国際公法における空法の基礎的研究(5)完
−紛争処理手続に関する規定の検討を中心として−
名
島
芳
1 目 次
−
一〇︑航空業務に関する国際紛争の解決
H 航空条約の解釈と民間航空に関する紛争
出 ICAO坦童会の性権と司法的権能の特色
臼 二国間協定上の紛争解決規定と理事会の決定
田 日本を当事国とする航空協定における紛争処理規定の検討
国 語 諭
一〇︑航空業務に関する国際的紛争の解決
0 航空条約の解釈と民間航空に関する紛争
︵ A
︶ 多 く の 航 空 協 定 或 は 条 約 は ︑ そ の 通 用 又 は 解 釈 に つ い て 生 ず る 紛 争 の 平 和 的 処 理 に 関 す る 規 定 を 設 け て い る ︒
国櫻公法における空法の基礎的研究㈲完 三五
経 営 と 経 済
その中で総則的な規定と見られるのがシカゴ条約第十八章である︒乙の規定は︑
一 一
一 六
シカゴ条約自身の適用又は解釈に
ついて生ずる紛争の際に適用されるのみではない︒
他の多数国間協定︑即ち国際航空通過業務協定及び国際航空運送協定のような現在の主たる協定においても︑紛争
の附託はシカゴ条約第十八章の手続によって行われ︑旦つその規定を準用して終結せしめる方式がとられ︑更に二国
間航空協定においても国際民間航空機関理事会に紛争処理の司法的権能を認めることは︑各ケイスにより細目の点で
差異はあるが原則として共通している︒
従って国際民間航空機関
(I CA O)
の行う行政的︑組織的機能のほかに注目すべき司法的権能の内容と併せて各
種航空協定が問機関理事会の有する司法的権能を活用する点が︑国際航空機関の司法的管轄権の問題として最後に見
おとし得ないものと思われる︒
シカゴ条約は第八四条の紛争解決のための規定では文言上﹁この条約及び附属書の解釈又は適用に関するこ以上の
締約国聞の意見の相違が交渉によって解決されない場合は﹂として︑中心問題たる商業権行使の問題のみならず︑広
く航空施設︑共同運営組織︑差別待遇の廃止︑その他シカゴ条約規定の各条に関する解釈又は適用上の紛争を対象と
し て
い る
︒
一方このような紛争解決の手続を定める第十八章はその性格上必ずしも特殊的でなく︑ 一般的に多くの条約が条約
の適用及び解釈について設けている紛争処理の規定と形式的意味では変りはない︒
国際法上︑条約の解釈方法について﹁一般的に有効な拘束性のある国際規範で︑それに従って慣習法であれ条約で
あれ︑解釈しなければならないという規範は存在しない﹂とアンチロッティが云う処は別段現在でも変りはない︒
(krロN
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ー
骨
た Y 注意を要する点が一つある
cそれは国際機関はその任務とする特殊的国際管轄を行う際に目的に従って(右に
見た条約解釈に関する規範性の一般的欠除はそれはそれとして)機関の目的の実現をより専同化された方法で充足す
るにはどうすればよいかにつき︑近時多大の国際立法上の変化が見られることに関連する︒
一例として国際労働機関憲章では第二四条以下で条約の実効的遵守が加盟国の管轄権内で確保されていない
( B
)
とき︑使用者又は労働者団体が右機関事務局に申立を行い機関の勧告によって政府の弁明をきくとか︑条約違反に対
する苦情について第二六条以下で審査委員会を設けて報告を作成し︑更に政府が右委員会の報告書にある勧告を受諾
しないときは︑国際司法裁判所に決定を委ね︑審査委員会の認定または勧告或は苦情について右裁判所の権限によっ
て 決
定 し
︑
その決定を最終的とする︑という一連の紛争処理の方式をとっている︒
こ﹀に見られるのは︑当事国︑関係者から専問機関の審査手続をへて︑紛争がなお解決不能のときは国際司法裁判
所の決定に委ねられるという国際機関の行う目的の実現を具体的なケイスの中において関係当事国の利害の裁定の形
で行うことである︒
国際機関がその憲章上生ずる紛争または解釈の相違について第一次的な管轄権をもつことは︑機関が専ら行う特殊
国際法の実効性の確保のために︑技術的に詳しい立場にある機関自身が最もその役に適していることと︑機関の組織
的な統一性の自己充足度を高からしめる目的による︒
ま た
一 方
︑
一般の多数国間条約の中でも紛争の解決を条約自体が定めるものも少なくない︒
﹁国籍法のてい触についてのある屈の問題に関する条約﹂の第二十一条は︑
同条約の解釈又は適用上の紛争が外交手段によって解決されないときは︑ その一項でや﹀漠然としてはいるが︑
﹁乙の紛争は国際紛争の解決に関して当事
国の実施中の規定により解決しなければならないよと先づ定めている︒これは二国聞の仲裁裁判条約その他紛争解決
国際公法における空法の基礎的研究附完
一 一 一 七
経 蛍 と 経 済 一 一 一 入
手続を定める国際規定に委附することを定めるものであるが︑そのような規定が当事国聞にないときは常設国際司法
裁判所或は仲裁裁判所に紛争を附託することを規定している︒もっとも二国間で他の裁判所を選択するときは右の指
定は適用されない︒
また更に︑対日平和条約第二十二条は︑条約の解釈について︑関係国間で合意された方法で解決出来ない条約解釈
又は実施についての紛争は︑国際司法裁判所に決定のため附託することを同条約当事国の義務としている︒
このように多数国間条約でその解釈又は適用につき生ずる紛争に自ら一定の解決方式を定める場合と︑国際機関の
基本法における紛争に関する規定とは︑何れもつきつめれば多数国間条約上の紛争規定に過ぎないように見える︒
