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博士論文審査報告書

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Academic year: 2021

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博士論文審査報告書

氏名 杉本 隼之(スギモト トシユキ) 学位の種類 博士(理学)

学位記番号 博理第87号 学位授与報告番号 甲第257号

学位授与年月日 平成28年3月22日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当

論文題目 典型元素リン及びテルルの超高圧下の 構造相転移に関する研究

論文審査委員 (主査)教授 赤浜 裕一 (副査)教授 小林 寿夫 (副査)教授 田中 義人

(副査)教授 森 嘉久(岡山理科大学理学部)

(副査)准教授 信幸

1. 論文内容の要旨

超高圧下では、絶縁体-金属転移や超伝導の出現など、物質科学で扱う代表的な現 象が起きる。物質の基本となる元素の結晶構造は、これらの現象を理解するための基 礎となることから、高圧下での構造変化に興味が持たれている。典型元素は、常圧下 で分子性絶縁体や半導体さらに金属にいたる様々な電子状態を示す。同じ価電子数を もつ同族元素は、その物性に類似性を示し、圧力により誘起される相転移の構造シー クエンスにも系統性がある。これらの構造シークエンスは、配位数の増加を伴いなが らより密な構造の単原子金属へと相転移する傾向を持つ。131417そして18族元 素では、超高圧下で最密充填構造であるfccまたはhcp構造へと相転移することが知 られている。しかし、1516族元素ではこれまで最密充填構造への相転移は報告さ れておらず、最高圧力相は8配位のbcc構造と考えられていた。

申請者は、ダイヤモンドアンビルセル圧力発生装置(DAC)と放射光X線を組み合わ せた超高圧X線回折実験を15族元素のリン(P)では340 GPaまで、16族元素のテルル (Te)では330 GPaまで行い、各元素で新たな高圧相を発見した。リンは262 GPabcc が歪んだ2×2×2超格子構造(cI16構造:P-VI)へ相転移することを明らかにした。

この構造の基本構造はbccであり、15族元素の最高圧相の構造はbccと提案されてい

(2)

たことから、この提案を検証した。一方、テルルは、96 GPabcc構造(Te-V)から fccを基本とした超格子構造(Te-VI)を経て255 GPaで完全なfcc構造(Te-VII)へ相 転移することを明らかにした。また、第5周期典型元素の最高圧相である単原子金属 状態では、価電子数の増加と共にその原子体積が単調に増加することを提示した。

さらに、申請者は、これら高圧構造の相安定性を確かめるため、密度汎関数理論に 基づいた第一原理計算をおこない、各高圧構造のエンタルピーの比較を行った。リン では、およそ260 GPaで単純六方晶構造からbcc構造が、280 GPacI16構造がエネ ルギー的に安定になることを確認した。テルルにおいても100 GPa程でbcc構造とfcc 構造のエンタルピー値が逆転し、fcc構造が安定化することから、Te-VI相がfccを基 本とする構造であることを支持する結果を得た。

2. 論文審査結果

物質の基本となる元素の結晶構造は、物質科学の基礎となる重要な情報である。本 論文は、DACと放射光を組み合わせた超高圧X線回折法を用い、典型元素である15 族元素のリンと16族元素のテルルの精密構造解析を、それぞれこれまで未踏の超高圧 領域であった340 GPa330 GPaまで行い、各元素で新たな高圧相を見出した。リン

262 GPacI16構造へ相転移することを明らかにした。また、テルルは、96 GPa

bcc構造からfcc構造を基本とした超格子構造を経て、255 GPaで完全なfcc構造へ 相転移することを明らかにし、16族元素の最高圧相はfcc構造であることを提示した。

さらに、第一原理計算により、リンのcI16構造とテルルのfcc構造への相転移を理論 的に検証した。以上のように、本論文はリン及びテルルの超高圧下の構造相転移に関 して新しい知見を見出し、典型元素の高圧下での構造相転移の系統性を実験及び理論 的に実証した。この成果は高圧下の物質科学の今後の発展に大いに貢献するものであ る。

よって本論文は博士(理学)の学位論文として価値のあるものと認める。

また、平成28125日、論文内容およびこれに関連する事項について試問を行 った結果、合格と判定した。

参照

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