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手作業による生徒健康診断票の作成(

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(1)

利用者指向の学校保健データ処理システムの開発

(1)生徒健康診断票の作成を例として

大嶺智子*・稲岡則子*・吉田道雄**

SchoolHealthDataManagementSystemWithUserfriendlylnterface

(1)APrototypeSystemforPreparingTablesof

StudentHealthExamination TomokoOHMINE,NorikoINAoKAandMichioYosHIDA

(ReceivedOctoberl6,1987)

Thispaperreportsuponamanagementandanalysissystemofschoolhealthdata,whichwe havebeendevelopinginKumamotoUniversityusingpersonalcomputers・Asaconcreteexample wehaveprovidedaprocedureforpreparingresulttablesofstudenthealthexaminations・We alsoreportsthesystem,suser‑friendlyinterfacesforbegin、ers,andamethodoftheevaluationof thesystemforthepurposeofimprovingmanualsandcomputerprogramsofthesystem・

Inhealthcareroomsofschools,therearelotsofschoolhealthdata,forexample,annualor

monthlyphysicaldata,informationofpreventiveinjections,eyesights,pOwersofhearing,dental information,etc・Ittakesmuchtimeandmucheffortsforschoolhealthteacherstomanageand analyzelotsofschoolhealthdataofaIlstudentsintheschool・Theyalsohaveotherworkssuch ashealthconsultations,instruCtions,nursing,etc・Itisnecessaryforthemtomanageschool healthdatausingefficにntmethodandtogaintime、Wehavebeendevelopingaschoolhealth datamanagementsystemusingpersonalcomputers,Wehavedesignedtheprototypesystem withuser‑friendlyinterface,becauselots,ofschoolhealthteachersarebeginnersforpersonal computersandifthesystemdoesnothaveuser‑friendlyinterface,itcanhardlybemanipulated bybegi、、ers・Inthispaperwehaveprovidedaprocedureforpreparingtablesofstudenthealth examinations・wehaveusedthereSultofevaluationtestsforareferencedatainimprovement andrevisionoftheprogramsandmanualsofthisfunction.

は じ め に

学校の保健室には,定期健康診断結果をはじめと する様々な保健情報が集積しており,それに伴う事 務作業のために養護教諭は多くの時間と労力を費や している。コンピュータの進歩に伴う情報化の流れ の中で,学校保健分野においても数年来,保健情報

* 養 護 教 諭 科

**附属教育工学センター

のコンピュータ処理に関する研究が進められ,今日 では,作業の省力化はもちろんのことデータの効果 的運用の可能性をも含んだ水準の高いシステム開発 の報告も示されている!)・2). 。しかし,現場保健 室での利用状況においてはまだまだ地域差は大き

く,予算や養護教諭自身の利用技術習得の問題など

数々の課題を抱えながら,なかなか普及を図れずに いるのが現状である。

そこで著者らは,保健室におけるコンピュータ利 用の幅広い普及を目的として,特に利用者指向の立

(2)

( 表 面 )

生 徒 健 康 診 断

‑118‑

図1生徒健康診断票用紙

第 2 号 様 式 ( 用 紙 日 本 工 業 規 格 A 4 換 型 )

学 校 の 名 称 溌蕊付属中学校

性 別 男 女 生 年 月 日 年 月 日 生

1 2 年 1 3 年 1 4 年

健 康 鯵 断 年 月 日 年 月 日 年 月 日 年 月 日 年 月 日 年 月 日 身 長 ( 毎 )

体 重 ( 的 ) 胸 囲 ( 辱 ) 座 高 ( ぬ ) 栄 養 状 態

視 力

( )

( )

( )

( )

( )

( )

( )

( )

( )

( )