しかし︑国際機関の基本法における紛争解決規定と多数国間条約におけるそれとは︑実質的な意味と重要性が根本
的に異なっている︒
何故なら︑国際機関の場合は︑機関自身が加盟国と同じく単一の条約(基本法)によって権利義務を負いながら︑
主体的に当該条約の適用に第一次的な専門的な立場それは殆ど例外なく機関の権限として基木法で加盟国の主張し
うる権利或は負うべき義務とは別に定められているーから参与し︑当該条約の運用の適正を保障する機能的責任を果
す法的な立場にあるからである︒
国際機関自身の構成︑権能そのものが︑同機関の設立を可能とした多数国間条約で定められ︑しかもその条約の実
施を加盟国と異なる法的地位に立って主たる任務とするという国際機関の法人格と機能の累白性が一般の国家間条約
に見られない点である︒
すでに見た国際労働機関の場合は︑紛争及び苦情の処理のため審査委員会を設けて各加盟国及び労資関係団体の申
立を︑条約(国際労働機関憲章)不遵守︑違反の点で調べ︑報告又は勧告を行う︒それらが実行されれば紛争は解決
一概に機関内部での処理の困難なものもあることを予定して国際司法裁判所に拡張的な
紛争の管轄権を求めることを定めている︒ される筈のものであっても︑
従って︑多数国間条約上当事国間で生ずる紛争についてその解決の方式を指定し︑国際司法裁判所の管轄を求める
場合に較べ (前述の国籍てい触に関する条約及び対日平和条約がその例)︑国際機関自ら紛争処理に対処する能力を
具える点で国際機関の基本法の自足的な性格は原則的に貫かれている︒
もっとも国際司法裁判所の管轄権は︑義務的管轄受諾の宣一一一口(国際司法裁判所規定第三六条による)による各国の
主権的国家行為にもとやついて発生するから︑現状では国際機関の紛争処理手段の故に︑それだからといって当事国の
意思の範囲をこえた意味での強制的管轄では原則としてあり得ない︒
だから︑国際労働機関憲章においても︑第二九条は︑審査委員会報告書にある勤告についての関係政府の態度につ
き︑受諾しないとすれば相手国から出された条約違反の苦情申立について三ヶ月以内に国際労働機関事務局長に対し
て︑国際司法裁判所に決定を求めるようにするか否かの意思表示をするまでで︑機関としては紛争の取扱手続を終了
していると解される︒
別言すれば︑右の段階以後は︑関係当事国間の国際司法裁判所管轄権の受諾の範囲に従い︑ひとまづ国際争訟或は
勧告的意見詰求の形で︑国際機関の紛争処理の管轄外の領域で︑実際上は争は法的解決又はそのいとぐちを求められ
る︒この場合も︑予審的意味で機関の管轄が見られることは︑機関の基本法としては︑多数国間条約で紛争解決を仲
裁或は司法裁判所に附託せよとする︑ ゃゃありきたりの万式と異なる意味で注目すべ︑きであろう口そこに国際機関の
松能の法的自己充足性の本旨の一端がある筈だからである︒
一九五一年四月一八日パリで調印され五二年七月設立されたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の場合では︑国際機関及び
国際公法における空法の基礎的研究刷完
一 二
九
経 嘗 と 経 済
一 三
O
組織の法的自己充足性を指向する傾向が一段と強力化されている︒
ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の設立に関する条約は独自の司法裁判所をもち︑それを﹁最高機関﹂と呼ばれる共同体
の一般的利益を助長し擁護し達成する任務を負って超国家的な国際機関の目的実現にあたる(右条約第八条)︑行政
機関と提携して共同体条約の解釈適用における法の尊重を確保するようにさせている(右条約第三一条)︒乙の例は
現状では最も進んだ国際機関の司法管轄権を示している︒
(C
)
以上いくつか見た司法管轄権の条約による規定は要すれば三つに分ちうる︒ (国際司法裁判所の管轄権は国際
機関或は組織或は詳言すれば国際行政機関が併有する司法管轄権と質的に異なり︑国際連合憲章第九二条に定められ
たように︑連合の主要な司法機関としての管轄権であるから乙﹀での分類からは省く︒)
第一に国際組織を設立するのではない多数国間条約における場合があり︑挙例によれば対日平和条約第二二条或は
国籍のてい触に関する条約第二一条のような仲裁手続又は司法手続について拠るべき裁判所を条約の適用解釈に関す
る紛争処理について指定するものである︒
第二は国際労働機関憲章第二四条以下第三四条までに主として見られる手続方式で︑国際機関の構造を定める条約
自身が︑その国際機関が行う紛争処理の独自の方式を定め︑ しかるのちその手続をつくしてから︑国際司法裁判所え
の附託及びその決定の終審性を認めるものである︒
この場合国際司法裁判所規程に基く同裁判所の義務的管轄は︑憲章当事国が別途の任意的な受諾によって負うもの
であるから︑加盟国は同時に国際司法裁判所規定の当事国たる法的地位と競合して︑国際機関の勧告の実現と苦情の
申立について︑実質的には二元的なル
l卜で解決が求められる︒その限りで紛争が終始機関の専属的な終審裁判所に
服し得ない点で機関の課する義務履行︑或は憲章の遵守の保障は︑重ねて行政的措置にまつ余地があることは否み難
l ' 、
c,
た︑三機関の紛争処理手続に国際司法裁判所の決定を終審として認めるにあたゥて︑先づその前に機関自身が紛争の
審査を起す点で第一の類型における個別国家の訴権として最初からアトマイズされた状態にないないことは︑機関自
身最終的な決定を行い得ないとしても国際機関の機能的一元性を指向する法的な意味を明瞭にする︒
