− 4 −
4染色繊維の簡便な品質鑑定法
(顕微鏡による熱湯,石けん,汗紅対する染色堅ろう
性の鑑定法)
平 木 照 男,川 本 和 明
序
繊維または布の使用価値は,人間の欲望を充足しうる色彩を呈して−,より⊥
層その範閉を拡大することになる。人間の欲望は,文化水準の向上とともに複 雑多岐にわたるこ.とは論をまたない。従って色彩もまた,次第にその色相,明 度,彩度に各種のものが要求されてくるのほ当然の結果である。ちなみに色立 体数(色彩の数)は,東今200万〜800万程度に達していると云われる。
染色において一色彩をつかさどるものは,染料であるが,染料ほ被染物の上に 発色して初めて本来の目的を果すことになる。それ故に染料および染色化学 ほ,色彩を求めて,また素材の多様化に促されて研究開発に余念がない。近時 技術革新の所産たる合成繊維の創出に伴い,従来の染料でほ,それら合成繊維 に対して色彩的効用のないものが多く,このため後者の研究は,特に活況を極 めているのであるが,こ・」:で重要なことは,染色に関する限りにおいて−ほ.,色 調の美しさと同時にその色が,外的条件紅対して墜ろう度の高いものでなけれ ばならないことである。
染料鱒,被染物との関連において,その染料自体の使用価値を形成する。従 って染料は,被染物上に染着することを絶対的要件とするが,たとえ染色され ても,その整ろう性において更にまた,染料自体の使用価値が規制されること があるのを忘却出来ない。
堅ろう性,すなわち色染物の使用に当り,当然考えられる光,洗剤,汗等の 外的因子に耐えうる性能は,①染料自体の堅ろう性と,⑧織維組織に・おける染 料の沈着状況が規定因となると考えられる?・染料自体の堅ろう性紅ついてほ,
染色繊維の簡便な品督鉱産法
一− ∂ =−
染料化学の分野において常駐研究されているが,沈着状況と堅ろう性の関係に ついてほ,未だ報告を見ない。常識的紅は,染料が繊維和織の内部にまで拡散 沈積するものはど,堅ろう性はすぐれていると考えられるが,果し七その通り 決定してよいものだろうか。いさゝか疑問に感ずるところがある。たとえば染 色ほ.,繊維分子と染料分子の吸着または結合現象と考える場合,これらの現象 を効果的にするための今山・の現象一鯵透現象¶の存在を認めねほならず,
同時紅この鯵透性は,また−・部分流出性紅変質することをも合せ考える必要が ある。そしてこの・−・部分の大いさは,染料と繊維間の親和力あるいは電気的に 中和する力等によって決定されるのであって,染料の繊維組織内部への到達程 度に関係するものではない。云い換えると,鯵透性はよいが,吸着の弱い染料 と繊維関係では.,繊維内部にまで染料侵入の動向がうかがえても,熱湯水,石 けん水等により,多量の染料脱落を見るほずである。
以上の疑問から繊維組織内の染料沈着状況と堅ろう性との相関性を楷査し,
各々の繊維について,いかなる位置に染料沈着をみるものが,堅ろう性のすぐ れたものであるかを検討し,この結果を染色堅ろう性の鑑定に利周しようとし た。
実験は,染料自体の聖ろう性に伴う挙動を・除外するため紅−・定の染料を用い て各種払維を染色し,染着繊維の横断面検鏡紅よって,繊維組織内の染着状態 を観察し,次に堅ろう度試験を行い,染料の脱落した試料について再び繊維断 面の検鏡を行う。かくして対応サーる初めの染色繊維断面との比較で,染料脱落 個所を精査して,染着位置と堅ろう度の関係を把握してみることにする。また
この実験から繊維組織の微細構造を探究し,出来うれば従来の染色理論の解明 にも務めようと考えている。
なお堅ろう皮試験法紅は,.TIS規格があるが,被検物が糸状であること,
操作が簡単であること,加えるに脱落染料濃度を数字的に表明出来る科学的性 がある理由から,JIS規格に定めている退色度の肉眼評定法には,代えてデ
.。.ボスク比色計を使用することにした。
第38巻 解1・2号
_6・−・
実 験
〔Ⅰ〕使用染料名
直接染料
桐山染料(鮒)
酸性染料
桐山染料(紫)
硫化染料 Sulphur Blue4R(日本化薬製)
硫化建染染料 Carban01Blue LB( 〝 ) セリトン染料 DiacellitonG(三菱化成製)
〔:ⅠⅠ〕染法と染着状況
A.直 接 染 料
i)染法:染料5%,浴比50倍,上記染浴に予め温湯をもってよく湿めらせ た被検物を室温で繰り入れ,撹拝しながら徐々に・温度を上げ,約30分間で沸騰 点に到達させ,その状態で更に30分間染色を続ける。爾後水洗,乾燥する。
ii)染着繊維名:木綿,羊毛,絹,ビスコ−ス,ベンベルグ,アミラン,
(1)
iii)染着状況(顕微鏡に・より繊維断面を検鎖した状態−スケッチはこの項 末尾に第1−2図として一・括掲載)
(2)
川 木綿(ⅠトA−イ):スキン層の染着ほ長いが,中心層のそれは悪い。
概してこの染料濃度の染色効果では,着色状況が見分け難い。
(S)
(ロ)羊毛(ⅠトA一口)三 大部分ほ斑染,−・部スキッタリ叫の傾向を見せる ものがある。色染物ほ紺色であるが,繊維組織内において,染色効果の劣 弱な部分は単調な青色を呈する。
M 絹(ⅠトA−ハ):セリシン部分およびスキン層は.,よく′染着している が,中心層はや・」淡色紅なっている。
註1)椎名,平木,商品研究払18(1954)に繊維瑛断面プレパラ−ト用切片の簡易な作 り方を報望している。
註2)この実験を通して,スキン層とほ繊維組鱒の外部をさし,中心層は内部を意味する 広義なものである。ただし木綿の場合,中心層と称する個所は,織推表面付近(スキ
ン層)と空胞周辺との中間部分のことである。
註3)スキッタリ−とほ,濃厚に一億に染まったものから,実際上染まらなかったものま での間に色々の程度の染色効果が見られる現象をいう。
染色繊維の簡便な品質鑑走法
ー 7 一
巨)ビスコ−・ス(ⅠトA−ニ):中心層はよく染まっているが,スキン層は色が浅い。
鵬 ベンベルグ(ⅠⅠ−A−ホ):均一・によく染まっている。
(4)
「\)アミラン(ⅠトA−へ・):はゞ均・−・に染まるが,他の紙座の場合に比し,