聴 力 眼 の 疾 病 及 び 異 常 耳 鼻 い ん 頭 疾 患 皮 膚 疾 患

う 歯 数 処 置 未 処 置 そ の 他 の 歯 疾 口 腔 の 疾 病 及 び 異 常

心 臓 の 疾 病 及 び 異 常

尿

蛋 白 第 一 次

そ の 他 の 検 査

陰性

疑陽性陽性 陰性疑陽性陽性 陰性疑陽性陽性 陰性疑陽性陽性 陰性疑陽性陽性

寄 生 虫 卵 そ の 他 の 疾 病 及 び 異 常 担 当 学 校 医 所 見 担 当 学 ・ 校 歯 科 医 所 見

事後描匝

結 核 以 外

結 核 予防接種 日 本 脳 炎

イ ン フ ル エ ン ザ

1回 2 回 日力 体 育 学 校 健 康 セ ン タ ー

備考

(3)

場よりパソコンを使った利用法を検討し,システム

開発に取り組んできた4),5〕・システムを開発する 一方で,システム試行によるシステムの客観的評価 も試みているが,今回は開発例の中から,「生徒健 康診断票作成システム」について,システム試行の 結果も併せて報告する。

現在,生徒健康診断票の作成については,養護教 諭だけで行っている学校と学級担任に分担して進め ている学校とに大別されるが,いずれも手作業によ り,定期健康診断結果の記入された学級保健簿等か ら転記するという形で作業は行われている。

生徒健康診断票作成のシステム開発

コンピュータ機器は,NEC・PC‑9801Vm21,

PC‑KD854,PC‑PR201Vを用いた。

ソフトウエアはオペレーティングシステム「MS

−DOS」をベースとしめ,MS−DOSのアプリ ケ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム の 一 つ で あ る 既 存 の 日 本 語 ワープロソフト「一太郎Ver2.1」(以下「一太郎」と 記す)を活用した『)・8〕。そして「一太郎」で対応で きない部分に対しては,更に,既存のソフト「MS‐

第1回:被験者A(8月27日)

DOS版N88‑日本語BASIC(86)」(以下「BASIC」と 記す)を使ってプログラムを作成した。

システム開発にあたり,生徒健康診断票の規格 は,熊本大学教育学部附属中学校(以下附中と記 す)にて使用中のJIS規格診断票用紙(図l)を 参考にし,サンプルデータとして附中の昭和59年度 入学生の健康診断結果の一部を利用した。更に,ソ

フト面の開発に平行してマニュアルの作成も進め

システム評価のためのテスト

被験者は,本システムについての先行知識を持た ず,パソコンやワープロをほとんど使用したことの ない熊本大学教育学部養護教諭科の学生2名で,熊 本大学教育学部附属教育工学センターのAVラボラ トリー室にコンピュータ機器,作業用テーブル等を 整備し,各々8月27日と9月1日に実施した。

「中学生3名分の最終学年での生徒健康診断票の 作成」を課題として,従来の方法である手作業とシ ステム試行,両方での作成を行わせた。健康診断資 料には附中の昭和59年度入学生の3ヶ年分の学級保 健簿を氏名変更して用い,手作業用とシステム試行 用の対象者は区別した。

本テストの流れを図2に示した。被験者には資料

第2回:被験者B(9月1日)

システム開発の目的.システム試行のねらい,作業の大まかな流れについての説明

手作業による生徒健康診断票の作成(

1名×3クラス

×3学年)

システム試行のための資料を配付

システム試行(パソコンによる生徒健康診断票作成(1名×3クラス×3学年))の作業手順を説明

モードでの基本操作,

E意事項の説明

「一太郎」,「BASIC」モードでの基本操作,

データ人力に関する注意事項の説明

「一太郎」,「BASIC」

を練習〈説明と同時ji

「一太郎」,「BASIC」モードでの基本操作

を 練 習 〈 説 明 と 同 時 進 行 ) 〜

データ人力に関す

データ人力に関する注意事項の説明

マニュアルを黙

マ ニ ュ ア ル

読(10分)

:被験者の作業

図 2 テ ス ト の 流 れ

(4)