要するに国際機関の紛争処理手続の例たる第二の例の場合は︑本来国際機関が有することが好ましい司法的管轄権
の最終的決定を国際司法裁判所の判決の中に求める点で︑紛争処理に独自の充足主義をとりつ︑拡張的に独立した外
部の司法機関に最終的決定を求めるものである︒
最後に第三の場合は︑ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の場合で設立準拠条約自身共同体内部の紛争を専ら管轄する裁判
所を組織自身の中に備えるように規定したものである︒
このような例では国際組織の規模︑目的︑機能を総合した上で組織自身が具有する司法手続の意味も評価しなけれ
ばならないが︑右のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の場合は共同体条約の目的達成を任務とする最高機関の権能に密接な
関係があり且つ加盟六ヶ国間の国際裁判所というよりも︑連邦裁判所の性質をもっと云われるが︑何れにせよ︑経済
的性格の諸紛争を法的に裁断する共同体自身の自己充足的な機関であることには変りはない︒
従って管略する紛争の範囲が共同体の機能的目的の枠内のものであることは言をまたない︒
こ﹀で三極の紛争解決手続又は機関の例をあげたのは他ならぬ国際民間航空機関における紛争処理方式の法構造上
の位置を類型的に前記三極と較べて一回明かにしようという目的から誌みたことを明かにしておく必要があろう︒
(D )I
・C・A・0
における司法的権能は以上のうち国際機関の例である国際労働機関
(I
・
L
・0)
及 び ヨ
lロ
ツパ石炭鉄鋼共同体
(C
・E・c・
A)
の他れの型にも属さない︒
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一一一 一一
経 営 と 経 済
一一
一
一
一 一
その理由は
I・
C・
A・
O理事会が条約の不履行につき直接制裁措置をとる権限を国際機関の内部機関として有す
ることをシカゴ条約という右機関の基本法が定めているからである︒ー・ L ・
0憲章ではその審査委員会は同委員会
の報告書又は国際司法裁判所決定中の勧告の不履行をみとめたとき︑勧告履行の確保のため適宜と認める措置を総会
に勧告することができる(国際労働機関憲章第三三条)とのみ定めているに過ぎない︒この点で違約の制裁を規定す
る
I・
C・ A ・
0理事会の権能は行政措置というよりも国際機関による司法的措置の強さをましている︒
他方
CECA
の場合のような独立した司法行政裁判所に比肩できるまでの独立性を︑
I・
C・
A‑O
理事会は構成
上有していない︒この点︑
C・
E ‑
c
・
A裁判所の連邦裁判所的な性格とも異なる︒
4 イ )
加えて注目すべきは理事会の司法的権能は︑総則的には既述のようにシカゴ条約第一八章即ち第八四条以下第
八八条までで定められているが︑各加盟国が個別的に結んだ二国間航空協定上では︑若干の類型化はできるが︑これ
ら規定による紛争解決方式は多様な法的地位づけをされて取り入れられるに至っていることである︒
一方シカゴ条約体制下の主要な二つの多数国間協定では司法手続を行う機関としての理事会を夫々次のように定め
て い
る ︒
先づ国際航空業務通過協定では︑第二条第一項の中で﹁本協定の一の締約国の行為が︑自国に不当な障害又は困難
を生ぜしめているとする締約国は︑ その状態の検討を理事会に依頼することができる︒理事会は︑依頼にもとやついて
事情を調査し︑関係国に協議をす﹀めるものとする︒この協議が紛争の解決に至らないときは︑理事会は関係国に対
して適切な意見及び勧告を行う︒しかるのち関係締約国が不当に︑適切な修正としての措置をとっていないと理事会
が認めるときは︑理事会は民間航空機関総会に対して︑右の締約国に対し修正の措置がとられるまで本協定における
加盟国としての権利と特権を停止するよう勧告することができる﹂旨を定めている︒
a
苦情申立に基く協議←勧告の措置をこの協定は理事会に一任し︑理事会の勧告が関係国によって受理されないいとき
は総会代表の三分のこによって特権停止の制裁を加えて理事会の認定が実効化されるようにしている︒またこの協定
に関する条約及び適用上の紛争は︑ シカゴ条約第一八章の各規定を同条約の適用解釈につき生じた紛争の場合につき
行うのと同じ方法で適用することを定めている︒
協定の解釈又は適用については︑従って︑ シカゴ条約の場合と手続的には全く変らない︒た Y 苦情申立の際は理事
会の調査勧告の権能を行うことを優先させ︑ それが成功しないときに︑総会による特権停止によって国際機関自身の
手により紛争を解決する万式をとっている︒
またもう一つの多数国間協定である国際航空運送協定では︑第四条で制裁及び紛争処理の規定をおき︑ その第二項
は︑殆ど国際航空通過業務協定第二条第一項と同文で苦情申立の際の処理を定めている︒更にその第三項も通過業務
協 定 と 同 じ く ︑ シカゴ条約第一八草の各規定を協定の解釈又は迎用上の紛争について適用すべき乙とを定めている︒
従って現行のシカゴ民間航空法体制下の二つの多数国間協定では︑紛争苦情の解決については︑二協定は理事会の
機 能 に 依 存 し ︑ しかもシカゴ条約に関する場合と全く同一の手続を取ることによって右条約第一八章が紛争解決の総
則的規定であることを明らかにし︑紛争解決方式の一元化をとっているものと言える︒
ニ協定について苦情が生じるのは恐らく抽象的解釈そのものについてではなく︑協定の規定適用上の効果を考量し