色調は赤味を帯びる。
B,酸 性 染 料
i)染法:染料5%,濃硫酸5%,浴比50倍,600Cに・加温したこの染浴匿被 染物を繰り入れ,約80分後に沸騰するように徐々に昇温し,その後40分間この 状腰で染色を続ける。爾後水洗,乾燥サーる。
ii)染着繊維名:羊毛,絹,アミアン,
iii)染着状況
川 羊毛(ⅠⅠ−B・−イ):−・組織面において約半分ほ良好な染着を,残部ほ染 着効果の劣弱を見せる。所謂スキッタリーを呈する。また色染物は紫色な
るも,染着効果の劣弱な部分は単調な背味を呈する。
(ロ)鵜(ⅠⅠ−B−ロ):はゞ均染して染着は良好。
H アミラン(ⅠⅠ−B−ハ):上記同様
C.硫 化 染 料
i)染法:染料10%,硫化ソ−ダ15%,浴比50倍。少鼠の熱湯で染料をよ く練り,硫化ソーダを加え,華湯で浴化を整え,沸騰する湯浴申で1時間染色 爾後脱水し空気中に曝し,水洗,乾燥する。
(4)
ii)染着繊維名:木綿,ビスコ−ス,ベンベルグ,ビニロン,ナイロン。
iii)染着状況
用 木綿(ⅠⅠ−C一・イ):中心層は染着艮好,スキン層および空胞周辺部の 染まりは悪い。
(ロ)ビスコ」−ス(ⅠⅠ−C一口):均染し染着良好。
目上ベンベルグ(ⅠⅠ−C−ハ):中心層はよく染まっているが,スキン層は
染色効果がない。
伺 ビエロン(ⅠⅠ−C−ニ):はゞ均染。
婦38巻 第1・2号
_β・−
糾 アミラン(ⅠトC−ホ):スキン層のかなり広い範囲がよく染着,中心 部ほやゝ淡色。
D.硫化建染染料(硫化染め)
i)染法:操作は硫化染料の場合と同様。
ii)染着繊維名:木綿,ビスコース,ベンベルグ,ビニロン,アミラン,ナ
(4)
イロン。
iii)染着状況
川 木綿(ⅠⅠ−D−イ):はゞ均一・に染まる。
(ロ)ビスコース(Ⅰト・D一口):上記同様 M ベン=づルグ(ⅠトD−ハ):均一・に染着良好。
回 ビエロン(Ⅰトわーニ):中心層は染着良好であるが,スキン層は染色効 果殆んどなし。
糾 アミラン(ⅠトD−ホ):かなり広い確聞・に亘ってスキン層は染着艮好,
中心層はや一」淡色となる。
E.硫化建染染料(建染め)
i)染法:染料5%,か性ソ・−ダ(40◇Be)10cc/L,ノ\イドロサルファイト 8g/L。還元および染色温度60〜700C,浴比50倍。所定の温度で染料を還元し,
ロイコ塩として溶解した後,被染物を繰り入れ,同温度で50分間染色し,次に 染浴から取り出して一室気中に曝し,爾後水洗,乾燥するも
ii)染着繊維名:木綿,ビスコ−ス,ベンベルグ,、アセデート,ピエロンo iii)染 着 状 況
川 木綿(Ⅱ−E−イ):スキン層は染着しているが,中心層はその効果が 弱い。
(ロ)ビスコ」−ス(Ⅱ一−E・一口):均染の傾向はあるが,や・」スキン層が淡色 の感。
M ベンベルグ(Ⅱ−E−ハ):はぼ均」・に良好な染着。
註4)アミランはナイロン6,ナイロンはナ・イロン66のこと,「ロイコ体染料〟ナイロ ン」の場合空気酸化に長時間(約1時間)を要す。
染色繊維の簡便な品磐鑑定法 ・一 夕 ーー
(ニ〕アセテート(Ⅱ−E−ホ):スキン層は染着良好,中心層ほ少し淡色と なる。たゞしスキン層の染着は範囲狭少。
帥 ビニロン(Ⅱ−E−・ニ):中 心層はよく染まって−いるが,スキン層はや や淡色となる。
F.セリトン染料
i)染法‥染料3%,浴比50倍。④前処理−・右けん液(合成洗剤2g/水1L)
を被染物の重さに対して50倍畢紅とり,この中紅被染物を入れ,50〜600Cで 30分間処理し水洗する。⑨染色操作一染料を洩石けん液(合成洗剤1g/水1L
)でよく溶かし50倍の染浴をつくり,前処理繊維を繰り入れ,700Cで40分間 染色する。⑥後処理…脱水した染色繊維を50倍畳め石けん液(㊤と同濃度)
に入れ,400Cで7分間処政 商後水洗,乾燥する。
ii)染着繊維名:アミラン,ナイロン,ビニロン,アセテ−・卜。
iii)染 着 状 況
川 アミ.ラン(Ⅱ・−F−・イ):スキン層はよく染まっているが,中心層ほ染 色効果なし。
(ロ)ナ・イロン(Ⅱ−F一口):上記同様,ただし中心層に少し染色効果があ る。
H ビニロン(Ⅱ−F−リ、):中心層ほ.染着良好,スキン慣ほ.やや淡色。
H アセテート(Ⅱ−F−ニ):云キン層の染着は良好,中心層ほやや染色 効果がある程度。ただしスキン層の染着範囲は広く,はぼ中心付近までに達す
る。
〔Ⅲ〕生ろ う 皮試験
(5)
熱湯,石けんおよび汗試験を行なう。操作はJIS−Ⅸ4004〜4009に従う。
ただし本実験でほ該試験法における退色皮の肉眼鑑定にほ代えて新しい試みを 取り入れデ.ユボスク比色計を用いた。すなわち試験後の染料脱落液と同時右こ空 試験をした既知濃度の同種染料液とを比色し,染料脱落彼の濃皮を測定して退
註5)日本商品学会,商品鑑定ハンドブック,116,(1955)東京
第38幾 筋1・2号
10
・−ヱ0 −
包皮を確認する。なお堅ろう度試験にほ.,他に日光,塩素漂白,摩擦試験をも 普通行なうが,これらの試験ほ,染料自体の堅ろう性を検索す∴るにほ必要であ るが,繊維組織内部の染着状勝と堅ろう性の相関性を精査するにほ余り重要で ないと考え省略した。以下各試験につき列挙する。
i)熱湯試験 〔方法〕温度70±lOCの熱湯25ccの中に0・1gの被検物を入れ 10分間浸漬し,後脱水乾燥する。
A,直接染料染着繊髄
1)退色率(各繊維の染着率を100%とした場合)
2)検 鏡 試 験
川 木綿(ⅠⅠⅠ−トA−イ):総体に退色
(ロ)羊毛(ⅠⅠⅠ−i−A−・ロ):総体に退色,染色効果の劣弱な部分ほ染料不 在となる。
←う 絹(Ⅰ甘−i−A−ノ、):総体に退色
tニ)ビスコーース(ⅠⅠⅠ−トーA−−∵=こ):総体紅退色,(中中層とスキン層の境 界が一・層明瞭となる。特に中心層ほ.紺色から赤味の強い色相に変わる)
㈹ ベンベルグ(ⅠⅠⅠ−i−A−ホ):総体牲退色,スキン層の狭少範囲が染 着染料不在となる。
〔1 アミ.ラン(Ⅰ王Ⅰ−i綱A−へ):総体に退色。
B.酸性染料染着繊維 1)退 色 率