利用者

力し,l年次のデータファイル作成を行う。データ の種類には,身体四測値などの数値データと疾患,

尿所見などの質的データとがあるが,後者のデータ 入力においては,コード化を図り,項目別選択肢リ ストを参考とした数字入力の方法を用いている。以 上でl年次時点の作業は終了である。2年に進級 後,「一太郎」画面にて,l年次時点で'作成した名簿 ファイルを基本に2年次の組,番号の追加入力を行 う。ついで,「BASIC」モードにうつり,プログラム 実行によって名簿を現在の組番号順に並びかえ,

データ入力のための基本型となる新しい名簿ファイ ルを作成する。.「一太郎」から「BASIC」モードにう つるのは,プログラム実行可能状態にするためであ

る。再び「一太郎」画面に戻り,先のファイルを基 本型としてデータを入力し,現在の組番号順のデー タファイルを作成する。その後b「BASIC」モード で事例番号順のデータファイルを作成することで2 年次時点での作業は終了となる。そして,3年に進 級後,やはり「一太郎」画面,「BASIC」モードにて 2年の時と同じ操作手順で健康診断結果のデータ ファイル作成を進めていく。データファイル作成過 程において,データ入力はすべて「一太郎」画面で 行われる。その時の各データのスタート列は,資料 のデータファイル出力例を参照する方法をとってい る。ファイル作成についても基本的には「一太郎」

の機能を利用し,学年進行に伴う名簿の並びかえや データの並びかえに対応して,「BASIC」モードで のプログラム実行によるファイル作成の方法を用し、

として,データ入力時に使う健康診断項目別選択肢 リ ス ト と デ ー タ フ ァ イ ル 出 力 例 を 渡 し , 更 に , マ ニュアルと「一太郎」操作,並びに,その他作業を 進める上で必要な機器操作についてのプリントを与 えた。システム試行に際しては,マニュアルを見な が ら 作 業 を 進 め て い く も の と し た 。 又 , 開 発 者 が チュータとなり,被験者があまりにも違う方向に進 み そ う に な っ た 場 合 に は , 介 入 し て イ ン ス ト ラ ク ションを与えるようにした。

システム試行中は,ピデオカメラ2台を設置し,

被験者の表情,キーボード,CRTディスプレイ画 面の録画を行い,被験者には思考口述を心がけるよ

う求めた。

システムの概要

システムのファイル入出力を含む構成を図3に示 した。システムの基本設計は図4の如くで「一太 郎」,「BASIC」はいずれもオペレーティングシステ ム「MS‑DOS」上で動作し,各々で作成されたファ イルは相互活用が可能である。

図5はファイルを中心としたシステムの作業概念 図であるが,以下,システムの概要について説明す

る。

まず,入学者に対して「一太郎」画面にて事例番 号,氏名,性別,生年月日の4項目よりなる名簿 ファイルの作成を行う。ついで,その名簿ファイル を基本型として定期健康診断結果のデータを順次入

I l l

I,

の枠ファイル

リストファイル

40.卜−日︲111︐

オペレーティンゲシステムNS・DOS 生徒健康診断票作成システム

図 3 シ ス テ ム の 構 成

図 4 シ ス テ ム の 基 本 設 計

・各々のファイルは健康診断票作成における例を示したものである

。()内はプログラム実行によって作成されたファイルである

‑120‑

(5)

ている。プログラムは対話式に入学年度と学年を入 力することで実行が開始されるようになっている。

以上で過去3ヶ年分のデータファイルが揃い,引 続き「一太郎」の差し込みファイル機能を応用して 診断票作成を進めていく。

差し込みファイル機能とは,別ファイルの文書の あらかじめ指定した部分にデータを差し込んでいく もので,この場合は,健康診断票の枠内に,氏名は じめ各々の健康診断結果が書き込まれていくことに なる。診断票の枠は,開発者によって既に作成済み である。一方,差し込んでいくデータについては,

