデータを付与するこ とで教育用コンテンツの流通に着眼した研究
9)がある.学習のつながりに着目したカリキ ュラム研究も行われているが,カリキュラムをデータとして利用可能にすることを想定し た取り組みにはなっていない
10).このように,構造化データやカリキュラムに着目した研 究はあるが,コンテンツ同士を直接関連づけて関係性を記述するのではなく,柔軟に表現可 能な軸にコンテンツを関連付けるデータモデル自体に着目した本研究とは着眼点が異なる.
本研究は,学習指導要領から生成した学習順序をデータで表現するとともに,動画等のコン テンツを関連付けられるデータ構造を実際のシステムに導入し,サービスを実現した例を 示すものである.なお,本研究では,小学および中学理科に関する学習指導要領を対象とす るため学習順序をデータ構造上の軸にしているが,他教科とのつながりを軸に組み込むこ とや高等学校の学習指導要領につなげることも可能である.さらには,RDF によりデータ 構造を記述することで,関連する映像コンテンツの数を柔軟に増減することも可能である.
構造化データを活用することで実現した,学習順序を辿りながら映像コンテンツを視聴で きるサービスの実例を活用例として示し,通常のキーワード検索サービスとの比較を行い,
データモデルの有用性を評価する.そのため,本研究は,構造化データを活用したコンテン ツ提示に関する応用に寄与できるものである.
2.3. NHK for School と「りかまっぷ」
「NHK for School」は, NHK が学校教育向けに放送した番組を,インターネット経由で
ストリーミング視聴できる Web サイトである.2018 年 3 月現在,約 9,000 本の動画が公開
されている
11).理科だけでも,約 3,000 本の動画を公開している.本サイトでは,動画検
索・視聴機能の他,電子黒板機能や授業案作成案の提供などにより,教員を支援するための
機能もある.動画検索機能としては,学年や教科を指定したフィルタリング機能や,キーワ
ード検索機能が実装されている.図-2.3.1 に,教科を理科,学年を小 6,キーワードを「消
化」として検索した結果と,検索結果のサムネイルを押下することで動画再生を行える例を
示す.
15
図-2.3.1 NHK for School での検索結果例(左)と動画再生例(右)
「りかまっぷ」
12)は,NHK が保有する多様な教育向け動画を,自主的に,より多く視 聴してもらうことを目的に 2017 年 5 月 1 日に開始された Web サイトである.「りかまっ ぷ」では,「NHK for School」で公開されている理科の動画約 3,000 本を,学習項目に合わ せて動的に生成される学習順序にしたがい提示する.デザイン面でも特徴があり,キーワー ド検索等で必要になるような文字入力や,学年選択等の入力機能も排除している(図-2.3.2).
「りかまっぷ」のトップ画面では,身近な生活をイメージした画像上に,小中学校で学習す る内容をアイコン化して配置している.例えば,トップ画面の左上は台所をイメージし,化 学に関する学習項目が配置される.アイコン化された学習項目は,学習指導要領で規定され た 144 の学習内容である.
図-2.3.2 「りかまっぷ」トップ画面
トップ画面で学習アイコンを選択することで,選択された学習項目を基点に, 「学び直し」
や「先で学ぶ内容」で構成される学習順序が動的に生成される.利用者は,生成された学習
16
順序を辿りながら動画視聴できる画面に遷移できる(図-2.3.3).図-2.3.3 では,小学 5 年生 で学習する内容である「母体内の成⾧」に関する動画が表示されるだけでなく,「母体内の 成⾧」を基点に,学び直しとして「水中の小さな生物」がつながり,先で学ぶ内容として中 学 2 年生の「生物と細胞」がつながって学習順序を形成している.この学習順序は,学習指 導要領に規定された 144 の学習項目から,学習の順序を半自動的に計算し生成されたもの である
13).学習順序を構成する各学習項目に,「NHK for School」の各動画が関連付けられ ている.そのため,起点となる学習項目により,表示される学習順序や関連動画が異なる.
