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6 i 都道府県民所得統計は、作成期間についておおまかにいえば、

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(1)

静 岡県 の四半 期 別県 民所 得 の 早期 推 計 につ いて

土 居 英 二

はじめに

都遣府県民所得統計 は、一国の経済全体の規模や構造、動向を包括的、体系 的に記録する国民所得統計 (GNP統 )の 都道府県版であって、都道府県単 位の経済を見る場合、最 も包括的で体系的なデータである。それは都道府県単 位の経済の規模や構造、動向を総括的に記録するから、都道府県の経済規模の 比較、景気変動にともなう地域経済の全体動向、そして分析的にみれば産業別 の純生産や所得分配、消費や投資などの県内需要の構造 とその変化などが概観 できる極めて貴重なデータを提供 している。

それだけに都道府県民所得統計は、作成にあたつて多 くの時間と手間を要す る。例えば所得の発生 =産 業別生産所得の推計では、農業、漁業などの第一次 産業から、建設業、製造業などの第二次産業、さらに商業、 .サ ービス業などの 第二次産業まで全ての産業にわたる個別諸統計の発表が出揃 ってはじめて、そ れらを基礎資料 として加工作業に入ることになるわけだし、所得の分配面や支 出面の推計に必要な基礎資料 もかなりの数に上る 6         i

都道府県民所得統計は、作成期間についておおまかにいえば、 ,資 料の発表を 待つこと1年 、推計にさらに 1年 、合計 2年 がかりの作業になるわけである │ 静岡県についていえば、昭和 59年 度の確報値が昭 fn61年 12月 、昭和 60年 度の確 報値が昭和 63年 1月 、昭和 61年 度の確報値が平成元年 3月 に静岡県庁から公表

されている。 l       .

(272)″

(2)

法経研究 38巻 3・ 4号 (1989年 )

公表に時間がかかる問題の一つの解決策が、年度データについての簡易推計 結果の発表である。これは最小二乗法を用い、精度をある程度犠牲にしても公 表時期を早める点にねらいがある。簡易推計法によれば、都道府県民所得デー

タはほぼ 1年 後に得 られる。静岡県庁 もこれを作成・公表 している。

公表期間をさらに短縮するもう一つの解決策として、四半期データについて の簡易推計法がある。これを用いれば都道府県民所得データは3ケ 月ごとに、

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ごとに これらの簡易推計はいずれも一種の補完データであって、従来の都道府県民 所得統計の作成方法にとって代わるものではない。確報値の精度の高さは簡易 推計では得られないものである。ただ、今日の地域経済の急激な変化を刻々と、

しかも早期に把握 しようと思えば、これらの簡易推計によるデータの意味もま すます重みをもってきているといわざるをえない。

本稿では、上述の第二の簡易推計法である四半期別県民所得データの簡易推 計法を検討することを通 じて、静岡県の四半期別県民所得統計を作成すること を目的としている。静岡県については、上述のとおり昭和 61年 度の確報値が平 成元年 3月 に静岡県庁から公表されている。この昭和 61年 度の静岡県経済は前 年秋の G5に より、急激な円高が進行 した年であり、それによる景気停滞にみ

.

まわれた年である。四半期別県民所得の早期推計によれば、現時点でさらに昭 和 62年 度 +昭 63年 度第Ⅳ四半期 (平 成元年 1月 〜 3月 )ま での県民所得デー タがえられるわけだから、静岡県経済が、円高不況から一転 して高度成長期並 みの好況に移行する姿が把握できよう。

1.過 去の研究の到達点

a.熊 本県庁モデル (昭 54年 )

都道府県民所得の四半期別推計は、次のようにいくつかの先例がある。

菖壽勇優れ鼻晶』套 T醤 軍鯛爵貿貿騨膚駆鼻曇冨晃賛話乳霙露 :青 雫霊量異翁 熊本県の支出系列の県民所得を対象にし、推計期間は昭和 48年 度第 I四半期〜

52年 度第Ⅳ四半期である。

推計の方法と手順は、①まず支出系列の項目ごとに関連月次統計から補助系

(271)

