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応用化学専攻 森 美紗樹 MORI Misaki

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Academic year: 2021

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(1)

森 美紗樹, 1

37

水耕栽培で育てたトマトの根、茎及び葉に取り込まれた Zn の化学形態別分析 Speciation analysis of Zn accumulated in roots,

stems and leaves of tomato cultured in hydroponics

応用化学専攻 森 美紗樹 MORI Misaki

【緒言】

近年、 重金属等に汚染された土壌の浄化技術として、

植物が根から養分を重金属と共に吸収する能力を利用 する“ファイトレメディエーション”が注目されてい る。この技術は低コストで環境に優しいという利点が あるが、植物の吸収能力には限度があり、高濃度の汚 染地域には不向きであるという欠点がある。この欠点 を克服するためには、植物による重金属等の吸収能力 を高める技術を開発する必要があり、植物による金属 等の取り込みや輸送、 蓄積の機構の解明が急務である。

これまでの研究において、植物には、根から有機酸 を放出し、根圏に存在する金属と錯体を形成すること で金属の無毒化や取り込みの促進を行う機構があるこ とが報告されている

1)

。また、植物体内のポリペプチ ドが金属と錯体を形成し、液胞等に隔離することで金 属の無毒化を行う機構があることも示唆されている。

無 毒 化 を 行 う と さ れ る ポ リ ペ プ チ ド は

PCn

(phytochelatin)

であり、

PCn

SH

基が金属と結合す ることで金属を閉じ込め無毒化すると考えられている

2)

。しかし、これらの機構の詳細については、未だ明 らかにされてはいない。そこで本研究では、根から取 り込まれた金属の化学形態に着目し、植物による金属 無毒化機構の解明を目的として研究を行った。

【実験】

植物は、生長が早く水耕栽培が容易であるトマトを 用いた。トマトに取り込まれる金属には、植物にとっ て必須微量元素である Zn、毒性を示すとされる Cd 及び Pb を用いた。

明暗期 12 時間周期、室温 25°C の条件で

14

日間 土耕栽培を行った後、生長度合が同程度の個体を 24 株選定し、6 株ずつ 4 群に分けた。それらを、50%

Hoagland

溶液 (生長に必須の栄養素として Zn 25 ng

mL-1

添加) 及び 50% Hoagland 溶液に Zn 濃度 2.0

g mL-1

Cd

濃度 0.5 g mL

-1

Pb

濃度 0.5 g mL

-1

と なるように金属を添加した 4 種の溶液 (pH 4.8 に調 整

)

にそれぞれ浸し、参照群、

Zn

添加群、

Cd

添加群、

Pb

添加群として土耕栽培と同じ条件で 30 日間水耕 栽培を行った。

水耕栽培後、根、茎及び葉の 3 部位に分離し、乾燥 器にて乾燥させた後、均質化した。粉末試料が

100

倍 希釈となるように 30 mM 酢酸アンモニウム (pH 6.5) を加えて

1

時間超音波抽出を行った後、 超遠心分離器

にかけ、

0.45 m

シリンジフィルターでろ過した。得

られた抽出液中の

34S, 66Zn, 111Cd, 208Pb

を、溶離液条件 により分離方法が異なる、マルチモードカラム

(Multi)

を用いた

Multi-HPLC-ICPMS

にて測定した。 本研究で

は、イオン性相互作用

(アミノ酸やペプチドは pI

値) による分離が可能な

10 mM

酢酸アンモニウム (pH

6.5)

を溶離液として用いた。

Zn

添加群については、Multi-HPLC-ICPMS 測定に て

34S

及び

66Zn

が共溶出したピークを分取し、凍結 乾燥を行った。その後、分取した試料を親水性や疎水 性の性質により分離し、精製するため、逆相カラム

(RP)

を用いた

RP-HPLC-ICP-MS

にて

34S

及び

66Zn

を測定した。次に、

34S

及び

66Zn

が共溶出したピーク を分取し、凍結乾燥した後

ESI-TOFMS

測定を行い、

トマトの根、茎及び葉抽出液中に存在する

34S

及び

66Zn

が共溶出したピークの化学形態の同定を行った。

【結果及び考察】

1. Multi

カラムによる

Zn, Cd, Pb

の化学形態別分析

各群におけるトマトの根、茎及び葉抽出物の

Multi-HPLC-ICPMS

測定結果を図

1

に示した。

(2)

森 美紗樹, 2

参照群の根、茎及び葉において、保持時間 1070 秒 に

34S

及び

66Zn

のピーク U1 が検出された。標品で ある GSH (glutathione) の

34S

のピークと同じ保持時 間であることから、ピーク U1 は GSH の SH 基に

Zn

が結合した GSH-Zn によるものと考えられる。

Zn

添加群の根、茎及び葉では、保持時間 960 秒に

34S

及 び

66Zn

のピーク

U4

が検出された。標品である PC

2

(phytochelatin 2)