差 し 込 み 用 の デ ー タ 入 力 形 式 が 特 定 さ れ て い る た め,本システムにおいては,先に作成したデータ ファイルを基にデータを差し込み用の形式にして,

別にファイルを作成しなければならない。そのため にはプログラムの介入を必要とするが,そのプログ ラムは対話式による僅かなキー入力で,出力の対象

(全員もしくは個別)を選択し,いずれの学年にお いても過去のデータの時系列的な検索ができるもの となっている。即ち,健康診断票の作成は最終学年 での作成に限らず,転校時,あるいは保健指導用と

して,必要に応じて得られるようになっている。

昭和59年入学生を例に示す ‐‑‑→1年

一一÷2年

− 3 年

熟。鯉≦瀞

−1,2,3年共通

− → l W 1 E 5 ↓ ↓ 9 o J X V ‑ ‑ → N A M E 5 9 . J X V − − − − − − → S N A N E 5 9 、 J X W ‑ 一 S N A 肥 5 9 . J X V

2年に進級I

テーータ人力

I

SDATA592・JXW

f 室 ) →

テーータのSORTプロゲラム

の実行

. ,』4,..., O:.̲.. .。̲:'』.. .瞳q'1'0。 . 。.。'。,

迷捷健1叢識リマ業i騨瀞?

,

…職

.l順名1

:年度 岨番号 号順デ 学年恩

1組番。

図5システムの作業概念図

(6)

2年次の名禰ファイル作成 (組番号追加人力)

テ ス ト の 結 果 差し込み用のデータファイル作成終了後,診断票

枠内への差し込みファイル指示を行い,ついで「一 太郎」の印刷機能により健康診断票を出力させるこ

とで,システムの一連の操作は終了となる。

被験者AとBでは,図2の如く作業手順が異なっ ているが,被験者Bは,「一太郎」,「BASIC」モード

被 験 者 A 被 験 者 B

(時間:分)

作業内容

<時間:分)

3年次テ画−9ファイル作成 (内訳)1人目ーータ入力

2人目テーータ人力 3人目テーータ入力 ファイル保存操作

1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 0 4 0 3 0 2 0 1 0

名簿ファイル作成 1年次テーータファイI作成 (内訳)1人目データ入力

2人目テーータ人力 3人目テーータ入力

ファイル保存操作

︲卜︑ll

ブロクーラム実行による事 例番号11mテタ、‐タファイル作成

〈一太郎=BASIC〉

ブロクーラム実行による組 番号lIIIiへの並びかえ

(一太郎=聖BASIC)

2年次テーータファイル作成 (内訳)1人目テロータ入力

2人目テーータ入力 3人目テーータ入力 ファイル保存操作 プロゲラム実行による事 例番号順テータファイル作成

(一太郎=BASIC)

3年次の名薄ファイル作成

(組番号追加人力),

組番号順への並びかえ

(一太郎=8ASIC)

5 0 3 0 1 0

差し込み用ファイル作成,

差し込み指示,印刷

4

−122−

図6システム試行時の作業内容別所用時間

2

1 0 2 0 3 0 4 0 5 C

(7)

での基本操作の練習に27分要した。又,システム試 行直前の10分間のマニュアル黙読では,時間内に一 通 り 読 み 終 え て い た 。 テ ス ト に か か っ た 総 時 間 数 は,被験者Aが3時間半,被験者Bが4時間程度で ある。

手 作 業

被験者A,Bいずれも,1年次時点での1人目の 転 記 に は , そ の 他 の 場 合 に 比 べ 多 少 時 間 は か か る が,ほとんど差はなく,1人分の記入に2〜3分要 する程度であった。

シ ス テ ム 試 行

被験者A,B,各々の作業内容別所用時間を図6 に示した。l年次のデータ入力においては,被験者 A , B い ず れ も , 1 人 目 に 特 に 時 間 が か か っ て い る。被験者Bについては,2年次,3年次でも同様 のパターンを示している。実は,被験者Aについて は,途中,データ入力方法を変更して,2年次,3 年次の1人目入力の時にはチュータ介入により画面 上でスタート列を調べることができるようにした。