(3)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計について

列データを選択 し、四半期別補助系列データを作成、②この補助系列の四半期 別係数の年度合計にたいする比率により、県民総支出実績値データ 0覇 鑑謬女 )

を四半期に分割 (比 例分割法 )、 ③こうして四半期に分割 した県民所得データ を被説明変数とする回帰モデルを作成 し、これを QEモ デル (QuiOk Estima―

tion)と する、というものである。

この比例分割法では、例えば県民支出系列の年度実績値データを Yt、 これ を四半期に分割 したデータを yず 、補完系列の年度合計データを Xt、 同四半期 データを X"と すれば、推計式で推定しようとする四半期データ 9"は

y"=Y.ex〆 xt… … … …… … …… … (1) 9"=α x"  ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。 (2)

の二つの式により求められる (::I〜 Ⅳ期 )。 α、βは、データ y,と X"を も ちいた回帰式 (2)の パ ラメーターである。

他のモデルに比べ熊本県庁モデルは、年度データを補助系列により四半期に 比例分割法で分割 したのち、この四半期分割データを用いて回帰モデルを作成 している点、および民間最終消費支出が費目別に推計されている点が特徴であ る。回帰モデルのパ ラメーターは、直接最小二乗法で求め、季節調節法として EPA法 が利用されている。熊本県庁モデルは、経済企画庁研究所国民所得部

「 県民所得の四半期分割法」で紹介されている。

b̀北 海道庁モデル (昭 和 57〜58年 度 )

次に推計を試みたのが北海道庁である。昭和 57〜 58年 度の 2年 度にわたるそ の研究成果は、北海道開発調整部経済調査室「四半期系列道民所得統計の推計 (昭 和 57年 3月 )」 (同 剛ヒ 海道経済調査』第 2号 第 2分 冊所収 )、 同「 四半 霧遷廻糎晶醤 F菫 ?彗 語訴腰 ]日 胃軍 :景 L」 ヒ 海遭澤警雲行暉曇合 F[摩 [∫

は北海道の支出系列の県民所得を対象にし、推計期間 は昭和 45年 度第 I四 半 期〜 56年 度第Ⅳ四半期である。

北海道庁モデルの際立 った特徴は、熊本県庁モデルで年度データの四半期分 割にさいして、補助系列デァタの年度合計値を分母 とした各四半期計数の比率 による比例分割法を採用 していたのにたいし、          (リ ン・ チャ

ウ法 )を 用いた点にある。

この リン・ チャウ法を (1)(2)式 の記号に対応させるな らば、まず被説 明変数の支出系列の年度実績値データ Ytと 、説明変数 としての補助系列の年

(270)  61

(4)

法経研究 38巻 304号 (1989年 )

度合計値データXtの 間の回帰式

Yt=α +β  Xt ・ ・ ・ ・・¨ ・ ・ " ・ ・ "(3)

によ り、パ ラメーター α ,β を求め、年度 ベースの支出系列推定値 Ytを 計算 す る。次に (3)式 で計算 される推定値 Ytと 実績値の Ytと の残差を utと し、

9"=α /4+β X.十 ut/4… …………  (4)  ::I〜 Ⅳ期〕

により計算される 9轟 で、 Ytを 分割する、 .と いうものである。

この北海道庁モデルについてはく真継隆氏が経済企画庁『季刊国民経済計劉 において紹介、高く評価している。同時に真継隆氏自身、四半期モデルの説明 変数の選定について、いくつかの県を事例として計算している。

C。 東海銀行モデル (昭 和 57年 度 )

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年度第Ⅳ四半期である。

東海銀行モデルの四半期データの推計方法の詳細はつまびらかでないが、① 公表県民所得データは昭和 55年 度までだが、至近時点の昭和 56年 度について、

支出系列の項目別に説明変数を選定、回帰式で独自推計を行なう。② この回帰 式に「説明変数の四半期データを代入 し、需要項目の年度計数と一致するよう に統計的処理を加えたものを四半期計数 とする」。③上の②と同 じ説明変数を 用いた四半期系列の回帰式をつ くり、最新時点までの計数を予測、というもの である。     ̲