図-2.3.4 は,図-2.3.3 の「母体内の成⾧」とは異なる学習項目である「細胞分裂と生物の成
⾧」を選択した場合の学習順序であり,どの学習項目が基点になるかによって表示される学 習順序や関連動画が異なることを示している.「りかまっぷ」の利用者は,中学 3 年の「細 胞分裂と生物の成⾧」に関する学習時に,小学 5 年生で学習する「母体内の成⾧」に戻っ て,「母体内の成⾧」の関連動画により学び直すことが可能となる.
図-2.3.3「母体内の成⾧」を基点とした学習順序
図-2.3.4「細胞分裂と生物の成⾧」を基点とした学習順序
17
2.3.1. 「りかまっぷ」を支えるデータ構造
「りかまっぷ」での学習順序や関連動画は,本研究が提案するデータ構造により実現され ている.本研究では,セマンティック Web 技術の記述形式であり柔軟な拡張が可能である RDF で表現した学習順序に,動画データを関連づける構造とする.「りかまっぷ」の学習順 序は,上述の通り,文部科学省が公開している,小学及び中学理科の学習指導要領内
14),15)の 144 の学習内容の前後のつながりから生成されている.学習指導要領には,学年別に,
学ぶ内容が記述されている.例えば,教員が,中学理科第 2 分野の「(3)動物の生活と生物 の変遷‐ア生物と細胞‐(ア)生物と細胞」を指導する際,小学 6 年生で学ぶ「B 生命と地 球‐(3)生物と環境」を学び直しとして指導することが想定されるが,現状はそのつなが りが明記されていない.このように,学習指導要領は,学習指導に関する知識が記述されて いるが,学習の順序が明記されていない.そこで,本章では,学習指導要領内の学習順序を データ化し,動画情報を学習順序という軸に紐づけたデータモデルとして利用可能とし,
「りかまっぷ」で活用する.
学習順序は,学習項目同士のつながりや分岐を,起点となる学習項目単位に共通定義する ことができないため,表形式データでは表現が難しい.そのため,柔軟に表現可能なデータ 記述が必要である.また,コンテンツの利活用を促進するためには,コンテンツを利用する 外部のシステムやソフトウェアが学習順序の意味を共有しやすいデータ記述が求められる.
そのため本章では,データ化とデータの利活用を考慮し,RDF により学習順序知識を表現 する.さらに,学習順序だけでなく,「りかまっぷ」で必要となる動画とのつながりも RDF で表現する.RDF とは,セマンティック Web 技術を支えるデータ記述形式であり,データ 同士の関係に意味を記述してつなげることができる.また,全ての情報をトリプル(主語‐
述語‐目的語)で表現し,目的語を新たな主語として情報を数珠つなぎで連結することが可 能である
16).RDF で記述するデータモデルのイメージを図-2.3.5 に示す.図-2.3.5 に示す 通り,学習順序を軸とし,その軸に動画を紐づける構造としている.図-2.3.5 の例では, 「学 習項目 1(主語)」 「学び直し(述語)」 「学習項目 2(目的語)」と記述されると同時に,
「学習項目 2」は主語として, 「学習項目 3」とつながっている.このように構造を柔軟に定 義可能である.また,各学習内容に紐づく動画クリップも,トリプルデータとして柔軟に追 加可能であるため,関連付ける動画クリップ数を事前に決める必要がない.図-2.3.5 に示す データモデルは,コンテンツプロバイダーがコンテンツホルダーからコンテンツを取得す る際,特定の軸を設けることでコンテンツ制作とコンテンツ提示の境界が明確になるため,
コンテンツ運用が容易になる.本項以降で紹介する「りかまっぷ」のコンテンツ運用におい
ても,コンテンツ制作と「りかまっぷ」で提示する軸を分けたことで,容易であり安定した
コンテンツ運用を可能とする.