2)検 鏡 試 験
染色繊維の簡便な品質鑑定法
・−JJ_
11
川 羊毛(ⅠⅠⅠ−i−B−イ):総体に退色,(染色効果劣弱な部分の染料は不 在となる。また染着良好な部分の色調は赤味を帯びる。ただし原糸は紫色)
(ロ)絹(ⅠⅠⅠ−i−B−ロ):総体に退色,特紅赤の色相の退色が著しい。また セリシンは分解する。
M アミラン(ⅠⅠⅠ−i−B−ハ):スキン層の退色著しく,染着染料不在とな
る(中心層もや」退色)
C.硫化染料染着繊維
1)退色率一金城維退色せず。
2)検鏡試験一染着状況に変化なし。
D.硫化建染染料(硫化染め)染着繊維 1)退 色 率
2)換鏡試験一木綿,ビスコ−ス,ベンベルグほ染着状況に変化なし
川 ピ.エロン(ⅠⅠⅠ−i−・D−ニ):中心層の染着染料が脱落し,同時に舶蔵内 は均染状態となる。
(ロ)アミラン(ⅠⅠⅠ−i−D−ホ):総体にわずかに退色。
E.硫化建染染料(建染め)染着繊維 1)退 色 率
2)検鏡試験一木綿,ビスコ〜ス,ベンベルグは染着状況に変化なし。
川 アセテ・−ト(ⅠⅠⅠ−i−E−ホ):特にスキン層での退色が目立つ。
(ロ)ビニロン(ⅠⅠⅠ−i−E−ニ):中心層の染着染料が退色,その時スキン層 を一・部染めて組織内は均染的状態となる。
舞38巻 算1・2号
12 ーJ2−・・
ii)石けん試験 〔方法〕温度70±lOCの良質洗たく石けん液(0.5.%)25 ccの中に0.1gの被検物を入れ,10分間浸漬後,脱水乾燥する。
A.直接染料染着繊維 1)退 色 率
2)検 鏡
用 木綿(ⅠⅠⅠ−ii−A−イ):総体風退色,空胸中に脱落染料の−・部が流入 固定。
(ロ)羊毛(ⅠⅠⅠ一ii−A一口):退色と同時に均染化するd
ケ1絹(ⅠⅠⅠ−ii−A−ハ):総体紅退色,特紅スキン層およぴセリレン部の 染色効果は消失する。
巨)ビスコ−.ス(ⅠⅠⅠ−ii−A−−こニ):総体に退色,スキン層は染料不在とな る。また色調は赤味を帯びる。ただし原糸は紺色。
(ホ)ベンベルグ(ⅠⅠⅠ−ii−A−ホ)ノ:総体に退色。
M アミラン(ⅠⅠⅠ【ii−A−へ):総体に退色。
B.酸睦染料染着繊維 色
2)検 鏡 試 験
(イ)羊毛(ⅠⅠⅠ−ii・・−B−イ):染着面積が縮少,色謁ほ青味がとれ,赤味を 呈する。ただし原糸は紫色。
(ロ)絹(ⅠⅠⅠ−ii−B一口):スキン屑の退色大。セリシン部分かなり分解。
H アミラン(ⅠⅠⅠ−ii−B−ハ):スキン層は完全に退色し,色調は育味を 失いかなり強い赤昧を呈する。
染色繊維の簡便な品質鑑定法
−ヱ3−
13
C・殖イヒ染料染着練絹
1)退 色 率
2)検 鏡 試 験
用 木綿(ⅠⅠトii十C−イ):総体に退色。
(ロ)ビ子コ・−ス(ⅠⅠト・iトーC−ロ):凹凸面の凹面部に点状の抜染がみられ る。染着部分の色調は背味を強くする。ただし原糸は紺色。
M ベンベルグ(ⅠⅠⅠ−ii−C−ハ):総体に退色。
H ビニロン(ⅠⅠⅠ−ii−C−−ニ):総体に退色。
榊 アミラン(ⅠⅠモーii−C一ホ):中心層の染色効果ほ大部分消失し;スキ ン層にのみもとの染色効果がみられる。しかし染着範囲は狭くなる。
D.硫化建染染料(硫化染め)染着繊維 1)退 色 率
2)検 鱒 試 験
川 木綿(ⅠⅠⅠ−ii−D−イ):斑になって退色,染色効果が消失する部分を 生ずる。
(ロ)ビスコーース(ⅠⅠⅠ−ii−D−ロ):スキン層は完全紅退色,中心層の染着 は斑染状となる。
H ベンベルグ(ⅠⅠⅠ−ii−D−ノ、):上記と大体同様の状況。
H ビ・エロン(ⅠⅠⅠ−ii⊥D−ニ):中心層の退色は大,退色部分の色相は青 味がとれ赤味を呈する。スキン層は処理前よりむしろ染着効果点好となる。た だし染色糸は紺色。
14
第38巻 欝1・2号
− ねトー
帥 アミ.ラン(ⅠⅠⅠ−ii−D−ホ):中心層は殆んど染色効果を消失し,スキ ン層の染着範囲も狭くなる。
E.硫化建染染料(建染め)染着繊維 1)退 色 率
繊維名】木綿ぼスコ ̄■l㌢ベル仔セデ ̄lビニロン
退色率(%)
2)検 鏡 試 験
川 木綿(ⅠⅠⅠ−ii−E−イ):総体に退色,空胞中に脱落染料の−・部が流入 固定。
(ロ)ビスコー・ス(ⅠⅠⅠ−ii−E一口):スキン層は青味の色相が強く,中心層 ほ赤昧の色相が強くなる。ただし原糸ほ組色。
叫 べンベルグ(ⅠⅠⅠ−ii−E−ハ):スキン屑ほあまり退色せず,中心層か 主として退色,色相ほ赤味を強くする。
H ピニニlコソ(ⅠⅠⅠ−ii−E−ニ):退色して均染化する。
糾 アセテ・−ト(ⅠⅠⅠ−ii−E−ホ):総体に退色。
F.セリトン染料染着繊維 1)退 色 率
2)検 鏡 試 験
川 アミラン(ⅠⅠⅠ−ii−F−イ):スキン層の染着範囲が狭くなる。
(ロ)ナイロン(ⅠⅠⅠ・−ii−F一口):上記同様の状況。
H ビ・エロン(ⅠⅠⅠ−ii−F−ハ):総体に退色,スキン層は染料不在となる。
伺 アセデート(ⅠⅠトii−F−ニ):絵体に退色
iii)汗試験 〔方法〕被染物0.1gを結晶第二燐酸ナ・トリウム0.8%,ノ塩化ナ
染色繊維の簡便な品質鑑定法
ーヱβ−
15\
トリクム0.8%,氷酢酸0.5%を含む40±lOCの水溶液25cc中に5分間浸漬し,
後脱水乾燥する。
A.直接染料染着繊維 1)退 色 率
買スコーl;ンべ アミラン
0 1
2)検鏡試験−羊毛,絹,ベンベルグ,アミランほ退色せず,また染着状 況に変化なし。
川 木綿(ⅠⅠⅠ−・iii−A−イ):スキン層に染着の染料脱落。
(ロ)ビスコ−ス(ⅠⅠ王−iii−A一口):上記同様の状況。
算 1 区l 酸性,硫化,硫化建染
(建染および硫化染め),セ リトン染料の染着繊維ほ,
いずれも退色せず,また染 着状況にも変化なし。
以上の染色糸および整ろ う皮試験処理糸の検鏡状態 を描写すれば軍1−2図 となる。
そ・して今までに記述した 染着率100%としての退色 率を各繊維紅つき,染着濃 度に対する退色率(実質退 色率)に換算すると第1表 のとおりになる。なお染着
濃匿ほ,染浴中の璃留染