次節では、北海道庁の方法を基準に、静岡県の四半期別県民所得を推計 しよ う。

2.静 岡県の四半期別県民所得の推計方法

静岡県の四半期別県民所得の推計対象はく所得の使途を示す支出系列である。

また推計データは名目値について行 った。実質値について 1胡 鵬 を用意 したい。

推計期間は、昭和 60年 度第 I四半期 (1985年 4月 〜 6月 )〜 昭和 63年 度第Ⅳ四 半期 (1989年 1〜 3月 )ま での 4年 間、 16四 半期である。

本稿執筆現在 (1989年 7月 )で は 1989年 1〜 3月 期までの推計が可能だが、

公表されている静岡県の年度べ‐スの県民所得統計は、確報値が昭和 61年 度、

速報値が昭和 62年 度までだから、確報値以後の 62、 63年 度の 2年 間、速報値か

62  (269)

(5)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計について らみて も直近の 1年 間の新 しい四半期別データがえ られるわけである。

a.推 計手順 と推計式

推計手順 と方法の全体 は図 1に 示す。

①地域経済の動向 (最 上段 )を 反映するデータ (二 段日、年度県民所得デー タ Ytと 各種の月次データ Xl,X2, ・ )が 存在 しているが、最初の作業 はこ の月次データ群 Xl,X2,° ・ ・の中から、年度県民所得データ Ytの 動向を説明 すると考えられるものを選定 し、 Xの 年度合計値 Xtを 説明変数、 Ytの 理論値

ytを 被説明変数 とする回帰式を作成する。

?t=α +β xll+γ X21+… +ρ Xnt  ………・ ・ ・ (5)

②実績値と Ytと (5)式 で得られる ytの 差を ut、 (5)式 のパラメーター をα, β,  γ ,… ρとし、 Ytの 四半期分割データを y,、 xtの 四半期別のデー タ X"と すると、前節でみたリン ・ チャウ法を利用すれば、過去の四半期別分 割データ y"は

y"=α /4+β Xl■ X2,t・ ・+ρ X・ ・ 十 ut/4  ・。 (6) で得 られる。 (6)式 の支出系列の一覧が表 1で ある。

図 1  推計方法のフローチ ャー ト

県民所得年度 データYt 例 :民 間最終消費支出 )

月次 データ Xの 選定

(例 :百貨店売上高 )

年度 データ Xt=ュ lX凛

四半期データ Xu (3ケ 月分 )

リ ン

・ チ ヤ ウ

法 四半期分割モデル

yば =α /4+β Xじ uノ 4

四半期分割データ (原 系

四半期 データ (季 節調整済

(268)

(6)

法経研究 38巻 304号 (1989年 )

③季節調整値については、以上で得 られる原系列四半期データy"に 季節調 整をかけ、季節調整済みデータ y tiを 求める。季節調整法 として本稿では EP

A法 を用いた。季節調整をかけると Yt=Σ  ytiと なるので、さらにΣ  yt̀に た いする y'.の 構成比で Ytを 分割する。なお次節 bで 説明するように、四半期デー タ X"に ついて原系列が得 られず、季節調節済み年度ベースデータしか得 られ ないような場合は、

yt=α Xl +γ X2.+… +ρ  Xn"+ut  ……… (7) 式で推計 した。この場合の yl:は 季節調整済年度ベース四半期データとなる。

④直近の '"に

ついては (6)式 からut/4を 除いた (8)式 で推計する。

y,=α /4+β Xl,+γ X2■ +… +ρ  Xn鷲   …・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。(8)

b.推 定式とデータ

各推定式の説明変数の選択根拠について簡単な説明を加えよう。それぞれ年 度計数の回帰式、その説明力を示す決定係数 R2、 推計期間を最初に掲げる。

①民間最終消費支出 (Hl)〔 期間 :1975‑1986〕

Hl==… … 676844‑卜 0。 33755 0 X l■ 1.14382・  X2

(Xl:静 岡市家計支出、 X2:県 現金給与総額 )