34S

のピークと同じ保持時間であ ることから、ピーク U4 は

PC2

の SH 基に

Zn

が結 合した

PC2-Zn

によるものと考えられる。また、参照 群では GSH-Zn と考えられるピーク U1 が得られた が、Zn 添加群で検出された PC

2-Zn

と考えられるピ ーク U

4

に相当するピークは得られなかった。このこ とから、

Zn

添加群では、トマトの生長に必須である

Zn

が過剰に取り込まれたことで GSH が 2 つ結合 した PC

2

が誘導合成され、

PC2-Zn

として錯体を形成 することで過剰な Zn を無毒化したと考えられる。ま た、参照群や Zn 添加群において検出された

66Zn

の みのピーク U2, U3 や U5 は、

S

を含まないアミノ酸 やペプチド、または有機酸に Zn が結合した化学形態 によるものであると考えられる。

Cd

添加群及び Pb 添加群の根、茎及び葉において、

保持時間 960 秒に

34S

及び

111Cd

または

208Pb

のピ ーク U7, U9 が検出された。ピーク U7, U9 は標品で ある PC

2

34S

のピークと同じ保持時間であること

から、PC

2

の SH 基に Cd または Pb が結合した化 学形態によるものと考えられる。また、

Cd

添加群及

Pb

添加群では、参照群では得られなかった

34S

111Cd

または

208Pb

のピーク (U7 及び U9) が検 出された。このことから、

Cd

Pb

が取り込まれたこ とによって GSH が 2 つ結合した PC

2

が誘導合成 され、

Cd

や Pb を SH 基でキレートすることで無毒 化したと考えられる。また、

Cd

添加群の根において 検出された

111Cd

のみのピーク

U6

は、

S

を含まない アミノ酸やペプチド、または有機酸に

Cd

が結合した 化学形態によるものであると考えられる。また、

Pb

添 加群において検出された

208Pb

のみのピーク

U8, U10

は、

S

を含まないアミノ酸やペプチド、または有機酸 に Pb が結合した化学形態によるものであると考え られる。

2. ESI-TOFMS

測定による Zn の化学形態の同定

Zn

添加群において、Multi-HPLC-ICPMS 測定によ り得られた

34S

及び

66Zn

の共溶出ピーク U4 の詳 しい化学形態を調べるため、

Multi

カラム及び

RP

カ ラムを用いて分取を行い

ESI-TOFMS

測定を行った。

理論値と実験値との比較 ( [ppm]≦50) から、ピーク

U4

は PC

2

の 2 つの SH 基に Zn が結合し錯体と なった

PC2-Zn

によるものであることがわかった。

【結論】

Zn

はトマトの生長において必須の元素であるが、

過剰に取り込まれた場合には PC

2-Zn

として Zn を キレートし、無毒化することがわかった。

トマトは、

Cd

Pb

を取り込むと

PC2

を誘導合成 し、過剰な

Zn

と同様に

SH

基と結合して無毒化する ことが示唆された。

【参考文献】

1) Jones, D. L. Plant and Soil, 1998, 205, 25-44.

2) Heldt, H. W. et al. Plant Biochem. 2011, 4, 323-335.

【対外発表リスト】

1)

森 美紗樹

,

中澤 隆, 古田 直紀: 第

75

回分析化 学討論会, 2015, 山梨, 口頭発表.

1

各群における抽出物の

Multi-HPLC-ICPMS 測定結果 (a) 参照群、(b) Zn 添加群、(c) Cd 添加群、(d) Pb

添加群

U5

34S 強度 [count]0

0 66 Zn 強度 [count]

U4

0

34S 強度 [count]

0 66 Zn 強度 [count]

0

34S 強度 [count]

0 66 Zn 強度 [count]

500 2500

500 2500

2000 (b) Zn 添加群 10000

(b) Zn 添加群

(b) Zn 添加群

34S

66Zn

34S

66Zn

34S

66Zn

34S 強度 [count]

PC3 PC2GSH 標品

10 ppm

0 500

34S 強度 [count]

PC3 PC2GSH 標品

10 ppm

0 500

U2 U3

34S 強度 [count]0

0 66 Zn 強度 [count]

U1

2000 10000

0

34S 強度 [count]

0 66 Zn 強度 [count]

500 2500

0

34S 強度 [count]

0 66 Zn 強度 [count]

500 2500

(a)参照群 根

(a)参照群 茎

(a)参照群 葉

34S

66Zn

34S

66Zn

34S

66Zn

0

34S 強度 [count]

0 111Cd 強度 [count]

U6U7

0 0

34S 強度 [count] 111Cd 強度 [count]

0 0

34S 強度 [count] 111Cd 強度 [count]

250 500

250 500

1000 (c) Cd 添加群 2000

(c) Cd 添加群

(c) Cd 添加群

34S

111Cd

34S

111Cd

34S

111Cd

保持時間[sec]

0 600 1200 1800

U8 U10

0 0

34S 強度 [count] 208Pb 強度 [count]

U9

0 0

34S 強度 [count] 208Pb 強度 [count]

0 0

34S 強度 [count] 208Pb 強度 [count]

500 500

2000 2000

1000 1000

(d) Pb添加群 根

(d) Pb添加群 茎

(d) Pb添加群 葉

34S

208Pb

34S

208Pb

34S

208Pb

保持時間[sec]

0 600 1200 1800

参照

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