〃.A.ロ ノ〃・i・Aバコ ノ〃・ii・A・ロ
〟.A.イ 〟J・i・Aノイ 〟7.1i・A・イ〟・iii・A・イ
〃.八.こ J〝.トA・ニ ノ〃.iトA・ニ〟・iiトA・ニ
〟,Aハ.〟J.トAノ、ノ〝.ii.Aノ、〟.iiいAノ\
「函南蘭l頭訂 【・ l, ) ■【、′ ▼l YIY′+、′l
〃一A.′\ 一〟J・i.A・へ、ノ〃.ii.A.へ
〃.A.ホ 〟/・i・A・ホ 肌ii.A・ホ
〃.B.ロ.・〟・i・B・口 〟・iトB・ロ B.イ ノ肌トBイ 〃「・ii.Bイ
〟・B・ハ.〟・沌レ、Ⅶ・ii・Bハ
〃.C.ゴ 〟・ii・C・ロ
〃▲Cイ■ 〟J・トCイ ノノ/・ii・Cイ ヒスコース ヒエロン ナイロン
〃.C.ニ・ J〝・ii・C・ニ
■〟.Cハ 肌iトCハ
】凰コ亙⊂] l l r
16
料濃度を同時に空試験した 同種既知濃度の染料液と比 色して:測定し,初めに調製した染浴濃度から差引いて 決定した。さらに表中,断 面検鏡常よる染色糸および 堅ろう度試験処理糸の染着 評価は.,「染料一級維」の 組合せに率いてイ℃表すると 考えられるものに∵対する検 鏡時のイメ・−ジに従う。そ れ故に各記号は,染着濃度 の比率を正確に表明するも のでない。すなわち◎ほよ く染まっていると思われる 時に,○ほ◎よりやや濃度 欝38巻 欝1・2号
−J6−・
欝 2 図
J〟・Ⅰ)・ロ 〟Hi・0・ロ
.木 綿 ペンべ心グ l′ミラ︑/
硫化 建 染 染 料︵硫化染︶
〃・n・ホ 〟.‖).ホ〟.iトⅠ).ホ
オ 挿 .、/ベルク 7セーフ−・, [圃=回国回国閻恩且
〝,lミニ 〃J−いE・ニJ〝−ii・lこ・ニ
′露 ′ノぶ芦】.拶【 l■ノ ー ー′
〟/.i_E.ホ ノノ/.ii■lミ・ホ
ノ〟▲】i・l「・イ〟・iii・F・イ 〟・トロ. J/J・ii・F一口
が落ちると考えた時に,〆ほ○よりも少し淡く感じた時に,×は染色効果の全 く認められない時に,賞ほわずかな染着を認める時に対辱させた0
第1表
染色繊椎の簡便な品質鑑定法
−・J7−
17
第38巻 筋1。2胃
18 ーJβ−
結果お よび考察
直 接 染 料
1)この種の染料で均染されたものほ,ベンベルグ,アミランであった0も
2)収着率の良いものは,セルローース系繊維であり,絹がそれに次ぎ,羊 毛,アミランは収着率が悪い。
3)紺色染めのこの種染料において−,セルロース系繊維の染め上りほ背味を 帯び,動物繊維およびポリアミド系繊維では,赤味を帯びた色調を呈する0
4)熱湯および熱石けん液に対する堅ろう性ほ何れも弱い。特に木綿,ビス コ⊥スの場合の退色皮は大きい。また羊毛,絹,アミランの場合には,熱湯に ほあまり影響を受けないが,熟石けん液に対してほかなりの退色がある。退色 糸を見るに,ビスコースは,退色と同時に赤昧を帯びた色調紅変わる。
5)絹の場合,熱石けん液による染料脱落は.,主として1司液による染着セリ シ㌧ンの離脱に因る。
6)最も堅ろう度の高いベンベルグにおける染料の収着位置ほ∴繊維親紙面 全体に及んでいる。
直接染料の染色挙動は,−・般に水素結合によって儲明づけられているが,此 処では特に染料分子の会合現象に関係をもたしながら,実験結果の考察を試み
る。
ベンベルグの収着率の長いこと,及び堅ろう性の優れているこ.とに関して は,Ⅹ繰回折試験並.びに引張り切断ロの観察等から立証されている如く,こ.の 繊維ほ,ろキン屑(狭義)と称されうる緻密な組織をもたず,比較的正しい配
(6)
列の結晶粗子で構成された均一・な組織からなるた吟に染料の微粒子が,単糸の 内部まで均等に侵入し易く,それ故に染料分子と繊維分子の接近が容易とな り,該繊維分子中のヒドロキジル基(−OH)と染料分子中のアブ基(一⊥N=
N・一っ,アミノ基(−NH2)等の水素結合形成能を有する基との間に幾つかの
(7)
水素結合が,円滑にまた組織面全般に亙って行われるためと考.え.たい。
註6)祖父江,右田,セルロ丁スノ、ンドブック,597,(1958)東京
染色繊維の簡便な品質鑑定法
−ヱ9−
19
(8)
−・般に水素結合力ほ,他の結合力に比して弱いものとされているが,染料分
(9〉
子が会合している時には,かなり強い親和力を表わす○水溶性染料,ことに直 接染料が溶液中で会合していることは,殆んど疑いなく,その会合は塩濃度の 増加とと.もに,また染料濃度の増大とともに増加し,逆に温度の上昇把従って
(10)
減少することが,Valkoの拡散実験で認められて∵いる。
(11)
今ビスコ・−ネ糸とベンベルグ糸との比較において,Meitnerの『繊維内部に
0
侵入しうる染料粒子の大いさほ,ビスコース糸でほ66。8A以下,ベンベルグ糸
0 でほ66.8A以上のものも可能である』との報告から,ベンベルグの場合ほ,ビ
スコ−スに対する場合よりも会合皮の大きい染料粒子の侵入染着が考えられ,
これがベンベルグの堅ろう性を高度なものにしていると考え.られる。
アミランへの染着ほ,該繊維の吸着基CO・NH基がプロトン授与性基とな り,染料申のプロトン受容性基(−−NニNトー,一−NH2)とかなり強い水素結合 を形成することによると思われるが,しかし染料会合め立場で再考する時,ア
ミランの繊維舶織ほ均質であるが反面緻密であるため,会合した染料分子は内 部に侵入し難く,真に溶解している染料一存在鼠は僅少−のみが昏入する 可能性を有することになる。そしてこのような場合の吸尽ほ,むしろ繊維申の
(12)
塩基性分(アミノ基)と染料中の酸性分(スルホン基)とのイオン結合による ものと解するのが至当であろう。アミラン染糸が均染の傾向をみせ,染着率の
註7)′J\西,柴田,繊維学会誌,望,48,(1956)小西らは統計力学に基づく染料一機締 結合体の解離エネルギ−の計算において.,染色の際紅繊維内部で染料が存在しうる部
分の大きさを乾燥繊維1ダ当りについて調べた結果を次のように報告している。
ビスコース」ベンベルグlモ メ ソlビニロンAlビニロンB