説明変数 として『静岡市家計調査』の家計消費支出額と静岡県『静岡県毎月 勤労統計』の現金給与総額を使用 した。 1章 でみたように熊本県や北海道では、

県の家計調査データを使用 しているが、静岡県は昭和 58年 度で県全体の家計調 査が打ち切 られていて利用できない。やむをえず静岡市の家計調査データで県 全体の消費の動 きを代表させている。現金給与総額は消費 Cの 理論的説明変数 である所得 Yを 意味する。これは県全体のデータである。

②卜般政府最終消費支出 (H2)〔 期間 :1975‑1986〕    〔 食 2=0。 99672〕

H2==33824.5¬卜22.1909X l (Xl:国 同項目 )

概念としては、政府サービス生産者によるサービス消費であり、国の同項目 を説明変数 とした。

③民間住宅投資 (H3■ )〔 期間 :1975‑1986〕       〔 食 2=o。 98092〕

H3.1=67311.1+1.16457 0 X l‑19306.7・ Dumy75

(Xl:建 築工事費予定額・ 居住専用、 Dumy75:ダ ミー変数 1975年 =1)

住宅投資は地価、住宅金融公庫の融資割り当て額、ローンの金利、世帯移動、

所得などの要因が考えられるが、ここでは建設省『建設統計』の月次データで ある建築着工物工事費予定額 (居 住専用 )を 使用した。

"(267)

[R':0.99698J

(7)

静 岡 県 の 四 半 期 別 県 民 所 得 の 早 期 推 計 に つ い て

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(266)

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法 経 研 究 38巻 304号 (19897)

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(265)

(9)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計 について

④民間企業設備投資 (H3.2)〔期間 :1975‑1987〕     〔 R2=0。 98155〕

H3.2=65578.5+0.1807・ Xl+0.07127・ X2+0,0372775。 X3

‑101150 0 Dumy77

(Xl:機 械器具生産額 、 X2:国 内総資本形成、 X3:

民間金融機関貸出残高、 Dumy77:ダ ミー変数 77年 度 )

民間企業の設備投資には、『 生産動態統計』の機械器具生産高、国の GNP

統計の国内総資本形成 データ、県内の民間金融機関貸出残高 デー タ (た だ し年 度末データでな く、月次データの年度内 12ケ 月平均値 を計算 )を 使用 した。

⑤公的資本形成 (H3.3)〔期間 :1975‑1987〕

H3.3= 27144.3+23.0307・ Xl(Xl:国 同項目 )  〔 食 2=0。 97324〕

公共事業である県内の公的資本形成の動向も、一般政府最終消費支出のケー スと同様に国の同項目を使用 し説明した。

⑥在庫品増加 (H314)〔期間 :1975‑1987〕 IR':o.gsoes) H3.4= 45715.2+99。 6501・ Xl‑75119.5・ Dumy78+242913・ Dumy79

‑237817・ Dum,85+278477・ Dumy86   (Xl:国 同項 目 ) 県内の在庫の動向を示す月次データとしては、鉱工業生産指数 (の 在庫指数 )、

普通営業倉庫保管高、主要産業 (自 動車、二輪車等 )の 生産額 と出荷額 (の 差 )、 などいくつかの説明変数が考え られるが、いろいろな形 の回帰式を作 っ て試行 して もいずれ も満足な決定係数が得 られなかった。結局、国の GNP統

計の同項目を使用することとした。ただ、ダミー変数の数が多く回帰式の自由 度が問題となる。ダミー変数の年度をみてもわかるように、県の在庫変動は、

国と基本的には同一の動きを示しているが、 1978〜79年 (第 二次オイルショッ ク)と 、 1985〜86年 (円 高 )時 に県のデータは大きく振れている。原油価格 t 外国為替相場なども説明変数にしたが、決定係数は満足なものとならなかった。