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図-2.3.5 データモデルイメージ
2.3.2. 学習指導要領から学習順序データの生成
本章では,学習指導要領で定義されている最小単位を学習項目と定義する.図-2.3.6 に,
学習指導要領で記載されている学習内容を抜粋して示す.例えば,中学理科第 2 分野の,
「(3)動物の生活と生物の変遷‐ア生物と細胞‐(ア)生物と細胞」が学習項目にあたり,
「2 内容」だけでなく「3 内容の取扱い」という項目に別々に記述されている.
図-2.3.6 学習指導要領における本研究での学習項目の定義
この学習項目同士のつながりを, 「先で学ぶ」 「学び直し」といった意味でデータ化する.
順序性の計算については,各学習内容に出現する単語の,「類似性」と「継承性」に着目し データ化を行う
13).各学習項目で初めて出現した語である新出語が,別の学習項目でどれ だけ出現しているかを「類似性」と定義し,ある学習項目の新出語が,別の学習項目の新出 語ではない既出語に出現することを新出語の「継承性」と定義した.この新出語の「類似性」
と「継承性」を加算することで,学習項目同士の関連度を計算した.本章では,さらに,動
学習項目1 学習項目
2
動画1 動画
2 動画
3 動画
4 学び直し
“柔軟に抽出・拡張可能”
“紐づく動画数を指定不要”
学習項目3
関連する学習内容
学習の順序(軸)
関連する学習内容
(3) 動物の生活と生物の変遷
生物の体は細胞からできていることを観察を通して理解させる。また,動物などについての観察,実験を通 して,動物の体のつくりと働きを理解させ,動物の生活と種類についての認識を深めるとともに,生物の変遷 について理解させる。
ア 生物と細胞
(ア) 生物と細胞
生物の組織などの観察を行い,生物の体が細胞からできていること及び植物と動物の細胞のつくりの 特徴を見いだすこと。
イ 動物の体のつくりと働き
(ア) 生命を維持する働き
消化や呼吸,血液の循環についての観察,実験を行い,動物の体が必要な物質を取り入れ運搬して いる仕組みを観察,実験の結果と関連付けてとらえること。また,不要となった物質を排出する仕組みが あることについて理解すること。
(イ) 刺激と反応
動物が外界の刺激に適切に反応している様子の観察を行い,その仕組みを感覚器官,神経系及び運 動器官のつくりと関連付けてとらえること。
学習項目として定義
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画情報との連携のため「nfs:refer」という関係により,学習指導要領への参照を表現する.
学習順序に関する構造化データの一例を図-2.3.7 に示す.図中にある通り,学習項目の一つ である,nfs:Item0133 は,学習指導要領の「中学 理科 第 2 (5)ア(ア)」である「細胞 分 裂 と 生 物 の 成 ⾧ 」 を示 す イ ン ス タ ン ス ( 以下 , 学 習 ID ) で あ り, 名 前 空 間 内
(http://school.nhk.or.jp※Prefix として nfs として表現)で一意となるようデータ化され る. 「nfs:Item0133」 「nfs:hasReview」 「nfs:Item0122」が示すように,nfs:Item0133 は,
学び直しとして nfs:Item0122 や nfs:Item0045 を持つ構造となっている.この関係は同時に,
nfs:Item0122 や nfs:Item0045 は,nfs:Item0133 を先で学ぶ学習 ID として持つことを意味 する.このように,「nfs:Item0122」 「先で学ぶ(nfs:hasBrushUp)」 「nfs:Item0133」
というデータを作ることなく,学習項目の関係から新たな関係を推論することが可能であ ることもセマンティック Web 技術の特徴の一つである.なお,対象学年を nfs:grade に,
目標を nfs:goal に定義する.データ化した学習順序データは,後述するシステムに事前に登 録しておく.
図-2.3.7 学習順序に関する構造化データ例
2.3.3. 動画情報のデータ化
学習順序に関連づける動画は,既存の「NHK for School」で管理する動画情報を活用する.