0。38c c 10一46c c 】024c c 】0…19c c 10.19c c
普通の化学結合に比べて数%,共有結 註8)日本化学会,染料と織維,50(1954)東京
合のエネルギ−50〜100kcal/moleに比べれば,水素治合のエネルギ−ほ2〜10kcal/
moleで弱い。
註9)Ⅰ叫d.,
註10)黒木,染色の化学,34(1956)東京
註11)厚木;繊維素化学及び工業,484(1956)東京 註12)黒木,染色の化学,26(1956)東京
罪38巻 第1・2号
20
− 2∂ −
悪い結果を示したのほ,その証であると考える。
このこと.はまた動物繊維へ.の染着についても云える。羊毛はアミランの場合 と異なり,会合染料を十分侵入さすにたる穴を持っている。すなわち羊毛の水
0(14) 中での膨潤ほ著しく,直径約60Aのミセル間隙を生ずる。それ故に会合染料と
の水素結合も考えられるが,実験結果からその様子が認められないのは,繊維 の外面を取り巻く表皮(epicuticle)のため実際にほ,真に溶解している微粒 子の染料のみしか入り得ず,結局アミラン同様の染色機構に魔止するためと考 えられる。なおアミランに比し羊毛の染着率がやや長いのは,塩基性分存在鼠 が前者より多いこと,外表皮紅出来た損傷個所から幾分粒子の大きい染料の侵
(13)
入が許されることに基づき,絹が更によくなるのは,染料侵入の間隙の問題に 帰因すると解する。
以上のことから,この種染料の収着ほ,イオン触合を主とする場合と,水素
結合を主とする場合とが想像される。そして染色糸の色調に差異を生するの は,この結合様式の相違に基因があると考察される。すなわち紺色染めのとの 種染料において,
イカ・ン緒合(羊毛,絹,アミラン)→赤味 水素結合(セルローース系繊維)−→苦味
この論理をビスコ−・スの熱湯,熟石けん処理後の退色糸の色調変化に適用する と,中心層の赤味調の露呈から,ネ・の領域においてもー・部イオン結合による吸 着の起っていることが認められる。
註13)絹の染着率はセリシン部分の染着を差引いて考えると余り.良くない。
註14),15)黒木,染色の化学,126(1956)東京
染色織維の簡便な品質鑑定法
ー2ノ ー 21
酸 性 染 料
1)この種染料で染まる繊維は,総て組織内部にまで染料を拡散させてい る。ただし羊毛の場合ほ,繊維表面の−・端から染料を導入し,中心部を通して 反対側に.鯵透させる,いわゆるスキッタリ一(Skittery)をみせる傾向にある。
(なおこのような現象は「直接染料一半毛」においてもみられるが程度は弱
い)
2)絹の場合,セ.リシン部分は染色されない。(直接染料との差異)
3)熱湯,熟石けん液によって何れも収着染料を離脱する。処理前ほ,各染 色糸とも色調(紫色)の上でさはど違いほなかったが,退色繊維には次表の如
くかなりの差異を認める。
名‡熟 琴 処 理 後【 熟石けん液処理後 青味がとれ,表面付近の染料離脱
赤味がとれる
背昧を呈し,染着面積縮少 赤味がとれ,表面の染料離脱 羊
毛
絹
ア ミ ラ ン やゝ赤昧を帯び,表面の染料離脱赤味が冴え,表面の染料離脱
4)熟石けん液による染料離脱ほ,総じてスキン層で甚大である。
5)串毛は収着率,塗ろう性ともに最良である。
酸性染料の染色挙動ほ,普通,染料の色素酸と級維吸着基との造塩結合(イ オン結合)によ.って説明される。実験結果もその理論によってよく説明づけら れる。_しかし総ての繊維が,粗放の内部にまで染料の収着を示すことから,① 染浴加温時における際の繊維分子間隙の膨潤と染料粒子の縮少に伴う染料侵入
(1(;)
の易容性,⑧水素結合,ファンデルワ−ルス結合の働きの大いなる影響を認め ざるをえない。
なかんずく,ポリアミド系繊維のような吸着基の少ない繊維では,染着の大
註16)Ibid‖,118;AMいDeryshiIe,R軋Pete工S,JlSoc・DyersCol‖,ZI,530(1955)
Derbyshireらは,染色において繊維に対する親和力の主要因は非極性カであると仮免
すべての繊維の染色をこれによって統一・的に説明。
第38巻 欝1・2号
22
・叫・22−
(17)
部分ほ,イオン結合以外の結合方式に依拠しているものと考えざるをえない。
しかして染着アミ.ラン糸を熱湯,熱石けん液で処理した場合,処理糸の色調 が苦味を減じ,赤味を帯びることは,イオン結合以外の結合様式が大いに関与
している証であると考える。なおこのことは,同繊維の酸性染料に対する相客
(18)
性欠如の論理を勘案すると−・層明白となる。
羊毛の場合ほ.,アミランと異なり吸着基はかなり豊富に/存するが,やぼ.り処 理後の色調変化からイオン結合以外の結合様式によ芦と思われる収着が多分に 考えられる。ただ染着羊毛の熟石けん液に対する場合および染着絹糸の熱湯ま たほ熟石けん液紅対する場合,それぞれ水素緒合に基づくと考える青味染料の 収着が最後まで残存することについてほ,考察が及ぼず目下その理由を検討中 である。
次紅羊毛のスキッタリL一現象に関しては,この種染料に対する羊毛の吸尽力
(19) (15) が低く,親水性が高いことを理由としているが,羊毛の吸尽率は非常紅よい。
従って筆者らは,この現象の起因として,まず染色に際し染料は.,羊毛の外表
(20) 皮(epicuticle)の損傷個所を利用して内部へ侵入する。その際羊毛ほ平衡吸
着点に到達する速度が早いから,侵入染料は充分な収着を完遂しながら内拡散 を続ける。こ′れがためやがて拡散すべき染料に不足をきたし組織全体た収着を 及ばすことなくして染着は止まる。(親和力が大きい時は.拡散係数は小さいゐ 論理)ただ僅かに収着から外されている微細な染料粒子のみが繊維組織中の毛 管を水とともに逸み,更に先方に浸透すること、を許される。そしてこの過程に おいて弱い染着効果が残り,スキッタリ・−の具現になると考えている。
何れにしても羊毛の優れた堅ろう性は.,他の繊維に比し吸着基の数が多く,
そのためイカ・ソ鵜合による強い収着を行ないうることに所以すると考えられ る。