⑦財貨・ サービスの移出 (Hl)〔 期間 :1975‑1986〕    〔食 2=0。 99813〕

H4= 3576000+30.2318・ Xl+83.9827・ X2+5258.66・ X3

‑422618・ Dumy79

(Xl:国 ・ 民間最終消費、 X2:国 ・ 国内総資本形成、 X3:

東京外国為替相場、 Dumy79:ダ ミー変数 1979年 度 =1)

財貨 0サ ー ビスの移出は、県内産品の県外への販売額である。 これに影響を

与える県外市場の需要動向を示す指標 として、国内市場 については GNP統 計

の民間最終消費支出、国内総固定資本形成を使用 した。海外への輸出は東京外

(264)  δ 7

(10)

法経研究 38巻 3・ 4号 (1989年 )

国為替市場 の為替 レー トを使用 し、近年の為替 レー トの変化が輸出に与える影 響 を追跡で きるように した。

③財貨・ サービスの移入 (H5)〔 期間 :1975‑1987〕  ,〔 食 2=0.99423〕

H5= 4748670+0。 27203・ Xl+50035。 10X2+75029.3・ X3

(Xl:県 ・ 民間最終消費、 X2:全 国卸売物価指数、

X3:県 ・ 鉱工業生産指数 )

財貨・サービスの移入は、県外の財貨・ サービスが県内に流入する額であり、

県内需要 (中 間原材料、消費財、投資財、政府支出財 )に たいする県外からの 供給高である。うち中間原材料と投資財は県内の鉱工業生産の動向に比例 して 県外か ら入 ってくると考え、県・ 鉱工業生産指数を使用 した。また消費財は県 内の消費に比例すると考え、①で推計した民間最終消費支出を使用した。また 説明変数として全国卸売物価指数を用いている。これは原油価格や円レートの 言‰ 雛 挽 ξ諮″L轟£昴 繹 ミよ項ζ ttL舅 「 髪

したオイルショック

3.四 半期県民所得データか らみた静岡県経済の動向

推計結果は表 3お よび図 2に 示すとおりである。表 3は 、季節調整データで あり、年度換算値である。図 2(a)の グラフにみられるように、静岡の県内 総支出 =県 内総生産はこの間、大きな変化を辿ちている。それは、① 1985年 の 秋の G5を 契機とする急激な円高による停滞局面への移行、②それから脱却 し て高度経済成長期なみの急成長局面への転換、という過程である。以下では可 能なかぎり、この①から②への急転換のプロセス、およびその理由の分析を主 眼にして経過をあとづけてみよう。      1

a,円 高の県経済への影響

静岡の県内総支出 =県 内総生産 (図 2a)は 1985年 秋の G5か ら 1986年 の 4〜 6月 まで上昇 したのち、 1986年 の 7〜 9月 から円高による停滞局面に入っ ている。 G5か ら約半年で円高のブレーキが県経済に効 き、約 1年間の停滞局 面を経たのち、 1987年 の 7〜 9月 か ら景気上昇局面にはいっている。

円高の影響を少 し詳 しく分析 してみよう。民間消費 (図 2b)│こ ついては、

1986年 の 4〜 6月 期まで上昇 したのち、ほぼ 1年後の 1987年 の 1〜 3月 期まで 減少 し、県内総支出と同 じ軌跡をたどっている。消費需要の減少額を表 1か ら

(263)

(11)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計について 計算す ると年度ベースで約 840億 円である。

これにたいし民間住宅 (図 2c)は 1985年 から 86年 にかけて停滞 していたの が、 1986年 の 10〜 12月 を転機として翌 1987年 1〜 3̲月 、 .4〜 6月 と急上昇 して いる。民間消費の減少期に一足先に内需をリー ドしはじめている。

民間企業の設備投資需要 (図 2d)は 1986年 の 7〜 9月 期をピークに、急低 落 している。ただ 1年後の 1987年 の 4γ 6月 期をボ トムとしてその後、 1987年 の 7〜 9月 期には円高不況以前の水準まで早 くも回復 し、目を見張る ような上 昇を辿 っている。その勢いは 1987〜 88T度 と 2年 度 8四 半期にわたり、現在 も 続いている。