よって,両者での条件が異なっていることを補足し ておく。

チ ュ ー タ の 補 助 は 被 験 者 A の 方 で 多 く な っ て い た6しかし,A,Bいずれも,作業が進行するにつ れてチュータの介入は少なくなっていった。

開発システムの評価と今後の展望

利用者がより使い易いシステムを求めるのは当然 のことである。そのためにも本システムの使い勝手 について,利用者の評価を得る意義は大きいが,そ れについては後に述べることとする。

コンピュータ利用の普及を妨げるものとして,予 算やその利用技術習得の問題は大きいが,特に後者 は個人的レベルの問題であるだけに解決は容易では ない。山本らの行ったパソコン利用に対する養護教 諭の興味と関心についての調査')では,興味を持っ ている者は92%を占め,利用する場合の希望として は,教えてくれる人がいれば使いたいが最も多く半 数以上にのぼり,ついで,既成のソフトがあれば使 いたい,積極的にプログラムを組んで使いたい,校 内の誰かにプログラムを組んでもらいたいの順と なって,多くは,条件によって極めて流動的な利用 希望者であることが得られている。著者らが現在調 査中のアンケートの回答でも興味を持っている者が

ほとんどであるが,特に年輩者に同様の傾向がふら れ,興味はあるがこういうことは苦手であるという 者もいた。忙しい養護教諭に,利用技術習得のため の時間を確保してもらうことは容易ではなく,取り 組みに対する意欲が前述の状況にあっては,尚のこ と,より簡単な操作手順で,しかも短時間での技術 習得の可能性を持つシステムの開発が望まれる。著 者 ら も 開 発 に あ た っ て は , そ れ を 第 三 義 的 に 考 え

本システムの最大の特徴は,既存のワープロソフ ト「一太郎」を用い,その機能を最大限に活用しつ つ,一部をやはり,既存のソフトを使って独自に開 発したプログラムで補う設計をとっていることであ る 。 い ず れ の ソ フ ト も オ ペ レ ー テ ィ ン グ シ ス テ ム

「MS‑DOS」をベースとしていることに意義があ り,それ故に各々のファイルの相互活用が可能と なっている。その様な相互活用は本システムに限っ たことでなく,「MS‑DOS」上での動作であれば数 多くのソフトとの互換性が保たれているため,デー

タ活用の応用範囲は更に広がる可能性を持つ。

ここで用いた「一太郎」は,汎用性が高く,しか も手ごろな価格であるため,普及範囲も広い。例え ば , 熊 本 県 下 に お い て は , 公 立 中 学 校 へ の コ ン ピュータ機器導入に伴って,学校現場での利用もし だいに広がってきている。その様にごく身近で使用 されているソフトを利用することは,利用希望者に とっては,比較的容易に取り組みのきっかけを作り うる条件となり,更に,コンピュータに馴染みのな かった人たちに対しても,割合,気楽に興味と関心 を持ってもらえる効果が期待できるものと考えられ

る 。

システムで活用している「一太郎」の機能は,文 字入力,ファイルの保存,ファイルの読承込み,差 し込みファイル,印刷,終了であるが,それらはす べてメニュー画面での選択,指示となっていて分か

りやすい。

データ入力やデータファイル作成に関してみた場 合,利用者がワープロ的感覚で作業を進めていける ことは,他にはみられない大きな特徴である。デー タベースの利用は別として,従来のデータファイル としては,DATA文の集合を蓄えるソース・ファ イルが一般的で'0)・ 1),更に,本格的なデータ ファイルとなるとプログラム実行を必要とするもの であった'2)。それらの方法だと文番号やリターン キ ー の 押 し 忘 れ に 関 連 し た ミ ス が 起 こ り が ち で あ る。それに対し「一太郎」では,画面で視覚的に確

(8)