註17)例えば羊毛との比較において吸着基(アミノ基)数の比は,羊毛の1紅対しアミラ ンほ0.23倍,ところが染着率ほ本実験から羊毛の1に対して077倍ある。
註18)黒木,染色の化学,158(1956)東京 註19)Idid.,132
註20)Ibid.,125
染色繊維の簡便な品質鑑建法
H−・23一
23
硫化建染染料(建染め)
1)均染されたものはベンベルグのみ。
2)木綿およびアセデートほスキン層に,ビニロンおよびビスコースは中心 層軋染料の大部分の集積が見られる。
3)収着率は.セルロース系繊維が相対に低く,木綿は最も患い。
4)熱湯に対する堅ろう度は,各紙経とも優れているが,熟看けん液に対し てほ,各紙経とも該染料の硫化建ての場合に比し劣り,収着率の低い木綿ほ最 も退色の度合が大きく,ビスコースがそれに次ぐ。
5)染料の脱落はミ木綿,ベンベルグ声よぴアセテートではスキン層におい て,またビスコースおよぴビニロンでほ中心層において顕著である0
6)染料集積位置と塗ろう性の相関性は認められないが,概してセルロ−ス 系繊維の場合ほ堅ろう性が弱い。
ロイコ建染め染料の吸着は,セルロ−.不の直接染料による染色と同様に考え
(21) られでいる。ベγベルグが均染されることおよび木綿,ビスコ−スの染着様態
からみてこの論理はよく理解される。しかしアセテートおよぴビニロンへの染 着性から,直接染料の場合とは異なる拡散係数,親和力等を有することを認め なければならぬ。
(22)
このことに関してBoulton,Mo工tonは,建染め染料の拡散速度は直接染料 の約半分であるが,染着速度ほ極めて早く,染料のStrike(染色の最初の数 分間に吸乱される染料の長)が非常に大きいので,染料の総てほ繊維表面近く の非常に狭い環状部分にのみ吸着されることを述べている。
また染色の早いこと,吸尽の高いこ.とは,染料の親和力の高いことを意味す るが,この場合親和力の高いのは,染浴の電解質鼻が多いためで染料自体の本
(23)
質性によるものでないと述べる者もある。
そこでこれらを勘案しながらアセテートの染色機構を考察してみる。アセテ
註21)Ibidい,100
註22)Ibid.,101 註23)Ibid.,102解38巻 算1・2号
24 ーー ユメl−
−トほ塩基性の基を有せず,またセルロ−スにぁられる規則正しい分子配列 ほ,アセデル化により破壊されるから相当疎水性になっており,当然染着ほ,
(24)
分散効果で行われるものと考え.たい。しかしBiIdらは・,分散染色においては 染色速度は,主と.して繊維中への拡散速度に付随することを示しており,こ れを考える時,分散染色をもって解明することば,上記Boultonの実験結果
(アセテ−トの拡散速度は木綿の半分)と本実験結果(アセテ・−トの収著率は 80%,木綿のそれは36%)から適当でないと思われる。従って水素結合による 吸着を染色効果の主たるものと考えねぼならぬ。
0(25)
しかして,この種染料の粒子は微細であるため,該織維のミセル間隙10Aを 通過することほ容易であり,それが助剤のか性ソ・−ダによってけん化を受けて
(ご61 いる繊維分子と接近して水素結合による染着を行なうものと考えて不合理でな い。このことほスキン層のみの染着に止まらず,中心層にも幾分の染料沈積を みせる実験結果から−・層よく理解される。
ビ土ロンの染色挙動は,アセテーートのそれに類似するということを両者の無
(27)
機性/有枚性値が1.5紅等しいことから述べる老もあるが,何れにせよビニロ ンの染着機構は,ビ・エロンのスキン偏に存在する溝を伝って多くの染料がスポ ンジ層申に侵入し,そして−その侵入染料がこの場所における繊維分子末端の多 くのホルマ・−ル基および僅少鼠の水酸基と吸着することにあると考え.られる。
ただと.の際,OH基は相当強力な水素結合形成基であるがその数が少なく,そ れ放に吸着の主体ほ.,ビ・ニロンのホルマ」−ル基(プロトン受容性基)と還元さ れた染料中のOn基(プロトン授与性基)との水素結合と考えられる。
更にビスコ・−スの場合は,繊維側のOH基と染料中のNH2基との間に水素
註24)Ibid.,152;C LBird,F ManChester,DFlScott∴TlSoclDyersCol・,ヱ蔓,49(1956)
証25)厚木,繊維素化学及び工業,48隻(1956)東京
註26)Ibid.,44、21/100N−1NaOHに・よりゆん化は顕著となり,1/10N−NaOHでは完全に けん化するとある。硫化建染染料を硫化建てにした場合,アセテ・−トほ染色効果を表わ
さなかった。このことから疎水性のアセチ・ル基を多数にもつアセテートに対し,こ・の 種染料が染色効果を出すためには相当多数のOH基が必要とされることが理解される。
註乙7)黒木,染色の化学,162(1956)東藻
染色繊維の簡便な品質鑑定法
25
・− ご5 −−結合が形成され,染色効果を表わすものと考えられる。
ビスコースの熱湯および熟石けん液による処理糸をみるに染色糸の紳色紅対 し,スキン層の色調ほ胃味が強く,中心層のそれは赤味を帯びるのが認められ る。この現象ほ,対直接染料,対該染料の硫化建ででは見られないものであ る。この現象の起因については未だ不詳であるが吸着が好条件である個所で は,単なる水素結合以外紅結合力の強い他の結合様式も関与していることが考 えられる。
硫 化 染 料
1)概して中心層での染料収着は良好である∴ただしアミランのみは.,中心
層での染着ほ審く,充分な染着はスキン層で行われている。またピニロンほ,
鶴織内に不均一・な染着を見せる。
2)セルロ−ス系繊維の収着率ほ悪く,ビニロン,アミラン等疎水性繊維と
称されるものが収着率良好である。ただしナイロンは収着率が悪く一,色調は他 の染着糸の紺色に比し育昧を帯びている。
8)熱湯,汗に対する影響は,全仏経とも受けないが,熟石けん液には,各 級経とも退色効果が表われる。特に収着率の低いビススコ−およびベンベルグ の場合にはそれが大きい。