て始めて条約解釈は争われるのが常であるから︑実容の発生又はその予見可能性に強い根拠があるときに右にみた各
協定の該当規定は援用されよう︒た Y 何れの協定も紛争の場合はシカゴ条約の第一八章をそのま﹀適用するとするの
に対し︑苦悩申立では︑理事会の管轄権と調査及び勧告にしぼり︑その履行のない場合直ちに総会に附託して協定当
事国の特権惇止による制裁を規定した点でシカゴ条約第一八章の各規定よりも直接的に単純化された手続となってい
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一
一
一一
一一
一
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一 三
四
このことは︑二協定に関しては理事会勧告の法的比重が非常に重いことを意味している︒別言すれば理事会が行う る ︒
協議の要請︑それによる解決不能の場合の理事会独自の立場からの調査︑つ Y いて勧告の三段階が多数国協定の場合
につき理事会が有する明確な手続であることは︑主ねて注目し且つ紛争解決手続の場合と一応区別して把握しうる理
由 と
な る
︒
( ロ )
航空条約が二国間のものか多数国間のものかによって生ずる解釈上の争いは条約の解釈としては差異がないに
せよ︑多くは適用上第三国の利害関係国の立場を考慮する必要がある︒
とくにモザイク的連結による商業権の実施が数個の二国間協定に関係しているときは︑ある一つの二国間協定の解
釈及び適用も実質的には多数国間条約上のある二国間の法益に関する争いと大差がない事実が生じうる︒
仮設の例として︑今︑日本・フイリッピン聞及び日・米間及び日・仏間の三つの航空協定は夫々別ではあるが︑フ
イリッピンが太平洋路線上で東京に寄港する権利を米国と比国間の航空協定上で米国に認めさせたとする︒その場合
日本としては︑東京乗入れ(この場合は第五の自由の承認を比国に認めその商業権を行使させることになる)承認を
条件として︑比国に対し︑日・仏間協定或は日本・インドネシア間航空協定(これは未だ在在しない)上の一定の法
益と︑比国が新たに東京経由ル
lトで対米航空協定上得る法益とを比較し︑米比航空協定実施のため日比間で日本が
認める程度の利益(実は商業権の内容)に釣り合うものを同時に︑日・仏或は日本・インドネシア航空協定の実施上
フイリッピンに対して要求し得ることは︑空法上の相互主義の結果である︒このように第三国に全く法的関係を有し
ない二国間航空協定上の適用・解釈に関する紛争又は苦情は殆ど少ないことがうかがわれる︒
一 一
回 筒
明 に
い え
ば 商
業
権交換のための甲・乙二国間航空協定は完全に第三国(丙)と法的な関係を有しないことはない︒第三国たる丙国が
甲国又は乙国の何れかと航空協定をもつか︑或は甲・乙国の何れかが協定を結んでいる他の国と協定を有するときは
丙国は利害関係国として︑甲︑乙間協定上の紛争に関係を有するに至る︒
且つ二国間協定の解釈又は適用に関する紛争は︑ シカゴ条約上の義務として
ICAO理事会の司法的権能に委ねら
れるが︑その段階に至る前に勿論当事国が選ぶ仲裁裁判所に附託することは妨げられない
cシカゴ条約当事国間での二国間航空協定の場合では︑解釈及び紛争の これはシカゴ体制下の多数国協定の場合と︑
解決方式が︑二国間航空協定の方では一段と弾力的に定められているということである︒同じく航空関係協定であっ
ても二国間協定が商業根の規定に中心があることから︑且つ単に二つの自由(通過︑非業務着陸)を認める多数国間
協定と︑国際航空運送協定が第五の自由をめぐって今日殆ど実効性を失い︑二国間航空協定による国家聞の直接的取
極がより一般的な方式となったことにてらせば︑当事国の合意により仲裁裁判所による解決を認めることは︑二国間
I
・
C・ A ・
o理事会及び総会の決定︑更に国際司法裁判所の介入の三つのプロセスに手続法を固定し
協 定
の 場
合 ︑
た前述のニ協定のような多数国間協定上の紛争処理方式よりも適切な方式と現状では認める他はない︒
従って︑航空協定に関する紛争の処理は多数国間協定については苦情申立と紛争の二つの場合につき︑各協定は前
者については理事会の調査勧告及び総会決定による特権停止︑後者についてはシカゴ条約第一八章の準用を定めるが
個別的な二国間航空協定の場合は︑一般的に必ずはじめから仲裁手続がとられている点で︑現在の航空条約は紛争苦
情解決手続に関して夫々主要な相違が見られる︒
すでにふれたが紛争又は苦情申立は適用を前提とした条文の解釈については︑問題は適用の段階に入って生ずると
考えられるから所謂テスト・ケイスの性格を有しない抽象的な条文そのものの解釈が︑理事会︑仲裁裁判所或は国際
司法裁判所に求められることは少ないであろう︒
国際公法における空法の基礎的研究同完
五
経 告 と 経 済
一 三
六
この点で航空条約の解釈は他の条約解釈に関する紛争の場合と何ら変りがない︒従って解釈と紛争の相違は実体的
にはある事態の表裏の差である︒別に手続的に厳格に云えば最終的解釈は苦情の解決に役立つし︑且つ全面的に
I・C・
A
・0の管轄下にあり紛争は一国からの申立による苦情の処置でなく︑対立する二国間に夫々の主張が存在し︑
意見の相違は明白であり︑交渉その他の手段がつくされた上で理事会に裁決の申請が双方から行われ︑更に仲裁裁判
所︑国際司法裁判所手続も予定されているものである︒
シカゴ条約条文上苦情と紛争の区別は別段定められていないが︑苦情は多数国間協定の場合に認められている事実
状態であることは明らかである︒