「NHK for School」で管理する動画情報の中に,関連する学習指導要領の学習項目が番組制 作段階で入力されているためである.例えば,動画 ID が D0005110133 である「細胞分裂
nfs:Item0133
細胞分裂と生物の成長
nfs:title
中学 理科 第
2 (5)
ア (ア)体細胞分裂の観察を行い,その過程を確か めるとともに,細胞の分裂を生物の成長と 関連付けてとらえること。
nfs:goal
nfs: Item0122
nfs:Item0045
生物と細胞
中学 理科 第
2 (3)
ア (ア)生物の組織などの観察を行い,生物の体が 細胞からできていること及び植物と動物の 細胞のつくりの特徴を見いだすこと。
nfs:goal
nfs: Item0114
nfs:hasReview nfs:hasReview
nfs:hasReview
中
3 nfs:grade
中
2 nfs:grade
nfs:Item0134
nfs:hasReview
※
nfs=http://school.nhk.or.jp
nfs:title nfs:refer
nfs:refer
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と生物の成⾧」は,「中学 理科 第 2 (5) ア(ア)」と設定されている.図-2.3.8 に,動画 情報に関する構造化データの一例を示す.それぞれの動画についても,学習項目同様に,名 前空間上で一意となるようインスタンス化(以下,動画 ID)している.その上で,
nfs:relatedCurriculum として設定される内容から,図-2.3.7 に示す学習 ID を特定し紐づけ る構造となっている.なお,動画タイトルを dc:title に,動画尺を nfs:duration に,再生回 数を nfs:cumulativePlayCount に,それぞれ定義する.なお,図-2.3.8 に示す構造化データ は,動画情報の構造の一部を抜粋したものである.
図-2.3.8 動画情報データ例
2.4. システム構成
上述の通り,「りかまっぷ」は,学習順序とその関連動画に関するデータで実現されて いる.学習順序は,学習指導要領から生成されているため,学習指導要領が変わるまでは更 新の必要がない.一方,学習内容に関連する動画は,日々制作されるため,更新できる必要 がある.そこで,運用負担を軽減するため,「NHK for School」の動画情報を定期的に取り 込み自動的に学習順序に紐づけるシステム構成とした.図-2.4.1 にシステム構成を示す.
図-2.4.1 に示す通り,学習指導要領から生成した学習順序を示す RDF データは,事前に RDF ストア(Stardog
17))に取り込んでおく.日々制作される動画に関する情報(TSV フ ォーマット)は,既存のシステムから FTP により毎日送信される.TSV ファイルには,
nfs:D0005110133
体細胞分裂の様子を観察し、細 胞の分裂と生物の成長を関連付 けて理解する。
dc:subject
00:09:59:999 nfs:duration
nfs:relatedCurriculumID
10minボックス理科2分野 dc:title
※nfs=http://school.nhk.or.jp/
※dc=http://purl.org/dc/terms/
nfs: Item0133
細胞分裂と成長 nfs:subtitle
41197 nfs:cumulativePlayCount
nfs:D0005301487
細胞の核の中に存在し、細胞分 裂のときにあらわれる染色体を 実写とCGで説明します。
dc:subject
00:01:34:127 nfs:duration
染色体とは?
dc:title
1784 nfs:cumulativePlayCount
nfs:relatedCurriculumID 中学 理科 第2 (5) ア(ア) nfs:relatedCurriculum
中学 理科 第2 (5) ア(ア) nfs:relatedCurriculum
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「NHK for School」で管理する動画情報として,関連する学習指導要領の学習項目が入力さ れている.そのため,TSV フォーマットから,図-2.3.8 に示すデータ構造にしたがい TTL フォーマット
18)に変換し,RDF ストアに自動で登録することができる.TTL フォーマッ トへの変換時に,上述した通り,各動画の対応する学習内容情報(nfs:relatedCurriculum)
をもとに,既に取り込まれた学習 ID に紐づけた RDF データを生成する.
図-2.4.1 システム構成
一方,「りかまっぷ」クライアントからのデータ取得要求については,セキュリティ上の 観点からクエリ文を隠蔽するため,API サーバーが仲介しクエリ文を生成する構成とする.