4)熟石けん液による染料離脱は,中心層において−顕著であり,染料脱落後 ほ均染的傾向を示サ。
硫化染料の染色機構も水素結合およびファンデルワ1−ルス緯合で−・般に説明 されているので,これにならって実験結果の考察を試みる。
硫化染料のロイコ形は,分子末端紅メルカブタン基(−SH)を有するが,
これが染色効果に大いなる役割をなすものと考えられる。 SH基のプロトン授 与性基あるいは受容性基としての強さは明らかでないが,ビニロンに対して
(28)
は,OH基よりS甘基の方が親和力が大きいように思われるという報告があり,
このことからビニロン染色は,建染めによるより硫化染めによる方が収着,堅 註28)Ibid.,172
簿38幾 筋1・2号
26 叫2β−
ろう性ともに好結果になることを予測出来るが,しかしながら硫化建染染料の 建て方をこ通りにしで比較した場合結果においてさはど差異はなく,云われる
ような力関係は認められなかった(第2表参照)。
そこでピエロンの本染料紅よる良好な染着は,SI王・基と繊維中のホルマール 基との水素結合および分子全体にわたる共役二重結合群によるファンデルワ−
ルスカに由来すると考えたい。
またアミランの染色効果ほ,該繊維申のNH2基と染料中のSH基との間の 水素結合に主因があると考える。なおナイロンの収着率が悪いのは,ナーイロン 中のアミ‥ノ基数がアミランのそれの約半分であることから理解される。そして 他の繊維の朗色に比して育味の色調を呈するのは,この繊維が吸着座席を僅か
(29)
しか持たぬことに基づく相容性欠如の特質によるものと考え.る。
アミ.ランおよびビニロンの熟石けん液に対する優長な堅ろう性は,吸着染料 が水に不溶性となっていることに加え,これら繊維の緻密な組織構造が,石け ん液によって助長されるべき染料の外拡散速度を阻害すること紅基因すると考 え.る。
最後にセルロ・−ス系繊維の染着率が惑いのは,繊維中のOH基と染料中のSH
(30)
基との水素結合を想定する場合,その結合エネルギーは約2.6Kcal/moleで水 素結合力としては−・番弱いものに依拠しているためと考える。
硫化建染染料(硫化染め)
1)均染されたのほ.,セルロ・−・ス系繊維の木綿,ベンベルグである。
2)概して中心層の染着は洩好。ただし硫化染料の場合と同様にアミ.ランの
みは,スキン層に染料の集積をみる。
8) ビニロンは中心層に染料集積を認め,スキン層ほ染色効果僅少である。
4)最も収着率のよいものほアミランであるが,−L般にスキン層で教科の集 積をみせるものほ,何れの繊維も収着率がよい。
註29)成田,ピニロ∵ンの染色加工,63(1953)衆意 成田もナイロンの色相差異を認め,
この染料に対してほ選択吸着性があると述べている。
註30)閑,化学と工業,旦,224(1952);坪井,化学の領域,ヱ,611(1953)
染色繊維の簡便な品蟄鑑定法
ー2グー 27
5)熱湯に対してほ,覿色染色糸中,相対的に赤味を帯びた染色繊維のみが 染料の離脱を起す。ビニロンは,初めあまり染着効果をみせていなかったスキ
ン層にその際染料を拡散し,均染的現象を見せる。
6)熟石けん液によ.り何れの繊維も染料を離脱するが,木綿およぴビスコ−
スの場合は.,その離脱が結晶領域において認められ,また・づンベルグ,アミラ ンおよびビニロンほ,中心層で吸着の染料に脱落がみられる。特にベンベルグ ぉよびピニ.ロンでほ中心層から脱落する染料は,背味系のものであ。て,従っ て処理糸はその儀城で赤味の色調を呈するようになる。そ・して脱落染料の一部 がスキン層に残るためか,この領域でほ.育昧の色調が表われる。
7)染料収着位置と堅ろう性の相関性ほ・,繊維によりいささか異なるので明 言は出来ないが,概して−スキン層紅染料集積のあるものが堅ろう性良好であ る。
この種染料の染色機構は,先の硫化染料同様に解しうると考える。ただこの種 染料による場合と硫化染料による場合とでは,キ亭染色結果に差異があるの で,その考察を主して染料粒子の大いさの相違に理由づけて行なってみる。
(31)
この種染料による場合,均染的傾向を認めるのほ,染料粒子の相違によると考
(32)
える。粒子が微細であるこ.とほ,Marshall,Petersの研究で明らかであり,
これから類推してこの種染料でほ,水溶性ロイコ体への還元も早く,従って吸 着が組織内部にまで円滑に進行する能力を多分に有すると思われ,当然の結果 として均染的になると考えられる。ただしこの種染料による魔固な収着は,繊 維組織の非晶質部分にある。これほ木綿およびビスコ−スの熟石けん処理糸の 染料脱落位置から容易に認められる。
また染料粒子の小さいことから,この染料脱落は,まず熟石けん液がスキン 層を通って繊維内部へ浸透し,その間接蝕する水に不溶性の吸着染料を自らの 塩基性基を利して溶解し,外拡散速度に基づいて繊維外部へ流出する過程が考
註31)黒木,染色の化学,96(1956)東京 この染料組子の大いさほ明白でないが,同族 のインダンスVンt/ッドFBBは,Valkoにより平均半径012mpと報告されている。
なお硫化染料は.1〜2皿〝,(前掲,染料と繊維,50)
註32)Ibid.,99
鱒38巻 第1・2号
28
・−・2β−
え.られ,そのために染料がスキン層に寄集すると考える。
セリト ン染料
i)ポリアミド系繊維は,何れも中心層に染料の収着がない。
2)収着率ほポリアミ.ド系繊維がよく,特にナイロンが最も良好である。
3)アセテー・トほ色調の点で他のものと異なり黄味を帯びる。(他のものは
赤色)
4)堅ろう性については,熟石けん液に弱く,なかでも中心層に染料の大部 分を集積するビニロンが弱い。
5)染料脱落ほ何れも繊維組織全体においてみられ,集積濃度の淡い部分で は.染料不在となる。
6)概してスキン層に染料集積がある場合は堅ろう皮が高い。
分散染料による染色挙動は,主と こ.れを中軸として二染色結果の考察を試みる。