認できる文書そのものがファイルの内容であるた め,ミスが起こりにくい。又,その文書のファイル 作成は,メニュー画面でのファイル保存機能を選択 する方法によるため,プログラムを必要とせず初心 者においても容易な取り組みが望める。追加,削 除,修正などファイル内容の変更についても同様に

「一太郎」画面で簡単に行える。データファイルに 関してのみならず,他の文書,例えば開発者によっ て既に用意された健康診断票の枠についても,その 規格を利用者は「一太郎」画面で自由に変更するこ とが可能である。ただし,この場合,データ書き込 み部分の変動や増減のないままでの変更に限られ,

それ以外では,一部〉差し込み用ファイル作成プロ グラムの内容の変更が必要となってくるので注意は 必要だ。又,質的データのコード化に伴う選択肢リ ストは,現時点で予想されるものすべてをファイル してあるが,新しく出てきた選択肢を利用者は逐次 追加することができ,しかも追加そのものはワープ ロ的感覚で行われ,操作も先のファイル作成に準ず るものである。

以上「一太郎」活用の有効性をみてきたが,一方,

本システムでは「一太郎」で対応できない部分を補 うために開発された4つのプログラムを利用してい る。そのうち診断票作成過程において利用者が直接 活用する3つのプログラムについては,いずれも対 話式による僅かなキー入力で実行が開始される内容 となっており,利用者はプログラミングを気にせず に使うことができる。プログラム実行においては

「BASIC」モードでなければならないため,作業の 途中,「一太郎」と「BASIC」モード間での行き来が 必要となってくるが,単純なキー操作でどの方向か らの切り替えも可能で移行は終了する。残りのコー

ド検索用選択肢リストファイル作成プログラムにつ いては,利用者が直接扱うわけではないが,それに よって,質的データのコード化入力が可能となり,

文字入力の煩雑さを解決し,入力時間の短縮を図る のに役立っている。

従来より情報工学の分野においては,計算機シス テムのユーザ・インタフェースの評価,つまり開発 したシステムの使い勝手の評価のための手法が研究 されている'3)・肥)。それらの手法として,思考口 述法と質問記録分析法の例が示されているが,著者 らは,両者を応用し,思考口述を求める一方で チュータをつける方法にてシステム試行を行った。

著者らにとっては今回が始めての試承であり,種々 の 条 件 の 不 備 な ど も あ っ て , ど ち ら か と い う と マ

−124−

ニュアルを含めたシステム改良のための意義が強い ものとなった。加藤は「日常生活では,普通,自分 の考えていることを即時的に口に出したりはしな い。したがって思考口述法で求める思考の即時的報 告は通常の行動様式では対応しきれないものがあ る。」胸)といっているが,本システム試行において も被験者からの即時報告はほとんど得られなかっ た。そのうえ,被験者への作業負担や作業終了まで の所用時間を気にかけながらの試行であったため,

結果的にチュータの介入が増え,一部,作業を誘導 する傾向にあったことは否定できない。よって,

チュータの介入方法の良否を検討しなければならな い部分もあるが,全体的な作業の流れとしては,被 験者A,Bいずれも作業経過とともにチュータの介 入は少なくなっており,その間の反復学習による操 作法習得が推察された。チュータ介入頻度における 両者間の比較では,被験者Bの方がAよりも少なく なっていたが,それには被験者Aのシステム試行 後,マニュアルの一部を改良しタ又,作業手順を再 検討したことによる影響が考えられ,一連の変更に より,被験者がトラブルに陥る原因の多くが,機器 操作,作業手順についての理解度やマニュアルでの 表現とディスプレイ画面表示の一致性に関連したも のであることが分かった。試行結果を参考に種々の 改良を進めたが,依然として各学年での1人目の データ入力におけるスタート列確認の煩雑さの問題 が残されている。今回採用した方法では,画面表示 や資料の見方に対する慣れが手順の良否を左右する ため,一般化の方法としては不適当である。被験者 Aの2,3学年において用いた,画面上でスタート 列を対応させる方法では,入力が用意となり,入力 時間の短縮も図れるが,逆に,ファイル作成時の余 分な操作が必要となってくるため使い勝手はそれ程 良いともいえない。生徒数に比例して,利用者への 作業負担は更に増大すると考えられるが,今後の課 題として,メニュー画面によるデータ入力方式の採 用など,より簡単なデータ入力方法の再検討を考え ている。