一一国間協定では苦情申立は︑相互間で定期的に︑或は一方側の申立によって協議する義務が設けられている場合が
多いから︑国際機関に直ちに持ち込むことは一屑少ない口しかし︑二国間の交渉による解決ができないときはある程
度(各二国間航空協定はこの点について通常手続的に詳しく定めている)以上に達すれば︑恐らく紛争として理事会
に附託されることもありうる︒しかし一般的には二国間で設立する仲裁裁判所の決定を最終的とする方式が大勢をし
め て
い る
︒ 同
I・C・A・0
理 事 会 の 性 格 と そ の 司 法 的 機 能 の 特 色
I
・C・A
@
O 理事会は国際機構内に設立された純粋な裁判所でないことは︑ ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体裁判所が
国際機構の発生と同時に劃然と専一的に分化した司法機能のみを行うのとは異なる点である︒
た Y シカゴ条約で違約及び紛争の解決に関する任務を与えられていることから注目されるのであるが︑ この理事会
が二二ヶ国の代表からなる国際航空行政機関でありながら︑司法機能を行う点に右理事会の特色がある︒
直接国際司法裁判所に締約国聞の紛争の附託を行うようにせず︑先づ機関理事会の決定を必要とするようにした理
由は︑商業的︑経済的な性格をもっ国際定期航空の実体関係において法的決定を争点につき下すには︑国際司法裁判
所が最も適しているとは云えず︑商業航空の諸関係の問題の検討及び処理に技術的に専ら当っている理事会の方が︑
第一義的に適当とされたからである︒
た
J Y 乙の考えに立っても理事会の性格とその司法的権能の適性について全然問題がないのではない︒
シカゴ条約の規定だけでは紛争処理の手続は明白に定められているが︑ そのため必要な理事会の司法的管轄権その
ものを中心とした特別の規定はシカゴ条約から独立して存在していない︒その結果シカゴ条約全体から理事会の一般
的椛能の一部として司法松能が認められでも︑厳格論としては︑理事会の管轄権の範囲には所管事項の点であいまい
な面が生じている︒
第二に︑理事会は本質的には行政的性格の機関としての要素が甚だ強い︒シカゴ条約第五 O 条は総会に対する常設
機関で︑三年毎に改選される二一の締約国代表から成り︑
ω航空運送上最も重要な国︑
ω国際航空のための施設
設置に最大の貢献をなす困︑更に
ω ω
以外で世界の主要な地理的地域の代表制が実現されることになる意味を持つ
国で枯成されることを定めている︒従ってこのような諸国を背景とした一回として行われる理事会の義務的任務はシ
カゴ条約第五四条に広汎且つ詳細にわたり定められ︑そのうち条約違反︑理事会勧告又は決定の不履所を締約国に報
告する義務と条約違反通告後︑相当期間内に締約国が適当な措置をとらなかった場合︑違反の認定を総会に報告する
義務が司法的権能に最も関係のあるものである︒第八四条以下の規定をのぞけば以上の義務的(別に任務的任務もあ
る)任務の規定に見える限りで一応官結権を条文上では推定しうるにすぎない︒
加盟国代表が構成する機関だから司法機関として須要な独立性が危まれるというのは理事会の一般的性格と任務に
国際公法における空法の基礎的研究刷完
一 三
七
経 蛍 と 経 済
即して解釈する場合や︑理事会の司法的権能を過大評価することを意味するかも知れない︒ちなみに各国代表が本国
一 三
入
政府の訓令によって行動する点は︑紛争処理の場合でも変らない事実がある︒理事国の国際的な諸関係における政治
的考慮が理事会の司法的権能に影響を与える可能性も亦否定し得ない︒また理事会決定の執行力は理事会の一般的な
義務的任務を定める条文では明らかでない
Dしかしシカゴ条約第八六条︑第八七条︑第八八条の三条から見て︑条約違
反の決定は国際機関内部に効力をもつだけで︑違約国と認められれば︑総会及び理事会で当該国は投票権停止の処分
これが国に対する制裁とされる︒更に理事会決定の有効性を事実認定の点で争うときは加盟国は国際司法裁
判所及び仲裁裁判所の決定にのみ服することとなっている︒しかも更に右の最終的決定にも違反していると理事会が を
う け
︑
決定したときはその航空企業の運営を許可しないことが改めて約定されている︒結局二段構えで航空企業に営業運営
の許可を撤回する合意が成立している点が極めて重要であり︑理事会決定の法的執行力はこの運営許可の撤回という
合意の中にあると見なければならない︒
これらの諸措置から見れば理事会の性格はむしろ行政裁判所に類するものであることは明かである︒そして政治的
な理事会の構成の一面と機能も無視しないで︑ それらとの関連の上で条約規定の通りに紛争処置及び制裁を行うこと
が一層理事会の司法的権能を特色ゃつける︒
しかしながら︑理事会決定は右に見たような機関の特殊な性質│実質的に見て国際司法裁判所のそれのように単一
的な集約化された一般国際法上の最高の司法権でないという意味で!の故に一方でかえって逆説的に一方で多くの場
合︑終審的であり得︑且つ強制力を有する︒
特にこの決定の独創的な法的価値は国際司法裁判所の決定が紛争当事国のみの訴訟事実について拘束する
法裁判所規程第五九条︒た Y し判例の評価は既判事実の法的解釈としてその後の類似の事件の審理においては︑
( 国
際 司
ロ
lJ
タ
lパクトの云うように
門出
E 己
mE
岳山口問自立宮島によって実際上は連続的に用いられてる︒)
原則と対照すれば︑特定国聞の争に関して行われた理事会の決定であれ勧告的意見であれ︑ それがシカゴ条約の適用