この種染料は,NH2基,OH基,NHR基(Rはアルキルまたほアリル基)を 有し,これがポリアミ.ド系繊維に収著する時には,これらの基と該繊維中のN H基,CO基との水素結合が考え.られる。そしてアセテ㌧−トの場合に・ほ,該繊 維中のカルポニル基(>C==0)がプロトン受容性基となって,またピエロン
(38)
の場合では,繊維末端のホルマーール基(一応工一−テル基と倣される)がプロト ン受容性基となり,染料中のプロトン授与性基との間に水素結合を形成して染 色効果が表われるものと考えちれる。
(34〉
この場合Flettの赤外線ヌぺクトルに.よる水素結合力測定結果の報告を参 照すると,ビニロンの場合の結合力は弱く,またアセテ−トの場合の結合力
(35)
は,同繊維中のCO基が吸着座席となるとこ.ろでは弱いが,OH基が吸着座席
註33)田辺,桜田,ポリビニルアルコ−ル甲化学,403(L955)京都,ビニロンの末端基 として,ブロー・ン授与性基のOH基が考えられるが,市販の35〜40%ホルマール化品 では,この邑は0〜15%で僅少なものとされている。
註34)黒木,染色の化学,16(1956)東京
註35)桜田,繊維の化学,87(1960)東京 市販アセデートは,繊維分子中三個のブドウ
糖基の六個の酢酸基のうち一個の酢酸基がけん化されている0
染色繊維の簡便な品質鍔定法
29 −−29−
となっているところでは,かなり強い力を示すことが考えられる。
それ故にアセテ−トの染着性ほ,ビニロンのそれ笹比べて優れていることが 予測されるが,実験結果も正にその通りであった。またポリアミド系仏経とア セテ−−トの染着性の相違も,前者の吸着基(ノ…NH,>C=0)と後者のそれ
(.:>C=0,−OH)とに関する差異から説明づけられる。
(36)
染着範囲の相違紅ついてほ.,吸水率およびこの種染料の各地推服.対する飽和 値の遠いから伺われる非結晶領域の広さの差異並.ぴにミセル間隙の違いに.よる 染料侵入に対サーる物理的障害の差異によって,アセデ−ト>ナイロン>アミラ
ンの順位が生′まれるものと考えられる。すな・わちアセテ・−トのミセル間隙ほ,
(11)o Meitnerの実験によれば10Aであるが,ポリアミンド系繊維は,その幼糸法から
(87)
想像して恐らくそれよりも小さいものと考えられる。殊にアミ:ランほ融解点が ナイロンのそれよりも低いことから上記三者中では−・番ミセル間隙の狭い組織 を有するものと考えられる。なおアミランとナイロンの収着率の差異もここに 原因があると考える。
次にアセテ一斗が他の染色糸に.比し,やや黄昧を帯びた染め上りをみせるの は,『水素結合がアセデートの場合には,疎水性の側鎖に遮威されるために 主鎖に入り難く,側鎖のアセチル基との間に.形成されるためである』とする
(38)
Bamfor・dの論理に.基づくように思われる。
これらの結果を繊維の側から眺めてみると,第2表の通りになる。
註36)成田,化学繊維の性能とその応用,562(1955)東京
註37)アミ.ランは親水基(アミノ基)の保有鼠がナイロンより多い。従って吸水率をもっ
て繊維組織を考えると,ナイロンよりもアミランの方がミセル間牒が広いように計辞 されるおそれがある。
註38)黒木,染色の化学,156(1956)東京
第38巻 第1・2号
30
ーー』クー→第2表
染色繊維の簡便な品質鑑定法
−βノー
ただし 染料有効利用度ほ各染料において,染着率の一層高いものを10.0と し,その割合をもって示す−。また脱落度は各染料においてこ実質退色率 の−・番小さいものを染料自体の墜ろう歴と考え.,それを差引いたもの である。従ってこの数値は収着状態と堅ろう性の関係を示すものと なる。
± 紅おける染料の収着位置と熱湯,石けん
この表および先の考察から,塾艶
および汗に対する堅ろう度との相関性ほ,およそ次の如く紅なる。
畳重一均染されているものが堅ろう性良好である◇特にスキッタリ・一現象 が顕著なものほ.,聞達いなく堅ろう性優良である。
選一残留セリシン部分に染色効果が表われず,繊維の親紙面に均染されて いるものが堅ろう性良好である。
32 欝38巻 第1・2号
ー32−
杢塵ニー均染されているものが最も堅ろう度は高く,中心層に染料集積ある ものがそれに次ぎ,中心層での収着が少な∨、ものはど堅ろう皮ほ低下する。
旦互ユニ三】仙均教化傾向のものはど堅ろう性がよく,特に色相が単調に染 め上っているものほ優良である。
ベンベルグ岬均染されているものが堅ろう性良好である。そしてスキン層 での染料収着が不十分なものほ,堅ろう性が悪い。
アセテ−トースキン層に染料が沈積し,中心層の染色効果が少ないものは ど堅ろう性ほ良好である。
アミランー均染されているものほ堅ろう性が悪く,スキン層に染料の大部 分の収着をみせるものが良好である。
ナイロンースキ、ン層に染料が集積し,中心層に染色効果が表われないもの が堅ろう性は.良好である。〔「硫化染料−ナ・イロン」「硫化建染染料(硫化染
)−ナイロン」の実験結果は,充分に表示していないが,前者はスキン屑のみ に,後者は中心層へも染料拡散の傾向がある。ただしこの中心層での収着染料 は,やや赤味の色調を帯びる。そしてセリトン,硫化染料の場合に比し堅ろう 性はやや劣る〕
呈三三ヱー均染化傾向のものが堅ろう性ほ良好である○
ところでこれらの事項が,果して客観性をもつかどうか,先の考察を基にそ の検討を試みる。
1)羊毛…1スキッタリ・一現象を明白に屈頁現する染色繊維は,酸性染料によ る染色にかかる。この染色機構ほ,強力な結合形式と染料自体の優れた親和力 に基づくもので,また内拡散速度の小さいこ.とを示すものであるから外拡散速 度は小さく,染料流出のおそれも少ない。従って堅ろう性の良い染色繊維はり かくの如き染色効果を表わすものと思われる。
2)絹絹の吸着座席がアミノ基,カルポキジル基であるところから,吸
着形式がイオン結合の場合は,堅ろう性良好であった。こ、の結合様式に.よる場 合,セリシン部分は染色しない。従っでセリシン部分に.染色効果のないこと は,良好な収着状態を意味することになる。