県経済が県外 との市場交流を示す移出・ 移入 (図 2e)は 、興味ある動 きを 示 している。移出は 1985年 4〜 6月 期から 1987年 の 4〜 6月 期までほとんど横 ばいで推移 したのち、 1987年 の 7〜 9月 期から急上昇 している。静岡県企画調 整部統計課の『静岡県の県民経済計算』の数値をみても、 1985年 度と 1986年 度 の移出はほぼ同額である。 1986年 度の静岡県の輸出は対前年度 2割 減であった から、国内の内需への生産 シフトがこれを打ち消す動 きをして いると考えられ るが、いずれにしても、移出が 2年 にわたり横ばいである点は、四半期データ でも示されている。

これにたいし、移入は円高とほぼ軌を―にして減少 し、 1986年 の 10〜 12月 を ボ トムに上昇 している。移入の減少は、円高 と原油安で輸入原材料、および国 内原材料の大幅な価格低下を意味 しており、直ちに数量 ベースの減少を意味し

ない。こあ過程は移入の推計式の説明変数として、卸売物価指数を組み込むこ

とによつて追跡できている。

G5の 1985年 10〜 12月 期 (9兆 189億 )を 基点に、ボ トムの 1986年 の 10〜 12 月期 (8兆 4,858億 )の 移入の減少額は年度ベース換算で 5,331億 円となる。

またこの 5,331億 円を静岡県経済が日本経済に占めるウエイ トの 3%で 割 ると、

約 17兆7,700億 円となる。経済企画庁の試算で約 20兆 円といわれている全国の 円高差益の額に近 くなる。静岡県の円高差益額 (間 接分 もふ くむ )は 、いずれ にしても約 5,000億 円前後、この 1986年 度の県民所得約 10兆 円の 5%、 静岡県 の年間財政予算額に匹敵する規模にのぼっていたと推定される。

(262)″

(12)

法経研究 38巻 3・ 4号 (19894)

表 3  県経済の成長率と寄与度

③   統計上の不突合 は省略 してあるので、

その分、合計欄が一致 しない。

図 2  県内総支出の四半期別動 向 (1985年 4〜 6月 〜 198991〜 3月 )

一名目・ 季節調査済一

(a)県 内総支出 (10億 円 ) 6000

(b)民 間最終消費支出 (10億 円 )

14000

12000

10000

脚       鰤

I IEttIV I II  ЩⅣ  I IIIIⅣ  I IIIⅣ 1985  1986  1987 19 年度

(261)

̀

I IIIEⅣ I nllEIVI  ⅡⅢIVl肛 皿Ⅳ 1985 1986 1"7 1988T‐ E

(%)

1。 民間最終消費    1.4   1.6   2.6

2.一 般政府消費    0。 3   0。 1   0.3

3.民 間住宅投資    0.3   1.7   0.8

4.民 間企業設備    0.6   0。 3   1,7

5。 公的資本形成   0。 1   0.5   ▼ 0。 2

6.在 庫 増 加   1.3  2.1  0。 1

7.移     出   0。 1   4。 9  16.7

8.  移        入      5.0    ¬ 「 4.6    ▼  5.9

(13)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計について

(lo億 円 ) 1000

900

800

700

600

500

4∞

300

200

(10億 円 ) 15000

14000

13000

12000

11000

1圃

9000

8000

7000

0

(C)民 間住宅

I n IIv i n ttlv l■ IEIV I tt IⅣ

1985  1986  1987 19田 年度

I IIIEⅣ  I Π IIⅣ I IIIEⅣ  I IIIIIV

早 早

1986 1986 1987 1岬 早

(d)民 間企業設備

I  Ц  ttIV I IIIIEW I II皿 Ⅳ  IIIIⅣ 1985  1986  1987 19 年度 (10億 円 )

1900

1800

1700

∞     0

(260)π

(14)