具体的には,「りかまっぷ」クライアントの Web ブラウザおよび Javascript には,RDF デ ータを取得するための SPARQL クエリ
19)を直接記載せず,学習 ID のみを指定する.ク ライアントから要求を受けた API サーバーが学習 ID をもとに SPARQL クエリを生成し RDF ストアに仲介する構成としている.
なお,学習順序を取得するクエリは,数珠つなぎのデータをたどりながら取得するため,
プロパティパスを取得するクエリ
20)が必要になる.プロパティパスクエリは,性能に影響 を及ぼす可能性があるため,事前に表-2.4.1 に示す性能検証を行い,RDF ストアの一つで ある Stardog を選定した.本検証で対象としたのは,Stardog4.2.3(Community バージョ ン)と Apache Jena Fuseki2.4.1
21)である.
表-2.4.1 RDF ストアの性能検証
クエリ Stardog Fuseki
動画情報取得クエリ 0.08 秒 0.04 秒
学習順序取得クエリ(先で学ぶ内容) 1.09 秒 10.65 秒
学習順序取得クエリ(学び直し内容) 1.31 秒 11.16 秒
22
2.5. ログ設計
「りかまっぷ」の利用ログとして,ページ表示時やクリック操作時に学習 ID や動画 ID を,Web ブラウザ毎に発行する UUID(Universally Unique IDentifier)と関連付けて蓄積 する.UUID により,トップ画面にアクセスして,学習アイコンをいくつクリックして学習 順序画面に遷移したのか,どの学習内容に遷移してから動画を再生したのか,といった動線 分析が可能となる.ただし,「りかまっぷ」にはログイン機能等はないため,蓄積するログ からユーザー情報を特定することはできない.表-2.5.1 に,主なログの発行タイミングとそ の内容を示す.図-2.5.1 に,ログ発行タイミングと画面との対応関係を示す.既存の「NHK for School」のログは,NHK が保有するログシステムから取得する.
表-2.5.1 ログ発行タイミングと送信値
No イベント名 送信値
1 トップ画面表示時
2 トップ画面で学習アイコンクリック時 学習 ID 3 トップ画面から学習順序画面遷移時 学習 ID 4 学習順序画面で動画クリック時 動画 ID 5 学習順序画面で学習アイコンクリック時 学習 ID
図-2.5.1 ログ発行イベントと画面の対応
2.6. 利用実績
「りかまっぷ」をサービス開始した 2017 年 5 月 1 日から,2018 年 3 月 31 日までの期間に
おける動画視聴やユーザー行動の傾向を分析した.
23
2.6.1. 「NHK for School」と「りかまっぷ」での動画視聴
本項では,既存の「NHK for School」と「りかまっぷ」の両サイトにおいて,NHK が保 有する動画がどのように視聴されているかを検証する.表-2.6.1 に, 「NHK for School」と
「りかまっぷ」の番組・クリップ検索機能(図-2.3.1)における,動画視聴実績を示す.視 聴動画本数は,同期間において視聴された動画数を示す.同期間において公開された,理科 に関する動画は 2,796 本だったため,「りかまっぷ」では,ほぼ全ての動画(97.6%)が視 聴されたことが分かる.その一方,「NHK for School」では,13.9%の動画が視聴されてい る.
表-2.6.1 視聴された動画の本数 NHK for School
(理科)
りかまっぷ
視聴動画本数 388 本(13.9%) 2,730 本(97.6%)
「NHK for School」と「りかまっぷ」における,各動画の視聴回数分布を図-2.6.1,図-2.6.2 に示す.横軸は,各動画の ID を,縦軸は各動画の再生回数を表示している.両サイトにお いて,特定の動画へのニーズが集中したロングテール型の視聴傾向となっている. 「NHK for School」での視聴回数が最も多い動画から 10 位までを表-2.6.2 に示す.「りかまっぷ」での 視聴回数が最も多い動画から 10 位までを表-2.6.3 に示す.