今回のシステム試行において,開発者が気がつい ていない利用者からみた使い勝手の種々の問題点が 明らかにされたが,今後更にテスト・ケースを増や し,システムの改良並びに評価を試みながら,より 使い易い利用者指向のシステム開発を進めていく予 定である。

(9)

ま と め

保健情報の処理に関わる事務作業しこ多くの時間を 取られることで,保健指導,相談活動が充分に行え ないと悩んでいる養護教諭は少なくない。心の健康 に関わる問題が増加し,健康問題も多様化してきて いる昨今,コンピュータ利用による事務作業の省力 化並びに保健情報の効果的運用は,養護教諭の職務 を遂行していく上でも非常に重要なことであると考 えられる。

水準の高いシステム開発の報告が示されながらも なかなか普及を図れずにいる現状にあって,著者ら は,幅広い普及の方向性を見い出すため,利用者指 向のシステム開発に取り組んでいるが,今回はその 一例を報告した。

本システムでは,既存のソフトを使いその機能を 広く活用することによって,初心者に対しても簡単 にファイルを作成する方向が示され,システム全体 としても操作の簡略化が図れた。又,オペレーティ ングシステムの利用により,データ活用の応用範囲 は更に広がる可能性を持っている。システム開発に あたっては,システムの使い勝手を客観的に評価し ていくことが重要であるが,今回もシステム試行に より,システム改良のための貴重な資料を得ること ができた。

謝辞

稿を終えるにあたり,御助言,御協力を頂いた熊本 大学教育学部附属中学校の市原翠先生に深謝いたし ます。又,システム試行に協力して頂いた養護教諭 科学生に感謝いたします。

文 献

1)横尾能範:パソコンによる学校保健データ処理,南江 堂,1985

2)横尾能範:保健室の情報処理とコンピュータ,学校保 健研究,29(4),154‑198,1987

3)辻立世:健康診断におけるパソコン利用の実際,学校 保健研究,29(4),165‑171,1987

4)大嶺智子,稲岡則子,吉田道雄:保健室におけるパソ コン利用一利用者指向のシステム開発(1)−,第34回日 本学校保健学会講演集,144,1987

5)稲岡則子,大嶺智子,吉田道雄:保健室におけるパソ コン利用一利用者指向のシステム開発(2)−,第34回日 本学校保健学会講演集,145,1987

6)阿部将美:日本語MS−DOS入門,オーム社,1986 7)一太郎REFERENCEMANUAL,ジャストシステム

社,1986

8)松本典恒:新一太郎オペレーションマニュアル,JICC 出版局,1986

9)山本イツ子,辻立世:学校保健分野のパソコン利用しこ 対する養護教諭の興味と関心について,第30回日本学 校保健学会講演集,212,1983

10)横尾能範:四測値データを蓄えて広がる保健室の役 割,健,15(4),16‑20,1986

11)吉田道雄,市原翠:マイクロコンピュータによる学校 保健データの分析,熊本大学教育学部附属教育工学セ ンター紀要,第2号,65‑71,1985

12)佐々木胤則〃阿部秀明,三浦邦宏:保健情報の電算機 処 理 に 伴 う パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ の 活 用 − そ の 1

−,学校保健研究,28(2),91‑99,1986

13)加藤隆:計算機ユーザの心的プロセスを探るための一 手法,ヒューマンフレンドリーなシステム,275‑285,

1986

14)加藤隆:計算機ユーザの認知的行動原理を探るための 一手法,情報処理,26(9), '06‑1109,1985

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