法経研究 38巻 304号 (1989年 )

b.高 成長局面 への転換

静岡県企画調整部統計課の『静岡県の県民経済計算』の 61年 度確報値および

62年 度の確報値は、成長率はいずれの年度も 5。 7%で あった。 しかし同じ成長 率といっても、県経済の様相はかなり異なっている。表 3の ように成長率の寄 与度を計算すると、 61年 度は上でみたように、他の項目は低迷 しているのに比 べ、 5。 7%の うちら %が 移入の寄与による。この「好況感なき成長 Jの 原因は 別稿でもみたように、県外産品の価格低下、特に素材型産業の原材料コストの 大幅な低下と収益改善に求められる。

それにたいし 62年 度の成長率 5。 7%は 個人消費、住宅投資、在庫品増加が寄 与し、内需が上昇局面に入った様子がうかがえる。四半期デ ニタによれば、 19 87年 の 7〜 9月 期か ら県経済は高い成長局面に入っている。今回の四半期デー

タか ら推定される 63年 度の県民所得の成長率は 16。 1%、 高度経済成長期なみの ハイペースである。個人消費、民間企業設備投資の力 も大きいが、何より 63年 度の県経済を牽引 しているのは移出である。

昭和 61年 度の円高ネ況から高度成長への転換は、組立加工型の輸出関連企業 では、高 くなった円 レー トヘの対応努力 と内需転換を進めたこと、 同畿舒配己」

に悩んでいた素材型産業では、原材料 コス ト低下の大きな恩恵を受け、収拳改 善と活発な合理化投資を進め、この両者がそれぞれ「供給」と「需要」の関係 で リンクしなが ら、他産業へ波及効果をもたらしたことが予想される。

平成元年の 1〜 3月 期は、民間最終消費、民間企業設備、移出になお勢いが あるものの、民間住宅の伸長率の低下、移入額の増加が影響 し、成長率は鈍化

しはじめていることが分かる。

おわ りに

本稿での四半期データは名目値であって、雇用等の分析に関連する数量 ベー スの実質値は推計 していない。本文でも触れたがこの点にっいて別稿で推計 し たい。

(1989年 7月 10日 脱稿 )

72  (259)

(15)

静岡県の四半期別県民所得の早期推計について

(1)国 の四半期別国民所得統計の推計方法 にっ いて は、経済企画庁国民所得部

「 四半期別国民所得統計速報 (QE)の 推計方法」 同『 季刊国民経済計算』

臨 31、 昭和 50年 3月 参照。

(2)熊 本県庁企画開発部統計調査課「 四半期別県民所得推計の開発」昭和54年 3 月。

(3)北 海道開発調整部経済調査室「四半期系列道民所得統計の推計」昭和57年 3 月 (同 『 北海道経済調査』第 2号 第 2分 冊所収 )。

同「 四半期系列道民総支出の推計」、昭和 58年 3月 (佐 藤良人「 四半期系列 道民総支出の推計」『北海道経済調査』第 3号 に所収 )。

(4)真 継隆「県民経済計算における四半期データ推計の新 しい動き」経済企画庁

『 季刊国民経済計算』血 61、 昭和 58年 2月 。

(5)経 済企画庁は公表資料ではないが、「 県民所得の四半期分割方法」昭和55年 3月 、「 県民所得の四半期別早期推計法一四半期別統計の時系列分析」昭和 56年 3月 を出している。

(6)東 海銀行   資料 .1983.4.20

(7)土 居英二・ 浅利一郎「 静岡県経済の計量モデル分析」静岡大学『法経研究』

35巻 304号 、 1987年 3月 。

(3)土 居英二「 為替 レー ト、原油価格の動向と静岡県経済への影響の分析 J 静岡大学『法経研究』 36巻 3号 、 19841月 。

(9)土 居英二「為替 レー ト、原油価格の動向と静岡県経済への影響の分析―静大・

静岡県計量経済モデルを通 じて一」静岡大学『 法経研究』 36巻 3号 、1988年

1月 。

参照

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