解釈に関する場合であるから︑直ちに全加盟国間の航空公法上の諸関係に波及効果を有することは重要である︒
別言すれば争われる事実関係及び法律関係が原則的に依在する国際民間航空機関条約という基本法を抜きにしては
争訟として考えられないから右のような帰結が生じる︒
従って理事会の決定は︑理事会の機関としての二重性格 l 行政機関と行政司法機関権能の併有 l とは離れて︑加盟
国間で重要な法的帰結を生む乙とは明らかであり︑そこに理事会の司法的管轄の独自性の肯定的一因が認められる︒
更にシカゴ条約第八六条で﹁国際航空企業がこの条約の規定に従って運営されているかどうかについての理事会の
決定は捉訴に基いて破棄されない限り引続き有効とする﹂と定めており︑ シカゴ条約上の義務履行に関する限り管轄
粧の限界は明隙で︑提訴により仲裁又は国際司法裁判所の決定で理事会の決定と反対の認定が行われない限り一貫し
て最初の理事会の決定の有効性が定められている︒乙の点
I・L・Oで一定の条約義務の不履行を理事会が認めた際
はこれを総会に報告したり
(I
・L・0
憲章第三
O条)︑或は審査委員会の報告書又は国際司法裁判所決定に含まれ
る勧告を加盟国が履行しないとき﹁勧告の履行を確保するための適宜と認める措置を総会に勧告する﹂
( 第
三 三
条 )
措置よりも直接且つより進んだ強制力がみとめられる︒更に一加盟国企業による最終決定の不履行は直ちにシカゴ条
約第八七条により飛朔経を失う結果を生ずる点でも理事会決定は︑何れの場合でも理事会の手に戻った事件処理の理
事会による手続上明かな強制管轄権の行使と見なければならない︒
ところで理事会の司法機能及び手続について問題が多いのは理事会が二国間航空協定上の紛争について決定を行う
場合である︒第一に二国間協定の解釈及び紛争を
eg
国際公法における空法の基礎的研究刷完
] ロ 円
︒
に管轄する法的能力が理事会にあるのか否か︑次に紛
一 三
九
経 営 と 経 済
一 四
O
争解決を受諾した場合︑決定を下すまでの手続が従来細目化されていなかったし︑第三にシカゴ条約上の手続規定を
用いるとしても二国間航空協定の基本的な法的性質はシカゴ条約と異なるから不充分或は不適切のうらみがあること
の三点が法理上当然問題のあるところである︒
そ乙で一九五七年四月五日に至り約二年を要して理事会が二国間協定上の紛争を管轄する場合に用いる﹁紛争解決
のための規約﹂(同
b m
‑ O
B O
己 旬
︒ ロ
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三 宮
口 品
︒ ω 岳民吟
g仏ω )
が理事会で採決され︑その後適用されることとな
っ た
更 ︒
に
I・C・
A
・0理事会の司法的機龍については︑現行の制度では理事会の性格にやはり問題があるから︑少く
とも
I・C・A・0関係専用の航空裁判所として︑理事会の手をはなれて別に独立した特別裁判所を設けよという見
解も出ている︒
管轄権の司法的独立と争訟決定における公平の条件は不可分であるから︑ 乙の二つの要因が確保されるようにする
ことは常に必要である︒そして常設裁判所を
I・C・A
・o内に設けて一切の国際民間航空関係の争訟をそれに委ね
ることは必ずしも不能ではないと思われる︒
すでに見たように︑経済的性格を有する国際組織たるヨーロッパ石炭鉄鋼共同体にあっても独立の管轄権を有する
裁判所がすでに在在している例もあり︑また一九五七年三月二五日ロ
lマで調印されたヨーロッパ経済共同体条約で
はその第一六四条で︑同条約の適用及び解釈における法の遵守に当ることを裁判所の任務とし︑その裁判所は︑
九
五七年四月一七日以降本条約に追加された﹁司法裁判所規程に関する議定書﹂によって詳細にその管轄権を規定され
て い
る ︒
し か
し ︑
I
・C・A・O の場合は条約作成の際︑有力国たる米国が先づ紛争の直接当事国間で直接交渉を行い︑和
純粋な意味での裁判管轄権に服することを拒んだことが︑
解決万式には特に関係があろう︒交渉の不成立の際は勧告としての性質をもっ決定を下す仲裁機関に紛争を附託する 解を求める方式を提案し︑ その後二国間航空協定上の紛争
ことを特に好んだのも米国であって︑ この方式では関係国が理事会決定の拘束力を一般的な勧告のそれと見得る点で
殆ど道義的な拘束力しか生じないことになる︒二国間協定でアメリカは右の立場を通している例は後述する︒
ところでシカゴ条約上の手続及び制裁はアメリカ案よりは︑結局一段と法的実効性を持つに至っているし︑また強
制力のある決定を加盟国の大半は可とし︑迅速な手続でその決定を得ることは︑より広く必要とされ︑それは殆ど国
際慣行となって多くの二国間航空協定上の規定で認められている︒
一 ∞
ω
↓ )
そこで特別裁判所の設置の可否については︑有力説(例えばシヨ
lヴ オ
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o p H Y
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I・
C・
A
‑
O の制裁措置と︑最終的決定が仲裁裁判所又は国際司法裁判所から出されるまで︑暫定的な措
置を命令する権能たる性格を拭いきれない理事会の決定︑及び理事会決定につき更に捉訴が認められる現行万式の存
在は果して適切かどうかはつまる処︑今後の紛争解決規定及び理事会の司法機関としての実績にまって判断するより
他はないとするようである︒結局国際航空行政機関の任務と不可分の司法的権能という捉え万で見れば︑現状では︑