図-2.6.1 各動画の視聴回数分布(NHK for School))
0 50,000 100,000 150,000 200,000
D0005110083_… D0005110046_… D0005110010_… D0005110333_… D0005110131_… D0005110039_… D0005110351_… D0005110001_… D0005110020_… D0005110215_… D0005110341_… D0005100118_… D0005110348_… D0005100124_… D0005110349_… D0005100131_… D0005100136_… D0005100114_… D0005100067_… D0005100111_…
再生回数(縦軸)
各動画ID ※抜粋(横軸)
24
図-2.6.2 各動画の視聴回数分布(りかまっぷ)
表-2.6.2 動画視聴回数上位 10 の動画(NHK for School)
表-2.6.3 動画視聴回数上位 10 の動画(
りかまっぷ) 200 0
400 600 1,000 800 1,200 1,400
D0005301511… D0005301137… D0005400357… D0005110059… D0005400312… D0005110201… D0005400194… D0005301417… D0005110256… D0005300678… D0005300645… D0005402058… D0005400282… D0005300538… D0005400739… D0005300472… D0005400262… D0005100158… D0005300908… D0005400655…
再生回数(縦軸)
各動画ID ※抜粋(横軸)
動画タイトル 視聴回数
人のたんじょう 193,415
月のかたち 103,238
台風はどこへ? 89,879
人のたんじょう 74,704
火山の力 74,181
月はどこに? 68,057
食べると… 66,739
夏の星たち 66,587
冬の星を観察しよう 64,478
動物の体 64,265
動画タイトル 視聴回数
月の形が変わるのは? 1,233
腐(くさ)らないヒミツ 784
夏休み自由研究 583
人のたんじょう 539
4分でわかる!? 宇宙138億年 528
月を調べたい! 437
火山の力 393
赤ちゃんの誕生 349
地形を変える火山活動 307
月のかたち 302
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表-2.6.4 に,両サイトにおける動画視聴回数と動画再生完了数を示す.動画視聴回数は,
各動画の視聴回数の合計である.50%再生完了数は,動画の半分まで再生した回数を表し,
100%再生完了数は,動画の最後まで再生完了した回数を表す.なお,再生完了率は NHK のログサーバーが保持する情報であるため,本研究でも 50%・100%の粒度で検証する.
「NHK for School」と「りかまっぷ」の両方で視聴された 320 の動画の,50%再生完了割 合や 100%再生完了割合の平均の差が優位かを判定するため t 検定を行ったところ,両サー ビスでの 50%再生完了割合平均の差が偶然であった確率は 1.62×10
-6,100%再生完了割合 平均の差が偶然であった確率は 3.07×10
-35であり,それぞれに優位な差が確認された.つ まり,「NHK for School」での動画視聴の方が,再生完了割合が高いことが分かる.
表-2.6.4 両サイトにおける動画視聴回数と再生完了率 NHK for School
(理科クリップ)
りかまっぷ
動画視聴回数 4,983,301 回 44,200 回 50%再生完了数
(動画視聴数に対する割合)
1,599,375 回
(32.1%)
18,786 回
(42.5%)
100%再生完了数
(動画視聴数に対する割合)
936,317 回
(18.9%)
838 回
(1.9%)
次に,サイトにアクセスした際(ページビュー)に視聴された動画数を表-2.6.5 に示す.
ここで,既存の「NHK for School」の番組・クリップ検索画面での「理科」に限定したペー ジビューは,既存のログシステムから取得できないため,動画視聴回数は,「理科」に限定 せず「NHK for School」全体における動画視聴回数とする.既存の「NHK for School」では,
1 訪問あたりの動画視聴回数が 3 回以上となっている一方,「りかまっぷ」では,訪問した 際,約半数が動画を視聴していないことが分かる.
表-2.6.5 ページビューと動画視聴数
りかまっぷ NHK for School
(全教科)
ページビュー 84,794 回 8,585,850 回 動画視聴回数 44,200 回 26,285,178 回 動画視聴回数/1 訪問 0.52 回 3.06 回
2.6.2. 「りかまっぷ」における行動分析
本項では,「りかまっぷ」内での利用者の行動分析結果を示す.表-2.6.6 は,「りかまっ
ぷ」にアクセスした後の動線結果を表している.表-2.6.6 から,トップ画面にアクセスした
26
際,平均約 1.4 の学習アイコンをクリックしていることがわかる.そのうち,約 40%が学 習順序画面への遷移につながっている.