﹁実績にまって特別裁判所設置の要否を判断する﹂立場は︑いわば一人二役が出来るか否かのテストを認めるもので
もっともな立論である︒
特別裁判所の設置は常設機関としてその機能をつ
J Y けるためには︑附託される事件数︑別言すれば加盟国による利
周一皮が多いことが必要であるが︑現在までに一九五二年インド・パキスタン聞の紛争が理事会でとり上げられ︑和解
に達した以外︑理事会の司法的機能に委ねられた事件がないことから︑裁判所設置は格別の必要をまだ認められるに
至っていない︒この辺りが理事会の行う調停︑勧告の実効性が反面有力な所以であろう︒
間際公法における空法の基礎的研究倒完
四
経 営 と 経 法
四
またすでにふれた紛争解決に関する規則が理事会で一九五七年に採決されたのは︑インド・パキスタン紛争の審理
の際の実務上の反省から生じたのであるが︑この規則の成立を見た事は一面で一層現行方式の精密化の方向が固めら
れ︑適用の実績如何では特別裁判所の設立の要請は却って従来よりも一一回少なくなる可能性がある︒
見方をかえれば︑理事会のこの在り万はシカゴ条約が商業権に関する規定を抜いて始めて成立した不完全なもので
あったから︑遅ればせに管轄上の不備が表面化したのであって︑原因は条約成立の背景の中にある︒
内円
一一国間協定上の紛争解決規定と理事会の決定
既に見たようにシカゴ条約及び国際通過業務協定並びに国際航空運送協定はシカゴ体制の根幹たる条約であって現
存する多数国間航空条約としては国際公法上でその重要性において他に類例はない︒他に一例として国際運送という
商行為を対象とした統一私法条約に該当するワルシャワ条約が多数国間条約として存在し精密な発展をとげているが
それは本論文の管轄外である︒
基本的な問題点は︑結局右のシカゴで結ばれた三条約において完全な統一の下におかれ得なかった商業権なのであ
り︑特に国際航空運送協定が国際公法上最も有力な商業権に関する条約であるべきところであるが︑そこに云う第五
の自由は第三︑第四の自由の原則的交換という領空主権の排他的承認に立つ商業権許与方式の殆ど一般化した慣行化
によって︑現状では多数国間条約上の法益としては著しく後退した結果︑制限されているといえる︒
従って︑多数国条約における司法機能と紛争解決の結びつきは割に明瞭であることはすでに指摘したが︑二国間協
定では右にのべた相互主義的原則に当事国が如何なる意義を附与するかのニュ
lアンスの差によって︑実際上は紛争
解決の規定と理事会の権能の結びつきも三国間航空協定上の条文規定上で夫々の変容を生じ一元的な統一は見られな
い︒このことはシカゴでのニつの協定が︑苦情申立については理事会権能に基く処理紛争については守 シカゴ条約第
一八章えの委付を定めた二種類の基本方式と異なった紛争処理方式を生ぜしめることとなる︒
商業権に関して生じる場合︑ 二国間航空協定に現われる理事会権能の地位づけは︑シカゴ条約が商業権に関する規定を含んでいないから紛争が
シカゴ条約第一八章は適用すべき法源にならないという立論からも裏付けうる︒シカゴ
条約多数国条約で国際航空法の基本法に違いないがこと商業権から生じる法的事実関係は︑ たしかにシカゴ条約のみ
では準用によってもまかない切れないことは充分な理由がある口だから理事会の司法的権能は商業権に対する管轄と・
いう最も主要な側面で実は最も問題がある︒こ︑にも特別裁判所設置の積極的理由があってよい筈であるが︑理事会
機能の総括的な尊重を︑ I ・
C・
A・
Oとしては発展させるよう内部的に手続法の柿足を行って理事会の管轄権の実
効性が先例の数につれて増加するよう整備化されて来ているのが現状である︒
要すれば二国間航空条約では理事会の紛争解決に関する権能を当事国が︑任意に利用する限度を二国は協定すると
いって差支えない︒
先づ類型的に見ると︑第一型 l 紛争の開始から解決まで︑別言すれば理事会の審査を終審とするもの l は少くとも
併行的に他の司法機関による措置をあげていないという意味で形式的に理事会決定を最終的と解する他はないもので
ある︒オランダ・シリア問の一九五 O 年二月二二日の協定がこの場合である︒
この協定第四条は﹁締約国で生ずる本協定及びその附属苦の解釈又は適用についての一切の紛争は交渉によって解
決されなかった場合︑国際民間航空機関に附託しなければならない︒理事会が紛争に適用し得る理事会規則の規定に
従い紛争を裁定することしている︒
この場合他に仲裁裁判所えの紛争の附託︑或はシカゴ条約第八七条にいう理事会決定に対する提訴 l いわば上告 i
国
際
公
法
に
お
け
る
空
法
の
基
礎
的
研
究
刷
完
一
四
三
経 営 と 経 済
一 四 四
として国際裁判所の管稽も言及されていない︒従って排地的な理事会の司法管轄を求めるものと解されるが︑
七年の﹁紛争解決のための規定﹂が理事会で採訳された現在︑その規定第一五条四項が当事国の主張及び結論をきい
た上で理事会は︑特別に決定を行うため集会をもうけ︑そこで申し渡された決定が理事会の決定となる旨定めたこと
から︑理事会に排他的な紛争管轄を求めることは商業権交換規定を含まない国際機関の理事会だから実質的に管制相能
一 九
五
力がないと現在では割り切って云えなくなっている︒
またオランダ・シリア両国としては二国間で協定した以上理事会の決定以外に紛争裁定の法的依拠は求め得ないと
一応解釈してよいであろう︒
た Y このような例は国際機関と違法審査権を完全なものと認めているというより︑理事会桔成及び他の機能との閃