学習順序画面では,「先で学ぶ」学習内容が選択された回数は 15,653 回で,「学び直し」
の学習内容が選択された回数は 18,725 回と,学び直し方向に辿ることが多かった.なお,
学習順序画面に遷移した際,たどる学習アイテム数は平均すると約 3 アイテムだった.こ れは,学習順序を形成する学習項目を,「学び直し」もしくは「先で学ぶ」方向に 3 つ辿っ ていることを意味している.また,学習順序画面での動画再生回数の約半数が,学習順序上 の他の学習項目に遷移してからの再生回数になっている.つまり,学習順序が視聴回数の増 加及び幅広い動画視聴に寄与していることが分かる.このように動線分析を可能とした理 由は,2.5 項に示したログ設計により,UUID と学習 ID や動画 ID を関連付けて蓄積した ためである.
表-2.6.6 「りかまっぷ」内の動線分析
行動 回数
トップページ訪問回数 84,794 回
トップページでの学習アイコンクリック数 121,057 回
トップページから学習順序画面への遷移数 49,221 回
学習順序上での関連学習アイコンクリック数 34,378 回
学習順序上の「先で学ぶ」学習アイコンクリック数 15,653 回 学習順序上の「学び直し」学習アイコンクリック数 18,725 回 学習順序遷移時の学習アイコンクリック数(1 回のアクセスで,ど
の程度学習順序をたどっているか)
約 3 アイコン
学習順序画面での動画クリック数 44,200 回
学習順序画面の学習順序上の関連学習アイコンに遷移してから再生 した視聴回数
20,654 回
2.7. 考察
表-2.6.1 から, 「りかまっぷ」では, 「NHK for School」の理科に関するほぼ全ての動画(97.
6%)に対してアクセスされていることが分かる.これは,表-2.6.6 にある通り,学習順序
画面に遷移した後,69.8%が学習順序上で関連する学習項目に遷移している.関連する学習
項目に遷移した後,60.0%が関連動画を再生している.また,平均して 3 アイテムまで学習
順序をたどっている.これらのことから,学習順序という軸上に動画を配置することで,動
画コンテンツ同士を意味のある関係性を明示しながら柔軟に提示したことで,関連動画へ
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の幅広いアクセスを実現し,結果として網羅的なコンテンツアクセスを実現している.学び 直し方向への動線の方が,先で学ぶ方向への動線より,約 1.2 倍多くなっているが,デザイ ンによる影響なのか,学習意図を持った動線なのかは,A/B テストといったユーザー毎に パターンを分けた検証やインタビュー調査などの追加調査が必要である.
一方で,表-2.6.5 から,1 訪問あたりの動画視聴数は,「りかまっぷ」より既存の「NHK for School」の方が約 6 倍多いことが分かる.また,動画の再生完了割合も,表-2.6.4 に示 す通り,両サイトでの 50%再生完了割合平均の t 値(自由度=638)は 4.84(p 値=1.62×
10
-6)であり,また,100%再生完了割合平均の t 値(自由度=638)は 13.18(p 値=3.07×
10
-35)であり,それぞれに有意な差が確認され,「NHK for School」での動画視聴の方が,
再生完了割合が約 10 倍高いことが分かる.キーワード検索により得られた動画提示の場合 に,幅広い映像コンテンツへのアクセスは実現できていない一方で,検索結果として得られ た動画を⾧く視聴している結果となっていることが分かる.キーワード検索の方が,目的意 識が強いため,検索して得られた動画を最後まで見る傾向にあるものと考えられる.さらに,
図-2.6.1 や図-2.6.2 で示されているように,ロングテール型の視聴傾向から,特定の動画へ のニーズがあることが分かる. 表-2.6.2 や表-2.6.3 から,それらは生物や地学に関する動 画であった.
2.8. まとめ