連から︑最も紛争処理に適切と考えた評価の結果であろうと思われる︒別な特色としては比較的に云って技術的に直
哉だが単純化されすぎた規定に見える︒理事会決定について提訴の権利がシカゴ条約の規定全体について認められて
いるのに︑同条約で規制されていない主要な商業権に関する紛争が理事会決定だけで解決すると合意したことは最終
的紛争決定機関を定めた点は明確であるか︑戦後かなり初期の紛争解決規定としては思い切ったものである︒
現在では先述した特則的な理事会の規則が適用されるから解決の確実性は高いが︑少くとも一九五七年までは理事
会の決定の著しい遅延も考え得たから︑その間場合によっては実効性の少ない紛争解決規定であったかも知れない︒
日本・オランダ航空協定(一九五三年二月二日)第一四条の紛争処理規定では右のような万式は全然採られていな
l '
もっとも日本の締約した簡易化された形式の協定即ち航空業務に関する交換公文中では︑日本・中華民国間航空業
O務に関する交換公文では一般的に料金︑運送回数を含め業務について第八項で約定しているが︑ ﹁前記の特定した業
務(殆ど商業権に関する事項である l 筆者) に関し﹂てシカゴ条約規定の適用を指定していることは︑商業権の中核
たる路線指定及び貨客積込み積下しに関する点が﹁商業航空路線における定期航空業務﹂
( 第
一 項
)
にふくまれるか
らシカゴ条約第一八章の直接適用を予定するものと見る可能性は一概に否定できない︒紛争発生の場合の法的措置は
取極めていないと断定的に解釈すれば別であるが︑ シカゴ条約と紛争とは無関係であるとすることは交換公文全体の
解釈上無理と思われる︒
従って仲裁手続︑提訴︑国際司法裁判所の決定もすべて考慮される︒
二国間協定における紛争規定の特色は︑当事国間の合意により解釈方式は任意に設定で︑占さること︑併せて一方にあ
るシカゴ条約規定にどの程度依存するかの二点で定まるが︑別に更に注目すべき面がある︒
それは理事会決定なり広く云って
I・
C・A‑Oの機能に基く裁定を司法的に拘束的と見るか︑勧告的とみるかで
ある︒殆どの国は自ら相手国と共同で設立した仲裁裁判所の決定︑理事会決定︑国際司法裁判所判決を最終的とする
規定を航空条約内に設けているが︑そうでない場合としては︑理事会に勧告的意見を求めるに止めるものと︑
際法上の仲裁裁判にもちこむものとがある︒
一 般
国
米国とブラジル聞の協定では︑ー・
C・ A ・
0に勧告的意見︑にけしか求め得ないとされているし︑ フランスとスペ
イン問及びフランスとイタリア問の協定では一般国際法の慣習的規則に従い︑紛争を仲裁に付するというように︑大
戦直後は定められていた︒その決定が最終的とされたのは勿論であるが︑最近の協定にくらべて乙れらは未ピ協定上
での手続の組織化が比較的整わない紛争処理方式といえる︒
ところで少くともシカゴ条約の立法趣旨から云えば商業権に対する機関の管轄が存在するのか︑あるべき国際航空
組織の建前であったのであるから︑商業経に関する紛争は立法論的には︑できれば一元的に唯一の国際航空機関に継
国 際
会 法
に お
け る
拍 手
山 の
基 礎
的 研
究 刷
完
一 四
五
経 営 と 経 済
一 四
六
続させるように指向するのが好ましい
D特別裁判所を機関内に設けるか若しくは機関内で司法機能を行う機構を︑手
続法の補足により強化するかは論理的にはその後の問題である︒た Y 商業権管轄を除外したシカゴ条約体制の故に現
在まで実際上の要求に応える緊急度が先行したから二国間協定では現状のような紛争附託機関の任意選れ方式が広く
行われ︑ざるを得ない状態に至ってしまったのである︒
これらを勘案して︑米国が直接交渉による解決を好み︑司法・仲裁機関による判決・決定による紛争の解決を避け
た初期の傾向と︑大陸系の有力国が必ず紛争の判決による決定とその拘束力の確認を二国間協定上ではじめから規定
してきた方式とを比較すれば︑近時後者が理事会司法権強化の面といい︑各協定上での紛争規定の明確化︑精密化と
いい有力で法技術的に合理性が強いことが裏づけられる︒
仲裁手続の過程を合意に基いて採る可能性を加えた折衷型のものである︒
例としてカナダ・ポルトガル間航空協定(一九四七年四月二五日締約)第四条がそのことを明らかにしている︒
カナダ・ポルトガル間協定は何れも理事会決定を最終的とする点では共通してい
る︒理事会が二国間協定上の紛争についても裁定を下す唯一の機関として権能を行い得るとする持論をか﹀げるのは 以上のオランダ・シリア間協定︑
オランダ・英国の両国であることは︑ 一九五三年四月二九日の理事会集会で両国代表から明らかにされた線であるこ
とも注目される︒但しその折︑ I ・
C‑A@O事務局は︑二国間協定における適用と解釈上の紛争は本質的にシカゴ
第二の類型としての二国間航空協定は紛争解決手続の最初から理事会の決定を終審としないで︑二国間の合意により
指定された仲裁裁判所または他の機関に紛争解決を附託することに二国が至らないときは︑
I・
C・
A・
o理事会に
付託するとする︒
即ち一応仲裁裁判所は両国政府間の協議による機関の決定を予定はするが︑ その合意を見ないときは︑理事会に附
託 し
て ︑
その決定を最終的とする旨合意するものである︒この場合は第一類型と同じく二つの多数国間協定の場合及
ぴシカゴ条約の場合のように理事会決定に対する上告をみとめない︒た
オランダ・シリアの例が直接理事会決定に J Y
よる解決を予定すると見られるのに較べ︑条約第八四条の対象とすべきものではないと断っている︒
このことは結局商業権を対象にしない
I・
C A